説明

内容物を配置した容器

【課題】 インキタンク内に尾栓の厚肉リブを侵入させながら超音波溶着をするため、インキタンク内に満たされたインキが前記厚肉リブの侵入によって溢れて、溶着面に付着する恐れがある。また、インキタンク内にインキを含浸させた吸蔵体が配置された塗布具にあっては、その吸蔵体の表皮が溶着面に挟み込まれてしまう恐れがあった。その結果、溶着不良を起こしていまい、それ故に、隙間が発生し、インキ漏れが発生してしまったり、ややもすると、溶着したはずの尾栓がインキタンクから脱落してしまう危険性があった。
【解決手段】 容器の内側に内容物が配置され、前記容器は容器本体と蓋体から構成されると共に、その蓋体には内容物に向けて突起を形成し、その突起を前記内容物に当接させた内容物を配置した容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や粉体を内包する吸蔵体あるいは袋体を内蔵する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物を容器に密閉する方法として、一般に超音波溶着技術が知られている。具体的には、インキペンあるいはインキカートリッジにおけるインキタンクに溶着によって気密に取り付けられる尾栓において、尾栓の天部内側に中央側から周辺側に行くにしたがって厚肉となるリブを形成した筆記具用インキタンクの尾栓である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平10-16469号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来技術によれば、インキタンク内に尾栓の厚肉リブを侵入させながら超音波溶着をするため、インキタンク内に満たされたインキが前記厚肉リブの侵入によって溢れて、溶着面に付着する恐れがある。また、インキタンク内にインキを含浸させた吸蔵体が配置された塗布具にあっては、その吸蔵体の表皮が溶着面に挟み込まれてしまう恐れがあった。その結果、溶着不良を起こしてしまい、それ故に、隙間が発生し、インキ漏れが発生してしまったり、ややもすると、溶着したはずの尾栓がインキタンクから脱落してしまう危険性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器の内側に内容物が配置され、前記容器は容器本体と蓋体から構成されると共に、その蓋体には内容物に向けて突起を形成し、その突起を前記内容物に当接させて内容物を配置したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、容器の内側に内容物が配置され、前記容器は容器本体と蓋体から構成されると共に、その蓋体には内容物に向けて突起を形成し、その突起を前記内容物に当接させて内容物を配置したので、溶着面に異物などを介在させることなく、確実に容器本体と蓋体とを溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施例の完成品を表す縦断面図。
【図2】溶着前を表す縦断面図。
【図3】図1及び図2の部分詳細図。
【図4】溶着リブ形状の他の案。
【図5】溶着リブ形状の更に他の案。
【図6】溶着リブ形状の更に他の案。
【図7】第2実施例の完成品を表す縦断面図。
【図8】溶着前を表す縦断面図。
【図9】斜視図。
【図10】第3実施例の完成品を表す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は本発明における第1の実施例である。軸筒4にインキを染み込ませた吸蔵体1が内蔵された筆記具である。軸筒4の図中下方には筆記具のペン先2が装填されている。また、軸筒4の上方には尾栓3が溶着により固定されている。その軸筒4の下方の内側には複数のリブ4cが設けてあり、そのリブ4cによって吸蔵体1の下面1aが支えられていると共に、隣り合うリブ4c間によって軸筒4の内外の空気交換が可能となっている。また、前記吸蔵体1の上面1bは、軸筒4の溶着リブ4bの頂点よりも僅かながらに下方ではあるが、ほぼ同一の高さに位置していると共に、吸蔵体1の外周面も僅かながらの隙間を有しながらも軸筒4の内側に位置している。つまり、吸蔵体1は、軸筒4に対してほぼ隙間なく内蔵されている。
【0009】
図2は、図1で表す完成品の溶着前の仮組立状態である。軸筒4の先端開口部にペン先2を挿着固定し、また、吸蔵体1を装填した後に、尾栓3を仮挿入してある。この後、超音波溶着ホーンHを尾栓3の上面3bに当接した状態で振動させることにより、尾栓3を軸筒4に溶着固定する。
【0010】
その尾栓3の下面3cには、吸蔵体1側に向けられ複数または周状のリブ3aが設けられている。そして、前記軸筒4の上方の内径には、段部4aが形成されており、その段部4aの上面には溶着リブ4bが周状に設けられている。尚、吸蔵体1の上面1bは、軸筒4の溶着リブ4b頂点より下方に位置する状態でセットされている。そして、尾栓3のリブ3aの下端が吸蔵体1の上面1bに当接した状態で仮挿入されている。この時、尾栓3の外径と軸筒4の内径にはクリアランスSが設けられている。
【0011】
次に、尾栓3を軸筒4に超音波溶着する方法として、前記尾栓3の上方3bに溶着ホーンHを当接させる。溶着ホーンHを当接させた状態で超音波振動を加えると、接触したもの同士が摩擦によって溶融し、溶融したもの同士が一体となって固化する。即ち、溶着することで一体化させるのである。この時、溶着させたい部分だけが接触していることが望ましい。尾栓3の外径と軸筒4の内径にクリアランスSを設けているのはその為である。即ち、このクリアランスSがないと、溶着したい部分部以外にも振動が伝わってしまい、遂には、尾栓3の中央部付近に応力が集中することで割れが生じてしまうこともある。
また、この溶着過程において、尾栓3のリブ3aが吸蔵体1の上面1bを圧縮させながら下降する。即ち、吸蔵体1の上面1bがリブ3aによって圧縮せしめられるため、つまり、吸蔵体1の周縁部が下方へと押圧されるため、その周縁部が溶着部に挟み込まれることがない。
【0012】
尚、この第1実施例において、前記溶着リブ4bは、内壁側を垂直面4e、外壁側を上方に向かって縮径する斜面4fにしてある。これは、溶着後に、溶融した樹脂が、斜面4f側の空間4gに流れ込ませるためである。樹脂を斜面4gに流れ込ませることによって、外壁4hからの漏れ出しを防止しているのである。
以上、本例においては、軸筒4内に配置される例として、インキを含浸させた吸蔵体を例示したが、軸筒4内に配置される他の例としては、インキそのものや粉体などが挙げられる。
【0013】
溶着リブ4bの変形例を図4に示し説明する。前例とは逆で、内壁側を上方に向かって拡開する斜面4f、外壁側を垂直面4eにしてある。これは、溶着後に溶融した樹脂を斜面4f側に流れ込ませるためである。樹脂を斜面4fに流れ込ませることによって、軸4内に内蔵された吸蔵体1を固定しているのである。つまり、溶融した樹脂を軸筒4と吸蔵体1の僅かながらの隙間に侵入させることによって、吸蔵体1を軸筒1に対して固定し、軸筒4に対するガタを防止しているのである。
【0014】
更に、溶着リブ4bの変形例を図5に示し説明する。縦断面形状が二等辺三角形をなした溶着リブである。本例においては、溶融する樹脂を溶着リブ4bの内径側と外径側両方に流れ込ませることによって、溶融する樹脂の量を等分、つまり、1/2にすることで、流量を減少してバリを出にくくしている。
尚、吸蔵体1の容量を多くしたい場合には、溶着リブ4bの垂直高さ4iを高くすればよい。その場合、溶着リブ4bの形状としては、段部4aに対して前記斜面4fが成す角度が同じであるならば、前者の直角三角形の垂直辺を利用した方が、後者である二等辺三角形よりも垂直高さ4iを高く設定できる。
【0015】
更なる溶着リブ4bの変形例を図6に示し説明する。溶着リブ4bを尾栓3側に設けた例である。本例は、溶着ホーンHの超音波振動を、中間部材を介在することなく直接、溶着リブ4bの頂点に伝えることができる。また、吸蔵体1の天面1bが、軸筒4の段部4aの下方に位置している。天面部1bを段部4aの下方に位置させることによって、吸蔵体1の溶着部に対する挟み込みが防止できる。
【0016】
以上、溶着リブの種々の形状を示したが、基本的には、溶着リブの頂点を最小幅として、下方に向けて据え広がる形状となすのが好ましい。尚、溶着面積が溶着リブの幅より十分広い場合は、溶着リブを複数設けることも好適である。
【0017】
本発明を実施するための第2の実施例を図7乃至図9に示し説明する。箱体5に、香水を染み込ませた中綿6が内蔵された容器である。前記箱体5の天面5aには蓋体7が溶着により固定されている。また、箱体5の底部には複数のリブ5bが設けてあり、中綿6の下面6aを支えている。このリブ5bの高さを変えることによって、中綿6の高さが変更になったとしても、その対応が可能なものとなっている。また、前記蓋体7には、内蔵する中綿6の香りを容器外に発散するための穴7dが複数設けられている。
【0018】
図8は、完成品の溶着前の仮組立状態である。箱体5に中綿6を装填した後、蓋体7を仮置きしてある。この後、超音波溶着ホーンHを蓋体7の上面7bに当接した状態で振動を開始する。この振動の付加によって、蓋体7を箱体5に溶着固定するのである。
【0019】
前記蓋体7の下面7cには、中綿6側に向けられて複数または周状のリブ7aが設けられている。そして、箱体5の上方の内側には、段部5cが形成されており、その段部5cの上面には溶着リブ5dが周状に設けられている。尚、中綿6の上面6bは、箱体5の溶着リブ5dの頂点よりも下方に位置している。そして、蓋体7のリブ7a下端が中綿6の上面6bに当接した状態で仮置きされている。この時、蓋体7の外径と箱体5の内径にはクリアランスSが設けられている。
【0020】
次に、蓋体7を箱体5に超音波溶着する方法として、蓋体7の上方7bに溶着ホーンHを当接させる。溶着ホーンHを当接した状態で超音波振動を加えると、接触した溶着リブ5dの頂点と蓋体7の下面7cが摩擦によって溶融し、溶融したもの同士が一体となって固化する。この時、溶着させたい部分、つまり、接触した溶着リブ5dの頂点と蓋体7の下面7cだけが接触していることが望ましい。蓋体7の外径と箱体5の内径にクリアランスSを設けているのはその為である。即ち、このクリアランスSがないと、溶着部から均等の距離に位置した蓋体7の中央部に振動が集中してしまい、その結果、蓋体7中央部に割れが生じてしまうこともある。
【0021】
同様に、溶着ホーンHの振動が一部に集中することを防止するために、エッジ部には小Rを設けてある。また、肉厚が薄い部分に振動が集中してしまうため、肉厚の変化を極力防止し、ほぼ一定の肉厚としている(図9参照)。
また、この溶着過程において、蓋体7のリブ7aが中綿6の上面6bを圧縮させながら下降する。即ち、中綿6の上面6bがリブ7aによって圧縮せしめられるため、つまり、中綿6の周縁部が下方へと押圧されるため、その周縁部が溶着部に挟み込まれることがない。
【0022】
本発明を実施するための第3の実施例を図10に示し説明する。溶着の各部の形状については、第1乃至第2の実施例と同等であるのでその説明を省略する。
筒体8に、活性炭9を内包した袋体10を内蔵した容器である。その筒体8の天面には蓋体11が溶着により固定されている。また、筒体8の底部には複数のリブ8aが設けてあり、袋体10の下面10aを支えている。このリブ8aの高さを変えることによって、袋体10の厚さが変更になったとしても、その対応が可能なものとなっている。また、蓋体11には、穴部11aが形成されており、容器内外との空気の流通が可能になっている。
ちなみに、中綿や吸蔵体と違って、寸法が限定されない袋体では、内蔵する物質を細かく粉砕して包み込むことができるが、反対に形状が安定しないため、容器からはみ出したり、変形したりすることが起こりやすい。この場合でも、蓋体11に設けた押さえリブ11bの高さを、筒体8に設けた溶着リブ8bの高さより高くすることで、袋体10の挟み込みを防止することができる。
また、本例においても、溶着過程において、蓋体11の押さえリブ11bが袋体10の上面10bを圧縮させながら下降する。即ち、袋体10の上面10bが押さえリブ11bによって圧縮せしめられるため、つまり、袋体10の周縁部が下方へと押圧されるため、その周縁部が溶着部に挟み込まれることがない。
【0023】
溶着に用いるのに適した材料として、熱可塑性樹脂である低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、延伸ナイロン、無延伸ナイロン、エチレン酢ピコポリマー、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、セロハン、ポリアクリロニトリル、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリルアクリルゴムスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレンスチレン共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリアリレート、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメチルペンテン、ポリグリコール酸樹脂などがあげられる。
【符号の説明】
【0024】
1 内容物

2 ペン先
3 尾栓
3a 押さえリブ
3b 上面
3c 下面
4 容器
4a 段部
4b 溶着リブ
4c リブ
4d 端面
4e 垂直面
4f 斜面
4g 空間
4h 外壁
4i リブ高さ
5 箱体
5a 天面
5b 溶着リブ
5c 段部
5d 溶着リブ
6 中綿
6a 下面
6b 上面
7 蓋体
7a 押さえリブ
7b 上面
7c 下面
7d 穴部
8 筒体
8a リブ
9 活性炭
10 袋体
10a 下面
10b 天面
11 蓋体
11a 穴部
11b 押さえリブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に内容物が配置され、前記容器は容器本体と蓋体から構成されると共に、その蓋体には内容物に向けて突起を形成し、その突起を前記内容物に当接させた内容物を配置した容器。
【請求項2】
前記容器本体の内面に段部を形成すると共に、内容物の表面を前記段部の超えない高さとした請求項1記載の内容物を配置した容器。
【請求項3】
前記蓋体に形成した突起の長さを、容器本体に形成した突起の長さより高くした請求項1、或いは、請求項2に記載の内容物を配置した容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−921(P2013−921A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131739(P2011−131739)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】