説明

内燃機関の吸気構造

【課題】シリンダヘッドとスロットルボディの間にインテークパイプを介装しても、応答性の良い内燃機関を提供する。
【解決手段】本発明は、シリンダヘッド22に形成されるインテークポート27よりも上流側に位置し、弁体42の回転に伴って開閉するスロットルバルブ40を有するスロットルボディ36と、インテークポート27よりも上流側且つスロットルボディ36よりも下流側に設けられるインテークパイプ50と、を備えた内燃機関の吸気構造であって、スロットルバルブ40の全開時に、弁体42の先端部39がインテークパイプ50の上流側開口面56よりも下流側に突出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、自動二輪車、船外機等の内燃機関に用いられる吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動二輪車等の車両用の内燃機関には、シリンダヘッドに形成されるインテークポートに、燃焼室に連通する開口部が設けられている。また、インテークポートよりも上流側にはスロットルボディが設けられ、このスロットルボディには、弁体を備えたスロットルバルブが設けられている。そして、上記した弁体の回転に伴ってスロットルバルブを開閉させることで、燃焼室への吸気量を調整できるように構成されている。
【0003】
また、シリンダヘッドとスロットルボディは一般的に金属製であるため、シリンダヘッドとスロットルボディを直接締結させたり、剛性の高い部材のみを介して締結させたりすると、シリンダヘッド側又はスロットルボディ側の振動がシリンダヘッドとスロットルボディの締結部に伝達され、締結部が破損する虞がある。そこで、弾性部材により形成されるインテークパイプをシリンダヘッドとスロットルボディの間に介装する構成が知られている。(例えば、特許文献1の「防振ラバーガスケット3」参照。)
【0004】
また、このようにインテークパイプを介してシリンダヘッドとスロットルボディを締結する場合には、インテークパイプにスロットルボディを嵌合させた後、各部材をバンドで締め付けて固定する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−76587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の如くシリンダヘッドとスロットルボディの間にインテークパイプを介装すると、シリンダヘッドのインテークポートからスロットルボディのスロットルバルブまでの距離が長くなり、これに伴って、スロットルバルブを開放させてから燃焼室に吸気が届くまでの時間が長くなる。即ち、内燃機関の応答性が悪くなる。また、重量物であるスロットルボディの重心がシリンダヘッドから遠くなり、内燃機関におけるマスの集中化及び内燃機関のコンパクト化を図ることが困難になる。
【0007】
また、上記従来技術のように、インテークパイプにスロットルボディを嵌合させる構成を採用すると、シリンダヘッドとインテークパイプの接合部やインテークパイプとスロットルボディの接合部に、吸気の流れを阻害するような段差や隙間が生じやすくなる。このような段差や隙間が生じると、余計な縮流が発生して吸気通路の実質的な断面積が小さくなり、スムーズに吸気を行うことが困難になる。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、シリンダヘッドとスロットルボディの間にインテークパイプを介装しても、応答性の良い内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンダヘッドに形成されるインテークポートよりも上流側に位置し、弁体の回転に伴って開閉するスロットルバルブを有するスロットルボディと、前記インテークポートよりも上流側且つ前記スロットルボディよりも下流側に設けられるインテークパイプと、を備えた内燃機関の吸気構造であって、前記スロットルバルブの全開時に、前記弁体の先端部が前記インテークパイプの上流側開口面よりも下流側に突出することを特徴とする。
【0010】
このような構成を採用することにより、スロットルバルブの全開時を含めて常に弁体がスロットルボディ内に収納されるような場合と比較して、スロットルバルブをインテークポートに接近させることが可能となる。これに伴って、スロットルバルブを開放させてから燃焼室に吸気が届くまでの時間を短くすることが可能となり、シリンダヘッドとスロットルボディの間にインテークパイプを介装する構成を採用しても、内燃機関の応答性を良好に保つことが可能となる。また、重量物であるスロットルボディの重心をシリンダヘッド側に寄せることが可能となり、内燃機関におけるマスの集中化及び内燃機関のコンパクト化を図ることも可能となる。
【0011】
また、前記スロットバルブの全開時に、前記弁体の先端部が前記インテークパイプの下流側開口面よりも下流側に突出しても良い。
【0012】
このような構成を採用することにより、スロットルバルブをインテークポートに一層接近させることが可能となり、内燃機関の応答性を一層良好にするとともに、マスの集中化及びコンパクト化を図る効果を一層高めることが可能となる。
【0013】
また、前記インテークパイプの下流側開口面の内径は、前記インテークポートの開口面の内径と同一又は前記インテークポートの開口面の内径よりも小さいことが好ましい。
【0014】
このような構成を採用することにより、インテークパイプとインテークポートの接合面に吸気の流れを阻害するような段差が形成されるのを防止することが可能となり、インテークポートへの吸気を円滑に行うことが可能となる。
【0015】
また、前記インテークパイプは、弾性部材から成るパイプ本体と、該パイプ本体の下流側外周部に設けられてアルミ系部材から成るシリンダヘッド取付板と、前記パイプ本体の上流側外周部に設けられて鉄系部材から成るスロットルボディ取付板と、を備えていても良い。
【0016】
このようにパイプ本体を弾性部材で形成することで、シリンダヘッド側及びスロットルボディ側からの振動をパイプ本体で吸収することが可能となる。そのため、上記した振動によりシリンダヘッドとインテークパイプの締結部やインテークパイプとスロットルボディの締結部に破損が生じるのを抑制することが可能となる。
【0017】
また、シリンダヘッド取付板をアルミ系部材で形成することにより、シリンダヘッド取付板を同一厚みの鉄系部材で形成する場合と比較して、シリンダヘッド取付板を軽量化することが可能となる。また、スロットルボディ取付板を鉄系部材で形成することで、スロットルボディ取付板を同一厚みのアルミ系部材で形成する場合と比較して、スロットルボディ取付板の剛性を高めることが可能となる。これに伴って、例えばスロットルボディ取付板に雌ネジ部を設ける場合に、雌ネジ部の破損を防止することが可能となる。
【0018】
また、前記パイプ本体には、前記インテークポートとの接合面及び前記スロットルボディとの接合面に、シール部材が環状に突設されていても良い。
【0019】
このような構成を採用することにより、防振機能やスロットルボディ取付板及びシリンダヘッド取付板の保持機能だけでなく、接合面のシール機能をパイプ本体に持たせることが可能となる。
【0020】
また、隣接する一対のパイプ本体に対応するシリンダヘッド取付板が一体形成され、該一体形成されたシリンダヘッド取付板には、両側部と中央部にそれぞれシリンダヘッドとの締結部が設けられ、該両側部の締結部と該中央部の締結部とを結ぶ線分がV字状を成し、前記一対のパイプ本体に対応するスロットルボディ取付板が一体形成され、該一体形成されたスロットルボディ取付板には、両側部と中央部にそれぞれスロットルボディとの締結部が設けられ、該両側部の締結部と該中央部の締結部とを結ぶ線分が、前記シリンダヘッド取付板の各締結部を結ぶ線分とは逆向きのV字状を成していても良い。
【0021】
このような構成を採用することにより、シリンダヘッドとシリンダヘッド取付板、スロットルボディとスロットルボディ取付板をそれぞれ強固に締結することが可能となり、スロットルボディ側又はシリンダヘッド側からの振動が生じた場合でも、スロットルボディがシリンダヘッドに安定して保持される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シリンダヘッドとスロットルボディの間にインテークパイプを介装しても、応答性の良い内燃機関を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、エンジンを示す左後方からの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、シリンダヘッドの吸気ポート周辺部を示す後方からの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、シリンダヘッド、スロットルボディ及びインテークパイプを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る自動二輪車において、インテークパイプの斜視図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の構造を、オンロードタイプの自動二輪車1に適用する場合について説明する。なお、上下、左右、前後の方向は、自動二輪車1に乗車する運転者から見た方向を基準とする。図2、図4の矢印Frは、車両の前方を示している。
【0025】
まず、自動二輪車1の全体の構成について説明する。
【0026】
図1に示されるように、自動二輪車1には、骨組を構成する車体フレーム2が設けられ、車体フレーム2の前方から下方にかけて設けられたカウリング3により、自動二輪車1の前部が覆われている。車体フレーム2は、例えばツインチューブ型であり、車体フレーム2の前部上端に配置されたヘッドパイプ4と、ヘッドパイプ4から後下方に向かって延設された左右一対のメインフレーム5と、メインフレーム5の後部から後上方に向かって延設された左右一対のシートレール6と、を主体として構成されている。
【0027】
ヘッドパイプ4には、左右一対のフロントフォーク7が回転可能に支持されている。フロントフォーク7の下端には前輪8が軸支され、フロントフォーク7の上端にはハンドルバー9が固定されている。
【0028】
左右一対のメインフレーム5の間には燃料タンク10が設けられ、燃料タンク10の後方には、シートレール6の上方に運転者シート11が設けられ、燃料タンク10の下方には内燃機関12(図2参照)が搭載されている。左右一対のメインフレーム5の後下部にはピボット軸13が架設され、ピボット軸13にはスイングアーム14の前端部が上下方向揺動可能に支持されている。スイングアーム14の後端部には後輪15が軸支され、後輪15の上部側方にはマフラ16が設けられている。
【0029】
次に、内燃機関12の構成について説明する。
【0030】
内燃機関12は、例えばDOHC式の水冷4気筒型であり、図2に示されるように、アッパクランクケース17及びロアクランクケース18からなる上下二分割式のクランクケース20と、アッパクランクケース17の前部に一体成型されて上前方に延設されるシリンダ21と、シリンダ21の上方に設けられるシリンダヘッド22と、シリンダヘッド22の上面を被覆するシリンダヘッドカバー23と、を備えている。
【0031】
クランクケース20はアルミ製であり、クランクケース20内には、いずれも図示を省略するクランク軸と、クラッチと、変速装置と、が収納されている。そして、内燃機関12の駆動に伴ってクランク軸が回転すると、このクランク軸の回転がクラッチ及び変速装置を介して後輪15に伝達されて、自動二輪車1が走行するように構成されている。
【0032】
シリンダ21及びシリンダヘッド22には、それぞれ複数のボス24、25が所定間隔で形成されている。そして、各ボス24、25に貫挿させた締付ボルト26をアッパクランクケース17に締結させることで、アッパクランクケース17に対してシリンダ21及びシリンダヘッド22が取り付けられている。
【0033】
シリンダヘッド22はアルミ製であり、シリンダヘッド22の後壁には、4個のインテークポート27が車幅方向(左右方向)に並んで設けられている。各インテークポート27は、シリンダヘッド22の後壁に設けられた複数のボス25の形成間隔に設けられている(図3参照)。
【0034】
各インテークポート27には、後上方に向かって開口部28が設けられている。各開口部28は、シリンダヘッド22内に設けられたインテーク通路30を介して燃焼室31と連通している(図4参照)。
【0035】
図3に示されるように、各インテークポート27には、開口部28の外周にフランジ面32が設けられている。左端のインテークポート27のフランジ面32には、左上方に向かって突部33が設けられ、左から2番目のインテークポート27のフランジ面32には、右上方に向かって突部33が設けられている。左端のインテークポート27と左から2番目のインテークポート27の間には、ボス25の下方に取付ボス34が設けられている。各突部33と取付ボス34には、雌ネジ部35が設けられている。
【0036】
図示を省略するが、右から2番面のインテークポート27のフランジ面32と右端部のインテークポート27のフランジ面32の間には、ボス25の下方に取付ボス34が設けられている。右から2番目のインテークポート27のフランジ面32には、左上方に向かって突部33が設けられ、右端部のインテークポート27のフランジ面32には、右上方に向かって突部33が設けられている。各突部33と取付ボス34には雌ネジ部35が設けられている。
【0037】
図4に示されるように、シリンダヘッド22の後方には、各インテークポート27よりも吸気方向(図4の一点鎖線矢印参照)の上流側にスロットルボディ36が設けられている。いずれも図示を省略するが、スロットルボディ36よりも吸気方向の上流側には、エアクリーナや燃料噴射装置が設けられており、エアクリーナを介して導入された空気が燃料噴射装置から噴射された燃料と混合されて、スロットルボディ36に導入されるように構成されている。
【0038】
スロットルボディ36はアルミ製であり、インテーク通路30の上流側にスロットル通路37を形成しており、スロットル通路37内にはスロットルバルブ40が設けられている。スロットルボディ36には、上流側の端面から下流側の端面まで丸穴(図示せず)が3箇所に穿設されている。
【0039】
スロットルバルブ40は、スロットル通路37に架設される回転軸41と、この回転軸41に軸支される円板状の弁体42と、を備えている。なお、図4では、スロットルバルブ40が全閉状態にある場合の弁体42の位置を実線で示し、スロットルバルブ40が全開状態にある場合の弁体42の位置を二点鎖線で示している。
【0040】
回転軸41は、図2に示されるモータ43と接続され、モータ43の左方には、モータ43と同軸上にスロットルポジションセンサ44が設けられている。回転軸41はスロットルプーリ45と接続され、スロットルプーリ45には、スロットルケーブル46の一端が接続され、スロットルケーブル46の他端には、ハンドルバー9(図1参照)の右端部に回転可能に設けられたスロットルグリップ(図示せず)が接続されている。スロットルプーリ45の左方には、スロットルプーリ45と同軸上にアクセルポジションセンサ48が設けられている。
【0041】
図4に示されるように、インテークポート27よりも吸気方向の上流側且つスロットルボディ36よりも吸気方向の下流側には、インテークポート27とスロットルボディ36に挟まれるようにして、インテークパイプ50が設けられている。図5、図6に示されるように、インテークパイプ50は、弾性部材(本実施形態ではゴム)により形成されるパイプ本体51と、パイプ本体51の下流側外周部に設けられてアルミ系部材から成るシリンダヘッド取付板52と、パイプ本体51の上流側外周部に設けられて鉄系部材から成るスロットルボディ取付板53と、を備えている。
【0042】
パイプ本体51は円筒状を成しており、パイプ本体51の内周には、インテーク通路30とスロットル通路37の間にパイプ通路54が形成されている(図4参照)。パイプ通路54の下流側端部には下流側開口面55が形成され、パイプ通路54の上流側端部には上流側開口面56が形成されている。そして、スロットルバルブ40の全開時には、弁体42の先端部39が、上流側開口面56及び下流側開口面55よりも吸気方向の下流側に突出するように、各部材の配置が調整されている(図4参照)。換言すれば、スロットルバルブ40の全開時には、弁体42の先端部39がインテークポート27内に挿入されるように構成されている。
【0043】
パイプ本体51の下流側開口面55の周囲には、インテークポート27のフランジ面32に接合される下流側接合面57が形成されている。パイプ本体51の上流側開口面56の周囲には、スロットルボディ36のスロットル通路37の周囲に接合される上流側接合面58が形成されている。上記各接合面57、58には、断面V字状のシール部材59が環状に突設されており、このシール部材59により、インテークポート27とパイプ本体51の間、パイプ本体51とスロットルボディ36の間が円周状にシールされている。各シール部材59は、各接合面57、58から吸気方向と平行に突出している。シール部材59の内側には、環状の溝部60が設けられている。
【0044】
パイプ本体51の下流側開口面55の内径は、インテークポート27の開口部28の開口面61(以下、「インテークポート27の開口面61」と称する。)の内径よりも小さくなるように設定されている。そのため、パイプ本体51とインテークポート27の間には、パイプ本体51側を内側とする段差が形成されており(図4参照)、吸気方向に沿って吸気通路の内径が順次拡大されている。図6に示されるように、パイプ本体51の外周部の下流側には下流側溝部62が環状に凹設され、パイプ本体51の外周部の上流側には上流側溝部63が環状に凹設されている。
【0045】
シリンダヘッド取付板52は、パイプ本体51に溶着されている。シリンダヘッド取付板52の下流側の面は、パイプ本体51の下流側接合面57と面一になっている。シリンダヘッド取付板52は、パイプ本体51の下流側溝部62に嵌合する下流側環状部64と、隣接する一対の下流側環状部64の内側部分の一側(図5では下側)を連結する下流側連結部65と、隣接する一対の下流側環状部64の外側部分の他側(図5では上側)から延出する下流側突出部66と、を備えている。このように、隣接する一対のパイプ本体51に対応するシリンダヘッド取付板52は、一体に形成されている。
【0046】
図6に示されるように、各下流側環状部64は、シリンダヘッド取付板52のシリンダヘッド22への締結方向(図6の一点鎖線矢印X参照)において、シール部材59と重なる位置に配置されている。
【0047】
図5に示されるように、下流側連結部65及び各下流側突出部66には、シリンダヘッド22の各雌ネジ部35と対応する位置に、締結部としての丸穴(ザグリ穴)67が穿設されている。そして、丸穴67に貫挿させたボルト(図示せず)の雄ネジ部をシリンダヘッド22の各雌ネジ部35に螺合させることで、シリンダヘッド22とインテークパイプ50が連結されるようになっている。下流側連結部65の丸穴67はシリンダヘッド取付板52の中央部に位置し、各下流側突出部66の丸穴67はシリンダヘッド取付板52の両側部に位置し、各下流側突出部66の丸穴67と下流側連結部65の丸穴67を結ぶ線分はV字状を成している(図5の二点鎖線参照)。
【0048】
スロットルボディ取付板53は、パイプ本体51に溶接されている。スロットルボディ取付板53の上流側の面は、パイプ本体51の上流側接合面58と面一になっている。スロットルボディ取付板53は、パイプ本体51の上流側溝部63に嵌合する上流側環状部68と、隣接する一対の上流側環状部68の内側部分の一側(図5では上側)を連結する上流側連結部70と、隣接する一対の上流側環状部68の外側部分の他側(図5では下側)から延出する上流側突出部71と、を備えている。このように、隣接する一対のパイプ本体51に対応するスロットルボディ取付板53は、一体に形成されている。
【0049】
図6に示されるように、各上流側環状部68は、スロットルボディ36のスロットルボディ取付板53への締結方向(図6の一点鎖線矢印Y参照)において、シール部材59と重なる位置に配置されている。
【0050】
図5に示されるように、上流側連結部70及び各上流側突出部71には、スロットルボディ36の各丸穴(図示せず)と対応する位置に、締結部としての雌ネジ部72が穿設されている。そして、スロットルボディ36の各丸穴に貫挿させたボルト(図示せず)の雄ネジ部を各雌ネジ部72に螺合させることで、インテークパイプ50とスロットルボディ36が連結されて、スロットルボディ36がシリンダヘッド22に対してフローティング構造で取り付けられるようになっている。
【0051】
上流側連結部70の雌ネジ部72はスロットルボディ取付板53の中央部に位置し、各上流側突出部71の雌ネジ部72はスロットルボディ取付板53の両側部に位置し、各上流側突出部71の雌ネジ部72と上流側連結部70の雌ネジ部72を結ぶ線分は、シリンダヘッド取付板52の各丸穴67を結ぶ線分とは逆向きのV字状を成している(図5の二点鎖線参照)。また、インテークパイプ50の長手方向(本実施形態では左右方向)において、丸穴67と雌ネジ部72とが交互に配置されている。
【0052】
各上流側突出部71には、雌ネジ部72の近傍にピン穴73が穿設され、シリンダヘッド22には、ピン穴73と対応する位置にピン穴(図示せず)が設けられている。そして、スロットルボディ取付板53のピン穴73に貫挿させたノックピン(図示せず)をシリンダヘッド22のピン穴(図示せず)に挿入することで、シリンダヘッド22とスロットルボディ取付板53の位置決めが成されるように構成されている。
【0053】
図4に示されるように、シリンダヘッド22の前部には、各インテークポート27と対応してエキゾーストポート74が設けられている。各エキゾーストポート74には、エキゾースト通路75を介して燃焼室31と連通する開口部76が設けられている。各開口部76には、排気管77(図1参照)の前端部が接続され、排気管77の後端部に、マフラ16(図1参照)が接続されている。そして、燃焼室31からの排気が、エキゾースト通路75を介して開口部76から排気管77に流入し、マフラ16を介して車体後方に排出されるように構成されている。
【0054】
上記の如く構成されたものにおいて、スロットルグリップ(図示せず)の操作又はモータ43の駆動により弁体42を全閉位置から回転させてスロットルバルブ40を開放させると、スロットル通路37、パイプ通路54及びインテーク通路30を介して吸気(混合気)が燃焼室31内に導入される。
【0055】
本実施形態では、パイプ本体51の下流側開口面55の内径が、インテークポート27の開口面61の内径よりも小さくなるように設定されており、パイプ本体51側を内側とする段差が、パイプ本体51とインテークポート27の間に形成されている。そのため、上記した吸気の際に、パイプ本体51とインテークポート27の接合部分に吸気の流れを阻害するような段差が形成されるのを防止することが可能となり、インテークポート27への吸気を円滑に行うことが可能となる。特に、スロットルバルブ40の開度が小さい時点では、吸気の流れを阻害する段差による影響が相対的に大きくなるため、本実施形態のような構成を採用する効果が大きくなる。
【0056】
また、本実施形態では、スロットルバルブ40の全開時に、弁体42の先端部39がインテークパイプ50の上流側開口面56よりも下流側に突出するように構成されている。そのため、スロットルバルブ40の全開時を含めて常に弁体42がスロットルボディ36内に収納されるような場合と比較して、スロットルバルブ40をインテークポート27に接近させることが可能となる。これに伴って、スロットルバルブ40を開放させてから燃焼室31に吸気が届くまでの時間を短くすることが可能となり、シリンダヘッド22とスロットルボディ36の間にインテークパイプ50を介装する構成を採用しても、内燃機関12の応答性を良好に保つことが可能となる。また、重量物であるスロットルボディ36の重心をシリンダヘッド22側に寄せることが可能となり、内燃機関12におけるマスの集中化を図ることが可能となる。また、内燃機関12のコンパクト化を図ることも可能となる。
【0057】
更に、本実施形態では、スロットルバルブ40の全開時に、弁体42の先端部39がインテークパイプ50の下流側開口面55よりも下流側に突出するように構成されている。そのため、スロットルバルブ40をインテークポート27に一層接近させることが可能となり、内燃機関12の応答性を一層良好にするとともに、マスの集中化及びコンパクト化を図る効果を一層高めることが可能となる。
【0058】
また、ゴム製のパイプ本体51で形成されるパイプ通路54は、アルミ製のインテークポート27で形成されるインテーク通路30や、アルミ製のスロットルボディ36で形成されるスロットル通路37と比較して撥油性が低く、混合気に含まれる燃料が固着しやすい。そして、パイプ通路54に燃料が固着すると、これに伴って吸気抵抗が増大する。
【0059】
しかしながら、本実施形態では、スロットルバルブ40の全開時に、弁体42の先端部39がパイプ通路54を超えてインテーク通路30内に挿入される。これに伴って、弁体42の表面に付着した燃料は、吸気の影響を受けて弁体42の軸方向両側から先端部39に集められ、先端部39からインテーク通路30内に滴下することになる。そのため、パイプ通路54に滴下する燃料の量を少なくすることができ、パイプ通路54内における燃料の固着を抑制して、吸気抵抗の増大を防止することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、パイプ本体51がゴムで形成されている。このように、パイプ本体51をゴムで形成することで、シリンダヘッド22側及びスロットルボディ36側からの振動をパイプ本体51で吸収することが可能となる。即ち、パイプ本体51に、防振機能を持たせることが可能となる。これに伴って、上記した振動により、シリンダヘッド取付板52の丸穴67やスロットルボディ取付板53の雌ネジ部72等に破損が生じるのを抑制することが可能となる。
【0061】
また、パイプ本体51の各接合面57、58には、シール部材59が環状に突設されているため、防振機能と、吸気通路の一部を形成する機能と、シリンダヘッド取付板52及びスロットルボディ取付板53を保持する機能に加えて、各部材間のシール機能をパイプ本体51に持たせることが可能となる。
【0062】
特に、本実施形態では、シール部材59と重なる位置に各下流側環状部64及び各上流側環状部68が配置されている。そのため、各下流側環状部64とインテークポート27の間及び各上流側環状部68とスロットルボディ36の間で、それぞれシール部材59が挟まれることになる。これに伴って、シール部材59とインテークポート27の面圧及びシール部材59とスロットルボディ36の面圧を、効果的に高めることが可能となる。
【0063】
また、シリンダヘッド取付板52をアルミ系部材で形成しているため、シリンダヘッド取付板52を同一の厚みの鉄系部材で形成する場合と比較して、シリンダヘッド取付板52を軽量化することが可能となる。なお、このようにアルミ系部材でシリンダヘッド取付板52を形成する場合でも、シリンダヘッド22に形成される雌ネジ部35の長さを通常より長くすることで、シリンダヘッド22とインテークパイプ50の締結部分の強度を十分に高めることが可能となる。
【0064】
また、スロットルボディ取付板53を鉄系部材で形成しているため、スロットルボディ取付板53を同一の厚みのアルミ系部材で形成する場合と比較して、スロットルボディ取付板53の剛性を高めることが可能となる。これに伴って、スロットルボディ取付板53に設けられる雌ネジ部72の破損を防止することが可能となる。このような構成は、特に高出力の内燃機関12に有効に適用される。
【0065】
また、スロットルボディ取付板53を鉄系部材で形成することで、アルミ系部材でスロットルボディ取付板53を形成する場合よりも厚みを薄くしても、必要とされる強度を得ることが可能となる。これに伴って、インテークパイプ50自体の厚みを薄くことが可能となり、内燃機関12の小型化にも有利である。
【0066】
また、上記の如くインテークパイプ50の厚みを薄くすることで、撥油性の低いゴム製のパイプ本体51で形成されるパイプ通路54の長さを短くすることが可能となり、これに伴って、吸気抵抗の防止効果を高めることが可能となる。また、ゴム製のパイプ本体51の長さを短くすることで、スロットルボディ36のような重量物をシリンダヘッド22に取り付ける場合でも、パイプ本体51の弾性変形量を小さくすることができる。これに伴って、スロットルボディ36と他の部材の干渉を抑制することが可能となり、上記した干渉を抑制するための固定構造を別途設ける必要が無くなり、前記したフローティング構造の実現が可能となる。
【0067】
本実施形態では上記のように、スロットルボディ取付板53を鉄系部材で形成するとともにシリンダヘッド取付板52をアルミ系部材で形成し、これらの部材をゴム製のパイプ本体51に溶着することで、スロットルボディ取付板53の破損を防ぎつつ、インテークパイプ50の重量アップを最小限に抑えることを可能としている。
【0068】
また、インテークパイプ50の構造を「金属−ゴム−金属」の三層構造とし、シリンダヘッド22とシリンダヘッド取付板52、スロットルボディ取付板53とスロットルボディ36をそれぞれボルトで締結しているため、各部材の締結位置の精度を高めることが可能となる。また、ノックピンを使用してシリンダヘッド22とスロットルボディ取付板53の位置決めを行っているため、各部材の締結位置の精度を一層高めることが可能となる。これに伴って、インテークポート27とインテークパイプ50の間、インテークパイプ50とスロットルボディ36の間に段差や隙間が生じにくくなり、吸気抵抗に伴う縮流の発生を防止して、実質的な吸気通路の断面積を大きくすることができる。そのため、内燃機関12の出力を増大させることが可能となる。
【0069】
また、シリンダヘッド取付板52の各丸穴67を結ぶ線分がV字状を成し、スロットルボディ取付板53の各雌ネジ部72を結ぶ線分が各丸穴67を結ぶ線分とは逆向きのV字状を成すように構成されている。そのため、シリンダヘッド22とインテークパイプ50、インテークパイプ50とスロットルボディ36をそれぞれ強固に締結することが可能となり、スロットルボディ36側又はシリンダヘッド22側からの振動が生じた場合でも、シリンダヘッド22によりスロットルボディ36を安定して保持することが可能となる。また、各丸穴67をV字状に配置することで、シリンダヘッド22のボス25と丸穴67とが互いに干渉しないレイアウトを実現することが可能となる。
【0070】
また、一対のパイプ本体51に対応するシリンダヘッド取付板52とスロットルボディ取付板53をそれぞれ一体形成することで、2個のインテークポート27に対して1個のインテークパイプ50で対応することが可能となる。これに伴って、2個のインテークポート27に対して2個のインテークパイプ50で対応する場合に少なくとも4箇所ずつ必要となる丸穴67と雌ネジ部72を3箇所ずつに減らすことが可能となり、部品点数の削減及び軽量化を図ることが可能となる。
【0071】
本実施形態では、パイプ本体51の下流側開口面55の内径を、インテークポート27の開口面61の内径よりも小さくしたが、他の異なる実施形態では、パイプ本体51の下流側開口面55の内径を、インテークポート27の開口面61の内径と同一としても良い。この場合にも、縮流の発生を抑制して、内燃機関12の出力の増大を図ることが可能となる。
【0072】
本実施形態では、並列4気筒型の内燃機関12に本発明を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、単気筒型、並列2気筒型、V型等の他の異なるタイプの内燃機関12に本発明を適用しても良い。
【0073】
本実施形態では、オンロード型の自動二輪車1の内燃機関12に本発明を適用したが、他の異なる実施形態では、オフロード型、スクータ等の自動二輪車1に本発明の構成を適用しても良い。また、ATV(不整地走行車両)、自動車(四輪車)、雪上車、船外機等の内燃機関12に、本発明の構成を適用することも可能である。即ち、本発明は、4サイクルレシプロエンジン全般に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
12 内燃機関
22 シリンダヘッド
27 インテークポート
36 スロットルボディ
39 先端部
40 スロットルバルブ
42 弁体
50 インテークパイプ
51 パイプ本体
52 シリンダヘッド取付板
53 スロットルボディ取付板
55 下流側開口面
56 上流側開口面
57 下流側接合面
58 上流側接合面
59 シール部材
61 開口面
67 丸穴(締結部)
72 雌ネジ部(締結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに形成されるインテークポートよりも上流側に位置し、弁体の回転に伴って開閉するスロットルバルブを有するスロットルボディと、前記インテークポートよりも上流側且つ前記スロットルボディよりも下流側に設けられるインテークパイプと、を備えた内燃機関の吸気構造であって、
前記スロットルバルブの全開時に、前記弁体の先端部が前記インテークパイプの上流側開口面よりも下流側に突出することを特徴とする内燃機関の吸気構造。
【請求項2】
前記スロットバルブの全開時に、前記弁体の先端部が前記インテークパイプの下流側開口面よりも下流側に突出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項3】
前記インテークパイプの下流側開口面の内径は、前記インテークポートの開口面の内径と同一又は前記インテークポートの開口面の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項4】
前記インテークパイプは、
弾性部材から成るパイプ本体と、
該パイプ本体の下流側外周部に設けられてアルミ系部材から成るシリンダヘッド取付板と、
前記パイプ本体の上流側外周部に設けられて鉄系部材から成るスロットルボディ取付板と、を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項5】
前記パイプ本体には、前記インテークポートとの接合面及び前記スロットルボディとの接合面に、シール部材が環状に突設されていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項6】
隣接する一対のパイプ本体に対応するシリンダヘッド取付板が一体形成され、該一体形成されたシリンダヘッド取付板には、両側部と中央部にそれぞれシリンダヘッドとの締結部が設けられ、該両側部の締結部と該中央部の締結部とを結ぶ線分がV字状を成し、
前記一対のパイプ本体に対応するスロットルボディ取付板が一体形成され、該一体形成されたスロットルボディ取付板には、両側部と中央部にそれぞれスロットルボディとの締結部が設けられ、該両側部の締結部と該中央部の締結部とを結ぶ線分が、前記シリンダヘッド取付板の各締結部を結ぶ線分とは逆向きのV字状を成すことを特徴とする請求項4又は5に記載の内燃機関の吸気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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