説明

内燃機関の制御装置

【課題】本発明は、内燃機関の制御装置に関し、クランク角検出手段により検出されるクランク角とクランク角との間のクランク角においてもパラメータを精度良く取得することを目的とする。
【解決手段】本発明の内燃機関の制御装置は、第1のクランク角とその次に検出される第2のクランク角との間であって、クランク角検出手段のクランク角間隔に所定比率を乗じた角度だけ第1のクランク角より後にある中間クランク角でパラメータを取得しようとする場合に、前回のクランク角検出間隔時間に所定比率を乗じた時間だけ第1のクランク角検出タイミングより後にある第1のタイミングでパラメータを取得し、第1のクランク角と第2のクランク角との間の間隔時間に所定比率を乗じた時間だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある第2のタイミングと、第1のタイミングとのズレ時間に基づいて、第1のタイミングで取得されたパラメータに関する補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の制御装置は、内燃機関のクランク角をクランク角センサにより検出し、その検出されたクランク角に基づいて種々の制御や処理を行うように構成されている。クランク角センサは、所定のクランク角間隔でクランク角を検出する。そのクランク角間隔を例えば10CA(Crank Angle)とすると、何らかのセンサ(例えば筒内圧センサ)の検出値を10CA毎に取得する場合には、センサ値を10CA毎にアナログデジタル変換(以下、「AD変換」と略記)する。以下、クランク角が10CA毎に検出される間隔時間を「10CA間隔時間」と称する。
【0003】
上記クランク角間隔より細かい刻みでセンサ値を取得したい場合、例えば5CA毎に取得したい場合には、前回の10CA間隔時間を1/2倍した時間後にセンサ値をAD変換するようにタイマーをセットする。このとき、機関回転速度が一定である場合には、10CA間隔時間も一定であるので、上記の方法により正確に5CA後にセンサ値を取得することができる。しかしながら、機関回転速度が増速していくとき、つまり内燃機関の加速時には、前回の10CA間隔時間より今回の10CA間隔時間が短くなるので、前回の10CA間隔時間を1/2倍した時間後にAD変換したセンサ値は、実際には5CA後より遅いタイミングでの値になってしまう。逆に、機関回転速度が減速していくとき、つまり内燃機関の減速時には、前回の10CA間隔時間より今回の10CA間隔時間が長くなるので、前回の10CA間隔時間を1/2倍した時間後にAD変換したセンサ値は、実際には5CA後より早いタイミングでの値になってしまう。このようなことから、内燃機関の加速時や減速時には、正確な中間クランク角でセンサ値を取得することができない。
【0004】
特許文献1には、前回周期の時間ΔTi−1をn等分して分割時間(ΔTi−1)/nを算出し、今回周期におけるパルス信号の基準時iから所定数の分割時間が経過したタイミングTi_k(k=1,2,・・・n−1)におけるクランク角を基本中間クランク角θi_kとして決定し、そのタイミングTi_kにおける、筒内状態に関わるPVκ等の所定のパラメータの値が、今回又はそれより前の周期におけるパルス信号の基準時におけるパラメータ値と等しくなるようなクランク角θi_k‘を算出し、この算出したクランク角θi_k‘と基本中間クランク角θi_kとを比較し、基本中間クランク角θi_kの正否を判定する内燃機関の制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−40208号公報
【特許文献2】特開2007−183263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、基本中間クランク角θi_kの正否を判定するためにPVκ等のパラメータの値を計算する必要があるので、計算負荷が大きい。また、特許文献1では、基本中間クランク角θi_kが正確でないと判定された場合に、その基本中間クランク角θi_kでAD変換されたセンサ値をどのように補正するかについて開示されていない。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、クランク角検出手段により検出されるクランク角とクランク角との間のクランク角においてもパラメータを精度良く取得することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
内燃機関のクランク角を所定のクランク角間隔で検出するクランク角検出手段と、
前記クランク角検出手段により検出される第1のクランク角とその次に検出される第2のクランク角とで所定のパラメータをそれぞれ取得するとともに、前記第1のクランク角と前記第2のクランク角との間のクランク角であって前記クランク角間隔に所定比率を乗じた角度だけ前記第1のクランク角より後にある所定の中間クランク角で前記パラメータを取得しようとする場合に、前記第1のクランク角の検出タイミングとその前のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に前記所定比率を乗じた時間だけ前記第1のクランク角の検出タイミングより後にある第1のタイミングで前記パラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記第1のクランク角の検出タイミングと前記第2のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に前記所定比率を乗じた時間だけ前記第1のクランク角の検出タイミングより後にある第2のタイミングと、前記第1のタイミングとのズレ時間に基づいて、前記第1のタイミングで取得されたパラメータに関する補正を行うパラメータ補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記パラメータ補正手段は、前記第1のタイミングが前記第2のタイミングより後である場合には、前記第1のクランク角で取得されたパラメータと前記第1のタイミングで取得されたパラメータとで内挿することによって前記中間クランク角でのパラメータを算出し、前記第1のタイミングが前記第2のタイミングより前である場合には、前記第1のタイミングで取得されたパラメータと前記第2のクランク角で取得されたパラメータとで内挿することによって前記中間クランク角でのパラメータを算出することを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記パラメータ補正手段は、前記ズレ時間に基づいて、前記第1のタイミングでのクランク角と前記第2のタイミングでのクランク角とのズレ角度を算出し、該ズレ角度に基づいて前記補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、クランク角検出手段により検出される第1のクランク角とその次に検出される第2のクランク角との間の中間クランク角でパラメータを取得しようとする場合に、第1のクランク角の検出タイミングとその前のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に所定比率を乗じた時間だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある第1のタイミングでパラメータを取得する。そして、第1のクランク角の検出タイミングと第2のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に所定比率を乗じた時間だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある第2のタイミングと、第1のタイミングとのズレ時間に基づいて、第1のタイミングで取得されたパラメータに関する補正を精度良く行うことができる。
【0012】
第2の発明によれば、内燃機関の加速時、減速時の何れの場合においても、中間クランク角でのパラメータを精度良く算出することができる。
【0013】
第3の発明によれば、第1のタイミングでのクランク角と第2のタイミングでのクランク角とのズレ角度に基づいて、上記補正を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】内燃機関の加速時におけるクランク角の検出タイミングと、AD変換のタイミングとの関係を示す図である。
【図3】ズレ角度ΔCAに基づく補正の方法を説明するための図である。
【図4】加速時において中間クランク角θでの筒内圧の値を算出する方法を説明するための図である。
【図5】減速時において中間クランク角θでの筒内圧の値を算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本発明の実施の形態1のシステムは、内燃機関10を備えている。この内燃機関10は、例えば車両等の動力源として好ましく使用することができる。内燃機関10の気筒数および気筒配置は特に限定されるものではない。内燃機関10の各気筒には、ピストン12と、吸気弁14と、排気弁16と、点火プラグ18と、燃料インジェクタ20とが設けられている。図示の構成では、燃料インジェクタ20は、吸気ポート内に燃料を噴射するように設けられているが、筒内に直接に燃料を噴射するように設けられていてもよい。また、本実施形態の内燃機関10は、火花点火式のものであるが、本発明は、ディーゼルエンジンや予混合圧縮着火内燃機関にも適用可能である。
【0017】
内燃機関10の本体には、図示しない吸気マニホールドを介して吸気通路22が接続され、また、図示しない排気マニホールドを介して排気通路24が接続されている。吸気通路22の途中には、吸入空気量を制御するためのスロットル弁30が配置されている。
【0018】
また、本実施形態のシステムは、内燃機関10のクランク軸26の回転角度(クランク角)θを検出するクランク角センサ28と、気筒内の圧力を検出する筒内圧センサ32と、内燃機関10に対する運転者からの負荷指令を検出するためのアクセルポジションセンサ34と、吸入空気量を検出するエアフローメータ(図示せず)と、ECU(Electronic Control Unit)50とを更に備えている。上述した各種のセンサおよびアクチュエータは、ECU50に電気的に接続されている。ECU50は、各センサにより検出した情報に基いて各アクチュエータを駆動することにより、内燃機関10の運転を制御する。
【0019】
筒内容積Vは、クランク角θの関数、すなわちV(θ)として表すことができる。関数V(θ)は、気筒のボア、ストローク、コンロッド長など、内燃機関10の諸元により定まる。ECU50には、クランク角θに基づいて筒内容積Vを算出するための情報(数式またはマップ)が予め記憶されている。
【0020】
筒内圧Pは、クランク角θに伴って変化するので、P(θ)として表すことができる。本実施形態では、ECU50は、筒内圧センサ32の検出信号をAD変換することにより筒内圧P(θ)の値を取得するとともに、P(θ)×V(θ)、あるいはP(θ)×V(θ)κ(κは比熱比)などの値を算出し、その算出値を用いて1サイクル毎に燃焼を解析し、その解析結果を次サイクルの内燃機関10の種々の操作量(例えば、燃料噴射、点火、バルブタイミング等)に反映させる制御(以下、「筒内圧センサ利用制御」と称する)を行う。
【0021】
内燃機関10の1サイクルのクランク角θは、0〜720°である。以下、クランク角θの単位を「CA」と表す。ECU50は、クランク角センサ28の信号に基づいて、所定のクランク角間隔(本実施形態では、10CA間隔とする)でクランク角θを検出することができる。ECU50は、クランク角θの検出(割込み)が10CA間隔で入力される毎に、筒内圧センサ32の検出信号をAD変換して筒内圧Pの値を取得する。したがって、ECU50は、10CA間隔の正確なクランク角位置での筒内圧Pの値を取得することができる。
【0022】
しかしながら、筒内圧センサ利用制御の精度を高めるためには、10CA間隔よりも更に細かい間隔で筒内圧Pを検出することが求められる場合がある。そのような場合、ECU50は、次のような制御を行う。以下の説明では、筒内圧Pの値を、クランク角θの検出(割込み)の2倍の頻度、すなわち、5CA間隔で取得(AD変換)しようとする場合について説明する。
【0023】
図2は、内燃機関10の加速時におけるクランク角θの検出タイミングと、AD変換のタイミングとの関係を示す図であり、横軸は時間である。図2中の円形のマークは、10CA毎のクランク角θの検出(割込み)のタイミングで行われるAD変換を表す。以下の説明では、クランク角検出タイミングと、次のクランク角検出タイミング(すなわち10CA後のクランク角検出タイミング)との間の時間を、「10CA間隔時間」と称し、記号T10で表す。また、クランク角の検出(割込み)の回数を記号iで表す。
【0024】
5CA間隔でAD変換を行うためには、10CA毎に検出されるクランク角の中間の5CAのクランク角(以下、「中間クランク角5CA」と称する)においてもAD変換を行う必要がある。ECU50は、中間クランク角5CAでAD変換を行うために、クランク角検出タイミングから、前回の10CA間隔時間を1/2倍した時間、すなわち5CAに相当すると予測される時間だけ後のタイミングでAD変換を行うようにタイマー(逓倍ADタイマー)をセットする。図2中のくさび形のマークは、この逓倍ADタイマーによるAD変換のタイミングを表す。また、図2中の逆三角形のマークは、今回のクランク角検出タイミングから次回のクランク角検出タイミングまでの10CA間隔時間を1/2倍した時間後のタイミングを示す。この逆三角形のマークで示すタイミングは、中間クランク角5CAの正しいタイミング、すなわち本来の正しいAD変換タイミングに相当する。
【0025】
図2から理解できるように、今回の10CA間隔時間10T(i)が前回の10CA間隔時間10T(i−1)と等しい場合には、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミング10T(i−1)/2は、本来の正しいAD変換タイミング10T(i)/2と一致する。すなわち、この場合には、中間クランク角5CAの位置に正確に対応する正しいタイミングでAD変換を行うことができる。機関回転速度が変化せず一定の場合(定常運転時)には、10CA間隔時間も一定であるので、このようにして、本来の正しいAD変換タイミングでAD変換を行い、正確な中間クランク角5CAの位置での筒内圧Pの値を取得することができる。
【0026】
これに対し、機関回転速度が変化する場合、例えば機関回転速度が増速していく加速時には、次のような問題がある。図2に示すように、加速時には、10CA間隔時間は次第に短くなっていくので、今回の10CA間隔時間10T(i+1)は、前回の10CA間隔時間10T(i)より短くなる。このため、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミング10T(i)/2は、本来の正しいAD変換タイミング10T(i+1)/2よりも遅いタイミングとなってしまう。
【0027】
逆に、機関回転速度が減速していく減速時には、図示を省略するが、10CA間隔時間は次第に長くなっていき、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミングは、本来の正しいAD変換タイミングよりも早いタイミングとなってしまう。
【0028】
以下の説明では、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミング(第1のタイミング)と、本来の正しいAD変換タイミング(第2のタイミング)との偏差をズレ時間と称し、記号Δtで表す。便宜上、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミングが本来の正しいAD変換タイミングより遅くなる場合(すなわち加速時)をΔt>0とし、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミングが本来の正しいAD変換タイミングより早くなる場合(すなわち減速時)をΔt<0とする。
【0029】
このように、内燃機関10の加速時や減速時には、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミングと、本来の正しいAD変換タイミングとの間にズレ時間Δtがあるため、逓倍ADタイマーによりAD変換された筒内圧Pの値は、正確な中間クランク角5CAの位置での筒内圧Pの値とはならず、誤差を有する。そこで、本実施形態では、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換がなされたタイミングでのクランク角と、本来の正しいAD変換タイミングでのクランク角(すなわち、正確な中間クランク角5CAの位置)との偏差(以下、「ズレ角度」と称し、記号ΔCAで表す。)を算出する。そして、その算出したズレ角度ΔCAに基づいて、補正を行う。
【0030】
図2から理解できるように、ズレ時間Δtは、今回の10CA間隔時間10T(i+1)と、前回の10CA間隔時間10T(i)とに基づき、次式により算出することができる。
Δt=10T(i)/2−10T(i+1)/2 ・・・(1)
【0031】
10T(i+1):10=Δt:ΔCAより、ズレ角度ΔCAは、次式により算出することができる。
ΔCA=Δt×10/10T(i+1) ・・・(2)
【0032】
図3は、ズレ角度ΔCAに基づく補正の方法を説明するための図である。図3は、圧縮行程から膨張行程にかけての筒内圧Pの変化を示している。図3中の白い点は、筒内圧センサ32の検出信号をAD変換して筒内圧Pの値を取得した点を示している。ECU50は、上記(1)式および(2)式により、ズレ角度ΔCAを算出することができる。図3に示すように、例えばBTDC(上死点前)45CAを狙って筒内圧Pを取得(AD変換)した際に、ΔCA=1であった場合には、実際に筒内圧Pを取得(AD変換)したクランク角位置は、BTDC45CAより1CA遅れたBTDC44CAであったと知ることができる。
【0033】
同様にして、BTDC35CAを狙って筒内圧Pを取得(AD変換)した際に、ΔCA=2であった場合には、実際に筒内圧Pを取得(AD変換)したクランク角位置は、BTDC35CAより2CA遅れたBTDC33CAであったと知ることができる。筒内圧センサ利用制御において、例えばP(θ)×V(θ)κの値を算出する際には、筒内圧Pと筒内容積Vとのクランク角を正確に揃えて計算しないと、誤差が発生する。しかしながら、上記の場合において、ズレ角度ΔCAの情報がないとすると、取得した筒内圧PをBTDC35CAでの値として取り扱うこととなり、P(BTDC33CA)×V(BTDC35CA)κなる値を算出することになるので、P(θ)×V(θ)κの値を正確に算出することができない。これに対し、本実施形態では、上記の場合において、ズレ角度ΔCAの情報に基づき、実際に筒内圧Pを取得(AD変換)したクランク角位置がBTDC33CAであったと知ることができる。このため、実際に筒内圧Pを取得(AD変換)したクランク角位置であるBTDC33CAにおける筒内容積V(BTDC33CA)を求め、P(BTDC33CA)×V(BTDC33CA)κなる値を算出することができる。このため、P(θ)×V(θ)κの値を正確に算出することができ、筒内圧センサ利用制御の精度を向上することができる。
【0034】
なお、任意のクランク角θにおけるV(θ)の値は、ECU50に関数V(θ)の数式を予め記憶しておき、その都度計算を行うことにより、求めることができる。また、そのような計算負荷を抑制するため、例えば1CA刻みまたは0.1CA刻み等の所定のクランク角毎にV(θ)の値を関連付けたマップをECU50に予め記憶しておき、そのマップを参照することでV(θ)の値を求めるようにしてもよい。その場合、ECU50に十分なROM容量を確保し、V(θ)のマップのθの刻みをより細かくすることにより、V(θ)の値をより正確に求めることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態では、クランク角センサ28の信号に基づいて検出される第1のクランク角と、その次に検出される10CA後の第2のクランク角とで所定のパラメータ(筒内圧P)をそれぞれ取得(AD変換)するとともに、第1のクランク角と第2のクランク角との間のクランク角であってクランク角間隔10CAに所定比率1/2を乗じた角度(5CA)だけ第1のクランク角より後にある中間クランク角5CAでパラメータ(筒内圧P)を取得しようとする場合に、第1のクランク角の検出タイミングとその前のクランク角の検出タイミングとの間の10CA間隔時間10T(i)に上記所定比率1/2を乗じた時間10T(i)/2だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある第1のタイミングでタイマーによりパラメータ(筒内圧P)を取得し、第1のクランク角の検出タイミングと第2のクランク角の検出タイミングとの間の10CA間隔時間10T(i+1)に上記所定比率1/2を乗じた時間10T(i+1)/2だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある第2のタイミングと、第1のタイミングとのズレ時間Δtに基づいて、第1のタイミングで取得されたパラメータ(筒内圧P)に関する補正を行う。
【0036】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、第1のクランク角と第2のクランク角との間の複数の中間クランク角でパラメータ(筒内圧P)を取得する場合にも適用可能である。例えば、第1のクランク角と第2のクランク角との間のクランク角であってクランク角間隔10CAに所定比率1/4、1/2、3/4を乗じた角度(2.5CA、5CA、7.5CA)だけ第1のクランク角より後にある3つの中間クランク角2.5CA、5CA、7.5CAでそれぞれパラメータ(筒内圧P)を取得しようとする場合には、第1のクランク角の検出タイミングとその前のクランク角の検出タイミングとの間の10CA間隔時間10T(i)に上記所定比率1/4、1/2、3/4をそれぞれ乗じた時間10T(i)/4、10T(i)/2、30T(i)/4だけ第1のクランク角の検出タイミングより後にある3つの第1のタイミングでそれぞれタイマーによりパラメータ(筒内圧P)を取得し、第1のクランク角の検出タイミングと第2のクランク角の検出タイミングとの間の10CA間隔時間10T(i+1)に上記所定比率1/4、1/2、3/4をそれぞれ乗じた時間10T(i+1)/4、10T(i+1)/2、30T(i+1)/4だけ第1のクランク角の検出タイミングよりそれぞれ後にある3つの第2のタイミングと、上記3つの第1のタイミングとのそれぞれのズレ時間Δtに基づいて、上記3つの第1のタイミングで取得されたパラメータ(筒内圧P)に関する補正をそれぞれ行えば良い。また、本発明で取得するパラメータは、筒内圧Pに限定されるものではなく、内燃機関10の運転に関する種々のパラメータについて同様に適用することができる。
【0037】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、クランク角センサ28の信号に基づいて10CA間隔でクランク角を検出することにより前記第1の発明における「クランク角検出手段」が実現されている。また、ECU50が、筒内圧センサ32の検出信号を上述したタイミングでAD変換して筒内圧Pの値を取得することにより前記第1の発明における「パラメータ取得手段」が実現されている。また、ECU50が、逓倍ADタイマーにより取得された筒内圧P(θ)を用いてP(θ)×V(θ)κまたはP(θ)×V(θ)の値を算出する際に、ズレ角度ΔCAに基づいて筒内容積V(θ)の値を補正することにより、前記第1の発明における「パラメータ補正手段」が実現されている。
【0038】
実施の形態2.
次に、図4および図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を簡略化または省略する。図4は、加速時において中間クランク角θでの筒内圧Pの値を算出する方法を説明するための図である。図5は、減速時において中間クランク角θでの筒内圧Pの値を算出する方法を説明するための図である。なお、本実施形態では、クランク角θをBTDC(上死点前)の角度で表しており、θが減少する方向がクランク軸26の回転方向に対応している。
【0039】
図4および図5に示すように、本実施形態では、クランク角センサ28の信号に基づいて検出される第1のクランク角(θ+5)と、その次に検出される10CA後の第2のクランク角(θ−5)との間のクランク角であって、5CAだけ第1のクランク角(θ+5)より後にある中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)を、内挿(補間)処理により算出する。本実施形態の説明では、第1のクランク角(θ+5)でAD変換されて取得された筒内圧の値をP(θ+5)とし、第2のクランク角(θ−5)でAD変換されて取得された筒内圧の値をP(θ−5)とする。なお、図4および図5では、θ=BTDC35CAの場合を例示している。また、逓倍ADタイマーによる実際のAD変換タイミングでのクランク角をθ’とし、逓倍ADタイマーによりAD変換されて取得された筒内圧の値をP(θ’)とする。以上の定義により、次式が成り立つ。
ΔCA=θ−θ’ ・・・(3)
【0040】
本実施形態において、ECU50は、実施の形態1と同様に、前述した(1)式および(2)式により、ズレ角度ΔCAを算出する。
【0041】
実施の形態1で説明したように、内燃機関10の加速時には、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)は、本来の正しいAD変換タイミング(第2のタイミング)より後になる。すなわち、Δt>0となる。このため、この場合には、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)でのクランク角θ’は、正しい中間クランク角θより後になる。すなわち、ΔCA>0となる。このような場合には、図4に示すように、中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)は、第1のクランク角(θ+5)で取得された筒内圧の値P(θ+5)と、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)で取得された筒内圧の値P(θ’)との間の値になるので、その両者の値から内挿(補間)することにより、精度良く算出することができる。この内挿処理を実現するため、本実施形態では、ECU50は、内燃機関10の加速時には、次式により中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)を算出する。
【0042】
P(θ)={P(θ’)−P(θ+5)}/(5+ΔCA)×5+P(θ+5)
・・・(4)
【0043】
一方、内燃機関10の減速時には、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)は、本来の正しいAD変換タイミング(第2のタイミング)より前になる。すなわち、Δt<0となる。このため、この場合には、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)でのクランク角θ’は、正しい中間クランク角θより前になる。すなわち、ΔCA<0となる。このような場合には、図5に示すように、中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)は、逓倍ADタイマーによるAD変換タイミング(第1のタイミング)で取得された筒内圧の値P(θ’)と、第2のクランク角(θ−5)で取得された筒内圧の値P(θ−5)との間の値になるので、その両者の値から内挿(補間)することにより、精度良く算出することができる。この内挿処理を実現するため、本実施形態では、ECU50は、内燃機関10の減速時には、次式により中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)を算出する。
【0044】
P(θ)={P(θ−5)−P(θ’)}/(ΔCA−5)×ΔCA+P(θ’)
・・・(5)
【0045】
以上説明した実施の形態2によれば、内燃機関10の加速時、減速時の何れの場合においても、中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)を、内挿処理によって精度良く求めることができる。上述した実施の形態2においては、ECU50が、上記(4)式または(5)式に基づいて中間クランク角θでの筒内圧の値P(θ)を算出することにより前記第2の発明における「パラメータ補正手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0046】
10 内燃機関
12 ピストン
14 吸気弁
16 排気弁
18 点火プラグ
20 燃料インジェクタ
22 吸気通路
24 排気通路
26 クランク軸
28 クランク角センサ
30 スロットル弁
32 筒内圧センサ
34 アクセルポジションセンサ
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク角を所定のクランク角間隔で検出するクランク角検出手段と、
前記クランク角検出手段により検出される第1のクランク角とその次に検出される第2のクランク角とで所定のパラメータをそれぞれ取得するとともに、前記第1のクランク角と前記第2のクランク角との間のクランク角であって前記クランク角間隔に所定比率を乗じた角度だけ前記第1のクランク角より後にある所定の中間クランク角で前記パラメータを取得しようとする場合に、前記第1のクランク角の検出タイミングとその前のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に前記所定比率を乗じた時間だけ前記第1のクランク角の検出タイミングより後にある第1のタイミングで前記パラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記第1のクランク角の検出タイミングと前記第2のクランク角の検出タイミングとの間の間隔時間に前記所定比率を乗じた時間だけ前記第1のクランク角の検出タイミングより後にある第2のタイミングと、前記第1のタイミングとのズレ時間に基づいて、前記第1のタイミングで取得されたパラメータに関する補正を行うパラメータ補正手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記パラメータ補正手段は、前記第1のタイミングが前記第2のタイミングより後である場合には、前記第1のクランク角で取得されたパラメータと前記第1のタイミングで取得されたパラメータとで内挿することによって前記中間クランク角でのパラメータを算出し、前記第1のタイミングが前記第2のタイミングより前である場合には、前記第1のタイミングで取得されたパラメータと前記第2のクランク角で取得されたパラメータとで内挿することによって前記中間クランク角でのパラメータを算出することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記パラメータ補正手段は、前記ズレ時間に基づいて、前記第1のタイミングでのクランク角と前記第2のタイミングでのクランク角とのズレ角度を算出し、該ズレ角度に基づいて前記補正を行うことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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