説明

内容物の収納容器

【課題】高粘度の内容物に対しても使用が可能であって、漏れなく略一定量の内容物を吐出可能であり、構造の比較的単純な、内容物の収納容器の提供。
【解決手段】内容物の収納室11を備えた容器本体と、収納室11よりも容積及び断面積の小さな吐出室21を備えた吐出部とを有し、容器本体への加圧により、略一定量の内容物を吐出口22から吐出できるもので、吐出室21に弾性体5と共に備えられた移動弁4が、常時は吐出口22から離れた位置に配位されており、上記の加圧によって、吐出室21を吐出口22の側へと接近するように移動し、移動弁4の一部が吐出口22を覆うことで、吐出口22を閉ざすことができるものであり、吐出口22が閉ざされた際に、移動弁4の一部が吐出口22を覆った箇所を除き、吐出口22の周囲における吐出室壁面33bと移動弁4との間に均衡用隙間Yが保たれた、内容物の収納容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、流動性を有する内容物を、操作のたびに略一定量取り出すことのできる収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平10−24951号公報
【特許文献2】特開平11−333338号公報
【0003】
従来から、流動性を有する内容物、特にシャンプー、リンス、洗顔料、ハンドクリーム等の一般的な高粘度内容物はチューブ容器に封入されている。チューブ容器は内容物の吐出操作が簡単で、残量も少なく取り扱いが容易であるという利点を持っているが、胴部に対する指先での押圧程度を一定化させることが困難であるため、一回の吐出操作による内容液の吐出量が一定せず、吐出操作の度に使用する内容物の過不足が発生する場合が多いという問題があった。また、シャンプーやリンスにはポンプタイプの容器が多く使用されており、一押しで略一定量の内容物を吐出させることができるが、内容物の残量が減少した場合に、途中で吐出が不可能になってしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1にはスクイズ性を用いた一定量吐出容器が記載されている。これは、容器の注出部分に、容器を押圧することによって生じる内容物の流出力によって移動して、一定量注出後、注出口を閉鎖する昇降プレートを設けたものであるが、この昇降プレートは、注出後に外気が注出口から吸引されるのと共に、元の位置に復帰するものであるため、内容物が低粘度の液体の場合は問題ないものの、高粘度の液体では昇降プレートを復帰させることができないため、使用できなかった。また、昇降プレートの動作が内容物の流出力任せであるため、容器の押圧具合によっては、昇降プレートの復帰が不十分で、一定量の吐出後に漏れが発生することもあった。
また、特許文献2に記載の発明では、高粘度内容物を一定量吐出できるものであるが、構造が複雑であり高価なものであった。
【0005】
本願発明はこのことに鑑み、高粘度の内容物に対しても使用が可能であって、漏れなく略一定量の内容物を吐出可能な、内容物の収納容器を提供することを課題とする。また、構造の比較的単純な、内容物の収納容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、内容物の収納室11を備えるとともに、内容物に対して加圧できるように構成された容器本体1と、上記の収納室11に連続し、収納室11よりも容積及び断面積の小さな吐出室21を備えた吐出部2とを有し、上記の吐出部2は、内容物を容器外部に吐出するための吐出口22を有し、上記の容器本体1への加圧により、少なくとも吐出室21に存在する、略一定量の内容物を吐出口22から吐出できるようにした収納容器であって、吐出室21には移動弁4を備えたものであって、この移動弁4は、常時は、吐出口22から離れた位置に配位されており、上記の加圧によって、吐出室21を吐出口22の側へと接近するように移動し、移動弁4の一部が吐出口22を覆うことで、吐出口22を閉ざすことができるものであり、また吐出室21には、上記の移動弁4を吐出口22から離れる方向に付勢する弾性体5を備え、上記のようにして吐出口22が閉ざされた際において、移動弁4の一部が吐出口22を覆った箇所を除き、吐出口22の周囲における吐出室壁面33bと移動弁4との間に、均衡用隙間Yが保たれたことを特徴とする、内容物の収納容器を提供する。
なお、上記の「均衡用間隔Yが保たれた」状態とは、偶発的に吐出室壁面33bと移動弁4とが当接する場合も含まれるものとする。
【0007】
また、本願の請求項2に記載の発明は、吐出室21に、移動弁4の移動を規制するためのガイド部3が設けられたものであり、このガイド部3は、筒状の本体部31を有し、その一端側が吐出室21における収納室11の側に、他端側が吐出室21における収納室11から離れた側に配位されたものであり、本体部31の一端側が開口されており、同他端側は、吐出口22を除いて閉鎖されており、また、このガイド部3は、移動弁4の収納室11の側への移動を当接によって規制するストッパー部32を有し、このストッパー部32は、上記本体部31の一端側の一部を覆うように、本体部31の一端側端部よりも収納室11の側に設けられたものであって、これにより、ガイド部3には、内容物が収納室11からガイド部3の内部へと流入可能とされた流入開口部34が形成され、移動弁4及び弾性体5は、ガイド部3の内部に配位され、移動弁4はガイド部3における本体部31の内周面に沿う被規制面41aを有し、上記流入開口部34は、移動弁4が上記のストッパー部32によって規制された位置にある場合に、移動弁4の被規制面41aによって一部が塞がれ、この状態で、ガイド部3における本体部31の一端側端部31aと、移動弁4の被規制面41aにおける吐出口側端部41bとの間に、内容物が流入可能な流入用隙間Xが残存するものであり、上記流入用隙間Xの、吐出室21の軸方向に沿う寸法が、1〜3mmであることを特徴とする、請求項1に記載の内容物の収納容器を提供する。
【0008】
また、本願の請求項3に記載の発明は、吐出室21に、移動弁4の移動を規制するためのガイド部3が設けられたものであり、このガイド部3は、筒状の本体部31を有し、その一端側が吐出室21における収納室11の側に、他端側が吐出室21における収納室11から離れた側に配位されたものであり、このガイド部3は、ガイド部3の側面と吐出部2の内壁との間に、内容物が流入な可能な間隔を持って配位されたものであって、本体部31の側面には、内容物が通過可能なスリット35が設けられたものであって、また、このガイド部3は、移動弁4の収納室11の側への移動を当接によって規制するストッパー部32を一端側に有し、移動弁4及び弾性体5がガイド部3の内部に配位されたことを特徴とする、請求項1に記載の内容物の収納容器を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願の請求項1に記載の発明は、移動弁4を吐出口22から離れる方向に付勢する弾性体5を備えたことにより、構造が比較的単純でありながら、高粘度の内容物に対しても使用が可能であって、漏れなく略一定量の内容物を吐出可能な収納容器を提供することができたものである。
また、吐出口22が閉ざされた際において、移動弁4の一部が吐出口22を覆った箇所を除き、吐出口22の周囲における吐出室壁面33bと移動弁4との間に、均衡用隙間Yが保たれたことにより、この均衡用隙間Yの分、吐出室壁面33bと移動弁4との間に余裕が存在することとなり、弾性体5の反発力と、容器本体1の加圧によって移動弁4に働く力とが均衡し、これにより、移動弁4のずれを防止することができ、漏れを有効に防止できたものである。
【0010】
また、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された発明の効果に加え、ガイド部3と移動弁4との間に、内容物が流入可能な流入用隙間Xが残存し、この流入用隙間Xの、吐出室21の軸方向に沿う寸法を1〜3mmとしたことにより、収納室11からガイド部3の内部への内容物の流入が容易になされることと、容器本体1の加圧による移動弁4の移動が阻害されないことが両立できたものである。
【0011】
また、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1に記載された発明の効果に加え、本体部31の側面に内容物が通過可能なスリット35が設けられたことにより、特に高粘度の内容物に適した収納容器を提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本願発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。図1は本例の収納容器を示す斜視図であり、図2は本例の第1実施例及び第2実施例に係る吐出機構の各々を示す斜視図であり、図3及び図4は第1実施例に係る吐出機構を示す縦断面図であり、図5は第2実施例に係る吐出機構を示す縦断面図である。
【0013】
本例の収納容器は、図1に示すようなもので、内容物の収納室11を備えるとともに、内容物に対して加圧できるように構成された容器本体1と、上記の収納室11に連続し、収納室よりも容積及び断面積の小さな吐出室21を備えた吐出部2を有する。吐出部2は、内容物を容器外部に吐出するための吐出口22を有している。
なお、本例の収納容器では、不使用時に吐出口22を塞ぐことができるキャップ6が設けられているが、これは本願発明において必須のものではない。
【0014】
容器本体1は、プラスチックなどからなり、外周を押圧することによって変形させることができ、この押圧を解除することにより、元の形態に復帰できるものとする。吐出部2は、本例では、図1に示すように、容器本体1の一部が突出した部分である。この吐出部2については、上記の容器本体1と異なり、剛性を有するものとすることが望ましい。
【0015】
本例では、図2に示すように、吐出室21に略一定量の内容物を取り出すための吐出機構が設けられている。この吐出機構は、内部に空間を有するガイド部3と、このガイド部3の内部に配位された移動弁4及び弾性体5を備えたものである。まず、図2(A)に示す第1実施例について以下に説明する。
【0016】
なお、この第1実施例に係る吐出機構は、主に、内容物が300mPa・s以下の比較的低粘度である場合に用いられる。後述の実験結果によると、内容物の粘度が100mPa・s以下の場合では良好な吐出がなされ、1000mPa・s以上では吐出不能であったことが確認されている。
【0017】
ガイド部3は、吐出室2の内部において移動弁4の移動を規制するためのものである。
第1実施例のガイド部3は、図2(A)に示すように、円筒状の本体部31を有し、その一端側(図示上側)が吐出室2における収納室11の側に、他端側(図示下側)が吐出室2における収納室2から離れた側に配位される。
本体部31の一端側は開口されており、同他端側は、吐出口22を除いて閉鎖されている。なお、本実施例では、図3(A)などに示すように、本体部31の他端側に別部材である吐出部33が嵌合により取り付けられており、吐出口22は、この吐出部33の中央に設けられた円形孔とされている。なお、吐出口22はこれに限らず、本体部31を一端側が閉鎖された筒状に一体形成し、その閉鎖された側の端面に設けた孔であっても良い。
【0018】
本実施例におけるガイド部3は、図3(A)などに示すように、吐出室21のほぼ全部を占めるように配位されたものであって、吐出部の内壁22とガイド部3の側面との間は隙間がほとんど存在しないものとされているが、内容物が流入可能な隙間を設けたものであっても良い。
【0019】
ガイド部3の内部には移動弁4を備える。この移動弁4は、常時は吐出口22から離れた位置に配位されており(図3(A)参照)、容器本体1を加圧することによって、吐出室21において吐出口22の側へと接近するように移動し、吐出口22を閉ざすことができるものである(図4(B)参照)。
【0020】
本実施例の移動弁4は、直径の異なる円筒状体が重ね合わされ、図3(A)などに示すように、基部41と、基部41よりも吐出口22の側に形成され、基部41よりも直径の小さな小径部42とを備える。そして更に、小径部42よりも吐出口22の側に円錐台状の嵌合突起43が設けられる。この嵌合突起43は、図4(B)に示すように、本実施例では、吐出口22に一部が嵌まり込むことによって吐出口22が閉ざされるものとされているが、図5(B)に示す第2実施例のように、少なくとも移動弁4の一部が吐出口22を覆うことによって吐出口22が閉ざされるものであれば良く、種々の形態で実施が可能である。なお、移動弁4の収納室11の側は開放されており、この部分にも内容物が流入可能とされている。
【0021】
また、本実施例における移動弁4は、ガイド部3における本体部31の内周面に沿う被規制面41aを有する。本実施例における被規制面41aは、上記のように重ね合わされた直径の異なる円筒状体のうち、最も直径の大きな部分である基部41の外周面とされている。この被規制面41aと本体部31の内周面との間には、内容物の粘性によっても差異があるものの、ガイド部3の内部における移動弁4の移動が円滑になされる程度であって、かつ、内容物の自由な流通が阻止される程度の間隔が設けられる。
【0022】
上記に加え、ガイド部3の内部には、上記の移動弁4を、吐出口22から離れる方向に付勢する弾性体5を備える。本実施例ではつるまきばねが用いられており、一端が移動弁4の小径部42に、他端がガイド部3の吐出部33に配位されたものとされている。なお、ばねの形式は特に限定されるものではなく、種々の形式で実施が可能である。
【0023】
本実施例のガイド部3は、図2(A)に示すように、移動弁4の収納室11の側への移動を当接によって規制するストッパー部32を有する。このストッパー部32は、上記本体部31の一端側の一部を覆うように、本体部31の一端側端部よりも収納室11の側に突出するように、本体部31と一体に設けられたものである。これにより、ガイド部3には、本体部31とストッパー部32との隙間として、内容物が収納室11からガイド部3の内部へと流入可能とされた流入開口部34が形成される。本実施例では、本体部31の一端側端部に十字状に渡されるようにして形成されている。また、本実施例では、このストッパー部32の十字状の交点部分に中央流入孔32aが貫通して設けられており、この中央流入孔32aからもガイド部3の内部に内容物が流入可能とされている。
【0024】
上記のようにして形成された、第1実施例に係る吐出機構は、図3(A)(B)及び図4(A)(B)に示すようにして動作する。まず、容器本体1が加圧されない、図1に示すような常時の状態では、図3(A)に示すように、移動弁4が弾性体5によって押圧され、ストッパー部32に当接した状態にある。
【0025】
この状態において、上記の流入開口部34は、移動弁4の被規制面41aによって一部が塞がれている。この状態で、ガイド部3における本体部31の一端側端部31aと、移動弁4の被規制面41aにおける吐出口22の側の端部41bとの間に、内容物が流入可能な流入用隙間Xが残存する。
この流入用隙間Xの寸法は、大きすぎる場合は、隙間から内容物が流入するばかりで、移動弁4の移動がなされないものとなり、また、小さすぎる場合は、上記の収納室11からガイド部3の内部への内容物の流入が困難となるため、収納室11からガイド部3の内部への内容物の流入が容易になされること、及び、後述する容器本体1の加圧による移動弁4の移動が阻害されないことが両立できる最適な寸法とする。なお、この流入用隙間Xの寸法を決定する際には、内容物の粘度も考慮する必要がある。本実施例では、この寸法が1〜3mmとされている。
【0026】
内容物を吐出するには、まず、収納容器を図1に示した状態から上下を逆にする。この状態においても吐出機構は、依然、図3(A)に示した状態を保っている。この状態では、重力の影響を受けて、収納室11に存在する内容物の一部が上記の流入開口部34に残存している流入用隙間Xから流れ込んでガイド部3の内部を満たす。
【0027】
次に、キャップ6を取り外した状態で容器本体1を押して加圧すると、収納室11における内容物の圧力の方がガイド部3の内部における内容物の圧力よりも高くなる。この圧力差を移動弁4が受け、図示下方に移動し始める。図3(B)はその途中の状態で、上記のようにガイド部3と移動弁4との間に存在していた流入用隙間Xがなくなる。この状態において移動弁4と吐出口22との間におけるガイド部3の内部に存在している内容物は、移動弁4の移動に伴い、吐出口22から収納容器の外部に押し出される。その後、図4(B)に示すように、移動弁4の嵌合突起43の一部が吐出口22に嵌まることによって、吐出口22が閉ざされ、内容物の吐出が終了する。この一連の過程により、略一定量の内容物を吐出口22から取り出すことができる。
【0028】
そして、容器本体11への加圧状態がなくなることで、移動弁4に対し、図示下方に押し付ける力が働かなくなると、弾性体5が伸長しようとするため、移動弁4は図示上方へと移動し、図3(A)の状態に復帰する。
ここで、特許文献1に記載された発明においては、昇降プレートが自然に元の状態に復帰するものであったため、途中で昇降プレートが引っ掛かってしまう可能性もあったが、本実施例では、移動弁4が弾性体5によって強制的に元の状態に復帰するものであるため、確実に移動弁4の復帰がなされる。
【0029】
ここで、特許文献1に記載されていた、移動弁4に相当する昇降プレートは、周囲に内容物が通過可能な通過部が設けられていたため、昇降プレートの移動中も通過部を内容液が通過するものであった。そのため、吐出量の定量性が確保されない可能性があった。これに対し、本願発明においては、ガイド部3と移動弁4との間で、移動弁4の移動が円滑になされる程度の隙間が設けられているだけであるため、相対的には定量性が向上している。
【0030】
なお、本実施例では、移動弁4の移動中における最終過程において、図4(A)に示す状態を経て、吐出口22が閉ざされた状態(図4(B)参照)へと至る。ここで、図4(A)に示す状態では、吐出部33のうち、本体部31との嵌合のために、本体部31の内部へと張り出した張出部33aの図示上端と、移動弁4の小径部42の図示下端とが一致する。なお、張出部33aの内径寸法と小径部42の外径寸法の間には、後述する側方隙間Z分の2倍分の差がある。そして、張出部33aと移動弁4とによって規定された先端空間23の容量分の内容物は、この図4(A)に示した状態以降、移動弁4が図示下方に移動すると共に吐出口22から吐出される。この際、設けられた側方隙間Zはガイド部3の内径に比べて小さく、ガイド部3と移動弁4との間の隙間を通って、移動弁4よりも図示上方に存在する内容物が、この先端空間23に流入してしまうことはほとんどないため、吐出量の定量性がより高められる。
【0031】
そして、図4(B)における状態では、吐出口22が嵌合突起43と嵌合されたことによって閉ざされているが、この吐出口22と嵌合突起43との嵌合を除き、吐出部33の内面である吐出室壁面33bと移動弁4との間には間隔が保たれる。この間隔のうち、特に、吐出部33における張出部33aの図示上端と、移動弁4の基部41の図示下端との間に均衡用隙間Yが保たれることが機能上重要である。本例では、この均衡用隙間Yが0.2mmとされている。
【0032】
上記の均衡用隙間Yが存在せず、密着した状態では、移動弁4に図示上下方向の余裕がないため、一時的には移動弁4が吐出口22を閉ざすものの、圧縮された弾性体5の反発力により、移動弁4が図示上方にずれてしまうことがあって、安定して吐出口22を閉ざすことができずに内容物の漏れが発生する可能性がある。
これに対して、上記のように均衡用隙間Yが保たれた状態では、この均衡用隙間Yの分、図示上下方向の余裕が存在することとなり、弾性体5の図示上方向への反発力と、容器本体1の加圧によって移動弁4に働く、図示下方向への力とが均衡し、これにより、移動弁4のずれを防止することができ、漏れを有効に防止できる。
【0033】
同様に移動弁4のずれを防止するために、吐出部33における張出部33aの内周面と、移動弁4の小径部42の外周面との間にも側方隙間Zが保たれる。この側方隙間Zは、本例では、上記の均衡用隙間Yである0.2mmに、弾性体5の直径分の0.2〜0.4mmが加えられた0.4〜0.6mmとされている。
【0034】
次に、図2(B)に示した第2実施例に係る吐出機構について述べる。なお、以下の説明では、上記第1実施例と相違する点について主に述べる。また、図中の記号についても、一部を除き、第1実施例と共通のものを用いて説明する。
【0035】
この第2実施例の吐出機構は、主に、内容物が300mPa・s以上の比較的高粘度であって、第1実施例の吐出機構では内容物の移動が困難であり、適用できない場合に用いられる。後述の実験結果によると、内容物の粘度が100mPa・s以下の場合では安定した吐出が不能で、1000mPa・s以上では良好な吐出がなされたことが確認されている。
第1実施例の吐出機構との最大の相違点は、図2(B)に示すように、ガイド部3における本体部31の側面に、内容物が通過可能なスリット35が設けられたことにある。このスリット35は、第1実施例と同様に円筒状の本体部31の側面に、周方向の60°毎に、図示上下方向の全寸法にわたって設けられている。
【0036】
本実施例のガイド部3には、第1実施例と同じように、移動弁4の収納室11の側への移動を当接によって規制するストッパー部32を有する。このストッパー部32は、本体部31の一端側端部に対し、「Y」字状に渡されるようにして、本体部31と一体に形成されたものである。また、本実施例でも、「Y」字状の交点部分に、中央流入孔32aが設けられており、ここからガイド部3の内部に内容物が流入可能とされている。
【0037】
なお、本実施例では、本体部31とストッパー部32とは一体に形成されているため、外観上も一体となっている。また、流入開口部34とスリット35も一体である。よって、スリット35は、流入開口部34のうち、ガイド部3の側面側に形成されたものが、図示下方に延長されたものであるとも言える。
【0038】
また、本実施例では、ガイド部3が、吐出室21の断面寸法に比べ小さく形成され、吐出部の内壁22とガイド部3の側面との間に、内容物が流入可能な隙間12が設けられる。これにより、図5に示すように、吐出室21において、ガイド部3の流入開口部34及びスリット35を通過して内容物がガイド部3の内部を通り、吐出口22から吐出される。
【0039】
本実施例における移動弁4は、第1実施例と同様、ガイド部3の内部を移動して、吐出口22を閉ざすものである。第1実施例では、容器本体1の加圧によって、移動弁4を挟んで生じる圧力差によって移動するものとされているが、本実施例では、容器本体1の加圧によって、吐出室21において生じる内容物の流れに乗って移動することが相違する。
なお、本実施例における移動弁4の形状は、上記第1実施例のものとは異なり、嵌合突起43は設けられておらず、図5(B)に示すように、小径部42の図示下端面が覆うことで吐出口22が閉ざされるものとされているが、これに限られるものではなく、種々の形態で実施が可能である。
【0040】
本実施例において内容物を吐出するには、まず、収納容器を図1に示した状態から上下を逆にする。この状態において吐出機構は、図5(A)に示した状態にある。
【0041】
次に、キャップ6を取り外した状態で容器本体1を押して加圧すると、その加圧に応じて内容物が吐出口22から吐出し始め、収納室11から吐出口22へ向かう内容物の流れが発生する。この流れは、吐出室21において、ガイド部3の流入開口部34及びスリット35を通過してガイド部3の内部を通り抜けるものであるが、これと共に、ガイド部3の中央流入孔32aを通じて、ガイド部3の内部における移動弁4の図示上方側の空間にも流入する。この内容物の流れを受けて、移動弁4が図示下方に移動し始める。そして、最終的には、図5(B)に示すように、移動弁4の小径部42と吐出口22とが当接することによって、吐出口22が閉ざされ、内容物の吐出が終了する。これにより、略一定量の内容物を吐出口22から取り出すことができる。
【0042】
そして、容器本体11への加圧状態がなくなることで、移動弁4に対し、図示下方に押し付ける力が働かなくなると、弾性体5が伸長しようとするため、移動弁4は図示上方へと移動し、図4(A)の状態に復帰する。本実施例でも、第1実施例と同様、移動弁4が弾性体5によって強制的に元の状態に復帰するものであるため、確実に移動弁4の復帰がなされる。
【0043】
ここで、本願の発明者が、上記に説明した第1実施例と第2実施例とに係る吐出機構を試作し、下記の試験を行なったのでこれについて記す。
試験方法は、ポリエチレン製である、容量が100mlの収納容器に、表1に示した5種類の検体(内容物)を各々90g充填した後、第1実施例と第2実施例とに係る吐出機構を取り付けて、5回吐出させることを3セット行い、各回の吐出量を計測した。そして各セットごとに各回の吐出量の平均値を算出した。なお、水以外の検体に関しては、粘度を一定にするために、市販のジメチルシリコンオイルを使用した。
【0044】
【表1】

【0045】
第1実施例に関する結果を表2に示す。粘度が100mPa・s以下では、定量の吐出ができたが、粘度が1000mPa・s以上では、全く吐出されなくなった。
【0046】
【表2】

【0047】
第2実施例に関する結果を表3に示す。粘度が50mPa・s以下では、1回目の吐出で内容物が止まらずに全量吐出されてしまった。また、粘度100mPa・sでは、吐出されるが全く吐出量が安定しなかった。そして、粘度1000mPa・s以上では、安定した吐出が得られるようになった。
【0048】
【表3】

【0049】
上記結果より、第1実施例に係る吐出機構は、内容物が比較的低粘度である場合に適するものであり、第2実施例に係る吐出機構は、内容物が比較的高粘度である場合に適するものであることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本例の収納容器を示す斜視図である。
【図2】(A)は第1実施例に係る吐出機構を示す斜視図であり、(B)は第2実施例に係る吐出機構を示す斜視図である。
【図3】(A)(B)とも、第1実施例に係る吐出機構の動作を示す縦断面図である。
【図4】(C)(D)とも、第1実施例に係る吐出機構の動作を示す縦断面図である。
【図5】(A)(B)とも、第2実施例に係る吐出機構の動作を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
11 収納室
2 吐出部
21 吐出室
22 吐出口
3 ガイド部
31 本体部
31a 本体部の一端側端部
32 ストッパー部
33b 吐出室壁面
34 流入開口部
35 スリット
4 移動弁
41a 被規制面
41b 被規制面の吐出口側端部
5 弾性体
X 流入用隙間
Y 均衡用隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の収納室(11)を備えるとともに、内容物に対して加圧できるように構成された容器本体(1)と、
上記の収納室(11)に連続し、収納室(11)よりも容積及び断面積の小さな吐出室(21)を備えた吐出部(2)とを有し、
上記の吐出部(2)は、内容物を容器外部に吐出するための吐出口(22)を有し、
上記の容器本体(1)への加圧により、少なくとも吐出室(21)に存在する、略一定量の内容物を吐出口(22)から吐出できるようにした収納容器であって、
吐出室(21)には移動弁(4)を備えたものであって、
この移動弁(4)は、常時は、吐出口(22)から離れた位置に配位されており、上記の加圧によって、吐出室(21)を吐出口(22)の側へと接近するように移動し、
移動弁(4)の一部が吐出口(22)を覆うことで、吐出口(22)を閉ざすことができるものであり、
また吐出室(21)には、上記の移動弁(4)を吐出口(22)から離れる方向に付勢する弾性体(5)を備え、
上記のようにして吐出口(22)が閉ざされた際において、
移動弁(4)の一部が吐出口(22)を覆った箇所を除き、吐出口(22)の周囲における吐出室壁面(33b)と移動弁(4)との間に、均衡用隙間(Y)が保たれたことを特徴とする、内容物の収納容器。
【請求項2】
吐出室(21)に、移動弁(4)の移動を規制するためのガイド部(3)が設けられたものであり、
このガイド部(3)は、筒状の本体部(31)を有し、その一端側が吐出室(21)における収納室(11)の側に、他端側が吐出室(21)における収納室(11)から離れた側に配位されたものであり、
本体部(31)の一端側が開口されており、同他端側は、吐出口(22)を除いて閉鎖されており、
また、このガイド部(3)は、移動弁(4)の収納室(11)の側への移動を当接によって規制するストッパー部(32)を有し、
このストッパー部(32)は、上記本体部(31)の一端側の一部を覆うように、本体部(31)の一端側端部よりも収納室(11)の側に設けられたものであって、
これにより、ガイド部(3)には、内容物が収納室(11)からガイド部(3)の内部へと流入可能とされた流入開口部(34)が形成され、
移動弁(4)及び弾性体(5)は、ガイド部(3)の内部に配位され、移動弁(4)はガイド部(3)における本体部(31)の内周面に沿う被規制面(41a)を有し、
上記流入開口部(34)は、移動弁(4)が上記のストッパー部(32)によって規制された位置にある場合に、移動弁(4)の被規制面(41a)によって一部が塞がれ、
この状態で、ガイド部(3)における本体部(31)の一端側端部(31a)と、移動弁(4)の被規制面(41a)における吐出口側端部(41b)との間に、内容物が流入可能な流入用隙間(X)が残存するものであり、
上記流入用隙間(X)の、吐出室(21)の軸方向に沿う寸法が、1〜3mmであることを特徴とする、請求項1に記載の内容物の収納容器。
【請求項3】
吐出室(21)に、移動弁(4)の移動を規制するためのガイド部(3)が設けられたものであり、
このガイド部(3)は、筒状の本体部(31)を有し、その一端側が吐出室(21)における収納室(11)の側に、他端側が吐出室(21)における収納室(11)から離れた側に配位されたものであり、
このガイド部(3)は、ガイド部(3)の側面と吐出部(2)の内壁との間に、内容物が流入な可能な間隔を持って配位されたものであって、
本体部(31)の側面には、内容物が通過可能なスリット(35)が設けられたものであって、
また、このガイド部(3)は、移動弁(4)の収納室(11)の側への移動を当接によって規制するストッパー部(32)を一端側に有し、
移動弁(4)及び弾性体(5)がガイド部(3)の内部に配位されたことを特徴とする、請求項1に記載の内容物の収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69931(P2007−69931A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257374(P2005−257374)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【出願人】(505337674)
【Fターム(参考)】