説明

内燃機関の潤滑装置及び方法

【課題】内燃機関の潤滑の必要な部品に空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプの仕事量を低減する技術を提供する。
【解決手段】内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータ11によりクランキングしている間において、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませ、スタータモータ11の仕事によって動作するオイルポンプ3で送り出された空気を含んだオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給せずにオイルパン2に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の潤滑装置及び内燃機関の潤滑方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプにオイルを供給する吸込通路に、オイルに空気を導入する機構を設けた技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。これによって、オイルを圧送するオイルポンプにオイルと共に空気を送り込み、オイルポンプによって空気が断熱的に圧縮されることによって空気の温度を上昇させ、この温度上昇した空気によりオイルの温度を上昇させ、内燃機関を速やかに暖機する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−195016号公報
【特許文献2】特開2005−188612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術では、空気を含ませたオイルは、内燃機関のシリンダブロックやシリンダヘッドの潤滑の必要な部品に供給されるようになっていた。空気を含ませたオイルが潤滑の必要な部品に供給されると、潤滑の必要な部品の摺動部から異音が生じてしまう場合があった。また、空気を含ませたオイルが潤滑の必要な部品の一つである動弁機構のラッシュアジャスタに供給されると、ラッシュアジャスタが作動不良を起こし、所望の動弁制御ができない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、内燃機関の潤滑の必要な部品に空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプの仕事量を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関の機関始動時にクランキングするスタータモータと、
オイル貯留部のオイルを吸い込み、内燃機関の潤滑の必要な部品にオイルを供給するオイルポンプであって、内燃機関のクランクシャフトの駆動に常に連動して動作する機械式のオイルポンプと、
前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませる空気含入手段と、
前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すオイル還流手段と、
内燃機関の機関始動時の少なくとも前記スタータモータによりクランキングしている間において、前記空気含入手段によって前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませ、前記スタータモータの仕事によって動作する前記オイルポンプで送り出された空気を含んだオイルを前記オイル還流手段で前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻す制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の潤滑装置である。
【0007】
本発明では、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータによりクランキングしている間は、空気を含ませたオイルをスタータモータの仕事によって動作するオイルポンプで送り出す。オイルは空気を含ませると粘度が低下するため、この間のオイルポンプの
仕事量を低減させることができる。ここで、オイルポンプは内燃機関のクランクシャフトの駆動に常に連動して動作するので、スタータモータによりクランキングしている間というのは、スタータモータがオイルポンプを動作させている。よって、本発明によると、オイルポンプの仕事量を低減することによって、スタータモータによりクランキングしている間のスタータモータの仕事量を低減させることができる。
【0008】
また、本発明では、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータによりクランキングしている間は、オイルポンプで送り出した空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずにオイル貯留部に戻す。これによると、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品で異音や作動不良が発生してしまうことを回避することができる。
【0009】
このように本発明によると、内燃機関の潤滑の必要な部品に空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプの仕事量を低減することができる。
【0010】
前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧を検出する油圧検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記スタータモータによるクランキングが終了すると前記空気含入手段による前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを停止させ、
前記空気含入手段による前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを停止させた後、前記油圧検出手段で検出する前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧が、オイルに空気が含まれなくなると検出される所定圧以上となる場合に、前記オイル還流手段による前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すことを停止させ、前記オイルポンプで送り出されたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給するとよい。
【0011】
ここで、所定圧のオイルの油圧とは、それ以上の油圧となっていれば、オイルに空気が含まれなくなり検出される油圧である。
【0012】
本発明では、スタータモータによるクランキングが終了後にオイルに空気が含まれなくなると、オイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給する。本発明によると、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品で異音や作動不良が発生してしまうことを回避することができる。
【0013】
オイルの粘度を検出するオイル粘度検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記オイル粘度検出手段が検出するオイルの粘度が、前記スタータモータの仕事量を低減させるために前記オイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる所定粘度以上となる場合に、前記空気含入手段によって前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませるとよい。
【0014】
ここで、所定粘度のオイルの粘度とは、スタータモータの仕事量を低減させるためにオイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる粘度であり、それ以上の粘度となっていれば、スタータモータの仕事量を低減させるためにオイルポンプの仕事量を低減する必要がある粘度である。
【0015】
本発明では、オイルの粘度が所定粘度以上となり、スタータモータの仕事量を低減させるためにオイルポンプの仕事量を低減する必要がある場合に、オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませる。これによって、スタータモータが動作させているオイルポンプの
仕事量を低減することができ、結局スタータモータの仕事量を低減させることができる。
【0016】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
オイル貯留部のオイルをオイルポンプで吸い込み、内燃機関の潤滑の必要な部品にオイルを供給する内燃機関の潤滑方法であって、
内燃機関の機関始動時に、前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませ、前記オイルポンプで送り出された空気を含んだオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すことを特徴とする内燃機関の潤滑方法である。
【0017】
本発明では、内燃機関の機関始動時に、空気を含ませたオイルをオイルポンプで送り出す。オイルは空気を含ませると粘度が低下するため、この時のオイルポンプの仕事量を低減させることができる。
【0018】
また、本発明では、内燃機関の機関始動時に、オイルポンプで送り出した空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずにオイル貯留部に戻す。これによると、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品で異音や作動不良が発生してしまうことを回避することができる。
【0019】
このように本発明によると、内燃機関の潤滑の必要な部品に空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプの仕事量を低減することができる。
【0020】
前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませなくなった後、前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧が、オイルに空気が含まれなくなると検出される所定圧以上となる場合に、前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給するとよい。
【0021】
ここで、所定圧のオイルの油圧とは、それ以上の油圧となっていれば、オイルに空気が含まれなくなり検出される油圧である。
【0022】
本発明では、オイルに空気が含まれなくなると、オイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給する。本発明によると、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品で異音や作動不良が発生してしまうことを回避することができる。
【0023】
オイルの粘度が、前記オイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる所定粘度以上となる場合に、前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませるとよい。
【0024】
ここで、所定粘度のオイルの粘度とは、オイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる粘度であり、それ以上の粘度となっていれば、例えばオイルポンプを駆動するスタータモータの仕事量を低減させる等のために、オイルポンプの仕事量を低減する必要がある粘度である。
【0025】
本発明では、オイルの粘度が所定粘度以上となり、オイルポンプの仕事量を低減する必要がある場合に、オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませる。これによって、オイルポンプの仕事量を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、内燃機関の潤滑の必要な部品に空気を含ませたオイルを供給すること
無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプの仕事量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る内燃機関の潤滑装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係る始動時制御を示すタイムチャートである。
【図3】実施例1に係る始動時制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】変形例に係る内燃機関の潤滑装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0029】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関の潤滑装置の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関の潤滑装置1は、内燃機関において、オイル貯留部であるオイルパン2に貯留したオイルを、内燃機関におけるシリンダブロックやシリンダヘッド等の潤滑の必要な部品Aに供給するものである。内燃機関の潤滑装置1は、オイルパン2と、オイルポンプ3と、ポンプ上流側メインオイル通路4と、空気含入通路5と、ポンプ下流側メインオイル通路6と、ポンプ下流側オイル還流通路7と、を備える。
【0030】
オイルパン2は、オイル(潤滑油)を貯留している。オイルパン2内には、貯留されたオイルの粘度を検出するオイル粘度センサ8が配置されている。オイル粘度センサ8が、本発明のオイル粘度検出手段に包含される。ポンプ上流側メインオイル通路4は、オイルパン2に吸込口がありオイルポンプ3に排出口がある通路であり、オイルパン2に貯留されたオイルをオイルポンプ3に送り出す。このポンプ上流側メインオイル通路4の途中に、空気含入通路5が接続されている。また、空気含入通路5との接続部よりも上流側のポンプ上流側メインオイル通路4には、ポンプ上流側メインオイル通路4を開閉するバルブ9が配置されている。空気含入通路5は、大気空間に開放された吸込口があり下流においてポンプ上流側メインオイル通路4と接続されている。この空気含入通路5の途中には、空気含入通路5を開閉するバルブ10が配置されている。空気含入通路5及びバルブ10が、本発明の空気含入手段に含まれる。
【0031】
オイルポンプ3は、オイルパン2のオイルを吸い込み、内燃機関の潤滑の必要な部品Aにオイルを供給するものであって、内燃機関のクランクシャフトの駆動に常に連動して動作する機械式のオイルポンプである。このため、オイルポンプ3は、内燃機関の機関始動時にクランキングするスタータモータ11に連動し、スタータモータ11によりクランキングしている間は、スタータモータ11の仕事で動作する。オイルポンプ3には、オイルを吸い込むポンプ上流側メインオイル通路4と、オイルを送り出すポンプ下流側メインオイル通路6と、が接続されている。
【0032】
ポンプ下流側メインオイル通路6の途中から、ポンプ下流側オイル還流通路7が分岐している。ポンプ下流側オイル還流通路7との接続部よりも下流のポンプ下流側メインオイル通路6には、ポンプ下流側メインオイル通路6を開閉するバルブ12が配置されている。バルブ12よりも下流のポンプ下流側メインオイル通路6は、内燃機関におけるシリンダブロックやシリンダヘッド等の潤滑の必要な部品Aに通じている。一方、ポンプ下流側オイル還流通路7には、オイルポンプ3で送り出されたオイルの油圧を検出する油圧センサ13が配置されている。油圧センサ13が、本発明の油圧検出手段に包含される。油圧センサ13よりも下流のポンプ下流側オイル還流通路7には、ポンプ下流側オイル還流通路7を開閉するバルブ14が配置されている。バルブ14よりも下流のポンプ下流側オイル還流通路7は、内燃機関におけるクランクケースB内に通じており、そこからオイルパ
ン2へオイルを戻すようになっている。このため、ポンプ下流側オイル還流通路7を流通したオイルは、内燃機関におけるシリンダブロックやシリンダヘッド等の潤滑の必要な部品Aに供給されることはない。ポンプ下流側オイル還流通路7及びバルブ14が、本発明のオイル還流手段に含まれる。
【0033】
この内燃機関の潤滑装置1には、ECU(電子制御ユニット)15が併設されている。ECU15には、オイル粘度センサ8、油圧センサ13等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU15に入力されるようになっている。一方、ECU15には、バルブ9,10,12,14及びスタータモータ11が電気配線を介して接続されており、ECU15によりこれらの機器が制御される。
【0034】
(始動時制御)
ところで、内燃機関の機関始動時にスタータモータによるクランキングで必要なトルクは、気温が低い程大きくなる。これは、オイルの粘度が影響しており、オイルの粘度は温度が低い程粘性が高くなるためである。よって、極低温下でのフリクショントルクは暖機完了後の必要トルクの約15倍以上になり得る。このトルクがスタータモータの出力できる最大トルクを超えてしまえば、内燃機関の始動ができなくなるので、このトルクを低減することが望ましい。このような内燃機関の機関始動時にスタータモータによるクランキングで必要なトルクのうち、オイルポンプを作動させるためのトルクが占める割合は大きい。よって、オイルポンプを作動させるためのトルクを低減できれば、必然的にクランキングで必要なトルクを低減できる。
【0035】
そこで、本発明者は、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータ11によりクランキングしている間において、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませることを見出した。オイルは空気を含ませると粘度が低下するため、スタータモータ11によりクランキングしている間のオイルポンプ3の仕事量を低減させることができる。これによって、クランキングで必要なトルクの低減を図ろうというものである。
【0036】
しかし、空気を含んだオイルが内燃機関のシリンダブロックやシリンダヘッドの潤滑の必要な部品Aに供給されるようになっていると、潤滑の必要な部品Aの摺動部から異音が生じてしまう場合がある。また、空気を含ませたオイルが潤滑の必要な部品Aの一つである動弁機構のラッシュアジャスタに供給されると、ラッシュアジャスタが作動不良を起こし、所望の動弁制御ができない場合がある。
【0037】
そこで、本実施例では、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータ11によりクランキングしている間において、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませ、スタータモータ11の仕事によって動作するオイルポンプ3で送り出された空気を含んだオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給せずにオイルパン2に戻すようにした。
【0038】
これによると、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータ11によりクランキングしている間は、空気を含ませたオイルをスタータモータ11の仕事によって動作するオイルポンプ3で送り出す。オイルは空気を含ませると粘度が低下するため、この間のオイルポンプ3の仕事量を低減させることができる。ここで、オイルポンプ3は内燃機関のクランクシャフトの駆動に常に連動して動作するので、スタータモータ11によりクランキングしている間というのは、スタータモータ11がオイルポンプ3を動作させている。よって、オイルポンプ3の仕事量を低減することによって、スタータモータ11によりクランキングしている間のスタータモータ11の仕事量を低減させることができる。
【0039】
また、内燃機関の機関始動時の少なくともスタータモータ11によりクランキングしている間は、オイルポンプ3で送り出した空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な
部品Aに供給せずにオイルパン2に戻す。これによると、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品Aで異音が発生してしまうことを回避することができると共に、ラッシュアジャスタが作動不良を起こし所望の動弁制御ができないことを回避することができる。
【0040】
このように、内燃機関の潤滑の必要な部品Aに空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプ3の仕事量を低減することができる。したがって、スタータモータ11によるクランキングで必要なトルクを低減することができる。
【0041】
また、本実施例では、スタータモータ11によるクランキングが終了するとオイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませることを停止させ、その後、オイルポンプ3で送り出されたオイルの油圧が、オイルに空気が含まれなくなると検出される所定圧以上となる場合に、オイルポンプ3で送り出されたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給せずにオイルパン2に戻すことを停止させ、オイルポンプ3で送り出されたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給するようにした。
【0042】
ここで、所定圧のオイルの油圧とは、それ以上の油圧となっていれば、オイルに空気が含まれなくなり検出される油圧である。
【0043】
これによると、スタータモータ11によるクランキングが終了後にオイルに空気が含まれなくなると、オイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給する。よって、空気を含ませたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給しないので、内燃機関の潤滑の必要な部品Aで異音や作動不良が発生してしまうことを回避することができる。
【0044】
また、本実施例では、スタータモータ11によりクランキングしている間において、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませる場合として、オイルの粘度が、スタータモータ11の仕事量を低減させるためにオイルポンプ3の仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる所定粘度以上となる場合に、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませるようにした。
【0045】
ここで、所定粘度のオイルの粘度とは、スタータモータ11の仕事量を低減させるためにオイルポンプ3の仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる粘度であり、それ以上の粘度となっていれば、スタータモータ11の仕事量を低減させるためにオイルポンプ3の仕事量を低減する必要がある粘度である。
【0046】
これによると、オイルの粘度が所定粘度以上となり、スタータモータ11の仕事量を低減させるためにオイルポンプ3の仕事量を低減する必要がある場合に、オイルポンプ3に流入するオイルに空気を含ませる。これによって、スタータモータ11が動作させているオイルポンプ3の仕事量を低減することができ、結局スタータモータ11の仕事量を低減させることができる。
【0047】
(具体的制御)
図2に示すタイムチャートを用いて具体的な始動時制御を説明する。図2は、始動時制御を示すタイムチャートである。
【0048】
時刻t1でイグニッションSWがオンされ、内燃機関の機関始動が開始されると、オイルパン2内のオイル粘度センサ8によって貯留されたオイルの粘度を検出する。オイルの粘度が所定粘度以上であった場合には、時刻t2でバルブ10を開弁して空気含入通路5から空気を吸い込み可能にすると共に、バルブ14を開弁してポンプ下流側オイル還流通
路7から空気を含ませたオイルを流出させクランクケースB内を経た当該オイルをオイルパン2へ戻すことを可能にする。
【0049】
その後、時刻t3でスタータモータ11を始動させてクランキングを開始する。これにより、時刻t3から始動したスタータモータ11に連動してオイルポンプ3も駆動され、空気を含ませたオイルがオイルポンプ3によって送り出される。
【0050】
そして、内燃機関が完爆した時刻t4でスタータモータ11を停止させると共に、バルブ10を閉弁して空気含入通路5から空気を吸い込めないようにし、バルブ9を開弁してポンプ上流側メインオイル通路4にオイルパン2のオイルを吸い込ませる。その後、油圧センサ13によって検出するオイルの油圧が所定圧以上となることを検出した時刻t5でバルブ14を閉弁してポンプ下流側オイル還流通路7からオイルを流出させクランクケースBを経たオイルをオイルパン2へ戻すことを停止させると共に、バルブ12を開弁してポンプ下流側メインオイル通路6へ空気の含まれなくなったオイルを送り出し、内燃機関におけるシリンダブロックやシリンダヘッド等の潤滑の必要な部品Aに空気の含まれなくなったオイルを供給する。これにより、内燃機関の機関始動が終了する。
【0051】
(始動時制御ルーチン)
ECU15における始動時制御ルーチンについて、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。図3は、始動時制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎に繰り返しECU15によって実行される。本ルーチンを実行するECU15が、本発明の制御手段に含まれる。
【0052】
図3に示すルーチンは、図2に示す時刻t1でイグニッションSWがオンされると開始される。本ルーチンが開始されると、S101では、オイルパン2内のオイル粘度センサ8によって貯留されたオイルの粘度が所定粘度以上であるか否かを判別する。S101において、肯定判定された場合には、S102へ移行する。一方、S101において、否定判定された場合には、本ルーチンを一旦終了する。
【0053】
S102では、図2に示す時刻t2でバルブ10,14を開弁すると共に、バルブ9,12を閉弁状態に維持する。S103では、図2に示す時刻t3でスタータモータ11を始動させてクランキングを開始する。時刻t3から始動したスタータモータ11に連動してオイルポンプ3も駆動され、空気を含ませたオイルがオイルポンプ3によって送り出される。これにより、オイルポンプ3に流入するポンプ上流側メインオイル通路4のオイルに空気を含ませ、スタータモータ11の仕事によって動作するオイルポンプ3で送り出された空気を含んだオイルをポンプ下流側オイル還流通路7へ送出し、内燃機関の潤滑の必要な部品Aに供給せずにオイルパン2に戻すようにする。
【0054】
S104では、内燃機関が完爆したか否かを判別する。S104において、肯定判定された場合には、S105へ移行する。S104において、否定判定された場合には、本ステップへ戻る。S105では、図2に示す時刻t4でスタータモータ11を停止させると共に、バルブ10を閉弁し、バルブ9を開弁する。これにより、オイルに空気を含ませなくなるが、未だポンプ上流側メインオイル通路4には空気を含ませたオイルが流通しているので、その空気を含ませたオイルはポンプ下流側オイル還流通路7へ送出する。
【0055】
S106では、油圧センサ13によって検出するオイルの油圧が所定圧以上となるか否かを判別する。S106において、肯定判定された場合には、S107へ移行する。S106において、否定判定された場合には、本ステップへ戻る。S107では、図2に示す時刻t5でバルブ14を閉弁し、バルブ12を開弁する。これにより、ポンプ下流側オイル還流通路7からオイルを流出させることを停止させ、ポンプ下流側メインオイル通路6
へ空気の含まれなくなったオイルを送出する。本ステップの処理の後、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
以上の本ルーチンであると、内燃機関の潤滑の必要な部品Aに空気を含ませたオイルを供給すること無しに、内燃機関の機関始動時にオイルに空気を含ませてオイルポンプ3の仕事量を低減することができる。
【0057】
<変形例>
図4は、本発明の変形例に係る内燃機関の潤滑装置の概略構成を示す図である。図4に示す内燃機関の潤滑装置1は、電動オイルポンプ16でオイルパン2のオイルをポンプ下流側メインオイル通路6へ送出できるようにしたものである。電動オイルポンプ16の配置された通路17には、当該通路17を開閉するバルブ18が配置される。その他の構成は、図1に示す内燃機関の潤滑装置1と同様である。そして、本変形例では、電動オイルポンプ16に実施例1のオイル粘度センサの役割を果たさせる。これは、電動オイルポンプ16がオイルを送り出す際に必要とする駆動電圧が、オイルの粘度と相関関係を有するからである。よって、実施例1と同様に時刻t1で電動オイルポンプ16を駆動させてその駆動電圧からオイルの粘度を検出する。電動オイルポンプ16が、本発明のオイル粘度検出手段に包含される。本変形例によっても、実施例1と同様の制御が実現でき、同様な効果を奏することができる。
【0058】
<その他>
本発明に係る内燃機関の潤滑装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。また、上記実施例は、内燃機関の潤滑方法の実施例でもある。
【符号の説明】
【0059】
1 潤滑装置
2 オイルパン
3 オイルポンプ
4 ポンプ上流側メインオイル通路
5 空気含入通路
6 ポンプ下流側メインオイル通路
7 ポンプ下流側オイル還流通路
8 オイル粘度センサ
9,10,12,14 バルブ
11 スタータモータ
13 油圧センサ
16 電動オイルポンプ
17 通路
18 バルブ
A 内燃機関の潤滑の必要な部品
B クランクケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の機関始動時にクランキングするスタータモータと、
オイル貯留部のオイルを吸い込み、内燃機関の潤滑の必要な部品にオイルを供給するオイルポンプであって、内燃機関のクランクシャフトの駆動に常に連動して動作する機械式のオイルポンプと、
前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませる空気含入手段と、
前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すオイル還流手段と、
内燃機関の機関始動時の少なくとも前記スタータモータによりクランキングしている間において、前記空気含入手段によって前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませ、前記スタータモータの仕事によって動作する前記オイルポンプで送り出された空気を含んだオイルを前記オイル還流手段で前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻す制御手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の潤滑装置。
【請求項2】
前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧を検出する油圧検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記スタータモータによるクランキングが終了すると前記空気含入手段による前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを停止させ、
前記空気含入手段による前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを停止させた後、前記油圧検出手段で検出する前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧が、オイルに空気が含まれなくなると検出される所定圧以上となる場合に、前記オイル還流手段による前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すことを停止させ、前記オイルポンプで送り出されたオイルを内燃機関の潤滑の必要な部品に供給することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑装置。
【請求項3】
オイルの粘度を検出するオイル粘度検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記オイル粘度検出手段が検出するオイルの粘度が、前記スタータモータの仕事量を低減させるために前記オイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる所定粘度以上となる場合に、前記空気含入手段によって前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の潤滑装置。
【請求項4】
オイル貯留部のオイルをオイルポンプで吸い込み、内燃機関の潤滑の必要な部品にオイルを供給する内燃機関の潤滑方法であって、
内燃機関の機関始動時に、前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませ、前記オイルポンプで送り出された空気を含んだオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給せずに前記オイル貯留部に戻すことを特徴とする内燃機関の潤滑方法。
【請求項5】
前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませなくなった後、前記オイルポンプで送り出されたオイルの油圧が、オイルに空気が含まれなくなると検出される所定圧以上となる場合に、前記オイルポンプで送り出されたオイルを前記内燃機関の潤滑の必要な部品に供給することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の潤滑方法。
【請求項6】
オイルの粘度が、前記オイルポンプの仕事量を低減する必要があるか無いかの閾値となる所定粘度以上となる場合に、前記オイルポンプに流入するオイルに空気を含ませることを特徴とする請求項4又は5に記載の内燃機関の潤滑方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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