説明

内燃機関、とくに共通レール噴射システムを有するディーゼル機関における噴射の制御のための方法および装置

【課題】公称上の燃料量と実際に噴射される燃料量との差となるすべての因子を完全に補償する、内燃機関の噴射のための方法および装置を提供する。
【解決手段】空気流入量(AIRMEAS)と排気ガス量(λUEGO)が内燃機関(1)に実際に噴射された燃料の量(QEST)を評価し、閉ループ制御を実行し、これによって当該評価された燃料の量(QEST)が、ユーザの要求を満足するために算出される燃料の公称量(QLOAD)と実質的に等しくなるようにされる車両用の内燃機関の燃料噴射を制御する方法である。より詳しくは、燃料の公称量(QLOAD)と評価された燃料の量(QEST)との差が補正係数を算出するために使用され、これによって当該燃料の公称量(QLOAD)を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関における噴射制御のための方法およびデバイスに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は共通レール噴射システムを特徴とする直接噴射式ディーゼル機関における利点に使用されるであろう。本発明はこれに限るものではなく、本発明に対し、以下の説明は単に例として述べるものである。
【背景技術】
【0003】
周知のように、従来の内燃機関(エンジン)において、各噴射時にそれぞれのシリンダへ実際に噴射される燃料の量は、使用者の要求にしたがって噴射を制御している電子中央制御ユニットによって計算される燃料の公称量とは、相当に違う。そして、この燃料の量は、噴射器(injector)の作動時間を決定するために現在使用されている。かかる従来の内燃機関における燃料噴射システムの詳細はたとえば、特許文献1に記載されている。
【0004】
さまざまな要因が、公称燃料噴射量と実際の燃料噴射量との差異の原因となる。そのうちもっとも重要な因子には、噴射器特性における製造工程のばらつき、時間ドリフト(time-drift)変化、噴射システムのエージング(aging)、いわゆる圧力波の噴射への影響などがある。
【0005】
この理論的および実際上の燃料噴射量の差異は、設計混合比と異なる条件でエンジンが作動するために、とくに排気ガス放出レベルに、著しい負の効果を有し、さらにいずれにしてもこのタイプの噴射システムを備えるエンジンの性能のばらつきを悪化することに寄与している。
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1035314号明細書(第2〜4頁、第1〜2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の欠点を排除するために設計される噴射制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ユーザの要求の関数として内燃機関への噴射のための燃料の公称量(QLOAD)を決定する工程を含む、内燃機関の燃料噴射を制御する方法であって、
流入空気流量(AIRMEAS)と排気率(λUEGO)の関数として前記内燃機関に実際に噴射された燃料の量(QEST)を評価する工程と、
前記工程において評価された燃料の量(QEST)が前記燃料の公称量(QLOAD)と実質的に等しくなるように内燃機関への燃料噴射を制御する工程
とを含んでなる
ことを特徴とする方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、ユーザの要求の関数として内燃機関への燃料噴射の公称量(QLOAD)を決定するための第1の算出手段を備えた、内燃機関の燃料噴射を制御するための装置であって、
流入空気流量(AIRMEAS)と排気率(λUEGO)の関数として前記内燃機関に実際に噴射された燃料の量(QEST)を評価するための評価手段と、
前記評価された燃料の量(QEST)が前記燃料の公称量(QLOAD)と実質的に等しくなるように内燃機関への燃料噴射を制御するための第1の制御手段
とを備えてなる装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の利点は叙上の説明により明らかである。
【0011】
とくに、本発明は、公称上と実際の噴射される燃料量の差の原因となるすべての因子(噴射器特性ばらつき、時間ドリフト、噴射システムの経年変化、圧力波など)を完全に補償するためになされる。このようにして、排気ガス放出のレベルおよびエンジン特性のばらつきの点で相当の改善を可能にする。
【0012】
さらに、単独の補正係数とは対照的に、現在のエンジンの動作ポイントに関係する補正係数を規定し、さらに放出のレベルおよびエンジン特性のばらつきの低減に寄与する。
【0013】
もう一つの重要な銘記すべき点は、現在製造される中央制御ユニットのように、前記の方針は、再循環する排気ガス流を制御するための空気流センサ(debimeter)を採用することで、したがってエンジンが実際に作動する排気率を制御することである。いかなる他のセンサと同様に、流量計もまた誤差、読み取りのばらつき、特性上の経時的ドリフトに左右される。現在使用される方針においては、取り込み空気流量読み取り手段における誤差は、排気率の操作における誤差を意味しており、汚染物質の放出に重大な効果を有する。しかし、前記の本発明の方法では、取り込み空気量の読み取り誤差がたとえ生じても、エンジンが所望の排気率(λREF)で動作することを可能とし、汚染物質のレベルの悪化を避けることが可能である。これは、EGRおよび噴射量の2つの制御の組み合わせ効果、λUEGO=λREFを与える最終の成果すなわち、(エンジンが実際に動作しているとき)UEGOプローブで計測される排気率が、正確に中央制御ユニットにより要求されるものに等しいことによっている(等式(1)〜(4)を参照して前記の実証を参照のこと。この等式は、取り込み空気流量エラーの事態においても適用される)。
【0014】
最後に修正係数は積分制御ブロックおよび自己調節マップによって与えられ、診断の目的のために利点を有し、ドリフトの程度や早さを決定し、噴射システムの操作を修正する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましい本発明の実施の形態が、添付した図面を参照しつつ説明されるが、これによって制限されるものではない。
【0016】
図1における符号1は、幾何学的配置が可変のターボ過給器2、共通レール噴射システム3、燃焼ガス排気システム4、排気ガス再循環(EGR)システム5および噴射と噴射システムの洩れを診断する電子制御システム6を備える過給器搭載型直接噴射ディーゼル機関(エンジン)を示す。より具体的には、前記システムおよび電子制御システムのうち、図1は、本発明を明確に理解するために厳密に関係する部品のみを図示している。
【0017】
とくに共通レールシステム3は、吸気マニホールド7、複数の噴射器8(1つのみ図示している)、噴射器8に高圧の燃料を供給する高圧供給回路(図示せず)および高圧供給回路に低圧燃料を供給する低圧供給回路(図示せず)を備える。吸気マニホールド7は、マニホールドに沿って、周知のように通常は電子的に制御されたスロットル弁(図示せず)が適合する。噴射器8は、エンジン1のシリンダ9に高圧の燃料を供給するためのもので、エンジン1の各シリンダ9に1つずつ備えられる。
【0018】
エンジン1の各エンジンサイクル、および各シリンダ9において、共通レールシステム3は、圧縮行程の終端の上死点(top dead center position)付近で実行される主噴射、主噴射に先立ち圧縮ストローク時に実行される第1の事前噴射、主噴射に先立ち第1の事前噴射に続く第2の事前噴射、主噴射に続く第1の事後噴射、および第1の事後噴射に続いて排気ストローク時に実行される第2の事後噴射からなる連続的な噴射を含んだ燃料噴射方法を実行する。第2の事前噴射および第1の事後噴射は主噴射に充分近接して実行され、実際の燃料燃焼時に加勢する。
【0019】
前記多重噴射については、前述の特許文献1に詳しく記載されている。
【0020】
排気システム4は、ターボ過給器2が縦列接続される(cascaded)排気マニホールド10、ターボ過給器2に近接される酸化触媒事前変換器(preconverter)11、粒子フィルタ(図示せず)、粒子フィルターの上流に取り付けられる実際の酸化触媒変換器(図示せず)を備える。
【0021】
エンジン1で発生する排気ガスの一部を吸気マニホールド7に、逆向きに供給し、燃焼温度を低下させ、チッ素酸化物(NOx)の生成を抑制する。概略示された排気ガス再循環システム5では、排気ガス再循環用導管あるいはコンジット(conduit)12が、排気マニホールド10を、ターボ過給器2の上流位置で、吸気マニホールド7に接続し、さらに、スロットル弁の下流位置で、排気ガス再循環用コンジット12の端部に位置する制御用またはいわゆるEGR電磁弁13とも接続する。この位置で、排気ガスは、吸気マニホールド7の内側へ排出される。
【0022】
電子制御システム6は、とりわけ、吸気マニホールド7に沿ってスロットル弁の上流に配置され、流入空気流量AIRMEASを示す電気信号を供給する空気流量計(debimeter)14、排気マニホールド10に沿ってターボ過給器2と酸化触媒事前変換器11のあいだに配置され、排気ガス中の酸素濃度、より具体的には、排気ガス比(空燃比:exhaust ratio)すなわち燃焼した混合ガス中の空気/燃料比(A/F)、を示す電気信号を供給する比例酸素濃度センサすなわちいわゆるUEGOプローブ15、および空気流量計14と酸素濃度センサ15に接続され、とくに噴射器8を駆動させるための信号およびEGR電磁弁13を駆動させるための信号を供給する電子中央制御ユニット16を備える。
【0023】
酸素濃度センサ15により供給される情報については、以下の説明においては簡単のため、排ガス比(A/F)ではなくエンジン工学で「排気率」(または「排気過剰空気値」)として知られている量を参照し、λUEGOで表す。これは、排気ガス比(A/F)を化学量論比(stoichiometric ratio)(ディーゼル燃料の場合は、14.56)で規格化した、すなわち排気ガス比(A/F)EXHAUSTと化学量論比(A/F)STOICHIOMETRICのあいだの比で定義されるもの、すなわちλUEGO=(A/F)EXHAUST/(A/F)STOICHIOMETRICに他ならない。
【0024】
電子中央制御ユニット16は、図1の電子中央制御ユニット16に示される操作ブロック図を参照し、以下に説明する操作を実行することにより、排気率λUEGOにもとづいて噴射される燃料量の閉ループ制御、および流入空気流量AIRMEASにもとづいて再循環される排気ガス量の閉ループ制御を実行する。
【0025】
より具体的には、電子中央制御ユニット16は、排気率λUEGOおよび流入空気流量AIRMEASを受信し、排気率λUEGOおよび流入空気流量AIRMEASの比として計算された評価された燃料の量QESTを提供する第1の計算ブロック17を実行し、各エンジンサイクルでエンジン内に実際に噴射された燃料の総量を表示する。
【0026】
電子中央制御ユニット16はまた第2の計算ブロック18を実行する。第2の計算ブロック18では、エンジンの動作ポイントの関数としてマップ中に格納されて、汚染物質の放出、とくにNOxを抑制するための最適値を表す基準排気率λREF、および使用者の要求に応えるため各サイクルでエンジン内で噴射されるべき燃料の総量を示し、、加速ペダル位置にもとづいて電子中央制御ユニット16により計算される燃料の公称量QLOADを受信し、基準排気率λREFおよび燃料の公称量QLOADの積として計算される基準流入空気流量AIRREFを提供し基準排気率λREFを得るために吸気マニホールド7において要求される空気流量を表示する。
【0027】
電子中央制御ユニット16はまた、排気ガス再循環の量の閉ループ制御のためのEGR制御ブロック19、および燃料噴射量の閉ループ制御のための噴射制御ブロック20を実行する。
【0028】
より具体的には、EGR制御ブロック19は、流入空気流量AIRMEASおよび基準流入空気流量AIRREFを受信し、実際の流入空気流量AIRMEASと基準流入空気流量AIRREFのあいだの誤差の関数として生成されるEGR電磁弁駆動信号を提供し、両者が等しい値になる、すなわち、吸気マニホールド7中の実際の流入空気流量AIRMEASが、基準排気率λREFの関数である基準流入空気流量AIRREFと等しい値になるようにする。さらに具体的には、EGR電磁弁制御信号は、詳しくは説明しないが、周知のPID制御(比例制御、積分制御、微分制御)を実行することによって実際の流入空気流量AIRMEASと基準流入空気流量AIRREFとのあいだの誤差の関数として生成される。
【0029】
一方、噴射制御ブロック20は、燃料の公称量QLOADおよび評価された燃料の量QESTを受信し、燃料の公称量QLOADおよび評価された燃料の量QESTのあいだの誤差の関数として生成される噴射器8のための駆動信号を提供し、両者が等しい値となる、すなわち、各エンジンサイクルでエンジン1内で噴射される燃料の総量が電子中央制御ユニット16で計算される燃料の公称量に等しくなるようにされる。
【0030】
より具体的には、図2を参照して以下により詳しく説明するとおり、燃料の公称量QLOADおよび評価された燃料の量QESTのあいだの誤差は、定常状態で、燃料の公称量QLOADを補正する補正係数を算出するために用いられる。噴射器8の駆動信号は、計算された燃料の補正総量にもとづいて生成され、確実に燃料の補正総量が噴射されるようにする。この方法で、実際に噴射された燃料総量は、車両使用者の要求に応えるため電子中央制御ユニット16によって計算された燃料の公称量QLOADと等しくなるようにされる。
【0031】
噴射とEGR制御方針を組み合わせた第1の成果は、UEGOプローブで計測された排気率が、格納されている基準排気率に等しくなることである。数学的観点においては、事実、UEGOプローブにもとづく閉ループの噴射制御は、QLOAD=QEST(1)を与える一方、閉ループEGR制御は、AIRMEAS=AIRREF(2)を与える。しかしQEST=AIRMEAS/λUEGO(3)であり、AIRREF=QLOAD*λREF(4)であるので、(1)を(4)、(2)、および(3)で順に置換することにより、λUEGO=λREF得る。
【0032】
図2は、本発明の燃料噴射量の閉ループ制御を、電子中央制御ユニット16が実行する方法について、より詳細なブロック図を示している。
【0033】
図2に示されるように、電子中央制御ユニット16は、燃料の公称量QLOADおよび評価された燃料の量QESTを受信し、燃料の公称量QLOADおよび評価された燃料の量QESTのあいだの差異に等しい噴射誤差ERRを提供する減算ブロック21を実行する。
【0034】
電子中央制御ユニット16はまた、噴射誤差ERRを受信し、詳しい説明は行わないが、周知の直接的積分制御を実行し、噴射誤差ERRを時間で積分することによって得られる補償補正係数(compensating correction factor)を提供する積分制御ブロック22を実行する。
【0035】
より具体的には、積分制御ブロック22によって実行される噴射制御は、採用しているセンサ、とくにUEGOプローブの読み取り遅延に支配されていることによって比較的ゆっくりせざるを得ない応答速度を有する。しかし、とりわけ、なぜなら決して車両の使用者に感知されたり、アイドリング速度制御、車両の操舵、他の車両の制御装置(ASR、MSR、ESPなど)と干渉することはできない。
【0036】
積分制御ブロック22による制御はUEGOプローブが熱的に安定であるときにのみ可能である。エンジン1の温度の関数としての制御が不可能であるようないかなる条件も存在しない。
【0037】
電子中央制御ユニット16はまた、補償補正係数CCFおよび以下に述べる自己調節補正係数(self-adapting correction factor:ACF)を受信し、補償補正係数CCFおよび自己調節補正係数ACFの積に等しい総合補正係数(total correction factor)を提供する乗算ブロック23を実行する。
【0038】
電子中央制御ユニット16はまた、各エンジンサイクルでそれぞれのエンジンシリンダにおいて実行される多重噴射のそれぞれで噴射される燃料の量の、総合補正係数TCFの関数として、比例または乗算補正を行うための噴射補正ブロック24を実行する。
【0039】
より具体的には、噴射補正ブロックは、各エンジンサイクルでそれぞれのエンジンシリンダにおいて実行される多重噴射のそれぞれに1つずつの複数の乗算ブロック25を備える。乗算ブロック25のそれぞれは、総合補正係数TCF、および相対的に多重の噴射で噴射される燃料の量を表示するそれぞれの単独の燃料公称量QINJiを受信し、単独の燃料公称量QINJiおよび総合補正係数TCFの積に等しい補正燃料量QCORiを提供する。
【0040】
噴射補正ブロック24はまた、多重噴射のすべてを補正するか、いくつかだけを補正するかを選択するようにする。
【0041】
噴射補正ブロック24に提供される単独の燃料公称量QINJiは、燃料の公称量QLOADの関数として、また所望の噴射の方針に依存するとして噴射分割ブロック26により計算される。それぞれの例において、単独の燃料公称量QINJiの合計は、使用者の要求に応えるため電子中央制御ユニット16によって算出される燃料の公称量QLOADに等しいはずである。
【0042】
補正燃料量QCORiは、作動ブロック27に提供され、噴射システム共通レールにおける燃料圧力PRAILの関数として、各多重噴射および各噴射器8のための噴射器の作動時間が計算され、補正された燃料量QCORiが確実に噴射されるようにする。より具体的には、作動ブロック27において、公称作動マップが格納され、共通レールにおける燃料圧力PRAILの関数として噴射器作動時間−噴射量特性(それぞれの補正された燃料量QCORi値およびそれぞれの共通レール燃料圧力値に対する、それぞれの噴射器作動時間値を含む)を規定している。適切な噴射器駆動信号ETは、算出された作動時間にもとづいて生成されるであろう。
【0043】
電子中央制御ユニット16はまた、計算ブロック28を実行する。計算ブロック28では、排気率λUEGOおよび流入空気流量AIRMEASを受信し、排気率λUEGOおよび流入空気流量AIRMEASのあいだの比として、評価された燃料の量QESTを提供し、噴射誤差値ERRを計算するために減算ブロック21へ供給される、
自己調節補正係数ACFは、速度と負荷、すなわち、エンジン速度RPMおよび燃料の公称量QLOADにより規定されるエンジンの操作ポイントの関数として、自己調節ブロック29によって提供される。
【0044】
より具体的には、自己調節ブロック29において、自己調節マップが、エンジンの速度RPMおよび燃料の公称量QLOAD値のそれぞれの組み合わせに対してそれぞれの自己調節補正係数(ACF)の値を含んで格納される。
【0045】
もし異なる噴射マップ(エンジンサイクルあたり噴射の数、噴射の指示、噴射される燃料量、噴射圧力)が存在すれば、自己調節マップは区別されなければならない。すなわち、複数の自己調節マップが自己調節ブロックに格納され、それぞれが対応する噴射マップに関連し、噴射マップは、今度は各エンジンまたは車両操作条件に関連する。
【0046】
当該例において、もし定常温度、通常の操作条件下にあるエンジンで使用のための噴射マップの供給がなされた場合、エンジンが冷たいときの使用のための噴射マップ、粒子(particulate)フィルター(DPF−ディーゼル粒子フィルター)、または脱NOx触媒(NOx吸収体)を再生するときの使用のための噴射マップ、の3つの自己調節マップが自己調節ブロック中に格納され、それぞれが、前記の条件の1つと関連し、使用される。
【0047】
前記条件の1つにおいて、対応する自己調節マップが使用可能で、エンジンの操作ポイントの関数として、速度と負荷によって規定されるように自己調節補正係数ACFを提供する。噴射システムが正しく操作するとき、自己調節補正係数ACFは、1近くの範囲の値(たとえば、0.8〜1.2のあいだの範囲)を想定しなければならない。
【0048】
前記条件に加えて、定常条件に遭遇した(すなわち、速度と負荷が所定の時間長さのあいだおおよそ一定にとどまっている)ときはいつでも、そのとき使用される自己調整マップは書き込みされるか更新される。
【0049】
より具体的には、積分制御ブロックで算出される補償補正係数CCFが、現在のエンジン動作ポイントに関連するボックス(box)の中で、自己調節マップに入り、そのボックスの値によって乗算される。
【0050】
自己調節マップを不必要に頻繁に書き換えるのを避けるため、上記の操作は、補償補正係数CCFが、はっきり1から外れた(たとえば、0.99未満、または1.01超)ときにのみ実行される。それぞれの場合に、自己調節マップに格納された自己調節補正係数ACF値は、許容される補償補正係数の範囲(たとえば、0.7〜1.3)に等しい範囲かわずかに高い範囲に限定される。
【0051】
更新された値を含むボックスに隣接した自己調節マップボックスに格納された補償補正係数CCF値は、こんどは、適切な更新の方針によって更新されるであろう。同じ瞬間、自己調節マップは更新され、積分制御ブロックはリセット(補償補正係数CCFは1に等しい)され、連続するトルクの提供が確実となる。
【0052】
補償補正係数CCFと自己調節補正係数ACFの積に等しい総合補正係数TCFは、さまざまな多重噴射の単独の燃料公称量QINJiを個々に修正し、修正された燃料量QCORiを得るために使用される。作動マップ27(変更されず維持される)を用いて、噴射器に提供される駆動信号ETが得られ、所望の燃料量が実際に噴射されることを確実にする。
【0053】
もし、電子中央制御ユニット16の電源が切られたとき自己調節マップが修正されると、新しい自己調節マップが保存され(典型的にはEEPROMに存在する)、つぎにユニットに電源が入るとき、再ロードされる。
【0054】
よりよい制御更新の進行(propagation)に対し、それぞれの自己調節マップは、対応する更新マップを設けられ、関連のある自己調節マップにおけるどのボックスが直接的に更新されたかを記憶する。
【0055】
図2において、制御構造、自己調節マップによって提供される自己調節補正係数は、主として所定の動作点で所定の操作条件(噴射圧力、エンジン温度など)において噴射される燃料量を補正することに責任を有する一方、積分制御ブロックによって提供される補償補正係数は、自己調節マップが更新されたものと異なる現在の動作条件によってもたらされる補償変数(compensating variations)のために単に提供される。事実、現在の動作条件が、自己調節マップのそれと一致するとき、補償補正係数は1に等しい。
【0056】
明らかに、ここにおいて説明されたような方法および装置は、請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなしに修正することが可能である。
【0057】
たとえば、流量計によって直接計測されるのに対して、吸気マニホールドにおける空気流量は、他のセンサにより与えられる情報から間接的に決定されてもよい。
【0058】
また、補償補正因子および自己調節補正因子の積としてではなく、総合補正因子は単に自己調節補正因子と一致しても、補償補正因子は単に自己調節マップを更新するためのにのみ使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明における噴射の制御について、概略を示す図である。
【図2】本発明における噴射の制御について、より詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ディーゼルエンジン
2 ターボ過給器
3 共通レール噴射システム
4 燃焼ガス排気システム
5 EGRシステム
6 電子制御システム
7 吸気マニホールド
8 噴射器
9 シリンダ
10 排気マニホールド
11 酸化触媒事前変換器
12 EGR導管
13 EGR電磁弁
14 空気流量計
15 UEGOプローブ
16 電子中央制御ユニット
17 第1の計算ブロック
18 第2の計算ブロック
19 EGR制御ブロック
20 噴射制御ブロック
21 減算ブロック
22 積分制御ブロック
23 乗算ブロック
24 噴射補正ブロック
25 乗算ブロック
26 噴射分割ブロック
27 作動ブロック
28 計算ブロック
29 自己調節ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの要求の関数として内燃機関(1)への噴射のための燃料の公称量(QLOAD)を決定する工程を含む、共通レール噴射システムを有するディーゼル機関(1)の燃料噴射を制御する方法であって、
流入空気流量(AIRMEAS)と排気率(λUEGO)の関数として前記内燃機関に実際に噴射された燃料の量(QEST)を評価する工程と、
前記工程において評価された燃料の量(QEST)が前記燃料の公称量(QLOAD)と実質的に等しくなるように内燃機関への燃料噴射を制御する工程
とを含み、
前記内燃機関への燃料噴射を制御する工程が、
それぞれが、速度および負荷によって定められる内燃機関の動作ポイントにかかわる複数の自己調節補正係数(ACF)を格納するための自己調節マップ(29)を発生する工程と、
前記内燃機関の動作ポイントにかかわる自己調節補正係数(ACF)の関数として、内燃機関の既知の動作ポイントにおいて前記燃料の公称量(QLOAD)を補正する工程と、
前記内燃機関へ補正された量の燃料(QCOR)を噴射する工程と
をさらに含んでなる
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−41575(P2009−41575A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299807(P2008−299807)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2003−40159(P2003−40159)の分割
【原出願日】平成15年2月18日(2003.2.18)
【出願人】(500102088)チエルレエフェ ソチエタ コンソルティレ ペル アチオニ (27)
【Fターム(参考)】