内歯歯車式変速機及び変速機の設計方法
【課題】内歯歯車を用いた変速機において高効率で高変速比が得られるとともに構造の簡易性を確保し、小型化を図ることができる構造を実現する。
【解決手段】本発明の内歯車式変速機100は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車111と、内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車112と、第1の外歯歯車と同軸に連結され第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車113と、第2の外歯歯車に対して第1の外歯歯車の内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から第2の外歯歯車と噛合し第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車114とを具備し、内歯歯車と第3の外歯歯車の軸線が一致し、第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が内歯歯車に対して回転自在に軸支される。
【解決手段】本発明の内歯車式変速機100は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車111と、内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車112と、第1の外歯歯車と同軸に連結され第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車113と、第2の外歯歯車に対して第1の外歯歯車の内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から第2の外歯歯車と噛合し第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車114とを具備し、内歯歯車と第3の外歯歯車の軸線が一致し、第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が内歯歯車に対して回転自在に軸支される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内歯歯車式変速機及び変速機の設計方法に係り、特に、高変換比及び高効率を有する減速機若しくは増速機として用いる場合に好適な変速機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種産業機器の分野において種々の減速機や増速機が用いられている。本明細書では減速機と増速機を合わせた包括概念を変速機と称する。もっとも、変速比が可変に構成される一般的な変速機の一部として本明細書に記載する変速機が用いられる場合を排除するものではない。このような変速機に要求される性能としては、高効率、高変速比、構造の簡易性、小型化などが挙げられる。変速機として代表的なものに歯車変速機構を用いたものがある。この歯車変速機構のうち高変速比を持つ歯車機構としては、ウォーム歯車を用いたものがあるが、これには、一段で大きな変速比が得られ、バックラッシも小さくできるという利点があるものの、噛み合いが全てすべり接触となるので、発熱が生じやすく、動力伝達効率が低いという問題点がある。また、遊星歯車機構も高い変速比が得られる機構であるが、構造が複雑であり、部品点数も多いという問題点がある。さらに、平歯車のみを用いたものとして外歯歯車式変速機が知られており、構造が簡単であって高効率が得られるものの、機構が大型化しやすいという欠点がある。
【0003】
一方、複数の歯車のうちの一つを内歯歯車として構成した変速機が知られている(以下の特許文献1及び2参照)。このような変速機は、外歯歯車式変速機と同様に高い変換効率を得ることができ、構成によっては高い変速比、構造の簡易性、小型化も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−11962号公報
【特許文献2】実公昭26−2414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の変速機においては、遊星歯車機構と同様の構造とし、軸受板11,12を固定して遊星運動が生じない構成としているため、遊星歯車機構と同様に構造が複雑であり、部品点数が多くなるという問題点がある。また、上記特許文献2に記載の変速機においては、高い変速比を得るために3段の歯車列を備えているが、軸線方向に長くなるために小型化が難しいという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、内歯歯車を用いた変速機において高効率で高変速比が得られるとともに構造の簡易性を確保し、小型化を図ることができる構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の内歯車式変速機は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備し、前記内歯歯車と前記第3の外歯歯車の軸線が一致し、前記第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が前記内歯歯車に対して回転自在に軸支されていることを特徴とする。この発明によれば、相互に噛合する内歯歯車と第1の外歯歯車よりなる第1の歯車列と、相互に噛合する第2の外歯歯車と第3の外歯歯車よりなる第2の歯車列との2段の歯車列により大きな変速比を得ることができる。また、各歯車の軸線が平行に固定されているため、ウォーム歯車や遊星歯車を用いる必要がないことから、高い動力伝達効率を実現できるとともに構造を簡易に構成できる。さらに、内歯歯車と第3の外歯歯車の軸線が一致するとともに内歯歯車及び第1の外歯歯車と第2の外歯歯車とが軸線方向に重なる位置に配置されるため、支持構造の簡易化や省スペース化が容易になることから、小型化が容易になる。その上、第3の外歯歯車の軸線方向の一方側が内歯歯車に軸支されることで、さらなる軸支剛性の確保や部品点数の削減などを図ることができる。
【0008】
本発明の他の内歯歯車式変速機は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結された第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記内歯歯車の軸線周りに回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第2の外歯歯車と噛合する第3の外歯歯車と、該第3の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車の側に連結された第4の外歯歯車と、該第4の外歯歯車と噛合する第5の外歯歯車と、を具備することを特徴とする。これによれば、3段の歯車列を構成するに際して、内歯歯車を用いるとともに、各歯車列を軸線方向と回転方向にずらして配置することで、変速比を高めつつ、軸線方向にもコンパクトな変速機構を構成できる。特に、複数の変速段を内歯歯車の軸線の周りにずらして配置することで、高変速比とコンパクト性を確保しつつ、第5の外歯歯車の軸線を内歯歯車の軸線の近傍に配置することが容易になるので、設計の自由度が高められる。ここで、前記第2の外歯歯車は前記第1の外歯歯車より大径に構成されていることが好ましく、また、前記第3の外歯歯車は前記第2の外歯歯車より小径に構成されていることが好ましい。さらに、前記第4の外歯歯車は前記第3の外歯歯車より大径に構成されていることが好ましく、また、前記第5の外歯歯車は前記第4の外歯歯車より小径に構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の一の態様においては、前記第5の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致する。これによれば、3段の歯車列の入出力軸を一致させることが可能になる。
【0010】
本発明の他の態様においては、前記第5の外歯歯車は、前記第4の外歯歯車に対して前記回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第4の外歯歯車と噛合し、該第5の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車とは反対側に連結された第6の外歯歯車と、該第6の外歯歯車と噛合する第7の外歯歯車とをさらに具備する。これによれば、変速比をさらに高めつつ、軸線方向にもコンパクトな変速機構を構成できる。この場合においては、前記第7の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致する場合がある。
【0011】
次に、本発明の内歯歯車式変速機の設計方法は、複数の歯車を備えた変速機の設計方法であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備する変速機を設計するに際して、前記内歯歯車の外径と、前記内歯歯車の軸線から前記第2の外歯歯車の最外縁部までの距離との差の絶対値が許容値L以下になるように、前記内歯歯車、前記第1の外歯歯車、前記第2の外歯歯車及び前記第3の外歯歯車の歯数、並びに、前記内歯歯車と前記第1の外歯歯車からなる第1の歯車列のモジュール及び前記第2の外歯歯車と前記第3の外歯歯車からなる第2の歯車列のモジュールを設定することを特徴とする。これによれば、変速機の半径方向の寸法をコンパクト化できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高効率かつ高変速比を実現しつつ、簡易でコンパクトに変速機を構成できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態の内歯歯車式変速機の縦断面図。
【図2】第1実施形態の側面図。
【図3】第1実施形態の設計方法を示す概略フローチャート。
【図4】第1実施形態の駆動力伝達効率を測定するための測定系の概略構成図。
【図5】第1実施形態の入力電力と駆動力伝達効率との関係を示すグラフ。
【図6】第2実施形態の軸線方向に見た変速機の構造を示す構成図。
【図7】第2実施形態の歯車構造を示す部分斜視図。
【図8】第3実施形態の軸線方向に見た変速機の構造を示す構成図。
【図9】第3実施形態の歯車構造を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1及び図2を参照して本発明に係る第1実施形態の内歯歯車式変速機の構造について説明する。図1は該変速機の縦断面図、図2は同変速機の左側面図である。
【0015】
本実施形態の変速機100は、フレーム101に軸受を介して回転自在に軸支された内歯歯車111を備えている。この内歯歯車111は、フレーム101に軸支された軸芯部111aと、この軸芯部111aの端部より外周側へ広がる拡径部111bと、拡径部111bの外周縁から軸線方向に筒状に構成され、軸線方向の先端側(図示右側)に開放された形状の筒状部111cとを有し、この筒状部111cの内周面上に内歯111tが設けられる。
【0016】
フレーム101にはフレーム102が固定され、このフレーム102にさらにフレーム103が固定されて一体のハウジング(収容体若しくは支持体)が形成されている。フレーム102と103には上記内歯歯車111の軸線111xと平行に固定された軸線104xを備えた第1の軸体104が回転自在に軸支されている。第1の軸体104には第1の外歯歯車112及び第2の外歯歯車113がそれぞれ連結されている。第1の外歯歯車112の外歯112tは内歯歯車111の内歯111tと噛合している。第2の外歯歯車113の外歯113tは第1の外歯歯車112tより大径に構成される。
【0017】
フレーム102、103には、少なくとも、第1の外歯歯車112の軸線104xに対して内歯歯車111と第1の外歯歯車112の噛合位置の反対側に平行に固定された軸線105xを備えた第2の軸体105が回転自在に軸支されている。第2の軸体105には外歯114tを備えた第3の外歯歯車114が連結され、この第3の外歯歯車114の外歯114tは、内歯歯車111に対する第1の外歯歯車112の噛合位置とは反対側から第2の外歯歯車113の外歯113tに噛合している。第3の外歯歯車114は第2の外歯歯車113よりも小径に構成されている。
【0018】
本実施形態では、軸線105xは軸線111xと一致し、第2の軸体105は上記フレーム102、103とともに、内歯歯車111に対して直接に回転自在に軸支されている。すなわち、第2の軸体105はフレーム102の軸受を通過して内歯歯車111の上記軸芯部111aの端部に軸受を介して嵌合される。軸芯部111aは図示例では筒状に構成され、軸芯部111aの内側に嵌合した軸受を介して第2の軸体105の端部が軸支されている。
【0019】
なお、上述の各軸体と各歯車は、図示例とは異なり、相互に一体に構成されたものであってもよく、或いは、図示例と同様に相互に別体に構成されているが、各軸体がハウジング(収容体、支持体)に対し固定され、この各軸体に対して各歯車が回転自在に支承されたものであってもよい。これらの点は他の実施形態でも同様である。
【0020】
本実施形態では、内歯歯車111の軸芯部111aと、第2の軸体105との間に構成された動力伝達経路中に、内歯111tと外歯112tが噛合する第1の歯車列と、外歯113tと外歯14tが噛合する第2の歯車列とが構成され、これによって、軸芯部111aを入力とし、第2の軸体105を出力とした場合には増速機、第2の軸体105を入力とし、軸芯部111aを出力とした場合には減速機として機能する、2段の変速構造が形成される。ここで、第1の歯車列において内歯歯車111より第1の外歯歯車112が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車113より第3の外歯歯車114が小径とされ、それぞれ増速輪列を構成している。また、第1の歯車列と第2の歯車列は共に高い変速比を有するので、全体として変速機100は高い変速比を備えたものとされる。
【0021】
次に、上記のように構成された変速機100を設計する場合の各パラメータの関係について説明する。まず、内歯歯車111の内歯111tの歯数z1、ピッチ円直径D1[mm]、歯先円直径Dk1[mm]、歯底円直径Db1[mm]、第1の外歯歯車112の外歯112tの歯数z2、ピッチ円直径D2[mm]、歯先円直径Dk2[mm]、歯底円直径Db2[mm]、第2の外歯歯車113の外歯113tの歯数z3、ピッチ円半径D3[mm]、歯先円直径Dk3[mm]、歯底円直径Db3[mm]、第3の外歯歯車114の外歯114tの歯数z4、ピッチ円半径D4[mm]、歯先円直径Dk4[mm]、歯底円直径Db4[mm]とし、また、第1の歯車列のモジュールm1[mm]、変速比i1、第2の歯車列のモジュールm2[mm]、変速比i2とし、さらに、軸線111xと軸線104xの距離C1[mm]、軸線105xと軸線104xの距離C2[mm]とすると、以下の式(1)乃至(4)が成立する。なお、本実施形態ではC1=C2である。また、変速機の変速比i=i1×i2である。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
次に、上記変速機100の上記軸芯部111aを回転駆動源に接続した場合に、当該回転駆動源の出力回転数と各軸線周りの回転数を求めると、以下の式(6)及び(7)で示すようになる。ここで、n0[rpm]は回転駆動源の出力回転速度、n1[rpm]は軸芯部111a(入力軸)の回転速度、n2[rpm]は第1の軸体104の回転速度、n3[rpm]は第2の軸体105(出力軸)の回転速度である。なお、以下の式(5)は、上記回転駆動源として磁極数p、電源周波数をf[Hz]、すべり率sの誘導電動機を用いた場合の上記出力回転数の例を示すものである。
【0027】
【数5】
【0028】
【数6】
【0029】
【数7】
【0030】
また、第1及び第2の各歯車列のピッチ円上の周速v1、v2[m/s]、速度係数fv1、fv2、回転力F1[N]、F2[N]は以下の式(8)乃至(10)で表される。なお、式(10)において、回転駆動源(電動機)の出力をP[W]とする。
【0031】
【数8】
【0032】
【数9】
【0033】
【数10】
【0034】
次に、変速構造における歯車強度を満たす第1及び第2の各歯車列のモジュールm1、m2を設定するために、以下の曲げ強さを考慮したモジュールと、以下の歯面強さを考慮したモジュールをそれぞれ求める。
【0035】
まず、曲げ強さを考慮したモジュールは、ルイスの式をもとに変形した式から歯車の歯に動的負荷が加わった場合について考えると、以下の式(11)で表される。ここで、ルイスの式とは、歯車の歯を、歯形に内接する放物線に置き換え、この放物線と歯元の接点における曲げ応力を計算する式であり、F=σbbtyで表される。ここで、σbは歯車材料の許容曲げ応力[MPa]、bは歯車の歯幅[mm]、tは歯車の円周ピッチ[mm]、yは歯車の歯形係数である。このルイスの式において歯に動的負荷が加わった場合を示すものが以下の式(11)である。fvは速度係数、fwは歯車同士の荷重係数である。
【0036】
【数11】
【0037】
ここで、t=πmであり、b=12mとした場合には、式(11)をモジュールに関する式に変形すると、以下の式(12)及び(13)が得られる。なお、歯幅bは上記の値に限らず、歯車の材質や応力を勘案して適宜の設定値とすることができる。
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
【0040】
ここで、荷重係数fwは歯車に加わる負荷の状態によって決まる値であり、負荷が小さいほど大きな値をとる。また、歯形係数yは歯車の歯数と歯の圧力角との関係によって決まる。なお、歯形係数yは歯数が大きい方が大きな値となるため、曲げ強さを考慮したモジュールの最小値の計算は第1の歯車列では内歯歯車111について計算し、第2の歯車列では第2の外歯歯車113について計算すればよい。いずれにしても、上記の式(13)のFに式(10)の回転力F1、F2を代入することで、必要な曲げ強さを有する第1の歯車列のモジュールの最小値mb1と、第2の歯車列のモジュールの最小値mb2を求めることができる。
【0041】
次に、歯面強さを考慮したモジュールを求める。これについては、ヘルツの式を変形して次の式(14)及び(15)が成立する。ヘルツの式とは、球面や円筒面の弾性接触による最大接触応力を求める式であり、歯数z1とz2の外歯歯車同士が噛み合う場合には以下の式の第2項のようになり、これを変形すると第3項のようになる。これをさらに変形すると式(15)によってモジュールが表される。
【0042】
【数14】
【0043】
【数15】
【0044】
上記の式(14)及び(15)は外歯歯車同士の組み合わせの場合を示しており、内歯歯車と外歯歯車の組み合わせの場合には、内歯歯車をz1、外歯歯車をz2とすると、幾何学的関係から次の式(16)で表される。
【0045】
【数16】
【0046】
なお、上記式(15)及び(16)中の歯車材料の比応力係数kは以下の式(17)で求めることができる。ここで、許容圧縮応力σcは1340MPa、工具圧力角αは20°、弾性係数(ヤング率)E1,E2はそれぞれ210GPaである。
【0047】
【数17】
【0048】
上記の式(10)の回転力F1、F2に基づいて、式(16)により第1の歯車列のモジュールを計算し、式(15)により第2の歯車列のモジュールを計算すると、必要な歯面強さを有する第1の歯車列のモジュールの最小値mc1と、第2の歯車列のモジュールの最小値mc2を求めることができる。そして、mb1とmc1のうち大きい方をm1′とし、mb2とmc2のうち大きい方をm2′とする。続いて、これらのm1′、m2′以上で、JIS B 1701に規定されているモジュールの標準値に最も近い値を改めてm1′、m2′とする。その後、これらの値と最初に設定したモジュールm1、m2とを比較して、m1=m1′、m2=m2′であれば設計終了とし、そうでなければ、m1=m1′、m2=m2′に設定し直して上記の計算を繰り返す。ただし、本発明は上記モジュールの標準値に限定されるものではない。
【0049】
なお、各歯車列における動力伝達効率をη1、η2とすると、本実施形態のように2段の変速構造の動力伝達効率η=η1×η2となる。例えば、各歯車列の動力伝達効率が99%であれば、2段の場合には98%となる。
【0050】
図3には、本実施形態の変速機100を設計する場合の手順を示す。まず、電動機の仕様(定格出力P、出力回転数n0=入力軸の回転数n1)と、目標とする変速比iを設定する。次に、初期値として第1の歯車列のモジュールm1と第2の歯車列のモジュールm2を設定する。そして、上記式(7)により、第1の歯車列の変速比i1、第2の歯車列の変速比i2と、各歯車の歯数z1、z2、z3、z4を求める。図示例では、i1、i2、z1、z3を設定して式(7)よりz2、z4を求めているが、これに特に限定されるものではなく、要は、上記の複数のパラメータを決定するに際して必要な数のパラメータを設定し、他のパラメータを算出すればよい。
【0051】
次に、上記各パラメータに基づいて各歯車列の軸間距離C1、C2が求められるが、本実施形態ではC1=C2とならなければならないので、C1とC2が一致するかどうかを判定する。一致しない場合には再度パラメータの設定値を変更して計算をやり直し、最終的にC1=C2となるようにする。
【0052】
次に、変速機100のコンパクト化を図るために、第1の歯車列の構成要素の外径Dd1と、第2の歯車列の構成要素の外径Dd2との差の絶対値が許容値L以下となるかどうかを判定する。ここで、外径Dd1は第1の歯車列(すなわち、内歯歯車111と第1の外歯歯車112)の軸線111x、105xを中心とした最外周位置に対応する直径であり、本実施形態では内歯歯車111の外径に相当する。また、外径Dd2は第2の歯車列(すなわち、第2の外歯歯車113と第3の外歯歯車114)の軸線111x、105xを中心とした最外縁部に対応する直径であり、本実施形態では軸線111xから第2の外歯歯車113の最外縁部(軸線111xから最も離れた外縁部分)までの距離に相当する。ここで、内歯歯車111の肉厚(内歯111tの歯底円の外側にある厚み)をcとすると、以下の式(18)が成立する。
【0053】
【数18】
【0054】
上記の許容値Lは、例えば、Dd1とDd2のうち大きい方の値若しくはDd1+Dd2の値に対して所定の割合で設定することができる。例えば、Dd1とDd2のうち大きい方の値の5〜10%の範囲内の値とすることが考えられる。ここで、上記判定により上記許容値L以下の値が得られない場合には、再度、上記各パラメータの値を設定及び算出を行い、最終的に許容値L以下の値が得られるまで上記手順を繰り返す。このようにすることで、変速機100の径方向のコンパクト性を高めることができる。
【0055】
一方、上記判定により上記許容値L以下の値が得られた場合には、上記のようにして決定されたパラメータに基づいて、各歯車の歯形係数y及びピッチ円直径D、第1及び第2の各歯車列の周速v1、v2及び回転力F1、F2を求め、上述のように強度計算を行い、本実施形態の駆動条件において必要なモジュールの最小値を求める。ここで、強度計算に際しては、上述のように、歯形係数yは各歯車列のそれぞれ二つの歯車のうち歯数が大きい歯車の方が大きくなるため、当該歯数が大きい歯車のモジュールの上記最小値の方が小さくなることから、各歯車列において歯数の大きい方の歯車について計算を行えばよい。すなわち、第1の歯車列では内歯歯車111(歯形係数y1、ピッチ円直径D1)、第2の歯車列では第2の外歯歯車113(歯形係数y3、ピッチ円直径D3)について計算を行う。
【0056】
上記の計算を具体的に述べると、上記式(1)によりD1、D3を求め、上記式(6)及び(8)からn2、v1、v2を求め、上記式(9)よりfv1、fv2を計算し、上記式(10)からF1、F2を求める。そして、これらの値に基づいて、上記式(13)、(15)及び(16)により、曲げ強さを考慮した各歯車列のモジュールの最小値mb1、mb2と、歯面強さを考慮した各歯車列のモジュールの最小値mc1、mc2を算出する。そして、上述のように各歯車列についてそれぞれ曲げ強さに基づくモジュールの最小値と歯面強さに基づくモジュールの最小値とを比較して、大きい方を所要最小モジュールm1′、m2′とする。
【0057】
その後、上記所要最小モジュールm1′、m2′と、設定されたモジュールm1、m2とを比較して、当該モジュールm1、m2が所要最小モジュールm1′、m2′と等しいかどうかを判定する。この判定でm1=m1′、m2=m2′となっている場合には歯車の基本設計は終了し、そうでない場合には、再度、モジュールm1=m1′、m2=m2′に設定して計算をからやり直す。以上のプロセスはコンピュータ等の演算手段を用いて自動的に行うことができる。なお、前述のようにモジュールの標準値を考慮してm1′、m2′を決定してもよい。
【0058】
上記設計方法により設計した具体的な設計例を示す。目標とする変速比を10〜13、電動機の仕様を定格出力P=4.5kWとして設計を行ったところ、変速比は12、内歯歯車111の内歯111tの歯数70、モジュール2.0mm、第1の外歯歯車112の外歯112tの歯数19、モジュール2.0mm、第2の外歯歯車113の外歯113tの歯数52、モジュール1.5mm、第3の外歯歯車113の外歯113tの歯数16、モジュール1.5mm、軸間距離C1=C2=51mmとなった。
【0059】
この変速機100を試作し、図4に示す実験装置により動力伝達効率の測定を行った。ここで、電動機1の出力を伝動ベルト5等を介して変速機100に接続し、変速機100の出力を伝動ベルト5等を介して電磁ブレーキ4に接続した。電動機1はACサーボモータである。上記動力伝達経路において、変速機100の前後にそれぞれトルク・回転数検出器(トルクメータ)2、3を介在させた。この実験では、電動機1による入力回転数を一定に保ち、電磁ブレーキ4の負荷を徐々に増大させつつ、変速機100の前後のトルク・回転数検出器2、3に接続した表示器6、7から検出データをパーソナルコンピュータ8に入力し、記録した。
【0060】
上記データのうち、入力回転数300rpm、出力回転数3592rpmの場合について示したものが図5である。ここで、入力パワーが2200Wのとき動力伝達効率η=92%が得られた。ただし、この動力伝達効率は入力回転数によって変化する。入力回転数n0を50〜400rpmの範囲で変えて測定したところ、動力伝達効率ηは89%(n0=400rpm)〜98%(n0=50rpm)の範囲内の値となった。
【0061】
本実施形態によれば、内歯歯車111と第1の外歯歯車112の噛合による第1の歯車列と、第2の外歯歯車113と第3の外歯歯車114の噛合による第2の歯車列の2段の変速構造により、高い変速比を可能としつつ変換効率が高く、しかも構造が簡易で小型化も可能な変速機を実現できる。
【0062】
また、本実施形態では、内歯歯車111の軸線111xと第2の軸体105の軸線とが一致していることにより、入出力軸が一致しているため、動力伝達経路に接続される変速機周辺の構造設計が容易になるという利点がある。また、このように第2の軸体105を内歯歯車111と同軸に構成することにより各歯車の軸支構造を簡易化することも可能である。特に、本実施形態では、第2の軸体105の一方側(図1の左側部分)が内歯歯車111により直接に軸支されていることにより、軸支構造の簡易化や部品点数の削減を図ることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、第1の歯車列(内歯歯車111)の外径Dd1と、第2の歯車列の外径Dd2の差の絶対値が許容値L以下とされているので、変速機100の径方向のコンパクト化を図ることができる。この場合、第2の歯車列の外径Dd2が第1の歯車列の外径Dd1以下であることが好ましく、特に、Dd2=Dd1(許容値Lが0の場合に相当する。)であることが変速比を大きくしつつコンパクト化を図る上で最も好ましい。
【0064】
次に、図6及び図7を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、図6乃至図9は各歯車を模式的に描いているが、基本的な各部の軸支構造や各歯車の形状については第1実施形態と同様である。
【0065】
本実施形態の変速機200では、内歯歯車211の内歯211tと第1の外歯歯車212の外歯212tが噛合し、第1の外歯歯車212に対し第1の軸体204により同軸に連結され、第1の外歯歯車212より大径の第2の外歯歯車213の外歯213tと、第3の外歯歯車214の外歯214tとが噛合し、第3の外歯歯車214に対し第2の軸体205により同軸に連結され、第3の外歯歯車214より大径の第4の外歯歯車215の外歯215tと、第5の外歯歯車216の外歯216tとが噛合している。第5の外歯歯車216は第3の軸体206に連結されている。ここで、第1の歯車列において内歯歯車211より第1の外歯歯車212が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車213より第3の外歯歯車214が小径とされ、第3の歯車列において第4の外歯歯車215より第5の外歯歯車216が小径とされ、これらによって各歯車列はそれぞれ増速輪列を構成している。
【0066】
ここで、第1の軸体204、第2の軸体205及び第3の軸体206は、第1実施形態と同様の図示しない軸支構造により、すべて内歯歯車211の軸線と相互に平行かつ固定された状態とされている。特に、図示例では、第3の軸体206は内歯歯車211の軸線211xと一致する軸線を有している。この構成は、第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)が第1の軸体304(第1の外歯歯車及び第2の外歯歯車の軸線)に対して内歯歯車311の軸線の周りに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。この場合、第3の軸体206の軸線方向の一方側を第1実施形態と同様に内歯歯車211に軸支するように構成してもよい。また、この構成において、第3の外歯歯車214は第2の外歯歯車213に対して内歯歯車211の軸線211xの周りに回転した側から噛合している。
【0067】
また、第2の外歯歯車213は第1の外歯歯車212に対して軸線方向の一方側(図7の右斜め奥側)において第1の軸体204に固定されている。一方、第4の外歯歯車215は第3の外歯歯車214に対して軸線方向の他方側(図7の左斜め前側)において第2の軸体205に固定されている。
【0068】
本実施形態では、内歯歯車211と第1の外歯歯車212が噛合してなる第1の歯車列と、第2の外歯歯車213と第3の外歯歯車214が噛合してなる第2の歯車列と、第4の外歯歯車215と第5の外歯歯車216が噛合してなる第3の歯車列とを有する3段の変速機構が構成されるので、第1実施形態よりもさらに高い変速比を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、動力伝達経路が内歯歯車211、第1の外歯歯車212、第2の外歯歯車213、第3の外歯歯車214、第4の外歯歯車215、第5の外歯歯車216に沿って構成される。この場合、第1の外歯歯車212から第1の軸体204に沿って第2の外歯歯車213へ進む向きと、第3の外歯歯車214から第2の軸体205に沿って第4の外歯歯車215へ進む向きとが軸線方向の相互に逆向きとされることから、上記動力伝達経路が軸線方向の正逆に折り返された態様で構成されることとなるため、変速機200を軸線方向にコンパクトに構成することができる。
【0070】
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態の変速機300では、内歯歯車311の内歯311tと第1の外歯歯車312の外歯312tが噛合し、第1の外歯歯車312に対し第1の軸体304により同軸に連結され第1の外歯歯車312より大径の第2の外歯歯車313の外歯313tと、第3の外歯歯車314の外歯314tとが噛合し、第3の外歯歯車314に対し第2の軸体305により同軸に連結され第3の外歯歯車314より大径の第4の外歯歯車315の外歯315tと、第5の外歯歯車316の外歯316tとが噛合し、第5の外歯歯車316に対し第3の軸体306により同軸に連結され第5の外歯歯車316より大径の第6の外歯歯車317と、第7の外歯歯車318の外歯318tとが噛合している。第7の外歯歯車318は第4の軸体307に連結されている。ここで、第1の歯車列において内歯歯車311より第1の外歯歯車312が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車313より第3の外歯歯車314が小径とされ、第3の歯車列において第4の外歯歯車315より第5の外歯歯車316が小径とされ、第4の歯車列において第6の外歯歯車317より第7の外歯歯車318が小径とされ、これらによって各歯車列がそれぞれ増速輪列を構成している。
【0071】
本実施形態でも、第2実施形態と同様に、第1の軸体304、第2の軸体305、第3の軸体306及び第4の軸体307は、第1実施形態と同様の図示しない軸支構造により、すべて内歯歯車311の軸線と相互に平行かつ固定された状態とされている。特に、図示例では、第4の軸体307は内歯歯車311の軸線311xと一致する軸線を有している。この場合、第4の軸体307の軸線方向の一方側が第1実施形態と同様に内歯歯車311により軸支されるように構成してもよい。また、この構成において、第3の外歯歯車314は第2の外歯歯車313に対して内歯歯車311の軸線周りに回転した側から噛合し、また、第5の外歯歯車316は第4の外歯歯車315に対して内歯歯車311の軸線311xの周りに回転した側(第3の外歯歯車314が第2の外歯歯車313に対して噛合する側と同じ側)から噛合している。
【0072】
また、第2の外歯歯車313は第1の外歯歯車312に対して軸線方向の一方側(図9の右斜め奥側)において第1の軸体304に固定されている。一方、第4の外歯歯車315は第3の外歯歯車314に対して軸線方向の他方側(図9の左斜め前側)において第2の軸体305に固定されている。また、第6の外歯歯車317は第5の外歯歯車316に対して軸線方向の一方側(図9の右斜め奥側)において第3の軸体306に固定されている。この構成は、第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)が第1の軸体304(第1の外歯歯車及び第2の外歯歯車の軸線)に対して内歯歯車311の軸線の周りに回転した側に配置され、第3の軸体306(第5の外歯歯車及び第6の外歯歯車の軸線)が第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)に対して上記と同じ向きに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。
【0073】
本実施形態では4段の変速構造が構成されてさらに高い変速比が得られるが、第2実施形態と同様に動力伝達経路の隣接する歯車列が軸線方向に交互に配置されることで、軸線方向にコンパクトに構成することができる。このような複数の歯車列の構成は第2実施形態の3段構造、第3実施形態の4段構造に限らず、5段以上の任意の構造とすることができる。そして、これらの場合において、本発明では、複数の歯車列が内歯歯車の軸線周りに配列され、しかも、動力伝達経路に沿った歯車列の噛合位置が軸線方向に交互に配置されていることにより、変速比を高めつつ、コンパクトに構成できるという効果が得られる。また、これらの場合にも、最終段の軸体の軸線を内歯歯車の軸線と一致させることができる。これらの構成は、動力伝達経路に沿った各歯車列の軸線が内歯歯車の軸線の周りに順に同じ向きに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。
【0074】
上記第2実施形態及び第3実施形態についても、第1実施形態と同様に設計を行うことができる。ただし、これらの場合には、歯車列の数が増えるので、その分、パラメータ数が増加する。例えば、歯車列が1段増加する毎に、歯車の数は2つ増加し、歯車列の変速比もその分増加する。しかしながら、基本的には、設定すべきパラメータの数を増加させるだけで上記と同様に設計を行うことができる。上記第3実施形態の設計例としては、例えば、内歯歯車311及び第1の外歯歯車312のモジュールを2.0mm、第2の外歯歯車313及び第3の外歯歯車314のモジュール1.5mm、第4の外歯歯車315及び第5の外歯歯車316のモジュール1.5mm、第6の外歯歯車317及び第7の外歯歯車318のモジュール1.5mmとすることができる。
【0075】
尚、本発明の内歯歯車式変速機は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記第2及び第3の実施形態では、最終段の外歯歯車の軸線が内歯歯車の軸線と一致する例を示しているが、このような構成に限らず、結果として複数の歯車列が軸線方向に交互に配置されていれば、或いは、内歯歯車の軸線周りに回転した側に配置されていれば、それぞれ第2及び第3の実施形態で説明した対応する効果を得ることができる。なお、上記各実施形態の各歯車は平歯車で構成できるが、斜歯歯車、山歯歯車などを用いても構わない。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300…変速機、101、102、103…フレーム、104、204、304…第1の軸体、105、205、305…第2の軸体、206、306…第3の軸体、307…第4の軸体、111、211、311…内歯歯車、112、212、312…第1の外歯歯車、113、213、313…第2の外歯歯車、114、214、314…第3の外歯歯車、215、315…第4の外歯歯車、216、316…第5の外歯歯車、317…第6の外歯歯車、318…第7の外歯歯車
【技術分野】
【0001】
本発明は内歯歯車式変速機及び変速機の設計方法に係り、特に、高変換比及び高効率を有する減速機若しくは増速機として用いる場合に好適な変速機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種産業機器の分野において種々の減速機や増速機が用いられている。本明細書では減速機と増速機を合わせた包括概念を変速機と称する。もっとも、変速比が可変に構成される一般的な変速機の一部として本明細書に記載する変速機が用いられる場合を排除するものではない。このような変速機に要求される性能としては、高効率、高変速比、構造の簡易性、小型化などが挙げられる。変速機として代表的なものに歯車変速機構を用いたものがある。この歯車変速機構のうち高変速比を持つ歯車機構としては、ウォーム歯車を用いたものがあるが、これには、一段で大きな変速比が得られ、バックラッシも小さくできるという利点があるものの、噛み合いが全てすべり接触となるので、発熱が生じやすく、動力伝達効率が低いという問題点がある。また、遊星歯車機構も高い変速比が得られる機構であるが、構造が複雑であり、部品点数も多いという問題点がある。さらに、平歯車のみを用いたものとして外歯歯車式変速機が知られており、構造が簡単であって高効率が得られるものの、機構が大型化しやすいという欠点がある。
【0003】
一方、複数の歯車のうちの一つを内歯歯車として構成した変速機が知られている(以下の特許文献1及び2参照)。このような変速機は、外歯歯車式変速機と同様に高い変換効率を得ることができ、構成によっては高い変速比、構造の簡易性、小型化も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−11962号公報
【特許文献2】実公昭26−2414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の変速機においては、遊星歯車機構と同様の構造とし、軸受板11,12を固定して遊星運動が生じない構成としているため、遊星歯車機構と同様に構造が複雑であり、部品点数が多くなるという問題点がある。また、上記特許文献2に記載の変速機においては、高い変速比を得るために3段の歯車列を備えているが、軸線方向に長くなるために小型化が難しいという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、内歯歯車を用いた変速機において高効率で高変速比が得られるとともに構造の簡易性を確保し、小型化を図ることができる構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の内歯車式変速機は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備し、前記内歯歯車と前記第3の外歯歯車の軸線が一致し、前記第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が前記内歯歯車に対して回転自在に軸支されていることを特徴とする。この発明によれば、相互に噛合する内歯歯車と第1の外歯歯車よりなる第1の歯車列と、相互に噛合する第2の外歯歯車と第3の外歯歯車よりなる第2の歯車列との2段の歯車列により大きな変速比を得ることができる。また、各歯車の軸線が平行に固定されているため、ウォーム歯車や遊星歯車を用いる必要がないことから、高い動力伝達効率を実現できるとともに構造を簡易に構成できる。さらに、内歯歯車と第3の外歯歯車の軸線が一致するとともに内歯歯車及び第1の外歯歯車と第2の外歯歯車とが軸線方向に重なる位置に配置されるため、支持構造の簡易化や省スペース化が容易になることから、小型化が容易になる。その上、第3の外歯歯車の軸線方向の一方側が内歯歯車に軸支されることで、さらなる軸支剛性の確保や部品点数の削減などを図ることができる。
【0008】
本発明の他の内歯歯車式変速機は、複数の歯車を備えた変速機であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結された第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記内歯歯車の軸線周りに回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第2の外歯歯車と噛合する第3の外歯歯車と、該第3の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車の側に連結された第4の外歯歯車と、該第4の外歯歯車と噛合する第5の外歯歯車と、を具備することを特徴とする。これによれば、3段の歯車列を構成するに際して、内歯歯車を用いるとともに、各歯車列を軸線方向と回転方向にずらして配置することで、変速比を高めつつ、軸線方向にもコンパクトな変速機構を構成できる。特に、複数の変速段を内歯歯車の軸線の周りにずらして配置することで、高変速比とコンパクト性を確保しつつ、第5の外歯歯車の軸線を内歯歯車の軸線の近傍に配置することが容易になるので、設計の自由度が高められる。ここで、前記第2の外歯歯車は前記第1の外歯歯車より大径に構成されていることが好ましく、また、前記第3の外歯歯車は前記第2の外歯歯車より小径に構成されていることが好ましい。さらに、前記第4の外歯歯車は前記第3の外歯歯車より大径に構成されていることが好ましく、また、前記第5の外歯歯車は前記第4の外歯歯車より小径に構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明の一の態様においては、前記第5の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致する。これによれば、3段の歯車列の入出力軸を一致させることが可能になる。
【0010】
本発明の他の態様においては、前記第5の外歯歯車は、前記第4の外歯歯車に対して前記回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第4の外歯歯車と噛合し、該第5の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車とは反対側に連結された第6の外歯歯車と、該第6の外歯歯車と噛合する第7の外歯歯車とをさらに具備する。これによれば、変速比をさらに高めつつ、軸線方向にもコンパクトな変速機構を構成できる。この場合においては、前記第7の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致する場合がある。
【0011】
次に、本発明の内歯歯車式変速機の設計方法は、複数の歯車を備えた変速機の設計方法であって、内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備する変速機を設計するに際して、前記内歯歯車の外径と、前記内歯歯車の軸線から前記第2の外歯歯車の最外縁部までの距離との差の絶対値が許容値L以下になるように、前記内歯歯車、前記第1の外歯歯車、前記第2の外歯歯車及び前記第3の外歯歯車の歯数、並びに、前記内歯歯車と前記第1の外歯歯車からなる第1の歯車列のモジュール及び前記第2の外歯歯車と前記第3の外歯歯車からなる第2の歯車列のモジュールを設定することを特徴とする。これによれば、変速機の半径方向の寸法をコンパクト化できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高効率かつ高変速比を実現しつつ、簡易でコンパクトに変速機を構成できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る第1実施形態の内歯歯車式変速機の縦断面図。
【図2】第1実施形態の側面図。
【図3】第1実施形態の設計方法を示す概略フローチャート。
【図4】第1実施形態の駆動力伝達効率を測定するための測定系の概略構成図。
【図5】第1実施形態の入力電力と駆動力伝達効率との関係を示すグラフ。
【図6】第2実施形態の軸線方向に見た変速機の構造を示す構成図。
【図7】第2実施形態の歯車構造を示す部分斜視図。
【図8】第3実施形態の軸線方向に見た変速機の構造を示す構成図。
【図9】第3実施形態の歯車構造を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1及び図2を参照して本発明に係る第1実施形態の内歯歯車式変速機の構造について説明する。図1は該変速機の縦断面図、図2は同変速機の左側面図である。
【0015】
本実施形態の変速機100は、フレーム101に軸受を介して回転自在に軸支された内歯歯車111を備えている。この内歯歯車111は、フレーム101に軸支された軸芯部111aと、この軸芯部111aの端部より外周側へ広がる拡径部111bと、拡径部111bの外周縁から軸線方向に筒状に構成され、軸線方向の先端側(図示右側)に開放された形状の筒状部111cとを有し、この筒状部111cの内周面上に内歯111tが設けられる。
【0016】
フレーム101にはフレーム102が固定され、このフレーム102にさらにフレーム103が固定されて一体のハウジング(収容体若しくは支持体)が形成されている。フレーム102と103には上記内歯歯車111の軸線111xと平行に固定された軸線104xを備えた第1の軸体104が回転自在に軸支されている。第1の軸体104には第1の外歯歯車112及び第2の外歯歯車113がそれぞれ連結されている。第1の外歯歯車112の外歯112tは内歯歯車111の内歯111tと噛合している。第2の外歯歯車113の外歯113tは第1の外歯歯車112tより大径に構成される。
【0017】
フレーム102、103には、少なくとも、第1の外歯歯車112の軸線104xに対して内歯歯車111と第1の外歯歯車112の噛合位置の反対側に平行に固定された軸線105xを備えた第2の軸体105が回転自在に軸支されている。第2の軸体105には外歯114tを備えた第3の外歯歯車114が連結され、この第3の外歯歯車114の外歯114tは、内歯歯車111に対する第1の外歯歯車112の噛合位置とは反対側から第2の外歯歯車113の外歯113tに噛合している。第3の外歯歯車114は第2の外歯歯車113よりも小径に構成されている。
【0018】
本実施形態では、軸線105xは軸線111xと一致し、第2の軸体105は上記フレーム102、103とともに、内歯歯車111に対して直接に回転自在に軸支されている。すなわち、第2の軸体105はフレーム102の軸受を通過して内歯歯車111の上記軸芯部111aの端部に軸受を介して嵌合される。軸芯部111aは図示例では筒状に構成され、軸芯部111aの内側に嵌合した軸受を介して第2の軸体105の端部が軸支されている。
【0019】
なお、上述の各軸体と各歯車は、図示例とは異なり、相互に一体に構成されたものであってもよく、或いは、図示例と同様に相互に別体に構成されているが、各軸体がハウジング(収容体、支持体)に対し固定され、この各軸体に対して各歯車が回転自在に支承されたものであってもよい。これらの点は他の実施形態でも同様である。
【0020】
本実施形態では、内歯歯車111の軸芯部111aと、第2の軸体105との間に構成された動力伝達経路中に、内歯111tと外歯112tが噛合する第1の歯車列と、外歯113tと外歯14tが噛合する第2の歯車列とが構成され、これによって、軸芯部111aを入力とし、第2の軸体105を出力とした場合には増速機、第2の軸体105を入力とし、軸芯部111aを出力とした場合には減速機として機能する、2段の変速構造が形成される。ここで、第1の歯車列において内歯歯車111より第1の外歯歯車112が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車113より第3の外歯歯車114が小径とされ、それぞれ増速輪列を構成している。また、第1の歯車列と第2の歯車列は共に高い変速比を有するので、全体として変速機100は高い変速比を備えたものとされる。
【0021】
次に、上記のように構成された変速機100を設計する場合の各パラメータの関係について説明する。まず、内歯歯車111の内歯111tの歯数z1、ピッチ円直径D1[mm]、歯先円直径Dk1[mm]、歯底円直径Db1[mm]、第1の外歯歯車112の外歯112tの歯数z2、ピッチ円直径D2[mm]、歯先円直径Dk2[mm]、歯底円直径Db2[mm]、第2の外歯歯車113の外歯113tの歯数z3、ピッチ円半径D3[mm]、歯先円直径Dk3[mm]、歯底円直径Db3[mm]、第3の外歯歯車114の外歯114tの歯数z4、ピッチ円半径D4[mm]、歯先円直径Dk4[mm]、歯底円直径Db4[mm]とし、また、第1の歯車列のモジュールm1[mm]、変速比i1、第2の歯車列のモジュールm2[mm]、変速比i2とし、さらに、軸線111xと軸線104xの距離C1[mm]、軸線105xと軸線104xの距離C2[mm]とすると、以下の式(1)乃至(4)が成立する。なお、本実施形態ではC1=C2である。また、変速機の変速比i=i1×i2である。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
【数4】
【0026】
次に、上記変速機100の上記軸芯部111aを回転駆動源に接続した場合に、当該回転駆動源の出力回転数と各軸線周りの回転数を求めると、以下の式(6)及び(7)で示すようになる。ここで、n0[rpm]は回転駆動源の出力回転速度、n1[rpm]は軸芯部111a(入力軸)の回転速度、n2[rpm]は第1の軸体104の回転速度、n3[rpm]は第2の軸体105(出力軸)の回転速度である。なお、以下の式(5)は、上記回転駆動源として磁極数p、電源周波数をf[Hz]、すべり率sの誘導電動機を用いた場合の上記出力回転数の例を示すものである。
【0027】
【数5】
【0028】
【数6】
【0029】
【数7】
【0030】
また、第1及び第2の各歯車列のピッチ円上の周速v1、v2[m/s]、速度係数fv1、fv2、回転力F1[N]、F2[N]は以下の式(8)乃至(10)で表される。なお、式(10)において、回転駆動源(電動機)の出力をP[W]とする。
【0031】
【数8】
【0032】
【数9】
【0033】
【数10】
【0034】
次に、変速構造における歯車強度を満たす第1及び第2の各歯車列のモジュールm1、m2を設定するために、以下の曲げ強さを考慮したモジュールと、以下の歯面強さを考慮したモジュールをそれぞれ求める。
【0035】
まず、曲げ強さを考慮したモジュールは、ルイスの式をもとに変形した式から歯車の歯に動的負荷が加わった場合について考えると、以下の式(11)で表される。ここで、ルイスの式とは、歯車の歯を、歯形に内接する放物線に置き換え、この放物線と歯元の接点における曲げ応力を計算する式であり、F=σbbtyで表される。ここで、σbは歯車材料の許容曲げ応力[MPa]、bは歯車の歯幅[mm]、tは歯車の円周ピッチ[mm]、yは歯車の歯形係数である。このルイスの式において歯に動的負荷が加わった場合を示すものが以下の式(11)である。fvは速度係数、fwは歯車同士の荷重係数である。
【0036】
【数11】
【0037】
ここで、t=πmであり、b=12mとした場合には、式(11)をモジュールに関する式に変形すると、以下の式(12)及び(13)が得られる。なお、歯幅bは上記の値に限らず、歯車の材質や応力を勘案して適宜の設定値とすることができる。
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
【0040】
ここで、荷重係数fwは歯車に加わる負荷の状態によって決まる値であり、負荷が小さいほど大きな値をとる。また、歯形係数yは歯車の歯数と歯の圧力角との関係によって決まる。なお、歯形係数yは歯数が大きい方が大きな値となるため、曲げ強さを考慮したモジュールの最小値の計算は第1の歯車列では内歯歯車111について計算し、第2の歯車列では第2の外歯歯車113について計算すればよい。いずれにしても、上記の式(13)のFに式(10)の回転力F1、F2を代入することで、必要な曲げ強さを有する第1の歯車列のモジュールの最小値mb1と、第2の歯車列のモジュールの最小値mb2を求めることができる。
【0041】
次に、歯面強さを考慮したモジュールを求める。これについては、ヘルツの式を変形して次の式(14)及び(15)が成立する。ヘルツの式とは、球面や円筒面の弾性接触による最大接触応力を求める式であり、歯数z1とz2の外歯歯車同士が噛み合う場合には以下の式の第2項のようになり、これを変形すると第3項のようになる。これをさらに変形すると式(15)によってモジュールが表される。
【0042】
【数14】
【0043】
【数15】
【0044】
上記の式(14)及び(15)は外歯歯車同士の組み合わせの場合を示しており、内歯歯車と外歯歯車の組み合わせの場合には、内歯歯車をz1、外歯歯車をz2とすると、幾何学的関係から次の式(16)で表される。
【0045】
【数16】
【0046】
なお、上記式(15)及び(16)中の歯車材料の比応力係数kは以下の式(17)で求めることができる。ここで、許容圧縮応力σcは1340MPa、工具圧力角αは20°、弾性係数(ヤング率)E1,E2はそれぞれ210GPaである。
【0047】
【数17】
【0048】
上記の式(10)の回転力F1、F2に基づいて、式(16)により第1の歯車列のモジュールを計算し、式(15)により第2の歯車列のモジュールを計算すると、必要な歯面強さを有する第1の歯車列のモジュールの最小値mc1と、第2の歯車列のモジュールの最小値mc2を求めることができる。そして、mb1とmc1のうち大きい方をm1′とし、mb2とmc2のうち大きい方をm2′とする。続いて、これらのm1′、m2′以上で、JIS B 1701に規定されているモジュールの標準値に最も近い値を改めてm1′、m2′とする。その後、これらの値と最初に設定したモジュールm1、m2とを比較して、m1=m1′、m2=m2′であれば設計終了とし、そうでなければ、m1=m1′、m2=m2′に設定し直して上記の計算を繰り返す。ただし、本発明は上記モジュールの標準値に限定されるものではない。
【0049】
なお、各歯車列における動力伝達効率をη1、η2とすると、本実施形態のように2段の変速構造の動力伝達効率η=η1×η2となる。例えば、各歯車列の動力伝達効率が99%であれば、2段の場合には98%となる。
【0050】
図3には、本実施形態の変速機100を設計する場合の手順を示す。まず、電動機の仕様(定格出力P、出力回転数n0=入力軸の回転数n1)と、目標とする変速比iを設定する。次に、初期値として第1の歯車列のモジュールm1と第2の歯車列のモジュールm2を設定する。そして、上記式(7)により、第1の歯車列の変速比i1、第2の歯車列の変速比i2と、各歯車の歯数z1、z2、z3、z4を求める。図示例では、i1、i2、z1、z3を設定して式(7)よりz2、z4を求めているが、これに特に限定されるものではなく、要は、上記の複数のパラメータを決定するに際して必要な数のパラメータを設定し、他のパラメータを算出すればよい。
【0051】
次に、上記各パラメータに基づいて各歯車列の軸間距離C1、C2が求められるが、本実施形態ではC1=C2とならなければならないので、C1とC2が一致するかどうかを判定する。一致しない場合には再度パラメータの設定値を変更して計算をやり直し、最終的にC1=C2となるようにする。
【0052】
次に、変速機100のコンパクト化を図るために、第1の歯車列の構成要素の外径Dd1と、第2の歯車列の構成要素の外径Dd2との差の絶対値が許容値L以下となるかどうかを判定する。ここで、外径Dd1は第1の歯車列(すなわち、内歯歯車111と第1の外歯歯車112)の軸線111x、105xを中心とした最外周位置に対応する直径であり、本実施形態では内歯歯車111の外径に相当する。また、外径Dd2は第2の歯車列(すなわち、第2の外歯歯車113と第3の外歯歯車114)の軸線111x、105xを中心とした最外縁部に対応する直径であり、本実施形態では軸線111xから第2の外歯歯車113の最外縁部(軸線111xから最も離れた外縁部分)までの距離に相当する。ここで、内歯歯車111の肉厚(内歯111tの歯底円の外側にある厚み)をcとすると、以下の式(18)が成立する。
【0053】
【数18】
【0054】
上記の許容値Lは、例えば、Dd1とDd2のうち大きい方の値若しくはDd1+Dd2の値に対して所定の割合で設定することができる。例えば、Dd1とDd2のうち大きい方の値の5〜10%の範囲内の値とすることが考えられる。ここで、上記判定により上記許容値L以下の値が得られない場合には、再度、上記各パラメータの値を設定及び算出を行い、最終的に許容値L以下の値が得られるまで上記手順を繰り返す。このようにすることで、変速機100の径方向のコンパクト性を高めることができる。
【0055】
一方、上記判定により上記許容値L以下の値が得られた場合には、上記のようにして決定されたパラメータに基づいて、各歯車の歯形係数y及びピッチ円直径D、第1及び第2の各歯車列の周速v1、v2及び回転力F1、F2を求め、上述のように強度計算を行い、本実施形態の駆動条件において必要なモジュールの最小値を求める。ここで、強度計算に際しては、上述のように、歯形係数yは各歯車列のそれぞれ二つの歯車のうち歯数が大きい歯車の方が大きくなるため、当該歯数が大きい歯車のモジュールの上記最小値の方が小さくなることから、各歯車列において歯数の大きい方の歯車について計算を行えばよい。すなわち、第1の歯車列では内歯歯車111(歯形係数y1、ピッチ円直径D1)、第2の歯車列では第2の外歯歯車113(歯形係数y3、ピッチ円直径D3)について計算を行う。
【0056】
上記の計算を具体的に述べると、上記式(1)によりD1、D3を求め、上記式(6)及び(8)からn2、v1、v2を求め、上記式(9)よりfv1、fv2を計算し、上記式(10)からF1、F2を求める。そして、これらの値に基づいて、上記式(13)、(15)及び(16)により、曲げ強さを考慮した各歯車列のモジュールの最小値mb1、mb2と、歯面強さを考慮した各歯車列のモジュールの最小値mc1、mc2を算出する。そして、上述のように各歯車列についてそれぞれ曲げ強さに基づくモジュールの最小値と歯面強さに基づくモジュールの最小値とを比較して、大きい方を所要最小モジュールm1′、m2′とする。
【0057】
その後、上記所要最小モジュールm1′、m2′と、設定されたモジュールm1、m2とを比較して、当該モジュールm1、m2が所要最小モジュールm1′、m2′と等しいかどうかを判定する。この判定でm1=m1′、m2=m2′となっている場合には歯車の基本設計は終了し、そうでない場合には、再度、モジュールm1=m1′、m2=m2′に設定して計算をからやり直す。以上のプロセスはコンピュータ等の演算手段を用いて自動的に行うことができる。なお、前述のようにモジュールの標準値を考慮してm1′、m2′を決定してもよい。
【0058】
上記設計方法により設計した具体的な設計例を示す。目標とする変速比を10〜13、電動機の仕様を定格出力P=4.5kWとして設計を行ったところ、変速比は12、内歯歯車111の内歯111tの歯数70、モジュール2.0mm、第1の外歯歯車112の外歯112tの歯数19、モジュール2.0mm、第2の外歯歯車113の外歯113tの歯数52、モジュール1.5mm、第3の外歯歯車113の外歯113tの歯数16、モジュール1.5mm、軸間距離C1=C2=51mmとなった。
【0059】
この変速機100を試作し、図4に示す実験装置により動力伝達効率の測定を行った。ここで、電動機1の出力を伝動ベルト5等を介して変速機100に接続し、変速機100の出力を伝動ベルト5等を介して電磁ブレーキ4に接続した。電動機1はACサーボモータである。上記動力伝達経路において、変速機100の前後にそれぞれトルク・回転数検出器(トルクメータ)2、3を介在させた。この実験では、電動機1による入力回転数を一定に保ち、電磁ブレーキ4の負荷を徐々に増大させつつ、変速機100の前後のトルク・回転数検出器2、3に接続した表示器6、7から検出データをパーソナルコンピュータ8に入力し、記録した。
【0060】
上記データのうち、入力回転数300rpm、出力回転数3592rpmの場合について示したものが図5である。ここで、入力パワーが2200Wのとき動力伝達効率η=92%が得られた。ただし、この動力伝達効率は入力回転数によって変化する。入力回転数n0を50〜400rpmの範囲で変えて測定したところ、動力伝達効率ηは89%(n0=400rpm)〜98%(n0=50rpm)の範囲内の値となった。
【0061】
本実施形態によれば、内歯歯車111と第1の外歯歯車112の噛合による第1の歯車列と、第2の外歯歯車113と第3の外歯歯車114の噛合による第2の歯車列の2段の変速構造により、高い変速比を可能としつつ変換効率が高く、しかも構造が簡易で小型化も可能な変速機を実現できる。
【0062】
また、本実施形態では、内歯歯車111の軸線111xと第2の軸体105の軸線とが一致していることにより、入出力軸が一致しているため、動力伝達経路に接続される変速機周辺の構造設計が容易になるという利点がある。また、このように第2の軸体105を内歯歯車111と同軸に構成することにより各歯車の軸支構造を簡易化することも可能である。特に、本実施形態では、第2の軸体105の一方側(図1の左側部分)が内歯歯車111により直接に軸支されていることにより、軸支構造の簡易化や部品点数の削減を図ることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、第1の歯車列(内歯歯車111)の外径Dd1と、第2の歯車列の外径Dd2の差の絶対値が許容値L以下とされているので、変速機100の径方向のコンパクト化を図ることができる。この場合、第2の歯車列の外径Dd2が第1の歯車列の外径Dd1以下であることが好ましく、特に、Dd2=Dd1(許容値Lが0の場合に相当する。)であることが変速比を大きくしつつコンパクト化を図る上で最も好ましい。
【0064】
次に、図6及び図7を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、図6乃至図9は各歯車を模式的に描いているが、基本的な各部の軸支構造や各歯車の形状については第1実施形態と同様である。
【0065】
本実施形態の変速機200では、内歯歯車211の内歯211tと第1の外歯歯車212の外歯212tが噛合し、第1の外歯歯車212に対し第1の軸体204により同軸に連結され、第1の外歯歯車212より大径の第2の外歯歯車213の外歯213tと、第3の外歯歯車214の外歯214tとが噛合し、第3の外歯歯車214に対し第2の軸体205により同軸に連結され、第3の外歯歯車214より大径の第4の外歯歯車215の外歯215tと、第5の外歯歯車216の外歯216tとが噛合している。第5の外歯歯車216は第3の軸体206に連結されている。ここで、第1の歯車列において内歯歯車211より第1の外歯歯車212が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車213より第3の外歯歯車214が小径とされ、第3の歯車列において第4の外歯歯車215より第5の外歯歯車216が小径とされ、これらによって各歯車列はそれぞれ増速輪列を構成している。
【0066】
ここで、第1の軸体204、第2の軸体205及び第3の軸体206は、第1実施形態と同様の図示しない軸支構造により、すべて内歯歯車211の軸線と相互に平行かつ固定された状態とされている。特に、図示例では、第3の軸体206は内歯歯車211の軸線211xと一致する軸線を有している。この構成は、第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)が第1の軸体304(第1の外歯歯車及び第2の外歯歯車の軸線)に対して内歯歯車311の軸線の周りに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。この場合、第3の軸体206の軸線方向の一方側を第1実施形態と同様に内歯歯車211に軸支するように構成してもよい。また、この構成において、第3の外歯歯車214は第2の外歯歯車213に対して内歯歯車211の軸線211xの周りに回転した側から噛合している。
【0067】
また、第2の外歯歯車213は第1の外歯歯車212に対して軸線方向の一方側(図7の右斜め奥側)において第1の軸体204に固定されている。一方、第4の外歯歯車215は第3の外歯歯車214に対して軸線方向の他方側(図7の左斜め前側)において第2の軸体205に固定されている。
【0068】
本実施形態では、内歯歯車211と第1の外歯歯車212が噛合してなる第1の歯車列と、第2の外歯歯車213と第3の外歯歯車214が噛合してなる第2の歯車列と、第4の外歯歯車215と第5の外歯歯車216が噛合してなる第3の歯車列とを有する3段の変速機構が構成されるので、第1実施形態よりもさらに高い変速比を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、動力伝達経路が内歯歯車211、第1の外歯歯車212、第2の外歯歯車213、第3の外歯歯車214、第4の外歯歯車215、第5の外歯歯車216に沿って構成される。この場合、第1の外歯歯車212から第1の軸体204に沿って第2の外歯歯車213へ進む向きと、第3の外歯歯車214から第2の軸体205に沿って第4の外歯歯車215へ進む向きとが軸線方向の相互に逆向きとされることから、上記動力伝達経路が軸線方向の正逆に折り返された態様で構成されることとなるため、変速機200を軸線方向にコンパクトに構成することができる。
【0070】
次に、図8及び図9を参照して、本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態の変速機300では、内歯歯車311の内歯311tと第1の外歯歯車312の外歯312tが噛合し、第1の外歯歯車312に対し第1の軸体304により同軸に連結され第1の外歯歯車312より大径の第2の外歯歯車313の外歯313tと、第3の外歯歯車314の外歯314tとが噛合し、第3の外歯歯車314に対し第2の軸体305により同軸に連結され第3の外歯歯車314より大径の第4の外歯歯車315の外歯315tと、第5の外歯歯車316の外歯316tとが噛合し、第5の外歯歯車316に対し第3の軸体306により同軸に連結され第5の外歯歯車316より大径の第6の外歯歯車317と、第7の外歯歯車318の外歯318tとが噛合している。第7の外歯歯車318は第4の軸体307に連結されている。ここで、第1の歯車列において内歯歯車311より第1の外歯歯車312が小径とされ、第2の歯車列において第2の外歯歯車313より第3の外歯歯車314が小径とされ、第3の歯車列において第4の外歯歯車315より第5の外歯歯車316が小径とされ、第4の歯車列において第6の外歯歯車317より第7の外歯歯車318が小径とされ、これらによって各歯車列がそれぞれ増速輪列を構成している。
【0071】
本実施形態でも、第2実施形態と同様に、第1の軸体304、第2の軸体305、第3の軸体306及び第4の軸体307は、第1実施形態と同様の図示しない軸支構造により、すべて内歯歯車311の軸線と相互に平行かつ固定された状態とされている。特に、図示例では、第4の軸体307は内歯歯車311の軸線311xと一致する軸線を有している。この場合、第4の軸体307の軸線方向の一方側が第1実施形態と同様に内歯歯車311により軸支されるように構成してもよい。また、この構成において、第3の外歯歯車314は第2の外歯歯車313に対して内歯歯車311の軸線周りに回転した側から噛合し、また、第5の外歯歯車316は第4の外歯歯車315に対して内歯歯車311の軸線311xの周りに回転した側(第3の外歯歯車314が第2の外歯歯車313に対して噛合する側と同じ側)から噛合している。
【0072】
また、第2の外歯歯車313は第1の外歯歯車312に対して軸線方向の一方側(図9の右斜め奥側)において第1の軸体304に固定されている。一方、第4の外歯歯車315は第3の外歯歯車314に対して軸線方向の他方側(図9の左斜め前側)において第2の軸体305に固定されている。また、第6の外歯歯車317は第5の外歯歯車316に対して軸線方向の一方側(図9の右斜め奥側)において第3の軸体306に固定されている。この構成は、第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)が第1の軸体304(第1の外歯歯車及び第2の外歯歯車の軸線)に対して内歯歯車311の軸線の周りに回転した側に配置され、第3の軸体306(第5の外歯歯車及び第6の外歯歯車の軸線)が第2の軸体305(第3の外歯歯車及び第4の外歯歯車の軸線)に対して上記と同じ向きに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。
【0073】
本実施形態では4段の変速構造が構成されてさらに高い変速比が得られるが、第2実施形態と同様に動力伝達経路の隣接する歯車列が軸線方向に交互に配置されることで、軸線方向にコンパクトに構成することができる。このような複数の歯車列の構成は第2実施形態の3段構造、第3実施形態の4段構造に限らず、5段以上の任意の構造とすることができる。そして、これらの場合において、本発明では、複数の歯車列が内歯歯車の軸線周りに配列され、しかも、動力伝達経路に沿った歯車列の噛合位置が軸線方向に交互に配置されていることにより、変速比を高めつつ、コンパクトに構成できるという効果が得られる。また、これらの場合にも、最終段の軸体の軸線を内歯歯車の軸線と一致させることができる。これらの構成は、動力伝達経路に沿った各歯車列の軸線が内歯歯車の軸線の周りに順に同じ向きに回転した側に配置されることで、容易に設計可能とされる。
【0074】
上記第2実施形態及び第3実施形態についても、第1実施形態と同様に設計を行うことができる。ただし、これらの場合には、歯車列の数が増えるので、その分、パラメータ数が増加する。例えば、歯車列が1段増加する毎に、歯車の数は2つ増加し、歯車列の変速比もその分増加する。しかしながら、基本的には、設定すべきパラメータの数を増加させるだけで上記と同様に設計を行うことができる。上記第3実施形態の設計例としては、例えば、内歯歯車311及び第1の外歯歯車312のモジュールを2.0mm、第2の外歯歯車313及び第3の外歯歯車314のモジュール1.5mm、第4の外歯歯車315及び第5の外歯歯車316のモジュール1.5mm、第6の外歯歯車317及び第7の外歯歯車318のモジュール1.5mmとすることができる。
【0075】
尚、本発明の内歯歯車式変速機は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記第2及び第3の実施形態では、最終段の外歯歯車の軸線が内歯歯車の軸線と一致する例を示しているが、このような構成に限らず、結果として複数の歯車列が軸線方向に交互に配置されていれば、或いは、内歯歯車の軸線周りに回転した側に配置されていれば、それぞれ第2及び第3の実施形態で説明した対応する効果を得ることができる。なお、上記各実施形態の各歯車は平歯車で構成できるが、斜歯歯車、山歯歯車などを用いても構わない。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300…変速機、101、102、103…フレーム、104、204、304…第1の軸体、105、205、305…第2の軸体、206、306…第3の軸体、307…第4の軸体、111、211、311…内歯歯車、112、212、312…第1の外歯歯車、113、213、313…第2の外歯歯車、114、214、314…第3の外歯歯車、215、315…第4の外歯歯車、216、316…第5の外歯歯車、317…第6の外歯歯車、318…第7の外歯歯車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯車を備えた変速機であって、
内歯歯車と、
該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、
該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、
該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、
を具備し、
前記内歯歯車と前記第3の外歯歯車の軸線が一致し、
前記第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が前記内歯歯車に対して回転自在に軸支されていることを特徴とする内歯歯車式変速機。
【請求項2】
複数の歯車を備えた変速機であって、
内歯歯車と、
該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、
該第1の外歯歯車と同軸に連結された第2の外歯歯車と、
該第2の外歯歯車に対して前記内歯歯車の軸線周りに回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第2の外歯歯車と噛合する第3の外歯歯車と、
該第3の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車の側に連結された第4の外歯歯車と、
該第4の外歯歯車と噛合する第5の外歯歯車と、
を具備することを特徴とする内歯歯車式変速機。
【請求項3】
前記第5の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致することを特徴とする請求項2に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項4】
前記第5の外歯歯車は、前記第4の外歯歯車に対して前記回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第4の外歯歯車と噛合し、
該第5の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車とは反対側に連結された第6の外歯歯車と、該第6の外歯歯車と噛合する第7の外歯歯車とをさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項5】
前記第7の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致することを特徴とする請求項4に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項6】
複数の歯車を備えた変速機の設計方法であって、
内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備する変速機を設計するに際して、
前記内歯歯車の外径と、前記内歯歯車の軸線から前記第2の外歯歯車の最外縁部までの距離との差の絶対値が許容値L以下になるように、前記内歯歯車、前記第1の外歯歯車、前記第2の外歯歯車及び前記第3の外歯歯車の歯数、並びに、前記内歯歯車と前記第1の外歯歯車からなる第1の歯車列及び前記第2の外歯歯車と前記第3の外歯歯車からなる第2の歯車列のモジュールを設定することを特徴とする変速機の設計方法。
【請求項1】
複数の歯車を備えた変速機であって、
内歯歯車と、
該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、
該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、
該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、
を具備し、
前記内歯歯車と前記第3の外歯歯車の軸線が一致し、
前記第3の外歯歯車の軸線方向の少なくとも一方側が前記内歯歯車に対して回転自在に軸支されていることを特徴とする内歯歯車式変速機。
【請求項2】
複数の歯車を備えた変速機であって、
内歯歯車と、
該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、
該第1の外歯歯車と同軸に連結された第2の外歯歯車と、
該第2の外歯歯車に対して前記内歯歯車の軸線周りに回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第2の外歯歯車と噛合する第3の外歯歯車と、
該第3の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車の側に連結された第4の外歯歯車と、
該第4の外歯歯車と噛合する第5の外歯歯車と、
を具備することを特徴とする内歯歯車式変速機。
【請求項3】
前記第5の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致することを特徴とする請求項2に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項4】
前記第5の外歯歯車は、前記第4の外歯歯車に対して前記回転した側に平行に固定された軸線を有し、該回転した側から前記第4の外歯歯車と噛合し、
該第5の外歯歯車と同軸かつ軸線方向の前記内歯歯車とは反対側に連結された第6の外歯歯車と、該第6の外歯歯車と噛合する第7の外歯歯車とをさらに具備することを特徴とする請求項2に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項5】
前記第7の外歯歯車の軸線が前記内歯歯車の軸線と一致することを特徴とする請求項4に記載の内歯歯車式変速機。
【請求項6】
複数の歯車を備えた変速機の設計方法であって、
内歯歯車と、該内歯歯車の軸線に対して平行に固定された軸線を有し、前記内歯歯車と噛合する第1の外歯歯車と、該第1の外歯歯車と同軸に連結され、前記第1の外歯歯車より大径の第2の外歯歯車と、該第2の外歯歯車に対して前記第1の外歯歯車の前記内歯歯車に対する噛合位置とは反対側に平行に固定された軸線を有し、該反対側から前記第2の外歯歯車と噛合し、前記第2の外歯歯車より小径に構成された第3の外歯歯車と、を具備する変速機を設計するに際して、
前記内歯歯車の外径と、前記内歯歯車の軸線から前記第2の外歯歯車の最外縁部までの距離との差の絶対値が許容値L以下になるように、前記内歯歯車、前記第1の外歯歯車、前記第2の外歯歯車及び前記第3の外歯歯車の歯数、並びに、前記内歯歯車と前記第1の外歯歯車からなる第1の歯車列及び前記第2の外歯歯車と前記第3の外歯歯車からなる第2の歯車列のモジュールを設定することを特徴とする変速機の設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−270817(P2010−270817A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122103(P2009−122103)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (文書をもって発表) 研究集会名 2008年度精密工学会北陸信越支部学術講演会 主催者名 社団法人精密工学会北陸信越支部 開催日 平成20年11月22日 (刊行物) 発行者名 社団法人精密工学会北陸信越支部 刊行物名 2008年度精密工学会北陸信越支部学術講演会 講演論文集 発行年月日 平成20年11月22日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (文書をもって発表) 研究集会名 2008年度精密工学会北陸信越支部学術講演会 主催者名 社団法人精密工学会北陸信越支部 開催日 平成20年11月22日 (刊行物) 発行者名 社団法人精密工学会北陸信越支部 刊行物名 2008年度精密工学会北陸信越支部学術講演会 講演論文集 発行年月日 平成20年11月22日
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
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