説明

内燃機関における排気装置

【課題】燃焼室4からの排気ポート5における内面のうち排気弁7の弁軸7aが貫通する部分に内向きに突出するボス部9を一体に設け,このボス部にて前記弁軸を支持するように構成した内燃機関において,排気ポート内における排気ガスの流れ抵抗を低減する。
【解決手段】前記排気ポート5における内面のうち前記ボス部9よりも上流側の部分に,当該上流側の部分における通路断面積を前記ボス部の箇所における通路断面積と実質的に等しくするように縮小するか,或いは前記ボス部の箇所における通路断面積より小さくするように縮小する通路断面積縮小部11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関において,各気筒における燃焼後の排気ガスを排出するための排気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に内燃機関における排気装置は,図7に示すように,シリンダブロック21におけるシリンダボア22の頂部を塞ぐシリンダヘッド23に,その下面における燃焼室24から延びる排気ポート25を設け,この排気ポート25の前記燃焼室24への弁座開口部26を,当該弁座開口部26に設けた排気弁27にて開閉することによって,燃焼後の排気ガスの排気を行なうという構成にしている。
【0003】
また,この種の排気装置においては,従来から良く知られているように,前記排気ポート25における内面のうち前記排気弁27における弁軸27aが貫通する部分に,ボス部29を内向きに突出するように一体に設けて,このボス部29にて,前記排気弁27における弁軸27aに摺動自在に被嵌したバルブブッシュ30を支持することにより,前記排気弁27の耐久性を向上したうえで内燃機関における全体の高さを低くするという構成にしている(例えば,特許文献1等の参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−105330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,前記従来の排気装置では,前記排気ポート25における通路断面積を,前記燃焼室24への弁座開口部26から出口部28に向かって暫時増大するか,略等しくしたうえで,この排気ポート25における内面のうち前記排気弁27の弁軸27aが貫通する部分に,当該弁軸27aを支持するためのボス部29を一体に突出するという構成にしているから,前記排気ポート25のうちその軸線方向に沿った各所における通路断面積は,図8に示すように,前記ボス部29の箇所において最少の通路断面積Sxになり,前記ボス部29の上流側及び下流側の部分において前記最少の通路断面積Sxよりも拡大されるという形状になり,前記ボス部29の箇所において,通路断面積が局部的に急激に絞られ(狭窄され)ているから,この部分に,絞り抵抗が発生することになる。
【0006】
この絞り抵抗は,通路断面積の局部的な変化のために比較的大きくて,この絞り抵抗が,排気ポート内における排気ガスの流れ抵抗に,そのまま加算されることにより,排気ガスの流れ抵抗が大幅に増大するから,排気効率の低下,ひいては出力及び燃費の低下が大きいという問題があった。
【0007】
本発明は,排気ガスの流れ抵抗を低減できる排気装置を提供することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「シリンダボアの頂部を塞ぐシリンダヘッドに,その下面における燃焼室から延びる排気ポートを設け,この排気ポートの前記燃焼室への弁座開口部に,当該弁座開口部を開閉する排気弁を設け,更に,前記排気ポートにおける内面のうち前記排気弁の弁軸が貫通する部分に,内向きに突出するボス部を一体に設け,このボス部にて前記弁軸を支持するように構成して成る内燃機関において,
前記排気ポートにおける内面のうち前記ボス部よりも上流側の部分に,当該上流側の部分における通路断面積を前記ボス部の箇所における通路断面積と実質的に等しくするように縮小するか,或いは前記ボス部の箇所における通路断面積より小さくするように縮小する通路断面積縮小部を設ける。」
ことを特徴としている。
【0009】
また,請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記排気ポートの弁座開口部を,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボア中心から偏心した部位に位置する一方,前記排気ポート内における通路断面積縮小部を,前記排気ポートにおける円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの内周面に隣接する箇所に設ける。」
ことを特徴としている。
【0010】
更にまた,請求項3は,
「前記請求項1の記載において,前記排気ポートを,一つの燃焼室に対して二つに構成して,この各排気ポートの弁座開口部を,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの中心から偏心した部位に並べて位置する一方,前記各排気ポート内における通路断面積縮小部を,前記排気ポートにおける円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの内周面に隣接する箇所に設ける。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によると,前記排気ポートのうちその軸線方向に沿った各所における通路断面積は,前記ボス部よりも上流側の部分における全体が,前記ボス部の箇所における最少の通路断面積と略等しくなるか,或いは小さくなり,通路断面積が前記ボス部7の箇所において局部的に急激に絞られ(狭窄され)た部分ができることを回避できる。
【0012】
その結果,前記排気ポート内における排気ガスの流速は,当該排気ポート内に突出するボス部よりも上流側の部分において,従来の場合よりも速くなるものの,排気ポート内のうち前記ボス部の箇所には,従来の場合のように局部的な絞られた(狭窄された)箇所が存在しなくなることにより,排気ポート内における排気ガスの流れ抵抗に,大きい絞り抵抗が加算されるのを確実に回避することができるから,排気ガスの流れ抵抗を低減でき,排気効率の向上,ひいては出力及び燃費の向上を達成できる。
【0013】
また,請求項2によると,排気ポート内における通路断面積縮小部による通路断面の縮小は,シリンダボアの軸線方向から見た場合に,当該排気ポート内のうちシリンダボアの内周面に隣接する箇所で行なわれることにより,前記排気ポートのうちボス部より上流側の部分における通路断面は,当該通路断面のうち前記シリンダボアの中心寄り側において広くなりシリンダボアの内周面寄り側において狭くなるという形状になるから,前記シリンダボア内の中心部分における排気ガスの排気ポート内への流出を円滑にすることができ,排気ガスの流れ抵抗をより低減できる。
【0014】
更にまた,請求項3によると,前記排気ポートを一つの燃焼室に対して二つに構成した場合に,前記シリンダボア内の中心部分における排気ガスの各排気ポート内への流出をより円滑にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態を示す要部の縦断正面図である。
【図2】図1のII−II視平断面図である。
【図3】図1のIII −III 視断面図である。
【図4】図1のIV−IV視断面図である。
【図5】前記第1の実施の形態において排気ポートにおける通路断面積の変化を示す図である。
【図6】第1の実施の形態を示す平断面図である。
【図7】従来の例を示す要部の縦断正面図である。
【図8】従来の例において排気ポートにおける通路断面積の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図6の図面について説明する。
【0017】
図1〜図5は,第1の実施の形態を示す。
【0018】
この図において,符号1は,シリンダボア2を有するシリンダブロックを,符号3は,前記シリンダブロック1の上面に前記シリンダボア2を塞ぐように締結したシリンダヘッドを各々示す。
【0019】
前記シリンダヘッド3には,その下面に燃焼室4が凹み形成されていることに加えて,この燃焼室4から延びる排気ポート5が形成されている。
【0020】
前記排気ポート5のうち前記燃焼室4への弁座開口部6は,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,図2に示すように,前記シリンダボア2の中心2aから半径方向の外向きに偏心した部位に位置しており,この弁座開口部6には,当該弁座開口部6を開閉するポペット型の排気弁7が設けられている一方,前記排気ポート5の出口部8は,前記シリンダヘッド3の側面3aに開口している。
【0021】
前記排気ポート5における内面のうち前記排気弁7の弁軸7aが貫通する部分には,内向きに突出するボス部9を一体に設けて,このボス部9によって,前記弁軸7aに摺動自在に被嵌したバルブブッシュ10を支持するという構成にしている。
【0022】
そして,前記排気ポート5における内面のうち前記ボス部9よりも上流側の部分,より正確には,前記ボス部9と前記弁座開口部6との間の部分には,当該部分における通路断面積を前記ボス部9の箇所における通路断面積Sxと実質的に等しくするように縮小する通路断面積縮小部11が設けられている。
【0023】
この通路断面積縮小部11は,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,図2及び図4に示すように,前記排気ポート5における円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状であり,前記シリンダボア2の内周面に隣接する箇所,つまり,排気ポート5が前記弁座開口部6に向かう下向きから出口部8に向かって横向きに湾曲する部分における湾曲内側の部分に設けられている。
【0024】
この構成によると,前記排気ポート5のうちその軸線方向に沿った各所における通路断面積は,図5に示すように,前記ボス部9よりも上流側の部分における全体が,前記ボス部9の箇所における最少の通路断面積Sxと略等しくなり,前記ボス部9の箇所において通路断面積が局部的に急激に絞られ(狭窄され)た部分ができることを回避できる。
【0025】
その結果,前記排気ポート5内における排気ガスの流速は,当該排気ポート5内に突出するボス部9よりも上流側の部分において,従来の場合よりも速くなるものの,排気ポート5内のうち前記ボス部9の箇所には,従来の場合のように局部的な絞られた(狭窄された)箇所が存在しなくなることにより,排気ポート5内における排気ガスの流れ抵抗に,大きい絞り抵抗が加算されるのを確実に回避することができる。
【0026】
また,別の実施の形態おいては,前記排気ポート5における内面のうち前記ボス部9よりも上流側の部分,より正確には,前記ボス部9と前記弁座開口部6との間の部分における通路断面積を,前記通路断面積縮小部11により,図5に二点鎖線Aで示すように,前記前記ボス部7の箇所における最少の通路断面積Sxよりも縮小するという構成にすることができる。
【0027】
この構成においても,前記同様に,前記排気ポート5内における排気ガスの流速は,当該排気ポート5内に突出するボス部9よりも上流側の部分において,従来の場合よりも速くなるものの,排気ポート5内のうち前記ボス部9の箇所には,従来の場合のように局部的な絞られた(狭窄された)箇所が存在しなくなり,排気ポート5内における排気ガスの流れ抵抗に,大きい絞り抵抗が加算されるのを確実に回避することができる。
【0028】
また,前記第1の実施の形態では,前記排気ポート5の弁座開口部6を,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,前記シリンダボア2の中心2aから偏心した部位に位置する一方,前記排気ポート5内における通路断面積縮小部11を,前記排気ポート5における円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,前記シリンダボア2の内周面に隣接する箇所に設けている。
【0029】
この構成により,排気ポート5内における通路断面積縮小部11による通路断面の縮小は,シリンダボア2の軸線方向から見た場合に,当該排気ポート5内のうちシリンダボア2の内周面に隣接する箇所で行なわれることにより,前記排気ポート5のうちボス部9より上流側の部分における通路断面は,当該通路断面のうち前記シリンダボア2の中心寄り側において広くなりシリンダボア2の内周面寄り側において狭くなるという形状になるから,前記シリンダボア2内の中心部分における排気ガスの排気ポート内への流出を円滑にすることができる。
【0030】
次に,図6は,第2の実施の形態を示す。
【0031】
この第2の実施の形態は,一つのシリンダボア2(燃焼室4)について,二つの排気ポート5′,5″に構成した場合であり,この場合においても,前記各排気ポート5′,5″は,前記第1の実施の形態と同様に,当該各排気ポート5′,5″のうちボス部9よりも下流側の部分,より正確には,前記ボス部9と前記弁座開口部6との間の部分に,通路断面積縮小部11′,11″を各々設けることにより,通路断面積を前記ボス部9の箇所における通路断面積と実質的に等しくするように縮小するか,或いは前記ボス部9の箇所における通路断面積より小さくするように縮小している。
【0032】
これに加えて,前記各排気ポート5′,5″の弁座開口部6′,6″を,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,前記シリンダボア2の中心2aから偏心した部位に並べて位置する一方,前記各排気ポート5′,5″内における通路断面積縮小部11′,11″を,前記各排気ポート5′,5″における円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボア2の軸線方向から見て,前記シリンダボア2の内周面に隣接する箇所に設けるという構成にしている。
【0033】
なお,この第2の実施の形態における各排気ポート5′,5″は,シリンダヘッド3の側面3aにおける出口において一つの出口部8′に合流している。
【0034】
この構成によると,前記排気ポートを一つの燃焼室に対して二つに構成した場合に,前記シリンダボア2内の中心部分における排気ガスの各排気ポート5′,5″内への流出をより円滑にすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 シリンダヘッド
4 燃焼室
5,5′,5″ 排気ポート
6,6′,6″ 排気ポートの弁座開口部
7 排気弁
7a 排気弁の弁軸
8,8′ 排気ポートの出口部
9 ボス部
10 バルブブッシュ
11,11′,11″ 通路断面積縮小部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアの頂部を塞ぐシリンダヘッドに,その下面における燃焼室から延びる排気ポートを設け,この排気ポートの前記燃焼室への弁座開口部に,当該弁座開口部を開閉する排気弁を設け,更に,前記排気ポートにおける内面のうち前記排気弁の弁軸が貫通する部分に,内向きに突出するボス部を一体に設け,このボス部にて前記弁軸を支持するように構成して成る内燃機関において,
前記排気ポートにおける内面のうち前記ボス部よりも上流側の部分に,当該上流側の部分における通路断面積を前記ボス部の箇所における通路断面積と実質的に等しくするように縮小するか,或いは前記ボス部の箇所における通路断面積より小さくするように縮小する通路断面積縮小部を設けることを特徴とする内燃機関における排気装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記排気ポートの弁座開口部を,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボア中心から偏心した部位に位置する一方,前記排気ポート内における通路断面積縮小部を,前記排気ポートにおける円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの内周面に隣接する箇所に設けることを特徴とする内燃機関における排気装置。
【請求項3】
前記請求項1の記載において,前記排気ポートを,一つの燃焼室に対して二つに構成して,この各排気ポートの弁座開口部を,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの中心から偏心した部位に並べて位置する一方,前記各排気ポート内における通路断面積縮小部を,前記排気ポートにおける円周方向の一部において通路断面積を縮小する形状にして,前記シリンダボアの軸線方向から見て,前記シリンダボアの内周面に隣接する箇所に設けることを特徴とする内燃機関における排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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