説明

内容積拡大式センサー付密封保存容器

【課題】 主に防湿を目的として乾物食料品、錠剤等を密封保存する容器の性能向上及び品質保証を計る。特に内容物を常用し高い頻度で容器の開閉を繰返す場合に、操作を簡便にし、かつ気密性の保持が確認できるようにする。
【解決手段】 容器1の一部に、復元力を有する可変伸縮部3を設け、内容物を収納する際に、圧縮して内容積を少なくした状態で閉封する。閉封後放置すれば、該復元力により容器1の内容積が増大し、ために容器内部が減圧され蓋2や栓2が周囲より等方的な力を受けて高い密封度が達成されると同時に、もし気体の漏洩があれば、該可変伸縮部3が容易に元の状態まで復元してしまい密封度を知るセンサーとしても機能する。該可変伸縮部3は、容器本体よりも栓2または蓋2に設ける方が実用性は高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封保存容器に関する。主として家庭用の用途に供する。容器の内容物としては、食料品を中心とし、密封の主たる目的が防湿であり、比較的短期の時間的間隔をもって定期的に常用するものを想定している。非揮発性の固形物で、定形物か不定形物かは問わない。即ち、菓子類、のり、豆、茶葉等の乾物食料品、錠剤等の薬用品である。
【背景技術】
【0002】
実験室的に物品を外気から遮断し長期に保存する効果的な方法としては、擦り合わせ面にワセリン等を塗布した上蓋を伴うデシケーターに物品を入れ、排気口を連結して真空ポンプで抜気し減圧状態に保つことが知られている。物品の外気からの遮断が計られると同時に、減圧状態により等方的な力が容器にかかって上蓋を押し付け高い気密性が保持される。家庭用品でもこれと同様の方式を取り込んだ方法がある程度普及している。開閉栓を伴う排気口を具備した容器に、手動あるいは機械式の減圧ポンプを連結して、物品の閉封時に内部の空気を抜くものである。あるいは剛直性を有する容器の替わりにラップ等のプラスチックシートを用い、非保存物品をこれで袋状に覆い内部の空気を密封時にポンプで抜く方式のものもある。このような大掛かりな装置とは別に、容器に気密性の高い栓や蓋を取り付けただけの容器も日常的に用いられている。円筒形の茶筒や海苔缶のように、完全に外気を遮断するのではなく、蓋と容器本体の間の接触面積を大きくすることによって空気の流通量を低く押さえ、結果として防湿の効果を計っている容器もある。凹凸部をはめ込むチャックを伴うポリ袋も用いられている。
【発明の開示】

【発明の解決しようとする課題】
【0003】
前述のポンプ等による抜気をともなう手段では、密封度は高く長期保存には適しているが、密封作業に手間がかかり頻繁に内容物を取り出す必要のある環境にはなじまない。一方日常的に用いられている蓋や栓あるいはチャックを設けただけの容器や袋では密封性能に限界があり、更にどの程度外気との遮断が達成されているかに関しては、これを直接知る方法は無く、長期の使用による経験的実績から判断する以外にないのが実情である。またネジ込み式の栓や蓋を伴う密封容器では、毎回の使用に際して、ネジ山を違えて不完全に閉栓し気づかずに放置する場合もある。チャックを伴う袋でも、チャック部の凹凸の噛み合わせが端から端まで完全に成されているかの検証が難しく、隙間を残したまま放置する場合も多々ある。本発明はこのような従来技術の状況に鑑み、簡便で密封度が高く、使用効果の確実な密封保存容器の提供を計るものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は高い密封性をうるために保存時に容器内部を減圧状態におく方法をとる。しかし、ポンプで内部の空気を抜気する手段によってではなく、閉封後に容器の内容積を拡大させることによって容器内を大気よりも低い気圧状態に置くことを特徴とする。このためには容器の内容積が可変であることを要する。図2にこの様態を原理的に示す。図2の容器は容器本体1の一部に蛇腹状の伸縮可能な部分を有している。内容物を封入する直前に、この可変伸縮部3を縮めて内容積を十分小さくし、封入後にこの部分を引き伸ばして内容積を拡大することによって容器内部の減圧を計る。該蛇腹状の可変伸縮部3を引き伸ばすために、容器に外枠を設けこれに容器を牽引させるような構造も可能だが、構成が複雑になるだけで実用性はない。そこで蛇腹状部自身に復元力を持たせるようにする。伸展している状態が自然状態であるように成型し、使用時には外力を加えて圧縮した状態で内容物を入れ、封入後に手を離す。内容積は蛇腹状部すなわち可変伸縮部3の復元力により拡大するが、これに伴い容器内部が減圧されるので、外圧と復元力が拮抗する位置で伸展が停止し、その状態で容器の大きさが保たれる。即ち、復元力を有する伸縮可変な部位を容器の内容積を決定する構造にもち、この構成を有する容器を密封保存容器の用途に供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
内容物保存時に容器内部を減圧状態におくことにより、蓋や栓が等方的な圧力を周囲から受け、密封度を高める。該減圧状態をうるためにポンプを駆動したり、容器に排気のための排気口や弁を設ける必要がなく、器具の低コスト化が図れるとともに、密封操作の簡便さが達成され、高い頻度で内容物の取り出しと収納の繰り返しが予想される用途にも利用できる。一方で、可変伸縮部3に復元力を持たせることによって、この部分を一種の圧力センサーとして利用することができ、密封度あるいは密封状態の程度を知ることができ、密封容器の品質、性能を知る有力な手掛かりとする事ができる。即ち、伸展状態を自然状態に成型することで、もし気密性が低ければ、内容物を閉封後放置した状態で直ちに元の伸展状態に戻ってしまう。気密性が十分であれば、復元途中の位置に留まる。元の進展状態まで戻るとしても十分時間をかけて戻るのであれば、ある程度の密封度が得られていると判断できる。
【発明を実施するための最良の状態】
【0006】
本発明の原理的構成は内容物の閉封後に容器の内容積を可変にすることであるが、このためには内容積を決定する容器壁の少なくとも一部に非剛直な箇所を設けなければならない。内容物を設置する容器本体にこの部分を設けると容器本体の材質が限定され、製品設計が著しく限定される。これに対して、密封容器に不可欠な蓋や栓も容器の内容積を形成する部位の一つであるので、この部分に蛇腹状部などの復元力のある可変伸縮部を、伸展状態が自然状態になるようにして形成する。該可変伸縮部の伸縮によって体積の変化する空間は、容器本体の内部空間と連通し容器の内容積を決定する部位の一部となる。このような栓あるいは蓋を伴う容器として密封保存容器を構成する。図1にこの一例を表す。容器本体1の材質、形状に制約がなくなると同時に、密封手段として用いられるねじ込みやすり合わせに対応して、ねじ山のピッチや口径が一致すれば、一つの蓋や栓が多数の容器本体に装着できるので、可変伸縮部3を伴う蓋や栓自体を独立した製品とすることも可能である。
【実施例】
【0007】
図1に示す容器は本発明の効果を最も良く表す実施例の一つで、錠剤等の薬用品やこれに準ずる比較的小さな内容物を想定している。容器口の口径にぴったり合った栓または蓋2をすりあわせ押し込むことにより密封を果たすタイプのものであるが、栓や蓋の密封手段はこれに限定されるものではない。図2に示すネジ込み式をはじめ周知の種々の密封手段が本発明との併用を可能にしている。復原力のある蛇腹状部が可変伸縮部3として栓または蓋2の部分に設けられており、自然状態では伸展して伸びきった状態にある。内容物を容器本体1の内部に設置した後、この蛇腹状部を押し縮めた状態で栓または蓋2を容器本体に押し込んで閉封する。図1の左図は閉封前の状態、右図は栓または蓋2を容器本体に取り付け放置して内部を減圧密封状態にしたときの様態を表す。右図では可変伸縮部は閉封の際に押し縮められた状態より多少は伸展している。開封時には該可変伸縮部3を再び押し縮めると栓または蓋2が外しやすい。錠剤用容器をはじめとして通常の密封保存容器には内蓋と外蓋の二重構造になっているものもあるが、本構成の栓または蓋を具備する容器も、二重構造にすることを妨げない。即ち可変伸縮部3を伴う栓または蓋2を覆う外蓋を更に上からかぶせてもよいし、該栓または蓋2を図2のようなネジ込式にして内側に簡単なはめ込み式の栓を設けても良い。但し後者の場合は内容物が置かれている容器本体の内部が減圧されるわけではなく、内側の栓を引き抜く方向に力が加わるので効果は低い。他方容器内部に吸湿剤を封入することも可能である。
【0008】
本発明に係る栓または蓋2の材質としては、蛇腹状部の成型やすり合わせ部に対応させるため多少柔軟性を有したものが必要とされるが、汎用されているポリエチレン、ポリプロピレン等の材質が利用できる。これらを用いた復元力を有する蛇腹状部を有する日用品が、既にスポイトや手動式の石油ポンプ等に用いられて市販されている。密封時の減圧度を高めるため復元力を強める必要のある場合に、コイルバネを組み込むことも可能である。蛇腹状の可変伸縮部3は他の部位と比較すると強度的に脆弱であるため、栓または蓋2の開封時に直接この部分を引っ張ると器具の耐久性に悪影響を与える。上部にかけて次第に径が細くなるようにテーパをかけて蛇腹部を成形してこの部分を持ちづらくし、使用者に栓または蓋2の蛇腹部にかからない下方部分を持たせるような設計も有り得る。図2の蛇腹状部は上下に伸縮するように示されているが、形状変化の様態はこれに限定されるものではない。内容積が可変であり、内容積が大きな状態が自然状態であればよい。市販の手動式石油ポンプの中には上下ではなく左右に手で変形させるものが普及している。文房具や化学器具のスポイトでは先細のガラス管の手元部分に細長い球形の弾力性ゴム袋を取り付け、この袋を自在に変形させてガラス管内への液体の出入を計っている。本発明はこのような周知の体積可変の部位を密封容器に設けるものである。
【0009】
一方該可変伸縮部3は密封度を知る圧力センサーとして用いることが可能であり、密封状態の確認と同時に、密封容器としての品質を保証するものとして機能する。蛇腹状部の側部に適切な模様を描くことにより、伸縮の度合いをより適切に読み取ることができる。内容積の可変範囲であるが、センサーとして機能させるためには、自然状態時の最大体積に対して少なくとも1パーセント程度は必要である。これは容器外部の大気圧の変化に対応するもので、容器の機密性が完全に保たれたとしても、台風のような特殊な場合を除いて天候により大気圧が1パーセント前後変化するので、体積変化幅がこれよりも大きいことが要求される。実際には内容物の体積が存在するので容器内の空間の容積が減少し、体積変化幅は更に小さくても機能する。可変伸縮部の復原力は体積変化幅に応じて適切に決定される必要がある。他方当然のことながら、密封度を高めるための実質的な減圧効果を得るには更に大きな内容積の可変範囲を必要とする。
【0010】
可変伸縮部3を伴う栓または蓋はこれら自身を独立した製品とすることができる。この場合、密封手段が容器本体の口径やネジ山等と適合しなくてはならない。対応法として次のような方法がありうる。工業製品として規格化あるいは汎用されている容器に合わせて製品化する。通常の栓または蓋を伴う密封保存容器として既に製品化されている容器の替栓あるいは替蓋として作製する。擦り合わせて容器の口に差し込む方式の栓の場合、栓の口径に先に行くにしたがって細くなるようなテーパをもたせる事により、ある範囲の容器の口径に対応させる事ができる。
【0011】
容器本体側の材質は特に限定しない。通常の密封容器に用いられる各種プラスチック、ガラス、陶器、金属が利用できる。プラスチックは剛直なもののみでなく、素材として軟質のものも利用可能であるが、形状を維持できる程度に剛直な構造に成型されていなければ本発明の効果はない。
【0012】
図2の容器は密封手段としてネジ込み式の栓または蓋2を伴う例を示している。該栓または蓋2と容器本体1の上部接触面には、Oリング、エラストマーなどのシール材20を用いる。内容積を変えるための可変伸縮部3は容器本体側に造作されており、容器本体の材質にガラス、陶器のような剛直なものを用いることができず、プラスチックか薄い金属のような材質に限定され、実用性は低い。本発明の原理的構造を理解するには良い例と言える。図1と同じく、左図に栓または蓋2を取り付ける前の様態を、右図に栓または蓋を取り付けて閉封放置した状態を示している。
【0013】
図3は乾物食料品等の保存を想定した、より大型の容器の例である。密封手段として、上蓋回転軸36の周りに回転する開閉式の上蓋4を締付け金具により容器本体1に押し付ける方法をとっている。図は、容器の口の端を一巡して固定された固定環30から突き出た締結回転軸支持部33を跨いだ構造の二股の引掛腕31を上蓋側の引掛受突起32にかけ、連動した締結ハンドル34を下方に押し込んで、引掛腕31の位置を容器本体側にズラして上蓋4を容器本体1に押し付ける周知の方式の構造を示している。図では上蓋4と容器本体1の上部接触面に介在させるシール材は省略している。市販されている大型の密封容器にもこの方式の密封手段をとっている器具は多い。上蓋が手の平に収まる程度か、あるいは上蓋に取り付けた上蓋取手をもって回転させる事ができる大きさなら、ネジ込み式の密封手段を用いる構成も可能である。容器全体の内容積に対応して蛇腹状の可変伸縮部3も大きくしている。上図が開封時の状態、下図が可変伸縮部3を推し縮めて閉封した後の密封保存時の状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0014】
密封保存容器の性能を向上させ、加えて圧力センサーとしての機能を具備する事により容器の密封性に関して品質を保証する役割を果たし、密封保存容器の需要と用途拡大を増進させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る密封容器の典型的な実施例の構成を表す縦断面図。
【図2】本発明の原理的な実施例を表す縦断面図。
【図3】本発明に係る大型の密封容器の実施例を表す立面投影図。
【符号の説明】
【0016】
1‥‥‥容器本体。
2‥‥‥栓または蓋。
3‥‥‥可変伸縮部。
4‥‥‥上蓋。
20‥‥シール材。
21‥‥ネジ部。
30‥‥固定環。
31‥‥引掛腕。
32‥‥引掛受突起。
33‥‥締結回転軸支持部。
34‥‥締結ハンドル。
35‥‥締結回転軸。
36‥‥上蓋回転軸。
37‥‥上蓋取手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性の高い栓または蓋を具備するとともに、復元力を有し伸展したる状態が自然状態である可変伸縮部を、容器の内容積を形成する部位の一部としてもつ事を特徴とし、非揮発性内容物の密封保存の用途に供したる容器。
【請求項2】
「請求項1」に係る容器において、復元力を有し伸展したる状態が自然状態である可変伸縮部分を、容器に取り付ける気密性の高い栓または蓋の部分に造作する事を特徴とする密封保存容器。
【請求項3】
復元力を有し伸展したる状態が自然状態である可変伸縮部を具備し、「請求項2」に係る容器に取り付けることを用途として、その密封手段に従い、該取り付けの対象となる容器に符合すべく成形された栓または蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−298482(P2006−298482A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153063(P2005−153063)
【出願日】平成17年4月23日(2005.4.23)
【出願人】(591155356)
【Fターム(参考)】