説明

内視鏡システム

【課題】内視鏡の較正にかかる使用者の手間を低減する。
【解決手段】洗浄機による内視鏡の洗浄中に、複数枚の画像を撮影して、この画像を平均化して補正用画像を作成して、この補正用画像を用いて補正パラメータを生成して、生成した補正パラメータを記憶手段が記憶し、較正を行う。前記平均画像データが規定範囲を外れる場合には、この画像は前記補正用画像の作成に使用しない。前記内視鏡から洗浄機への画像の供給を、無線通信によって行う。前記洗浄機から内視鏡への駆動電力の供給を、電気的に非接触で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療用の用途に用いられる内視鏡システムに関し、詳しくは、適正な画像を出力するための内視鏡の較正にかかる使用者の手間を、低減することができる内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体に病変部が有るか、どの程度、病変部が進行しているかの診断などに、内視鏡(電子内視鏡)が使用されている。
内視鏡では、生体の一部に光を照射して、反射してくる光をCCDセンサ等の(固体)撮像素子して、撮影した画像をディスプレイに表示することにより、生体表面の色、明るさ、構造等の変化を観察し、その観察によって医師が病変部の状態を判断している。
【0003】
周知のように、画像を撮影する撮像素子は、画像を撮影する画素(光量の測定点)を二次元的に配列してなるものである。
ここで、撮像素子の各画素は、完全に均一な特性を有するものではなく、例えば、画素毎に、感度のバラツキ(感度ムラ)等を有する。また、撮像素子の画素の中には、撮像した画像(入射光量)に応じた適正な信号を出力することができない、いわゆる欠陥画素も存在する。さらに、撮像素子が出力する画像のR、GおよびBの各色のバランス(いわゆるホワイトバランス)が不適性な場合も有る。
【0004】
このような撮像素子の特性のバラツキ(個体バラツキ)を有する状態で画像を撮影しても、適正な画像を得ることはできない。特に、医療用の用途に用いられる内視鏡では、不適正な画像での診断は、診断ミス等にも繋がる重大な問題となる。
そのため、特許文献1や特許文献2に示されるように、内視鏡では、撮像素子で撮影した画像に、感度ムラ補正、欠陥画素補正、ホワイトバランスの調整などの補正を行って、個々の画素の個体バラツキ等に起因する画質劣化の無い、適正な画像を出力できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−211231号公報
【特許文献2】特公平7−63447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2にも記載されるように、感度ムラ補正やホワイトバランス調整は、一例として、予め各画素ごとに補正用のパラメータ(補正パラメータ)を算出して記憶しておき、撮影した画像に対して、各画素毎に、この補正パラメータを用いて画像データを補正することによって行う。
また、欠陥画素補正は、予め欠陥画素を検出して記憶しておき、撮影した画像に対して、各欠陥画素を、周囲の画素の画像データを用いて補完することによって行う。
【0007】
このような感度ムラの補正パラメータの算出や、欠陥画素の検出は、一般的に、白い被写体など、全面的に均一な濃度を有する被写体を撮影して、この画像を解析することによって行う。
【0008】
ところが、画素毎の感度ムラや欠陥画素など、内視鏡に用いられるCCDセンサ等の撮像素子の個体バラツキは、経時によって変化する。
そのため、安定して適正な内視鏡画像を撮影するためには、定期的に、補正パラメータの再算出や欠陥画素の再検出など、いわゆる内視鏡の較正を行う必要がある。特に、精度を要求される内視鏡では、使用前に、毎回、較正が必要となる場合も有る。
【0009】
前述のように、較正すなわち補正パラメータの再算出や欠陥画素の再検出は、白い被写体等を撮影して、その画像を解析することによって行われる。
そのため、較正には手間がかかり、使用者の負担を増加する一因となっている。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、較正に掛かる使用者の負担を低減して、作業性や使い勝手を向上した内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の内視鏡システムは、撮像素子によって撮影を行う内視鏡と、記憶手段に記憶している補正パラメータを用いて、前記内視鏡の撮像素子が撮影した画像の補正を行う補正手段と、前記補正パラメータを生成する演算手段と、前記内視鏡、補正手段および演算手段を制御する制御手段と、前記内視鏡に駆動電力を供給する電力供給手段、および、前記制御手段と内視鏡との接続手段を有する、前記内視鏡の洗浄を行う洗浄機とを有し、前記制御手段による指示の下、前記洗浄機による内視鏡の洗浄開始から乾燥終了までの間に、前記内視鏡が複数枚の画像を撮影して前記演算手段に供給し、前記演算手段は、供給された画像を平均化して補正用画像を作成して、この補正用画像を用いて前記補正パラメータを生成して前記記憶手段に供給し、前記記憶手段が、この供給された補正パラメータを記憶することを特徴とする内視鏡システムを提供する。
【0012】
このような本発明の内視鏡システムにおいて、前記洗浄機は、洗浄剤による洗浄、消毒液による消毒、および水による水洗を行なうことで、内視鏡を洗浄し、洗浄済の内視鏡を乾燥するものであり、洗浄剤による洗浄中、消毒液による消毒中、および水による水洗中の1以上において、実施中に前記画像の撮影を行うのが好ましく、また、前記演算手段は、洗浄機による内視鏡の乾燥中に、前記補正パラメータの算出を行うのが好ましい。
【0013】
また、前記補正手段および記憶手段が、前記内視鏡に設けられるのが好ましく、この際において、前記制御手段および演算手段が、前記洗浄機に設けられるのが好ましい。もしくは、前記演算手段が、前記内視鏡に設けられるのが好ましい。
また、前記制御手段が、前記洗浄機に接続される装置に設けられ、この装置に、前記演算手段が設けられるのが好ましい。もしくは、前記制御手段が、前記洗浄機に接続される装置に設けられ、この装置に、前記補正手段、記憶手段、および演算手段が設けられるのが好ましい。
【0014】
また、前記内視鏡から洗浄機への画像の供給を、無線通信によって行うのが好ましい。
また、前記洗浄機から内視鏡への駆動電力の供給を、電気的に非接触で行うのが好ましい。
さらに、前記演算手段は、前記補正用画像を作成するために内視鏡が撮影した画像を、所定数ずつ間引いて選択し、選択した所定数の画像を用いて、前記補正用画像を作成するのが好ましい。この際において、前記演算手段は、前記選択した画像の所定領域の平均画像データが規定範囲を外れる場合には、この画像は前記補正用画像の作成に使用しないのが好ましい。また、前記演算手段は、選択した画像が、所定の判定画像に対して、所定の閾値以上変動していない場合には、この画像は補正用画像の作成に使用しないのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
周知のように、内視鏡は、1回使用する毎に、洗浄を行うことが義務付けられている。
上記構成を有する本発明の内視鏡システムによれば、1回、内視鏡を使用する毎に行う必要がある洗浄中に、補正パラメータの再算出や欠陥画素の再検出等の較正を自動的に行うので(洗浄中に内視鏡の自動調整を行うので)、使用者の負担、内視鏡を使用するための工程数を減らすことができると共に、毎回、較正が行われた内視鏡によって、適正な診断画像を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の内視鏡システムの一例を概念的に示す図で、(A)は斜視図で、(B)は上面図である。
【図2】通常の内視鏡の使用状態を説明するための概念図である。
【図3】(A)は、図1に示す内視鏡システムに用いられる内視鏡のスコープ部の構成を概念的に示すブロック図、(B)は、同ビデオコネクタの構成を概念的に示すブロック図である。
【図4】図1に示す内視鏡システムの作用の説明するためのブロック図である。
【図5】図1に示す内視鏡システムの作用の説明するためのフローチャートである。
【図6】図1に示す内視鏡システムにおける補正用画像の作成方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の内視鏡システムについて、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0018】
図1に、本発明の内視鏡システムの一例を概念的に示す。なお、図1において、(A)は斜視図で、(B)は上面図である。
本発明の内視鏡システム10は、基本的に、内視鏡12と、内視鏡12の洗浄を行う洗浄機14とを有して構成される。
【0019】
内視鏡12は、通常の内視鏡と同様、挿入部18と、操作部20と、ユニバーサルコード24と、コネクタ26と、ビデオコネクタ28とを有するものである(図2参照)。また、通常の内視鏡と同様、挿入部18は、基端側の長尺な軟性部30と、CCDセンサ48等が配置される先端のスコープ部(内視鏡先端部)34と、軟性部30とスコープ部34との間の湾曲部(アングル部)32とを有し、さらに、操作部20には、湾曲部32を湾曲させる、操作ノブ20aが設けられる。
【0020】
内視鏡12は、通常の使用時には、図2に概念的に示すように、コネクタ26を、観察光を照射するための光源装置38の接続部38aに、ビデオコネクタ28を、内視鏡12が撮影した画像を処理して表示装置42に表示するためのプロセッサ装置16の接続部16aに、それぞれ接続されて使用される。なお、図2において、符号40は、各種の指示等を入力するための入力装置である。
内視鏡12は、通常の使用時は、ビデオコネクタ28がプロセッサ装置16に接続されることにより、プロセッサ装置16から駆動電力を供給される。
なお、コネクタ26には、通常の内視鏡と同様、さらに、観察部位の吸引や送気を行なう吸引手段や送気手段、観察部位に水を噴射するための吸水手段等が接続される。
【0021】
図3(A)にスコープ部34を概念的に示す。
図3に示すように、スコープ部34には、撮像レンズ46、CCDセンサ48、照明用レンズ56、および光ファイバ58が配置される。なお、本発明において、内視鏡12の固体撮像素子は、CCDセンサに限定はされず、各種の固体撮像素子が、全て、利用可能である。
また、図示は省略するが、スコープ部34には、鉗子等の各種の処置具を挿通するための鉗子チャンネルおよび鉗子口、吸引、送気、送水等を行うための送気/送水チャンネルおよび送気/送水口等も設けられる。鉗子チャンネルは、湾曲部32および軟性部30を通って操作部20に設けられる鉗子挿入口に連通し、送気/送水チャンネルは、湾曲部32、軟性部30、操作部20、およびユニバーサルコード24を通って、コネクタ26の吸引手段、送気手段、送水手段との接続部に連通する。
【0022】
光ファイバ58は、湾曲部32、軟性部30、操作部20、およびユニバーサルコード24を通って、光源装置38に接続されるコネクタ26まで挿通されている。
光源装置38が照射した照明光は、コネクタ26から光ファイバ58に入射して、光ファイバ58によって伝搬されて、スコープ部34において、光ファイバ58の先端部から照明用レンズ56に入射して、照明用レンズ56によって観察部位に照射される。
【0023】
図2(B)に、ビデオコネクタ28の構成をブロック図で概念的に示す。
図示例の内視鏡装置10においては、好ましい態様として、内視鏡12のビデオコネクタ28(ビデオコネクタ28が有する電子回路基板)に、信号処理部50、画像補正部552、およびメモリ54が配置されており、ビデオコネクタ28において、CCDセンサ48の出力信号に対して、所定の処理を行う。
【0024】
照明光が照射された観察部位の画像は、撮像レンズ46によってCCDセンサ48の受光面に結像される。
CCDセンサ48の出力信号は、信号線によって、スコープ部34から湾曲部32、軟性部30、操作部20、ユニバーサルコード24、およびコネクタ26を通ってビデオコネクタ28に送られる。
【0025】
ビデオコネクタ28に送られたCCDのセンサ48の出力信号は、まず、信号処理部50において、増幅やA/D変換等の所定の信号処理を行われ、次いで、画像補正部52において、所定の画像補正が行なわれ、出力される。この画像補正部52における画像補正は、メモリ54に記憶される補正パラメータを用いて、行なわれる。
画像補正部52から出力される出力信号(撮影した画像の画像データ)は、ビデオコネクタ28からプロセッサ装置16に供給され、プロセッサ装置16において、各種の画像処理を施された後、表示装置42に表示される。また、内視鏡14の洗浄を行なう際には、画像補正部52から出力される出力信号は、洗浄機14の演算部82に供給される。
【0026】
なお、内視鏡12において、ビデオコネクタ28の画像補正部52で施す、メモリ54に記憶される補正パラメータを用いる画像補正には、特に限定はなく、各種の画像補正(画像処理)が例示される。
一例として、感度ムラ補正、ホワイトバランス調整、欠陥画素補正、暗電流補正等が例示される。
これらの画像補正は、いずれも、予め生成してメモリ54に記憶しておいた補正パラメータを用いて、画像データを処理する、公知の方法で行えばよい。例えば、感度ムラ補正であれば、各画素の画像データに、対応する感度ムラ補正パラメータを乗算すればよい。また、暗電流補正であれば、各画素の画像データから、対応する暗電流補正パラメータを減算すればよい。さらに、欠陥画素補正であれば、補正パラメータとして記憶されている欠陥画素に対して、周辺画素を用いた補完を行なえばよい。
【0027】
ここで、内視鏡12は、後述する洗浄機14による洗浄中に、所定枚数の画像を撮影する。また、メモリ54に記憶される補正パラメータ(その少なくとも1以上)は、洗浄機14によって内視鏡12の洗浄を行なう際に、この洗浄中に撮影された画像を用いて演算された補正パラメータに、書き換えられる(補正パラメータが較正される)。
この点に関しては、後に詳述する。
【0028】
なお、本発明において、内視鏡12は、照明光として通常の白色光を用いる通常観察のみを行うものであってもよく、通常観察と、照明光として峡帯域光や近赤外光を用いる観察や、偏光を利用する観察などの特殊光観察の1以上とを、切り換えて行うことができるものであってもよい。
【0029】
洗浄機14は、内視鏡12の洗浄を行うものである。
図示例において、洗浄機14は、2つの洗浄槽62を有するものであり、蓋体64を開放して、例えば図1(B)に示すように洗浄槽62に内視鏡12を収容して、内視鏡12の洗浄を行う。なお、図中符号70は洗浄機14の操作を行なう操作パネル、同符号72は洗浄機14のメインスイッチである。
【0030】
また、洗浄槽62には、内視鏡12のビデオコネクタ28を接続するための、接続部68が設けられる。この接続部68とビデオコネクタ28とは、公知の手段によって、互いに液密に接続される。また、内視鏡12は、洗浄中、この接続部68へのビデオコネクタ28の接続によって、駆動電力を供給される。
【0031】
また、洗浄機14は、制御部80と、演算部82とを有する(図4参照)。
制御部80は、洗浄機14の制御を行なうと共に、内視鏡システム10の全体の制御も行なうものである。演算部82は、前述のメモリ54に記憶される、画像補正部52での画像補正に用いられるパラメータを生成するものである。
制御部80および演算部82に関しては後に詳述する。
【0032】
洗浄機14において、内視鏡12の洗浄は、一例として、通常の内視鏡の洗浄機と同様、洗浄液を用いた洗浄、消毒液を用いた消毒、および、消毒済の内視鏡の水洗(濯ぎ)を行なって、内視鏡12を洗浄し、最後に、内視鏡12を乾燥する(以下の説明では、洗浄液での洗浄〜水洗までの、内視鏡洗浄の全工程と区別するために、洗浄液での洗浄を『浄化』と称する)。
なお、洗浄液を用いた浄化の後に、浄化済の内視鏡の水洗を行なってもよい。
【0033】
以下、図4のブロック図および図5のフローチャートを参照して、内視鏡システム10における、内視鏡12の洗浄の作用を説明することにより、本発明の内視鏡システムについて、より詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、内視鏡12を洗浄機14の洗浄槽62に収容して、ビデオコネクタ28を接続部68に接続する。
さらに、図示は省略するが、内視鏡12の各チャンネル等を洗浄するために、内視鏡12の鉗子チャンネルや送気/送水チャンネル等と、これらに洗浄液等を供給するための洗浄機14の対応するポートとが、接続される。
【0035】
洗浄機14において、ビデオコネクタ28を接続部68に接続し、洗浄を開始すると、洗浄機14から内視鏡12に、駆動電力が供給(給電)される。なお、内視鏡12においては、駆動電力は、後述する撮影および画像データの出力に必要な、最低限の部位のみを駆動するように、各部位に供給するのが好ましい。
【0036】
ここで、内視鏡12が、充電式の物である場合には、図6の破線内に示されるように、この駆動電力の供給によって、充電を開始する。
【0037】
内視鏡12に駆動電力が供給(充電が開始)されると、洗浄機14と内視鏡12(ビデオコネクタ28)との通信が開始される。
【0038】
前述のように、洗浄機14は、洗剤による浄化、消毒液による消毒、水による水洗を行なうことにより、内視鏡12を洗浄し、その後、乾燥を行なうものである。
制御部80は、洗剤による浄化中、消毒液による消毒中、および、水による水洗中の1以上の工程において、実施中に画像を撮影するように、内視鏡12に指示を出す。これに応じて、内視鏡12(CCDセンサ48)は、画像を撮影する。
後に詳述するが、内視鏡システム10においては、洗浄中に撮影した複数の画像を平均化して補正用画像を作成し、この補正用画像を用いて、ビデオコネクタ28の画像補正部52での画像補正に用いる補正パラメータを演算する。
【0039】
CCDセンサ48が撮影した画像は、信号処理手段50で増幅、A/D変換等の信号処理を行なわれる。ここで、この洗浄時での撮影では、信号処理手段50で処理された画像データは画像補正部52では何の処理もされることなく、信号処理手段50で処理された状態の画像データが、ビデオコネクタ28から出力される。
ビデオコネクタ28から出力された画像データは、洗浄機14の演算部82に供給される。演算部82は、供給された画像から、所定枚数の画像を取り込み、記憶する。
【0040】
補正用画像を作成するために取り込む画像の数には、特に限定はなく、複数枚であればよい。
この補正用画像を作成するために取り込む画像は、供給された全画像(間引き0枚)であってもよく、あるいは、供給された画像を、所定間隔で間引いて取り込んでもよい。
例えば、2枚の画像を間引いて、4枚の画像を取り込む際には、連続的に、12枚(フレーム)以上の撮影を行い、1枚目および2枚目の画像を間引いて3枚目を取り込み、4枚目および5枚目を間引いて6枚目を取り込み、以下、同様に、9枚目および12枚目を取り込み、合計で4枚の画像を取り込んでもよい。なお、間引きの数は、2に限定はされず、適宜、設定すればよい。
【0041】
内視鏡12の洗浄が終了し、乾燥が開始されると、演算部82は、取り込んだ画像を用いて、補正パラメータの演算を開始する。
なお、以下に示す、演算部82における演算、および、補正パラメータのメモリ54への書き込みは、内視鏡12の乾燥開始前に行なってもよく、あるいは、洗浄〜乾燥に跨がって行なってもよい。
【0042】
演算部82は、まず、取り込んだ画像を平均化して、補正用画像を作成する。すなわち、所定枚数の画像を平均した画像を作成して、補正用画像を作成する。
【0043】
前述のように、前述のように、内視鏡の較正、すなわち感度ムラ補正に用いられる補正パラメータの再算出や、欠陥画素の再検出は、白い被写体(全面的に均一濃度の被写体)等を撮影して、その画像(補正用画像)を解析することによって行われる。
ここで、周知のように、内視鏡の洗浄は、洗浄液や消毒液を、内視鏡の外部で循環し、かつ、鉗子チャンネルや送気/送水チャンネル等に通液/循環することで、行なわれる。そのため、洗浄中の内視鏡で撮影される画像は、水流によって生じる気泡等によって、全面的に、ほぼ、均一な濃度を有する画像となる。
従って、洗浄中に複数枚の画像を撮影し、この画像を平均化した画像とすることにより、内視鏡12によって白い被写体等を撮影した画像に近い、全面的に均一な濃度を有する画像を得るこことができ、十分に、補正パラメータの再算出や、欠陥画素の再検出等に用いる補正用画像として利用可能である。また、複数枚を撮影して、平均化することにより、特に、多数の画像から、所定数を間引いて取り込む事により、被写体の構造を打ち消して、純粋に、撮像素子の特性に対応する画像を取得することが可能である。
本発明は、このような内視鏡の洗浄を利用して、洗浄中に画像を取り込み、これを用いて、較正を行なうための補正用画像を作成することにより、内視鏡の較正にかかる手間を大幅に省くことを可能にしている。
【0044】
以下に、補正用画像の好適な作成方法の一例を、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、補正用画像に被写体の構造が取り込まれるのを防止して、内視鏡12が有する感度ムラ(バラツキ)等を適正に反映した画像を得るために、前述のように、連続する画像から所定数を間引いて画像を選択する。
例えば、前述のように、2画像を間引くとすれば、1枚目および2枚目の画像を間引いて3枚目を選択し、4枚目および5枚目を間引いて6枚目を選択し、以下、同様に、9枚目、12枚目、15枚目……と、2画像を間引いた後の画像を選択する。なお、この際において、間引きは0枚(全選択)でもよいが、好ましくは、1枚以上を間引く。
【0045】
次いで、選択した画像の輝度レベル(光量レベル)を検出して、所定の輝度で撮影が行なわれているか否か(NG/OK)を確認する。
輝度レベルは、一例として、画像を3×3で9分割して、中央領域の平均輝度(平均信号強度/平均濃度)を算出して、この平均輝度が所定の範囲に入っている場合はOK、所定範囲外の場合にはNGとし、NGの場合には、この画像は、補正用画像の作成には用いない。
【0046】
なお、選択した画像がNGであった場合には、次の画像を選択してもよく、あるいは、変更を行なわずに間引き/選択を繰り返してもよい。
例えば、上記2枚間引きの例で、選択した6枚目の画像がNGであって場合には、7枚目を選択して、それ以降、同様に、2枚ずつの間引きを行なって選択(すなわち、10枚目、13枚目……を選択)するようにしてもよく、もしくは、選択する画像を変更することなく、先と同様に9枚目、12枚目…を選択してもよい。
この点に関しては、次の画像移動量の検出でも、同様である。
【0047】
選択した画像の輝度レベルが適正である場合には、次いで、画像移動量を検出する。
画像移動量とは、すなわち、画像の変化量である。本例においては、ある程度、異なる画像(変化の有る画像)を選択して、補正用画像を作成することにより、先の間引きと同様に、補正用画像に、被写体の構造が取り込まれるのを防止して、感度ムラ等を適正に反映した補正用画像を作成している。
【0048】
画像移動量は、例えば、選択した画像と判定画像との差の絶対値を取り、これが所定の閾値Tを超えている場合にはOK、閾値T以下である場合にはNGとする。すなわち、
『|(選択画像)−(判定画像)|>T』ならばOK、
『|(選択画像)−(判定画像)|<T』ならばNGとし、NGの場合には、この画像は、補正用画像の作成には用いない。
なお、判定画像は、一例として、選択画像の1つ前(1フレーム前)の画像等が例示される。また、画像の比較は、平均輝度、全画素の平均値等で行なえばよい。
【0049】
画像移動量が適正である場合には、この画像を、補正用画像を作成するための画像として取り込み、以下、取り込んだ画像の数が所定枚数となるまで、上記操作を繰り返す。
所定枚数の画像を取り込んだら、条件設定部70は、次いで、取り込んだ画像の加算平均画像を作成し、これを補正用画像とする。
なお、この補正用画像の作成においては、輝度レベルおよび画像移動量の両者を、検出(確認)するのに限定はされず、何れか一方の検出のみを行なって、補正用画像を作成してもよい。
【0050】
補正用画像を作成した演算部82は、次いで、画像補正部52が行なう画像補正(その少なくとも1つ)に用いる補正パラメータを生成する。
補正パラメータの生成方法には、特に限定はなく、画像補正部52が実施する画像補正に応じた、公知の方法で生成すればよい。
【0051】
例えば、ホワイトバランス調整用の補正パラメータであれば、補正用画像において、例えば、G画像を基準にして、白色の画像が得られるようにR画像およびB画像を補正する(G画像に対して、RおよびB画像のバランスを取る)ための補正係数を、各画素画素に算出して、補正パラメータとすればよい。
また、感度ムラ補正用の補正パラメータであれば、最高値の画素を基準として、補正用画像において、全ての画素が、この最高値の画素と同じ値となるような補正係数を、各画素画素に算出して、補正パラメータとすればよい。あるいは、最高値に変えて、全画素の平均値を用いてもよい。
さらに、欠陥画素補正用の補正パラメータであれば、補正用画像の平均値を算出し、この平均値に対して、所定の閾値以上、値が異なる画素を欠陥画素として検出し、検出した欠陥画素の位置を、補正パラメータとすればよい。
【0052】
本発明において、洗浄中に撮影した画像を用いて補正パラメータを生成する画像補正には、特に限定はなく、全面的に均一な濃度の被写体を撮影して、この画像を解析して補正パラメータを生成する画像補正であれば、各種の公知の画像補正が利用可能である。
具体的には、ホワイトバランス調整、感度ムラ補正(ゲインムラ補正)、欠陥画素補正等が例示される。
【0053】
全ての補正パラメータの演算が終了したら、制御部80の指示に応じて、演算部82は、演算した補正パラメータを、内視鏡12のビデオコネクタ28のメモリ54に供給し、メモリ54は、供給された補正パラメータを記憶する。あるいは、各画像補正に対応する補正パラメータの演算が終了する毎に、順次、補正パラメータをメモリ54に供給し、記憶するようにしてもよい。
なお、メモリ54は、供給された補正パラメータを、元の補正パラメータと置き換えて(オーバーライトして)もよく、あるいは、新しい補正パラメータを記憶するための所定領域に書き込むようにしてもよい。
【0054】
これにより、内視鏡12の較正が終了する。従って、ビデオコネクタ28の画像補正部52は、これ以降は、新たにメモリ54に書き込まれた補正パラメータを用いて、CCDセンサ48が撮影した画像の補正を行なう。
【0055】
以上の説明より明らかなように、本発明の内視鏡システムによれば、内視鏡の洗浄中に、補正パラメータの再算出や欠陥画素の再検出等の内視鏡の較正(内視鏡の調整)を自動的に行うので、較正のための白い被写体の撮影や、演算時間中の待機など、使用者の負担、内視鏡を使用するための工程数を減らすことができる。
しかも、内視鏡は、1回使用する毎に、洗浄を行うことが義務付けられている。従って、毎回、較正が行われた内視鏡によって、適正な診断画像を撮影することができる。
【0056】
なお、洗浄機14において、2台の内視鏡12の洗浄を同時に行なう場合には、制御部80が、それぞれの内視鏡12において、洗浄中の撮影のタイミングや乾燥中の演算等のタイミングをズラすように、各部位の動作を制御すればよい。
【0057】
図示例においては、内視鏡12のビデオコネクタ28と、洗浄機14の接続手段68とを接続することで、内視鏡12に駆動電力を供給し、また、画像データや補正パラメータの通信を行なったが、本発明は、これに限定はされない。
【0058】
例えば、電磁誘導等を利用することにより、洗浄機14と内視鏡12とを電気的に非接触な状態で、洗浄機14から内視鏡12に駆動電力を供給してもよい。また、内視鏡12と洗浄機14とにおける画像データや補正パラメータの通信を、有線ではなく、無線通信で行なうようにしてもよい。
このような構成を有することにより、内視鏡12自身の防水性能を向上させ、さらに、コネクタや防水キャップ等の付け忘れによる、機器破損を防止することができる。また、洗浄時における、内視鏡12のコネクタや防水キャップを接続/装着する工程を、省く事ができる。
【0059】
また、図示例の内視鏡システム10は、内視鏡12のビデオコネクタ28が、信号処理部50、補正パラメータを記憶するメモリ54および画像補正を行なう画像補正部52を有しているが、本発明は、これに限定はされない。
例えば、可能であれば、内視鏡12のスコープ部34に、信号処理部50、メモリ54および画像補正部52を設けてもよく、あるいは、信号処理部50をスコープ部34に、メモリ54および画像補正部52をビデオコネクタ28に、設けてもよい。ビデオコネクタ28に変えて、コネクタ26を利用してもよい。
また、補正パラメータを記憶するメモリ54および画像補正を行なう画像補正部52を、プロセッサ装置16が有してもよい。この際には、洗浄機14とプロセッサ装置16とを接続可能にして、作成した補正パラメータを、洗浄機14からプロセッサ装置16に供給する。また、プロセッサ装置16が複数台の内視鏡12に対応する場合には、メモリ54には、対応する全内視鏡分の補正パラメータが記憶されており、例えば、識別情報の送受信等により、対応となる内視鏡12が知見される。
また、図示例では洗浄機14が有している演算部82を、内視鏡12が有してもよい。
【0060】
あるいは、洗浄機14とプロセッサ装置16とを接続可能にして、プロセッサ装置16に、制御部80および演算部82を設けてもよい。
この際には、洗浄中に内視鏡12が撮影した補正用画像を作成するための画像を、洗浄機14を介してプロセッサ装置16の演算部82に供給する。また、画像補正部52およびメモリ54を内視鏡12が有する場合には、作成した補正パラメータの内視鏡12への供給も、プロセッサ装置16から洗浄機14を介して行なわれる。
さらに、制御部80および演算部82を有し、システムの制御を行なう制御装置を、別途、有してもよい。
【0061】
以上、本発明の内視鏡システムについて説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明のを逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
内視鏡を利用する医療現場等で、好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
14 洗浄機
16プロセッサ装置
18 挿入部
20 操作部
24 ユニバーサルコード
26 コネクタ
28 ビデオコネクタ
30 軟性部
32 湾曲部
34 スコープ部
38 光源装置
40 入力装置
42 表示装置
46 撮像レンズ
48 CCDセンサ
50 信号処理部
52 画像補正部
54 メモリ
56 照明用レンズ
58 光ファイバ
62 洗浄槽
64 蓋体
68 接続部
70 操作パネル
72 メインスイッチ
74 接続手段
80 制御部
82 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子によって撮影を行う内視鏡と、
記憶手段に記憶している補正パラメータを用いて、前記内視鏡の撮像素子が撮影した画像の補正を行う補正手段と、
前記補正パラメータを生成する演算手段と、
前記内視鏡、補正手段および演算手段を制御する制御手段と、
前記内視鏡に駆動電力を供給する電力供給手段、および、前記制御手段と内視鏡との接続手段を有する、前記内視鏡の洗浄を行う洗浄機とを有し、
前記制御手段による指示の下、前記洗浄機による内視鏡の洗浄開始から乾燥終了までの間に、前記内視鏡が複数枚の画像を撮影して前記演算手段に供給し、前記演算手段は、供給された画像を平均化して補正用画像を作成して、この補正用画像を用いて前記補正パラメータを生成して前記記憶手段に供給し、前記記憶手段が、この供給された補正パラメータを記憶することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記洗浄機は、洗浄剤による洗浄、消毒液による消毒、および水による水洗を行なうことで、内視鏡を洗浄し、洗浄済の内視鏡を乾燥するものであり、
洗浄剤による洗浄中、消毒液による消毒中、および水による水洗中の1以上において、実施中に前記画像の撮影を行う請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記演算手段は、洗浄機による内視鏡の乾燥中に、前記補正パラメータの算出を行う請求項1または2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記補正手段および記憶手段が、前記内視鏡に設けられる請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記制御手段および演算手段が、前記洗浄機に設けられる請求項4に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記演算手段が、前記内視鏡に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記制御手段が、前記洗浄機に接続される装置に設けられ、この装置に、前記演算手段が設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記制御手段が、前記洗浄機に接続される装置に設けられ、この装置に、前記補正手段、記憶手段、および演算手段が設けられる請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記内視鏡から洗浄機への画像の供給を、無線通信によって行う請求項1〜8のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記洗浄機から内視鏡への駆動電力の供給を、電気的に非接触で行う請求項1〜9のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記演算手段は、前記補正用画像を作成するために内視鏡が撮影した画像を、所定数ずつ間引いて選択し、選択した所定数の画像を用いて、前記補正用画像を作成する請求項1〜10のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記演算手段は、前記選択した画像の所定領域の平均画像データが規定範囲を外れる場合には、この画像は前記補正用画像の作成に使用しない請求項11に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記演算手段は、選択した画像が、所定の判定画像に対して、所定の閾値以上変動していない場合には、この画像は補正用画像の作成に使用しない請求項11または12に記載の内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−65953(P2012−65953A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215003(P2010−215003)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】