説明

内圧検査装置及び内圧検査方法

【課題】内容物が充填された缶の内圧検査を高精度に行う。
【解決手段】内容物が充填、密封された缶50を複数梱包したカートンケース60を搬送する搬送手段と、この搬送手段に沿って配設され、カートンケース60内の缶50を強制励振させるとともに、この際の当該缶50からの反響音を捉える構成とされた打検機10と、を備える内圧検査装置1であって、搬送方向における打検機10の配設位置と略同一位置には、カートンケース60の上蓋部61を吸引して、上蓋部61と缶50とを非接触状態に維持する吸引器20が設けられており、吸引器20の前記搬送方向の同一位置又は上流側に、カートンケース60の上蓋部61の高さ位置を検知する上蓋検知部40が配設されており、吸引器20には、上蓋検知部40による測定値に応じて、吸引器20の高さ位置を調整する吸引器高さ調整機構30が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートンケース内に収容された缶の内圧を検査するのに好適な内圧検査装置及び内圧検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミルク入りコーヒー等の低酸性飲料は、アルミニウム製の陽圧缶(液体窒素充填)あるいはスチール製の負圧缶に充填、密封され、レトルト殺菌をした後に、段ボール紙からなるカートンケースに梱包されてパレットに積み込まれる。そして、ケース詰めされた缶は、7日程度放置した後、カートンケース毎にいわゆる打検による缶内圧検査を行い、漏れがないか確認が行われている。これは、万一、缶に微細なピンホールがある場合、スローリークするため充填直後に缶内圧を測定しても、缶内圧が充填前とさほど変わらず、リークの有無が分らないという問題があるからである。
【0003】
ところで、前記打検により缶内圧を検査する手段としては、内容物が充填、密封された缶を、この缶の内部のうち底部側に空間が形成されるように逆立ち姿勢とさせた状態で、この缶の底部のうち平滑面とされた径方向中央部を電磁誘導作用によって強制励振させ、この際の缶からの反響音を捉えて算出された、例えばピーク周波数と、予め設定された缶内圧値とピーク周波数との相関とに基づいて缶の内圧を検査する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
そして、この検査方法の実施に当たっては、複数の缶を前記逆立ち姿勢とさせた状態でカートンケースに梱包し、このカートンケースの外側から、この缶の底部を強制励振させ、このときの反響音を捉えて内圧検査する方法が採られている。
【0004】
ところで、前記打検は一般に、缶が前述のように複数梱包されたカートンケースを積み重ねた状態で数日(7日間程度)放置した後に実施されるので、缶の底部に形成された接地部にカートンケースの上蓋部がめり込み、缶底部の表面にカートンケースの内表面が当接する場合があった。この場合、缶底部の自由振動がカートンケースの上蓋部により阻害されることにより、高精度な内圧検査を実施することが困難となる場合があった。
この問題を解決するための手段として、前記打検をする際に予め、カートンケースの上蓋をバキュームパッドによって吸引して、前記めり込み状態を解除することにより、缶底部とカートンケースの内表面とを非接触状態にしておき、その後、前記打検を行う方法が知られている(例えば特許文献2および3参照)。
【0005】
また、例えば特許文献4に示すように、キャップ付ボトル缶の内圧検査は、当該キャップ付ボトル缶を正立姿勢にしてカートンケース内に梱包し、このカートンケースの外側からキャップ付ボトル缶のキャップ天面部を強制励振させて、この際の反響音を捉えることで実施される。このようなキャップ付ボトル缶においても、キャップ天面部がカートンケースの上蓋部に接触することがあるため、カートンケースの上蓋部をバキュームパッドによって吸引してキャップ天面部から引き離す必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49−34376号公報
【特許文献2】特開平10−246681号公報
【特許文献3】特開平11−94685号公報
【特許文献4】特開2006−38826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、搬送されるカートンケースにおいては、その上蓋部の高さ位置が大きく変動することがあり、バキュームパッドによって上蓋部を吸引できないことがあった。この場合には、上蓋部と缶とが接触した状態で打検が実施されるため、内圧検査を精度良く実施することができなくなってしまうといった問題があった。
【0008】
本発明は、前記状況に鑑みてなされたものであって、カートンケースに収容された缶の内圧を高精度に検査することができる内圧検査装置及び内圧検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る内圧検査装置は、内容物が充填、密封された缶を複数梱包したカートンケースを搬送する搬送手段と、この搬送手段に沿って配設され、前記カートンケース内の缶を強制励振させるとともに、この際の当該缶からの反響音を捉える構成とされた打検機と、を備える内圧検査装置であって、搬送方向における前記打検機の配設位置と略同一位置には、前記カートンケースの上蓋部を吸引して、前記上蓋部と前記缶とを非接触状態に維持する吸引器が設けられており、前記吸引器の前記搬送方向の同一位置又は上流側に、前記カートンケースの上蓋部の高さ位置を検知する上蓋検知部が配設されており、前記吸引器には、前記上蓋検知部による測定値に応じて、前記吸引器の高さ位置を調整する吸引器高さ調整機構が備えられていることを特徴とする。
【0010】
この内圧検査装置では、吸引器の搬送方向の同一位置又は上流側に配置された上蓋検知部によってカートンケースの上蓋部の高さを検知し、この上蓋部の高さに応じて吸引器の高さ位置を調整できるので、上蓋部の高さ位置が大きく変化する場合であっても上蓋部を吸引器で確実に吸引することが可能となる。よって、内圧を検査する缶とカートンケースの上蓋部とを非接触状態として打検を実施することができ、缶の内圧検査を精度良く実施することができる。
【0011】
ここで、前記吸引器は、前記打検機の搬送方向上流側及び下流側にそれぞれ配設されており、前記搬送方向上流側の吸引器と、前記搬送方向下流側の吸引器は、それぞれ別途独立して前記吸引器の高さ位置が調整されることが好ましい。
この場合、打検機の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に、それぞれ吸引器が配設されているので、これらの吸引部によって上蓋部を吸引することで、打検機の位置において上蓋部と缶との接触を確実に防止することができる。また、前記搬送方向上流側の吸引器と、前記搬送方向下流側の吸引器は、それぞれ別途独立して前記吸引器の高さ位置が調整可能とされているので、それぞれの吸引器で上蓋部を確実に吸引することができる。また、搬送されるカートンケースの上蓋部が大きく上方に突出していた場合でも、打検機の搬送方向上流側に配置された吸引部によって上蓋部の高さ位置を調整することができ、打検機と上蓋部との衝突を防止できる。
【0012】
また、前記打検機と前記カートンケースの上蓋部との間の高さ距離が所定範囲内となるように、前記上蓋部を吸引した状態において前記搬送方向上流側の吸引器及び前記搬送方向下流側の吸引器の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御する上蓋部高さ制御部を備えていることが好ましい。
この場合、上蓋部を吸引した状態において前記搬送方向上流側の吸引器及び前記搬送方向下流側の吸引器の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御することで、前記打検機と前記カートンケースの上蓋部との間の高さ距離が所定範囲内となるように調整可能であることから、打検による音響信号を安定して得ることができ、内圧検査を精度良く実施することが可能となる。
【0013】
さらに、前記上蓋部高さ制御部は、前記打検機の位置において前記カートンケースの上蓋部が水平方向を向くように、前記上蓋部を吸引した状態で前記搬送方向上流側の吸引器及び前記搬送方向下流側の吸引器の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御することが好ましい。
この場合、打検機によって反響音を効率良く集音することができ、缶の内圧検査を精度良く実施することができる。
【0014】
本発明の内圧検査方法は、前述の内圧検査装置を用いた内圧検査方法であって、前記上蓋検知部によって測定された前記カートンケースの上蓋部の高さ位置に応じて、前記吸引器の高さ位置を調整し、前記吸引器によって前記上蓋部と前記缶とを非接触状態に維持した状態で、前記打検機により前記カートンケース内の缶を強制励振させるとともに、この際の当該缶からの反響音を捉えることを特徴としている。
この構成の内圧検査方法によれば、カートンケースの上蓋部の高さ位置が大きく変化する場合であっても上蓋部を吸引器で確実に吸引することができ、内圧を検査する缶とカートンケースの上蓋部とを非接触状態として打検を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る内圧検査装置及び内圧検査方法によれば、カートンケースに収容された缶の内圧検査を精度良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である内圧検査装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すカートンケースおよび缶の拡大断面図である。
【図3】図1に示す内圧検査装置の吸引部および打検機の周辺を示す拡大断面図である。
【図4】図1に示す内圧検査装置における打検機の下端と上蓋部との高さ距離と、打検時の音響信号の強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る内圧検査装置及び内圧検査方法の好適な実施の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る内圧検査装置の一実施形態を示す概略構成図である。
この内圧検査装置1は、搬入路2と、内圧検査手段3と、排斥部4と、搬出路5と、排出路6と、制御手段7と、吸引器20と、を備える概略構成とされている。
【0018】
搬入路2、搬出路5、および排出路6はそれぞれ、例えば無端ベルト9を図示しない駆動モータにて周回させるコンベアによって形成される。図示の例で、搬入路2、および搬出路5は、無端ベルト9の上面が図中の左側から右側へと移動され、排出路6は、無端ベルト9の上面が図中の上側から下側へと移動される。
【0019】
排斥部4は、カートンケース60が配置搬送される搬送路と、図示しない排斥駆動部とを備えた概略構成とされており、前記排斥駆動部は例えばエアシリンダーにより構成され、前記搬送路に対して進退可能に支持された構成となっている。そして、カートンケース60が前記搬送路上で搬送される過程において、カートンケース60内の内圧値が後述するように適正範囲外にあると判定された場合には、前記排斥駆動部が前進駆動されることによって、カートンケース60は排出路6に移動される。
【0020】
搬入路2の搬送方向上流側には、例えば段ボール紙からなるカートンケース60が載せられる。カートンケース60には、例えばミルク入りコーヒー等の低酸性飲料の製品(内容物)を充填、密封したキャップ付ボトル缶50が、図示の例では、搬送方向に6個、およびこの方向に交差する方向に4個、すなわち4行6列の合計24個収容されている。なお、一般に、これらの缶が陽圧缶の場合は液体窒素が充填され、さらに内容物が低酸性飲料の場合は窒素ガスが充填される。
【0021】
ここで、本実施形態における内圧検査対象としてのキャップ付ボトル缶50を図2を用いて説明する。
このキャップ付ボトル缶50は、図2に示すように、ボトル缶51とキャップ56とを備える概略構成とされ、これらボトル缶51及びキャップ56は、アルミニウム、アルミニウム合金、またはスチールにより形成されている。
なお、ボトル缶51は、本実施形態では、前記金属からなる板状体に、絞り加工、しごき加工を施して有底筒状体を形成した後に、この有底筒状体の開口部にネックイン加工、ねじ切加工、およびカール部形成加工等を施して形成される。
【0022】
ボトル缶51は、大径の胴部52と、この胴部52の缶軸方向上端に、径方向外方へ凸とされた凸曲面状の連結部53を介して連設されるとともに、缶軸方向上方へ向かうに従い漸次縮径した肩部54と、この肩部54の缶軸方向上端部と連設されるとともに、缶軸方向上方へ延在した口金部55とを有する概略構成とされている。この口金部55には雄ねじ部55aが形成されるとともに、この缶軸方向上端部は径方向外方へ折返されたカール部55bが形成されている。
【0023】
キャップ56は、平坦面とされたキャップ天面部57(強制励振部)と、このキャップ天面部57の外周縁部から略垂下してなる側面部58と、キャップ天面部57の内側に配設されたライナー59とを有する概略構成とされている。なお、キャップ56の側面部58の外径は例えば28mm以上42mm以下に設定されている。
そして、キャップ56は、ボトル缶51の口金部55の雄ねじ部55aに、このキャップ56のライナー59が口金部55のカール部55bの上端部と密接した状態で螺着されている。
【0024】
以上のように構成されたキャップ付ボトル缶50は全て、カートンケース60内に、口金部55側の内部に空間51aが形成されるように正立姿勢で収容されている。この正立姿勢において、キャップ付ボトル缶50の内部には、前述した内容物が、ボトル缶51の連結部53より缶軸方向上方位置に至るまで、本実施形態では、肩部54の缶軸方向上部に至るまで充填されている。
このとき、図2に示すように、キャップ付ボトル缶50のキャップ天面部57がカートンケース60の上蓋部61と対向するように位置することになる。
【0025】
内圧検査手段3は、図1に示すように、搬入路2の下流側領域に配設されており、カートンケース60が搬送されている状態で、このカートンケース60内の全てのキャップ付ボトル缶50の内圧を順次各別に検査できるようになっている。
この内圧検査手段3は、図3に示すように、キャップ天面部57の径方向中央部を強制励振させる加振コイル11、およびこの加振コイル11によるキャップ天面部57からの反響音を捉えるマイクロフォン12を備える打検機10を備えている。そして、打検機10は、搬送方向に対して交差する方向に連続して4個配設されており、図1において、搬送方向上流側から下流側へ互いに位置をずらして配設されている。すなわち、打検機10の連設方向(複数の打検機10が配列された方向)と、搬送方向に直交する方向とは所定の角度を有しており、この角度は、マイクロフォン12が、隣に位置するキャップ付ボトル缶50のキャップ天面部57からの反響音を拾わないような時間間隔となるように、例えばカートンケース60の搬送速度や、キャップ56の材質や大きさ等により決定される。
【0026】
内圧検査手段3のマイクロフォン12により得られたキャップ天面部57の反響音は、図1に示す制御手段7に送信され、この制御手段7の演算部7aによりキャップ付ボトル缶50の内圧値を算出し、そして、この内圧値は合否判定部7bに送信され、この合否判定部7bでキャップ付ボトル缶50の内圧値が適正か否かの判定を行う。そして、この判定結果は排斥制御部7cに送信され、ここで排斥部4に配設された図示しない排斥駆動部を制御するようになっている。すなわち、合否判定部7bによりカートンケース60内のキャップ付ボトル缶50全ての内圧値が適正であると判定した場合は、前記排斥駆動部は駆動せず、カートンケース60は搬入路2により搬送され続け、その後、搬出路5上へ至り次工程へ搬送され、カートンケース60内のキャップ付ボトル缶50のうち1本でも内圧値が不適正であると判定した場合には、前記排斥駆動部を駆動させ、カートンケース60を排出路6上に移動し排出するようになっている。
【0027】
なお、演算部7aは、マイクロフォン12により得られた反響音から例えばピーク周波数を算出し、このピーク周波数と、予め設定された缶内圧値とピーク周波数との相関とに基づいてキャップ付ボトル缶50の内圧値を算出するようになっている。
また、合否判定部7bは、演算部7aにより算出された内圧値と、予め設定された適正内圧値とを比較し、算出された内圧値が適正内圧値の範囲内にない場合に不合格と判定し、この範囲内にある場合に合格と判定するようになっている。
【0028】
吸引器20は、図1に示すように、搬入路2の表面の上方に、搬送方向における打検機10の配設位置と略同一位置に配設されている。本実施形態では、打検機10の配設位置を基準に搬送方向上流側に配設された吸引器20aと搬送方向下流側に配設された吸引器20bとを備えている。すなわち、搬送方向に対して交差する方向に並べられた4つの打検機10のそれぞれに、打検機10の搬送方向上流側及び下流側に吸引器20が配設されており、全体で8つの吸引器20が配設されているのである。
【0029】
吸引器20は、図3に示すように、上下に延在する軸線Oに沿って延びるシャフト部21と、シャフト部21の下端に設けられたバキュームパッド23と、シャフト部21の上端部分を支持する上端支持部材26と、これらシャフト部21、バキュームパッド23及び上端支持部材26の高さ位置を調整する高さ調整機構30と、を有している。
【0030】
シャフト部21には、軸線O方向に沿って延在する吸引通路部22が設けられており、この吸引通路部22の上端が図示しない真空排気手段に接続されている。
また、このシャフト部21には、架台29に固定されたスリーブ27が外嵌されており、シャフト部21は、スリーブ27に対して上下方向に移動可能とされている。
さらに、シャフト部21の上端を支持する上端支持部材26は、シャフト部21に対して軸線O方向に相対移動しないようにシャフト部21を支持しており、その外周面に雄ネジが形成されている。
【0031】
シャフト部21の下端に設けられたバキュームパッド23の先端面24には吸引口25が設けられており、この先端面24がカートンケース60の上蓋部61の保持面とされている。
各バキュームパッド23は、比較的硬度が高く、かつ摩擦係数の小さい樹脂材料として、例えばポリ4フッ化エチレンを重合した合成樹脂により、円板状に形成されており、このバキュームパッド23の先端面24には、大径の孔が形成されるとともに、この孔の底面における径方向中央部に吸引口25が配設された構成となっている。また、バキュームパッド23の先端部24の外周面は、この先端面24に向うに従い漸次縮径されたテーパ形状とされている。
【0032】
高さ調整機構30は、スリーブ27の外周側に配設されたインナーシャフト31と、このインナーシャフト31及び上端支持部材26の外周側に配設された回転部材32と、この回転部材32の外周面に配設された第1タイミングプーリ33と、ステッピングモータ34と、ステッピングモータ34の回転軸に配設された第2タイミングプーリ35と、第1タイミングプーリ33と第2タイミングプーリ35とに掛け渡されたタイミングベルト36と、ステッピングモータ34の動作を制御するモータ制御部38と、を備えている。
回転部材32の内周面には雌ネジが形成されており、上端支持部材26の外周面に形成された雄ネジと螺合する構成とされている。
インナーシャフト31は、ピン部材によってスリーブ27に固定されている。また、インナーシャフト31の外周面と回転部材32の内周面の間には、軸受部材37が配設されている。
【0033】
ここで、ステッピングモータ34の回転軸を回転させると、第2タイミングプーリ35の回転がタイミングベルト36を通じて第1タイミングプーリ33へと伝達され、回転部材32が軸線O回りに回転することになる。
回転部材32は、軸線O方向への移動が規制されており、回転部材32が回転することで、上端支持部材26が軸線O方向に移動することになる。これにより、上端支持部材26に支持されたシャフト部21及びバキュームパッド23が軸線O方向に移動する。
なお、このステッピングモータ34の動作は、モータ制御部38によって制御されており、バキュームパッド23の高さ位置が調整されることになる。
【0034】
ここで、打検機10の搬送方向上流側に位置する吸引器20aのさらに上流側には、搬送されてくるカートンケース60の上蓋部61の高さ位置を検知するレーザ変位計40が配設されている。なお、本実施形態においては、レーザ変位計40は、各打検機10にそれぞれ対応するように複数(4つ)並列されている。このレーザ変位計40の測定値は、モータ制御部38へ伝送される。
さらに、本実施形態においては、モータ制御部38は、打検機10とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hが所定範囲となるようにステッピングモータ34へ指令を与え、上蓋部61を吸引した状態において搬送方向上流側の吸引器20a及び搬送方向下流側の吸引器20bのバキュームパッド23の先端面24の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御する。
【0035】
以上のように構成された内圧検査装置1により、キャップ付ボトル缶50の内圧を検査する方法について説明する。
まず、搬入路2によりカートンケース60を搬送し、このカートンケース60を搬入路2に沿って配設された内圧検査手段3の配設位置に至らせる。この際、カートンケース60内に収容されたキャップ付ボトル缶50の全てが、図2に示すように、これらのキャップ付ボトル缶50の口金部55側の内部に空間51aが形成されるように正立姿勢となっている。
【0036】
カートンケース60が搬送され、図3に示すように、カートンケース60がレーザ変位計40の下側を通過する。このとき、レーザ変位計40によってカートンケース60の上蓋部61の高さ位置が測定され、測定値がモータ制御部38へと伝送される。このモータ制御部38からステッピングモータ34へ指令が与えられ、バキュームパッド23の高さ位置が調整される。
ここで、バキュームパッド23の先端面24の全面がカートンケース60の上蓋部61の外表面と当接すると、吸引通路部22を介してバキュームパッド23の吸引口25からエアを吸引することによって、上蓋部61は吸引口25から吸い上げられるエアとともに吸い上げられ、バキュームパッド23の先端面24に吸着される。これにより、上蓋部61が上方へ移動され、キャップ付ボトル缶50のキャップ天面部57と上蓋部61とが非接触状態となる。
【0037】
次に、前記非接触状態を維持した状態で、カートンケース60を搬送する。このとき、カートンケース60の上蓋部61は、打検機10の搬送方向下流側に配設された吸引器20によって吸引されることになる。
本実施形態では、打検機10とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hが所定範囲内となるように、モータ制御部38からの指令によって搬送方向上流側の吸引器20a及び搬送方向下流側の吸引器20bのバキュームパッド23の高さ位置がそれぞれ別途独立に制御される。
【0038】
ここで、打検機10とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hと、音響信号の強度との関係を、図4及び表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
図4及び表1を参照すると、加振コイル11とカートンケース60の上蓋部61との高さ距離hが4.0mmと離れた場合あるいは0.5mm以下と近接した場合には、音響信号が小さくなり、マイクロフォンによって音響信号を得ることができず、内圧検査が精度良く行うことができないおそれがある。一方、加振コイル11とカートンケース60の上蓋部61との高さ距離hを1.0mm以上3.5mm以下の範囲内とした場合には、音響信号の強度が十分に高く、内圧検査を確実に実施することができる。さらに、加振コイル11とカートンケース60の上蓋部61との高さ距離hを1.5mm以上2.5mm以下の範囲内とした場合には、さらに音響信号の強度が高くなるので好ましい。
なお、本実施形態では、打検機10(加振コイル11)とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hを、1.0mm≦h≦3.5mmの範囲内とした。
【0041】
この状態で、打検機10においては、加振コイル11によりキャップ天面部57を電磁誘導作用によって強制励振させる。そして、この際のキャップ天面部57からの反響音をマイクロフォン12により捉える。その後、この反響音を制御手段7の演算部7aに送信し、この演算部7aにより、例えばピーク周波数を算出する。そして、このピーク周波数と、予め設定されていた缶内圧値とピーク周波数との相関とに基づいてキャップ付ボトル缶50の内圧値を算出し、その後、この内圧値を合否判定部7bに送信し、この合否判定部7bにより、送信された缶内圧値と予め設定された適正内圧値とを比較し、缶内圧値が適正内圧値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0042】
以上の前記強制励振から缶内圧値の判定までを、カートンケース60を前記非接触状態で搬送しながら、カートンケース60に収容された全てのキャップ付ボトル缶50について実施する。
ここで、カートンケース60を前記非接触状態で搬送する際、カートンケース60は、バキュームパッド23の先端面24を上蓋部61の外表面が滑りながら搬送される。これにより、カートンケース60を搬送した状態で上蓋部61とキャップ天面部57との非接触状態が実現される。
【0043】
そして、キャップ付ボトル缶50のうち1つでも缶内圧値が適正内圧値の範囲外にあると判定した場合には、排斥部4の排斥駆動部を駆動し、このカートンケース60を排出路6に移動させ、この排出路6よりカートンケース60を排出する。
カートンケース60に収容された全てのキャップ付ボトル缶50の内圧値が適正範囲内にあると判定した場合には、排斥部4の排斥駆動部を駆動させず、このカートンケース60を搬出路5に至らせ、次工程に搬出する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態による内圧検査装置1及び内圧検査方法によれば、吸引器20の搬送方向上流側に配置されたレーザ変位計40によってカートンケース60の上蓋部61の高さを検知し、この上蓋部61の高さに応じて吸引器20のバキュームパッド23の高さ位置を調整できるので、上蓋部61の高さ位置が大きく変化する場合であっても上蓋部61を吸引器20で確実に吸引することが可能となる。よって、内圧を検査するキャップ付ボトル缶50とカートンケース60の上蓋部61とを非接触状態として打検を実施することができ、缶の内圧検査を精度良く実施することができる。
【0045】
また、本実施形態では、打検機10の搬送方向上流側及び搬送方向下流側に、それぞれ吸引器20a,20bが配設されているので、これらの吸引部20a,20bによって上蓋部61を吸引することで、打検機10の位置において上蓋部61とキャップ付ボトル缶50との接触を確実に防止することができる。また、搬送方向上流側の吸引器20aと、搬送方向下流側の吸引器20bは、それぞれ別途独立してそのバキュームパッド23の高さ位置が調整可能とされているので、それぞれ上蓋部61を確実に吸引することができる。また、上蓋部61が大きく上方に突出していた場合でも、打検機10の搬送方向上流側に配置された吸引部20aによって上蓋部61の高さ位置を調整することができ、打検機10と上蓋部61との衝突を防止できる。
【0046】
さらに、本実施形態では、打検機10(加振コイル11)とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hが所定範囲内となるように、モータ制御部38からの指令によって搬送方向上流側の吸引器20a及び搬送方向下流側の吸引器20bのバキュームパッド23の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御するので、打検による音響信号を安定して得ることができ、内圧検査を精度良く実施することが可能となる。特に、本実施形態では、打検機10(加振コイル11)とカートンケース60の上蓋部61との間の高さ距離hが、1.0mm≦h≦3.5mmの範囲内とされているので、音響信号の強度が十分高く、打検による内圧検査を精度良く実施することができる。
【0047】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、測定対象のキャップ付ボトル缶として、胴部と一体に形成されてなる底部を有する缶を示したが、底蓋を巻締めた構成の缶であっても適用可能である。また、キャップ付ボトル缶でなく、通常缶であってもよい。
また、内圧検査装置は、キャップ天面部を強制励振させて内圧を検査するものとして説明したが、これに限定されることはなく、いわゆる缶の底部を強制励振させて内圧を検査する場合にも適用可能である。
しかしながら、キャップ付ボトル缶のキャップ天面部は平坦面とされるとともに、缶軸方向における最も高所に位置しているので、カートンケースの上蓋部の内表面と特に接触し易く、このキャップ天面部を強制励振させるときに、このキャップ天面部の自由振動を阻害する可能性が極めて高いため特に著しい効果を奏することになる。
【0048】
また、本実施形態では、カートンケースに、搬送方向に6個、およびこの方向に交差する方向に4個、すなわち4行6列の合計24個の缶が収容されたものを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、例えば5行6列の合計30個の缶が収容されたカートンケースを対象としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
内容物が充填された缶の内圧を高精度にかつ高効率に検査することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 内圧検査装置
2 搬入路(搬送手段)
10 打検機
20 吸引器
30 高さ調整機構(吸引器高さ調整機構)
38 モータ制御部(上蓋部高さ制御部)
40 レーザ変位計(上蓋検知部)
50 キャップ付ボトル缶(缶)
60 カートンケース
61 上蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填、密封された缶を複数梱包したカートンケースを搬送する搬送手段と、この搬送手段に沿って配設され、前記カートンケース内の缶を強制励振させるとともに、この際の当該缶からの反響音を捉える構成とされた打検機と、を備える内圧検査装置であって、
搬送方向における前記打検機の配設位置と略同一位置には、前記カートンケースの上蓋部を吸引して、前記上蓋部と前記缶とを非接触状態に維持する吸引器が設けられており、
前記吸引器の前記搬送方向の同一位置又は上流側に、前記カートンケースの上蓋部の高さ位置を検知する上蓋検知部が配設されており、
前記吸引器には、前記上蓋検知部による測定値に応じて、前記吸引器の高さ位置を調整する吸引器高さ調整機構が備えられていることを特徴とする内圧検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内圧検査装置において、
前記吸引器は、前記打検機の搬送方向上流側及び下流側にそれぞれ配設されており、前記搬送方向上流側の吸引器と、前記搬送方向下流側の吸引器は、それぞれ別途独立して前記吸引器の高さ位置が調整されることを特徴とする内圧検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内圧検査装置において、
前記打検機と前記カートンケースの上蓋部との間の高さ距離が所定範囲内となるように、前記上蓋部を吸引した状態において前記搬送方向上流側の吸引器及び前記搬送方向下流側の吸引器の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御する上蓋部高さ制御部を備えていることを特徴とする内圧検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内圧検査装置において、
前記上蓋部高さ制御部は、前記打検機の位置において前記カートンケースの上蓋部が水平方向を向くように、前記上蓋部を吸引した状態で前記搬送方向上流側の吸引器及び前記搬送方向下流側の吸引器の高さ位置をそれぞれ別途独立に制御することを特徴とする内圧検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内圧検査装置を用いた内圧検査方法であって、
前記上蓋検知部によって測定された前記カートンケースの上蓋部の高さ位置に応じて、前記吸引器の高さ位置を調整し、前記吸引器によって前記上蓋部と前記缶とを非接触状態に維持した状態で、前記打検機により、前記カートンケース内の缶を強制励振させるとともに、この際の当該缶からの反響音を捉えることを特徴とする内圧検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255726(P2012−255726A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129245(P2011−129245)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】