説明

内視鏡システム及びその操作補助方法

【課題】拡大観察と通常観察に適した照明光を照射する。
【解決手段】ライトガイド30は、第1ファイバ束51と、第2ファイバ束52とからなる。第1ファイバ束51の光ファイバの開口数よりも第2ファイバ束52の光ファイバの開口数の方が大きくされている。拡大観察モードのときには、第1ファイバ束51からの照明光だけで被観察部位が照明され、また通常観察モードのときには、第2ファイバ束52からの照明光で被観察部位が照明されるようにし、光量が不足するときには、第1ファイバ束51からの照明光も照射されるように光量調節機構34が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの照明光をライトガイドを用いて導光し、その照明光を被観察部位に照射する内視鏡システム及びその操作補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、被観察部位を撮像する内視鏡を用いた診断が数多く行われている。このような内視鏡では、被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けた観察窓を通してイメージセンサで被観察部位が撮像され、その画像がモニタに表示される。また、近年では、被観察部位を拡大して撮影・観察することができる拡大内視鏡が多く利用されている。拡大内視鏡では、焦点距離を変化させることにより撮像倍率を増減できるようにしてあり、焦点距離を長く(望遠側)することで撮像倍率が大きくなり、被観察部位を拡大して観察することができるようになる。
【0003】
上記のような拡大内視鏡では、一般的には、まず撮像倍率を低く(焦点距離を短く)した通常観察状態でスクリーニングを行い、病変が疑われる部位の発見・特定を行う。この後に焦点距離を長くするとともに、その特定された部位に内視鏡の先端面に設けた対物レンズを近接させることにより、その部位を拡大観察する。
【0004】
拡大観察時において、異形血管の有無など表層血管の状態を観察するこことは、病変の診断や進行状態を知る上で重要である。表層血管を観察する場合に、波長の短い青色の光成分の多い照明光を照射しながら撮像することが、表層血管を観察し易くし、正確な診断を行うことができることが知られている。これは、血液中に含まれるヘモグロビンが青色の光成分に対して高い吸収率を示し、また長波長の光成分が多くなると、その光成分が深層に達しその深層を光らせてコントラストを低下させてしまうからである。
【0005】
一方、内視鏡システムでは、ライトガイドを用いて光源装置からの照明光を挿入部の先端部にまで導光し、被観察部位に照射するようにしている。このライトガイドは、多数の光ファイバを束状にしたものである。このようなライトガイドは、光ファイバの特性により、その長さが長くなるほど伝達される光の減衰が大きくなり、短波長の光成分ほど減衰率が大きくなる傾向がある。
【0006】
また、特許文献1のように開口数の大きな光ファイバを用いたライトガイドと開口数の小さな光ファイバを用いたライトガイドを用いて照明光を照射するようにした内視鏡が知られている。この特許文献1の内視鏡では、開口数の大きな光ファイバのライトガイドを広角配光に用い、開口数の小さな光ファイバのライトガイドを狭角配光に用いることにより、照明光学系のレンズに負担をかけることなく単レンズで広角配光と狭角配光を得るようにしている。これにより、管腔部を観察する場合に、また平面部を観察する場合では狭角配光の強度を低下させることにより、良好な配光特性が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−66020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、開口数の大きな光ファイバのライトガイドでは、光源からの照明光の入射効率が高いので、光量を大きくする上で有利であるが、光ファイバの内部での光の反射回数が多くまた屈折率が高いことから、青色の光成分が著しく減衰する。このため、青色の光成分がほとんど含まれていない照明光が被観察部位に照射されて拡大観察を行うには不向きとなる。一方、開口数の小さな光ファイバのライトガイドでは、光量が不足しがちであり、通常観察には不向きであり、十分な光量を得ようとすると、出力の大きな光源が必要となり、装置の大型化を招き好ましくない。
【0009】
本発明は、通常観察時には十分な照明光の光量を得ながら、拡大観察時に最適な照明光を容易に得ることができる内視鏡システム及びその操作補助方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡システムでは、被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、ズームタイプの撮影光学系を通して被観察部位を撮像する撮像部と、第1の開口数の光ファイバで構成される第1ファイバ束と、第1の開口数よりも大きな第2の開口数の光ファイバで構成される第2ファイバ束とからなり、各ファイバ束の入射端に入射される照明光を、先端部に導き各ファイバ束の射出端から被観察部位に照明光を照射するライトガイドと、を有する内視鏡と、前記第1ファイバ束と前記第2ファイバ束の各入射端に照明光を入射する光源と、前記光源からの照明が第2ファイバ束の入射端に入射することを許容する第2ファイバ束許容状態と遮断する第2ファイバ束遮断状態とに切り替えられる光量調節機構と、を有する光源装置と、前記撮影光学系を所定焦点距離以上とした拡大観察モートでは、前記第1ファイバ束からの照明光だけが被観察部位に照射されるように、前記光量調節機構を第2ファイバ束遮断状態とする光量制御手段を有する制御装置と、を備えたものである。
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0011】
前記光量調節機構を第2ファイバ束許容状態としたときに、前記第2ファイバ束から射出される光量よりも前記第1ファイバ束から射出される光量が小さくなるようにするのがよい。また、前記第2ファイバ束よりも前記第1ファイバ束を構成する光ファイバの本数が少なくすることで実現するのが簡便である。
【0012】
また、前記先端部の先端面には、前記撮像部が撮像するための観察窓と、前記第1ファイバ束からの照明光を射出する第1照明窓と、前記第2ファイバ束からの照明光を射出する第2照明窓とが設けられ、前記第1照明窓を、前記第2照明窓よりも観察窓に近接して配するのがよい。
【0013】
また、前記第1ファイバ束と前記第2ファイバ束の入射端側がまとめられ射出端側で分けられており、入射端では、前記第1及び第2ファイバ束の各領域に区分されているのも好ましい。
【0014】
また、第1の開口数が0.5未満、第2開口数が0.5以上とするのがよい。
【0015】
前記光量調節機構前記光源からの照明が第1ファイバ束の入射端に入射することを許容する第1ファイバ束許容状態と遮断する第1ファイバ束遮断状態とに切り替えられるようにし、前記光量制御手段が、撮影光学系が所定焦点距離未満となる通常観察モードでは、前記第2ファイバ束からの照明光が被観察部位に照射されるように、前記光量調節機構を第1ファイバ束遮断状態とするのがよい。
【0016】
また、前記光量調節機構を、光源から第1ファイバ束に入射する光量と第2ファイバ束に入射する光量とのそれぞれを調節自在とし、前記光量制御手段が、前記通常観察モートでは、光量の過不足に対して、第1ファイバ束遮断状態を維持しつつ、第2ファイバ束に入射する光量を調節し、前記拡大観察モートでは、第2ファイバ束遮断状態を維持しつつ、光量の過不足に対して第1ファイバ束に入射する光量を調節するように前記光量調節機構を制御するのも好ましい。
【0017】
また、前記光量制御手段が、前記通常観察モートで前記第2ファイバ束からの照明光だけで光量が不足する場合に、第1ファイバ束遮断状態を解除して、前記第1ファイバ束の入射端に入射端に光源からの照明光を入射させ、その光量を増減するように前記光量調節機構を制御するのも好ましい。
【0018】
本発明の内視鏡システムの操作補助方法では、撮影光学系の焦点距離を変更する焦点距離変更ステップと、撮影光学系が所定焦点距離以上の拡大観察モードであるか未満の通常観察モードであるかを判別する焦点距離判別ステップと、拡大観察モード下では、入射端に入射される照明光を、先端部に導き各ファイバ束の射出端から被観察部位に照明光を照射するライトガイドを構成する第1の開口数の光ファイバからなる第1ファイバ束と、第1の開口数よりも大きな第2の開口数の光ファイバからなる第2ファイバ束のうち、第1ファイバ束の入射端だけに光源からの照明光が入射されるように、光源からの照明光の入射状態を制御する制御ステップとを有するものである。
【0019】
前記制御ステップは、通常観察モードでは、光源からの照明光が第2ファイバ束の入射端だけに入射されるように、光源からライトガイドへの照明光の入射状態を制御するのがよい。
【0020】
また、前記制御ステップは、通常観察モードでは、光量の過不足に対して、光源からの照明光の第1ファイバ束の入射端への入射を遮断しつつ、第2ファイバ束に入射する光量を調節し、前記拡大観察モートでは、光源からの照明光の第2ファイバ束の入射端への入射を遮断しつつ、光量の過不足に対して第1ファイバ束に入射する光量を調節するのがよい。
【0021】
また、前記制御ステップは、前記通常観察モートで前記第2ファイバ束からの照明光だけで光量が不足する場合に、前記第1ファイバ束の入射端に光源からの照明光を入射させ、その光量を増減するのがよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、所定焦点距離以上の拡大観察モードでのときには、ライトガイドを構成するファイバ束のうち小さい開口数の第1ファイバ束からの照明光で被観察部位を照明し、所定焦点距離未満の通常観察モードでのときには、大きい開口数の第2ファイバ束からの照明光で被観察部位を照明するようにしたから、拡大観察モードに適した青色光成分が多い照明光で照明を行いうことができる。また、通常観察モードででは十分な照明光の光量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】内視鏡システムの概略図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の先端面を説明するための説明図である。
【図3】内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図4】ライトガイドの入射端面を示す説明図。
【図5】光量調整機構の動作状態を示す説明図である。
【図6】光量調整機構の動作の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】1枚の遮光板で構成した光量調整機構の動作状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、内視鏡システム10は、患者体内の被観察部位を撮像する電子内視鏡11、電子内視鏡11により得られた撮像信号に基づいて被観察部位の観察像を生成するプロセッサ装置12、被観察部位を照明する照明光の光源を内蔵した光源装置13、観察像を表示するモニタ14、撮影光学系の焦点距離を変更するためのフットペダル15から構成されている。
【0025】
この内視鏡システム10は、撮影光学系の焦点距離に応じて通常観察モードと拡大観察モードとに切り換わる。通常観察モードは、撮像倍率を低くして病変が疑われる部位の発見・特定を行うための通常観察に用いられる。また、拡大観察モードは、撮像倍率を高くし、被観察部位に近接して拡大観察するモードであり、表層血管を観察する際に用いられる。
【0026】
電子内視鏡11は、体内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部に連設され、電子内視鏡11の把持及び挿入部16の操作に用いられる操作部17と、操作部17をプロセッサ装置12及び光源装置13にそれぞれ接続するユニバーサルコード18とを備えている。挿入部16の先端部位である先端部16aには、被観察部位の照明や撮像に用いられる光学系、イメージセンサなどが内蔵されている。先端部16aの後端には、湾曲自在な湾曲部16bが連設されている。
【0027】
図2に示すように、先端部16aの先端面19には、観察窓20、第1照明系L1の第1照明窓21,第2照明系L2の第2照明窓22、送気送水ノズル23、挿入部16内に挿通された鉗子チャネルの出口となる鉗子出口24等が設けられている。
【0028】
第1照明系L1は、拡大観察モードで主として用いられる照明系であり、先端面19を被観察部位に近接した状態で、観察窓20を通して撮像される被観察部位に第1照明窓21からの照明光を照射する。第2照明系L2は、通常観察モードで用いられる照明系であり、拡大観察モードに比べて先端面19を被観察部位から十分に離した状態で観察窓20を通して撮像される被観察部位に第2照明窓22からの照明光を照射する。各観察モード下で、対応する照明系を用いて撮像範囲に照明光の照射範囲が重なるようにするために、観察窓20に対して第1照明窓21を第2照明窓22よりも近づけて配置してあり、観察窓20に対する第1照明窓21の距離R1が観察窓20に対する第2照明窓22の距離R2よりも小さくされている。なお、撮像範囲に照明光の照射範囲が重なるように第1照明系L1の光軸を傾けてもよい。
【0029】
図1において、操作部17には、アングルノブ26、操作ボタン27、鉗子入口28などが設けられている。アングルノブ26は、挿入部16の湾曲方向及び湾曲量を調整する際に回転操作される。操作ボタン27は、送気・送水や吸引等の各種の操作に用いられる。鉗子入口28は鉗子チャネルに連通している。ユニバーサルコード18には、送気・送水チャンネル、信号ケーブルなどの他、ライトガイド30(図3参照)が組み込まれている。
【0030】
フットペダル15は、一対のペダル15a,15bを有しており、例えばペダル15aを操作すると望遠端に向けて撮影光学系の焦点距離が長くなり、ペダル15bを操作すると広角端に向けて撮影光学系の焦点距離が短くなる。
【0031】
図3に示すように、光源装置13は、光源32と、集光レンズ33と、光量調節機構34と、光源駆動部35とを備えている。光源32は、ヘモグロビンの光の吸収スペクトルの波長域(青色光)を含む白色の照明光を発生するようにされている。例えば、キセノンランプ、白色LEDなどが用いられ、波長が赤色領域から青色領域(約470〜700nm)にわたる白色の照明光を発生する。
【0032】
集光レンズ33は、光源32からの照明光を集光してライトガイド30の入射端30aに入射させる。光量調節機構34は、集光レンズ33と入射端30aの間に配されており、詳細を後述するように、プロセッサ装置12に制御され、入射端30aに入射する照明光の光量を調節する。光源駆動部35は、プロセッサ装置12の制御の下で光源32を点灯させる。
【0033】
電子内視鏡11は、ライトガイド30、撮影光学系37、イメージセンサ38、アナログ処理回路(AFE:Analog Front End)39、撮像制御部40,ズーム機構41などを備えている。撮影光学系37とイメージセンサ38とによって撮像部が構成されている。撮影光学系37は、対物レンズ37a、ズームレンズ37bなどで構成され、焦点距離が変わるズームタイプとなっている。対物レンズ37aは、観察窓20から露呈されている。
【0034】
ズームレンズ37bは、焦点距離を最も長くした望遠端に対応する望遠位置と、最も短くした広角端に対応する広角位置との間で光軸方向に移動自在となっている。このズームレンズ37bは、プロセッサ装置12に駆動が制御されるズーム機構41によって光軸方向に移動される。これにより撮像倍率(観察倍率)を変えることができる。
【0035】
イメージセンサ38は、例えばCCD型のものが用いられている。このイメージセンサ38は、撮影光学系37によって結像される光学像を電気的な撮像信号に変換してAFE39へ出力する。なお、イメージセンサ38としては、CCD型のものに代えてMOS型のものを用いてもよい。イメージセンサ38は、プロセッサ装置12により制御される撮像制御部40からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE39へ出力する。
【0036】
AFE39は、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、及びアナログ/デジタル変換器(A/D)から構成されている。CDSは、イメージセンサ35からの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施してノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/Dは、AGCで増幅された撮像信号を、所定のビット数の画像データにデジタル変換してプロセッサ装置12に送る。
【0037】
プロセッサ装置12は、メモリ44、CPU45、デジタル信号処理部(Digital Signal Processor:DSP)46、フレームメモリ47、表示制御部48などで構成される。メモリ44には、内視鏡システム10を制御するための各種プログラムやデータが格納されている。CPU45は、プロセッサ装置12の各部、光源装置13の光量調節機構34及び光源駆動部35を、メモリ44から読み出したプログラムやデータに基づき、統括的に制御する。
【0038】
DSP46は、AFE39から入力される画像データに対し、ホワイトバランス調整、色調処理、階調処理、シャープネス処理などの画像処理を行う。画像処理された画像データは、フレームメモリ47に記憶される。表示制御部48は、フレームメモリ47から画像データを読み出し、この画像データに基づいてモニタ14を駆動する。これにより、イメージセンサ38で撮像した被写体像がモニタ14に観察像として表示される。また、表示制御部48は、輝度検出回路48aを内蔵しており、画像データに基づいて、観察像の輝度を検出する。この検出した輝度の情報は、CPU45に送られ、照明光の光量の制御に用いられる。
【0039】
ズームスイッチ50は、フットペダル15に内蔵されており、ペダル15a,15bの操作に応じたズーム信号を発生する。CPU45は、このズーム信号に基づき、ズーム機構41を駆動しズームレンズ37bを移動させる。これにより、フットペダル15でなされたズーム操作に応じて撮像倍率が変化する。なお、ズームスイッチ50を電子内視鏡11の操作部17に設けてもよい。
【0040】
CPU45は、撮影光学系37の焦点距離を所定値、例えば広角端と望遠端の中間焦点距離以上の場合に拡大観察モードとし、それ未満のとき場合に通常観察モードとする。なお、焦点距離による通常観察モードと拡大観察モードの切り換え手法はこれに限らない。例えば、中間焦点距離よりも望遠端によった焦点距離を境界にして、広角端側の場合に通常観察モードとし、望遠端側の場合に拡大観察モードとしてもよい。また、広角端と望遠端とに焦点距離が切り換えられる場合には、広角端の場合に通常観察モードとし、望遠端の場合に拡大観察モードとすればよい。
【0041】
ライトガイド30は、第1ファイバ束51と、第2ファイバ束52とからなる。これらは、光源装置13側で1本にまとめられて、1つの入射端30aを形成している。このライトガイド30は、その1本にまとめられた状態で挿入部16内を通され、例えば先端部16a内でファイバ束ごとに2本に分岐されている。第1ファイバ束51と、第2ファイバ束52は、1つの入射端30aを形成することにより、光源や集光レンズを共通なものとしているが、第1ファイバ束51と第2ファイバ束52とを完全に分離して設けてもよい。
【0042】
第1ファイバ束51は、開口数の小さい多数の光ファイバから、また第2ファイバ束62は、開口数の大きい多数の光ファイバから構成されており、第1ファイバ束51の光ファイバの開口数(NA1)よりも、第2ファイバ束52の光ファイバの開口数(NA2)の方が大きく(NA1<NA2)なっている。第1ファイバ束51の開口数としては、0.5未満、第2ファイバ束52の開口数は0.5以上とするのがよい。
【0043】
第1照明窓21の奥に第1照明レンズ53が配されている。第1照明レンズ53は、第1ファイバ束51とともに、第1照明系L1を構成している。また、第2照明窓22の奥に第2照明レンズ54が配されている。第2照明レンズ54は、第2ファイバ束52とともに、第2照明系L2を構成している。
【0044】
拡大観察モードで用いられる第1照明系L1は、被観察部位が近接していることから、通常観察モードで主として用いられる第2照明系L2よりも射出される光量が小さくてよいので、そのように光量が設定されている。例えば、第1ファイバ束51の光ファイバの本数を第2ファイバ束52のものより少なくすることで、第1照明系L1から照射される光量が第2照明系L2からのものよりも小さくなるようにしてある。
【0045】
第1照明レンズ53は、第1ファイバ束51の射出端51bから射出される照明光が入射する。この第1照明レンズ53は、拡大観察モードに対応して、射出端51bからの照明光を広角配光するようにされており、近接した状態での撮影範囲を照明できるようにしてある。一方、第2照明レンズ54は、第2ファイバ束52の射出端52bから射出される照明光が入射する。この第2照明レンズ54は、通常観察モードに対応して、射出端52bからの照明光を、第1照明レンズ53に比べて狭角配光するようにされている。
【0046】
図4に示すように、入射端30aは、第1ファイバ束51と第2ファイバ束52の領域に直線状の境界BLで区分されており、第1入射領域51aには第1ファイバ束51の光ファイバが配置されており、第2入射領域52aには第2ファイバ束52の光ファイバが配されている。
【0047】
第1入射領域51aに入射した照明光は、第1ファイバ束51を通ってその射出端51bから第1照明レンズ53に射出される。また、第2入射領域52aに入射した照明光は、第2ファイバ束52を通って射出端52bから第2照明レンズ54に射出される。これにより、第1ファイバ束51からの照明光が、第1照明レンズ53を介して被観察部位に照射され、第2ファイバ束52からの照明光は、第2照明レンズ54を介して被観察部位に照射される。
【0048】
図5に示すように、光量調節機構34は、第1照明系L1の光量調節を行う第1調整ユニット57と、第2照明系L2の光量調節を行う第2調節ユニット58とから構成される。第1調整ユニット57は、第1遮光板57aとアクチュエータ57bとから構成される。第1遮光板57aは、第1入射領域51aと集光レンズ33との間の照明光の光路中に挿脱自在とされている。この第1遮光板57aは、図5(a)に示すように、第1入射領域51aを覆うように光路中に挿入されて第1入射領域51aへの照明光の入射を遮断する遮光位置(第1ファイバ束遮光状態)と、図5(b)に示すように、第1入射領域51aの全領域への照明光の入射を許容するように、光路から退避した退避位置(第1ファイバ束許容状態)との間で移動する。アクチュエータ57bは、CPU45の制御により駆動されて、第1遮光板57aを遮光位置と退避位置との間で移動させる。
【0049】
第2調整ユニット58は、第2遮光板58aとアクチュエータ58bとから構成される。この第2調整ユニット58では、第2遮光板58aは、CPU45の制御により駆動されるアクチュエータ58bによって、第2入射領域52aと集光レンズ33との間の照明光の光路中に挿脱自在とされている。第2遮光板58aは、図5(b)に示すように、第2入射領域52aを覆うように光路中に挿入されて第2入射領域52aへの照明光の入射を遮断する遮光位置(第2ファイバ束遮光状態)と、図5(a)に示すように、第2入射領域52aの全領域への照明光の入射を許容するように、光路から退避した退避位置(第2ファイバ束許容状態)との間で移動する。
【0050】
CPU45は、拡大観察モードのときには、第2遮光板58aを遮光位置とし、第1照明系L1からの照明光だけで被観察部位を照明する。これにより、拡大観察モードでは、開口数が小さく青色成分の減衰が少ない第1ファイバ束51を用いた照明を行い、開口数が大きいため青色成分を含む短波長域の光成分がより多く減衰し、比較的に長波長域の光成分が多くなる第2ファイバ束52を用いた照明を行わないようにする。
【0051】
また、拡大観察モードのときに、CPU45は、第2遮光板58aを遮光位置としたまま、表示制御部55からの輝度の情報に基づいて、第1遮光板57aの光路中への挿入量を制御することで第1照明系L1からの照明光の光量が適正となるように調節する。
【0052】
通常観察モードのときには、CPU45は、第1遮光板57aを遮光位置として、表示制御部55からの輝度の情報に基づいて第2遮光板58aの光路中への挿入量を制御することで第2照明系L2からの照明光の光量が適正となるように調節する。この調節で、光量が不足する場合には、CPU45は、第1遮光板57aを遮光位置から適正な光量となる位置まで退避位置に向けて移動させる。
【0053】
次に、図6に示すフローチャートを参照しながら上記構成の作用について説明する。プロセッサ装置12や光源装置13などの電源がONされて内視鏡検査の準備処理が行われると、イメージセンサ38の駆動が開始されるとともに、光源32が点灯される。なお、電源ON時の初期状態では、例えば、撮影光学系37が広角端とされ、通常観察モードになっている。検査準備が完了すると、挿入部16が被検体内に挿入される。
【0054】
光源32からの照明光は、集光レンズ33を介してライトガイド30に入射端30aから入射する。通常観察モードでの初期状態では、例えば第1遮光板57aが遮断位置、第2遮光板58aが退避位置にされており、集光レンズ33からの照明光は、第2入射領域52aにだけ入射する。これにより、照明光は、第2ファイバ束52を通って先端部16aに導かれ、その射出端52bから射出されて第2照明レンズ54を介して被検体内、例えば食道等の管腔部に照射される。
【0055】
これにより、第2照明系からの照明光で照明された管腔部が、撮影光学系37を介してイメージセンサ38によって撮像される。この撮像でイメージセンサ38から出力される撮像信号にAFE39によって各種信号処理が施され、得られる画像データがDSP46に送られる。このDSP46により画像処理が施された画像データがフレームメモリ47に記憶され、これが表示制御部48に読み出されて、その画像データに基づく観察像がモニタ14に表示される。イメージセンサ38が、所定のフレームレートで撮像を行うごとに、フレームメモリ47の内容が新たな画像データに更新されるから、モニタ14上で管腔部を動画で観察することができる。
【0056】
上記のように撮像を行っているときに、表示制御部48は、フレームメモリ47から読み出した画像データから観察像の輝度を検出し、その情報がCPU45に送られる。そして、このCPU45によって、輝度の情報に基づいた照明光の光量の調節が行われる。
【0057】
例えば、輝度が高く光量が過剰と判定された場合には、まず第1調節ユニット57の第1遮光板57aが遮断位置にあるか否かが調べられる。第1遮光板57aが遮断位置であるときには、第2調節ユニット58を制御して、第2遮光板58aを遮断位置に向けて移動させ、輝度情報に基づいて光量が適正となった位置で停止させる。一方、第1遮光板57aが遮断位置ではないときには、すなわち第1照明系L1からの照明光も照射されている状態にあるときには、第1調節ユニット57が制御されて、第1遮光板57aが遮断位置に向けて移動され、光量が適正となった位置で停止される。この調節で第1遮光板57aが遮断位置に達しても、光量が過剰となっている場合には、第1遮光板57aが遮断位置に停止させた後、さらに第2遮光板58aを遮断位置に向けて移動させ、輝度情報に基づいて光量が適正となった位置で停止させる。
【0058】
一方、輝度が低く光量不足と判定された場合には、まず第2遮光板58aが退避位置にあるか否かが調べられる。例えば、第2遮光板58aが退避位置になく、第2照明系L2の照明光の光量が最大になっていないときには、第2遮光板58aが退避位置に向けて移動され、光量が適正と判定される位置で停止される。この調節で第2遮光板58aが退避位置に達しても光量が不足している場合、あるいは光量不足と判定されたときに第2遮光板58aが退避位置となっている場合では、第1遮光板57aを遮断位置から退避位置に向けて移動され、輝度情報に基づいて光量が適正となった位置で停止される。
【0059】
このようにして、通常観察モードでは、主として開口数の大きな第2ファイバ束を用いた第2照明系L2からの照明光を照射し、第2照明系L2からの照明光で光量が不足した場合には補助的に第1照明系L1の照明光で光量の調節が行われ、通常観察に十分な光量で照明が行われる。
【0060】
必要に応じてフットペダル15を操作し撮像倍率を変更しながら、撮像倍率が低い通常観察モードでは、観察像を参照してスクリーニングを行って病変が疑われる部位の発見・特定を行う。
【0061】
病変が疑われる部位を特定したならば、ペダル15aを操作して撮像倍率を高くする。ペダル15aを操作すると、CPU45により、ズーム機構41が駆動されズームレンズ37bが望遠位置に向けて移動されて撮像倍率が高くなる。そして、病変が疑われる部位に観察窓20を近接させることにより、その部位を拡大表示した拡大観察像がモニタ14に表示される。
【0062】
一方で、ズームレンズ37bの移動により、撮影光学系37の焦点距離が中間焦点距離以上となると、CPU45は、拡大観察モードとする。なお、撮影光学系37の焦点距離は、例えばズーム機構41の駆動量により検知することができる。
【0063】
拡大観察モードとなると、CPU45は、第2調節ユニット58を制御して、第2遮光板58aを遮断位置に移動させ、第2入射領域52aに照明光が入射しないようにし、第1照明系L1からの照明光だけで被観察部位が照明されるようにする。続いて、輝度情報に基づいて、光量の過不足を判定し、第1照明系L1からの照明光の光量に過不足がある場合には、CPU45によって第1調節ユニット57が制御され、その第1遮光板57aの光路中への挿入量を制御することで光量が適正となるように調節される。なお、第1遮光板57aを退避位置としても光量が不足する場合には、例えばAFE39内のAGCのゲインを高くすることで対応される。
【0064】
このように拡大観察モードでは、第1照明系L1からの照明光だけで被観察部位を照明するため、被観察部位には、青色成分の減衰が少ない照明光が照射され、第2照明系L2からの長波長域の光成分が多くなる照明光は照射されない。したがって、正確な診断を行うことができる表層血管を観察し易い拡大画像がモニタ14に表示される。
【0065】
拡大観察モード下でペダル15bが操作されて、撮影光学系37の焦点距離が中間焦点距離未満になると、通常観察モードとされる。通常観察モードとなる、上述のように主として第2照明系L2の照明光を照射し、その光量の調節を行い、補助的に第1照明系L1の照明光の照射が行われるようになる。
【0066】
図7は、光量調節機構の別の例を示すものである。この例における光量調節機構は、1枚の遮光板71が設けられ、アクチェータ72により各入射領域51a,51bの境界と直交する方向に移動するようにされている。拡大観察モード下では、遮光板71は、図7(a)に示すように、第1入射領域51aの全領域に照明光を入射させ、かつ第2入射領域52aに照明光の入射を遮断する位置を移動の限界位置として、この限界位置から右側の範囲で移動する。これにより、第2入射領域52aへの照明光の入射を遮断しつつ、第1入射領域51aに入り込んで入射光量を調節する。一方、通常観察モードでは、図7(b)に示すように、第2入射領域52aの全領域に照明光を入射させ、かつ第1入射領域51aに照明光の入射を遮断する位置を中心に移動することで光量の調節行う
【符号の説明】
【0067】
10 内視鏡システム
11 電子内視鏡
12 プロセッサ装置
13 光源装置
30 ライトガイド
32 光源
34 光量調節機構
37 撮影光学系
38 イメージセンサ
51,52 ファイバ束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられ、ズームタイプの撮影光学系を通して被観察部位を撮像する撮像部と、
第1の開口数の光ファイバで構成される第1ファイバ束と、第1の開口数よりも大きな第2の開口数の光ファイバで構成される第2ファイバ束とからなり、各ファイバ束の入射端に照明光を入射して先端部に導き、各ファイバ束の射出端から被観察部位に照明光を照射するライトガイドと、を有する内視鏡と、
前記第1ファイバ束と前記第2ファイバ束の各入射端に照明光を入射する光源と、
前記光源からの照明光の第2ファイバ束の入射端への入射を許容する第2ファイバ束許容状態と遮断する第2ファイバ束遮断状態とに切り替えられる光量調節機構と、を有する光源装置と、
前記撮影光学系を所定焦点距離以上とした拡大観察モードでは、前記第1ファイバ束からの照明光だけが被観察部位に照射されるように、前記光量調節機構を第2ファイバ束遮断状態とする光量制御手段を有する制御装置と、
を備えたことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記光量調節機構を第2ファイバ束許容状態としたときに、前記第2ファイバ束から射出される光量よりも前記第1ファイバ束から射出される光量が小さくされていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第2ファイバ束よりも前記第1ファイバ束を構成する光ファイバの本数が少ないことを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記先端部の先端面には、前記撮像部が撮像するための観察窓と、前記第1ファイバ束からの照明光を射出する第1照明窓と、前記第2ファイバ束からの照明光を射出する第2照明窓とが設けられ、前記第1照明窓は、前記第2照明窓よりも観察窓に近接して配されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1ファイバ束と前記第2ファイバ束の入射端側がまとめられ射出端側で分けられており、入射端では、前記第1及び第2ファイバ束の各領域に区分されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
第1の開口数が0.5未満、第2開口数が0.5以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記光量調節機構前記光源からの照明が第1ファイバ束の入射端に入射することを許容する第1ファイバ束許容状態と遮断する第1ファイバ束遮断状態とに切り替えられるようにされ、
前記光量制御手段は、撮影光学系が所定焦点距離未満となる通常観察モードでは、前記第2ファイバ束からの照明光が被観察部位に照射されるように、前記光量調節機構を第1ファイバ束遮断状態とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記光量調節機構は、光源から第1ファイバ束に入射する光量と第2ファイバ束に入射する光量とのそれぞれを調節自在とされており、
前記光量制御手段は、前記通常観察モードでは、光量の過不足に対して、第1ファイバ束遮断状態を維持しつつ、第2ファイバ束に入射する光量を調節し、前記拡大観察モートでは、第2ファイバ束遮断状態を維持しつつ、光量の過不足に対して第1ファイバ束に入射する光量を調節するように前記光量調節機構を制御することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記光量制御手段は、前記通常観察モートで前記第2ファイバ束からの照明光だけで光量が不足する場合に、第1ファイバ束遮断状態を解除して、前記第1ファイバ束の入射端に入射端に光源からの照明光を入射させ、その光量を増減するように前記光量調節機構を制御することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
被検体内に挿入される挿入部の先端部に設けられた撮像部によってズームタイプの撮影光学系を通して被観察部位を撮像する内視鏡システムの操作補助方法において、
撮影光学系の焦点距離を変更する焦点距離変更ステップと、
撮影光学系が所定焦点距離以上の拡大観察モードであるか未満の通常観察モードであるかを判別する焦点距離判別ステップと、
拡大観察モード下では、入射端に入射される照明光を、先端部に導き各ファイバ束の射出端から被観察部位に照明光を照射するライトガイドを構成する第1の開口数の光ファイバからなる第1ファイバ束と、第1の開口数よりも大きな第2の開口数の光ファイバからなる第2ファイバ束のうち、光源からの照明光が第1ファイバ束の入射端だけに入射されるように、光源からライトガイドへの照明光の入射状態を制御する制御ステップとを有することを特徴とする内視鏡システムの操作補助方法。
【請求項11】
前記制御ステップは、通常観察モードでは、光源からの照明光が第2ファイバ束の入射端だけに入射されるように、光源からライトガイドへの照明光の入射状態を制御することを特徴とする請求項10記載の内視鏡システムの操作補助方法。
【請求項12】
前記制御ステップは、通常観察モードでは、光量の過不足に対して、光源からの照明光の第1ファイバ束の入射端への入射を遮断しつつ、第2ファイバ束に入射する光量を調節し、前記拡大観察モートでは、光源からの照明光の第2ファイバ束の入射端への入射を遮断しつつ、光量の過不足に対して第1ファイバ束に入射する光量を調節することを特徴とする請求項11記載の内視鏡システムの操作補助方法。
【請求項13】
前記制御ステップは、前記通常観察モートで前記第2ファイバ束からの照明光だけで光量が不足する場合に、前記第1ファイバ束の入射端に光源からの照明光を入射させ、その光量を増減することを特徴とする請求項12記載の内視鏡システムの操作補助方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196307(P2012−196307A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62156(P2011−62156)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】