説明

内燃機関用のセンサユニット、内燃機関用の状態監視装置

【課題】内燃機関の外部から監視対象箇所までの間の配線を省略することのできる内燃機関用のセンサユニットを提供すること。
【解決手段】内燃機関の構成部品に取り付けられる内燃機関用のセンサユニットXは、上記内燃機関の運転時に発生する振動を利用して発電する振動発電素子38と、振動発電素子38で発電された電力により作動して上記内燃機関の状態(温度、圧力、歪み、振動、オイルミスト濃度など)を検出する歪みゲージ39(検出部の一例)と、上記振動発電素子38で発電された電力により作動して歪みゲージ39の検出結果を無線通信によって発信する制御部37及びアンテナ41とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の状態を検出する各種のセンサを有する内燃機関用のセンサユニット及び内燃機関用の状態監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関には、温度、圧力、歪み、又は振動などを検出する各種のセンサが設けられる(例えば特許文献1参照)。そして、内燃機関の監視装置は、各種のセンサによる検出結果に基づいて、内燃機関の運転状況及び異常の有無などを監視する。ここで、センサの作動には電力が必要であるため、センサ各々は配線により監視装置に有線接続される。そして、監視装置からセンサ各々への電力供給及びセンサ各々から監視装置への検出結果の伝達はその配線を通じて行われる。なお、例えば特許文献2には、電池及びその電池から供給される電力で作動するセンサをタイヤに設けておき、そのセンサの検出結果を無線で報知させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−137164号公報
【特許文献2】特開2000−355203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2に開示された技術ではセンサの近くに電池を設ける必要があるため、その電池の交換が容易でない内燃機関内部に利用することは好ましくない。また、監視装置及びセンサを配線で接続する構成では、その配線の引き回し作業及び配線処理が煩雑であるという問題がある。この点、特に、船舶用機関及び陸用機関などに用いられる大型の内燃機関では配線距離が長くなるため、その問題が顕著に現れる。さらに、内燃機関における配線経路確保の観点からセンサを配置することが困難な箇所については、温度、圧力、歪み、又は振動などの状態を監視することができないという問題もある。例えば、内燃機関の運転時に回転するクランク軸などの回転体には、その回転動作時に配線が捻れるためセンサを配置することはできない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内燃機関の外部から監視対象箇所までの間の配線を省略することのできる内燃機関用のセンサユニット及び内燃機関用の状態監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、内燃機関の構成部品に取り付けられる内燃機関用のセンサユニットであって、以下の(1)〜(3)の構成要素を備える。
(1)上記内燃機関の運転時に発生する振動を利用して発電する一又は複数の振動発電素子。
(2)上記振動発電素子で発電された電力により作動して上記内燃機関の状態を検出する一又は複数の検出部。ここに、上記内燃機関の状態には、例えば上記内燃機関に設けられたクランク軸などの構成部品の温度、振動、歪み、圧力、変位量、又はオイルミスト濃度などである。また、上記内燃機関の状態には、排管、クランク室、給気管、シリンダの内部温度又は内部圧力も含まれる。
(3)上記振動発電素子で発電された電力により作動して上記検出部の検出結果を無線通信によって発信する無線通信部。
また、上記目的を達成するために本発明は、内燃機関の構成部品に取り付けられる内燃機関用のセンサユニットであって、以下の(11)〜(13)の構成要素を備えるものであってもよい。
(11)上記内燃機関の運転時に発生する熱を利用して発電する一又は複数の熱発電素子。
(12)上記熱発電素子で発電された電力により作動して上記内燃機関の状態を検出する一又は複数の検出部。ここに、上記内燃機関の状態には、例えば上記内燃機関に設けられたクランク軸などの構成部品の温度、歪み、及び振動、並びに上記内燃機関内の環境温度、環境湿度、オイルミスト濃度などが含まれる。また、上記内燃機関の状態には、排管、クランク室、給気管、シリンダの内部温度又は内部圧力も含まれる。
(13)上記熱発電素子で発電された電力により作動して上記検出部の検出結果を無線通信によって発信する無線通信部。
【0007】
本発明に係る上記内燃機関用のセンサユニットでは、上記構成部品に取り付けられた上記振動発電素子又は上記熱発電素子が上記内燃機関の運転時の振動又は熱を利用して発電する。そして、上記検出部及び上記無線通信部は、上記振動発電素子又は上記熱発電素子で発電された電力により作動する。これにより、上記検出部は、上記内燃機関の状態を検出することができる。また、上記無線通信部は、上記検出部による検出結果を上記無線通信部により外部に発信することができる。従って、本発明によれば、上記内燃機関の外部から電力を供給する必要がないため、外部から監視対象箇所までの間の配線を省略することができる。
【0008】
さらに、配線が不要なため上記内燃機関における上記内燃機関用のセンサユニットの配置位置の自由度が高く、従来は配線経路確保の観点から上記検出部を配置することが困難であった箇所についても温度、圧力、歪み、振動、又はオイルミスト濃度などの各種の状態に関する情報を得ることが可能となる。具体的に、上記内燃機関の運転時に回転するクランク軸などの回転体は回転動作時に配線が捻れるため有線でセンサ類を配置することができなかった。そのため、本発明は、上記構成部品が上記内燃機関において回転駆動される回転体である場合に好適である。なお、上記構成部品は、上記回転体の軸受であってもよい。さらに、上記構成部品は、上記内燃機関の出力軸と上記内燃機関の負荷とに取り付けられるカップリングであってもよい。また、上記振動発電素子又は上記熱発電素子により発電された電力を蓄積し、上記蓄積した電力を上記検出部及び上記無線通信部に供給する蓄電手段を備える構成が考えられる。これにより、上記内燃機関の運転停止後も上記蓄電手段に蓄積された電力が残存する限りは上記検出部及び上記無線通信部を作動させることが可能となる。
ところで、本発明は、内燃機関の構成部品に取り付けられた一又は複数の上記センサユニットと、上記センサユニット各々の上記無線通信部から発信される上記検出結果を受信する受信部、上記受信部で受信された上記検出結果に応じて異常判定を行う状態監視部、及び上記状態監視部による判定結果を外部に出力する外部出力部を有する監視ユニットとを備えてなる内燃機関用の状態監視装置として捉えてもよい。このような状態監視装置を用いれば、上記センサユニットまでの配線敷設を省略しつつ、例えば上記軸受の損傷による各軸受の異常を早期に検知することや、オイルミストの大量発生による爆発事故等を未然に防止することが可能である。また、例えば上記センサユニットを上記カップリングに取り付けた場合には、上記内燃機関における特定シリンダの燃焼不良(例えば失火など)の発生やカップリングを構成するゴム素材の劣化などを、上記検出部に検出結果によって判定し、これらに起因するカップリングの破断事故を未然に防止することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内燃機関の外部から電力を供給する必要がないため、外部から監視対象箇所までの間の接続を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】船舶用のディーゼルエンジン10の構成を模式的に示す側面図である。
【図2】船舶用のディーゼルエンジン10のクランク軸12の一部を拡大した要部模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るセンサユニットXの概略構成を示すブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態に係る内燃機関用のセンサユニットXについて説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された単なる一例であり、本実施形態は本発明の要旨を変更しない範囲で変更可能である。
【0012】
本発明の実施形態に係る内燃機関用のセンサユニットXは、図1に示されるディーゼルエンジン10(本発明の内燃機関の一例)に適用されるものである。
【0013】
ディーゼルエンジン10(以下「エンジン10」と略称する。)は、複数の気筒が直列又は並列に配置されたものである。エンジン10は、主として、気筒数と同数のシリンダ(不図示)と、シリンダの上部に配置されたシリンダヘッド16と、シリンダに沿って鉛直方向へ往復運動可能に支持されたピストン11と、出力軸15に連結されたクランク軸12と、各ピストン11の往復運動をクランク軸12(回転体の一例)の回転運動に変えるためのコンロッド13と、シリンダの吸排気バルブを開閉するためのカムを備えたカムシャフト(不図示)と、シリンダへ空気を強制的に送り込む過給機14と、過給機14からシリンダへ送り込まれた空気を冷却するための空気冷却器(不図示)と、シリンダ内に燃料を供給する燃料噴射ポンプ(不図示)とを備えている。
【0014】
シリンダヘッド16には燃料噴射弁及び燃料噴射弁ノズルが設けられており、燃料噴射ポンプは、カムシャフトのカムによってプランジャが駆動されると、燃料配管を通って燃料を燃料噴射弁へ圧送する。そして、燃料噴射弁の閉弁圧以上に燃料圧力が上昇すると、燃料噴射弁ノズルからシリンダ内へ燃料が噴霧される。エンジン10は、例えば船舶において発電用モータに回転力を供給する用途として使用され、或いは船舶のプロペラ軸を回転させる用途として使用される。例えば、エンジン10は、機関出力が数百kW〜数千kWの大型のディーゼルエンジンである。
【0015】
図2は、図1に示したエンジン10のクランク軸12の一部を拡大した要部模式図である。図2に示すように、クランク軸12は、クランクジャーナル121、クランクアーム122、123、及びクランクピン124等により構成されている。クランクアーム122、123各々は、クランクジャーナル121及びクランクピン124を接続している。クランクジャーナル121は、クランク軸12が配置されるクランク室においてジャーナルメタル(不図示)により回転自在に軸支されている。また、クランクピン124は、コンロッド13の下端部に形成された把持部131内に設けられたクランクピンメタル(不図示)により回転自在に軸支されている。上記ジャーナルメタル及び上記クランクピンメタルはラジアル軸受である。
【0016】
そして、エンジン10のクランク軸12(構成部品の一例)のクランクジャーナル121、クランクアーム122、123、及びクランクピン124各々には、センサユニットXが取り付けられている。例えば、クランクジャーナル121には、その外周面にセンサユニットXが接合されている。また、クランクアーム122、123各々にも、その外周面にセンサユニットXが接合されている。なお、センサユニットXの接合は、例えば接着剤、溶接、又は螺着などの各種の接合手法によって行われる。一方、クランクピン124にはセンサユニットXが内蔵されている。もちろん、例えばクランクジャーナル121、クランクアーム122、123にセンサユニットXを内蔵することも考えられる。なお、本実施形態ではセンサユニットXがクランク軸12の各部位に取り付けられる構成を例に挙げて説明するが、センサユニットXは、エンジン10が有する他の構成部品に取り付けられるものであってもよい。例えば、センサユニットXは、クランク軸12のようにエンジン10内で回転駆動される回転体又はその回転体の軸受に取り付けることが可能である。また、センサユニットXは、上記エンジン10の出力軸15に設けられ、該出力軸15と発電機等の負荷とを連結するカップリングに取り付けることも可能である。その他、センサユニットXを、エンジンフレーム、コネクティングロッドなどの構成部品に取り付けることが可能である。
【0017】
次に、図3を参照しつつセンサユニットXの構成及び動作について説明する。ここに、図3は内燃機関10を監視する監視装置45(監視ユニットの一例)及びセンサユニットXの概略構成を示すブロック図である。ここに、監視装置45及びセンサユニットXを備えたシステムが本発明の状態監視装置の一例である。
まず、監視装置45は、図3に示すように、CPUなどの制御部47と、ROM48と、RAM49と、HDDなどの大容量記憶媒体であるデータ記憶部50と、キーボードなどの入力部51と、液晶ディスプレイなどのモニタ52と、外部との通信を行う通信I/F53(受信部の一例)と、センサユニットXとの間で無線通信するためのアンテナ54とを備えるコンピュータ(電子計算機)である。監視装置45の具体例としては、例えば、エンジン10に搭載される制御装置や、別途設置されるパーソナルコンピュータ等を使用した監視装置である。また、監視装置45は、エンジン10に搭載された制御装置又はパーソナルコンピュータのスロットに装着可能な電気回路ボードであってもよい。
【0018】
監視装置45は、エンジン10の構成部品に取り付けられた全てのセンサユニットXから発信される電波をキャッチできる領域内に配置されている。監視装置45は、通信I/F53によりセンサユニットXからの電波をキャッチすると、制御部47は電波に含まれる後述の検出結果情報を取得し、データ記憶部50に記憶する。このとき、監視装置45が受信した検出結果情報はデータベース化されてデータ記憶部50に蓄積記憶される。具体的に、上記検出結果情報は、監視装置45で受信された時刻(例えばms単位)が関連付けられた状態でデータ記憶部50に格納される。ユーザは、入力部51を用いて監視装置45を操作することにより、データ記憶部50に記憶された上記検出結果情報をモニタ52で閲覧したり、図示しないプリンタなどに出力したりすることができる。
【0019】
一方、図3に示すように、センサユニットXは、小型のCPUなどの制御部37、振動発電素子38、歪みゲージ39、蓄電素子40、及びアンテナ41などを備えている。制御部37は、アンテナ41を用いて監視装置45との間で無線通信を実行する。ここに、制御部37及びアンテナ41が本発明の無線通信部の一例である。なお、これらの電子部品は樹脂ケースやアルミケース等の筐体に収納されている。
【0020】
振動発電素子38は、所謂環境振動を利用して発電するものである。本実施形態では、振動発電素子38は、エンジン10の運転時に発生する振動エネルギーを受けて電力を発生させる。
振動発電素子38は、静電誘導タイプのものである。振動エネルギーを利用して発電する素子としては、振動発電素子38のような静電誘導タイプの他に、電磁誘導タイプのものや圧電タイプのものが知られている。振動発電素子38のような静電誘導タイプの発電素子は、例えば特開2010−136598号公報に記載されているように従来から公知にものであるため、その構造に関する詳細な説明は省略する。
なお、本実施の形態では、センサユニットXが、エンジン10の運転時に発生する振動を利用して発電する振動発電素子38を備える構成について説明するが、振動発電素子38に代えて、エンジン10の運転時に発生する熱を利用して発電する熱発電素子を備える構成も考えられる。もちろん、振動発電素子38及び上記熱発電素子を共に備え、いずれか一方又は両方により発電された電力を利用してセンサユニットXを作動させる構成も考えられる。
【0021】
歪みゲージ39は、センサユニットXが取り付けられた検出対象箇所(設置部)であるクランク軸12の歪み(内燃機関の状態の一例)を検出するものである。歪みゲージ39の検出結果は制御部37に入力される。なお、センサユニットXが有するセンサは歪みゲージ39に限らず、エンジン10の状態を検出するものであればよい。例えば、センサユニットXは、温度を検出する温度センサ、振動を検出する振動センサ、圧力を検出する圧力センサ、変位量を検出する変位量センサ、又はオイルミスト濃度(オイルミスト発生量)を検出するオイルミスト濃度センサなどを有することが考えられる。具体的に、センサユニットXは、エンジン10に設けられたクランク軸12などの構成部品自体の温度及び振動、並びにエンジン10内における上記構成部品周辺の環境温度、環境湿度、オイルミスト濃度などを検出する各種のセンサを有することが考えられる。その他、上記温度センサ及び上記圧力センサは、例えばエンジン10に設けられた排気管、クランク室、給気管、シリンダの構成部品の内部温度(水温、油温、気温など)及び内部圧力(水圧、油圧、気圧など)を検出するものである。なお、上記変位量センサは、例えばエンジン10内の潤滑油タンク内の潤滑油の量の変位を検出するものである。また、センサユニットXが、検出内容(温度、圧力、歪み、振動、変位量、オイルミスト濃度など)の異なる複数のセンサを有することも考えられる。なお、歪みゲージ39並びにこれに代わる温度センサ、圧力センサ、振動センサ、変位量センサ、オイルミスト濃度センサなどは、振動発電素子38で発電された電力で作動して検出結果を表示するLCDなどの表示部を有するものであることが考えられる。また、監視装置45は、上記センサユニットXから取得した検出結果情報が異常の発生を示すものであるか否かを判定し、異常の発生と判定した場合は、その旨を例えばモニタ表示、ランプ表示、ベル、又はブザーなどにより報知(出力)する。なお、この場合、ROM48、RAM49、データ記憶部50などは省略してもよい。即ち、監視装置45が、無線通信を行う通信I/F53及びアンテナ54と制御部47だけの電気回路であってもよい。また、監視装置45が、外部に設けられた他の状態監視装置などに対して異常発生の判定結果を出力することも考えられる。
【0022】
蓄電素子40は、電荷を蓄積するものであり、例えばコンデンサや蓄電池である。なお、振動発電素子38と蓄電素子40との間には電圧を整流する整流回路(不図示)が設けられる。蓄電素子40は、エンジン10の停止時、即ち振動発電素子38の発電停止時のセンサユニットXの電力源として用いられる。そのため、例えばエンジン10の停止時にセンサユニットXを駆動させる必要がない場合は、蓄電素子40が小容量のものであってもよい。また、発生電流が十分であれば蓄電素子40を省略する構成も考えられる。蓄電素子40が設けられない構成では、振動発電素子38から制御部37及びセンサ39に電力が直接供給される。
【0023】
このように構成されたセンサユニットXでは、エンジン10の運転時に生じる振動によって振動発電素子38が発電する。そして、振動発電素子38で発電された電力は蓄電素子40を経て制御部37及び歪みゲージ39に供給される。これにより、制御部37及び歪みゲージ39は、振動発電素子38から供給される電力を受けて作動する。具体的に、歪みゲージ39は、その取付位置であるクランク軸12の歪みを検出し、その検出結果を示す検出結果情報(検出結果データ)を制御部37に入力する。そして、制御部37は、無線通信に必要な所定周波数の電波を生成するとともに、歪みゲージ39から入力された検出結果情報を上記電波に乗せて、アンテナ41から無線通信によって発信する。なお、エンジン10の運転停止により振動が停止しても、その後、蓄電素子40の電荷がなくなるまでの間はセンサユニットXが作動する。
【0024】
以上説明したように、センサユニットXは内蔵した振動発電素子38により発電された電力を利用して作動するため、外部からエンジン10内のセンサユニットXの取付位置である構成部品までの間の電力供給用などの配線を省略することができる。従って、センサユニットXは、クランク軸12のようにエンジン10の運転時に回転運動を行う構成部品にも取り付けることが可能であり、その構成部品の位置でエンジン10内の温度、圧力、歪み、振動、並びにオイルミスト濃度などの各種の状態を検出して発信することが可能となる。従って、監視装置45では、従来監視対象とすることが困難であったクランク軸12などの構成部品の位置でエンジン10内の状態についての各種のデータを取得及び管理することが可能となる。
【0025】
また、上述の実施形態では、センサユニットXが一つの振動発電素子38を有する構成について説明した。一方、センサユニットXが複数の振動発電素子38を備えてなる構成も考えられる。この場合、振動発電素子38各々は、センサユニットXで必要な電圧値又は電流値が得られるように直列又は並列に接続しておけばよい。
【0026】
さらに、センサユニットXが複数の振動発電素子38を備える場合、その振動発電素子38各々は発電条件となる振動の方向が異なるように配置されていることが望ましい。具体的に、振動発電素子38が、対向配置された二枚の基板が所定方向に相対的にスライドすることで発電する静電誘導タイプのものである場合には、センサユニットXにおいて、そのスライド方向が直交する方向となるように二つの振動発電素子38を配置することが考えられる。これにより、その二つの振動発電素子38を直列又は並列に接続しておけば、センサユニットXに対して作用する振動の方向が偏っている場合でもいずれかの振動発電素子38によって発電を行うことができる。この点、振動発電素子38の数を増加させる程、多様な振動方向に対応することが可能である。
【0027】
ところで、上述の実施形態では、歪みゲージ39を用いる場合を例に挙げて説明した。一方、歪みゲージ39に代えて、振動を検出する振動センサを備える構成では、その振動センサの機能を振動発電素子38が兼ねることも考えられる。具体的には、制御部37が、振動発電素子38により発電される電力量が予め定められた異常振動量に対応する電力値以上となったことを条件に、異常振動が生じた旨をアンテナ41から無線送信する構成が考えられる。これにより、振動発電素子38が異常振動量以上の振動を感知した場合に、その旨が監視装置45に報知されるため、振動センサを別途設けることなく異常振動の発生の有無の監視としての機能を果たすことができる。また、制御部37が、振動発電素子38から入力される電力量の大きさに応じて振動量を導出し、その振動量をアンテナ41から無線通信で発信することも考えられる。
【0028】
なお、上述の実施形態では、内燃機関の一例として、船舶に搭載される主機用又は補機用のエンジン10を例示したが、船舶用の内燃機関に限られず、工場や離島などで常用又は非常用として使用される発電機用の大型のディーゼルエンジン、ガスエンジン、又はガスタービンであっても、この構成部品に対して本発明は適用可能である。
【0029】
10:ディーゼルエンジン
37:制御部
38:振動発電素子
39:歪みゲージ
40:蓄電素子
41:アンテナ
45:監視装置
47:制御部
48:ROM
49:RAM
50:データ記憶部
51:入力部
52:モニタ
53:通信I/F
54:アンテナ
X :センサユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の構成部品に取り付けられる内燃機関用のセンサユニットであって、
上記内燃機関の運転時に発生する振動を利用して発電する一又は複数の振動発電素子と、
上記振動発電素子で発電された電力により作動して上記内燃機関の状態を検出する一又は複数の検出部と、
上記振動発電素子で発電された電力により作動して上記検出部の検出結果を無線通信によって発信する無線通信部と、
を備えてなることを特徴とする内燃機関用のセンサユニット。
【請求項2】
内燃機関の構成部品に取り付けられる内燃機関用のセンサユニットであって、
上記内燃機関の運転時に発生する熱エネルギーを利用して発電する一又は複数の熱発電素子と、
上記熱発電素子で発電された電力により作動して上記内燃機関の状態を検出する一又は複数の検出部と、
上記熱発電素子で発電された電力により作動して上記検出部の検出結果を無線通信によって発信する無線通信部と、
を備えてなることを特徴とする内燃機関用のセンサユニット。
【請求項3】
上記構成部品は、上記内燃機関において回転駆動される回転体、上記回転体の軸受、又は上記内燃機関の出力軸に取り付けられるカップリングである請求項1又は2のいずれかに記載の内燃機関用のセンサユニット。
【請求項4】
上記内燃機関の状態は、上記検出部の設置部の温度、振動、歪み、圧力、変位量、又はオイルミスト発生量である請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関用のセンサユニット。
【請求項5】
内燃機関の構成部品に取り付けられ、請求項1〜4のいずれかに記載された一又は複数のセンサユニットと、
上記センサユニット各々の上記無線通信部から発信される上記検出結果を受信する受信部、上記受信部で受信された上記検出結果に応じて異常判定を行う状態監視部、及び上記状態監視部による判定結果を外部に出力する外部出力部を有する監視ユニットと、
を備えてなる内燃機関用の状態監視装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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