説明

内装部品

【課題】接着剤を使用せずに表皮材を固定して内装部品の良好な仕上がりを得ると共に、表皮材装着の作業性を高める。
【解決手段】剛性を有する硬質のコア材12と、コア材12を覆う表皮材14と、表皮材14の周縁部を押さえて留める紐状の留紐材15とを備えた内装部品11であって、コア材12は、その裏面側の周縁部に、表皮材14の周縁部及び留紐材15を受け入れ可能な係止溝21を備え、この係止溝21は表皮材14の周縁部及び留紐材15をこの順に且つ留紐材15が表皮材14の周縁部に挟み込まれるように係止溝21に押し込んだときに、表皮材14の周縁部及び留紐材15と嵌合して表皮材14の周縁部を係止可能とした。係止溝21の内側に突出して表皮材14の周縁部及び留紐材15の係止溝21からの離脱を阻止する係止爪を係止溝21に更に備えても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装部品に係り、特に自動車内部に備えられるコンソールボックスのような内装部品の表面を覆う表皮材の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車などの車両室内には、車両の利便性を高め、デザイン性を向上させるために様々な内装部品が備えられる。例えば運転席と助手席との間には、小物を収納するコンソールボックスが設置されるが、このコンソールボックスは、一般に物を出し入れするための開口を上面に備えた箱状のコンソールボックス本体部とこの上面開口を閉塞する蓋体と有する。蓋体は、コンソールボックス本体部の一端部あるいは一側縁部にヒンジを介して開閉自在に取り付けられる。
【0003】
また、このような内装部品は近年、樹脂成形品であるコア材に布や合成皮革などの表皮材を被せた構造が採られることが少なくない。これは、軽量かつ高強度で廉価なコストで成形できる樹脂によって躯体となるコア材を形成する一方で、樹脂製のコア材を表皮材で覆うことにより内装部品のデザイン性を高めるためである。表皮材で覆うことで外観や手触りを良好にし、優れた質感を持たせることは、車内インテリアのデザイン向上に寄与し、当該自動車の商品価値をデザイン面から高めることにも繋がる。また同様の理由から、例えばセンターコンソールやドア内張など様々な内装部品についても、コア材を表皮材で覆った同様の構造が採用されている。
【0004】
コア材に表皮材を装着するには、従来、例えば袋状など部品形状に合わせて縫製した表皮材を、テンション(引張力)をかけつつコア材を包み込むように被せ、表皮材の周縁部を蓋体の裏面側に折り返して(内側に廻り込ませて)コア材の裏面に固定する。表皮材の固定には、例えば接着剤やタッカーが使用される。
【0005】
また、このような表皮材の支持構造を開示するものとして下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4‐7954号公報
【特許文献2】実用新案登録第2527224号公報
【特許文献3】実開平3‐94342号公報
【特許文献4】実開平1‐89249号公報
【特許文献5】実開平1‐132447号公報
【特許文献6】特開2011‐143782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コア材に表皮材を固定する従来の構造には次のような問題があり、未だ改良の余地を残している。
【0008】
まず、接着剤による方法では、コア材の裏面に接着剤を塗布した後、表皮材をコア材に被せてその縁部を貼り付ける作業を手作業で行うことになるが、弛みなくテンションが掛かった(ぴんと張った)状態となるように接着するには、接着剤を塗布した後直ちに表皮材を貼り付けることは出来ず、接着剤が半乾きとなるまで待って貼り付け固定する必要がある。このため作業に時間を要する。また、接着箇所がずれて表面に皺が生じるようなことがないよう綺麗に表皮材を接着することは必ずしも容易ではなく、作業には神経を使い熟練を要する。
【0009】
また、すべての固定箇所を接着剤に頼ることは、高温の車内温度に晒されることもあり、長年の使用の間には接着箇所が緩んで表皮材に弛みが出る可能性もある。
【0010】
さらに近年、シックカー症候群として、住宅と同様に自動車の内装に使用される接着剤に含まれる化学物質がアトピー性皮膚炎などのアレルギーの原因となり得ることが指摘されている。これに対し、接着剤の使用を抑えることが出来ればこのような問題にも対処可能となる。原因となる可能性のある成分を含まない接着剤に切り替えることも考えられるが、すべての原因物質を完全に特定することは難しく、コスト面からも他の固定方法への変更や他の固定方法との併用により接着剤使用量の低減が望まれる。
【0011】
一方、タッカーによれば、接着剤の乾燥を待つ必要がなく直ちに固定が可能である。しかしながら、タッカーを打ち損じてコア材の肉薄部分に打設するようなことがあれば、タッカーの針が蓋体の表面側に突き出すおそれがあり、歩留り低下の原因となると共に安全性の面で不安が残る。
【0012】
他方、前記特許文献では、フックを使用して表皮材の縁部を係止する構造を採る(例えば前記特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、このような文献記載の方法では、柔軟な表皮材を表面に皺が寄らないように固定するには多数のフックが必要となり、これら各々に表皮材を逐一引っ掛ける作業は時間を要し煩わしい。また、複数あるとは言えフックのみによる離散的な(飛び飛びの)支持であるから、表皮材を皺なく綺麗に張った状態に維持させることは容易ではない。
【0013】
また、前記特許文献6は、上記のような従来の表皮材の支持構造を改良するため本出願人が提案したものであるが、さらなる研究・改良を重ね、作業性および仕上がりの点で一層優れた支持構造を得るに至った。
【0014】
また上記のような問題は、コア材と表皮材を備えた同様の構造を有する各種の内装部品にも共通するものである。
【0015】
したがって、本発明の目的は、接着剤の使用量を減らし又は接着剤を使用せずに表皮材を固定して内装部品の良好な仕上がりを得るとともに、表皮材装着の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る内装部品は、剛性を有する硬質のコア材と、前記コア材を覆う表皮材と、前記表皮材の周縁部を押さえて留める紐状の留紐材とを備えた内装部品であって、前記コア材は、その裏面側の周縁部に、前記表皮材の周縁部および前記留紐材を受け入れ可能な係止溝を備え、当該係止溝は、前記表皮材の周縁部および前記留紐材をこの順に且つ前記留紐材が前記表皮材の周縁部に挟み込まれるように当該係止溝に押し込んだときに、当該表皮材の周縁部および留紐材と嵌合して前記表皮材の周縁部を係止することを可能とするものであり、当該係止溝に、前記表皮材の周縁部および留紐材を挿入することにより前記表皮材を前記コア材に支持させたものである。
【0017】
本発明に係る内装部品では、コア材の表面を覆うように表皮材をコア材に被せ、当該表皮材の周縁部をコア材の周縁部に支持させることにより作製するが、表皮材の支持手段として、コア材の周縁部に形成した溝(係止溝)と、当該係止溝の内部へ表皮材の周縁部と一緒に押し込む紐状の部材(留紐材)とを備え、これら係止溝と留紐材により表皮材の周縁部を係止溝内に固定する。
【0018】
留紐材は係止溝内で表皮材を係止溝の内壁に押し付け、表皮材が係止溝から抜け出ることを防ぐ機能を果たす。なお、留紐材の太さ(径寸法)は、表皮材周縁部と一緒に係止溝内に丁度圧入することが出来るサイズとすれば良い。また、留紐材の構成材料は必ずしも特定のものに限定されないが、典型的にはゴムやシリコン等の樹脂により構成することが出来る。またこのほかにも、アルミニウムや鉄、ステンレスなどの金属ワイヤなどを使用することも可能である。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記留紐材として、径方向に弾性変形可能な(長さ方向にも弾性変形可能であっても良い)中空のチューブ(例えば樹脂製のチューブ)を使用する。このようなチューブによれば、表皮材の装着時にはチューブが弾性変形して係止溝への挿入が容易となり、表皮材の装着を楽に行うことが出来る。また、係止溝への装填後には、当該チューブの復元力によって表皮材が溝内に押し付けられ、表皮材が係止溝から抜け出ることを防ぐことが出来る。
【0020】
このような本発明の支持構造によれば、表皮材の装着にあたって、表皮材の周縁部を留紐材とともにコア材の係止溝内に押し込むだけで良く、接着剤を塗布したりタッカーを打ったりあるいは多数のフックに表皮材の端部を引っ掛ける作業を行う必要がない。したがって、内装部品製造における作業性を向上させることが出来る。さらに本発明では、係止溝と留紐材を使用するから、表皮材の周縁全周に亘って連続的に(フックのように飛び飛びではなく)表皮材を支持することができ、表皮材を皺なく綺麗にコア材に張り渡して内装部品の良好な仕上がりを得ることが出来る。
【0021】
一方、上記のような装着作業とは逆に、本発明によれば表皮材を取り外すことも可能であり、この面からも有利な支持構造と言える。すなわち、車両に設置されユーザが車両を使用している最中は表皮材を剥がすことは通常ないが、当該内装部品の製造中や仕上げ時に、より良好な仕上がりを得るために表皮材の部分的な緩みを直したり、一部を補正するような作業が望まれることがある。このような場合、例えば接着剤やタッカーで固定するのとは異なり、一旦固定した表皮材を留紐材とともに係止溝から取り外すことが出来るから、上記修正作業が可能であり、内装部品の仕上がりをより良好なものとすることが出来る。
【0022】
また、車両を廃棄する場合には、材料ごとに分別廃棄しあるいは部品構成材料を再利用するために、部品ごとに分解・仕分けが一般に行われる。このとき、本発明の部品構造によれば、接着剤やタッカーによって固定された従来構造と比較して表皮材をコア材から外しやすく、また、表皮材に異質の材料(例えば付着した接着剤や打ち込まれた金属製のタッカーの針)が混入することを防ぐことが出来る。
【0023】
本発明では表皮材がコア材を直接(直に)覆うものであっても良いが、表皮材とコア材の間に他の部材・材料が介在されていても良い。例えば、ポリウレタンや発泡ウレタン、スポンジなどの弾性材(クッション材)をコア材と表皮材との間に配置すれば、当該内装部品に弾力性を持たせて手で触れたときの質感や快適性(クッション性)を向上させることができ、さらに当該弾性材の弾性によって表皮材にテンションをかけ、表皮材の弛みを防ぐことも出来る。
【0024】
前記係止溝には、係止溝内に突出して表皮材の周縁部および留紐材が係止溝から離脱することを阻止する係止爪を備えても良い。このような係止爪を備えれば、表皮材をより確実にコア材に(係止溝内に)支持して、使用中の表皮材の緩みや離脱を防ぐことが出来る。
【0025】
また、同様に表皮材をより確実にコア材に支持する観点から、上記係止爪は、係止溝の長さ方向に互いに間隔を隔てて複数備え、これらの係止爪が、係止溝の入口開口を狭めるように係止溝の入口縁部に備えられるようにすることが好ましい。
【0026】
さらに、上記係止爪は、コア材と一体成形することが強度面ならびに製造コストを低減する点から好ましい。この一体成形による係止爪の形成方法については後の実施の形態において図面を参照しながらさらに詳しく述べる。
【0027】
一方、上記係止爪に替え又は係止爪とともに、係止溝の入口開口を覆う底板をコア材の裏面側に備え、この底板によって表皮材を押さえるようにしても良い。このような底板によっても、係止爪と同様に表皮材の緩みや離脱を防ぐことが出来る。
【0028】
本発明に言う内装部品は、車両等の内部に設置される各種の部品であって、コア材を表皮材で覆った構造を有するものである。例えば、コンソールボックス(コンソールボックス本体や蓋体)、センターコンソール、ドアの内張、インスト、ピラー、リアシートに設置される収納ボックス(当該ボックスの本体や蓋体)、アームレストなどが含まれる。また、本発明におけるコンソールボックスは、典型的には、運転席と助手席との間に設置される物入れであるが、後部座席その他の場所に配置されていても良く、設置場所は特に限定されない。例えば、ダッシュボードの助手席側やドア内側に設けられる蓋付の物入れなど、硬質のコア材をシート状の表皮材で覆った構造を有するものに本発明は広く適用することが可能である。
【0029】
さらに本発明は、乗用車のほか、ワンボックスカーやワゴン車、バス、トラックその他の自動車、スクーター・バイクなどの自動二輪車などの各種の車両に備えられる内装部品に適用することが出来る。また自動車以外にも、鉄道車両や航空機、クルーザーなどの船舶その他の乗物、あるいは、乗物以外の様々な内装部品に本発明は適用することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、接着剤の使用量を減らし又は接着剤を使用せずに表皮材を固定して内装部品の良好な仕上がりを得るとともに、表皮材装着の作業性をより一層向上させることが出来る。
【0031】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係る内装部品を示す斜視図である。
【図2】図2は、前記第一実施形態に係る内装部品(図1のA−A切断面)を示す端面図である。
【図3】図3は、前記第一実施形態に係る内装部品を示す分解斜視図(斜め上方から見た状態)である。
【図4】図4は、前記第一実施形態に係る内装部品を示す分解斜視図(斜め下方から見た状態)である。
【図5】図5は、前記第一実施形態に係る内装部品の下端部(係止溝の部分/図2のB部分)を拡大して示す端面図である。
【図6】図6は、前記第一実施形態に係る内装部品の組立工程(前記図2と同様の切断面)を示す端面図である。
【図7】図7は、本発明の第二の実施形態に係る内装部品のコア材の係止溝部分を示す斜視図(斜め下から見た状態)である。
【図8】図8は、前記第二実施形態に係る内装部品の係止溝部分(図7のE−E切断面)を前記図5と同様に示す端面図である。
【図9】図9は、前記第二実施形態に係る内装部品のコア材を示す底面図である。
【図10】図10は、前記第二実施形態に係る内装部品のコア材を製造する金型(係止溝成形部分)を示す断面図(係止爪を形成しない部分の切断面)である。
【図11】図11は、前記第二実施形態に係る内装部品のコア材を製造する金型(係止溝成形部分)を示す断面図(係止爪を形成する部分の切断面)である。
【図12】図12は、前記第二実施形態の変形例に係る内装部品の係止溝部分を前記図5と同様に示す端面図である。
【図13】図13は、前記第二実施形態の別の変形例に係る内装部品の係止溝部分を前記図5と同様に示す端面図である。
【図14】図14は、前記第二実施形態の更に別の変形例に係る内装部品のコア材を示す底面図である。
【図15】図15は、前記第二実施形態における係止爪の構成例を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明の第三の実施形態に係る内装部品の係止溝部分を前記図5と同様に示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
図1から図6に示すように、本発明の第一の実施の形態に係る内装部品11は、自動車内の座席1,2の間に設置されるコンソールボックスの蓋体であり、内部に物品を収納可能なボックス本体(コンソールボックス本体部)3の上面開口を開閉可能に閉塞するものである。この蓋体11は、硬質の樹脂材料(例えばポリプロピレン)により形成したコア材12と、このコア材12の天板部12aと周壁部12b,12c,12d,12eとを覆うように配置した弾性材(スポンジ材)13と、これらコア材12および弾性材13を覆って蓋体11の表面を形成する表皮材14と、表皮材14をコア材12に固定する留紐材15とを備えている。
【0034】
弾性材13は、コア材12と表皮材14との間に介在して蓋体11を触れたときの感触を和らげる(クッションの効いたものとする)と共に、表皮材14によって押圧された(ある程度押し潰された)状態となって、その反発力(弾性)により表皮材14を緊張状態に保つのに寄与する。
【0035】
なお、以下の実施形態の説明では、図中に三次元座標(x1‐x2,y1‐y2およびz1‐z2軸座標)を適宜示し、自動車への設置状態を基準として自動車の前進方向であるy1方向を「前」、後退方向であるy2方向を「後」、進行方向に向かって左方であるx1方向を「左」、進行方向に向かって右方であるx2方向を「右」、鉛直上方向であるz1方向を「上」、鉛直下方向であるz2方向を「下」として説明を行う。
【0036】
コア材12は、略長方形の平面形状を有し、ボックス本体3の上面を塞ぐ天板部12aと、天板部12aの前端、後端、左縁および右縁から立ち下がる周壁部12b〜12e、すなわち、前壁部12b、後壁部12cおよび左右の側壁部12d,12eとを有する。これら周壁部12b〜12eの下端部には、表皮材14を固定するための係止溝21を備える。この係止溝21は、下方へ開口し、表皮材14の周縁部(下端部)を受け入れることが出来るように周壁部12b〜12eの全周(前壁部12b、後壁部12cおよび左右の側壁部12d,12e)に亘って連続して形成してある。
【0037】
なお、コア材12の内側(天板部12aの内面や周壁部12b〜12eの内面)には、ボックス本体3と蓋体11とを接続するヒンジを取り付けるための台座や補強用のリブなどを適宜備えて良いが、上記係止溝21は、これら台座やリブと一緒に例えば射出成形により天板部12aおよび周壁部12b〜12eと共に一体成形する。
【0038】
表皮材14は、コア材12の形状に合わせ、これを覆うことが出来るようにシート状の材料を袋状に縫い合わせたものである。表皮材14のサイズは、コア材12を覆い、係止溝21を使用して表皮材14の周縁部を固定したときに、表皮材14が弛み無く張られた状態となる大きさとする。表皮材14の材料としては、例えば布やモケット(毛織物)、合成皮革、天然皮革、樹脂シートその他の柔軟なシート状の材料を使用する。なお、袋状に縫製した表皮材14の四隅の下端部には、係止溝21への挿入を容易にするため、切込み14aを形成してある。
【0039】
留紐材15は、弾性を有する中空の樹脂チューブからなり、本実施形態では環状に(輪を形成するように)構成するが、両端を備えた線状のもの(1本の又は複数本の紐状のもの)であっても良い。留紐材15は樹脂チューブ以外にも、例えば樹脂製の紐または棒状部材、アルミニウム等の金属材料からなるワイヤなどを使用することも可能である。
【0040】
表皮材14をコア材12に装着するには、図6に示すように弾性材13が備えられたコア材12に表皮材14を被せた後、表皮材14の下縁部をコア材12の下縁に押し当てるようにして内側に折り曲げ(矢印C参照)、表皮材14の下縁部によって留紐材15が包み込まれるように留紐材15を表皮材14の下縁部の外面側に押し当てて係止溝21に留紐材15を押し込めば良い(矢印D参照)。これにより、表皮材14の下縁部が留紐材15と一緒に係止溝21内に圧入され、図5に示すように表皮材14の下端部をコア材12に支持することが出来る。またこの支持状態では、表皮材14は緊張状態に、すなわち、表皮材側から見ればコア材12の下縁において係止溝21内に引き込まれるように係止され、係止溝21と留紐材15によって固定される。なお、図5は左側壁部12dの下端部を示しているが、前壁部12b、後壁部12cおよび右側壁部12eについてもこの図5に示すのと同様の構造を備える。
【0041】
本実施形態の支持構造によれば、フックを使用した場合と異なり、係止溝21および留紐材15によってコア材12の下縁全周に亘って連続的に表皮材14が支持されるから、蓋体11の表面において表皮材14に皺が寄り難くなり、綺麗に張った状態に表皮材14をコア材12に支持させることが出来る。
【0042】
〔第2実施形態〕
本発明の第二の実施形態について図7から図14を参照して説明する。なお、以下の説明では、前記第一実施形態と同様の構成については重複した説明を省き、相違点を中心に述べる。
【0043】
本発明の第二の実施形態に係る内装部品は、前記第一実施形態の内装部品と同様にコア材12の下端部に係止溝21を備えるものであるが、係止溝21の内側に表皮材14の離脱を防ぐ係止爪22を備えている。この係止爪22は、係止溝21の入口部(係止溝21の外側の側壁21aの下端部)から略水平に当該係止溝21内に突出するようにコア材12と一体成形したものであり、係止溝21内に押し込まれた表皮材14の縁部と留紐材15は、この係止爪22に引っ掛かって係止溝21から離脱し難くなり、本実施形態によれば、表皮材14が係止溝21から不用意に抜け出ることをより確実に防ぐことが出来る。
【0044】
上記係止爪22は、表皮材14をより確実に係止溝21内に保持するため、図9に示すように係止溝12に沿ってコア材12の周縁全周に亘って互いに間隔を隔てて配列されるように複数備える。またこれらの係止爪22は、係止溝21の中央に向かって(水平方向に)先端が尖った三角形の断面形状を有する。このような形状の係止爪22によれば、係止溝21内に挿入された表皮材14に係止爪22が食い込んで表皮材14の抜け出しをより確実に防ぐことが出来る。なお、係止爪22の形状はこの例に限定されず、他の様々な形状とすることが出来る。
【0045】
例えば、図15の(a)〜(g)に示すように、三角形、四角形または五角形、丸みを帯びた形状など様々な断面形状としたり、同図(h)に示すように斜め下方へ向かって延びるようにしたり、逆に同図(i)に示すように斜め上方へ向け延びるようにしたり、同図(j)に示すように先端部が上方に向け折れ曲がる鉤状の断面形状としたり、逆に同図(k)に示すように先端部が下方に向け折れ曲がる鉤状の断面形状とすることが出来る。また、同図(l)に示すように上面に、あるいは同図(m)に示すように下面にそれぞれ切込み22aを入れ、係止爪22が上下方向に撓みやすくすることにより、係止溝21への表皮材の固定作業を行いやすくすることも可能である。さらにこれら以外にも様々な形状を採ることが出来る。
【0046】
上記係止溝21と係止爪22を備えたコア材12は、樹脂を使用して一体成形により作製する。この方法について図10から図11を参照して述べる。
【0047】
図10および図11は、係止溝部分の金型構成(上型31および下型32)を示す断面図であり、図10は係止爪22を形成しない部分の断面を、図11は係止爪22を形成する部分の断面をそれぞれ示している。これらの図に示すように係止溝21内に突出する係止爪22を成形するには、平面から見たときに係止爪22の平面形状に対応した平面形状を有する棒状の突出部31aを成形金型の上型31に設け、係止溝21を形成する(係止溝21内に突出することとなる)下型32の突出部32aと組み合わされるように金型31,32を構成すれば、係止溝21とこの係止溝21内に突出する係止爪22とを備えたコア材12を成形することが出来る。
【0048】
なお、このような成形を行うため、係止溝21の天面21cには、各係止爪22に対応した位置(各係止爪22の上方位置)に、成形後に上記上型の突出部31aを抜き取った貫通孔23(図7および図8参照)が形成されることとなるが、これらの貫通孔23は表皮材14に覆われて外部から見えることはなく、デザイン性を損なうことはない。
【0049】
係止爪22は、上記実施形態では係止溝21を形成する両側壁21a,21bのうちの外側の側壁21aに設けたが、図12に示すように内側の側壁21bに設けても良い。また、表皮材14の保持力をより強固にするため、図13に示すように内外両方の側壁21a,21bに備えても良い。この場合、図13に示すように内外両側壁21a,21bに設けた係止爪22同士が互いに向かい合うように同位置に備えても良いし、図14に示すように内側側壁21bの係止爪22と外側側壁21aの係止爪22とが互い違いになるように備えても良い。
【0050】
〔第3実施形態〕
本発明の第三の実施形態に係る内装部品は、図16に示すように前記第一および第二実施形態の内装部品と同様に、コア材12の下端部の係止溝21により表皮材14を支持したものであるが、コア材12の底面を覆う底板24をさらに備えている。
【0051】
この底板24は、例えばボルト等によりコア材12に固定し係止溝21の開口部を覆うものであるが、係止溝21内への表皮材14の固定を可能とするため、係止溝21を完全に覆ってしまうことはなく、固定状態において係止溝21の外側の側壁21aとの間に一定の(表皮材14の肉厚程度の)隙間が形成されるサイズ寸法としてある。当該内装部品の作製手順としては、表皮材14の周縁部を留紐材15とともに係止溝21に押し入れた後に、底板24をコア材12の裏面に取り付ければ良い。
【0052】
このように底板24を備えることによっても、前記第二実施形態の係止爪22と同様に、表皮材14の周縁部を留紐材15とともに係止溝21内により確実に保持することが出来る。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0054】
例えば、前記実施形態では、コア材の底面が開口した箱状の部品(コンソールボックスの蓋体)について説明したが、本発明の特徴はコア材への表皮材の支持構造にあり、したがって本発明に言う内装部品の種類や形状は図示の部品に何ら限定されるものではなく、内装部品(コア材や表皮材等)の形状は様々なものであって良い。また、コア材、表皮材および留紐材を構成する材料は、実施形態で具体的に記載したものに限定されず、他の材料を使用することも可能である。例えば、コア材は典型的には樹脂(例えば熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂)により形成するが、樹脂以外にも金属その他の硬質の材料により形成することも出来る。
【0055】
また、前記実施形態では袋状に縫い合わせた表皮材を使用したが、表皮材は袋状のものに限られず、例えば、複数の表皮片を縫い合わせたものではない1枚構成のものであったり、袋状ではない平面的なシート状のものや他の立体的な形状を備えたものなど、内装部品の形状に応じた様々な形状・構造を有するものであって良い。
【符号の説明】
【0056】
1,2 座席
3 コンソールボックス本体部
11 内装部品(コンソールボックスの蓋体)
12 コア材
12a コア材の天板部
12b コア材の前壁部
12c コア材の後壁部
12d コア材の左側壁部
12e コア材の右側壁部
13 弾性材
14 表皮材
14a 表皮材四隅下端部の切込み
15 留紐材
21 係止溝
21a 係止溝の外側側壁
21b 係止溝の内側側壁
21c 係止溝の天板
22 係止爪
22a 係止爪の切込み
23 貫通孔
24 底板
31 成形金型(上型)
31a 係止爪形成用の突出部
32 成形金型(下型)
32a 係止溝形成用の突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有する硬質のコア材と、
前記コア材を覆う表皮材と、
前記表皮材の周縁部を押さえて留める紐状の留紐材と
を備えた内装部品であって、
前記コア材は、その裏面側の周縁部に、前記表皮材の周縁部および前記留紐材を受け入れ可能な係止溝を備え、
当該係止溝は、前記表皮材の周縁部および前記留紐材をこの順に且つ前記留紐材が前記表皮材の周縁部に挟み込まれるように当該係止溝に押し込んだときに、当該表皮材の周縁部および留紐材と嵌合して前記表皮材の周縁部を係止することを可能とするものであり、
当該係止溝に、前記表皮材の周縁部および留紐材を挿入することにより前記表皮材を前記コア材に支持させた
ことを特徴とする内装部品。
【請求項2】
前記係止溝の内側に突出して前記表皮材の周縁部および留紐材の当該係止溝からの離脱を阻止する係止爪を前記係止溝にさらに備える
請求項1に記載の内装部品。
【請求項3】
前記係止爪は、前記係止溝の長さ方向に互いに間隔を隔てて複数備えられ、
これらの係止爪は、前記係止溝の入口開口を狭めるように当該係止溝の入口縁部に備えられる
請求項2に記載の内装部品。
【請求項4】
前記係止爪は、前記コア材と一体成形されたものである
請求項2または3に記載の内装部品。
【請求項5】
前記係止溝の入口開口を覆う底板を前記コア材の裏面側にさらに備えた
請求項1から4のいずれか一項に記載の内装部品。
【請求項6】
前記留紐材は、径方向に弾性変形可能な中空のチューブである
請求項1から5のいずれか一項に記載の内装部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−43599(P2013−43599A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183947(P2011−183947)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(592221399)ナカシン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】