説明

内服液剤

【課題】
本発明は、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、ジフェンヒドラミンの安定性が高く、味・風味も良好なジフェンヒドラミン配合睡眠改善内服液剤を提供することを課題とする。
また、低カロリーかつ、う蝕性の観点からも服用コンプライアンスの改善された睡眠改善内服液剤を提供することも課題とする。

【解決手段】
本発明は、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類及びエリスリトールを含有する、pH3.8〜4.2の睡眠改善内服液剤とすることで、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、ジフェンヒドラミンの安定性が高く、味、風味も良好な内服液剤を提供することを可能とした。
また、エリスリトールの含有量を、5〜20W/V%とすることにより、低カロリーかつ、う蝕性の問題を生ずることなく、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩の苦味をマスキングした内服液剤を提供することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、ジフェンヒドラミンの安定性が高く、味・風味も良好な、低カロリーかつ、低う蝕性のジフェンヒドラミン配合睡眠改善内服液剤に関する。具体的には、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類、及びエリスリトールを含有し、pH3.8〜4.2とした睡眠改善内服液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジフェンヒドラミンは、古くからヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)として内服薬・外用剤を問わず、広く使用されてきた安全性の高い薬剤である。また、覚醒の維持に関与するヒスタミンの働きを抑制することから、催眠鎮静作用を表すことが知られている。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン薬の中でもとくに催眠鎮静作用が強く、欧米では睡眠導入を目的としたOTC薬としても利用されている。
近年、日本でも、医師の処方箋が必要とされない一般用医薬品において、睡眠改善薬や乗り物酔い(鎮暈薬)及び肌のかゆみ止めなど、多様な薬効及び多種の剤型として幅広く使用されている(非特許文献1〜3 参照)。
【0003】
睡眠改善剤は、その用途から就寝前に服用するのが通常であるが、服薬の簡便化や、即効性を期待するために、内服用液剤の開発が望まれていた。
しかし、ジフェンヒドラミンや塩酸ジフェンヒドラミンに代表されるジフェンヒドラミンの塩類は特有の苦みと舌を麻ひさせる特異的な味を有する薬物であるため、その苦味と味をマスキングしなければとても服用に適するものではない。
錠剤の場合、糖衣錠、フィルムコート錠、チュアブル錠など構造上の工夫を加えることで、これらの持つ苦味と、舌を麻ひする特異的な味をマスキングしている(特許文献1 参照)。
ところが、この薬物を内服用液剤にする場合には、他の配合成分とのバランスも考慮する必要があり、マスキングすることが非常に難しい。
【0004】
一般に、このような苦味を有する薬物に対しては、服用しやすくするため、大量の糖類によるマスキングを行うのが通常である。例えば、カプセル剤や錠剤、散剤などの剤形では小児に服用させることが難しいため、服用コンプライアンス向上のため、小児用シロップ剤が汎用されているが、飲みやすくするため、大量の糖類が添加されている(非特許文献4 参照 )。
しかし、糖類などの甘味剤によるマスキング方法を用いると、高カロリーの飲料を就寝前に服用することとなる。近年は過食、運動不足によって内臓脂肪が蓄積し、高血圧症、高脂血症、糖尿病など複数の生活習慣病を合併するメタボリックシンドロームの予防が重視されている。従って、睡眠改善剤としての効果を有していても、肥満やメタボリックシンドロームが危惧されることは望ましくない。さらに、就寝前に服用しそのまま就寝すると、う蝕の問題も生じるため、虫歯の予防のために、服用後に再び歯磨きをする必要が生じるなど、服用コンプライアンスが著しく低下することとなる。
【0005】
さらに、塩酸ジフェンヒドラミンの内服液剤は、特に低いpHの酸性域で分解が進むことが知られており、ある程度pHを高くする必要が生じる一方、液剤では、他の薬剤型に比べ細菌が繁殖する可能性が高く、防腐力を付与する必要がある。そのため、高いpH域でも安定な防腐力を示す、パラベン類が汎用されている(特許文献2 参照 )。
しかし、パラベン類は独特のえぐ味を持つことから、液剤の風味が悪くなるという欠点がある。特に、ジフェンヒドラミンの液剤においては、ジフェンヒドラミン自体が有する苦味と相俟って、さらに著しく味が低下することとなる。
しかも、内服液剤に汎用されているパラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルは、環境ホルモン物質(内分泌かく乱化学物質)の疑いがあるとされている。環境ホルモンは人の体に入り込むと、もともとある体内のホルモンと結びついて、正常なホルモンバランスを崩す可能性があることが示唆されている。また、ラットによる実験では、このパラベンに精子を減らす作用があることが報告されている(非特許文献5)。
【0006】
このため、薬剤としてより安全に服用するためには、ジフェンヒドラミンの安定性を確保しつつ、パラベン類を使用せずに十分な防腐力を有しており、その上でジフェンヒドラミンの苦味及び舌へのしびれ感がマスキングされた、就寝直前にも、容易に服用可能な睡眠改善剤が求められていた。
【特許文献1】特開2002−138034号 公報
【特許文献2】特開2003−095933号 公報
【非特許文献1】「ドリエル 添付文書」エスエス製薬株式会社
【非特許文献2】「トラベルミン 添付文書」エーザイ株式会社
【非特許文献3】「ラナケインS 添付文書」小林製薬株式会社
【非特許文献4】第15改正 日本薬局方解説書 製剤総則シロップ剤
【非特許文献5】「環境ホルモン学会 第三回研究発表会要旨集」 (「パラベンの雄ラット性腺系への影響」 東京都立衛生研究所毒性部)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、ジフェンヒドラミンの安定性が高く、味・風味も良好なジフェンヒドラミン配合睡眠改善内服液剤を提供することを目的とする。具体的には、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類、及びエリスリトールを含有し、pH3.8〜4.2とした睡眠改善内服液剤に関する。
さらに、就寝前の服用を考慮し、低カロリーかつ、う蝕性の観点からも服用コンプライアンスの改善された睡眠改善内服液剤を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類及びエリスリトールを含有する、pH3.8〜4.2の睡眠改善内服液剤とすることで、種々の菌・カビに対する防腐力に優れ、ジフェンヒドラミンの安定性が高く、味、風味も良好な内服液剤が得られることを見出した。
また、エリスリトールの含有量を、5〜20W/V%とすることにより、低カロリーかつ、う蝕性の問題を生ずることなく、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩の苦味をマスキングした内服液剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[5]に掲げる内服液剤である。
[1]ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類、及びエリスリトールを含有する、pH3.8〜4.2の睡眠改善内服液剤
[2]エリスリトールの含有量が、5〜20W/V%である[1]に記載の睡眠改善内服液剤。
[3]パラベン類を含まないことを特徴とする[1]または[2]に記載の睡眠改善内服液剤。
[4]さらに、スクラロース及び/またはアセスルファムカリウムから選ばれる1種以上を含有する[1]、[2]または[3]に記載の睡眠改善内服液剤。
[5]100mLあたりのエネルギーが、20kcal以下である[1]、[2]、[3]または、[4]に記載の睡眠改善内服液剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における内服液剤とは、特に制限はないが、例えば、公知の使用形態として汎用される医薬品、新指定医薬部外品などに分類されるビタミン含有保健薬と同じ方法により調製したドリンク剤を指す。
【0011】
本発明で用いられるジフェンヒドラミン及び/またはその塩類は、通常の医薬品に使用されるものであればよく、例えば第15改正 日本薬局方収載品の塩酸ジフェンヒドラミンを使用することができる。ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類の濃度は、0.01〜1.0W/V%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは0.08〜0.5W/V%であることが望ましい。ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類の濃度が0.01W/V%未満では、睡眠改善効果が十分に発揮できない一方で、ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類の濃度が1.0W/V%より多いと内服液剤の味が損なわれるため好ましくない。
【0012】
本発明で用いられる安息香酸及び/またはその塩は、通常の医薬品に使用されるものであればよく、例えば第15改正 日本薬局法収載の安息香酸ナトリウムを使用することができる。
【0013】
本発明で用いられるエリスリトールは、通常の医薬品に使用されるものであればよく、例えば、医薬品添加物規格収載品を使用することができる。エリスリトールの濃度は、5〜20W/V%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは7〜15W/V%の範囲であることが望ましい。
エリスリトールの濃度が5W/V%未満では、ジフェンヒドラミンの苦味と舌を麻痺する特異的な味を抑える効果が低下する。さらに、当該発明の内服液剤の防腐効力も低下する。また、エリスリトールの濃度が20W/V%より多いと溶解度の面で問題が生じ、製造法が煩雑となり、好ましくない。
【0014】
本発明では必要に応じて高甘味剤を添加することが可能である。例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、羅漢果、ステビア、サッカリンなどが使用できる。これらの中でも、特に風味が向上するのはスクラロースであり、さらに、アセスルファムカリウムまたは、この2種を併用したものも風味が向上する。
【0015】
スクラロースを使用する場合、通常の医薬品に使用されるものであればよく、例えば医薬品添加物規格収載品を使用することができる。スクラロースの濃度は、0.03〜0.3W/V%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.2W/V%であることが望ましい。スクラロースの濃度が0.03W/V%では、ジフェンヒドラミンの苦味と、舌を麻ひする特異的な味を抑える効果が乏しく、また、スクラロースの濃度が0.3W/V%より多いと甘味が強すぎて好ましくない。
【0016】
アセスルファムカリウムを使用する場合は、通常の医薬品に使用されるものであればよい。アセスルファムカリウムの濃度は、0.03〜0.6W/V%の範囲であることが望ましく、特に好ましくは、0.06〜0.4W/V%であることが好ましい。アセスルファムカリウムの濃度が、0.03W/V%より少ないと、ジフェンヒドラミンの苦味と、舌を麻ひする特異的な味を抑えることが難しく、またアセスルファムカリウムの濃度が、0.6W/V%より多いと、甘味が強すぎて、内服液剤の香味を損なう。
【0017】
本発明におけるパラベン類とは、パラオキシ安息香酸アルキルエステルであり、アルキルエステルの炭素数としては、2〜4、例えば第15改正日本薬局方収載のパラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルまたはパラオキシ安息香酸ブチルなどがあげられる。
【0018】
本発明における低カロリーとは、健康増進法第31条に基づいた栄養表示基準で定める栄養成分表示の「エネルギー」のことであり、栄養成分がすくないことを強調する場合の基準と同様である。すなわち、100mLあたりのエネルギーが20kcal以下であることをいう。本発明においては、さらに「エネルギー」が、10kcal以下であることが好ましく、さらに7kcal未満がより好ましい。
【0019】
本発明の内服液剤には、甘味剤のほか、必要に応じて、味、風味をより良くするために、必要に応じて、以下に示すような添加剤を加えることができる。すなわち、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸などの酸味剤、矯味剤、安定化剤、溶解補助剤、pH調整剤、粘調剤、造粘剤そして、香料等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。これらの成分は、従来の経口液剤に使用されている量で適宜配合されることが望ましい。
【0020】
このようにして得られた本発明のジフェンヒドラミン及び/その塩を含有する睡眠改善内服液剤は、防腐力と安定性の双方を満たし、液剤であるため服用コンプライアンスが高く、さらに低カロリーかつ、低う触性であるため、就寝前の服用に非常に適している。
【0021】
(内服液剤の調製方法)
本発明の内服液剤の調製方法としては、特に制限されず、通常の内服液剤を調製するのに必要な各種成分を適宜選択、配合して、常法により調製することができる。
通常、各成分と精製水の一部を混合、溶解、必要であれば加熱し溶解し、製剤の至適pHを得るため、酸又はアルカリを用いて、調整した後、精製水などで液量を調整後、不溶物除去のため、必要に応じてろ過するのも良い。
【0022】
次に、実施例及び、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
[実施例1]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを3.8に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0024】
[実施例2]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0025】
[実施例3]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.2に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0026】
[実施例4]
加温した精製水400mLに、エリスリトール45gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0027】
[実施例5]
加温した精製水400mLに、エリスリトール180gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0028】
[実施例6]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、アセスルファムカリウム1.2g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0029】
[実施例7]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム4.5g、クエン酸2.85g、リンゴ酸3.6g、塩酸ジフェンヒドラミン0.45g、スクラロース0.27g、アセスルファムカリウム0.27g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い、本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0030】
[実施例8]
加温した精製水400mLに、エリスリトール135gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム11.4g、クエン酸5.7g、リンゴ酸8.4g、塩酸ジフェンヒドラミン6g、スクラロース1.5g、アセスルファムカリウム2.4g、カラメル0.9g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0031】
以下に示す表は、上記の実施例についてまとめた表である。
【0032】
【表1】

【0033】
[比較例1]
精製水400mLに、パラオキシ安息香酸ブチル0.063gを添加し、加熱攪拌溶解した後、エリスリトール90g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0034】
[比較例2]
精製水400mLに、パラオキシ安息香酸ブチル0.126gを添加し、加熱攪拌溶解した後、エリスリトール90g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0035】
[比較例3]
精製水400mLに、パラオキシ安息香酸ブチル0.18gを添加し、加熱攪拌溶解した後、エリスリトール90g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを5.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0036】
[比較例4]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを3.6に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0037】
[比較例5]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.3に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0038】
[比較例6]
加温した精製水400mLに、エリスリトール90gを攪拌溶解し、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.6に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0039】
[比較例7]
加温した精製水400mLに、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0040】
[比較例8]
加温した精製水400mLに、D−ソルビトール90gを攪拌溶解し、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを3.5に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0041】
[比較例9]
加温した精製水400mLに、D−ソルビトール240gを攪拌溶解し、アマルティシロップ240g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0042】
[比較例10]
精製水400mLに、パラオキシ安息香酸ブチル0.063gを添加し、加熱攪拌溶解した後、エリスリトール30g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.6g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.4に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0043】
[比較例11]
精製水400mLに、白糖300gを添加し、加熱攪拌溶解した後、アマルティシロップ30g、安息香酸ナトリウム0.63g、クエン酸ナトリウム7.2g、クエン酸3.45g、リンゴ酸4.5g、塩酸ジフェンヒドラミン1.5g、スクラロース0.15g、カラメル0.75g及び、香料を攪拌しながら順次添加し、溶解を確認した後、pHを4.0に調整後、精製水で全量900mLとする。濾紙を濾過層とした装置を使い本製剤を濾過した後、30mL褐色瓶に充填し、キャップを施し、85℃で15分滅菌した。
【0044】
以下に示す表は、上記の比較例をまとめた表である。
【0045】
【表2】

【0046】
[試験例1] 安定性試験(残存率)
実施例1〜8及び、比較例1〜10で得られた内服液剤を40℃の条件下、2、4及び6ヶ月保存した後、塩酸ジフェンヒドラミンの含量を測定した。なお、塩酸ジフェンヒドラミンは、逆相分配高速液体クロマトグラフィー法により定量を行った。。

測定後、以下の式により塩酸ジフェンヒドラミンの残存率を算出した。
残存率(%)=Ws/Wo×100
Ws: 40℃、2、4及び6ヵ月後の塩酸ジフェンヒドラミン含量
Wo: 製造直後の塩酸ジフェンヒドラミン含量
【0047】
上記の安定性試験を行った結果を下記の表3に示した。
表3の結果から明らかなように、pH3.8より低いpH域の比較例4、比較例8では、塩酸ジフェンヒドラミンの経時安定性は悪くなり、含量低下が認められた。
【0048】
【表3】

【0049】
[試験例2] 保存効力試験
実施例1〜8及び、比較例1〜10の処方の内服液剤について、第十五改正日本薬局方 参考情報 「保存効力試験法」に準拠し、保存効力試験を実施した。本試験の場合、試験菌として、Escherichia coli(E.coli), Pseudomonas aeruginosa(P.aeru), Staphylococcus aureus(S.aureu) の細菌類及び Aspergillus niger(A.niger), Candida albicans(C.albi)の真菌類を用いて、接種生菌数と14日目の生菌数をカウントして減少率を計算した。
【0050】
上記の保存効力試験を行った結果を下記の表4に示した。
表4の結果から明らかなように、pH4.2より高いpH域の比較例5、比較例6では、所定の菌に対する保存効力が低下した。
また、エリスルトールを配合しない比較例7では、効果がやや弱くなる。安息香酸ナトリウムまたは、パラベン類などの保存剤を配合しない比較例8、比較例9では、保存効力は認められなかった。
【0051】
【表4】

【0052】
[試験例3] 香味試験
評価パネル20名により、実施例1〜8及び、比較例1〜10の各組成物の「香味」、「甘味・酸味のバランス」についての評価を行った。「香味」、「甘味・酸味のバランス」の評価は、各検体を口に含んだ後、風味を確認した後、流しなどに吐き出すようにし、評価を行った。
【0053】
上記の香味試験を行った結果を下記の表5に示した。
表5の結果から明らかなように、実施例1〜8では、香味、甘味・酸味のバランスの両項目について、基準とする12名以上(60%以上)が良好と回答しているのに対し、ブチルパラベンを配合する比較例1〜3、エリスリトールあるいはスクラロースまたは、どちらも配合しない比較例7〜9また、ブチルパラベン配合し、エリスリトールの量が本発明より少ない比較例10においては、香味、甘味・酸味のバランスの評価は60%に満たなかった。
【0054】
【表5】

【0055】
上記の試験例1〜3をもとに、総合評価を行った。各試験例については、それぞれ以下に示す評価基準で評価を行った。
【0056】
[試験例1の評価基準]
○:40℃、6ヶ月保存後のジフェンヒドラミン残存率が、95%以上
△:40℃、6ヶ月保存後のジフェンヒドラミン残存率が、90%以上かつ95%未満
×:40℃、6ヶ月保存後のジフェンヒドラミン残存率が、90%未満
【0057】
[試験例2の評価基準]
○:摂取した各細菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が1%以下、
又は各真菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が1%以下
△:摂取した各細菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が10%以下、
又は各真菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が摂取菌数のレベル以下
×:摂取した各細菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が10%を超える、
又は各真菌類に対する2週間培養後の菌数の割合が摂取菌数のレベルを超える。
【0058】
[試験例3の評価基準]
◎:20名中、14名以上のパネルが、香味、甘味・酸味のバランスの両方の要因を
ともに良好と回答した。
○:20名中、12名以上のパネルが、良好であると評価した。
×:20名中、良好であると評価したパネルが、11名以下の場合。
【0059】
上記の総合評価の結果をまとめたものを、以下の表6に示す。各評価基準について全て適合したものは、総合評価○とした。また、一つでも評価基準が適合しないものは、本発明の医薬品として使用することはできないため、総合評価を×とした。
【0060】
【表6】

【0061】
[試験例4] 実施例2と比較例11の血糖値の測定評価
12時間絶食後のマウス(1群6匹)に実施例2の低カロリー液剤と白糖を使用した比較例11を1.5mL/kg相当を投与し、投与後120分までの血糖値の変化を30分ごとに測定した。実施例2の血糖値上昇は、比較例11投与群と比較して、極めて低いことが確認された。
【0062】
上記の測定値を下記の表7に示す。
【表7】

上記の測定値をグラフ化したものを下記の図1に示す。
[図1]


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフェンヒドラミン及び/またはその塩類、安息香酸及び/またはその塩類、及びエリスリトールを含有する、pH3.8〜4.2の睡眠改善内服液剤。
【請求項2】
エリスリトールの含有量が、5〜20W/V%である請求項1に記載の睡眠改善内服液剤。
【請求項3】
パラベン類を含まないことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の睡眠改善内服液剤。
【請求項4】
さらに、スクラロース及び/またはアセスルファムカリウムから選ばれる1種以上を含有する請求項1〜請求項3に記載の睡眠改善内服液剤
【請求項5】
100mLあたりのエネルギーが、20kcal以下である請求項1〜請求項4に記載の睡眠改善内服液剤。

【公開番号】特開2009−149545(P2009−149545A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327657(P2007−327657)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】