説明

内視鏡の照明装置

【課題】内視鏡検査中に、挿入部を被検者の体内から一旦抜き出すことなく蛍光体を交換して、異なる波長による特殊観察等を容易に行うことができ、また、励起光であるレーザ光を伝送するための光ファイバが折れても、内視鏡を分解することなく新しい光ファイバと交換することができる内視鏡の照明装置を提供すること。
【解決手段】照明窓8にカバーガラス9が水密に取り付けられて、挿入部2内に挿通配置された案内チャンネル10の先端がカバーガラス9の裏側に面して配置されると共に、レーザ光が照射されることにより励起されて蛍光を放射する蛍光体22がレーザ光を伝達するための光ファイバ21の先端に一体に取り付けられた照明ユニット20が、案内チャンネル10内に手元側から挿脱自在に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の照明光を発生する光源としては、ハロゲンランプやキセノンランプ等が広く用いられているが、そのようなランプ類を光源として用いた装置は消費電力が大きくなってしまう。
【0003】
そこで、レーザダイオードで発生させたレーザ光を内視鏡の挿入部先端に設けられた照明窓に導いて、照明窓に取り付けられた蛍光体を励起することにより、蛍光体から発っせられる可視の特定波長の蛍光により内視鏡の観察領域を照明する照明装置が開発されている。
【0004】
そのような内視鏡の照明装置においては、蛍光体を特性の違うものと交換することにより、励起される照明光の波長を任意に選択することができるメリットがあり、従来の内視鏡の照明装置においては、内視鏡の挿入部先端に着脱可能なアダプタに蛍光体を取り付けていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−323738
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内視鏡の挿入部先端に着脱可能なアダプタに蛍光体が取り付けられた構成の内視鏡の照明装置においては、蛍光体を交換して異なる波長の照明光で特殊観察を行いたい場合等に、内視鏡を被検者の体内から一旦抜き出して、体内汚液で汚れた挿入部を洗浄した後にアダプタを交換する作業を行い、それから内視鏡を被検者の体内に再挿入する必要があって極めて煩雑である。
【0006】
また、励起光であるレーザ光を伝送するための光ファイバは、一般の内視鏡の照明光伝送用に用いられているライトガイドファイババンドルと比較して屈曲等で折れ易い性質があるが、内視鏡内に固定的に配置されているので、交換するためには内視鏡をバラバラに分解する重修理が必要になってしまう。
【0007】
本発明は、内視鏡検査中に、挿入部を被検者の体内から一旦抜き出すことなく蛍光体を交換して、異なる波長による特殊観察等を容易に行うことができ、また、励起光であるレーザ光を伝送するための光ファイバが折れても、内視鏡を分解することなく新しい光ファイバと交換することができる内視鏡の照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の照明装置は、可撓性の挿入部の先端に設けられた照明窓にカバーガラスが水密に取り付けられて、挿入部内に挿通配置された案内チャンネルの先端がカバーガラスの裏側に面して配置されると共に、案内チャンネルの基端が挿入部の基端より手元側において外方に開口配置されて、レーザ光が照射されることにより励起されて蛍光を放射する蛍光体がレーザ光を伝達するための光ファイバの先端に一体に取り付けられた照明ユニットが、案内チャンネル内に手元側から挿脱自在に設けられているものである。
【0009】
なお、照明ユニットの最先端部において、蛍光体から放射される蛍光の配光を広げるための配光レンズが蛍光体の先端面に固着されていてもよく、照明ユニットが案内チャンネル内に挿通配置された状態の時に照明ユニットの先端をカバーガラスの裏面に押し付ける方向に付勢する付勢手段が照明ユニットに設けられていてもよい。そして、照明ユニットに、案内チャンネルの基端開口部に係脱自在な栓体が設けられていて、付勢手段として、コイルスプリングが照明ユニットの先端部分と栓体との間に圧縮された状態で配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザ光照射により励起されて蛍光を放射する蛍光体がレーザ光を伝達するための光ファイバの先端に一体に取り付けられた照明ユニットが、カバーガラスで先端側が水密に封止された案内チャンネル内に手元側から挿脱自在に設けられていることにより、内視鏡検査中に、挿入部を被検者の体内から一旦抜き出すことなく蛍光体を交換して、異なる波長による特殊観察等を容易に行うことができ、また、励起光であるレーザ光を伝送するための光ファイバが折れても、内視鏡を分解することなく新しい光ファイバと交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
可撓性の挿入部の先端に設けられた照明窓にカバーガラスが水密に取り付けられて、挿入部内に挿通配置された案内チャンネルの先端がカバーガラスの裏側に面して配置されると共に、案内チャンネルの基端が挿入部の基端より手元側において外方に開口配置されて、レーザ光が照射されることにより励起されて蛍光を放射する蛍光体がレーザ光を伝達するための光ファイバの先端に一体に取り付けられた照明ユニットが、案内チャンネル内に手元側から挿脱自在に設けられている。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡装置の全体構成を示しており、内視鏡1の可撓性挿入部2の基端には操作部3が連結されている。
【0013】
可撓性挿入部2の先端面に配置された観察窓4の裏側には、対物光学系5と、観察窓4から取り込まれて対物光学系5で投影された被写体像を撮像する固体撮像素子6が配置されている。固体撮像素子6で撮像された被写体像の撮像信号は、信号ケーブル7でビデオプロセッサ30に伝送され、その映像がモニタテレビ40に表示される。
【0014】
可撓性挿入部2の先端面には、被写体を照明するための照明光が放射される照明窓8が観察窓4と並んで配置されていて、その照明窓8には透明なカバーガラス9が水密に取り付けられている。その結果、照明窓8の内側の空間は外部に対して完全に遮蔽されている。
【0015】
10は、可撓性挿入部2内に全長にわたって挿通配置された可撓性チューブ等からなる案内チャンネルであり、案内チャンネル10の先端はカバーガラス9の裏側に後方から真っ直ぐに面して開口配置されている。
【0016】
案内チャンネル10の基端開口部10aは、可撓性挿入部2の基端より手元側に位置する操作部3の下端部付近に斜め上方に外方に向けて開口配置されていて、そこから照明ユニット20が案内チャンネル10内に挿脱自在に通されている。
【0017】
照明ユニット20を構成する光ファイバ21の入射端は、ビデオプロセッサ30内に配置されたレーザダイオード光源31に接続されている。ただし、そのような光源装置がビデオプロセッサ30とは別設されていてもよい。
【0018】
図3は本発明の主要部分を拡大して示しており、光ファイバ21は例えば石英単ファイバ等で形成されている。そして、レーザ光が照射されることにより励起されて特定波長の蛍光を放射する蛍光体22が、光ファイバ21の先端射出面に接着等により一体に取り付けられ、その蛍光体22から放射される蛍光の配光を広げるための配光レンズ23が、蛍光体22の先端面に接着等により固着されている。
【0019】
操作部3の下端部付近に配置された案内チャンネル10の基端開口部10aには、照明ユニット20の栓体24が例えば螺合等の係合手段により係脱自在に取り付けられ、その栓体24の軸線位置に形成された貫通孔に光ファイバ21が通されている。
【0020】
また、処置具類を挿通するために可撓性挿入部2内に全長にわたって挿通配置された処置具挿通チャンネル12の入口口金13が、栓体24と並んで配置されている。図4は、その部分を含む操作部3の外観図である。
【0021】
図3に示される25は、光ファイバ21を囲む状態に配置されたコイルスプリングであり、その先端は蛍光体22の後端面に当接し、後端は栓体24の先端面に当接して、蛍光体22と栓体24との間に圧縮された状態で配置されている。
【0022】
その結果、栓体24が案内チャンネル10の基端開口部10aに係合した状態では、蛍光体22と配光レンズ23とが、コイルスプリング25の付勢力によってカバーガラス9の裏面に押し付けられる方向に付勢されていて、可撓性挿入部2が屈曲したような場合においても、配光レンズ23の先端面がカバーガラス9の裏面に対して隙間をあけない状態を保ち、観察視野の照明状態に乱れが発生しない。
【0023】
このような構成により、励起光であるレーザ光が光ファイバ21により伝送されて蛍光体22に当たると、励起された蛍光体22から特定波長の励起光が放射され、その光が配光レンズ23で広げられてカバーガラス9を通り、照明窓8から観察視野に向かって放射される。
【0024】
そのような、光ファイバ21、蛍光体22、配光レンズ23、栓体24及びコイルスプリング25によって照明ユニット20が構成されていて、案内チャンネル10の基端開口部10aに対する栓体24の係合を解くことにより、図1に示されるように、照明ユニット20を案内チャンネル10内から一まとめに抜き出すことができる。
【0025】
したがって、内視鏡検査の最中であっても、内視鏡1の可撓性挿入部2を被検者の体内から一旦抜き出すことなく、照明ユニット20を蛍光体23の特性が違うものと交換して、異なる波長による特殊観察等を容易に行うことができる。また、光ファイバ21が折れても、内視鏡1を分解することなく新しい光ファイバ21を備えた照明ユニット20と交換して、即座に内視鏡観察を続行することができる。
【0026】
図5は本発明の第2の実施例の内視鏡装置の全体構成を示しており、通常の照明光を伝達するためのライトガイドファイババンドル16が案内チャンネル10と並列に内視鏡1内に組み込まれている。17は、ライトガイドファイババンドル16から放射される照明光を広げるための配光レンズである。
【0027】
ビデオプロセッサ30内には、キセノンランプ又はハロゲンランプ等のような通常光の光源ランプ32が設けられていて、その光源ランプ32から放射された照明光がライトガイドファイババンドル16に与えられる。その他の構成は、前述の第1の実施例と同じである。
【0028】
このように構成することにより、通常光による通常の内視鏡観察を十分に明るい照明下に行うことができると共に、観察視野への照明を途絶えさせることなく、照明ユニット20を交換して任意の特定波長の照明を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の照明装置において照明ユニットが内視鏡から抜き出された状態の断面略示図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡装置の全体構成を示す略示図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡の照明装置において照明ユニットが内視鏡に挿入された状態の断面略示図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の操作部の外観図である。視図である。
【図5】本発明の第2の実施例の内視鏡装置の全体構成を示す略示図である。
【符号の説明】
【0030】
1 内視鏡
2 可撓性挿入部
8 照明窓
9 カバーガラス
10 案内チャンネル
10a 基端開口部
16 ライトガイドファイババンドル
20 照明ユニット
21 光ファイバ
22 蛍光体
23 配光レンズ
24 栓体
25 コイルスプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の挿入部の先端に設けられた照明窓にカバーガラスが水密に取り付けられて、上記挿入部内に挿通配置された案内チャンネルの先端が上記カバーガラスの裏側に面して配置されると共に、上記案内チャンネルの基端が上記挿入部の基端より手元側において外方に開口配置されて、レーザ光が照射されることにより励起されて蛍光を放射する蛍光体がレーザ光を伝達するための光ファイバの先端に一体に取り付けられた照明ユニットが、上記案内チャンネル内に手元側から挿脱自在に設けられていることを特徴とする内視鏡の照明装置。
【請求項2】
上記照明ユニットの最先端部において、上記蛍光体から放射される蛍光の配光を広げるための配光レンズが上記蛍光体の先端面に固着されている請求項1記載の内視鏡の照明装置。
【請求項3】
上記照明ユニットが上記案内チャンネル内に挿通配置された状態の時に上記照明ユニットの先端を上記カバーガラスの裏面に押し付ける方向に付勢する付勢手段が上記照明ユニットに設けられている請求項1又は2記載の内視鏡の照明装置。
【請求項4】
上記照明ユニットに、上記案内チャンネルの基端開口部に係脱自在な栓体が設けられていて、上記付勢手段として、コイルスプリングが上記照明ユニットの先端部分と上記栓体との間に圧縮された状態で配置されている請求項3記載の内視鏡の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39464(P2009−39464A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210607(P2007−210607)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】