説明

内腔拡張用ステント

本発明は内腔拡張用ステントに関する。この内腔拡張用ステントは多数の空間部1dを有するように形状記憶合金のワイヤー1、2で綴った円筒状の内側ステントA及び外側ステントBと、これらのステントを一体に固定する固定糸Cを含み、前記内側ステントAの空間部と外側ステントBの空間部は、交互に配列するように前記内側ステントA上に前記外側ステントBが挿入され、前記内側ステントの外表面と外側ステントの内表面が互いに密着しており、前記外側ステントと内側ステントの両端は固定糸Cにより一体に固定する。それぞれの内側ステントA及び外側ステントBの形態回復性に優れ、円筒状のフィルム膜を固定糸Cにより固定しないので、内腔に挿入した後膨脹が容易であり、内・外側ステントの空間部1dが交互に配列するように重なって癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内腔拡張用ステントに関するもので、より詳細には、形態回復性と内腔に挿入した後の膨脹性に優れ、内・外側ステントの空間部が交互に配列するように重なって、癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できる内腔拡張用ステントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人体内で発生する疾病により人体内の内腔に狭窄が生じ、機能が低下する、あるいは深刻な場合には機能不全の状態になる恐れがある。例えば、食道癌により食道が狭窄したり、動脈硬化症により血液が円滑に循環しなくなったり、または肝から出てくる胆汁が流れるトラックが狭くなったりする場合などがある。
【0003】
このような場合、狭くなった内腔を拡張させ、拡張した内腔が再び狭くならないようにしなければならない。この場合に、狭くなった通路を拡張して維持させるための方法として、いわゆる、ステント(stent)を内腔に挿入する方法がある。
【0004】
内腔拡張用ステントとしては、通常、多数の空間部を有するように形状記憶合金で綴った円筒状のステントを主に使用してきた。
【0005】
内腔拡張用ステントは癌細胞、血液などが内腔内に侵入することを効果的に防止するために、ステントの空間部の単位サイズを小さく製造することが好ましい。しかし、製造技術上の問題により空間部の単位サイズを一定水準以下に製造するには限界があり、多くの時間と労力を要する。
【0006】
また、内腔拡張用ステントは内腔に挿入した後、良好に膨脹される膨脹性と形態回復性が要求される。
【0007】
従来の内腔拡張用ステントとしては、特許文献1に記述されたような内腔拡張用ステントが公知されている。この特許文献1に記述された内腔拡張用ステントは一定の直径を有する円筒状をなすように、フィラメントが螺旋状に巻き取られる螺旋状のステント部材と、螺旋状のステント部材より大きい直径を有し、円筒状をなすようにフィラメントがジグザグ状に巻き取られるジグザグ状のステント部材と、螺旋状のステント部材の内・外側の表面に覆いかぶせられる第1カバー部材と、ジグザグ状のステント部材の内・外側の表面に覆いかぶせられる第2カバー部材と、第1カバー部材と第2カバー部材を一体に連結するための連結部材を含む。
【0008】
上述した従来の内腔拡張用ステントは螺旋状のステントであるため、その柔軟性に優れ、直径をより小さく縮小でき、ジグザグ状のステントであるため、狭くなった内腔を拡張させる拡張力と内腔の移植部位から容易に移動しない安全性に優れる。しかし、第1カバー部材と第2カバー部材を連結部内において一体に連結して内腔に挿入した後、膨脹性が低下し、癌細胞などが内腔に侵入することを防止するために、それぞれのステントの空間部における単位サイズを小さくするには限界があって、使用に多くの時間と労力を消耗するという短所がある。
【0009】
また、他の従来の内腔拡張用ステントとしては、特許文献2に記述された内腔拡張用ステントがある。この特許に記述された内腔拡張用ステントは、菱形状の空間部を含むようにワイヤーで綴った円筒状の内側ステントの外周面に人造チューブが密着するように挿入されており、人造チューブの外周面に内側ステントと同一な構造の外側ステントが密着するように挿入されている。また、内側ステント、人造チューブ及び外側ステントは固定糸により全て一体に固定される。
【0010】
上述した従来の内腔拡張用ステントは構造上、菱形状の空間部を含むため柔軟性及び収縮性は優れる。しかし、元の形態をそのまま回復、維持する形態回復性が低く、人造チューブが内側ステント及び外側ステントと一体に固定されているため、内腔に挿入した後の膨脹性が低下する。また、内側ステントと外側ステントは、それぞれの空間部が互いに一致するように結びついているため、これらの結合によって空間部の単位サイズが縮小しない。そのため、癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できないなどの問題点がある。
【0011】
もう一つの従来の内腔拡張用ステントとしては、特許文献3に記述された内腔拡張用ステントが公知である。この特許に記述された内腔拡張用ステントは多数の空間部を有するように、形状記憶合金で綴った円筒状胴体と、胴体の外側に広まって直径が拡張した拡張部、胴体、拡張部の内表面に被覆された被膜とから構成されたステントにおいて、胴体の外側に形状記憶合金で綴った円筒状補助胴体を設け、補助胴体の一側を胴体に接着して、胴体と補助胴体との間に増殖する細胞が満たされる空間を形成する。
【0012】
前述した従来の内腔拡張用ステントは螺旋状構造であるため柔軟性は優れるが、元の形態をそのまま回復、維持する形態回復性が低く、胴体(内側ステント)と補助胴体(外側ステント)のそれぞれの空間部が互いに一致するように結びついているため、これらの結合によって空間部の単位サイズが縮小しない。そのため、癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できないなどの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許公開公報第2000−002967号
【特許文献2】韓国特許登録公報第0561713号
【特許文献3】韓国特許登録公報第0448329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、内側ステントA及び外側ステントBのそれぞれの形態回復性に優れ、円筒状のフィルム膜を固定糸Cにより固定しないので、内腔に挿入した後には膨脹が容易であり、内・外側ステントの空間部1dが交互に配列するように重なって癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できる内腔拡張用ステントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明の内腔拡張用ステントは、 多数の空間部1dを有するように形状記憶合金のワイヤー1、2で綴った円筒状の内側ステントA及び外側ステントBと、これらのステントを一体に固定する固定糸Cを含み、前記内側ステントAの空間部と外側ステントBの空間部は、交互に配列するように前記内側ステントA上に前記外側ステントBが挿入され、前記内側ステントの外表面と外側ステントの内表面が互いに密着しており、前記外側ステントと内側ステントの両端は固定糸Cにより一体に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の内腔拡張用ステントによれば、内側ステントA及び外側ステントBのそれぞれの形態回復性に優れ、円筒状のフィルム膜を固定糸Cにより固定しないので、内腔に挿入した後膨脹が容易であり、内・外側ステントの空間部1dが交互に配列するように重なって癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の好適な実施形態における様々な特徴は、添付の図面に関する下記の詳細な説明においてより十分に記載される。
【図1】本発明に係る内腔拡張用ステントを示す写真である。
【図2】本発明に係る内腔拡張用ステントを示す写真である。
【図3】本発明を構成する内側ステント及び外側ステントの構造を示す概略図である。
【図4】内側ステントAに外側ステントBが挿入され、これらの両端が固定糸Cにより固定された状態を示す本発明の概略図である。
【図5】図5(a)及び(b)は本発明を構成する内側ステント及び外側ステントを製造する段階を示す概略図である。
【図6】内側ステントAに外側ステントBが挿入され、これらの両端が固定糸Cにより固定された状態を示す本発明の部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の内腔拡張用ステントについて詳細に説明する。
【0019】
本発明の内腔拡張用ステントは、図4などに示すように、 多数の空間部1dを有するように形状記憶合金ワイヤー1、2で綴った円筒状の内側ステントA及び外側ステントBと、これらのステントを一体に固定する固定糸Cを含み、前記内側ステントAの空間部と外側ステントBの空間部は、交互に配列するように前記内側ステントA上に前記外側ステントBが挿入され、前記内側ステントの外表面と外側ステントの内表面が互いに密着しており、前記外側ステントと内側ステントの両端は固定糸Cにより一体に固定することを特徴とする。
【0020】
本発明の内腔拡張用ステントをより詳細に説明すれば、図1及び図4に示すように、多数の空間部1dを有するように形状記憶合金のワイヤー1、2で綴った円筒状の内側ステントA及び外側ステントBと、これらのステントを一体に固定する固定糸Cとから構成される。
【0021】
図1は本発明に係る内腔拡張用ステント(円筒状のフィルム膜はない)の写真であり、図4はこの内腔拡張用ステントを示す概略図である。
【0022】
図6は内側ステントAと外側ステントBが固定糸Cにより一体に固定された部分を拡大して示す写真である。
【0023】
図2に示すように、本発明は内側ステントAと外側ステントBとの間に円筒状のフィルム膜をさらに挿入した内腔拡張用ステントを開示する。
【0024】
図2は円筒状のフィルム膜をさらに含む本発明の内腔拡張用ステントを示す写真である。
【0025】
上述した円筒状のフィルム膜はシリコン樹脂などで構成することが好ましいが、本発明では必ずしも円筒状のフィルム膜の材質をこれに限定するものではない。円筒状のフィルム膜を内側ステントAと外側ステントBとの間にさらに挿入する場合は、本発明の内腔拡張用ステントを内腔内に挿入した後、速やかに膨脹できるように、円筒状のフィルム膜の両端を固定糸Cにより内側ステントA及び外側ステントB両端と一体に固定しない状態を維持する。
【0026】
言い換えれば、内側ステントAと外側ステントBの両端だけを固定糸Cにより一体に固定する構成である。
【0027】
内側ステント及び外側ステントを見れば、図3に示すように、内側ステントA及び外側ステントBは第1の形状記憶合金ワイヤー1が多数の直線部1aと多数の曲げ点により直線部1aを連結するピック部1b及び谷部1cを形成するように、ジグザグ状に多数回のターンを行う。ある1回のターンを行った谷部が、この1回のターンの谷部に隣り合ってターンを行った、対応するピック部1dと互いに撚り合って連結することによって、複数の空間部1dを形成する。対角線方向には、第2の形状記憶合金ワイヤー2が一定の間隔をおいて第1の形状記憶合金ワイヤー1に撚り合った構造を有する。
【0028】
図3は本発明のステントを構成する内側ステントA及び外側ステントBの構造を示す概略図である。
【0029】
これらの内側ステントA及び外側ステントBは、図5(a)及び図5(b)に示すように、まず第1の形状記憶合金ワイヤー1でジグザグ状の構造を有するステントを製造した後、第2の形状記憶合金ワイヤー2を対角線方向に沿って一定の間隔をおいて前記第1の形状記憶合金ワイヤー1と撚り合わして製造できる。
【0030】
図5(a)及び図5(b)は内側ステントA及び外側ステントBを製造する段階を示す概略図である。
【0031】
本発明の内腔拡張用ステントは元の形態をそのまま維持する形態回復性(形態保存性)に優れる。
【0032】
また、本発明のステントにおいて、外側ステントBは内側ステントA上に挿入されて内側ステントの外表面と外側ステントの内表面が互いに密着している状態であり、内側ステントの空間部と外側ステントの空間部は交互に配列するように配列される。結果的には空間部の単位サイズが縮小する形態を有する特徴がある。
【0033】
上述したように、本発明は空間部の単位サイズが結果的に小さくなる現象によって、癌細胞などが内腔内に侵入することを効果的に防止できる。
【0034】
内側ステントAと外側ステントBの両端は固定糸Cにより一体に固定した状態に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の内腔拡張用ステントは食道癌によって食道に狭窄が生じたり、動脈硬化症により血液が円滑に循環しなかったり、肝から出てくる胆汁が流れるトラックが狭くなった場合に、内腔を拡張させて維持するために使用できる。従って、本発明の産業利用性はきわめて高いものといえる。
【0036】
一方、本明細書内で本発明をいくつかの好ましい実施形態によって記述したが、当業者ならば、添付の特許請求範囲に開示した本発明の範疇及び思想から外れずに、多くの変形及び修正がなされ得ることがわかるはずである。
【符号の説明】
【0037】
A 内側ステント
B 外側ステント
C 固定糸
1 第1の形状記憶合金ワイヤー
2 第2の形状記憶合金ワイヤー
1a 直線部
1b ピック部
1c 谷部
1d 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の空間部1dを有するように形状記憶合金のワイヤー1、2で綴った円筒状の内側ステントA及び外側ステントBと、これらのステントを一体に固定する固定糸Cを含み、前記内側ステントAの空間部と外側ステントBの空間部は、交互に配列するように前記内側ステントA上に前記外側ステントBが挿入され、前記内側ステントの外表面と外側ステントの内表面が互いに密着しており、前記外側ステントと内側ステントの両端は固定糸Cにより一体に固定することを特徴とする内腔拡張用ステント。
【請求項2】
内側ステントAと外側ステントBとの間には円筒状のフィルム膜がさらに挿入されることを特徴とする請求項1に記載の内腔拡張用ステント。
【請求項3】
円筒状のフィルム膜はシリコン樹脂で構成されることを特徴とする請求項2に記載の内腔拡張用ステント。
【請求項4】
内側ステントAと外側ステントBの両端だけを固定糸Cにより一体に固定することを特徴とする請求項2に記載の内腔拡張用ステント。
【請求項5】
内側ステントA及び外側ステントBは、第1の形状記憶合金ワイヤー1が多数の直線部1aと多数の曲げ点によって前記直線部1aを連結するピック部1b及び谷部1cを有するように、ジグザグ状に多数のターンを行い、前記ある1回のターンを行った谷部が、この1回ターンの谷部に隣り合ってターンを行った、対応するピック部1dと互いに撚り合って連結することによって、複数の空間部1dを形成し、対角線方向には第2の形状記憶合金ワイヤー2が一定の間隔をおいて前記第1の形状記憶合金ワイヤー1に撚り合った構造を有することを特徴とする1に記載の内腔拡張用ステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521217(P2010−521217A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553502(P2009−553502)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005388
【国際公開番号】WO2008/111716
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509250250)エス アンド ジ バイオテク, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】