説明

内容物入り麺及びその製造方法

【課題】効率的に栄養素を摂取することのできる内容物入り麺及びその製造方法を提供する。
【解決手段】機械式製麺方法の圧延工程において、連続的にベルトコンベヤ等で流される一定の厚さの麺帯4の一方の面に複数列の凹部8を形成し、その凹部8に適当量の内容物2を注入する。この麺帯4を麺線切り分け工程において、等間隔にばらばらに切り分けて麺線6にし、凹部8の開口を周囲の生地で埋めて塞ぐ。本発明の麺1は、内容物2が内部に密封されているので、調理の際などに内容物2が流出せず、無駄にならないですむ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養素等の内容物を含有する乾麺又は生麺等の麺及びその製造方法に関るものである。
【背景技術】
【0002】
栄養素を過不足なく採ることは健康を維持するうえで大切であるが、好き嫌いなどの偏食により栄養バランスがくずれると、身体に影響が出てしまう。そこで、不足する栄養素を補うために、様々なサプリメントが市販されている。
【0003】
また、このような栄養素を麺に混入し、普段の食事で栄養素を摂取することのできる麺が、特許文献1に開示されている。特許文献1記載の麺は、小麦粉とカルシウム粉末を混合し、その混合粉を原料として製麺したカルシウム入り麺である。
【0004】
【特許文献1】実開平06−086491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カルシウムを生地の全体に混ぜているので、麺表面に露出しているカルシウムが、麺を茹でるときにお湯に溶けて流出してしまい、無駄になってしまう。したがって、十分量の栄養素を摂取できず、コストがかかる。
【0006】
そこで、本発明は、上記に鑑み、効率的に栄養素を摂取することのできる内容物入り麺及びその製造方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、麺の内部に内容物を内包し、麺の表面に内容物を露出させないことを特徴とする内容物入り麺である。麺としては、小麦粉又は米粉を主原料としたうどん、そうめん、ひやむぎ、きしめん、ラーメン、そば、パスタ、マカロニ、中華麺等の生麺、乾麺、全ての麺類に適用することができる。また、製法としては、機械式製麺方法を採用してもよいし、手延べ式押出し製麺方法を採用してもよい。
【0008】
麺の内部に内容物を内包する形態とは、内容物が麺の周面及び端面のいずれの外部からも露出しないように、内部に包み込まれている状態である。なお、長手方向に連続的に内包されている必要はなく、断続的であってもよい。
【0009】
このように、内容物が麺の内部に内包されているので、多様の調理、茹揚げ、焼、油揚げ、蒸し麺等 茹でるときに、内容物が流出せず、無駄にならない。したがって、効率的に栄養素を摂取することができる。
【0010】
また、麺の両方又は一方の側端の端面のみに、内容物が露出してもよい。すなわち、鉛筆の芯のように、内容物を麺の芯部分に内包させる。麺の芯部分とは、厳密な意味での「中心」に限定されるものではなく、麺の周表面でなければどの部分であってもよい。また、内容物は、長手方向に連続的に内包されている必要はなく、断続的であってもよい。
この態様によると、麺の端面には内容物が露出してしまうが、麺の表面積の大部分を占める麺の周面において、内容物を露出しないので、ほとんどの内容物の流出を防ぐことができる。
【0011】
内容物は、麺の生地以外のものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、にんにく卵黄等の健康食品、ブルーベリー等の果物、人参、大豆、ゴマ若しくは唐辛子等の野菜、海藻、又はカルシウム、ビタミン等の栄養素、各種フレーバー、着色料が例示でき、これらを単独で用いてもよいし、または、2種以上混合して用いてもよい。特に、栄養素を多く含む内容物が好ましい。このような栄養を多く含む内容物を内包させれば、日々の食事として麺類を食べると同時に、栄養素を摂取することができ、体質の改善及び強化に役立つ。内容物の形状は、液状、ペースト状、粉末状または粒状のいずれの形態であってもよい。なお、にんにく卵黄とは、すりつぶしたにんにくと卵黄とを混ぜ合わせ、低温で長時間加熱して、炒り上げたものであって、栄養価にすぐれる。
【0012】
上記のような内容物入り麺の製法としては、例えば、麺帯又は麺線に凹部を形成し、凹部に内容物を注入した後、周辺の生地で凹部の開口を塞いでもよいし、麺帯又は麺線の内部に、先端に注入針を有する注入器で内容物を注入してもよいし、麺帯の一方の面に内容物を載置した後、内容物を麺帯で鉛筆の芯状にくるんでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、麺の内部又は芯部分に内容物が内包されているので、茹であげ等の調理加工を行う際に、内容物が溶けて流れ出さない。そのため、麺を内容物が封入された状態のまま食卓に並べることができる。したがって、内容物は、口の中に入って初めてその風味を味わうことができ、その栄養素のほぼ100%を吸収することができる。また、刺激や臭気の強い内容物でも比較的抵抗なしに、摂ることができる。したがって、食事量や食欲も変わることなく、日常の栄養食として使用できる。特別、特定の栄養剤を服用してなくても、常食で健康によい食生活にすることができる。
【0014】
また、長い間調理をしても内容物が溶け出しにくいので、柔らかく水分も多く調理することができ、老人食、療治食、病人食や幼児食としても広く利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の内容物入り麺の斜視図である。本発明の内容物2入り麺1は、麺1の周面1aに内容物2が露出しないように内容物2を内包したものであって、図1(a)に示すように、内容物2を鉛筆の芯状に内包してもよいし、図1(b)に示すように、断続的に内包するようにしてもよい。また、図1(c)に示すように、麺1の周面1aだけでなく、端面1bにおいても内容物2が露出しないようにしてもよい。なお、内容物2の流出を防ぐには、図1(b)のように断続的に内包するのが好ましく、さらに好ましくは図1(c)のように、面の端面1bにおいても内容物2が露出しないようにするのがよい。
【0016】
内容物2は、麺1の生地以外のものであれば、特に限定されるものではないが、にんにく卵黄、ブルーベリー、人参、大豆、ゴマ、唐辛子、海藻又はカルシウムのうち、1種又は2種以上を混合したものが用いられる。これらの内容物2は、栄養価にすぐれ、体質強化及び改善が期待できる。内容物2の状態は、液体、粉体又は粒子などいずれの状態であってもよい。
【0017】
このように、内容物2が麺1の内部に内包されているので、製造中、また、調理の際などに、内容物2が流出しない。したがって、封入される内容物2には高価なものが多いが、無駄にならないですむ。効率的に栄養素を摂取することができる。
【0018】
上記のような麺1の製法は、麺1の内部に内容物2を入れる以外は、一般的な製法と変わらず、機械式製麺方法を採用してもよいし、手延べ式押出し製麺方法を採用してもよい。機械式製麺方法の具体例は、多加水状の団子生地をロールで圧延し、2枚を1枚に圧縮し(圧延工程)、数組の連続式のロール3で製品の厚さに加工した麺帯4を製品の太さに合わせた回転切刃5により麺線6に切り分け(麺線切り分け工程)、一定の長さに切断するものである。これらの麺1は、乾麺、生麺、茹で麺あるいは茹で上げ後冷凍することも可能である。
【0019】
また、手延べ式押出し製麺方法の具体例は、多加水状の生地を1本の太い麺1棒状に切り出し、段階的に引き延ばしと熟成を交互に数回繰り返して除々に細くして麺線6を製造し、かけば機で2本の麺1棒に麺線6を8の字掛けに連続して引っ掛ける。そして、熟成を重ねるごとに2本の麺1棒を順次大きく開いて更に引き延ばし、グルテン繊維を細長くしめあげて密着性を高める。
【0020】
上記の一般的な製法に加えて、以下の工程を加えることにより、本発明の内容物2入り麺1を製造することができる。
【0021】
[実施例1]
機械式製麺方法の圧延工程において、図2に示すように、連続的にベルトコンベヤ等で流される一定の厚さの麺帯4の一方の面に、長手方向に複数列の切り込みを、ナイフ等の突起状の治具7を用いて入れ、凹部8を形成する。その凹部8に、適当量の内容物2を注入器9で入れる。
【0022】
この麺帯4を、麺線切り分け工程において、切刃5により等間隔にばらばらに切り分けて麺線6にする。このとき、隣接する凹部8の間で切り分けるように設定する。麺線6の凹部8以外の周面1aには、内容物2が露出しない。
【0023】
そして、麺線6を小径の円筒ロール(図示せず)に通すなどして側方から圧力をかけることにより、凹部8の開口を周囲の生地で埋めて塞ぐ。なお、手作業で行ってもよいし、他の生地で凹部8の開口を塞ぐようにしてもよい。
【0024】
その後は、商品により圧延と熟成を何段階か行って所望の製品の太さに仕上げ、円筒ロール(図示せず)で圧縮して内容物2を押し込んで、麺1の生地で圧着する。そして、定寸にカットして内容物2を密封した状態に仕上げる。
【0025】
なお、定寸に麺1をカットする際に、内容物2の存在しない部分で切断すれば、図1(c)のような麺線6の全面において内容物2が露出しない麺1とすることができるし、内容物2の存在する部分で切断すれば、図1(a)又は(b)のような端面1bのみで露出するが、麺線6の周面1aにおいては内容物2が露出しない麺1とすることができる。
【0026】
以上のような工程で、内容物2が麺1の内部に密封された内容物2入り麺1が製造される。なお、凹部8及び内容物2の注入は連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。すなわち、図1(a)のような麺を製造する場合は、内容物2の注入を連続的に行えばよいし、図1(b)又は(c)のような麺を製造する場合は、内容物2の注入を断続的に行えばよい。また、凹部8の形状は、長穴、丸穴又はだ円穴など、内容物2を注入できればどのような形状であってもよい。
【0027】
[実施例2]
機械式製麺方法又は手延べ式押出し製麺方法の麺線6作成後において、麺線6の長手方向に一列の切り込みをナイフ等の突起状の治具7を用いて入れ、凹部8を形成する(図4(a)、(b))。その凹部8に、適当量の内容物2を注入器9で入れる。麺線6を小径の円筒ロールに通すなどして側方から圧力をかけることにより、凹部8の開口を周囲の生地で埋めて塞ぐ(図4(c))。なお、手作業で行ってもよいし、他の生地で凹部8の開口を塞ぐようにしてもよい。その後の工程は、実施例1と同様である。以上の工程で、内容物2が麺1の内部に密封された内容物2入り麺1が製造される。
【0028】
[実施例3]
機械式製麺方法の圧延工程において、連続的にベルトコンベヤ等で流される一定の厚さの麺帯4の一方の面から、先端に注入針10を有する注入器(図示せず)を用いて、直接、麺帯4内部に内容物2を注入する。その注入を長手方向において繰り返した後、麺線切り分け工程において、切刃により等間隔にばらばらに切り分けて麺線6にする。このとき、隣接する内容物2の間で切り分けるように設定する。麺線6の凹部8以外の周面1aには、内容物2が露出しない。そして、麺線6を小径の円筒ロールに通すなどして側方から圧力をかけることにより、注入口を周囲の生地で埋めて塞ぐ。その後の工程は、実施例1と同様である。以上の工程で、内容物2が麺1の内部に密封された内容物2入り麺1が製造される。
【0029】
[実施例4]
機械式製麺方法又は手延べ式押出し製麺方法の麺線6作成後において、先端に注入針10を有する注入器(図示せず)を用いて、直接、麺線6内部に内容物2を注入する(図4(a)、(b))。その注入を長手方向において繰り返す。そして、麺線6を小径の円筒ロールに通すなどして側方から圧力をかけることにより、注入口を周囲の生地で埋めて塞ぐ(図4(c))。その後の工程は、実施例1と同様である。以上の工程で、内容物2が麺1の内部に密封された内容物2入り麺1が製造される。
【0030】
[実施例5]
機械式製麺方法又は手延べ式押出し製麺方法において、図3に示すように、麺1本分の細幅の麺帯4に、長手方向に連続的又は断続的に内容物2を載置し(図4(a)、(b))、側端から内容物2を包みこんで、内容物2が鉛筆の芯の状態となるように1本の麺線6に整形する(図4(c))。そして、撚りをかけたり、麺線6を小径の円筒ロールに通すなどして側方から圧力をかけたりすることにより、繋ぎ目をなくす。商品により圧延と熟成を何段階か行って所望の製品の太さに仕上げ、その後の工程は、実施例1と同様である。以上の工程で、内容物2が麺1の内部に密封された内容物2入り麺1が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の内容物入り麺の斜視図
【図2】実施例1の製造工程の概略図
【図3】実施例5の製造工程の概略図
【図4】実施例2、4及び5の製造工程における麺線又は麺帯の断面図
【符号の説明】
【0032】
1 麺
1a 周面
1b 端面
2 内容物
4 麺帯
6 麺線
8 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺の内部に内容物を内包し、麺の表面に内容物を露出させないことを特徴とする内容物入り麺。
【請求項2】
麺の芯部分に内容物を内包し、麺の周面に内容物を露出させないことを特徴とする内容物入り麺。
【請求項3】
前記内容物が、にんにく卵黄等の健康食品、ブルーベリー等の果物、人参、大豆、ゴマ若しくは唐辛子等の野菜、海藻、又はカルシウム等の栄養素のうちいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の内容物入り麺。
【請求項4】
麺帯又は麺線に凹部を形成し、該凹部に内容物を注入した後、周辺の生地で前記凹部の開口を塞ぐことを特徴とする内容物入り麺の製造方法。
【請求項5】
麺帯又は麺線の内部に、先端に注入針を有する注入器で内容物を注入することを特徴とする内容物入り麺の製造方法。
【請求項6】
麺帯の一方の面に内容物を載置した後、内容物を麺帯で鉛筆の芯状にくるむことを特徴とする内容物入り麺の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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