説明

共鳴エネルギー移動に基づく院内感染検出

【課題】院内感染を検出するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、感染初期段階で、患者及び/または医療提供者に対して、病原体の存在を警告するのに使用することができる。本発明の方法は、フェルスター型共鳴エネルギー移動(FRET)機構または生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)機構に従って互いに光学的に相互作用する蛍光色素分子対を使用する。前記分子対の一方が、標的病原体により発現される酵素に対して特異的な基質によって検出装置(光ファイバ)に結合される。前記酵素が前記基質と互いに相互作用すると、光学的に検出可能な信号が生成または変化される。したがって、前記信号の生成または変化を検出することによって、検査部位に病原体が存在するという情報を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴エネルギー移動に基づいた、院内感染の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)は、院内感染(HAI)によって毎年150万人ないし300万人が死亡していると推定している。院内感染と一般的に呼ばれているが、院内感染はあらゆる医療サービス施設での治療によって発生し、一般的に、患者の原病状に対する2次的な感染と定義されている。米国では、HAIは、救急治療入院患者全体の5%で発生していると推定され、45億ドルを超える医療コストがかかっている。米国の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)による米国の病院の調査によれば、2002年には、約170万人がHAIに感染しており、約9万9千人が死亡している。CDCは、「HAIの患者数は、あらゆる現在の届出疾患の患者数を超えており、病院でのHAIによる死亡者数は、米国の人口動態統計の死亡原因の上位10位のうちのいくつかに起因する死亡者数を超えている」と報告している(疾病対策予防センター、「医療ケア関連疾患の推定」、2007年5月30日)。
【0003】
HAIには、手術部位感染(SSI)、カテーテル関連血流感染(CRBSI)、尿路感染(UTI)及び人工呼吸器関連肺炎(VAP)などが含まれ、細菌、ウイルス、菌類または寄生虫により引き起こされ得る。例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌などの細菌性生物、カンジダ・アルビカンス及びカンジダ・グラブラタなどの酵母、アスペルギルス属及びサッカロミケス属などの菌類、並びに、パラインフルエンザ及びノロウイルスなどのウイルスが一般的な原因である。
【0004】
例えば手洗い及び手袋のための材料及び技術の改良などのHAIを予防するための継続的な努力がなされているが、そのような努力はあまり成功していない。HAIの予防と意識向上の目的で、政府は病院及び医療提供者に対する監督を強化しており、感染の種類をモニタして報告するように法令で定めている。しかし、病院の外来業務が普及し、患者の帰宅後にHAIが判明する場合が増えてきているため、前述したような対策はますます困難になっている。そのため、しばらくの間は診断未確定のまま感染が進行するため、治療及び回復は困難なものとなる。
【0005】
HAIを診断するための改良された方法が現在必要とされている。さらに、外来診察において、HAIの初期兆候について患者をモニタリングすることができる方法は、非常に有益であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,625,048号明細書
【特許文献2】米国特許第5,777,079号明細書
【特許文献3】米国特許第5,804,387号明細書
【特許文献4】米国特許第4,748,116号明細書
【特許文献5】米国特許第5,786,137号明細書
【特許文献6】米国特許第6,197,537号明細書
【特許文献7】米国特許第6,485,926号明細書
【特許文献8】米国特許第5,464,739号明細書
【特許文献9】米国特許第5,663,044号明細書
【特許文献10】米国特許第5,750,359号明細書
【特許文献11】米国特許第4,657,855号明細書
【特許文献12】日本国特許第03210193号
【特許文献13】米国特許第6,289,238号明細書
【特許文献14】米国特許第6,441,747号明細書
【特許文献15】米国特許第6,802,811号明細書
【特許文献16】米国特許第6,659,947号明細書
【特許文献17】米国特許第7,294,105号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、院内感染源である病原体の存在または量を検出するための方法が提供される。一実施形態では、第1の分子群が直接的または間接的に結合された光ファイバを或る環境内に配置するステップを含む。前記第1の分子群は、アクセプタ分子を含む。加えて、前記第1の分子群のうちの1つ分子は、前記病原体により発現される酵素の標的基質を有するテザーによって前記光ファイバに結合される。この方法はまた、ドナー分子に対して特異的な励起信号を、前記光ファイバを介して送信するステップを含む。
【0008】
前記標的病原体により発現された酵素の存在により、前記テザーの前記基質は切断される。この方法はまた、前記テザーの切断後に、光学的に検出可能な発光信号を前記第1の分子群が結合された領域から送信するステップと、前記環境内における前記病原体の存在または量を検出するステップとを含む。
【0009】
また、病原体の存在または量を検出するための携帯型装置が提供される。この携帯型装置は、例えば、携帯型筐体を含む。携帯型筐体は、その内部に、電源と、光検出器と、信号処理部と、前記病原体により発現された酵素の検出時に信号を発する信号装置とを収容している。この携帯型装置はまた、前記筐体をユーザの衣服または身体に取り付けるための取り付け手段と、前記光検出器と光学的に接続され、前記筐体から外側へ或る長さで延出し、かつ検査環境内に挿入される光ファイバケーブルとをさらに含む。加えて、前記光ファイバケーブルは、分子群(例えば、FRET対またはBRET群)が直接的または間接的に結合された光ファイバを含み得る。
【0010】
本発明の他の特徴及び態様を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示(ベストモードを含む)が、添付図面を参照して本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0012】
【図1】病原体の検出方法の一実施形態を示す概略図。
【図2】病原体の検出方法の他の実施形態を示す概略図。
【図3】病原体の検出方法の別の実施形態を示す概略図。
【図4A】本発明の装置に組み込まれ得る光ファイバケーブルを示す概略図。
【図4B】本発明の装置に組み込まれ得る光ファイバケーブルを示す概略図。
【図4C】本発明の装置に組み込まれ得る光ファイバケーブルを示す概略図。
【図4D】本発明の装置に組み込まれ得る光ファイバケーブルを示す概略図。
【図5】本発明の携帯型装置の一部を示す概略図。
【0013】
本明細書及び図面において繰り返し使用される参照符号は、本発明の同一または類似の機構または要素を示すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の様々な実施形態を詳細に説明し、1若しくは複数の実施例を以下に説明する。各実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。実際、本発明の範囲及び精神から逸脱しない限り、様々な変形及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明された機構を、別の実施形態に用いてさらなる別の実施形態を創出することも可能である。したがって、そのような変形または変更は、添付した特許請求の範囲及びその均等物の範囲及び精神から逸脱しない限り、本発明に含まれるものとする。
【0015】
本発明は、一般的に、HAIすなわち院内感染を検出するための方法に関する。一実施形態では、本発明の方法は、感染可能性部位の継続的なインビボ(生体内)モニタリングのために用いるか、あるいは、患者及び/または医療提供者に対して病原体の存在を感染初期段階で警告し、それにより、早期の治療介入を提供し、感染からの回復率を向上させるために用いることができる。別の実施形態では、本発明の方法は、患者から採取した液体または組織サンプル内における病原体の存在を検査するためのインビトロ試験に用いることができる。
【0016】
本発明の方法によれば、あらゆるHAI源が検出可能である。例えば、一部の実施形態では、大腸菌、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌などの一般的な細菌源を特に対象にしているが、本発明の方法はこれらの細菌に限定されるものではない。本発明の方法に従って検出可能な他の一般的なHAI源には、前述した酵母、真菌、ウイルス、及び寄生虫源の他にも、これらに限定しないが、例えば、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、エンテロコッカス種、エンテロバクター種、肺炎桿菌、ミラビリス変形菌、連鎖球菌種などの他の細菌源が含まれる。
【0017】
本発明の検出方法は、共鳴エネルギー移動(resonance energy transfer:RET)機構に従って互いに相互作用する分子対からの光信号を、光ファイバを使用して検出する。具体的には、前記分子対は、フェルスター型共鳴エネルギー移動(Forster resonance energy transfer:FRET)機構に従って、ある実施形態では生物発光共鳴エネルギー移動(bioluminescence resonance energy transfer:BRET)機構に従って互いに相互作用する。本発明の方法によれば、RET機構に従って互いに相互作用する分子対から放出される光学的に検出可能な信号は、標的病原体の存在に応じて、開始、終了または変化する。したがって、前記分子対から放出される光信号の特性変化を検出することにより、病原体の存在及びHAIの可能性を検知することができる。
【0018】
FRET及びBRETは既知の機構であり、ドナー分子とアクセプタ分子との間の非放射性かつ長距離の双極子間結合により、ドナー分子からアクセプタ分子へエネルギーが移動する。FRET機構及びBRET機構の両方では、励起状態のドナー分子の発光ピークは、アクセプタ分子の励起ピークと重なっている。したがって、ドナー分子とアクセプタ分子とが十分に接近すると(一般的に、約1nmないし約9nm)、ドナー分子は励起状態となり、ドナー分子からアクセプタ分子へエネルギーが移動する。このとき、本システムからの発光はアクセプタ分子の光学特性に従って主に規定される。対照的に、ドナー分子とアクセプタ分子との距離が大きい場合は、両分子間での共鳴エネルギーが発生しない。このとき、ドナーは励起状態にあり、ドナーの発光特性が支配的となる。当該技術分野では公知のように、RET機構に従ってドナー分子からアクセプタ分子へのエネルギー移動を確実にするための両分子間の距離の許容範囲は、ドナー及びアクセプタのスペクトル特性に依存する。
【0019】
BRETはFRETの一形態である。上述したように、FRET機構では、ドナー分子及びアクセプタ分子が互いに相互作用する。一方、BRETの場合、ドナー分子は、化学的補因子との相互作用時に信号を発する生物発光分子であり得る。例えば、BRET対のドナー分子は、細菌性ルシフェラーゼ酵素反応の生成物であり得る。細菌性ルシフェラーゼは、2つのタンパク質サブユニットα及びβを互いに結合させて作成した混合機能オキシダーゼである。この2つのサブユニットを互いに結合させると、長鎖アルデヒド(例えば、ルシフェリン)のフラビン媒介水酸化を触媒してカルボン酸及び励起フラブンを生成する2鎖錯体が形成される。前記フラビンが減衰して基底状態になると、光学的に検出可能な信号が発される。したがって、BRETシステムは、ルシフェリン/ルシフェラーゼの相互作用を利用してドナー・アクセプタ対のドナー分子を生成することができるので、ドナー・アクセプタ対間でのエネルギー移動を開始させるための外部励起エネルギー源が不要となる。
【0020】
様々なFRET及びBRETのドナー・アクセプタ対が当該技術分野で知られており、例えば、緑色蛍光タンパク質やその色変異体などの蛍光色素分子が挙げられる。天然の緑色蛍光タンパク質は、元々はオワンクラゲ(Aequorea victoria、Aequorea aequorea、Aequorea forskalea)から単離された、238個のアミノ酸(26.9kDa)を含むタンパク質であり、青色光に曝されると緑色蛍光を発する。緑色蛍光タンパク質の様々な変異体が、当該技術分野で知られており、例えば、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)などが挙げられる。他には、この参照により本明細書に組み込まれる、Tsienらによる米国特許第5,625,048号明細書(特許文献1)及び米国特許第5,777,079号明細書(特許文献2)に、野生型のGFPとは互い異なる放射及び励起スペクトルを有する改変GFPが記載されている。また、この参照により本明細書に組み込まれる、Cormackらによる米国特許第5,804,387号明細書(特許文献3)には、改変された励起及び放射スペクトルを有するGFP変異体が記載されている。
【0021】
次の表1は、本発明に使用することができるドナー・アクセプタ対の非限定的な一覧を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
様々な実施形態では、アクセプタが蛍光性でない場合もあり得る(例えば、Chenらによる「Analytical Biochemistry, 1988, 172:61-77」を参照されたい)。アクセプタは、ドナーに対するクエンチング効果を有するので、アクセプタが蛍光性でない場合は、移動したエネルギーは、周囲媒体を通じて消散され得る。そのため、この場合は、ドナー及びアクセプタが互いに十分に接近してドナーが励起状態となると、ドナー・アクセプタ対からの発光はほとんどまたは全く検出されない。一方、ドナー及びアクセプタが互いに離間すると、ドナーは励起時にその特徴的な放出ピークで発光する。
【0024】
図1は、本発明の病原体検出方法の代表的な一実施形態を示す。この実施形態では、ドナー120及びアクセプタ122の対は互いに近接した状態で光ファイバ106上に結合されている。
【0025】
光ファイバ106は、それを通じて光が伝達されるコア130と、外側クラッド層132とを含む。コア材料とクラッド材料と屈折率の差が、コア/クラッド界面において内部全反射が生じる臨界角θを規定する。したがって、臨界角を超える角度で前記界面に入射した光線は完全に反射されるので、光ファイバによる光の伝達が可能となる。
【0026】
光ファイバ106は、一般的に、約10mmを超えるコア直径を有するマルチモードファイバであり得る。任意の特定の実施形態での好ましいコア直径は、いくつかあるシステムパラメータのうちで特に、励起光の特性(必要とされる場合)及び/または発光の特性に依存し得る。例えば、励起源がレーザである実施形態では、コア直径は、約50mmないし約100mmであり得、例えば一実施形態では約80mmであり得る。他の実施形態では、例えば、発光ダイオード(LED)を使用した場合などの励起光源がレスコヒーレント放射(less coherent radiation)を生成する実施形態では、より大きい、例えば約90mmないし約400mmのコア直径を有する光ファイバ106を使用することが好ましい。
【0027】
ファイバ106のコア130とクラッド132との間の境界は、ステップインデックス型ファイバのように急激か、あるいはグレーデッドインデックス型ファイバのように緩やかであり得る。グレーデッドインデックス型ファイバはファイバを通じて伝達されるマルチモードの分散を減少させるのである実施形態では好ましい。しかし、グレーデッドインデックス型ファイバの使用は本発明の方法において必須ではなく、特に、光ファイバ106の長さが分散についての大きな懸念を持たない長さである実施形態の場合は、その代わりに、ステップインデックス型ファイバを使用することもできる。
【0028】
光ファイバ106は、例えばインビボ(生体内)部位などの対象部位に比較的長期間留置することができる生体適合性材料から作成することが好ましい。したがって、本発明の方法の一実施形態は、治癒過程を通じて及び/またはHAIが発生する可能性の高い期間が経過するまで、或る部位を感染についてモニタリングするのに用いられる。加えて、光ファイバの断面積は小さいので、光ファイバ106は、インビボ部位から該部位の組織を過度に損傷させることなく容易に除去することができる。
【0029】
光ファイバ106のコア130及びクラッド132は、屈折率において互いに適切な差異を示す任意の適切な材料から作成され得る。例えば、当該技術分野で公知のように、適切なガラスには、これらに限定しないが、シリカガラス、フッ化ジルコネートガラス、フルオロアルミン酸塩ガラス、カルコゲナイドガラス、ドープガラスなどが含まれる。ポリマー光ファイバ(POF)もまた、本発明に包含される。例えば、適切なアクリレート製のコア/クラッドの組み合わせ(例えば、ポリメチルメタクリレート)から作成された光ファイバ使用され得る。ある実施形態では、光ファイバの曲げに起因するPOFでは一般的な損失を低減させるために、マルチコアPOFを使用することが好ましい。このことは、光ファイバ106が使用中に非線形に配置される実施形態では好ましい。
【0030】
図1を再び参照して、ドナー分子120及びアクセプタ分子122は、両分子間での共鳴エネルギー移動が発生し得るように互いに近接した状態(すなわち、互いに約1nmないし約10nm離間した状態)で光ファイバ106に結合されている。一般に、ドナー120及びアクセプタ122は、最大でRoの約2倍の距離で互いに離間している。Roは、フェルスター距離であり、エネルギー移動効率が約50%の距離と定義される。言い換えれば、Roは、励起状態のドナーの50%がFRETに起因して不活性化となる距離である。Roでは、共鳴エネルギー移動と光子の放射発光との可能性は互いに等しい。エネルギー移動効率は、ドナー発光スペクトルとアクセプタ吸収スペクトルとの間の重複角度の測定単位である。このことにより、前記分子対の各分子間の距離及び相対方位の決定を可能にする。加えて、ドナー分子120及びアクセプタ分子122は、前記分子対からの発光が光ファイバ106のコア130に入射し、コア130に沿って伝達されるように、光ファイバ106に結合させることもできる。
【0031】
図示するように、例えば、ドナー分子120及びアクセプタ分子122は、光ファイバ106の終端部において光ファイバに結合させることができる。あるいは、ドナー分子120及びアクセプタ分子122の対は、クラッド132の全部または一部が除去された、光ファイバ106に沿った領域127に結合させることができる。詳細には、ドナー分子120及びアクセプタ分子122は、コア130のエバネッセント場に結合される。クラッド132の全部または一部を除去する方法は当該技術分野では公知であり、それらの任意の方法を用いてコア130のエバネッセント場内にドナー/アクセプタ対の結合領域127を形成することができる。例えば、フッ化水素酸を含む溶液を光ファイバ106の一部に或る期間に渡って塗布し、塗布した部分のクラッドを溶解させることもできる。別の実施形態では、物理的に剥離して、クラッド132の一部を除去する。
【0032】
ドナー分子120は、様々な公知の技術のいずれかを用いて、テザー125を介して光ファイバ106に結合される。例えば、ドナー分子120の光ファイバ106への共有結合が、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ブロムアセチル基、ヨードアセチル基、チオール基、エポキシ基、及び他の反応性または結合性官能基を用いて実現される。別の実施形態では、培養時にテザーを光ファイバに単純に吸着させる表面吸着技術を用いることができる。
【0033】
アクセプタ分子122は、テザー126を介して光ファイバ106に結合される。様々な実施形態では、テザー126は基質を有する。「基質」なる用語は、一般的に、酵素による化学的作用を受けて生成物を生成する基質を指す。この特定の実施形態では、テザー126は、HAIの病原性源により発現された酵素によって切断される基質を含む。
【0034】
テザー126に含まれ得る基質は、HAI病原体により発現され得る様々な種類の酵素による作用を受け得る。例えば、基質テザー126は、ヒドロラーゼ(加水分解酵素)、リアーゼなどによる作用を受け得る。ある実施形態では、前記酵素は、加水分解反応を触媒する酵素を指す「ヒドロラーゼ」または「加水分解酵素」である。そのような加水分解酵素の例には、これらに限定しないが、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)、ペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、ホモ若しくはヘテロポリサッカリダーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ及びエステラーゼが含まれる。例えば、一実施形態では、ペプチダーゼがテザー126を切断する。「ペプチダーゼ」は、短ペプチドに見られるペプチド結合を切断する加水分解酵素である。ペプチダーゼの例には、これらに限定しないが、メタロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼI、IIまたはIVが含まれる。別の実施形態では、プロテアーゼが、テザー126を切断する。「プロテアーゼ」は、長ペプチド及びタンパク質に見られるペプチド結合を切断する加水分解酵素である。本発明に従ってテザー126を切断するプロテアーゼの例には、これらに限定しないが、セリンプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、PSAなど)、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、ペプシン)、チオールプロテアーゼ(例えば、プロホルモンチオールプロテアーゼ)、金属プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、及びアルカリ性プロテアーゼが含まれる。
【0035】
前記基質は、天然的にまたは合成的に生成され得る。加水分解酵素に対して適切な基質には、例えば、エステル、アミド、ペプチド、エーテル、または酵素的に加水分解可能な結合を有する他の化学化合物が含まれる。酵素触媒加水分解反応は、例えば、第1の生成物として水酸基化合物またはアミノ化合物を、第2の生成物として遊離リン酸、アセテートなどを生成し得る。特異的タイプの基質には、例えば、タンパク質または糖タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、DNA及びRNA)、炭水化物、脂質、エステル、それらの誘導体などが含まれる。例えば、ペプチダーゼ及び/またはプロテアーゼに対して適切な基質にはペプチド、タンパク質及び/または糖タンパク質などが含まれ得、そのようなものには、カゼイン(例えば、β−カゼイン、アゾカゼインなど)、アルブミン(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA))、ヘモグロビン、ミオグロビン、ケラチン、ゼラチン、インスリン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、コラーゲン、エラスチンなどがある。さらなる別の適切な基質は、この参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、Simonssonらによる米国特許第4,748,116号明細書(特許文献4)、Diamondらによる米国特許第5,786,137号明細書(特許文献5)、Raoらによる米国特許第6,197,537号明細書(特許文献6)、Nemoriらによる米国特許第6,485,926号明細書(特許文献7)に記載されている。
【0036】
特定の一実施形態では、白血球エステラーゼがテザー126を切断し得る。サンプル内または生体内での白血球エステラーゼの存在の検出は、院内尿路感染の診断に役立ち得る。例えば、白血球エステラーゼを検出する場合、テザー126の基質は、白血球エステラーゼの存在下で触媒的に加水分解されるエステルであり得る。
【0037】
この参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、Johnsonらによる米国特許第5,464,739号明細書(特許文献8)及びNoffsingerらによる米国特許第5,663,044号明細書(特許文献9)に記載されているように、乳酸エステルがテザー126内に含まれ得る。乳酸エステルは、一般的に、白血球エステラーゼによって加水分解され、ヒドロキシピロールを生成する。他の適切なエステル基質には、この参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、Huhらによる米国特許第5,750,359号明細書(特許文献10)、Coreyらによる米国特許第4,657,855号明細書(特許文献11)、及びKawanishiらによる日本国特許第03210193号(特許文献12)に記載されているように、チアゾールエステル、ピロールエステル、チオフェンエステル、ナフチルエステル、フェノキシルエステル、キノリニルエステルが含まれる。
【0038】
ブドウ球菌属の細菌は、セリン、システィン及び金属酵素を含むいくつかの細胞外プロテアーゼを生成することが知られている(例えば、Dubinによる「Biol. Chem., 383:7-8, 2002, 1075」を参照されたい)。したがって、任意の様々なブドウ球菌病原体に起因するHAIを検出する際は、テザー126の基質は、標的ブドウ球菌細菌により生成されたセリンプロテアーゼにより選択的に切断されるセリン残基を含み得る。
【0039】
比較的一般的なHAI細菌源である緑膿菌は、いくつかの非常に特徴的な酵素を発現することが分かっている。例えば、緑膿菌は、エラスターゼB、エラスチンを分解する金属プロテアーゼを生成することが知られている。緑膿菌はまた、フィブリノゲン、プラスミノーゲン、IgGなどを含むタンパク質標的であるプロテアーゼIV、及び、アルカリ性プロテアーゼ、ポリリシンを切断する金属プロテアーゼを発現する。
【0040】
さらなる別の実施形態では、例えば、様々な特異的なアスパルチルプロテアーゼを発現することが知られているカンジダ・アルビカンスに起因する感染の検出において、アスパルチルプロテアーゼはテザー126の基質を切断し得る。アスパルチルプロテアーゼを標的にする場合は、テザー126は、アスパラギン酸残基を含有する基質を含み得る。例えば、アスパルチルプロテアーゼを検出するための基質には、活性部位に高度に保存された2つのアラギン酸塩が含まれる。
【0041】
アクセプタ分子122は、様々な公知の技術を用いて、テザーを介して光ファイバ106に結合され得る。例えば、アクセプタ分子122の光ファイバ106への共有結合が、所望に応じて、ドナー分子120を光ファイバ106に結合させるのに用いられたのと同様のまたは異なる化学的手法を用いて実現される。例えば、アクセプタ分子122は、例えばテザー126がタンパク質性の基質を有する実施形態においてタンパク質結合反応を実現するための、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ブロムアセチル基、ヨードアセチル基、チオール基、エポキシ基、及び他の反応性または結合性官能基、並びに残留遊離基及びラジカルカチオンを用いて、テザー126を介して光ファイバ106に共有結合させることができる。好ましい結合方法は、一般的に、当該技術分野で知られているように、アクセプタ分子122及びテザー126の基質の性質に依存する。
【0042】
図1を参照して、ドナー分子120とアクセプタ分子122は、コア130のエバネッセント場内に結合される。なお、一般的に、ドナー分子及びアクセプタ分子は、互いに1:1の比率で提供する必要はないことを理解されたい。例えば、他の実施形態では、RETに起因するアクセプタ発光信号を増加させるために、各ドナー分子に対して多数のアクセプタ分子を提供することが望ましい場合もある。
【0043】
ドナー分子120の励起時は、例えば、適切な励起信号が光ファイバ106を通じてドナー分子120に伝達されたときは、ドナー・アクセプタ分子対の両分子間で共鳴エネルギーの移動が起こる。このとき、ドナー・アクセプタ分子対からの発光は、アクセプタ分子122の光学特性により支配される。一方、酵素128の存在下では、酵素128の作用によりテザー126の基質が切断される。そのため、酵素128が存在する場合、アクセプタ分子122は光ファイバ106から離れる方向に離散する。その結果、ドナー・アクセプタ分子対からの発光は変化し、ドナー分子120の光学特性に支配されるようになる。したがって、アクセプタ分子122が失われたときのドナー・アクセプタ分子対からの発光の変化を検出することにより、酵素128の存在を検知することができる。さらに、酵素128はHAIの病原体源の発現産物であるので、検査領域での酵素128の存在の検出により、酵素128の病原体源の存在も検知することができる。このようにして、HAIの初期診断及び治療のための手段を提供することができる。
【0044】
様々な実施形態では、光ファイバ106を外部環境から保護するためのバリア134が本システムに含まれ得る。例えば、バリア134は、他の物質の通過を阻止すると共に、酵素128が通過してテザー126と互いに相互作用することを可能にする多孔率を規定する半透過性のバリアであり得る。例えば、バリア134は、病原体が光ファイバ106と接触することを阻止することができる。また、バリア134は、他の潜在的な汚染物質を光ファイバ106に近づくことを阻止することもできる。例えば、本システムをインビボで使用する場合を考えると、バリア134は、検査部位に通常存在する物質が、光ファイバ106のコアに接触すること及び/またはコアとそれに結合したドナー・アクセプタ対(120、122)との間の相互作用を阻害することを防止することができる。
【0045】
バリア134は、例えば、約0.2mm未満の物質が膜を通過することを可能にする多孔率と、一般的にバリア134を通過する酵素128のサイズに依存する好ましい孔サイズとを有する半透過性の多孔膜であり得る。半透過性膜134は、例えば、水不溶性かつ水湿潤性のセルロース誘導体(セロファン、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、カルボキシエチルセルロースなど)、不溶化ゼラチン、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、または例えばアミコン社(Amicon Company)から市販されているポリイオン性膜形成剤(ポリスルホン化アニオン性ポリマー、イオン架橋されたポリカチオン性ポリマーなど)から作成することができる。図示のように、バリア134は、光ファイバ106を取り囲み、光ファイバ106の終端部(図示せず)から所定の距離を隔てて光ファイバに取り付けられるか、随意的に、本明細書において説明される態様の検出システムの他の構成要素に取り付けられ得る。
【0046】
図2は、BRET機構に従った検出方法を概略的に示す。図示のように、アクセプタ分子142に加えて、本システムは、化学的補因子144及び酵素140を含む。化学的補因子144及び酵素140は、互いに相互作用して励起状態のドナー分子を生成する。例えば、酵素(ドナー生成酵素)140はルシフェラーゼであり得、補因子144はルシフェリンであり得る。
【0047】
酵素140、アクセプタ分子142及び補因子144は、粒子150(「ビーズ」または「マイクロビーズ」と呼ばれることもある)に結合され得る。例えば、プラスミド、プラスチド、多糖類(例えば、アガロース)などのような天然に存在する粒子を使用することができる。さらに、合成粒子を使用することもできる。例えば、一実施形態では、ラテックス微粒子が使用され得る。任意のラテックス粒子を使用することができるが、ラテックス粒子は通常は、ポリスチレン、ブタジエンスチレン、スチレンアクリル・ビニルターポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、スチレン・無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルピリジン、ポリジビニルベンゼン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル、塩化ビニル・アクリレートなど、またはそのアルデヒド、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、あるいはそれらのヒドラジド誘導体から形成される。
【0048】
使用するときは、粒子の形状は、一般的に様々であり得る。例えば、図2に示した実施形態では、粒子150は球状である。しかし、平板状、ロッド状、円盤状、棒状、チューブ状、不規則形状などの他の形状も本発明で意図されることを理解されたい。さらに、粒子のサイズも様々であり得る。例えば、粒子の平均サイズ(例えば、直径)は、約0.1ナノメータないし約1000ミクロンであり得、ある実施形態では約0.1ナノメータないし約100ミクロン、ある実施形態では約1ナノメータないし約10ミクロンであり得る。例えば、「ミクロンスケール」の粒子が望ましい場合が多い。使用するときは、そのような「ミクロンスケール」の粒子は、約1ミクロンないし約1000ミクロンの平均サイズを有し得、ある実施形態では約1ミクロンないし約100ミクロン、ある実施形態では約1ミクロンないし約10ミクロンの平均サイズを有し得る。同様に、「ナノスケール」に粒子も用いることができる。そのような「ナノスケール」の粒子は、約0.1ナノメートルないし約10ナノメートルを有し得、ある実施形態では約0.1ナノメートルないし約5ナノメートル、ある実施形態では約1ナノメートルないし約5ナノメートルの平均サイズを有し得る。
【0049】
BERT機構によれば、図示のように、アクセプタ分子142は、テザー147を介した共有結合により粒子150に結合される。加えて、ドナー形成対の補因子及び酵素のうちの一方は、病原体により発現される酵素のための基質を有するテザーを介して粒子に結合される。例えば、図2に示す実施形態では、化学的補因子144は、病原体により発現される酵素のための基質を有するテザー146を介して粒子150に結合され、酵素140はテザー147を介して粒子150に結合される。一方、他の実施形態では、ドナー分子を生成すべく互いに相互作用する前記ドナー生成対の酵素が、病原体により発現される酵素に対して特異的な基質を有するテザーを介して結合される。
【0050】
前述したように、酵素140、アクセプタ分子142及び補因子144は一般的に、例えばカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、ブロムアセチル基、ヨードアセチル基、チオール基、エポキシ基及び他の反応性または結合性官能基などの様々な公知技術のいずれかを用いて粒子150に結合される。粒子150の表面は極性基を比較的高い表面濃度で含むので、粒子150の表面官能基もまた官能化コモノマーとしてテザーに利用され得る。加えて、粒子は合成後にポリ(チオフェノール)などにより官能化させることもできるが、さらなる改変を必要とせずに、テザー(例えば、タンパク質)に直接的に共有結合させることも可能である。
【0051】
例えば、ある実施形態では、基質テザー146、テザー145及びテザー1145を粒子150と結合させる第1のステップは、カルボジイミドを使用して粒子150上のカルボキシル基を活性化させることである。第2のステップでは、活性化されたカルボン酸基が、基質テザー146、テザー145及びテザー145のアミノ基と反応し、アミノ結合が形成される。この活性化及び/またはタンパク質結合は、リン酸緩衝液(PBS)(例えば、pH7.2)または2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)(例えば、pH5.3)などの緩衝液中で発生し得る。所望に応じて、テザーを粒子に結合させる結合プロセスの前、間または後に、補因子144、ドナー分子140及びアクセプタ分子142がそれらに対応するテザー146、145及び147にそれぞれ結合される。得られた粒子はその後、残りの活性化部位をブロックするために、例えばエタノールアミンと接触させられる。全体としては、このプロセスは、補因子144、酵素140及びアクセプタ分子142が粒子150に共有結合された結合プローブを形成する。
【0052】
RET方法の構成要素を光ファイバへ結合させるのに粒子を使用することは、本発明の任意の特定の実施形態に必須ではない。例えば、外部光源によってドナー分子が励起されるFRET機構が、図2のBRET機構について説明したような本システムの構成要素を結合及び保持するための粒子を含むこともできる。同様に、BRET機構の構成要素を、図1のFRET機構に関して上述したようにして、光ファイバに直接的に結合させることもできる。
【0053】
図2を再び参照して、ドナー・アクセプタ対からの発光が光ファイバ206を通じて伝達されるように、粒子150はコア230の近傍で保持される。例えば、酵素140、アクセプタ分子142及び補因子144を持っている粒子150が、光ファイバ206の終端部か、あるいはクラッド231の全部または一部が取り除かれた、光ファイバ206に沿った領域227に結合される。粒子150は、例えば、結合粒子の形成について上述したようなカルボジイミドを使用した化学的方法を用いてか、あるいは当該技術分野で公知の任意の他の適切な化学的方法を用いて、コア230に共有結合させることができる。あるいは、粒子150は、例えば電荷結合などの非共有結合を介して、コア230に結合させることができる。例えば、粒子がコア230の表面電荷と反対の符号の表面電荷を有する場合、両者は互いにイオン結合される。任意の他の適切な結合方法も代替的に用いることができる。いずれの場合でも、粒子150は、酵素140及びアクセプタ分子142がコア230のエバネッセント場内に保持されるように、かつ補因子144を適所に保持するテザー146が周囲環境に露出することができるようにして、光ファイバ206に結合される。標的病原体により発現された酵素248がテザー146と相互反応すると、補因子144が解放される。補因子144は、酵素140の近傍(一般的に約10nm以下の距離)に結合されているので、補因子144は酵素140と相互作用して励起した状態のドナー分子が生成され、その結果、生成されたドナー分子からアクセプタ分子142へのRET媒介エネルギー移動が起こる。アクセプタ分子142の特性を示す前記RET対からの発光を検出することにより酵素148の存在を検知することができ、それ故に、酵素148を発現させる病原体源の存在が検知される。
【0054】
図3は、本発明の方法及び装置の別の実施形態を概略的に示す。この特定の実施形態では、光ファイバ306のクラッド332が光ファイバの長さに沿って除去されており、コア330に沿って延在する領域327が形成されている。加えて、ドナー分子320、420、520とアクセプタ分子322、422、522とをそれぞれ含むいくつかの分子対(320,322)、(420,422),(520,522)が、コア330に結合されている。アクセプタ分子のためのテザー326、426、526は、上述したように、酵素のための基質を有する。加えて、第1の分解性マトリクス352が、第1のドナー・アクセプタ対(320、322)を被包しており、第2の分解性マトリクス454が、第2のドナー・アクセプタ対(420、422)を被包している。したがって、使用中は、光ファイバ306が検査領域に配置されたときに、最も外側の分子対520、522が、周囲環境及びコアのエバネッセント場の両方に直接的に露出される。所定期間の経過後、マトリクス452が分解され、次の分子対420、422を、周囲環境及び光ファイバのエバネッセント場の両方に対して露出させる。最終的に、最も内側のマトリクス352が分解され、次の分子対320、322を露出させる。このように、時間の経過に従って、追加的なRET対を露出させることができる。前記分子対の各分子を所定期間保護することにより、前記分子対の各分子の光退色を防止することができ、それにより、本システムの有用寿命を延ばすことができる。
【0055】
マトリクス352、452は、親水性であり得る。親水性マトリクスは免疫抑制反応を引き起こす可能性が低いので、マトリクスが親水性であることは、一部のインビボ検出方法及び装置において好ましい。しかし、このことは本発明に必須ではなく、他の実施形態では、マトリクスは例えば疎水性ポリマーマトリクスなどの疎水性材料を含み得る。
【0056】
マトリクス352、452の一方または両方は分解性ポリマーマトリクスであり得、一実施形態ではヒドロゲルであり得る。ヒドロゲルは一般的に、構造安定性を維持しながら、高度に水和化された(例えば、約20%ないし99%以上の水重量)ポリマーマトリクスを含む。適切なヒドロゲルマトリクスは、架橋されていないヒドロゲルか、あるいは架橋されたヒドロゲルを含み得る。水性環境で使用した場合にマトリクスが分解されるように、ヒドロゲルは一般的に、加水分解可能な部分(例えば、加水分解性架橋)を含み得る。例えば、マトリクスは、加水分解可能な架橋剤(例えば、ポリ乳酸)などの架橋されたヒドロゲルを含み得、インビボで分解可能であり得る。分解性マトリクスはまた、本システムのインビボ対象部位に続く位置が予め定められた分解速度を有するように形成される。例えば、マトリクス352は、マトリクス452の分解速度よりもより遅い分解速度を有する。
【0057】
ヒドロゲルを含んでいる分解可能なポリマーマトリクスには、天然バイオポリマー(グリコサミノグリカン、多糖、タンパク質など)や、当該技術分野で公知の合成ポリマーが含まれる。ヒドロゲルの作成に使用することができるポリマー材料の非限定的な一覧には、これらに限定しないが、デキストラン、ヒアルロン酸、キチン、ヘパリン、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、乳酸のポリマーまたはコポリマー、グリコール酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、エポキシド、シリコン、ポリオール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、及びそれらの誘導体)、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、架橋されたアルギン酸ガム)、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、ペクチン、ゼラチン、架橋タンパク質、及びペプチドなどが含まれる。
【0058】
分解性ポリマーマトリクスは、当該技術分野で公知の任意の方法に従って作成することができる。例えば、マトリクスは、様々な成分と単に接触したときか、または特定の外部条件(温度やpHなど)の存在下で接触したときに、自己集合し得る。あるいは、集合は、前記成分の混合後に、任意の公知の方法に従って誘導され得る。例えば、多官能性モノマーまたはマクロマの段階的または連鎖的重合化は、光重合、温度依存重合及び/または化学的活性化重合を介して誘導され得る。随意的に、ヒドロゲンは、開始剤の存在下で重合され得る。例えば、ヒドロゲルは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製のIrgacureR光開始剤またはDarocurR光開始剤などの適切な開始剤の存在下で光重合され得る。別の実施形態では、カチオン開始剤が使用され得る。例えば、Ca2+、Mg2+、Al3+、La3+またはMn2+などの多価元素カチオンが使用され得る。さらなる別の実施形態では、例えばポリリシンまたはポリアルギニンなどのポリカチオン性ポリペプチドが開始剤として使用され得る。
【0059】
図示のように、分解性ポリマーマトリクスは、ドナー・アクセプタ対の層を被包するために、光ファイバ306上に形成されるかまたは塗布される。例えば、図3に図示した実施形態では、第1のヒドロゲルマトリクス352がコア330に、ドナー320及びアクセプタ322を被包することができる長さに沿って塗布される。第2のヒドロゲルマトリクス452が、ドナー420及びアクセプタ422を被包することができるコア330の隣接する長さに塗布される。光ファイバの表面への分解性マトリクスの形成及び塗布は、当該技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。例えば、分解性ポリマーマトリクスは、これらに限定しないが、複製成形技術(マイクロインプリントリソグラフィ、ソフトリソグラフィなど);レーザ干渉リソグラフィ、ナノ粒子リソグラフィ技術(レーザ支援ナノ粒子リソグラフィ、ナノ粒子「シャドウマスク」リソグラフィなど);ブロックコポリマーリソグラフィ;などの方法に従って形成することができる(例えば、Luらによる「Drug Discovery Today: Technologies, 2005, 2:1」を参照されたい)。
【0060】
本発明のHAI検出方法及び装置は、本システムの特定のデザインに応じて、単一の光ファイバまたは複数の光ファイバから構成される光ファイバケーブルを含み得る。例えば、複数の光ファイバを束ねて、インビボ対象部位に配置されるサイズ(例えば、断面直径が約1.5mm未満)の単一の光ファイバケーブルを構成することができる。
【0061】
繊維束またはケーブルに複数の光ファイバが使用される場合、個々の光ファイバは互いに同一のまたは異なるドナー・アクセプタ対を含み得る。例えば、図4Aは、各光ファイバが複数の同一のドナー・アクセプタ対(620、622)を含む光ファイバケーブル401を示す。このような構成は、例えば、光退色に起因するドナー・アクセプタ対の早期破壊を防止するために用いられ得る。例えば、励起信号は、1回に、限られた時間長さでのみ、単一または限定された数の光ファイバにより伝達される。その所定の期間、例えばドナー及び/またはアクセプタの光退色が発生する可能性のある期間の経過後は、励起信号は、前記ケーブルの第2の光ファイバにより伝達される。このようにして、マルチファイバ光ケーブルは、長期間に渡って、RET対の各分子の光退色に起因して本システムの活動性が失われることなく、病原体により発現された酵素の存在を検出するために使用することができる。
【0062】
あるいは、図4Bに図示された実施形態では、ケーブル402の各光ファイバは、デザインが互いに異なり得る。例えば、この光ファイバ束の第1の光ファイバ606は、テザー625を介して光ファイバ606に結合されたドナー分子620と、第1の病原体により発現される第1の酵素に対して特異的な第1の基質を有するテザー626を介して光ファイバ606に結合されたアクセプタ分子622とを含む。また、この光ファイバ束の第2の光ファイバ607は、テザー725を介して光ファイバ607に結合されたドナー分子720と、第2の病原体により発現される第2の酵素に対して特異的な第2の基質を有するテザー726を介して光ファイバ607に結合されたアクセプタ分子722とを含む。ドナー分子620、720及びアクセプタ分子622、722は、互いに同一であり得るか、または異なり得る。したがって、第1のドナー分子620の特性に依存する、第1のドナー・アクセプタ対(620、622)からの発光信号は、テザー626の基質に対して特異的な酵素の存在を示し、それ故に、その酵素を発現させる酵素の存在を示す。一方、第2のドナー分子720の特徴に依存する、第2のドナー・アクセプタ対(720、722)からの発光信号は、テザー726の基質に対して特異的な酵素の存在を示し、それ故に、その酵素を発現させる病原体の存在を示す。この特定の実施形態では、光ファイバ束の第3の光ファイバ608は、光ファイバ606と同一のドナー・アクセプタ対620、622を有する。しかし、このことは必須ではなく、他の実施形態では、第3の光ファイバは、それに結合されるさらなる別のドナー・アクセプタ対を有することができる。さらなる別の実施形態では、光ファイバ束の第3の光ファイバは、発光伝達ファイバとして使用され得る。例えば、光ファイバ606及び光ファイバ607は、励起信号を各光ファイバのFRET対に伝達するために使用され、第3の光ファイバ608は、各光ファイバ607、608と光学的に接続され、光ファイバ606及び光ファイバ607に配された前記FRET対からセンサへ発光を伝達するのに使用され得る。
【0063】
この実施形態は、特に、ドナー分子620、720及び/またはアクセプタ分子622、722が同一であるかまたは重複したスペクトル特性を示す場合に、互いに隣接する光ファイバ間でのスペクトルの重複を避けるのに有益であり得る。例えば、第1の光ファイバ606からの励起信号または発光信号が、第2の光ファイバ607のRET対に影響を与えるのを防ぐために、各光ファイバ606、607、608の間にスペーサが配置され得る。
【0064】
図4Cに図示する実施形態では、光ファイバケーブル403の各光ファイバ806は、複数の互いに異なるRET対を含む。例えば、光ファイバ806は、FRET対820、822を各々有する複数の領域727を含む。FRET対820、822は、第1の基質を有するテザー826によって光ファイバ806に結合されたアクセプタ分子822を含む。領域727はまた、第2のRET対(この場合は、BERT群840、842)と化学的補因子844とを含む。化学的補因子844は酵素840と互いに相互作用して、蛍光信号を発するドナー分子を形成する。補因子844を光ファイバ806に結合させるテザーの基質846は、テザー826の基質に対して特異的な酵素とは別の酵素に対して特異的である。ここにさらに説明するように、この実施形態では一般的に、互いに異なるRET対の様々な励起信号及び発光信号は、センサで個別に検出することができるように、スペクトルが互いに十分に離れている。
【0065】
随意的に、単一の光ファイバにおける互いに異なる領域は、互いに異なるRET対を含み得る。例えば、図4Dを参照して、光ファイバ906の第1の領域927には、該領域に結合されたドナー920及びアクセプタ922を有する第1の種類のFERT対を含み、同一の光ファイバにおける第2の領域1027には、別のRET対(この場合は、BRET群)を含む。前記BRET群は、酵素940、アクセプタ942及び補因子944を含み、補因子分子のテザー946は、前記第1の対(920、922)のテザー926に対して特異的な酵素とは別の種類の酵素により切断される。この特定の実施形態では、光ファイバケーブル404の全ての光ファイバが互いに同一のデザインを有している。しかし、当然ながら、そのようなデザインの組み合わせ以外にも、別の変形形態を用いることもできる。
【0066】
複数の光ファイバは一般的に、当該技術分野で公知の任意の生体適合性接着剤を用いて、結合ユニットとして束ねられる。例えば、生体適合性接着剤としては、多糖から作成されたゼラチンなどのタンパク質に基づいたものが用いられ得る。
【0067】
ここで説明したような1若しくは複数のRET対(すなわち、FRET対またはBRET群)を含む光ファイバは、HAIの原因である病原体により発現された酵素が存在する環境内に配置及び保持される。例えば、1若しくは複数の光ファイバを含む光ケーブルが、HAI感染の可能性の高いインビボ部位に配置される。例えば、ある実施形態では、光ファイバに結合された1若しくは複数のRET対を含む光ケーブルが、創傷部位、カテーテル部位、手術部位、気管内(ET)チューブ部位などにインビボ配置される。
【0068】
1若しくは複数のRET対を含む光ケーブルは、任意の適切な方法に従って、検査部位に配置される。例えば、手術部位を閉じる前に、該手術部位に本明細書で説明した光ケーブルを配置する。ある実施形態では、光ケーブルは、医療デバイスと共に対象部位に配置される。例えば、光ケーブルは、例えばカテーテル、外科用ドレーン、ETチューブなどの医療デバイスの近傍またはその内部に配置され得、前記医療デバイスはその後、光ケーブルを対象部位に保持することを助ける。
【0069】
本発明の方法は、インビボ検出方法には限定されない。別の実施形態では、本明細書で説明した光ケーブルは、インビトロ環境内に、患者の組織または液体サンプルと共に配置され得る。前記組織または液体サンプルは、HAIの病原体源を含み得るか、あるいは、ただ単に病原体のタンパク質発現物質を含み得る。詳細には、前記サンプルは、テザーと互いに相互作用し、光ファイバ内で光学的に検出可能な信号を生成する酵素を含み得る。前記信号の検出は、前記サンプル自体内、または代替的に前記サンプル源内における病原体の存在を示す。
【0070】
本発明によれば、1若しくは複数の光ファイバが、その一実施形態を図5に概略的に示す携帯型検出装置の一部として使用され得る。この特定の実施形態に見られるように、装置100に相当する部品のいくつかは、筐体20内に収容される。
【0071】
筐体20は、例えば、ユーザによる持ち運びやユーザへの取り付けが容易なサイズを有する成形プラスチック筐体であり得る。例えば、筐体20は、患者の衣服や身体に取り付けるためのクリップやループなどを含み得る。一実施形態では、筐体20は貼着面を有し、患者の皮膚に直接的に貼着される。一般に、筐体20は、患者が持ち運んでも目立たないように、及び患者の動作を妨げないように比較的小型であり得、例えば約10cm×約8cm×約5cmのサイズよりも小さいサイズであり得る。筐体20は、その内部に収容した前記部品を完全にまたは部分的に取り囲む。例えば、筐体20は、筐体20の内部へのアクセスを提供するアクセスポート(図示せず)を含み得る。ある実施形態では、前記アクセスポートは、当該技術分野では既知のように、取り外し可能なカバーにより覆われる。
【0072】
筐体20内に保持される第1の部品は、電源2である。電源2は、ある実施形態では、励起源4及び後述する他の作動部品に電力を供給するように構成されている。例示的な構成では電源2はバッテリに相当するが、他の電源も使用可能なことは当業者であれば理解できるであろう。例えば、筐体内に収容される電源は、外部電源から供給された電流を、電源を必要とする残りの部品のための適切な電源に変換するために必要な部品を含み得るので、そのような場合は、外部交流(AC)電源へ接続される電源を使用することができる。
【0073】
前述したように、電源2は、ある実施形態では、励起源4に電力を供給するように構成され得る。特に、光ケーブル6が、外部源からの励起を必要とするドナーを含むFRET対を有する実施形態では、励起源4は筐体20内に含まれ得る。しかし、他の実施形態では、例えば、ドナー分子の励起がルシフェラーゼ・ルシフェリンの相互作用によって提供される実施形態では励起源は不要となるので、励起源4は筐体20内に収容されない。
【0074】
図示した例示的な構成では、励起源4は発光ダイオード(LED)に相当する。しかし、繰り返すが、励起源には様々なものを用いることができ、これらに限定しないが、励起源にはレーザーダイオード及び白熱光源が含まれ得る。励起源4は、所望または必要に応じて、白色光源、非白色多波長源、または単一波長源に相当し得る。好ましい例示的な構成では、電力消費が低いLEDが選択される。励起源4から供給される励起エネルギーの波長は、赤外線(IR)から紫外線(UV)までの任意の適切な波長であり得る。一般に、好ましい励起エネルギー波長は、RET対の特定のデザインに依存し得る。例えば、単一のFERTドナー分子が用いられる実施形態では、励起源4は単一の励起波長を提供する。しかし、他の実施形態では、例えば、複数の互いに異なるドナー分子が互いに同一または異なる光ファイバに含まれ、前記複数の互いに異なるドナー分子が互いに異なる励起波長に応答する場合、所望に応じて、複数の単一の波長源からの信号の組み合わせを用いてか、あるいは単一のインコヒーレント光源を用いて、励起源は複数の波長を提供する。
【0075】
図示のように、励起エネルギー源4は、光ファイバ6に光学的に接続される。光ファイバ6は、筐体20から検査部位(例えば、手術部位、または他の創傷)へ向かって外側に延出するように構成される。図5に図示した光ファイバ6は単一の光ファイバのみを含んでいるが、本発明はこのことに限定されず、上述したように別の実施形態では本装置は実際には複数の光ファイバから構成される光ケーブルを含み得ることを理解されたい。適切なビームスプリッタやミラーなどを利用して、随意的に信号励起エネルギー源を複数の光ファイバに光学的に接続することができることは、当業者には理解できるであろう。
【0076】
さらに、前述したように、複数の励起エネルギー源を使用することができる。そのような構成では、複数の励起波長が検査部位に伝達されるように、各励起源は1若しくは複数の光ファイバに光学的に接続される。
【0077】
筐体20内には、光ファイバ6に接続された光検出器8が収容される。光検出器8は、フォトダイオードやフォトレジスタなどに相当し得る。光検出器8は、背景光を除去するため、及び光検出器8での総入力光信号を1若しくは複数の診断に関連する発光ピークに減少させるための光フィルタやビームスプリッタなどを含み得る。光検出器8は、標的発光ピークに比例する信号を生成することができる。生成された信号は、ライン10を通じて信号処理部12に送信される。
【0078】
信号処理部12は、例えば、検査領域内における特異的酵素の存在を検出するため、及びライン14を通じて信号装置16へ送信する検出信号を生成するために、ライン10を介して受信した光検出器8の出力信号の強度または他の特性を評価するように構成されたマイクロプロセッサを含み得る。したがって、検出信号が、標的病原体の既知濃度に相当する予め定められた閾値に達すと、信号装置16から認識可能な信号の通知が開始される。例示的な構成では、認識可能な信号の通知は、信号装置16によって筐体の内部または表面から行われる、装置100の装着者が認識可能な可視信号または可聴信号である。例えば、可視信号の通知は、随意的に、可読出力として信号を提供する液晶ダイオード(LCD)装置またはその同等物の使用を含み得る。例えば、可視信号は、本装置の表面で、例えば「医者を呼びましょう」、「病院に行きましょう」などの指示として提供される。
【0079】
筐体20自体から可視信号及び/または可聴信号を発することに加えてまたはその代わりに、信号装置16は、認識可能な信号の通知開始時に、電磁信号を受信機18へ送信する送信機を含み得る。受信機18は、信号装置16から離間配置されている。例えば、受信機18は、ユーザの身体上に信号装置16から離間してか、(ユーザの家や職場などにおける)ユーザにより選択されたユーザの身体から離間した適切な位置か、あるいは、患者の検査部位の状態変化に関する情報を適切な医療関係者が迅速に知ることができるように医療施設などのモニタリング施設に配置され得る。別の実施形態では、ユーザと他者(例えば、医療関係者)との両方に、検査部位の状態変化の情報を知らせることができるように、認識可能な信号は複数の受信機に送信され得る。本装置から離間配置された受信機への信号の送信は、当該技術分野で公知のラジオ周波数伝送方式または他の無線伝送方式を用いて実施され得る。例えば、無線電話またはインターネット通信方式を用いて公知の方法によって信号を離れた場所へ送信することができる。
【0080】
本発明の装置及び方法と共に使用することができる無線通信システムは、例えば、この参照により全ての目的のために本明細書に組み込まれる、Bessonらによる米国特許第6,289,238号明細書(特許文献13)、Khairらによる米国特許第6,441,747号明細書(特許文献14)、Slepianによる米国特許第6,802,811号明細書(特許文献15)、Carterらによる米国特許第6,659,947号明細書(特許文献16)、及びIslamによる米国特許第7,294,105号明細書(特許文献17)に開示されている部品及びシステムを含み得る。
【0081】
以上、本発明の特定の実施形態について詳細に説明したが、本明細書中で説明された本発明の実施形態の改変及び変更が可能であることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
院内感染源である病原体の存在または量を検出するための方法であって、
アクセプタ分子を含む第1の分子群が直接的または間接的に結合された光ファイバであって、前記第1の分子群が該光ファイバのコアのエバネッセント場内に位置する結合領域に結合され、かつ前記第1の分子群のうちの1つの分子が前記病原体により発現される酵素のための基質を有する第1のテザーによって結合された光ファイバを或る環境内に配置するステップと、
前記光ファイバを介して前記結合領域にドナー分子に対して特異的な励起波長を有する第1の励起信号を送信するステップと、
前記病原体により発現された前記酵素の作用により前記基質を切断するステップと、
前記酵素の作用により前記基質を切断する前記ステップの後に、光学的に検出可能な発光信号を前記結合領域から送信するステップと、
前記環境内における前記病原体の存在または量を検出するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の分子群がドナー分子を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記アクセプタ分子が前記第1のテザーによって前記光ファイバに結合されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の方法であって、
前記第1の分子群を被包するマトリクスをさらに含み、
当該方法が、前記マトリクスを分解するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記マトリクスがポリマーマトリクスであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の方法であって、
前記環境がインビボ環境であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6に記載の方法であって、
前記環境が手術部位であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7に記載の方法であって、
前記光学的に検出可能な発光信号を電磁信号に変換するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記電磁信号を受信機に送信するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記電磁信号が前記受信機に無線通信方式により送信されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10に記載の方法であって、
前記光ファイバがマルチ光ファイバケーブルの第1の光ファイバであり、
前記マルチ光ファイバケーブルが第2の光ファイバをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記第2の光ファイバが、第2のアクセプタ分子を含む第2の分子群であって、前記第2の光ファイバのコアのエバネッセント場内に位置する結合領域に結合され、かつ該第2の分子群のうちの1つの分子が院内感染源である別の病原体により発現される別の酵素のための別の基質を有する第2のテザーによって該第2の光ファイバに結合された第2の分子群を含み、
当該方法が、前記第2の光ファイバを介して前記第2の分子群に第2の励起信号を送信するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1の光ファイバを介しての前記第1の励起信号の送信、及び前記第2の光ファイバを介しての前記第2の励起信号の送信が、その順番に行われることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1ないし請求項11に記載の方法であって、
前記第1の分子群がドナー生成用酵素及び補因子分子をさらに有し、
前記ドナー生成用酵素及び前記補因子分子のうちの1つが前記第1のテザーによって前記光ファイバに結合されており、
当該方法が、前記第1の基質を切断する前記ステップの後に、前記ドナー生成用酵素及び補因子分子を互いに相互作用させて励起状態のドナー分子を生成するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
院内感染源である病原体の存在または量を検出するための携帯型装置であって、
電源、励起源、光検出器、信号処理部、及び病原体により発現された酵素の検出時に信号を発する信号装置を収容している携帯型筐体と、
前記筐体をユーザの衣服または身体に取り付けるための取り付け手段と、
前記光検出器と光学的に接続され、前記筐体から外側へ或る長さで延在し、或る環境内に挿入され、かつ光ファイバを有する光ファイバケーブルと、
アクセプタ分子を含む分子群であって、前記光ファイバのコアのエバネッセント場内に位置する結合領域に直接的または間接的に結合され、かつ該分子群のうちの1つの分子が前記病原体により発現される酵素のための基質を有する第1のテザーによって前記光ファイバに結合された分子群とを含むことを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、
前記分子群がドナー分子をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の装置であって、
前記分子群を被包する分解性マトリクスをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項15ないし請求項17に記載の装置であって、
前記光ファイバケーブルが複数の光ファイバを有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項15ないし請求項18に記載の装置であって、
前記携帯型筐体が、前記信号装置と電気的に通信する送信機をさらに含み、
前記信号装置から発された信号を前記送信機から送信するようにしたことを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、
前記送信機と無線通信する受信機をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項15ないし請求項20に記載の装置であって、
前記分子群が粒子に直接的に結合されることを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項15ないし請求項21に記載の装置であって、
前記光ファイバケーブルの少なくとも一部を取り囲む半透過性バリアをさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項15ないし請求項22に記載の装置であって、
前記分子群が、ドナー生成用酵素及び補因子分子をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置であって、
前記ドナー生成用酵素がルシフェラーゼであり、前記補因子分子がルシフェリンであることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506952(P2011−506952A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537545(P2010−537545)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053652
【国際公開番号】WO2009/074891
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(309038085)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (51)
【Fターム(参考)】