説明

共配合された酵素及び基質のための送達システム

本発明は、酵素/基質共送達システムを含む方法、組成物、システム及びキットを提供する。前記液体送達システムは、水溶性の重合体マトリックス中にカプセル化された少なくとも一の酵素と、前記重合体マトリックスが不溶性のキャリア液中の前記酵素に対する基質とを含む。水が加えられた場合、前記重合体マトリックスが可溶化し、酵素が前記マトリックスから遊離され、前記基質に対する触媒作用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一の酵素が重合体マトリックス中にカプセル化される、酵素及び基質の共送達(co−delivery)のための液剤に関する。
【0002】
優先権
本出願は、2008年11月3日に出願された米国仮特許出願番号61/110,832の優先権を主張する。この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
酵素/基質システムの送達において、二種類の問題が一般に生じる。第1の問題は、最適な効果が適切な酵素対基質の比率の維持に依存するということである。第2の問題は、反応が望まれるまで、酵素がその基質から物理的に単離されなければならないということである。これらの問題を克服する一の方法は、酵素を基質とは別個に包装し、使用時点でそれらを組み合わせることである。しかしながら、この方法は不便かつ複雑であり、使用時点での混合ミスをもたらし得る。また、酵素は安定化した物質としばしば配合されなければならないことから、この方法は高価になりえる。これらの問題を克服する別の方法は、乾燥した酵素及び乾燥した基質の混合物を与え、物理的な分離を達成することで、適切な酵素対基質の比率を維持する方法である。しかしながら、粉、顆粒又はその他の固形製品を扱うようには設定されていない工程での使用に液剤を提供することが時に望まれるか又は必要である。従って、別の方法が必要である。
【0004】
共配合剤(co−formulation)の取り組みは、酵素及び基質が同じ容器中に組み合わされていることが望ましい。これは、製造者が配合剤上の費用の削減をもたらす酵素対基質の比率を制御することを可能にし、消費者に簡易かつ便利な「即時使用可能な」生産物を提供する。いくつかの場合において、同じ液剤中に酵素及び基質を組み合わせることで毒性問題を軽減することができた(例えば、ラッカーゼ酵素自体と同じ容器中で扱われ、輸送することができた場合、ラッカーゼ・メディエーターによりもたらされる環境危険を実質的に軽減することができた)。
【0005】
Ounichi(米国特許番号4,898,781)及びAronson(米国特許番号5,281,355)は、得られた生産物が酵素のみを含み、反応基質を含まない洗濯及びホームケア用途のための酵素のカプセル化を開示する。酵素及び基質の両方を含み、酵素が反応基質から単離された液剤を生産することが望ましい。このような共配合剤が有用な用途は、例えば、エステル基質と共にペルヒドロラーゼ酵素を用いた酵素性漂白システム及び例えば、ラッカーゼ酵素及び染料前駆体基質を用いた酵素性染色システムを含むが、それらに限られない。
【発明の概要】
【0006】
一の側面において、本発明は、共配合された(co−formulated)酵素及び基質のための液体送達システムを提供する。ここで、前記送達システムは酵素及びその酵素に対する基質を含む組成物であり、前記酵素は水溶性重合体マトリックス中にカプセル化される。前記基質は、酵素を含む重合体マトリックスに接している実質的に非水性の液相(すなわち、約5%未満、約1%未満又は約0.5%未満の水)中である。ここで、前記重合体は液相中で可溶性ではない。前記酵素は、重合体マトリックス中で触媒潜在能力を保持するが、25℃で少なくとも10日間は組成物中の基質と実質的に反応しない。前記組成物に水を追加後、前記重合体マトリックスは可溶性になり、酵素を放出し、基質との触媒反応が起こることを可能にする。
【0007】
いくつかの実施態様において、前記組成物は、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、ペルヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、フェノール酸化酵素、クチナーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、カタラーゼ及びラッカーゼ、及びそれらの混合物から選ばれる一以上の酵素を含む。いくつかの実施態様において、前記組成物は、同じ重合体マトリックス中にカプセル化された二以上の酵素を含む。いくつかの実施態様において、前記組成物は、別個の重合体マトリックス中にカプセル化された二以上の酵素を含む。いくつかの実施態様において、前記組成物は、同じ重合体マトリックス中にカプセル化された二以上の酵素と別個の重合体マトリックス中にカプセル化された少なくとも一の酵素を含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、前記組成物は少なくとも一の界面活性剤を含む。
【0009】
いくつかの実施態様において、重合体マトリックスは、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム及びそれらの誘導体又は共重合体から選ばれる。本明細書に提供される組成物での使用に適した重合体は、酵素がカプセル化されることができ、水に可溶でないものである。
【0010】
いくつかの実施態様において、前記酵素含有重合体マトリックスは、基質を含む実質的に非水性の液体中に懸濁された粒子状物質の形態である。一の実施態様において、前記粒子状物質は懸濁補助剤により懸濁液中に保持される。いくつかの実施態様において、前記液体懸濁液は、酵素/基質反応が有用な用途での一回使用(すなわち、単回投与)が十分な及び/又は意図される酵素及び基質の量を含む容器中である。ここで、前記容器は、例えば、キャップ又は蓋を開くことにより、液体を分配するために開くことが出来る。いくつかの実施態様において、前記液体懸濁液は、複数回の使用(すなわち、複数回投与)が十分な及び/又は意図される酵素及び基質の量を含む、再び封をすることが出来る容器内である。これは、容器キャップの開閉、バルブ又は分配ポート等の開閉により懸濁液を繰り返し分配することを可能にする。いくつかの実施態様において、酵素含有重合体マトリックスは袋又は小袋のような閉じられた、すなわち、密閉された容器の形態であり、基質は重合体容器内の実質的に非水性の液体中である。
【0011】
前記基質は、非水性の液体(キャリア流体)を含み得る実質的に非水性の液相中で可溶であるか又は分散する。キャリア流体の例は、グリコール、非イオン性界面活性剤、アルコール、ポリグリコール、酢酸エステル又はそれらの混合物を含むが、それらに限られない。液体又は固体基板は、一以上のキャリア流体と組み合わされることができ、そのキャリア流体と混和性であるか、キャリア流体中で懸濁されることが出来る。いくつかの実施態様において、前記キャリア流体は、基質の可溶化の増加及び/又はカプセル化する重合体の可溶化の減少に適する条件を形成するために加えられた塩又はpHバッファーを含む。いくつかの実施態様において、前記キャリア流体は、酵素に対する基質である。例えば、プロピレングリコール・ジアセテート・キャリア流体は、プロピレングリコール・ジアセテート中で不溶性の重合体マトリックス、例えば、ポリビニルアルコール、メチル・セルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、ポリビニルピロリドン等の中にカプセル化されたペルヒドロラーゼ酵素に対する基質として働くことが出来る。多くの実施態様において、前記送達は重合体を欠く匹敵する送達システムと比べ、増加した安定性を示す。
【0012】
一の実施態様において、前記酵素はペルヒドロラーゼである。また、前記基質は、酢酸エステル、例えば、プロピレングリコール・ジアセテートのようなエステル基質である。いくつかの実施態様において、前記エステル基質は、プロピレングリコール・ジアセテートである。また、前記ペルヒドロラーゼ酵素を含む重合体は、プロピレングリコール・ジアセテート中に懸濁された粒子の形態又はプロピレングリコール・ジアセテートを囲む閉じた容器の形態、すなわち、プロピレングリコール・ジアセテートが重合体の容器で包囲される形態である。
【0013】
いくつかの実施態様において、前記酵素はペルヒドロラーゼである。前記基質はエステル基質である。前記組成物は、例えば、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム及び尿素過酸化水素から選ばれる過酸化水素生成化合物をさらに含む。また、過酸は水が組成物に加えられた後に生産される。いくつかの実施態様において、過酸は、過酢酸、過ノナン酸、過プロピオン酸、過ブタン酸、過ペンタン酸及び過ヘキサン酸から選ばれる。いくつかの実施態様において、前記エステル基質はプロピレングリコール・ジアセテートである。また、前記過酸化水素生成化合物は、プロピレングリコール・ジアセテート中に懸濁される。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記酵素はペルヒドロラーゼ酵素である。また、前記組成物は、モノ−及びジグリセリド(例えば、アシルドナー及びアルコール受容体)又はソルビタンエステル(例えば、アシルドナー及びソルビタン)を生産するための基質を含む。いくつかの実施態様において、酵素はペルヒドロラーゼ酵素である。また、前記組成物は、芳香族エステル、例えば、ベンジルエステル(例えば、アシルドナー及び揮発性アルコール、例えば、ベンジルアルコール)を生産するための基質を含む。
【0015】
いくつかの実施態様において、前記酵素はラッカーゼ酵素のようなフェノール酸化酵素である。また、前記基質は、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、シリンガミド(syringamide)及びシリンゴニトリル(syringonitrile)から選ばれるラッカーゼ・メディエーターである。
【0016】
様々な側面において、本発明は、酵素活性が有用な用途で使用される組成物、例えば、洗剤組成物、繊維品処理組成物又はパーソナルケア組成物を提供する。ここで、前記組成物は、酵素及びその酵素に対する基質を含む。ここで、前記酵素は水溶性重合体マトリックスにカプセル化される。また、ここで、酵素含有重合体マトリックスは、本明細書に記載の基質を含む実質的に非水性の液体又は懸濁液に接触し、またそれらの液体に不溶性である。
【0017】
別の側面において、本発明は、本明細書に記載の共配合された酵素及び基質のための送達システムを含むキット又は送達システムを含む組成物及び包装を提供する。いくつかの実施態様において、前記キットは、方法、例えば、除染方法、洗浄法、繊維品加工方法又はパーソナルケア方法等での使用のための説明書をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、例えば、洗剤組成物、繊維品の処理組成物又はパーソナルケア組成物等の基質への酵素の触媒活性が有用な方法で使用される配合された組成物に送達システムを組み込むための説明書をさらに含む。
【0018】
別の側面において、本発明は、(a)過酸化水素源が存在する状態で、本明細書に記載のペルヒドロラーゼ含有組成物を水に加え混合し、それにより、水溶性過酸溶液を生成する工程、及び(b)前記溶液と汚染物質を含む物品とを接触させ、それにより、汚染物質の濃度を減少させる工程を含む汚染除去の方法を提供する。いくつかの実施態様において、汚染物質は、ボツリヌス毒素、炭疽菌毒素、リシン、サバ科毒素、シグアトキシン、テトラドトキシン、マイコトキシン又はそれらの組み合わせから選ばれる毒素を含む。いくつかの実施態様において、汚染物質は、細菌、病原体、菌類、寄生虫、プリオン又はそれらの組み合わせから選ばれる病原菌を含む。いくつかの実施態様において、前記物品は、硬質表面、布地、食料、飼料、衣料物品、敷物、カーペット、繊維品、医療機器及び獣医機器から選ばれる。いくつかの実施態様において、前記水は殺菌される。いくつかの実施態様において、汚染除去される前記物品との接触は高温で行われる。
【0019】
別の側面において、本発明は、(a)過酸化水素源が存在する状態で、本明細書に記載のペルヒドロラーゼ含有組成物を水に加え混合し、それにより、水溶性過酸溶液を生成する工程、及び(b)繊維品の測定可能な白化を可能にするために適した長さの時間と条件下で、前記溶液と繊維品とを接触させ、それにより、漂白された繊維品を生産する工程を含む繊維品を漂白する方法を提供する。
【0020】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、本明細書に記載の洗剤組成物としみを含む物とを接触させる工程を含む洗浄方法を提供する。ここで、少なくともしみの一部が除去される。
【0021】
別の側面において、本発明は、追加される水が存在する状態で、繊維品の測定可能な白化を可能にするために適した長さの時間と条件下で、繊維品と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含む繊維品を漂白する方法を提供する。ここで、前記組成物は、繊維品の白化をもたらすメジエーターを含み、それにより、漂白された繊維品を生産する。
【0022】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、繊維品の測定可能な変色を可能にするために適した長さの時間と条件下で、繊維品と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含む繊維品の色を変更する方法を提供する。ここで、前記組成物は、使用される条件化で繊維品の変色をもたらすメジエーターを含み、それにより、変色された繊維品を生産する。
【0023】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、毛の測定可能な変色を可能にするために適した長さの時間と条件下で、毛と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含む染毛の方法を提供する。ここで、前記組成物は、使用される条件下で毛の変色をもたらすメジエーターを含み、それにより、変色された毛を生産する。
【0024】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、パルプ又は紙の測定可能な色及び/又はリグニン含量の変化を可能にするために適した長さの時間と条件下で、パルプ又は紙と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含むパルプ又は紙の漂白及び/又は脱リグニンの方法を提供する。ここで、前記組成物は、色及び/又はリグニン含量の変化をもたらすメジエーターを含み、それにより、色及び/又はリグニン含量が変化されたパルプ又は紙を生産する。
【0025】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、複合木材収率の測定可能な変化を可能にするために適した長さの時間と条件下で、木材と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含む複合木材を生産するための木材繊維の酵素活性化の方法を提供する。ここで、前記組成物は、複合木材の収率の変化をもたらすメジエーターを含み、それにより、木部繊維結合が変化した木材を生産する。
【0026】
別の側面において、本発明は、追加された水が存在する状態で、廃水のフェノール濃度の測定可能な減少を可能にするために適した長さの時間と条件下で、廃水流出物と本明細書に記載のフェノール酸化酵素(例えば、ラッカーゼ)含有組成物とを接触させる工程を含む廃水を処理する方法を提供する。ここで、前記組成物は、フェノール濃度の減少をもたらすメジエーターを含み、それにより、フェノール含有量が減少した廃水流出物を生産する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、ペルヒドロラーゼ酵素で触媒された反応を概略的に示す。
【図2】図2は、実施例3で記載される、PVAラッカーゼ・ディスク及びABTSラッカーゼ・メディエーターでの酵素浸出実験の結果を示す。
【図3】図3は、実施例3で記載される、PVAラッカーゼ・ディスク及びSAラッカーゼ・メディエーターでの酵素浸出実験の結果を示す。
【図4】図4は、実施例3で記載される、PVAラッカーゼ・ディスク及びSNラッカーゼ・メディエーターでの酵素浸出実験の結果を示す。
【図5】図5は、実施例3で記載される、12穴マイクロタイタープレート実験中のデニム漂白の結果を示す。
【図6】図6は、実施例3で記載される、ランダロメーター(Launder−Ometer)実験中のデニム漂白及び染色の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、共配合された酵素及び基質のための送達システムを提供する。本明細書に記載の組成物は、水溶性高分子を含む重合体マトリックス中にカプセル化された酵素を含む。前記組成物はまた、酵素に対する基質を含む。前記カプセル化された酵素は、基質、例えば、液体基質、基質溶液又は固体基板粒子の液体懸濁液又はカプセル含有基質を含むか、それらから成るか又は実質的にそれらから成る、実質的に非水性の液状組成物中に又はそれを包囲するシール容器の形態中で懸濁されることが出来る。酵素がカプセル化されたポリマーからの酵素の遊離は、水への希釈が引き金となって起きる。
【0029】
定義
別途記載のない限り、本明細書に用いられる技術的及び科学用語は全て、当業者により一般に理解されるものと同意義である。例えば、Singleton及びSainsbury、微生物学及び分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)、第二版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)出版、ニューヨーク州(1994年)及びHale及びMarkham、ハーパーコリンズ生物学辞典(The Harper Collins Dictionary of Biology)、ハーパー・ペレンニアル(Harper Perennial)出版、ニューヨーク州(1991年)は、本発明で用いられる多くの用語の当業者のための一般的な定義である。本明細書に記載する方法及び材料に類似あるいは同等の任意の方法及び材料も、本発明に係る実施で用いることが出来る。従って、以下に定義される用語は明細書を全体として参照することによってより完全に規定される。また、本明細書で用いる単数形冠詞(a、an)及び定冠詞(the)は、文意より明らかに他の意味に解される場合を除き、その複数の場合を含む。別途記載のない限り、核酸は左から右ヘ、5’末端から3’末端方向に、アミノ酸配列は左から右ヘ、アミノ基からカルボキシ基方向へ各々記載される。本発明は、当業者が使用する状況に依存し、変化することができ、記載された特定の手順、操作方法及び試薬に限定されないことが理解される。
【0030】
本明細書で示される全ての最大数値限定は、本明細書でより少ない数値限定が明確に記載されているかのように、全てのより少ない数値限定を含むことが意図される。本明細書で示される全ての最小数値限定は、本明細書でより多い数値限定が明確に記載されているかのように、全てのより多い数値限定を含む。本明細書で示される全ての数値範囲は、本明細書でより狭義の数値範囲が明確に記載されているかのように、より広義の数値範囲の中にある、全てのより狭義の数値範囲を含む。
【0031】
本明細書で用いる「酵素」の語は、化学反応を触媒する任意のタンパク質をいう。酵素の触媒的機能はその「活性」又は「酵素的活性」を構成する。酵素は通常、それが行う種類の触媒的機能、例えばペプチド結合の加水分解に従い分類される。
【0032】
本明細書で用いる「基質」の語は、生産物を生成するために酵素がその触媒活性を行う物質(例えば、化合物)をいう。
【0033】
本明細書で用いる「精製された」及び「単離された」の語は、サンプルからの汚染物質の除去及び/又は自然に関連する少なくとも一の成分から回収される物質(例えば、タンパク質、核酸、細胞等)をいう。例えば、これらの語は、天然の状態、例えば、完全生物システムで見られるような、通常付随する成分が実質的に又は根本的にない物質をいうことが出来る。
【0034】
本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」の語は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又は修飾されたヌクレオチド又は塩基又はそれらの類似物を含む、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの類似物又は修飾態様を含有する、任意の長さ及び任意の三次元構造及び単鎖又は多重鎖(例えば、単鎖、二重鎖構造、三重らせん形等)のヌクレオチドの重合体の形態をいう。遺伝子コードの縮退から、特定のアミノ酸をコードするために複数のコドンが使用されることが出来る。また、本発明は、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドが使用条件下で所望の機能性を保持する限り、ヌクレアーゼ耐性を増加させる修飾(例えば、デオキシ、2’−O−Me、ホスホロチオエート等)を含む、任意のタイプの修飾されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体が用いられることが出来る。標識、例えば、放射性又は非放射性標識又はビオチンのようなアンカー等もまた、検出又は捕獲の目的で組み込まれることが出来る。ポリヌクレオチドの語はまた、ペプチド核酸(PNA)を含む。ポリヌクレオチドは、自然発生又は非自然発生とすることが出来る。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」の語は、相互置換可能に用いられる。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA又は両方及び/又はその修飾形態及び/又は類似物を含むことが出来る。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分により割り込まれることが出来る。一以上のリン酸ジエステル結合が別の連結基と置き換わることが出来る。これらの別の連結基は、リン酸塩がP(O)S(「チオアート」)、P(S)S(「ジチオアート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH(「ホルムアセタール」)と置き換わる実施態様を含むが、それらに限られない。ここで、各R又はR’は、独立にH又は任意にエーテル(−O−)結合を含む置換された又は未置換のアルキル(1−20C)、アリル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは線形又は環状とすることが出来るか、又は線形及び環状部分の組み合わせを含むことが出来る。
【0035】
本明細書で用いる「ポリペプチド」の語は、アミノ酸を含み、当業者にタンパク質として認識される任意の組成物をいう。アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字表記が用いられる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」の語は相互置換可能に用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。前記ポリマーは、線形又は分岐していることができ、修飾されたアミノ酸を含むことができ、また、非アミノ酸により割り込まれることが出来る。この語はまた、自然に又は介在により、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化又は標識成分を伴う接合ような任意の他の操作又は修飾等により、修飾されたアミノ酸重合体を包含する。例えば、アミノ酸の一以上の類似物(例えば、不自然なアミノ酸等を含む)を含むポリペプチドの他、当該技術分野で既知の他の修飾がまた、この定義の範囲内に含まれる。
【0036】
本明細書で用いる機能的に及び/又は構造上類似するタンパク質は、「関連タンパク質」であると考えられる。いくつかの実施態様において、これらのタンパク質は、有機体の分類間の相違(例えば、細菌タンパク質及び菌性タンパク質)を含む、異なる属及び/又は種に由来する。追加の実施態様において、関連タンパク質は同じ種から提供される。実際に、本明細書に記載の工程、方法及び/又は組成物が、任意の特定源に由来する関連タンパク質に限定されることは意図されない。加えて、「関連タンパク質」の語は、三次構造の相同体及び一次配列の相同体を包含する。別の実施態様において、この語は、免疫学的に交差反応性であるタンパク質を包含する。
【0037】
本明細書で用いる「ペルヒドロラーゼ」の語は、洗浄、漂白、消毒又は殺菌等の用途での使用に適した十分に高い量の過酸の生産をもたらす過加水分解反応の触媒が可能な酵素をいう。一般に、本明細書に記載の方法で用いられるペルヒドロラーゼ酵素は、高い過加水分解対加水分解比率を示す。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼは、配列番号1で示すスメグマ菌ペルヒドロラーゼ・アミノ酸配列、又はそれの変異体又は相同体を含むか、もしくは、それらから成るか又はそれらから実質的に成る。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素はアシル・トランスフェラーゼ活性を含み、水溶性アシル基転位反応を触媒する。
【0038】
本明細書で用いる「過加水分解」又は「過加水分解する」の語は、過酸がエステル及び過酸化水素基質から生成される反応をいう。一の実施態様において、過加水分解反応は、ペルヒドロラーゼ、例えば、アシル・トランスフェラーゼ又はアリル・エステラーゼ酵素等で触媒される。いくつかの実施態様において、過酸は、過酸化水素(H)の存在下、化学式RC(=O)ORであってR及びRは同一か異なる有機質部分であるエステル基質の過加水分解により生産される。一の実施態様において、−ORは−OHである。一の実施態様において、−ORは−NHと置き換わる。いくつかの実施態様において、過酸はカルボン酸又はアミド基質の過加水分解により生産される。
【0039】
本明細書で用いる「過酸」の語は、過酸化水素と反応し、その酸素原子、例えば、化学式有機酸RC(=O)OOH等の一を転移することが出来る高度に反応的な生産物を形成するカルボン酸エステルに由来する分子をいう。過酸、例えば、過酢酸等が漂白剤として機能することを可能にする酸素原子を転移するのはこの能力である。
【0040】
「過酸化水素源」の語は、過酸化水素の他、自然に又は酵素学的に反応生成物として過酸化水素を生産することが出来るシステムの成分を含む。
【0041】
「過加水分解対加水分解比率」の句は、指定条件下かつ指定時間以内で、ペルヒドロラーゼ酵素によりエステル基質から酵素学的に生産された過酸の量と酵素学的に生成された酸の量に対する比率をいう。
【0042】
本明細書で用いる「アシル」の語は、−OH基の除去により有機酸に由来することが出来る、一般式RCO−を有する有機基をいう。通常、接尾辞「オイル(−oyl)」で終わるアシル基の名称、例えば、塩化メタノイル(methanoyl chloride)CHCO−Cl等は、メタン酸CHCO−OHから形成された塩化アシルである。
【0043】
本明細書で用いる「アシル化」の語は、分子の置換基の一がアシル基で置換される化学変換又は分子へアシル基を導入する過程をいう。
【0044】
本明細書で用いる「トランスフェラーゼ」の語は、一の基質から別の基質に官能基の転移を触媒する酵素をいう。
【0045】
本明細書で用いる「酵素変換」の語は、基質又は中間体と酵素を接触させることにより、基質又は中間体を修飾することをいう。いくつかの実施態様では、接触とは適当な酵素に基質又は中間体を直接にさらすことにより行われる。他の実施態様では、接触はこの酵素を発現及び/又は分泌し、及び/又は好ましい基質及び/又は中間体をそれぞれ所望の中間体及び/又は最終生成物に代謝する生物にさらすことを含む。
【0046】
本明細書で用いる「有効量のペルヒドロラーゼ酵素」の句は、特定の用途(例えば、汚染除去で使用されるアシル・トランスフェラーゼによる過酢酸の生産)で必要とされる活性を達成するために必要な酵素の定量をいう。このような有効量は、当業者により容易に確認され、用いられる特定の酵素変異体、特定の組成物、汚染除去の方法、汚染除去されるべき物品等のような多くの要因に基づく。
【0047】
物質(例えば、酵素)又は組成物に関して本明細書で用いる「安定性」の語は、所定の環境条件下である期間にわたりある水準の機能活性を維持する性能をいう。さらに「安定性」の語は関心のある特定の環境条件に関し、多くのより具体的な状況で使用出来る。例えば、本明細書で用いる「熱安定性」は、上昇した温度で物質又は組成物がその機能を維持する(つまり、分解しない)性能をいう。安定性の実質的な変化は、選択された環境条件が欠けたときに存在する活性と比較して、測定される機能的活性の半減期の少なくとも約5%又はそれ以上の増大又は減少(ほとんどの実施態様において、増大が好ましい)により根拠付けられる。
【0048】
酵素に関して、本明細書で用いる「化学的安定性」の語は、その活性に悪影響を及ぼす化学物質が存在する状態での酵素の安定性をいう。いくつかの実施態様において、このような化学物質は、過酸化水素、過酸、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、キレート剤等を含むが、それらに限られない。しかしながら、本発明が、いかなる特定の化学的安定性の度合い又は化学的安定性の領域に限られることは意図されない。
【0049】
本明細書で用いる「pH安定性」は、特定のpHで物質(例えば、酵素)又は組成物が機能する性能を言う。種々のpHにおける安定性は、当業者に知られる標準的な手順及び/又は本明細書に記載の方法により測定出来る。pH安定性の実質的変化は、最適pHにおける活性と比較して、機能的活性の半減期の少なくとも約5%又はそれ以上の増大又は減少(ほとんどの実施態様において、増大が好ましい)により根拠付けられる。本発明をいずれかのpH安定性水準又はpH範囲に限られることは意図されない。
【0050】
本明細書で用いる「酸化安定性」は、物質(例えば、酵素)又は組成物が酸化的条件、例えば、酸化化学物質の存在下で機能する性能をいう。
【0051】
本明細書で用いる「熱安定性」は、特定の温度で機能するタンパク質の能力をいう。一般的に、大部分の酵素は、それらが機能する温度の有限範囲を有する。中性域の温度(例えば、室温)で作用する酵素に加え、非常に高いか、又は非常に低い温度での作用が可能な酵素がある。熱安定性は、既知の手順のいずれかにより測定することが出来る。熱安定性での実質的な変化は、酵素活性に最適な温度と異なる温度(すなわち、より高い又はより低い温度)に曝された場合に、変異体の触媒活性の半減期の少なくとも約5%又はそれ以上の増加又は減少により根拠付けられる。しかしながら、本明細書に記載の工程、方法及び/又は組成物が、いかなる温度安定性の度合い又は温度領域に限られることは意図されない。
【0052】
本明細書で用いる「酸化化学物質」の語は、漂白する能力を有する化学物質をいう。前記酸化化学物質は、漂白に適する量、pH及び温度で存在する。この語は、過酸化水素及び過酸を含むが、それらに限られない。
【0053】
本明細書で用いる「汚染物質」の語は、別の物質、材料又は物品とそれを接触又は組み合わせることによりそれを望ましくない、不純及び/又は使用に適さなくするいずれかの物質をいう。
【0054】
本明細書で用いる「汚染された物品」又は「汚染除去を必要とする物品」の語は、汚染物質と接触又は組み合わされた及び/又は汚染除去される必要のあるいずれかの物品又は物をいう。この物品をいずれか特定のもの又は種類の物品に限定する意図はない。例えば、いくつかの実施態様では、この物品は硬質表面である。他方、他の実施態様では、この物品は衣服の一片である。さらに追加の実施態様ではこの物品は繊維品である。さらに別の実施態様では、この物品は医療及び/又は動物医療分野で使用される。いくつかの実施態様では、この物品は外科用具である。別の実施態様では、この物品は輸送(例えば、道路、滑走路、鉄道、列車、自動車、飛行機、船等)で使用される。さらに別の実施態様では、この用語は肉、肉の副製品、魚、魚貝食品、野菜、果実、乳製品、穀物、ベーキング製品、サイレージ、乾草、飼料等を非限定的に含む食品及び/又は飼料に関して使用される。実際、この語は、本明細書に記載の方法と組成物を使用する汚染除去に適したいずれの物品も含むことを意図している。
【0055】
本明細書で用いる「汚染除去」の語は、汚染された物品から実質的に全ての又は全ての汚染物質を除去することを言う。いくつかの実施態様では、汚染除去は殺菌を含み、一方、他の実施態様では、この語は消毒を含む。しかし、この語をこれらの実施態様に限定することは意図していない。なぜなら、この用語は微生物の汚染物質(例えば、細菌、菌類、ウィルス、プリオン等)の他に無生物の汚染物質の除去を含むことを意図しているからである。
【0056】
本明細書で用いる「殺菌」の語は、物品の表面にいる微生物を増殖抑制又は殺菌することの他、表面から汚染物質を除去することをいう。本発明をいずれか特定の除去を受ける表面、物品又は汚染物質又は微生物に限定する意図はない。
【0057】
本明細書で用いる「消毒」の語は、表面上の全ての微生物の有機体の死滅をいう。
【0058】
本明細書で用いる 「殺胞子性」の語は、菌類と細菌の胞子を非限定的に含む微生物の胞子を死滅させることをいう。この語は、胞子を完全に発育不可能にする組成物の他、胞子の発芽の予防に効果がある組成物を含む。
【0059】
本明細書で用いる 「細菌殺菌性」「菌類殺菌性」及び「ウィルス殺菌性」の語は、それぞれ細菌、菌類及びウィルスを殺菌する組成物をいう。「微生物殺菌性」の語は、細菌、菌類、ウィルス、原生動物、リケッチア等を非限定的に含むいずれかの微生物の増殖及び/又は複製を阻害する組成物をいう。
【0060】
本明細書で用いる 「静菌性」、「静真菌性」及び「静ウィルス性」の語は、細菌、菌類、ウィルスのそれぞれの増殖及び/又は複製を阻害する組成物をいう。「静微生物性」の語は、細菌、菌類、ウィルス、原生動物、リケッチア等を非限定的に含む、いずれかの微生物の増殖及び/又は複製を阻害する組成物をいう。
【0061】
本明細書で用いる「洗浄組成物」の語は、布地、皿、コンタクトレンズ、他の固体物、髪(シャンプー)、皮膚(石鹸とクリーム)、歯(口腔洗浄、練り歯磨き)等のような洗浄されるべき物品から好ましくない化合物の除去に使用される組成物をいう。この語はさらに、いずれかの対象物及び/又は表面の洗浄、漂白、殺菌及び/又は消毒に適したいずれかの組成物をいう。この語は、洗剤組成物(例えば、液体及び/又は固体洗濯洗剤と繊細な布地の洗剤、硬質表面の洗浄配合剤、例えば、ガラス、木材、陶器及び金属性のカウンターの天板及び窓、カーペット洗浄剤、オーブン洗浄剤、布地消臭剤、布地柔軟剤及び繊維品と洗濯用プレスポッター及び皿用洗剤)を非限定的に含むことを意図している。この語は、この組成物がアシル基転移酵素、過酸化水素源、PGDA、及びこの組成物中で使用される他の酵素又は物質と適合する限り、好ましい特定の種類の洗浄組成物と製品形態(例えば、液体、ゲル、顆粒又はスプレー組成物)のために選択されるいずれの材料/化合物もさらに含む。洗浄組成物材料の特異的選択は、洗浄を受ける表面、物品又は布地、及び使用時の洗浄条件にあった組成物の好ましい形態を考慮することにより容易に行われる。実に、本明細書で用いる「洗浄組成物」の語は、別途記載のない限り、顆粒又は粉末形態の全用途用又は重質洗浄剤を含み、特に、洗浄用洗剤、液体、ゲル又は糊状全用途用洗浄剤、特に、いわゆる重質液体(HDL)の種類、液体の繊細な布地用洗剤、皿の手洗い用洗剤又は軽質皿洗い用洗剤、特に、泡立ちの高い種類、家庭用又は施設用の種々の錠剤、顆粒、液体及びすすぎの容易な種類を含む皿洗い機用洗剤、抗菌性手洗い用剤を含む液体洗浄剤と殺菌剤、クリーニングバー(cleaning bar)、口腔洗浄用剤、入れ歯洗浄剤、車又はカーペット用洗剤、浴室用洗剤を含む液体洗浄剤と消毒剤、毛髪用シャンプーと毛髪用リンス剤、シャワー用ゲルとフォームバス及び金属洗浄剤を含む他、漂白添加剤と「部分汚れ用洗剤(stain−stick)」又は予備洗浄用タイプのような洗浄補助剤を含む。
【0062】
本明細書で用いる「洗剤組成物」及び「洗剤配合剤」の語は、汚れた対象物の洗浄用媒体中で使用することが意図される混合物をさして使われる。いくつかの好ましい実施態様では、この語は布地及び/又は衣類(例えば、「洗濯用洗剤」)の洗濯をさして使用される。別の実施態様では、この語は他の洗剤、例えば、皿、刃物等の洗浄に使用されるもの(例えば、「皿洗い用洗剤」)をいう。本発明をいずれか特定の洗剤配合剤又は組成物に限定することは意図していない。実際、ペルヒドロラーゼ酵素、例えば、アシル基転移酵素に加え、この語は界面活性剤、転移酵素、加水分解酵素、酸化還元酵素、洗浄助剤、漂白剤、漂白活性剤、青み剤及び蛍光性染料、固化防止剤、マスキング剤、酵素活性剤、抗酸化剤及び可溶化剤を含む洗剤を含むことを意図している。
【0063】
洗浄組成物材料に関して本明細書で用いる「酵素適合性」の語は、関連する酵素が通常の使用状況で希望される程効果的ではない程度に前記材料が酵素活性を低下させないことをいう。
【0064】
本明細書で用いる「誘導体」の語は、C末端及びN末端のいずれか又は両方での一以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の一以上の異なる部位での一以上のアミノ酸の置換及び/又はC末端及びN末端の一方又は両方の末端及び/又はアミノ酸配列中の一以上の部位での一以上のアミノ酸の欠失及び/又はアミノ酸配列中の一以上の部位での一以上のアミノ酸の挿入によりタンパク質から生成されたタンパク質をいう。タンパク質誘導体は、天然タンパク質をコードするDNA配列の修飾、DNA配列の適した宿主への形質転換及び修飾DNA配列の発現により頻繁に調製され、誘導体タンパク質を形成する。
【0065】
関連する(及び誘導)タンパク質は、「変異体」タンパク質を包含する。変異体タンパク質は少数のアミノ酸残基により親タンパク質と及び/又は互いに異なる。いくつかの実施態様では、異なるアミノ酸残基の数は約1、2、3、4、5、10、20、25、30、35、40、45又は50のいずれかである。いくつかの実施態様では、変異体は約1から約10のアミノ酸で異なる。
【0066】
いくつかの実施態様において、関連タンパク質、例えば、変異体タンパク質は、少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%のアミノ酸配列の同一性のいずれかを含む。
【0067】
本明細書で用いる「類似(アナロガス)配列」の語は、対照タンパク質に関して類似の機能、三次構造及び/又は保存された残基をもつタンパク質中のポリペプチド配列をいう。例えば、アルファヘリックス又はベータシート構造を含むエピトープ領域では、類似配列におけるアミノ酸置換は同一の構造因子を維持する。いくつかの実施態様では、類似配列は、変異体が由来する親タンパク質に関し類似する又は向上した機能を示す変異体酵素をもたらす。
【0068】
本明細書で用いる「相同(ホモログ)タンパク質」は、対照タンパク質(例えば、異なる起源由来のペルヒドロラーゼ酵素)と類似の機能(例えば、酵素活性)及び/又は構造をもつタンパク質(例えば、ペルヒドロラーゼ酵素)をいう。相同体は進化上関連する、及び/又は関連しない種に由来しても良い。いくつかの実施態様では、相同体は対照タンパク質の構造と類似の四次、三次及び/又は一次の構造をもち、そのため、非相同タンパク質由来の配列をもつ一部又は断片による置換と比較して対照タンパク質の構造及び/又は機能の乱れが小さい状態で、相同体の類似部分又は断片による対照タンパク質の一部分又は断片との置換が潜在的には可能である。
【0069】
本明細書で用いる「野生型の」タンパク質、「天然の」タンパク質及び「自然発生の」タンパク質は、天然に見出されるものである。「野生型配列」の語は、自然に見出されるか又は自然に発生するアミノ酸又は核酸配列をいう。いくつかの実施態様では、野生型配列はタンパク質操作の計画、例えば、変異体タンパク質産生の開始点である。
【0070】
本明細書で用いる「漂白」の語は、繊維材料、例えば、繊維、糸、布地、衣服又は不織布の材料等を処理し、それらのより明るい色を生産する工程をいう。例えば、本明細書で用いる漂白は、セルロースか他の繊維材料中の色を引き起こす化合物の除去、修飾又はマスキングによる繊維品の白化を包含する。従って、「漂白」は、繊維品の増白(すなわち、白化)をもたらすために十分な時間、及び適切なpH及び温度条件下での繊維品の処理をいう。漂白は、化学的漂白剤及び/又は酵素学的に生成された漂白剤を用いて行うことが出来る。適した漂白剤の例は、ClO、H、過酸、NO等を含むが、それらに限られない。
【0071】
本明細書で用いる「漂白剤」の語は、繊維品の漂白が可能な任意の部分を包含する。漂白剤は、漂白活性剤の存在を必要としてもよい。本明細書に記載の工程、方法及び組成物に有用な適した化学的漂白剤の例は、過酸化ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム及び過酸である。Hは、原位置(in situ)で酵素学的に生成された場合、化学的漂白剤として考慮されることが出来る。「化学的漂白組成物」は、一以上の化学的漂白剤を含む。
【0072】
本明細書で用いる「酵素性漂白システム」又は「酵素性漂白組成物」の語は、酵素学的に漂白剤を生成することが可能な、一以上の酵素及び基質を含む。例えば、酵素性漂白システムは、過酸漂白剤の生産のためのペルヒドロラーゼ酵素、エステル基質及び過酸化水素源を含むことが出来る。
【0073】
ペルヒドロラーゼ酵素を含む酵素性漂白システムに関して本明細書で用いる「エステル基質」は、エステル結合を包含するペルヒドロラーゼ基質をいう。脂肪族及び/又は芳香族カルボン酸及びアルコールを含むエステルは、ペルヒドロラーゼ酵素と共に基質として利用されることが出来る。いくつかの実施態様において、エステル源は酢酸エステルである。いくつかの実施態様において、エステル源は、プロピレングリコール・ジアセテート、エチレングリコール・ジアセテート、トリアセチン、酢酸エチル及びトリブチリンの一以上から選ばれる。いくつかの実施態様において、エステル源は、以下の酸の一以上のエステルから選ばれる。すなわち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸である。
【0074】
本明細書で用いる「過酸化水素源」の語は、外生(すなわち、外部又は外側)起源に由来するか、又は基質上で過酸化水素生成オキシダーゼの作用により原位置で生成されたかのいずれかに由来する、繊維品加工槽に加えられる過酸化水素をいう。「過酸化水素源」は、過酸化水素の他、自発的に又は酵素学的に反応生成物として過酸化水素を生産することが出来るシステムの成分を含む。
【0075】
本明細書で用いる「過酸化水素生成オキシダーゼ」の語は、電子受容体としての分子酸素(O)を伴う酸化/還元反応を触媒する酵素を意味する。このような反応において、酸素は水(HO)又は過酸化水素(H)に還元される。本明細書の使用に適するオキシダーゼは、その基質上に(水とは対照的に)過酸化水素を生成するオキシダーゼである。本明細書の使用に適する過酸化水素生成オキシダーゼ及びその基質の一例は、グルコースオキシダーゼ及びグルコースである。過酸化水素の生成に用いられることが出来る他のオキシダーゼ酵素は、アルコール・オキシダーゼ、エチレングリコール・オキシダーゼ、グリセロール・オキシダーゼ、アミノ酸オキシダーゼ等を含む。いくつかの実施態様において、過酸化水素生成オキシダーゼは炭水化物オキシダーゼである。
【0076】
本明細書で用いる「繊維品」の語は、繊維、糸、布地、衣服及び不織物をいう。この語は、天然物、合成物(例えば、製造された物)及び種々の天然及び合成混合物から作られた繊維品を包含する。従って、「繊維品」の語は、未加工及び加工された繊維、糸、織られた又は編まれた布地、不織物及び衣服をいう。いくつかの実施態様において、繊維品はセルロースを含む。
【0077】
本明細書で用いる「加工を必要とする繊維品」の句は、糊抜き、精錬、漂白及び/又は着色されることを必要とするか、又はバイオポリッシュ、バイオストーン洗浄及び/又は柔軟化のような他の処理を必要とすることが出来る繊維品をいう。
【0078】
本明細書で用いる「漂白を必要とする繊維品」の句は、他の起こり得る処理に関係なく漂白されることを必要とする繊維品をいう。これらの繊維品は、既に他の処理が施されていてもよく、施されていなくてもよい。同様に、これらの繊維品は後の処理を必要としてもよく、必要としなくてもよい。
【0079】
本明細書で用いる「布地」の語は、厚みに関連する実質的な表面積及び組み合わせに有用な機械強度を与えるための十分な結合を有する繊維及び/又は糸の生産された組み合わせをいう。
【0080】
本明細書で用いる「糊」又は「糊付け」の語は、糸の耐摩耗性及び強度を増加させることにより製織性を改善するため、繊維工業で用いられる化合物をいう。糊は通常、例えば、デンプン又はデンプン様化合物等からなる。
【0081】
本明細書で用いる「糊抜」又は「糊抜き」の語は通常、特別の仕上げ、染色又は漂白を適用する前に繊維品から糊、一般的にデンプンを除去する工程をいう。本明細書で用いる「糊抜き酵素」の語は、酵素学的に糊を除去するために用いられる酵素をいう。例示的な酵素は、アミラーゼ、セルラーゼ及びマンナナーゼである。
【0082】
本明細書で用いる「精錬」の語は、不純物、例えば、綿又は他の繊維品で自然に見られる、非セルロース化合物(例えば、ペクチン、タンパク質、ワックス、微塵等)の多く等を除去することをいう。天然の非セルロース不純物に加え、精錬は、紡糸、コーニング又は裁断滑沢剤のような製造工程で導入された残留物質を除去することが出来る。いくつかの実施態様において、漂白は繊維品に由来する不純物を除去するために用いられることが出来る。
【0083】
本明細書で用いる「バイオ精錬酵素」の語は、綿又は他の繊維品で見られる不純物の少なくとも一部の除去が可能な酵素をいう。
【0084】
本明細書で用いる「微塵」の語は、例えば、機械的な繰綿工程後に繊維にはりつく綿実断片、葉、幹及びさらに他の植物部分のような望まれない不純物をいう。
【0085】
本明細書で用いる「未漂白の(greige)」(グレイと発音する)の語は、生産後に任意の漂白、染色又は最終処理も受けていない繊維品をいう。例えば、未だ終了されていない(糊抜き、精錬等されていない)、漂白されていない又は染色されていない、織機から出た任意の製織された又は編まれた布地等も、未漂白の繊維品と呼ばれる。
【0086】
本明細書で用いる「染色」の語は、特に着色液に漬けることにより、例えば、繊維品等に色を適用することをいう。
【0087】
本明細書で用いる「非綿セルロース化合物」繊維、糸又は布地の語は、綿以外の主にセルロース系組成物から成る繊維、糸又は布地を意味する。このような組成物の例は、リネン、ラミー、ジュート、亜麻、レーヨン、リオセル、セルロースアセテート及び非綿セルロース化合物に由来する他の同様の組成物を含む。
【0088】
本明細書で用いる「ペクチン酸塩リアーゼ」の語は、一種のペクチナーゼをいう。「ペクチナーゼ」は、ペクチン基質、主に、ポリ(1,4−アルファ−D−ガラクツロナイド)及びその誘導体のグリコシド結合を切断する一群の酵素であると当該技術分野に従って定義されるペクチナーゼ酵素である(サカイ他(1993年)、Advances in Applied Microbiology、第39巻、213−294ページ)。本明細書で用いられるペクチナーゼは、ポリ(1,4−アルファ−D−ガラクツロナイド)リアーゼ又はペクチン酸塩リアーゼとしても知られる分類ポリガラクツロネート・リアーゼ(PGL、EC4.2.2.2)中の酵素のようなトランス位脱離によるペクチン酸(ポリガラクツロン酸とも呼ばれる)中のアルファ−1,4−グリコシド結合の無作為の切断を好ましくは触媒するペクチナーゼ酵素である。
【0089】
本明細書で用いる「ペクチン」の語は、より高い又は低い階級にエステル化されることが出来るペクチン酸塩、ポリガラクツロン酸及びペクチンを示す。
【0090】
本明細書で用いる「クチナーゼ」の語は、繊維品の加工で用いられる植物、細菌性又は菌類由来の酵素をいう。クチナーゼは基質クチンの加水分解が可能なリパーゼである。クチナーゼは、繊維品の加工(例えば、精錬工程)中に除去される必要のある脂肪酸エステル及び他の油脂系組成物に分解することが出来る。「クチナーゼ」は、有意な植物クチン加水分解活性を有する酵素を意味する。特に、クチナーゼは、植物の葉上で見られるバイオポリエステル・ポリマー・クチンの加水分解活性を有する。適したクチナーゼは、様々な植物、菌性及び細菌源から単離されることが出来る。
【0091】
本明細書で用いる「α−アミラーゼ」の語は、マルトース分子(α−グルコースの二糖類)をもたらすためにアミロースのα(1−4)グリコシド結合を切断する酵素をいう。アミラーゼは唾液で見られる消化酵素で、多くの植物により生産される。アミラーゼは長鎖の炭水化物(例えば、デンプン)をより小さな単位に分解する。「酸化安定している」α−アミラーゼは、非酸化安定α−アミラーゼと比べ、特に、酸化安定α−アミラーゼが由来した非酸化安定α−アミラーゼ形態と比べ、酸化の方法による分解に抵抗性のあるα−アミラーゼである。
【0092】
「プロテアーゼ」の語は、タンパク質又はタンパク質のポリペプチド・ドメイン又は菌類、細菌のような微生物か植物又は動物由来のポリペプチドであって、タンパク質炭水化物骨格の様々な一以上の位置でのペプチド結合の切断の触媒が可能なものを意味する。
【0093】
本明細書で用いる「パーソナルケア製品」の語は、シャンプー、ボディーローション、シャワーゲル、局所用保湿剤、歯磨き粉及び/又は他の局所用洗剤を非限定的に含む、毛髪、皮膚、頭皮及び歯の洗浄、漂白及び/又は殺菌において用いられる製品をいう。いくつかの実施態様において、これらの製品はヒトに利用される一方、他の実施態様において、これらの製品はヒトでない動物(例えば、獣医学での用途)に用いられることがある。
【0094】
本明細書で用いる「懸濁液」又は「分散液」は、不連続の固相が連続的な液相中に分散する二相システムをいう。
【0095】
本明細書で用いる「懸濁補助剤」は、懸濁粒子の沈降又は浮遊を防ぐか減少するために液状組成物に加えられる物質をいう。懸濁補助剤は通常、キャリア液体の粘性又は降伏応力のいずれかを増加させることにより働く。有意な降伏応力を有する液体は、降伏応力より高い応力が適用される場合のみに流れ、従って、ずり流動化又はチキソトロピー反応を示す。効果的な沈殿防止剤は、弱い相互作用により架けられた粒子状物質又は繊維の可逆的なネットワークの形成により通常作用する。懸濁化剤の例は、キサンタンガム及びマイクロ線維状セルロース、例えば、CELLULON(登録商標)(CP Kelco、サンディエゴ、カリフォルニア州)等を含むが、それらに限られない。
【0096】
本明細書で用いる「カプセル化された」は、周囲の物質中に含まれた物質をいう。これは、当該技術分野(例えば、「マイクロカプセル化」カーク・オスマー化学工学百科事典(「Microencapsulation」 Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、2005年を参照されたい)で説明される芯/殻又はマトリックス形態を含む。
【0097】
本明細書で用いる「混和性」は、相へ分離することなく、二種類の液体が指定された比率で、別の液体と混合することが可能な液体をいう。
【0098】
本明細書で用いる「マトリックス」は、物質が包囲されるか埋め込まれる物質をいう。
【0099】
本明細書で用いる「バイオフィルム」は、細胞外高分子物質及び様々な有機及び無機化合物のマトリックスに埋め込まれる微生物の集合である。いくつかのバイオフィルムは、微生物の一種類を含み得るが、通常、バイオフィルムは微生物の異なる種のみならず異なるタイプの微生物、例えば、藻類、原生動物、細菌等も含む。
【0100】
酵素/基質共送達システム
本発明は、少なくとも一の酵素が重合体マトリックス中にカプセル化され、その酵素に対する基質と共に配合される、共配合された酵素及び基質のための液体送達システムを提供する。前記基質は、可溶性でない重合体マトリックスに接する実質的に非水性の液相中である。酵素を含む前記重合体マトリックスは、基質を含む液相に懸濁されるか、包囲されることが出来る。前記酵素及び基質は、送達システム内の酵素触媒作用が起こり得る構成で接触していない。重合体マトリックスが可溶性かつ、酵素が基質に対し触媒活性があり、水と接触した場合に、触媒活性が起こる。一又は複数の酵素が、重合体マトリックス中にカプセル化された少なくとも一の酵素と共に、組成物中に含まれることが出来る。いくつかの実施態様において、送達システムは、同じ重合体マトリックス、又は別個の重合体マトリックス中にカプセル化された、二以上の酵素を含む。また、送達システムは、少なくとも一の酵素の基質を含む。
【0101】
前記基質は、重合体マトリックスが可溶性でない、実質的に非水性のキャリア液中に可溶化されるか又は懸濁される。重合体マトリックスが固体形態のまま貯蓄中に膨張することなく保持されるように、前記キャリア液及び重合体が選ばれる。これは、例えば、低含水率、可逆的な架橋及び/又は低い保存温度で達成されることが出来る。いくつかの実施態様において、前記液相は、約5%未満、約1%未満又は約0.5%未満の水、例えば、約4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%の水を含む。
【0102】
前記カプセル化された酵素は、送達システムの貯蓄中、液相中の基質と実質的に反応しない。いくつかの実施態様において、液相中の基質の約20%、10%、5%、1%又は0.5%未満が、約25℃で少なくとも約10日間、2週間、1か月間、2か月間、3か月間又はそれより長い間の貯蓄期間で生産物に転換される。いくつかの実施態様において、液相中の基質の約20%、10%、5%、1%又は0.5%未満が、約37℃で少なくとも約10日間、2週間、1か月間、2か月間、3か月間又はそれより長い間の貯蓄期間で生産物に転換される。いくつかの実施態様において、液相中の基質の約20%、10%、5%、1%又は0.5%未満が、約50℃で少なくとも約10日間、2週間、1か月間、2か月間、3か月間又はそれより長い間の貯蓄期間で生産物に転換される。
【0103】
本明細書に記載の送達システムにおいて、カプセル化された酵素は、重合体マトリックス中の初期の触媒潜在能力の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は実質的に全てにおいて、水との接触で放出されることが可能なように保持されるが、25℃、37℃又は50℃で少なくとも約10日間、2週間、1か月間、2か月間、3か月間又はそれより長い間、組成物中の基質と実質的に反応しない。
【0104】
重合体マトリックス
前記重合体マトリックスは、基質を含むキャリア流体に不溶性で、水に可溶性の重合体を含むか、それらから成るか、実質的にそれらから成る。いくつかの実施態様において、重合体マトリックスは、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム又はそれらの誘導体又は共重合体、又はそれらの混合物を含むか、それらから成るか、実質的にそれらから成る。いくつかの実施態様において、重合体マトリックスは、一以上の充填剤又は増量材(例えば、デンプン、糖質、粘土、滑石、炭酸カルシウム、二酸化チタン、セルロースファイバー)、可塑剤(例えば、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール)、助溶剤、結合剤、膨潤剤(例えば、ポリアクリレート、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウム・デンプン・グリコレート、低置換度ヒドロキシプロピル・セルロース、ガラクトマンナン、ウォーターロック(Water−Lok)、ザップロック(ZapLoc))又は剥離剤を含む。
【0105】
いくつかの実施態様において、ポリマーは、例えば、グルクロニド及び/又はガラクツロナイド残基を含むヘテロ多糖のような負に荷電したポリマーである。このような多糖は、例えば、酵素自体が生産される有機体により生産された物質を含むことができ、それら自身有用な酵素活性を有しても、有さなくても、部分的に精製された酵素製剤中の汚染物質として残留することが出来る。あるいは又は加えて、このような多糖は、スラリーの重量で約1から5%以下又はそれ以上の量で、別途加えられることが出来る。このような量は、酵素自体の量に匹敵する。いくつかの実施態様において、多糖は噴霧乾燥の前に存在する(又は加えられる)。他の例示的な重合体は、アラビノガラクタン、キシロガラクタン(xylogalalctans)及び一般な酸性多糖類である。
【0106】
いくつかの実施態様において、重合体マトリックスは、タンパク質、ペプチド又はそれらの誘導体を含む。タンパク質又はペプチドのいくつか又は全ては、培養液、細胞培地又は部分的に精製されたタンパク質製剤中に存在することができ、それら自身有用な酵素活性を有しても、有さなくても、部分的に精製された酵素製剤中の汚染物質として残留することが出来る。あるいは又は加えて、このようなタンパク質又はペプチドは、スラリーの重量で約1から5%以下又はそれ以上の量で、別途加えられることが出来る。このような量は、酵素自体の量に匹敵する。
【0107】
様々な実施態様において、酵素(及び任意に基質)は、ソルベントキャスティング、噴霧乾燥、凍結乾燥/真空凍結乾燥、流動床スプレー塗装、流動床凝集、噴霧チルリング、湿式造粒法、ドラム造粒法、高せん断造粒法、押し出し、パンコーティング、コアセルベーション、ゲル化、原子化を含むが、これらに限られない技術を用いて重合体中にカプセル化される。特定の実施態様において、噴霧乾燥が用いられる。
【0108】
一般に、重合体マトリックス中にカプセル化される酵素の量は重量で50%未満である。様々な実施態様において、重合体マトリックス中にカプセル化される酵素の量は、重量で約0.01%から約50%、約0.1%から約25%、約1%から約10%又は約2%から約5%である。
【0109】
いくつかの実施態様において、酵素含有重合体マトリックスは、基質を含む液相中に懸濁される粒子状物質の形態である。様々な実施態様において、前記粒子状物質は、直径約0.1から約1000、約50から約250、約100から約300、約200から約500、約400から約800又は約600から約1000マイクロメートルである。
【0110】
いくつかの実施態様において、重合体マトリックスは、厚さで約5から約1000、約50から約100、約100から約200又は約200から約500又は約500から約1000マイクロメートルのフィルムの形態である。
【0111】
いくつかの実施態様において、酵素含有重合体マトリックスは、基質を含む液相を包囲するシール容器(例えば、小袋、サッシェ又はカプセル)を形成するフィルムの形態である。
【0112】
酵素
様々な実施態様において、送達システムは、一以上のプロテアーゼ、エステラーゼ、セリンヒドロラーゼ、リパーゼ、ペルヒドロラーゼ、オキシダーゼ、フェノール酸化酵素、ラッカーゼ、アシル・トランスフェラーゼ、アリルエステラーゼ、ペルヒドロラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、マンナナーゼ、フィターゼ、ペクチナーゼ、ペルオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、クチナーゼ、カタラーゼ又はそれらの混合物を含む。
【0113】
一の実施態様において、送達システムは、ラッカーゼ(多重銅オキシダーゼ、EC1.10.3.2、例えば、Cerrena unicolor由来のもの)及びラッカーゼに対するメジエーター(基質)、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(ABTS)、シリンゴニトリル(SN)、シリンガミド(SA)、メチルシリンゲート(methyl syringate)(MS)又は10−カルボキシプロピル・フェノチアジン(PTP)、又はヨーロッパ特許番号1064359、1141321又は0805465、米国特許番号6,329,332、PCT出願番号00/05349又は米国公開番号2008/0196173で記載されるようなメジエーターを含む。
【0114】
一の実施態様において、ラッカーゼ酵素は下記の配列番号1に示すアミノ酸配列、又は、少なくとも70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又はさらに99%又はそれ以上の配列同一性を有するその変異体又は相同体、又はPCT出願番号WO2008/076322で記載されるアミノ酸配列、又は少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、99又はさらに99.5%又はそれ以上の配列同一性を有するその変異体又は相同体を含むか、それらから成るか、実質的にそれらから成る。
【0115】
AIGPVADLHIVNKDLAPDGVQRPTVLAGGTFPGTLITGQKGDNFQLNVIDDLTDDRMLTPTSIHWHGFFQKGTAWADGPAFVTQCPIIADNSFLYDFDVPDQAGTFWYHSHLSTQYCDGLRGAFVVYDPNDPHKDLYDVDDGGTVITLADWYHVLAQTVVGAATPDSTLINGLGRSQTGPADAELAVISVEHNKRYRFRLVSISCDPNFTFSVDGHNMTVIEVDGVNTRPLTVDSIQIFAGQRYSFVLNANQPEDNYWIRAMPNIGRNTTTLDGKNAAILRYKNASVEEPKTVGGPAQSPLNEADLRPLVPA、PVPGNAVPGGADINHRLNLTFSNGLFSINNASFTNPSVPALLQILSGAQNAQDLLPTGSYIGLELGKVVELVIPPLAVGGPHPFHLHGHNFWVVRSAGSDEYNFDDAILRDVVSIGAGTDEVTIRFVTDNPGPWFLHCHIDWHLEAGLAIVFAEGINQTAAANPTPQAWDELCPKYNGLSASQKVKPKKGTAI(配列番号1)。
【0116】
いくつかの実施態様において、送達システムは、過酸を生産するためのペルヒドロラーゼ酵素(例えば、アシル・トランスフェラーゼ、アリル・エステラーゼ)及び基質、例えば、エステル基質のようなアシルドナー、例えば、プロピレングリコール・ジアセテート(PGDA)及び過酸化水素起源、例えば、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、尿素過酸化水素又は酵素性過酸化水素生成システム、例えば、過酸化水素生成オキシダーゼ及びその基質、例えば、グルコースオキシダーゼ及びグルコースを含む。
【0117】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は自然発生のM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼ酵素である。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号2で示すアミノ酸配列又はその変異体又は相同体を含むか、それらから成るか、実質的にそれらから成る。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号2で示すアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はさらに99.5%又はそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むか、それらから成るか、実質的にそれらから成る。
【0118】
M.スメグマティス・ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列を以下に示す。
【0119】
MAKRILCFGDSLTWGWVPVEDGAPTERFAPDVRWTGVLAQQLGADFEVIEEGLSARTTNIDDPTDPRLNGASYLPSCLATHLPLDLVIIMLGTNDTKAYFRRTPLDIALGMSVLVTQVLTSAGGVGTTYPAPKVLVVSPPPLAPMPHPWFQLIFEGGEQKTTELARVYSALASFMKVPFFDAGSVISTDGVDGIHFTEANNRDLGVALAEQVRSLL(配列番号2)。
【0120】
対応するポリヌクレオチド配列をコードするM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼは以下である(5’−3’)。
【0121】
ATGGCCAAGCGAATTCTGTGTTTCGGTGATTCCCTGACCTGGGGCTGGGTCCCCGTCGAAGACGGGGCACCCACCGAGCGGTTCGCCCCCGACGTGCGCTGGACCGGTGTGCTGGCCCAGCAGCTCGGAGCGGACTTCGAGGTGATCGAGGAGGGACTGAGCGCGCGCACCACCAACATCGACGACCCCACCGATCCGCGGCTCAACGGCGCGAGCTACCTGCCGTCGTGCCTCGCGACGCACCTGCCGCTCGACCTGGTGATCATCATGCTGGGCACCAACGACACCAAGGCCTACTTCCGGCGCACCCCG、CTCGACATCGCGCTGGGCATGTCGGTGCTCGTCACGCAGGTGCTCACCAGCGCGGGCGGCGTCGGCACCACGTACCCGGCACCCAAGGTGCTGGTGGTCTCGCCGCCACCGCTGGCGCCCATGCCGCACCCCTGGTTCCAGTTGATCTTCGAGGGCGGCGAGCAGAAGACCACTGAGCTCGCCCGCGTGTACAGCGCGCTCGCGTCGTTCATGAAGGTGCCGTTCTTCGACGCGGGTTCGGTGATCAGCACCGACGGCGTCGACGGAATCCACTTCACCGAGGCCAACAATCGCGATCTCGGGGTGGCCCTC、GCGGAACAGGTGCGGAGCCTGCTGTAA−3’(配列番号3)。
【0122】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号2で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼ・アミノ酸配列での位置に相当する一以上のアミノ酸位置での一以上の置換を含む。いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、M1、K3、R4、I5、L6、C7、D10、S11、L12、T13、W14、W16、G15、V17、P18、V19、D21、G22、A23、P24、T25、E26、R27、F28、A29、P30、D31、V32、R33、W34、T35、G36、L38、Q40、Q41、D45、L42、G43、A44、F46、E47、V48、I49、E50、E51、G52、L53、S54、A55、R56、T57、T58、N59、I60、D61、D62、P63、T64、D65、P66、R67、L68、N69、G70、A71、S72、Y73、S76、C77、L78、A79、L82、P83、L84、D85、L86、V87、N94、D95、T96、K97、Y99F100、R101、R102、P104、L105、D106、I107、A108、L109、G110、M111、S112、V113、L114、V115、T116、Q117、V118、L119、T120、S121、A122、G124、V125、G126、T127、T128、Y129、P146、P148、、I153、F154、I194及びF196から選ばれるアミノ酸の置換の任意の一又は任意の組み合わせを含む。
【0123】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号2で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼ・アミノ酸配列での位置に相当する一以上のアミノ酸位置での以下の一以上の置換を含む。すなわち、L12C、Q又はG、T25S、G又はP、L53H、Q、G又はS、S54V、L、A、P、T又はR、A55G又はT、R67T、Q、N、G、E、L又はF、K97R、V125S、G、R、A又はP、F154Y、F196Gである。
【0124】
いくつかの実施態様において、ペルヒドロラーゼ酵素は、配列番号2で示すM.スメグマティス・ペルヒドロラーゼ・アミノ酸配列でのアミノ酸位置に相当するアミノ酸位置でのアミノ酸置換の組み合わせを含む。すなわち、L12I+S54V、L12M+S54T、L12T+S54V、L12Q+T25S+S54V、L53H+S54V、S54P+V125R、S54V+V125G、S54V+F196G、S54V+K97R+V125G又はA55G+R67T+K97R+V125Gである。
【0125】
いくつかの実施態様において、液体懸濁液は、モノ−及びジグリセリド(例えば、アシルドナー及びアルコール受容体)又はソルビタンエステル(例えば、アシルドナー及びソルビタン)を生産するためのペルヒドロラーゼ酵素及び基質を含む。いくつかの実施態様において、液体懸濁液は、芳香族エステル、例えば、ベンジルエステル(例えば、アシルドナー及び揮発性アルコール、例えば、ベンジルアルコール)を生産するためのペルヒドロラーゼ酵素及び基質を含む。
【0126】
いくつかの実施態様において、酵素はペルヒドロラーゼである。また、送達システムは、エステル基質又はエステル基質の混合物、例えば、酢酸エステル、例えば、プロピレングリコール・ジアセテート(PGDA)、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキシル酢酸、酢酸オクチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ヘキシル・プロピオン酸塩、酢酸イソアミル、酢酸シトロネリル、プロピオン酸シトロネリル、ドデシル酢酸、ネオドル23−3酢酸、ネオドル23−9酢酸、二酢酸エチレングリコール、トリアセチン、トリブチリン、エチルメトキシ酢酸塩、酢酸リナリル、酪酸エチル、エチル・イソブチラート、エチル−2−酪酸メチル、エチル・イソバレレート、ジエチル・イソバレレート、マレイン酸ジエチル、エチル・グリコレート又はその混合物を含む。
【0127】
いくつかの実施態様において、送達システムは、同じか別個の重合体マトリックス中にカプセル化された、プロテアーゼ及び少なくとも一の他のプロテアーゼ感受性の酵素、すなわち、プロテアーゼによる加水分解が可能な酵素を含むか、又は、ここで、前記プロテアーゼ又は前記プロテアーゼ感受性の酵素の一が重合体マトリックス中にカプセル化され、別の酵素は送達システム中の液相にあり、水が送達システムに加えられるまで、前記プロテアーゼは、プロテアーゼ感受性の酵素に対し、触媒活性が実質的にない。
【0128】
キャリア液
前記送達システムは、重合体マトリックスが実質的に不溶性のキャリア液中にカプセル化された酵素に対する基質を含む。キャリア液の非限定的な例は、グリコール、非イオン性界面活性剤、アルコール、ポリグリコール及び酢酸エステルを含む。いくつかの実施態様において、キャリア液自体が酵素に対する基質である。
【0129】
任意の添加物成分
いくつかの実施態様において、送達システムは、一以上の界面活性剤、すなわち、非イオン、陰イオン、カチオン、両性、両性イオンか、半極性の非イオン性界面活性剤又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施態様において、前記送達システムは、懸濁補助剤、キレート剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤の一以上及び/又はそれらの混合物を含む。
【0130】
組成物
本発明は、本明細書に記載の酵素/基質共送達システムを含む組成物を提供する。例示的な組成物は、洗浄組成物、殺菌組成物、汚染除去組成物、繊維品加工組成物、漂白組成物、繊維品染色組成物、パーソナルケア組成物、染毛剤組成物、パルプ又は紙加工組成物、複合木材生産組成物、廃水処理組成物、ベーキング組成物、醸造組成物、飼料組成物、デンプン加工組成物及び/又はエタノール発酵組成物を含む。前記送達システムは組成物に保存されるか、又は使用時点で組成物に混合されることが出来る。
【0131】
一の実施態様において、洗浄用途での使用のための洗剤組成物を提供する。本明細書に記載の酵素/基質共送達システムに加えて、洗剤組成物は、界面活性剤、ビルダー、漂白剤、漂白前駆体、酵素安定剤、錯化剤、キレート剤、泡調節剤、防食剤、反静電気剤、染料、香料、殺菌剤、殺真菌剤及び活性剤から選ばれる一以上の洗浄成分を含むことが出来る。前記送達システムは洗剤組成物に保存されるか、又は使用時点で組成物に混合されることが出来る。
【0132】
使用方法
洗浄法
本明細書に記載の酵素/基質共送達システムは、洗浄方法で用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、本発明は、水が存在する状態で、しみを含む物と本明細書に記載の酵素/基質共送達システムを含む洗剤組成物とを接触させる工程を含む、洗浄方法を提供する。ここで、しみの少なくとも一部は除去される。本明細書の洗浄方法での使用に適した酵素は、プロテアーゼ、アミラーゼ、ペルヒドロラーゼ、オキシダーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ポリエステラーゼ、ペクチナーゼ、フェノール酸化酵素、カタラーゼ、リゾチーム及びヘミセルラーゼを含むが、それらに限られない。
【0133】
一の実施態様において、本発明は、水が存在する状態で、本明細書に記載の酵素/基質共送達システムを含む、染色された布から別の布への洗浄中の染料の転移を阻害する方法を提供する。ここで、送達システムは、漂白が可能な酵素、例えば、ラッカーゼのようなフェノール酸化酵素又はペルオキシダーゼ等を含み、ここで、染色及び/又は汚れた布地から溶脱された有色物質の少なくとも一部が漂白され、それにより、洗浄で別の布地に有色物質が再堆積することを防ぐ。
【0134】
繊維品の加工方法
本明細書に記載の前記酵素/基質共送達システムは、繊維品の加工のための方法で用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、本発明は、水が存在する状態で、繊維品の測定可能な白化を可能にし、それにより、漂白された繊維品を生産するために適した長さの時間と条件下で、繊維品と繊維品の漂白が可能な少なくとも一の酵素及び基質、例えば、過酸を生産するためのペルヒドロラーゼ及び基質又はフェノール酸化酵素、例えば、ラッカーゼ、及び漂白効果をもたらすことが可能なメジエーターを含む酵素/基質共送達システムとを接触させる工程を含む、繊維品を漂白する方法を提供する。いくつかの実施態様において、本発明は、水が存在する状態で、繊維品の測定可能な変色を可能にし、それにより、変色された繊維品を生産するために適した長さの時間と条件下で、繊維品と繊維品の変色が可能な酵素及び基質、例えば、フェノール酸化酵素、例えば、ラッカーゼ等及び変色効果をもたらすことが可能なメジエーターを含む酵素/基質共送達システムとを接触させる工程を含む、繊維品を変色する(例えば、繊維品を染色する)方法を提供する。
【0135】
いくつかの実施態様において、本発明は、単一工程に結合された繊維品の前処理のための方法を提供する。ここで、酵素/基質共送達システムは、少なくとも二種類の繊維品の加工酵素を含む。例えば、糊抜き、精錬及び漂白のための結合工程は、ペルヒドロラーゼ酵素及び本明細書に記載の基質(例えば、エステル基質及び過酸化水素源)、及びアミラーゼ及びペクチナーゼ酵素を含む。結合された精錬及び漂白工程は、ペルヒドロラーゼ酵素及び本明細書に記載の基質及びペクチナーゼ酵素を含む。結合された糊抜き及び漂白工程は、ペルヒドロラーゼ酵素及び本明細書に記載の基質及びアミラーゼ酵素を含む。本明細書に記載の結合された繊維品前処理方法中のペクチナーゼ酵素は、単独で又は一以上の他の酵素、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、クチナーゼ及び/又はヘミセルラーゼとの組み合わせで用いられることが出来る。
【0136】
ペルヒドロラーゼ酵素を用いた消毒、殺菌及び/又は汚染除去方法
本発明の酵素/基質共送達システム(及びこれらの組成物を組み込む関連システム及びキット)は、物品を汚染除去、殺菌及び/又は消毒する一連の方法で用いることが出来る。
【0137】
いくつかの実施態様において、汚染除去のための前記方法は、(a)水溶性高分子中にカプセル化されたペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含む本明細書に記載の酵素/基質共送達システムを提供する工程であって、前記活性は、少なくとも2:1の過加水分解対加水分解比率、過酸化水素源及びエステル基質を含む前記工程、(b)水に組成物を加え、重合体マトリックスを可溶化するために十分な長さの時間及び条件下で、例えば、少なくとも約20分間及び約9.0未満のpHの条件化で混合し、重量で少なくとも約0.16%の過酢酸の水溶液を生成する工程、及び(c)汚染物質を含む物品を前記溶液にさらす工程を含む。
【0138】
一の実施態様において、汚染除去のための前記方法は、(a)水溶性高分子中にカプセル化されたアシル・トランスフェラーゼ酵素、過酸化水素源及びプロピレングリコール・ジアセテートを含む酵素/基質共送達システムを提供する工程、(b)水に組成物を加え、重合体マトリックスを可溶化するために十分な長さの時間及び条件下で、例えば、少なくとも約20分間混合し、重量で少なくとも約0.16%の過酢酸の水溶液を生成する工程、及び(c)汚染物質を含む物品を前記溶液にさらす工程を含む。
【0139】
いくつかの実施態様において、過酸化水素源は、例えば、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム及び尿素過酸化水素から選ばれる過酸化水素生成化合物である。いくつかの実施態様において、過酸化水素源は、酵素システム、例えば、グルコースオキシダーゼ及びグルコースのような過酸化水素生成オキシダーゼ及びその基質である。前記過酸化水素生成オキシダーゼは、(ペルヒドロラーゼ酵素がカプセル化される重合体マトリックスと同じか又は別個の)重合体マトリックス中にカプセル化されるか、又は送達システム中の液相中に可溶化されるか懸濁されることが出来る。過酸化水素生成オキシダーゼに対する基質は、(ペルヒドロラーゼ酵素がカプセル化される重合体マトリックスと同じか又は別個の)重合体マトリックス中にカプセル化されるか、又は送達システム中の液相中に可溶化されるか懸濁されることが出来る。
【0140】
除去される特異的な種類の汚染物に依存し、過酸溶液に物品をさらす工程は、広範囲の時間スケールにわたり行われることが出来る。例えば、特定の消毒手順において、暴露時間は約30秒間、1分間、5分間又は10分間の短い長さで十分であることが出来る。しかしながら、他の用途(例えば、バイオフィルムの除去)において、適切な度合いの汚染除去を達成するために、暴露時間は、約30分間、1時間、6時間、12時間、24時間又はそれ以上のかなり長い時間、物品にさらす必要がある場合がある。
【0141】
同様に、暴露工程の間、過酸溶液の温度は、特定の種類の汚染物質に依存し調節されることが出来る。一の実施態様において、前記暴露温度は、前記溶液が調製される周囲温度、すなわち、通常約18−25℃である。他の実施態様において、より高い温度が汚染除去工程を促進するために使用されることが出来る。一般に、より高い温度は、過酸溶液の反応を加速し、それにより、汚染除去工程を加速する。従って、いくつかの実施態様において、暴露工程は、過酸溶液を用いて約30℃、37℃、45℃、50℃、60℃、75℃、90℃又はそれ以上の温度で行なわれることが出来る。
【0142】
前記方法の一の実施態様において、酵素含有重合体マトリックスは、基質が液相中に包囲され、容器が水に加えられる、水可溶性容器の形態をしている。
【0143】
汚染除去の前記方法は、ボツリヌス毒素、炭疽毒素、リシン、サバ科毒素、シグアトキシン、テトロドトキシン、マイコトキシン及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれる毒素を含む広範囲の汚染物質、及び細菌、病原体、菌類、寄生虫、プリオン及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれる病原菌に有用である。例えば、本明細書で開示する方法は、有毒化学物質、辛子、VX、炭疽胞子、ペスト菌、F.tularensis、菌類及び毒素(例えば、ボツリヌス菌及びリシン及び真菌毒素等)の他、伝染性ビリオン(例えば、フラビ・ウィルス属、オルトミクソウィルス、パラミクソウィルス、アレナウィルス、ラブドウィルス、アルボウィルス、腸内ウィルス及びブンヤウィルス等)に感染した細胞を含むが、それらに限られない物質で汚染された物質の汚染除去に用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、少なくとも一の病原体は、バチルス種、炭疽菌、クロストリディウム種、ボツリヌス菌、ガス菌、リステリア菌種、シュードモナス種、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、サルモネラ種、赤痢菌種、大腸菌、イェルシニア属種、ペスト菌、フランキセラ属種、F.tularensis、カムプリオ菌種(Camplyobacter ssp)、ビブリオ菌種、ブルセラ菌種、クリプトスポリジウム種、ギアリダ属種、シクロスポラ属種及び旋毛虫属種から選ばれる。
【0144】
本明細書に記載の送達システム及びその使用方法を用いて生成された過酸溶液は、バイオフィルムの汚染除去に効果的である。バイオフィルムの特徴の一は、そこの微生物が協力的に又は相乗的に作用するということである。経験的に、バイオフィルムに生存する微生物は、バイオフィルムの外部に生存する微生物より生物致死剤からより一層防御されることが分かっている。従って、病原性バイオフィルムの除去は、設備の汚染除去及び/又は消毒で特に難問を表わす。
【0145】
いくつかの実施態様において、過酸溶液の生成に用いられるために作られた安定した組成物は、バチルス種、炭疽菌、クロストリディウム種、ボツリヌス菌、ガス菌、リステリア菌種、シュードモナス種、ブドウ球菌種、連鎖球菌種、サルモネラ種、赤痢菌種、大腸菌、イェルシニア属種、ペスト菌、フランキセラ属種、F.tularensis、カムプリオ菌種、ビブリオ菌種、ブルセラ菌種、クリプトスポリジウム種、ギアリダ属種、シクロスポラ属種及び旋毛虫属種及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれる一以上の病原菌により形成されたものを含むバイオフィルムの除去に有用である。一の実施態様において、本発明の方法により作られた過酸溶液は、緑膿菌、黄色ブドウ球菌(SRWC−10943)、リステリア菌(ATCC 19112)及びそれらの任意の組み合わせから成る群から選ばれるバイオフィルムを汚染除去するために用いられることが出来る。
【0146】
一の実施態様において、ステンレス鋼設備を汚染するシュードモナス種、ブドウ球菌種及び/又はリステリア菌種の細菌培養を含む病原性バイオフィルムは、45℃で45分間、(酵素/基質共送達システムを含むペルヒドロラーゼから生成された)0.16%重量PAA溶液の暴露により実質的に除去(すなわち、〜500−1000倍の減少)されることが出来る。
【0147】
様々な実施態様において、本明細書に記載の送達システムを含むペルヒドロラーゼを用いた汚染除去の方法は、硬質表面、布地、食物、飼料、衣料、敷物、カーペット、繊維品、医療機器及び獣医学機器、例えば、ステンレス鋼物品及び設備等の他、製薬及びバイオテクノロジー工程で用いられる大規模反応器を含む、広範囲の汚染された物品の消毒/汚染除去に有用である。
【0148】
水溶液で生成された過酸に対する対応する酸の比率が、商品の溶液で見られるよりもはるかに高いため、本明細書に記載の送達システムを用いて酵素学的に生成された過酸溶液は、特に、ステンレス鋼物品及び設備の洗浄に良く適する。例えば、MsAcT、過炭酸塩及びプロピレングリコール・ジアセテート(PGDA)のS54V変異体の安定した組成物を用いて生成された過酢酸(PAA)溶液は、およそ10:1のPAA対酢酸の比率を有する。商品のPAA溶液は通常、PAAより多くの酢酸を有し、逆の比率(1:10)をさらに有する場合がある。PAA対酢酸の増加した比率は、PAA処理の後に、ステンレス鋼物品又は設備を不動態化するための追加の処理を実行する必要性を減少するか又は完全に除去する。従って、いくつかの実施態様において、本発明の安定した組成物を用いて生成された過酸溶液は、製薬及びバイオテクノロジーの工程で用いられる大規模な反応器を含むステンレス鋼物品及び設備を消毒するために用いられることが出来る。いくつかの実施態様において、過酸溶液は、鋼の不動態化剤を用いたそれ以上の処理を必要としないで、単一工程でステンレス鋼物品及び設備を消毒するために使用されることが出来る。
【0149】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載の送達システムは、植物、果物及び他の食物及び/又は飼料物品を含むが、それらに限られない食物及び/又は飼料の汚染除去で用いられることが出来る。実際に、本発明は果物、植物、卵、食物等の表面洗浄で使用されることが意図される。実際に、様々な食物及び/又は飼料物品からの汚染物質を除去するために、食物及び/又は飼料産業で本発明が使用されることが意図される。いくつかの実施態様において、当業者に知られる食品医薬品局及び/又は他の食品安全性事業体で示される食物及び/又は飼料の汚染除去のための方法が本発明で使用される。
【0150】
さらに別の実施態様において、汚染除去を必要とする物品は、硬質表面、布地、食物、飼料、衣料、敷物、カーペット、繊維品、医療機器及び獣医機器から選ばれる。いくつかの実施態様において、食料は果物、植物、魚、魚介類及び肉から選ばれる。いくつかのさらに別の実施態様において、硬質表面は、家庭用表面及び産業用表面から選ばれる。いくつかの実施態様において、家庭用表面は、台所カウンタートップ、流し、食器戸棚、まな板、テーブル、棚、食品調製保管場所、浴室備品、床、天井、壁及び寝室領域から選ばれる。いくつかの他の実施態様において、産業用表面は、食品加工領域、飼料処理領域、テーブル、棚、床、天井、壁、流し、まな板、飛行機、自動車、列車及びボートから選ばれる。
【0151】
キット
本発明はまた、キットの部品又は「キット(kits)」を提供する。一の実施態様において、キットは、水での希釈によるどの酵素活性が有用であるか、本明細書に記載の任意の方法(例えば、洗浄法又は繊維品の加工方法)を含む用途での使用の説明書と共に、本明細書に記載の酵素/基質共送達システムを提供する。適した包装が提供される。本明細書で用いる「包装」は、システムで慣習的に用いられ、また固定された範囲に本明細書に記載のキットの構成部分、例えば、酵素/基質共送達システム等を保持することが可能な固体マトリクス又は材料をいう。
【0152】
説明書は、印刷された形態、フロッピーディスク、CD又はDVDのような電子媒体の形態又はこのような説明書が得られることが出来るウェブサイト・アドレスの形態で提供されることが出来る。
【0153】
以下の実施例は、本発明に係る組成物及び方法を例証し、限定することは意図されない。
【実施例】
【0154】
実施例1
酵素含有ポリビニルアルコール(PVA)マトリックスをソルベントキャスティング方法を用いて調製した。1部の液状酵素濃縮液(約35mg/mlの酵素)を、9部の10%高分子溶液に加え、完全に混合した。この溶液を板ガラス上に広げ、周囲温度で乾燥させた。前記乾いたポリマーフィルムは、およそ3.5質量%酵素を含み、約50−100μmの厚みを有していた。これらのフィルムを後の試験のため、4mm直径の円形ディスクに裁断した。
【0155】
この実験で用いるPVA重合体は、二種類の異なるデュポン(DuPont)の商品グレードである。すなわち、Elvanol51−05(88%加水分解、500の公称重合度)及びElvanol71−30(98%加水分解、1500の公称重合度)である。
【0156】
酵素浸出
酵素の浸出を評価するために、ディスクをガラス・バイアル中に37℃で約46時間、プロピレングリコール・ジアセテート(PGDA)中でインキュベートした。インキュベーションの後、ディスクをガラス・バイアルから取り出し、余分なPGDAをティッシュワイパーでふき取って除去した。PVAを可溶化するためにディスクを4mlのHO中に入れた。あらかじめインキュベートされた各ディスク中の酵素活性を測定し、pNB速度アッセイを用いて、PGDA中でインキュベートされていない新たに裁断したディスクでの活性と比べた。
【0157】
前記pNB速度アッセイを次のように行った。
【0158】
反応体系:
【式1】
【0159】

アッセイ・バッファー(100mMトリスpH8.0+0.1%トリトンX−100)
1000mLを調製するため、ミリQ水に100mL 1Mトリス(pH 8.0)及び1.0mLトリトンX−100を希釈した。
【0160】
基質ストック(DMSO中の100mM p−ニトロフェニル酪酸塩)
10mLを調製するため、174.3μLのpNBを10mLのDMSOに加え、1mLアリコートに分注し、−20℃で保管した。希釈標準溶液は室温で維持でき、背景の黄色が容認し難いほど濃くなった時に廃棄される。
【0161】
単一キュベット・プロトコール
1.標準的なAAPFアッセイプログラム、25℃の温度に分光光度計を設定した。
【0162】
2.使い捨ての1mLキュベット中の1mLアッセイ・バッファーに10μL基質ストックを希釈した。25℃に平衡させた。
【0163】
3.10μl酵素溶液で反応を開始した。
【0164】
4.分光光度計を開始した。
【0165】
5.速度(ΔA410/分)を測定した。
【0166】
その結果を表1に示す。
【0167】
繊維品漂白
3個の各々3インチ×4インチの100%綿織物布見本(Testfabrics、型#428U、糊抜きされた綿繻子)及び3個の各々3インチ×4インチの綿インターロック布見本(cotton interlock swatches)を、以下の条件下でPVAペルヒドロラーゼディスクと共に及びPVAペルヒドロラーゼディスクなしでランダロメーターで洗濯した。
【0168】
溶液比率:50:1
pH7(100Mリン酸ナトリウム・バッファー)
温度:60℃
PGDA:4ml/l
(50%):4ml/l
インキュベーション時間:60分間
ペルヒドロラーゼ酵素:7個の5/32インチPVAペルヒドロラーゼディスク
100%綿繻子布見本に関しての漂白性能は、ミノルタCR−200クロマメーター(Minolta CR−200 Chromameter)を用いたCIE LΔ値の測定により数量化した。より高いCIE LΔ値は、より高い漂白効果を示す。その結果を表1に示す。前記綿インターロックはバラスト(ballast)として含まれ、インターロックの漂白は評価されなかった。
【0169】
「酵素なし」のコントロールは、PVAペルヒドロラーゼ・ディスク以外の上述の構成部分の全てを含めた。
【表1】

【0170】
実施例2
直径5/32インチの円形ディスクを、厚みが約50−100μmで、カプセル化されたペルヒドロラーゼ及びα−アミラーゼ酵素(「PVAペルヒドロラーゼ/α−アミラーゼ・ディスク」)を含むPVAフィルム(Elvanol51−05)から裁断した。前記酵素を上述のように、ただし、9部の10%高分子溶液対1部ずつのペルヒドロラーゼ濃縮液及びアミラーゼ濃縮液と共に、重合体マトリックスにカプセル化した。得られたポリマーフィルムは各酵素でおよそ2.5質量%であった。
【0171】
酵素浸出
ディスクからの酵素の浸出を評価するために、3個のディスクを密閉されたガラス・バイアル中に37℃で60時間、PGDAと共に、又はPGDAなしでインキュベートした。バイアルから回収した後、各ディスクを4ml ミリQ水で溶解した。アルファ・アミラーゼ活性は、メガザイム・インターナショナル・アイルランド・リミテッド(Megazyme International Ireland Limited)から入手可能なセラルファ(Ceralpha)速度アッセイ・キットを用いて測定した。グルコース及び遊離p−ニトロフェノールへのp−ニトロフェニル・マルトサッカリド(p−nitrophenyl maltosaccharide)断片の定量的加水分解をもたらす、過剰量の熱安定性α−グルコシダーゼが存在する状態で、ブロックされたp−ニトロフェニル・マルトヘプタオシド(p−nitrophenyl maltoheptaoside)の加水分解によりアルファ・アミラーゼ活性を評価した。ペルヒドロラーゼ活性は実施例1で記載するようにpNB速度アッセイを用いて測定した。その結果を表2に示す。ペルヒドロラーゼ活性()は、6個の測定値(ディスク当たり2個)の平均である。また、アミラーゼ活性は3個の測定値(ディスク当たり1個)の平均である。活性は両方の酵素についてΔA410/分として表わす。
【表2】

【0172】
3個の3インチ×4インチの未漂白綿繻子布見本(Testfabrics、型#428R)及び3個の3インチ×4インチの未漂白綿インターロック布見本を、以下の条件下でPVAペルヒドロラーゼ/アミラーゼ・ディスクと共に及びPVAペルヒドロラーゼ/アミラーゼ・ディスクなしでランダロメーターで洗濯した。
【0173】
溶液比率:50:1
pH:7(100Mリン酸ナトリウム・バッファー)
温度:60℃
PGDA:4ml/l
(50%):4ml/l
インキュベーション時間:60分間
酵素:15個の5/32インチPVAペルヒドロラーゼ/アミラーゼディスク。
【0174】
糊抜きを評価するため、5/8インチ布地ディスクを個々の処理された未漂白の布見本から裁断した。次に、前記ディスクを室温で1分間、ヨード液で色付けした。次に、前記布地ディスクを冷水で濯ぎ、ワイパーで軽く叩き、その後ディスクの色をミノルタCR−200クロマメーターを用いて測定した。CIE LΔ値を、ヨード染色の深度を数量化するために計算した。漂白性能を実施例1で記載するように布見本で評価した。布地ディスク上のより薄い色は、より少ないデンプンが存在することを示し、より高い糊抜きの効果があることを示す。その結果を表3に示す。
【表3】

【0175】
実施例3
PCT出願番号WO2008/076322で記載される、Cerrena unicolorのラッカーゼ酵素を、室温で水に溶けるElvanol52−22ポリビニルアルコール(88%加水分解、1300の公称重合度)にカプセル化した。前記重合体膜に、1.5質量%ラッカーゼ、発酵に由来する8.5質量%非酵素性限外濾過濃縮固形物及び90質量%重合体を含めた。直径5/32インチの円形ディスクを、カプセル化されたラッカーゼ酵素(「PVAラッカーゼ・ディスク」)を含むPVAフィルムから裁断した。実施例1で記載するように前記酵素を重合体でカプセル化した。
【0176】
酵素浸出
PVAラッカーゼ・ディスクから浸出する酵素を、その酵素に対する基質としての三種類の異なるラッカーゼ・メディエーターを用いて評価した。
【0177】
1.ABTS
二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを、重量で1%のABTS(二アンモニウム2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸塩))を含む1mlのPGDA溶液を含むガラス・バイアルに挿入し、室温で10日間インキュベートした(図2中バイアル「2」)。PVAラッカーゼ・ディスクは含まないが前記と同じ調製物をネガティブ・コントロールとして調製した(図2中バイアル「1」)。加えて、二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを100μlの脱イオン水で溶解し、次に、ポジティブコントロールとして1%ABTSを含む1mlのPGDAが入ったバイアルに加えた(図2中バイアル「3」)。これらの溶液の色変化を酵素浸出の表示としてモニタリングした。
【0178】
室温で10日間のインキュベーションの後、バイアル1及び2では色変化が観察されなかった。しかしながら、溶解されたラッカーゼをバイアルに加えた後すぐに、バイアル3中の溶液の色は濃い緑に変化し、ラッカーゼとメジエーターの反応を示した。
【0179】
2.SA
二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを、重量で1%のシリンガミド(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンズアミド、「SA」)を含む1mlのPGDA溶液を含むガラス・バイアルに挿入し、室温で10日間インキュベートした(図3中の「4」)。PVAラッカーゼ・ディスクは含まないが前記と同じ調製物をネガティブ・コントロールとして調製した(図3中の「5」)。加えて、二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを100μlの脱イオン水で溶解し、次に、ポジティブコントロールとして1%SAを含む1mlのPGDAが入ったバイアルに加えた(図3中の「6」)。
【0180】
溶解されたラッカーゼ(「6」)を含む前記溶液の色は、淡黄色から茶色へ変化した。これは、ラッカーゼがメジエーターと反応したことを示す。しかしながら、カプセル化された酵素ディスク(「4」)を含む同じ調製物は、10日間のインキュベーションの後にも色が変化しなかった。また、これらの結果は、カプセル化されたラッカーゼがPGDA溶液中のSAと反応しなかったことを示す。
【0181】
室温での10日間のインキュベーションの後、インキュベートした溶液を遠心分離機にかけ、420nmの吸光度を分光光度計で測定した。その結果を表4に示す。
【表4】

【0182】
3.SN
二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを、重量で5%のシリンゴニトリル(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンゾニトリル、「SN」)を含む1mlのPGDA溶液を含むガラス・バイアルに挿入し、室温で10日間インキュベートした(図4中の「8」)。PVAラッカーゼ・ディスクは含まないが前記と同じ調製物をネガティブ・コントロールとして調製した(図4中の「7」)。加えて、二種類のPVAラッカーゼ・ディスクを100μlの脱イオン水で溶解し、次に、ポジティブコントロールとして1%SNを含む1mlのPGDAが入ったバイアルに加えた(図4中の「9」)。
【0183】
1時間以内に、バイアル9の色はウグイス色に変化した。これは、ラッカーゼがSNと反応したことを示す。バイアル7及び8の色は、10日間のインキュベーションの後も変化がなかった。
【0184】
応用試験
デニム調製
糊抜きされた硫黄底部/インジゴ染色デニム及び糊抜きされた100%インジゴ染色デニムを、10:1溶液比率で55℃及びpH4.8で60分間、1g/L INDIAGE(登録商標)44Lセルラーゼを含むUnimac(50ポンド実験室スケール)回転洗濯機で処理し、次に2度濯いだ後に乾燥させた。
【0185】
下記の12穴マイクロタイタープレート実験のために、直径5/8インチの円形布見本をセルラーゼで前処理されたデニム生地から裁断した。下記のランダロメーター実験のために、3インチ×4インチの布見本をセルラーゼで前処理されたデニム生地から裁断し、次に処理中に端がほつれることを防ぐために端を縫った。
【0186】
漂白性能の評価
漂白効果を数量化するため、ミノルタのクロマメーターCR−200を用いた処理前後に、各デニム生地布見本の反射率計の記録を取った。合計色差(ΔE)は下記の式に従って計算した。
【式2】
【0187】

(ここで、ΔL、Δa、Δbは、ラッカーゼ漂白前後のそれぞれCIE LΔ、CIE aΔ及びCIE bΔ値での差である)。
【0188】
12穴マイクロタイタープレート実験
直径5/8インチの前処理されたデニム布見本を、以下の条件下で12穴マイクロタイタープレート中でインキュベートした。
【0189】
1.バッファーのみ
2.バッファー+5%SNを含む50μlのPGDA溶液
3.バッファー+5%SNを含む50μlのPGDA溶液+カプセル化されたラッカーゼ
・12穴マイクロタイタープレート・アッセイ(2mlの反応体積)
・pH:6(水中の50mM酢酸ナトリウム・バッファー)
・温度:60℃
・インキュベーション時間:60分間
・酵素:試験当たり5,5/32インチ・ディスクのラッカーゼカプセル化フィルム
・メジエーター:試験当たり5%シリンゴニトリルを含む50μlのPGDA溶液
その結果を図5に示す。デニム布見本がPVAラッカーゼ・ディスクと共にインキュベートされた時に劇的な漂白効果が観察された。この結果は、水が、ラッカーゼがカプセル化された重合体膜からのラッカーゼの遊離を引き起こし、ラッカーゼをメジエーターに到達させ、その結果、メジエーターと酵素との反応をもたらし漂白を起こしたことを明白に示した。
【0190】
ランダロメーター実験
3インチ×4インチのセルラーゼで前処理されたデニム布見本を、以下の条件下、ランダロメーター中でインキュベートした。
【0191】
(A)5%SNを含む1mlのPGDA溶液
(B)5%SNを含む1mlのPGDA溶液及び0.15gのカプセル化されたラッカーゼ
(C)5%ABTSを含む1mlのPGDA溶液
(D)5%ABTSを含む1mlのPGDA溶液及び0.15gのカプセル化されたラッカーゼ
・ランダロメーター(250mlの合計反応体積)
・pH:6(水中の50mM酢酸ナトリウム・バッファー)
・温度:60℃
・インキュベーション時間:60分間
・酵素:0.15gのカプセル化されたラッカーゼ・フィルムを小さな無作為の断片に裁断した
・メジエーター:
oシリンゴニトリル(SN)
o二アンモニウム2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸塩)(ABTS)
その結果を表5及び図6に示す。調製物(B)(ラッカーゼ+SN共送達システム)と共に処理された前記デニム布見本は、有意に漂白された。調製物(D)(ラッカーゼ+ABTS共送達システム)と共に処理されたデニム布見本の色は、薄い紫色に染色した。
【表5】

【0192】
実施例4
安定化酵素漂白システム
この実施例は、重合体マトリックス内の酵素のカプセル化が、単一ボトルの酵素性漂白システム又は酵素性殺菌システムを安定させるためにどのように使用されることが出来るか実証する。前記単一ボトル・システムは水での希釈により過酢酸を生成するように設計されている。その構成部分は、過ホウ酸ナトリウム、プロピレングリコール・ジアセテート(PGDA)及びアリールエステラーゼ(arylesterase)(ArE)、及び非水性キャリア流体である。この実施態様において、キャリア流体は、アルコール・エトキシレート非イオン性界面活性剤であった(Sasol社、ハンブルク、ドイツのNovel1012−6)。
【0193】
前記ArE酵素構成部分を二種類の方法でシステムに加えた。(1)液状酵素濃縮物から直接及び(2)スプレー乾燥粉として重合体中にカプセル化した。前記重合体は、ヒドロキシプロピル・メチルセルロースであった(ダウ・ケミカル社、ミッドランド、ミシガン州、米国のHPMC、Methocel E5 Premium LV)。乾燥粉が(質量で)75%HPMCになるように、前記噴霧乾燥を行った。
【0194】
酵素濃縮液及びカプセル化された酵素の両方について、12.5μgの活性ArEを、1gのキャリア流体、135mgの過ホウ酸ナトリウム及び2mgのPGDAを含む6本の試験管の各々に加えた。6本のチューブの各セットについて、前記チューブの3本を(9mlのトリス、pH9.0、バッファーでの希釈により)誘発し、下記のように過酢酸について分析した。他の3本のチューブを37℃で5日間インキュベートし、誘発した後、過酢酸について分析した。
【0195】
過酢酸の分析
材料及び方法:
・過酢酸:シグマ−Fluka P/N77240、L/N11244491、38.8%(5.115M、F.W.=76.05g/mol)、AのCの通りの過酢酸
・2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(ABTS):Fluka P/N WA10917、L/N1135552 54804068、99+%純度(HPLC)、F.W.=548.64g/mol
・クエン酸:シグマP/N C1857、L/N0054K0001、F.W.=192.13
・ヨウ化カリウム(KI):P/NシグマP4286、L/N 124K0151、F.W.=166.0
ストック溶液:
・125mMクエン酸。NaOHで5.0へpHを調節した。細菌濾過器0.22μm。(通常このpHでは菌類の)増殖が見られるまで室温で無期限に安定している
・ミリQ(MQ)HO中の100mM ABTS。500μLアリコートに分注し、6か月以内の間、−20℃で保存した
・MQ HO中の25mM KI。室温で無期限に安定している。
【0196】
希釈標準基質:
1.耐光性の容器(アルミニウムフォイルに包まれたガラス瓶が許容される)に50mLのストック125mMクエン酸バッファーを加える。
【0197】
2.一の500μLアリコートのABTSストックを溶かし、クエン酸溶液に加える。
【0198】
3.クエン酸に100μLの25mM KIを加える。
【0199】
4.混合するまで静かに旋回し、蓋を被せる。室温の暗所に保存された場合、溶液は54時間以内で有効である。
【0200】
標準曲線の調製:
1.原液過酢酸(通常〜39%、〜390g/L、390(g/L))/76.05(g/モル)〜5.13Mを得る。注意:この有効濃度は、CofA上で報告された実際のアッセイ数で測定される。
【0201】
2.原液PAAの1:100希釈液を作り、125mMクエン酸にする。蓋をし、15秒間ボルテックスする。
【0202】
3.工程2の1:100希釈液を得、それを1:100に希釈する(これは、原液PAAの1:10000希釈液を作ることになる)。蓋をし、15秒間ボルテックスする。このPAAの濃度はこれで〜5000mM/10000=〜0.5mM=〜500uMである。
【0203】
4.工程3の溶液を得、4部の標準液(工程3からの〜500uM標準液)対1部のクエン酸に希釈し、400uM前後の標準液を作る。
【0204】
5.工程3の溶液を得、3部の標準液(工程3からの〜500uM標準液)対2部のクエン酸に希釈し、300uM前後の標準液を作る。
【0205】
6.工程3の溶液を得、2部の標準液(工程3からの〜500uM標準液)対3部のクエン酸に希釈し、200uM前後の標準液を作る。
【0206】
7.工程3の溶液を得、1部の標準液(工程3からの〜500uM標準液)対4部のクエン酸に希釈し、100uM前後の標準液を作る。
【0207】
アッセイ:
1. マイクロタイタープレートにおいて、全ての標準液の20μlを3ウェルずつ横列構成又は縦列構成のいずれかの順で下降希釈に置いた(ウェル当たり1標準液)。
【0208】
2. 標準曲線の末端の3ウェルにクエン酸の20μlを入れた(これらはブランクである)。
【0209】
3. 別個の横列又は縦列中に、希釈されたサンプルの20μlを3ウェルずつ入れた。
【0210】
4. 基質用のくぼ地(又は清潔なペトリ皿の蓋又は底部、又は清潔なピペットのチップボックスの蓋)に希釈標準基質の適当量を注いだ。
【0211】
5. 多重チャンネルのピペットを用いて、標準、ブランク及びサンプルが入ったマイクロタイタープレートの各々のウェルに基質の200μlを加えた。
【0212】
6. タイマーを用いて、反応を3分間(+/−0.5分)行った。
【0213】
7. マイクロプレート測定器中のウェルを420nmで測定した。
【0214】
8. データをエクセルに移すか、又はプレート測定器のプログラムを用いて標準曲線を生成し、勾配を計算し、また規格データを用いた線形回帰によりy切片を計算した(平均値及びSD等を計算する)。
【0215】
9. y=m*x+bを用いた勾配及び切片を用いてサンプル濃度を計算し、サンプル希釈比を掛けた。
【0216】
結果
3本のチューブの各セットの前記過酢酸の結果を平均し、作表した。その結果を表6に示した。前記カプセル化されたサンプルは、37℃で5日後に、有意に増加した安定性を実証した。
【表6】

【0217】
先の発明を理解の明確化の目的のため、例証及び実施例としてある程度詳細に記載してきたが、特定の変更及び修飾が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施され得ることは当業者に明らかである。従って、その説明は本発明の範囲の限定として解釈されるべきでない。本明細書によって引用される全ての出版物、特許及び特許出願は、あたかも各々個々の出版物、特許又は特許出願が特別に及び個別に参考により本明細書に組み込まれているかのように、本明細書によって引用される全ての出版物、特許及び特許出願は、全ての目的のためそれらの全てが同じ程度に参考により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共配合された酵素及び基質のための液体送達システムであって、前記送達システムは酵素及びその酵素に対する基質を含む組成物であり、前記酵素は水溶性の重合体マトリックス中にカプセル化される、前記送達システム。
【請求項2】
前記基質は、酵素がカプセル化された重合体マトリックスと接した、実質的に非水性の液相中に存在し、前記重合体は前記液相中で可溶性でない、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記実質的に非水性の液相が約5%未満の水を含む、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記実質的に非水性の液相が約1%未満の水を含む、請求項2に記載の送達システム。
【請求項5】
前記実質的に非水性の液相が約0.5%未満の水を含む、請求項2に記載の送達システム。
【請求項6】
前記酵素は重合体マトリックス中で触媒潜在能力を保持するが、25℃で少なくとも10日間、組成物中の基質と実質的に反応しない、請求項2に記載の送達システム。
【請求項7】
前記組成物への水の追加の後、前記重合体マトリックスが可溶化し、酵素を放出し、前記基質との触媒反応が起こることを可能にする、請求項1に記載の送達システム。
【請求項8】
プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、ペルヒドロラーゼ、ペルオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、フェノール酸化酵素、クチナーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ及びそれらの混合物から成る群から選ばれる一以上の酵素を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項9】
同じ重合体マトリックス中にカプセル化された二以上の酵素を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項10】
別個の重合体マトリックス中にカプセル化された二以上の酵素を含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項11】
少なくとも一の界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項12】
前記重合体マトリックスが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム及びそれらの誘導体又は共重合体から成る群から選ばれる、請求項1に記載の送達システム。
【請求項13】
重合体マトリックス中にカプセル化された前記酵素が、前記基質を含む実質的に非水性の液体中に懸濁された粒子状物質の状態である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項14】
前記粒子状物質が懸濁補助剤により懸濁液中に保持される、請求項13に記載の送達システム。
【請求項15】
前記基質が非水性の液体(キャリア流体)を任意に含み得る実質的に非水性の液相中に可溶化されるか又は分散される、請求項1に記載の送達システム。
【請求項16】
前記キャリア流体が、グリコール、非イオン性界面活性剤、アルコール、ポリグリコール、酢酸エステル及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項15に記載の送達システム。
【請求項17】
前記キャリア流体が前記酵素に対する基質である、請求項15に記載の送達システム。
【請求項18】
前記酵素がペルヒドロラーゼであり、前記基質がエステル基質である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項19】
前記酵素がペルヒドロラーゼであり、前記基質がプロピレングリコール・ジアセテートである、請求項1に記載の送達システム。
【請求項20】
過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム及び尿素過酸化水素から選ばれる過酸化水素生成化合物をさらに含み、水が前記組成物に加えられた後に過酸が生産される、請求項1−19のいずれかに記載の送達システム。
【請求項21】
前記酵素がラッカーゼ酵素であり、前記基質はラッカーゼ・メディエーターである、請求項1に記載の送達システム。
【請求項22】
前記酵素がフェノール酸化酵素であり、前記基質が2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸塩)、シリンガミド及びシリンゴニトリルから成る群から選ばれる、請求項1に記載の送達システム。
【請求項23】
前記酵素がペルヒドロラーゼであり、前記基質がエステル基質であり、前記送達システムが過ホウ酸ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項24】
重合体を欠く匹敵する送達システムと比べ、前記送達システムが増加された保存安定性を有する、請求項23に記載の送達システム。
【請求項25】
請求項1−22のいずれかに記載の共配合された酵素及び基質のための送達システム及び使用説明書を含むキット。
【請求項26】
(a)過酸化水素源が存在する状態で請求項18−20のいずれかに記載の送達システムを水に加え混合し、それにより水溶性の過酸溶液を生成する工程、及び(b)繊維品の測定可能な白化を可能にするために適した長さの時間及び条件下で、繊維品と前記溶液を接触させ、それにより漂白された繊維品を生産する工程を含む、繊維品を漂白する方法。
【請求項27】
(a)過酸化水素源が存在する状態で請求項18−20のいずれかに記載の送達システムを水に加え混合し、それにより水溶性の過酸溶液を生成する工程、及び(b)汚染物質を含む物品と前記溶液とを接触させ、それにより汚染物質の濃度を減少させる工程を含む、汚染除去の方法。
【請求項28】
前記過酸化水素源が過ホウ酸ナトリウムである、請求項26又は27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−508295(P2012−508295A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535620(P2011−535620)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063085
【国際公開番号】WO2010/062745
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】