説明

共焦点光学系を用いた生体成分測定装置

【課題】装置を簡便化するとともに生体の体調や季節の寒暖による温度の違いに基づく測定誤差を少なくした共焦点光学系を用いた生体成分測定装置実現する。
【解決手段】レーザ光源LDと、該光源からの光をコリメートするレンズ系23と、該レンズ系23でコリメートされた光を透過するハーフミラー24と、該ハーフミラーを透過した光を生体に向けて集束するレンズ系25と、前記生体で反射した光が前記レンズ系25を透過して前記ハーフミラーで反射した光を集光するレンズ系26と、該レンズ系26で集光された光を通過させるピンホール27と、該ピンホールを透過した光を受光するPD28を含む共焦点光学系と、これら共焦点光学系を収納する本体40からなり、該本体に前記レーザを駆動するための起動ボタン41と前記レンズ系25で集光された光を通過させる出射口40aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共焦点光学系を用いた生体成分測定装置に関し、測定の簡便化をはかると共に精度向上を図った共焦点光学系を用いた生体成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の共焦点光学系を用いた生体成分測定装置のブロック構成図である。図4について簡単に説明する。
この共焦点光学系を用いた生体成分測定装置は、生体Aの生体成分のデータを収集するための共焦点光学系2と、得られたデータを解析するためのデータ解析系3とで構成されている。
【0003】
共焦点光学系2には、載置台21が設けられ、この上に被験者の腕等の生体Aが載置される。生体Aの上方には、2波長以上のレーザ光を出射可能なレーザ22が備えられており、この例では、波長可変レーザが用いられる。
【0004】
レーザ22の後段には、レーザ光を平行光とするためのコリメータレンズ23が配置されており、コリメータレンズ23の後段には、光軸に対して略45°の傾斜を有してハーフミラー24が配置されており、レーザ光はハーフミラー24を透過する。
【0005】
ハーフミラー24の後段には、レーザ22から出射して平行光とされたレーザ光を集束するための対物レンズ25が配置されており、生体Aの内部組織に照射される。
生体Aの内部組織で反射した反射光は、対物レンズ25で屈折して平行光とされ、ハーフミラー24により反射されて略90°光路変換される。
【0006】
ハーフミラー24の側方には、光路変換された反射光が入射され、それを集束するレンズ26が配置されており、ハーフミラー24で反射した光は、レンズ26の側方に設けられたピンホール27の位置で集束し、ピンホール27を通過して、例えばフォトダイオードで構成された受光素子(PD)28に受光される。
【0007】
ピンホール27は、絞りを設けたり、径が異なる複数のピンホールを設けてそれらを切り替え可能に構成すること等により、通過する反射光の光量を調整できるように構成可能である。
【0008】
受光素子28からは、受光した反射光の光量に応じて強さや大きさが増減する電流や電圧がデータ信号として出力され、そのデータ信号がA/D変換器29によりA/D変換されて、生体成分測定装置1のデータ解析系3に送信される。
【0009】
図5に示すように、データ解析系3は、CPU31やROM32、RAM33、入出力インターフェース34がバス35に接続されて構成されるコンピュータで構成されている。CPU31は、ROM32に記憶されているデータ解析用のプログラム等の各種プログラムを読み出してRAM33に適宜展開して各種処理を実行する。
【0010】
データ解析において、CPU31は、波長の異なる2波長以上の波長の各レーザ光の出射により受光素子28からA/D変換器29や入出力インターフェース34を介して入力される複数のデータ信号に基づいて生体Aの生体成分の定量を行う。
【0011】
具体的には、血糖値すなわち血液内のグルコース濃度の定量を行う場合、ROM32には、図6に示すような血液内のグルコース濃度とレーザ光の吸光度との検量線が記憶されており、CPU31は、この検量線に基づいて生体Aの生体成分の定量を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−301944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、図4に記載された共焦点光学系を用いた生体成分測定装置は、移動駆動機構により焦点合わせをしているため生体との距離を設定するのに手間がかかり、また、生体の体調や季節の寒暖による温度の違いに基づく誤差が発生するという問題があった。
【0014】
従って本発明は、共焦点光学系を用いた生体成分測定装置を簡便化するとともに生体の体調や季節の寒暖による温度の違いに基づく測定誤差を少なくした共焦点光学系を用いた生体成分測定装置実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の共焦点光学系を用いた生体成分測定装置においては、
レーザ光源LDと、該光源からの光をコリメートするレンズ系23と、該レンズ系23でコリメートされた光を透過するハーフミラー24と、該ハーフミラーを透過した光を生体に向けて集束するレンズ系25と、前記生体で反射した光が前記レンズ系25を透過して前記ハーフミラーで反射した光を集光するレンズ系26と、該レンズ系26で集光された光を通過させるピンホール27と、該ピンホールを透過した光を受光するPD28を含む共焦点光学系と、これら共焦点光学系を収納する本体40からなり、該本体に前記レーザを駆動するための起動ボタン41と前記レンズ系25で集光された光を通過させる出射口40aを設けたことを特徴とする。
請求項2においては、請求項1に記載の共焦点光学系を用いた生体成分測定装置において、
前記光を通過させる出射口40aに設けられた窓材42と、前記生体を接触させた際に前記生体の表面の温度を制御する表面温度制御手段43を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1、2によれば、
レーザ光源LDと、該光源からの光をコリメートするレンズ系23と、該レンズ系23でコリメートされた光を透過するハーフミラー24と、該ハーフミラーを透過した光を生体に向けて集束するレンズ系25と、前記生体で反射した光が前記レンズ系25を透過して前記ハーフミラーで反射した光を集光するレンズ系26と、該レンズ系26で集光された光を通過させるピンホール27と、該ピンホールを透過した光を受光するPD28を含む共焦点光学系と、これら共焦点光学系を収納する本体40からなり、該本体に前記レーザを駆動するための起動ボタン41と前記レンズ系25で集光された光を通過させる出射口40aを設け、
【0017】
前記光を通過させる出射口40aに設けられた窓材42と、前記生体を接触させた際に前記生体の表面の温度を制御する表面温度制御手段43を設けたので、装置を簡便化するとともに生体の体調や季節の寒暖による温度の違いに基づく誤差を少なくした共焦点光学系を用いた生体成分測定装置実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す共焦点光学系を用いた生体成分測定装置の本体の外観斜視図(a)及び共焦点光学系の要部斜視図(b)である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す共焦点光学系を用いた生体成分測定装置の本体の外観斜視図(a)及び共焦点光学系の要部斜視図(b)である。
【図3】出射口に設けた窓材の断面図(a)及び温度制御手段の側面図である。
【図4】従来の共焦点光学系を用いた生体成分測定装置のブロック構成図である。
【図5】共焦点光学系を用いた生体成分測定装置のデータ解析系のブロック構成図である。
【図6】グルコース濃度と重み付けされた吸光度との検量線の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の一例を示す共焦点光学系を用いた生体成分測定装置の本体の外観斜視図(a)及び共焦点光学系の要部斜視図(b)である。
なお、共焦点光学系を用いた生体成分測定装置は図4に示す従来例の構成と同様であり作用も同様である。
【0020】
図1(a,b)において、40は本体であり、図では矩形状に形成され、この本体の中に図1(b)に示す共焦点光学系が収納されている。
即ち本体40には、レーザ光源LDと、この光源の後段に配置されレーザ光を平行光とするためのコリメータレンズ系23と、このコリメータレンズ系23の後段に光軸に対して略45°の傾斜を有して配置されたハーフミラー24と、このハーフミラー24を透過したレーザ光を反射する反射板39と、この反射板39で反射したレーザ光を集束するレンズ系25が配置されている。
【0021】
集束されたレーザ光は本体40に形成された出射口40aから測定光として出射し、図示しない生体の内部組織で反射する。反射した光は再び本体に入射してレンズ系25で屈折して平行光とされ、ハーフミラー24により反射されて略90°光路変換される。
【0022】
ハーフミラー24の側方には、光路変換された反射光を集束するレンズ系26及び絞りや径が異なる複数のピンホール27が配置されており、ピンホール27を通過した光を受光するPD28が配置されている。
【0023】
PD28からは、図4に示す従来例と同様受光した反射光の光量に応じて強さや大きさが増減する電流や電圧がデータ信号として出力され、そのデータ信号がA/D変換器29によりA/D変換されて、生体成分測定装置1のデータ解析系3に送信される。A/D変換器29は本体40の中にあっても良く外にあってもよい。
なお、図1(a)に示すボタン41は入出力インターフェース46から供給される電力を駆動電源を必要とするLDやPDに接続されるスイッチとして機能する。
【0024】
上記の方法によれば、共焦点光学系を用いた生体成分測定装置を矩形状の本体内に収納しているのでコンパクト化が可能となる。
【0025】
図2は他の実施例を示すもので、反射板39で反射する光の反射方向を変更したものであり、このように反射板39の取り付け方向を変更することにより、本体の任意の位置から光を出射させることができる。
【0026】
図3(a,b)は図1、図2に示す出射口40aに設けた窓材の断面図(a)及び温度制御手段を矢印H方向から見た図である。
図3(a)において、窓材42は共焦点光学系を用いた生体成分測定装置の人体接触部として機能し、図では人体dの皮膚eに接触させた状態を示している。
【0027】
図3(b)は窓材42の円筒部の中央付近に形成した温度制御手段43の構成を示すもので矢印H方向から見た図である。
図において、42aは窓材上に形成された配線であり、一端は温度制御手段43に接続され他端は櫛歯状に形成された例えばペルチェ素子からなるヒータ45に接続されている。44は窓材42の中央付近で、ヒータの直接の熱影響を受けない所定の箇所に配置された例えばサーミスタからなる温度センサである。
【0028】
ここで、ヒータ45を透明部材で形成した場合はヒータの位置は問題ないが、非透明部材で形成した場合はレンズ系25(図1,図2参照)からの出射光がヒータ45遮られないような箇所に形成するものとする。
【0029】
上述の構成によれば、被測定部(生体)の温度調整が窓材を介して行われるので、被測定部分の温度変化や季節要因による窓材自身の温度変化に起因する生体成分量の測定誤差を少なくすることができる。
【0030】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば、図1〜図3に示す各種レンズは複数枚のレンズの組み合わせであってもよく、図示通りの構成に限るものではない。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0031】
1 生体成分測定装置
2 共焦点光学系
3 データ解析系
4 移動駆動機構
22 レーザ
24 ハーフミラー
25 対物レンズ系
26 レンズ系
27 ピンホール
28 受光素子
39 反射板
40 本体
40a 出射口
41 ボタン
42 窓材(共焦点式生体成分測定装置の人体接触部)
43 温度制御手段
44 温度センサ
45 ヒータ
46 配線(入出力インターフェースへ)
A 生体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源LDと、該光源からの光をコリメートするレンズ系23と、該レンズ系23でコリメートされた光を透過するハーフミラー24と、該ハーフミラーを透過した光を生体に向けて集束するレンズ系25と、前記生体で反射した光が前記レンズ系25を透過して前記ハーフミラーで反射した光を集光するレンズ系26と、該レンズ系26で集光された光を通過させるピンホール27と、該ピンホールを透過した光を受光するPD28を含む共焦点光学系と、これら共焦点光学系を収納する本体40からなり、該本体に前記レーザを駆動するための起動ボタン41と前記レンズ系25で集光された光を通過させる出射口40aを設けたことを特徴とする共焦点光学系を用いた生体成分測定装置。
【請求項2】
前記光を通過させる出射口40aに設けられた窓材42と、前記生体を接触させた際に前記生体の表面の温度を制御する表面温度制御手段43を設けたことを特徴とする請求項1に記載の共焦点光学系を用いた生体成分測定装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−19979(P2012−19979A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160534(P2010−160534)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】