説明

内燃機関用すべり軸受

【課題】クランク軸を支承する内燃機関のすべり軸受において、油溝付き半円筒形状軸受の円周方向中央部近傍における軸受摺動面を含む軸受摺動面全体に潤滑油を供給すること。
【解決手段】半円筒形状軸受10の円周方向長さの中央部を円周方向角度0°位置としたとき、軸受内周面の少なくとも円周方向角度−45°位置から円周方向角度+45°位置までの範囲に亘って、油溝16が形成される。油溝16の溝底面が、軸受内周面の少なくとも円周方向角度−45°位置から円周方向角度+45°位置までの範囲で、平坦部なしに連続的に起伏する複数の山16Aと複数の谷16Bから成る凹凸面になされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の半円筒形状軸受を円筒形に組み合わせてクランク軸を支承する内燃機関のすべり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクランク軸用すべり軸受は、2つの半円筒形状軸受を組み合わせて円筒形にしたものを使用している。一対の半円筒形状軸受のうちの少なくとも一方の軸受内周面に、円周方向油溝が形成され、円周方向油溝を経てクランクピン外周面に対する給油が行なわれる。この円周方向油溝は、一定深さにするのが一般的である(特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年になって、潤滑油供給用オイルポンプの小型化に対応して、軸受端部からの潤滑油の漏れ量を減少させるべく、軸受中央部から軸受の端部に向かって油溝断面積を減少させる絞り部を形成し、あるいはまた、潤滑油供給の油穴から周方向端部の間の溝底面に突起による絞り部を形成し、もって供給潤滑油圧力を低減化可能なすべり軸受が用いられるようになってきた(特許文献2〜4参照)。
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】特開平4−219521号公報
【特許文献3】特開2005−76755号公報
【特許文献4】特開2006−144913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、近年における内燃機関の高速化、潤滑油の低粘度化により、従来公知の油溝深さが一定のすべり軸受では、特に半円筒形状軸受の円周方向中央付近における軸受摺動面の潤滑が十分でなくなり、軸受損傷が生じ易くなってきた。潤滑油漏洩量の減少を図った前記特許文献に示されるいずれのすべり軸受も、程度の差はあれ、半円筒形状軸受の円周方向中央付近における軸受摺動面の潤滑が不十分であるという同様の問題が生じる。
かくして、本発明の目的は、一対の半円筒形状軸受のうち、少なくとも一方の半円筒形状軸受の内周面に円周方向に延在する油溝が形成されている前記一対の半円筒形状軸受を円筒形に組み合わせてクランク軸を支承する内燃機関のすべり軸受において、油溝付き半円筒形状軸受の円周方向中央部近傍における軸受摺動面を含む軸受摺動面全体に潤滑油を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に照らし、本発明により、以下のすべり軸受が提供される。
一対の半円筒形状軸受のうち、少なくとも一方の半円筒形状軸受の内周面に円周方向に延在する油溝が形成されている前記一対の半円筒形状軸受を円筒形に組み合わせてクランク軸を支承する内燃機関のすべり軸受において、
前記半円筒形状軸受の円周方向長さの中央部を円周方向角度0°位置としたとき、軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲に亘って、前記油溝が形成されており、
前記油溝の溝底面が、軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲で、平坦部なしに連続的に起伏する複数の山と複数の谷から成る凹凸面になされていることを特徴とする内燃機関のすべり軸受。
【0006】
本発明の第一の実施形態によれば、油溝が、半円筒形状軸受の円周方向全長に亘って軸受内周面に形成される。
本発明の第二の実施形態によれば、油溝の円周方向長さが、半円筒形状軸受の円周方向全長よりも短く、該油溝の円周方向両端部の少なくとも一方が、半円筒形状軸受の円周方向端面に達しないように形成される。
本発明の第三の実施形態によれば、前記凹凸面が、前記円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲の溝底面にのみ形成される。
本発明の第四の実施形態によれば、前記凹凸面が、油溝の円周方向全長に亘って溝底面に形成される。
本発明の第五の実施形態によれば、軸受内周面すなわち軸受摺動面と油溝の最深部とで規定される溝深さについて、半円筒形状軸受の円周方向長さの中央部である円周方向角度0°位置における溝深さ(円周方向角度0°位置に最も近く形成される谷部の深さを意味する)をd、円周方向の油溝両端部における溝深さ(円周方向の油溝両端部に最も近く形成される谷部の深さを意味する)をdとしたとき、油溝が、関係式d≦dを満たす。
本発明の第六の実施形態によれば、軸受内周面すなわち軸受摺動面と前記谷の深さとで規定される溝深さをH、前記凹凸面の高低差すなわち前記山の高さをhとしたとき、前記複数の山のうちの任意の山と、これに隣接する位置にある前記谷との寸法関係が、関係式0.15H≦h≦0.40Hによって規定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、油溝の溝底面を、前記軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲で、平坦部なしに連続的に起伏する複数の山と複数の谷から成る凹凸面にしており、油溝内を流れる潤滑油に、連続した緩やかな圧力変動が生じる。その結果、圧力が上昇する山部分の近傍で、軸受摺動面に潤滑油が供給されやすくなる。
また、本発明では、前記軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲に亘って、前記油溝を形成しており、軸受の主負荷部分である前記中央部近傍の軸受摺動面に潤滑油を十分に供給することができる。
さらに、本発明の一実施形態では、油溝の溝底面全体を凹凸面で形成し、油溝内の円滑な潤滑油の流れを保証することができる。
【0008】
本発明の一実施形態による構成では、軸受内周面すなわち軸受摺動面と、油溝の最深部とで規定される溝深さについて、半円筒形状軸受の円周方向長さの中央部である円周方向角度0°位置おける溝深さ(円周方向角度0°位置に最も近く形成される谷部の深さを意味する)をd、円周方向の油溝両端部における溝深さ(円周方向の油溝両端部に最も近く形成される谷部の深さを意味する)をdとしたとき、油溝が、関係式d≦dを満たす。油溝が、関係式がd<dを満たす場合には、前記中央部における油溝横断面積が、円周方向の油溝両端部における油溝横断面積に比して大きいため、前記中央部における油溝の溝底面が平坦面であると、該中央部の軸受摺動面に対する潤滑油の供給が相対的に不十分になるが(油圧が相対的に低いため)、前記軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲に亘って、油溝の溝底面を連続する凹凸面で形成することにより、前記中央部における油圧が高くなる。それによって、軸受周方向端部近傍における軸受幅方向端縁からの潤滑油の漏れ量を抑制しつつ、前記中央部の軸受摺動面に十分な潤滑油を供給できる。
【0009】
本発明の別の実施形態による構成では、軸受内周面すなわち軸受摺動面と、前記谷の最深部とで規定される溝深さをH、前記凹凸面の高低差すなわち前記山の高さをhとしたとき、前記油溝が、関係式0.15H≦h≦0.40Hを満たす。
この溝深さHと、前記山の高さhとの関係が0.15H>hであると、油溝内の潤滑油の圧力変動が小さ過ぎて、軸受摺動面に対する潤滑油の供給効果が不十分になる場合がある。0.15H≦hの場合には、油溝内の潤滑油の圧力変動が、従来の油溝の場合に比して増大し、軸受摺動面に対して十分量の潤滑油が供給される。
また、すべり軸受の円周方向油溝に対する潤滑油の供給は、まず、すべり軸受の外部からすべり軸受の油溝に対して行なわれるが、この時、潤滑油経路内に残留している異物が潤滑油と共に油溝内に進入する。異物は、油路切削加工時の金属加工屑や鋳造時の鋳砂等であり、これらは潤滑油の比重よりも大きいので、クランク軸の回転にともなう遠心力によって、主に溝底面に沿って転動する。しかるに、h>0.40H(凹凸の高低差大)であると、過度な圧力変動が生じ、軸受摺動面に損傷を与えるような大きな異物が潤滑油中で浮上し、潤滑油と共に軸受摺動面上に移動する可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、h≦0.40Hの関係を満たす構成にすれば、軸受摺動面に損傷を与えるような大きな異物が油溝内の潤滑油中で浮上するほどの過大な潤滑油の圧力変動が生じることがなく、潤滑油のみを摺動面上に供給することができる。
以下、添付図面を見ながら本発明の実施例および比較例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1、図2は、本発明の実施例1に係わる半円筒形状のすべり軸受10を示す。図1は、すべり軸受10の内周面を見た図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う断面図である。すべり軸受10は、その両端面14を、同じく半円筒形状のすべり軸受(図示せず)の両端面と突き合わせ、円筒形状体を構成して使用される。
すべり軸受10は、その内周面(軸受摺動面)12の幅方向中央部に、円周方向に延在する油溝16を有する。油溝16は、内周面の全長に亘って形成され、両端面14で溝端が開口されている。また、油溝16は、その溝底面が、平坦部なしに連続的に起伏する複数の山16Aと複数の谷16Bから成る凹凸面になされている。本実施例では、複数の谷16Bの最深部が、軸受中心(軸線)に対する半径rの円弧上にある。ここで、内周面(軸受摺動面)12を基準面とする油溝16の深さをH(これは、内周面12から谷16Bの最深部までの深さに等しい)とし、山の高さをh(本実施例では一定)としたとき、Hとhは、以下の関係式(1)を満たすように構成されている(関係式の意味は後で説明する)。
【0011】
0.15H≦h≦0.40H ……(1)
【0012】
すべり軸受10は以上のように形成されており、軸受壁を貫通して形成された図示されない油穴を通じて、油溝16内に潤滑油が供給され、軸受端面14側に向かって油溝16内を円周方向に流れる。その流動の間、溝底の凹凸面により圧力変動が起こり、潤滑油圧力が高くなる凸部(山16A)近傍で、軸受摺動面に潤滑油が供給される。
【0013】
なお、本実施例では、溝底の連続凹凸面を、油溝16の全長すなわち軸受内周面の全長に亘って形成したが、すべり軸受10の円周方向長さの中央部を円周方向角度0°位置としたとき、少なくとも軸受の主荷重部範囲である、軸受内周面の円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲に連続して形成してあればよい。
連続する谷16Bまたは山16Aのピッチは、軸受の径寸法により異なるが、軸受内周面の円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲で、4つ以上の山16Aを形成することが好ましい。
凹凸の高低差すなわち山の高さhは、油溝16内で十分に潤滑油の圧力変動が起き、軸受摺動面に十分な量の潤滑油を供給するために、溝深さHに対して15%以上(0.15H≦h)にすることが好ましい。また、軸受摺動面への異物の混入を生じ難くするために、山の高さhは、溝深さHに対して40%以下(h≦0.40H)にすることが特に好ましい。溝深さHおよび/または山の高さhが、軸受内周面の円周方向で変化する場合には、軸受円周方向における任意の山の高さhと、この山に隣接する谷部における溝深さHとが、数式1を満たすようにすればよい。
*具体的数値例: 軸受内径寸法45mm、溝深さHが0.8mmの溝を形成したすべり軸受の場合には凹凸の高低差すなわち山の高さhは0.12mm以上0.32mm以下とすることが好ましい。連続する谷16Bまたは山16Aのピッチは、軸受内周面の円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲で、4つ以上の山16Aを形成するように円周角度22.5°以下となるピッチとすることが好ましい。
【0014】
溝底に連続凹凸面を形成した油溝16の加工は、切削加工やプレス加工等の一般的な方法で行なうことができる。切削加工の場合には、切削カッターの回転軸中心を溝底凹凸に相当する軌跡を描くように変動させて形成することができる。溝深さH、および、溝幅寸法は、従来のすべり軸受と同様に内燃機関の軸受部分の仕様により決まるものであり、特に制約はない。また、従来のすべり軸受と同様に油溝の側面に面取部分を形成することもできる。
【実施例2】
【0015】
図3、図4は、本発明の実施例2に係わる半円筒形状のすべり軸受20を示す。図3は、すべり軸受20の内周面を見た図であり、図4は、図3におけるIV−IV線に沿う断面図である。すべり軸受10と同様に、すべり軸受20は、その内周面(軸受摺動面)22の幅方向中央部に、円周方向に延在する油溝26を有する。油溝26は、油溝16と違って、内周面の全長に亘って形成されておらず、溝端が軸受両端面24で開口されていない。このように、両端面24で溝端を開口させない構成を採用すると、溝端からの潤滑油漏れ量が減少し、主荷重負荷部である軸受円周方向長さの中央部における軸受摺動面に対する潤滑油の供給が十分に行なわれる。
【0016】
本実施例における溝底の連続凹凸面も、基本的には、油溝16の構造と同じであるが、油溝26が内周面の全長に亘って形成されていない点、および、内周面(軸受摺動面)22を基準面とする油溝26の深さHが、すべり軸受20の円周方向長さの中央部で最大で、両溝端に向かって次第に小さくなっている点で、油溝16の構造と異なる。この場合、溝深さHと、山の高さhとの関係は、軸受円周方向における任意の山の高さhと、この山に隣接する谷部における溝深さHとが数式1を満たすようになされる。
【実施例3】
【0017】
図5、図6は、本発明の実施例3に係わる半円筒形状のすべり軸受30を示す。図5は、すべり軸受30の内周面を見た図であり、図6は、図5におけるVI−VI線に沿う断面図である。すべり軸受30は、油溝36の溝端が軸受両端面34で開口されている点を除き、すべり軸受20とほぼ同様な油溝構造を有する。油溝36の溝深さHが、すべり軸受30の円周方向長さの中央部で最大で、両溝端に向かって次第に小さくなっていることにより、溝端からの潤滑油漏れ量が減少し、主荷重負荷部である軸受円周方向長さの中央部における軸受摺動面に対する潤滑油の供給が十分に行なわれる。
【0018】
以上、本発明の3つの実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されず、円周方向油溝は、その溝端が一方の軸受端面でのみ開口されている場合でもよく、油溝底面の各谷部を通る包絡線(図面上は包絡線であるが、実際には包絡面である)が、必ずしも一円弧形状である必要はなく、複数の円弧形状から成るものであってもよい。
また、従来のすべり軸受と同じく、本発明すべり軸受の厚さを、軸受円周方向の中央部から軸受端面に向かって次第に薄くなるように偏肉させてもよく、軸受円周方向端部の軸受摺動面側にクラッシュリリーフや面取りを形成してもよい。
【0019】
[比較例1]
図7、図8は、比較例1に係わる公知の半円筒形状すべり軸受40を示す。図7は、すべり軸受40の内周面を見た図であり、図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図である。すべり軸受40は、その内周面(軸受摺動面)42の幅方向中央部に、円周方向に延在する油溝46を有する。油溝46は、内周面の全長に亘って形成され、軸受両端面44で溝端が開口されている。油溝46の溝底面は、起伏のない平坦面(平滑面)である。
【0020】
[比較例2]
図9、図10は、比較例2に係わる半円筒形状すべり軸受50を示す。図9は、すべり軸受50の内周面を見た図であり、図10は、図9におけるX−X線に沿う断面図である。すべり軸受50は、その内周面(軸受摺動面)52の幅方向中央部に、円周方向に延在する油溝56を有する。油溝56は、内周面の全長に亘って形成され、軸受両端面54で溝端が開口されている。油溝56の底面は、溝両端部分を除く、中央領域の大部分が比較例1の油溝46と同様に起伏のない平坦面(平滑面)である。溝両端部分における油溝56の底面には、溝深さHの50%である高さhを有する各複数の隆起部58が形成され、他の箇所に比して溝横断面面積が小さくなっている。
【0021】
実施例1〜3と比較例1,2の比較
本発明の実施例は、円周方向油溝の溝底面を連続する凹凸面として形成しており、円周方向油溝内を流れる潤滑油に穏やかに圧力変動が生じて、軸受摺動面全周に亘って潤滑油を供給することができる。また、溝底面を連続的な凹凸面としたので、潤滑油の圧力変動が少なく潤滑油は円周方向溝内を円滑に流れ、潤滑油の圧力損失が少ない。
また、各実施例において、すべり軸受の円周方向長さの中央部を円周方向角度0°位置としたとき、少なくとも軸受の主荷重部範囲である、軸受内周面の円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲の溝底面に連続的な凹凸面を形成した場合にも、軸受主荷重部となる軸受中央部近傍に、十分な量の潤滑油を供給することができる。
さらに、凹凸の高低差(山の高さh)を、溝深さHの15%以上、40%以下(0.15H≦h≦0.40H)にすれば、円周方向溝内の潤滑油に急激な圧力変動を起こさせないので、軸受摺動面に損傷を与えるような大きな異物が潤滑油中で浮上し、潤滑油と共に軸受摺動面に混入する現象を防ぎながら、潤滑油のみを軸受摺動面に供給することができる。
比較例1は、円周方向油溝の溝底面が平滑であるため、円周方向溝内を流れる潤滑油に圧力変動が生じることがなく、軸受摺動面に十分な潤滑油が供給されない。
比較例2は、油溝内を円周方向に流れる潤滑油が、軸受の円周方向端部に近い油溝底に断続的に形成された隆起部近傍で局部的で急激な潤滑油の圧力変動が起こるため、潤滑油が油溝内を円滑に流れず、圧力損失が生じる。また、潤滑油は隆起部の存在する軸受端部近傍でのみ、軸受摺動面への供給量が増加するが、軸受主荷重部となる軸受中央部付近では軸受摺動面に潤滑油が十分に供給することができない。また、凸部の高さを油溝深さの50%としたので、円周方向溝内の潤滑油に急激な圧力変動が生じ、軸受摺動面に損傷を与えるような大きな異物が潤滑油中で浮上し、軸受摺動面への異物混入が生じやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係わる半円筒形状すべり軸受の内周面を見た図。
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図。
【図3】本発明の実施例2に係わる半円筒形状すべり軸受の内周面を見た図。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿う断面図。
【図5】本発明の実施例3に係わる半円筒形状すべり軸受の内周面を見た図。
【図6】図5におけるVI−VI線に沿う断面図。
【図7】比較例1に係わる公知の半円筒形状すべり軸受の内周面を見た図。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿う断面図。
【図9】比較例2に係わる半円筒形状すべり軸受の内周面を見た図。
【図10】図9におけるX−X線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0023】
10 すべり軸受
12 内周面(軸受摺動面)
14 端面
16 油溝
16A 山
16B 谷
20 すべり軸受
22 内周面(軸受摺動面)
24 端面
26 油溝
30 すべり軸受
32 内周面(軸受摺動面)
34 端面
36 油溝
40 すべり軸受
42 内周面(軸受摺動面)
44 端面
46 油溝
50 すべり軸受
52 内周面(軸受摺動面)
54 端面
56 油溝
58 隆起部
H 油溝の深さ
h 山の高さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の半円筒形状軸受のうち、少なくとも一方の半円筒形状軸受の内周面に円周方向に延在する油溝が形成されている前記一対の半円筒形状軸受を円筒形に組み合わせてクランク軸を支承する内燃機関のすべり軸受において、
前記半円筒形状軸受の円周方向長さの中央部を円周方向角度0°位置としたとき、軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲に亘って、前記油溝が形成されており、
前記油溝の溝底面が、軸受内周面の少なくとも円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲で、平坦部なしに連続的に起伏する複数の山と複数の谷から成る凹凸面になされていることを特徴とする内燃機関のすべり軸受。
【請求項2】
前記油溝が、前記半円筒形状軸受の円周方向全長に亘って軸受内周面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された内燃機関のすべり軸受。
【請求項3】
前記油溝の円周方向長さが、半円筒形状軸受の円周方向全長よりも短く、該油溝の円周方向両端部の少なくとも一方が、半円筒形状軸受の円周方向端面に達していないことを特徴とする請求項1に記載された内燃機関のすべり軸受。
【請求項4】
前記凹凸面が、前記円周方向角度マイナス45°位置から円周方向角度プラス45°位置までの範囲の前記溝底面にのみ形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載された内燃機関のすべり軸受。
【請求項5】
前記凹凸面が、前記油溝の円周方向全長に亘って前記溝底面に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載された内燃機関のすべり軸受。
【請求項6】
前記軸受内周面すなわち軸受摺動面と前記油溝の最深部とで規定される溝深さについて、前記半円筒形状軸受の円周方向長さの中央部である円周方向角度0°位置における溝深さをd、円周方向の油溝両端部における溝深さをdとしたとき、前記油溝が、関係式d≦dを満たすことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された内燃機関のすべり軸受。
【請求項7】
前記軸受内周面すなわち軸受摺動面と前記谷の深さとで規定される溝深さをH、前記凹凸面の高低差すなわち前記山の高さをhとしたとき、前記複数の山のうちの任意の山と、これに隣接する位置にある前記谷との寸法関係が、関係式0.15H≦h≦0.40Hによって規定されることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された内燃機関のすべり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−257370(P2009−257370A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104531(P2008−104531)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】