説明

内燃機関用点火装置

【課題】製造時の作業性を損なうことなく低コストで製造でき、しかも異物の混入を低減して、高電流で使用できる内燃機関用点火装置を提供する。
【解決手段】外装ケース5に点火コイル2等を収容してなる内燃機関用点火装置1は、点火コイル2における一次電流の通電・遮断を制御するイグナイタとして、パワートランジスタ31や電流制限回路等を基板上に実装したイグナイタ基板3を用い、このイグナイタ基板3よりも面積を大ならしめた基板取付面41を有するコレクタ接続用端子4に、優れた熱伝導性を有するシリコーン接着剤でイグナイタ基板3を密着固定することで、コレクタ接続用端子4を放熱体として利用し、パワートランジスタ31の各電極部と端子類との接続は、ワイヤボンディングによるベース接続ワイヤ61B,エミッタ接続ワイヤ61E,コレクタ接続ワイヤ61Cで行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車エンジンの点火プラグに火花を発生させるための高電圧を発生させる内燃機関用点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火装置は自動車エンジンの各気筒ごとに配置されるもので、一次コイルおよび二次コイル、両コイルを磁気的に結合させる鉄心、一次コイルに流れる一次電流の通電・遮断を制御するスイッチング素子、および端子類をケースに収納したモールド型内燃機関用点火装置がある。
【0003】
従来のモールド型内燃機関用点火装置は、スイッチング素子としてパッケージ型パワートランジスタ等を用いており、高電流で使用する際には、アルミ板または銅板で成型された放熱板を用いて、パワートランジスタから発生した熱を効率良く放出するような構造を採用している(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、内燃機関用点火装置の製造工程では、スイッチング素子と接続用端子等を接続するハンダ付けや抵抗溶接に代えて、アーク溶接を使う方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−239534号公報
【特許文献2】特開2008−270695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている発明では、素子基板に放熱板を設けることに加えて、放熱板を取り付けるための特殊な構造も必要となるため、製造コストが高くなる上に、作業性低下の原因となってしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載されている発明では、アーク溶接時にスパッタ等が飛散するため、異物発生の原因となる。
【0008】
そこで、本発明は、製造時の作業性を損なうことなく低コストで製造でき、しかも異物の混入を低減して、高電流で使用できる内燃機関用点火装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、一次コイルおよび二次コイル、両コイルを磁気的に結合させる鉄心、前記一次コイルに流れる一次電流の通電・遮断を制御するスイッチング素子、端子類をケースに収納してなる内燃機関用点火装置において、前記スイッチング素子が実装された素子基板よりも面積を大ならしめた基板取付面を有する接続用端子を設け、該接続用端子の基板取付面に素子基板を密着固定し、前記スイッチング素子と端子類をワイヤボンディングにより接続するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の内燃機関用点火装置において、前記素子基板と前記接続用端子とは、優れた熱伝導性を有するシリコーン接着剤を使用して密着固定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、前記スイッチング素子が実装された素子基板よりも面積を大ならしめた基板取付面を有する接続用端子を設け、該接続用端子の基板取付面に素子基板を密着固定し、前記スイッチング素子と端子類をワイヤボンディングにより接続するようにしたので、素子基板を取り付ける接続用端子を放熱体として使用することができ、部品の簡素化および作業性の向上を図れる。しかも、スイッチング素子と端子類とをワイヤボンディングにより接続することにより、スパッタ等の飛散を防止でき、異物の低減に効果がある。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、前記素子基板と前記接続用端子とは、優れた熱伝導性を有するシリコーン接着剤を使用して密着固定するようにしたので、スイッチング素子から発生した熱を効率良く接続用端子へ伝導させることが可能となり、高い放熱性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る内燃機関用点火装置の一部欠截平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、モールド型の内燃機関用点火装置1の一部を欠截して上方から見た図であり、エンジンコントロール装置からの点火制御信号を受けて、点火コイル2の一次コイル21に流れる一次電流の通電・遮断を制御し、鉄心23を介して磁気結合する二次コイル22の誘起電力を制御し、点火プラグの放電ギャップに電気火花を発生させる。
【0016】
上記点火コイル2における一次電流の通電・遮断を制御するイグナイタの機能は、スイッチング素子たるパワートランジスタ31や電流制限回路等を基板上に実装した素子基板であるイグナイタ基板3に設け、このイグナイタ基板3よりも面積を大ならしめた基板取付面41を有するコレクタ接続用端子4にイグナイタ基板3を密着固定する。すなわち、イグナイタ基板3を取り付けるコレクタ接続用端子4を放熱体として使用することで、放熱板を別途設ける必要が無く、部品の簡素化および作業性の向上を図れる。なお、コレクタ接続用端子4の素材として、熱伝導性の高い導電性金属(銅や銀など)を用いれば、放熱体としての機能を一層高めることができる。
【0017】
さらに、優れた熱伝導性・耐熱性を有するシリコーン接着剤を使用して、イグナイタ基板3をコレクタ接続用端子4の基板取付面41に密着固定すれば、スイッチング素子から発生した熱を効率良くコレクタ接続用端子4へ伝導させることが可能となり、高い放熱性能を発揮できる。よって、パワートランジスタ31を高電流で使用しても、内燃機関用点火装置1としての動作安定性を高めることが可能となる。
【0018】
上述した点火コイル2やイグナイタ基板3等を収容する外装ケース5には、エンジンコントロール装置や外部電源等と接続するコネクタ部51を設け、外部コネクタを介して駆動信号端子51S、接地端子51G、電源端子51Pと接続可能である。
【0019】
本実施形態に係る内燃機関用点火装置1は、イグナイタ基板3をイグナイタとして用いるものであり、樹脂モールドでパッケージングされた従来のイグナイタのようにベース端子,コレクタ端子,エミッタ端子が引き出されていない。そこで、パワートランジスタ31の各電極部と端子類をワイヤボンディング(半導体チップの電極部と、リードフレーム及び基板上の導体などとの間を金、アルミニウムなどの細いワイヤで接続する方法)により直接接続するのである。
【0020】
具体的には、パワートランジスタ31のベースと駆動信号端子51Sをワイヤボンディングによるベース接続ワイヤ61Bで、パワートランジスタ31のエミッタと接地端子51Gをワイヤボンディングによるエミッタ接続ワイヤ61Eで、パワートランジスタ31のコレクタとコレクタ接続用端子4をワイヤボンディングによるコレクタ接続ワイヤ61Cで、各々接続する。また、一方端がコレクタ接続用端子4と接続される一次コイル21の他方端である一次コイル電源端子21aと電源端子51Pをワイヤボンディングによる電源接続ワイヤ62にて接続する。
【0021】
なお、本実施形態においては、接地端子51Gおよび電源端子51Pと二次コイル22とを直接接続することで、ワイヤボンディングを用いないものとしたが、例えば、二次コイル接続用端子を介して、ワイヤボンディングにより接地端子51Gおよび電源端子51Pと接続するようにしても良い。
【0022】
このように、本実施形態に係る内燃機関用点火装置1では、接続端子を放熱体として用いることにより別途放熱板を設ける必要がないことから、パワートランジスタ51を実装したイグナイタ基板3を樹脂モールドでパッケージングする必要が無く、省スペースで外装ケース5内に配置でき、しかも、パワートランジスタ31と端子類とをワイヤボンディングで接続することにより、スパッタ等の飛散を防止でき、異物の低減に効果がある。
【0023】
以上、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0024】
1 内燃機関用点火装置
2 点火コイル
21 一次コイル
21a 一次コイル電源端子
22 二次コイル
23 鉄心
3 イグナイタ基板
31 パワートランジスタ
4 コレクタ接続用端子
41 基板取付面
5 外装ケース
51 コネクタ部
51S 駆動信号端子
51G 接地端子
51P 電源端子
61B ベース接続ワイヤ
61C コレクタ接続ワイヤ
61E エミッタ接続ワイヤ
62 電源接続ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルおよび二次コイル、両コイルを磁気的に結合させる鉄心、前記一次コイルに流れる一次電流の通電・遮断を制御するスイッチング素子、端子類をケースに収納してなる内燃機関用点火装置において、
前記スイッチング素子が実装された素子基板よりも面積を大ならしめた基板取付面を有する接続用端子を設け、該接続用端子の基板取付面に素子基板を密着固定し、前記スイッチング素子と端子類をワイヤボンディングにより接続するようにしたことを特徴とする内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記素子基板と前記接続用端子とは、優れた熱伝導性を有するシリコーン接着剤を使用して密着固定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火装置。

【図1】
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