説明

内視鏡及び内視鏡システム

【課題】内視鏡の挿入部を大径化することなく、その先端部に2つの磁気素子を設け、挿入部の先端部の位置及び向きを検知する。
【解決手段】内視鏡10の挿入部12の先端部14に2つの磁気素子60を非同軸に設ける。先端部14における占有面積が最も大きいチャンネルチューブ41を挿入部12の軸心に対し一側に偏心して配置する。2つの磁気素子60と、小埋設物の照明光出射部23と対物光学系31とを、チャンネルチューブ41の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並べて配置する。2つの磁気素子60どうしの間に小埋設物23,31のうち少なくとも1つを挟む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体に挿入して診断、治療等を行なう内視鏡及び内視鏡システムに関し、特に挿入部の位置等を検知する機能を付けた内視鏡及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、本体部から挿入部が延びている(特許文献1等参照)。挿入部を被検体の内部に挿入して、診断、治療等を行なう。挿入部の先端部分には湾曲部が設けられている。本体部のノブにて湾曲部を遠隔的に湾曲させることができる。挿入部の内部には、一般にチャンネルチューブとイメージガイドとライトガイドが設けられている。イメージガイド及びライトガイドは、例えば光ファイバーにて構成されている。チャンネルチューブとライトガイドとは、挿入部の先端面に達している。更に、挿入部の先端には対物光学系が設けられており、この対物光学系にイメージガイドが光学的に接続されている。照明光が、ライトガイドを伝って挿入部の先端から出射し、観察対象を照明する。観察対象の像が、対物光学系に入射し、イメージガイドを伝って本体部に伝送され、接眼レンズやモニタで観察できる。チャンネルチューブには、鉗子等の施術器具が通される。通常、チャンネルチューブは、光ファイバーからなるイメージガイド及びライトガイドよりもかなり大径であり、挿入部に占める割合が大きい。
【0003】
被検体内に挿入した挿入部の位置や形状を検知する技術は公知である。
例えば、特許文献2に記載の検知システムでは、内視鏡等のプローブにコイルからなる磁気素子を設ける。外部には複数のコイルからなる磁界源を含む検知手段を設置する。磁界源の複数のコイルは、互いに異なる所定の方向に向けられている。磁界源の各コイルから磁界を発生させる。各磁界に応じて磁気素子に起電力が誘起される。誘起起電力に応じた検知信号が上記検知手段のコントローラに送られる。コントローラは、この検知信号に基づいてプローブの位置及び向きを解析する。位置は、三次元直交座標(x,y,z)で表示できる。向きは、プローブの軸の伸び方向と、軸まわりの角度とを含む。軸の伸び方向は、極座標(φ,θ)で表示できる。更に軸まわりの角度(ψ)をも検知するには、プローブ内に2つの磁気素子を互いに非同軸上に設ける。
磁気素子を構成するコイルに通電して磁気素子から磁界を発生させてもよい。この場合、外部の磁界源は磁界検出器になる。この磁界検出器の複数のコイルによって上記磁気素子からの磁界が検出される。
【0004】
特許文献3に記載の検知システムでは、磁気素子を挿入部の長手方向に間隔を置いて複数設け、各磁気素子の位置データから挿入部の形状を検知している。
【0005】
特許文献4には、内視鏡を例えば気管支内の目的点まで挿入する際、被検体の複数の断層像に基づいてコンピュータにて上記被検体の三次元の画像データを作成し、この三次元の画像上で気管支の管路に沿って目的点までの経路を求め、案内画像をモニタ表示することが記載されている。モニタには、内視鏡で撮影したライブ画像と共に上記案内画像が表示される。術者は、内視鏡の先端が気管支の分岐点に達した度に何れの分岐路に進むべきかを上記案内画像に基づいて判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−206699号公報
【特許文献2】国際公開WO2003/001244
【特許文献3】特開平06−285043号公報
【特許文献4】特開2000−135215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、脳内病変の治療に内視鏡を用いる場合、脳組織を損傷しないようにしながら挿入部を脳内の目的点まで挿入することが求められる。そのためには、挿入部の先端が脳室内のどこに位置し、どこを向いているかを的確に把握することが重要になる。挿入部の向きについては、挿入部の伸び方向だけでなく、軸まわりの角度をも把握できたほうが好ましい。すなわち、例えば挿入部の先端の湾曲部を遠隔操作するとき、挿入部の軸まわりの角度が不確定では、湾曲部が意図せぬ向きに湾曲して、脳組織を損傷するおそれがある。挿入部の軸まわりの角度をも検出するためには、特許文献2に記載の通り、挿入部に磁気素子を2つ設ける必要がある。しかし、2つの磁気素子を互いに近傍に配置すると、これら磁気素子の配置スペースが嵩張り、挿入部全体の径が大きくなってしまう。挿入部が大径であると患者の負担が大きい。
そこで、本発明は、内視鏡の挿入部を大径化することなく、その先端部に磁気素子を2つ設け、挿入部の先端部の位置並びに伸び方向及び軸まわりの角度を検知できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明に係る内視鏡は、条状に延びるフレキシブルな挿入部を有し、上記挿入部の先端に埋設物としてチャンネルチューブの先端部と像伝達系の対物部と照明光出射部とが埋設され、かつ上記挿入部の先端における上記チャンネルチューブの先端部及び上記対物部のうち何れか一方の占有面積が小埋設物よりも大きい内視鏡において、
磁界を検出又は発生させることで上記挿入部の先端の位置及び向きを検知するための2つの磁気素子を上記挿入部の先端に非同軸に設け、各磁気素子の断面積が上記占有面積より小さく、上記挿入部の先端において上記最大埋設物が上記挿入部の軸心に対し一側に偏心して配置され、上記2つの磁気素子と上記小埋設物とが、上記最大埋設物の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並んで配置され、かつ上記2つの磁気素子どうしの間に上記小埋設物のうち少なくとも1つが挟まれていることを特徴とする。
また、本発明に係る内視鏡システムは、条状に延びるフレキシブルな挿入部を有し、上記挿入部の先端に埋設物としてチャンネルチューブの先端部と像伝達系の対物部と照明光出射部とが埋設され、かつ上記挿入部の先端における上記チャンネルチューブの先端部及び上記対物部のうち何れか一方の占有面積が小埋設物よりも大きい内視鏡と、
磁界を発生又は検出することで上記挿入部の先端の位置及び向きを検知する検知手段と、
を備え、上記挿入部の先端には、上記検知手段に接続されて磁界を検出又は発生させる2つの磁気素子を非同軸に設け、各磁気素子の断面積が上記占有面積より小さく、上記挿入部の先端において上記最大埋設物が上記挿入部の軸心に対し一側に偏心して配置され、上記2つの磁気素子と上記小埋設物とが、上記最大埋設物の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並んで配置され、かつ上記2つの磁気素子どうしの間に上記小埋設物のうち少なくとも1つが挟まれていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端部に、照明光出射部と像伝達系の対物部とチャンネルチューブの先端部に加えて、2つの磁気素子を更に収容することにしても、挿入部が大径化するのを抑えることができる。よって、患者の負担を軽減できる。2つの磁気素子を非同軸に配置することで、挿入部の先端部の位置及び伸び方向だけでなく、挿入部の軸まわりの角度をも検知できる。2つの磁気素子どうしの間に照明光出射部を含む小埋設物の少なくとも1つを挟むことで、2つの磁気素子をなるべく離して配置することができる。これにより、挿入部の軸まわりの角度の解析精度を高めることができる。よって、挿入部の湾曲部を湾曲操作する際、その湾曲方向を的確に判断することができる。この結果、例えば脳内病変の治療に際し、脳組織を損傷しないようにしながら、挿入部を例えば脳室の目的点まで挿入していくことができる。
【0010】
上記2つの磁気素子どうしの間に、上記小埋設物の全部が挟まれていることがより好ましい。これにより、2つの磁気素子を確実に離して配置でき、挿入部の軸まわりの角度の解析精度を確実に高めることができる。
上記最大埋設物の外径は、上記挿入部の外径の例えば2分の1以上であることが好ましい。
上記最大埋設物は、例えばチャンネルチューブである。
上記像伝達系の対物部は、例えば対物レンズ等からなる対物光学系を含む。好ましくは、像伝達系は、上記対物光学系と、この対物光学系に入射した光学像を伝送するイメージガイドを含む。この場合、対物部の占有面積をチャンネルチューブの先端部より小さくできる。上記像伝達系の対物部が、対物光学系と、撮像素子を含んでいてもよい。撮像素子を含む対物部は、占有面積がチャンネルチューブの先端部より大きくなることもあり、この場合、対物部が上記最大埋設物になる。
上記照明光出射部が、上記挿入部の先端に複数配置されていてもよい。例えば2つの照明光出射部が上記対物光学系を挟むように配置されていてもよい。これにより、観察対象を確実に照明できる。上記2つの磁気素子が上記2つの照明光出射部及び上記対物光学系を挟むように配置されていてもよい。
【0011】
上記2つの磁気素子どうしが、上記挿入部の周方向に上記挿入部の軸心を中心にして30°以上180°未満離れていることが好ましく、約60°以上180°未満離れていることがより好ましく、約90°以上180°未満離れていることが一層好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内視鏡の挿入部を大径化することなく、挿入部の先端部の位置並びに伸び方向及び軸まわりの角度を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】内視鏡を正面から見た、内視鏡システムの概略構成図である。
【図2】上記内視鏡の平面図である。
【図3】上記内視鏡の挿入部の先端面を、先端キャップを省いて正視した図である。
【図4】図3の階段状のIV−IV線に沿う、上記内視鏡の挿入部の先端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、内視鏡システムSの概観構成を示したものである。内視鏡システムSは、内視鏡10と、検知手段50を備えている。図1及び図2に示すように、内視鏡10は、本体部11と、この本体部11の中間部から延びるケーブル19と、本体部11の先端部(図1において右)から条状に延びるフレキシブルな挿入部12とを有している。ケーブル19は、途中でライトケーブル29と、磁気検知ケーブル69とに分岐されている。
【0015】
挿入部12は柔軟な樹脂チューブにて構成されている。挿入部12の先端部分には、湾曲部13が設けられ、更にその先端側には先端硬性部14が設けられている。先端硬性部14の先端すなわち挿入部12の最先端には先端キャップ15が設けられている。図4に示すように、キャップ15には複数のフック15aが設けられている。このフック15aが先端硬性部14の外壁の内周面の係合凹部14aに取り外し可能に引っ掛けられている。これにより、キャップ15が着脱可能になっている。
【0016】
図示は省略するが、湾曲部13内には複数の関節輪が設けられている。これら関節輪が一列に並べられ、操作ワイヤにて連ねられている。操作ワイヤは、挿入部12及び本体部11の内部に通され、基端部が本体部11の湾曲操作部16に連繋されている。湾曲操作部16によって、図1及び図2の二点鎖線に示すように、湾曲部13を遠隔的に湾曲操作できる。
【0017】
図1に示すように、ケーブル29,19、本体部11及び挿入部12の内部にはライトガイド22(照明光伝送手段、図2では省略)が収容されている。ライトガイド22は、光ファイバーの束にて構成されている。ライトガイド22の基端部は、ケーブル29の端部のプラグ21を介して光源20に光学的に接続されている。ライトガイド22の先端部は、先端硬性部14に達し、照明光出射部23を構成している。図3に示すように、照明光出射部23の先端面が先端キャップ15から露出している。光源20から発せられた照明光が、ライトガイド22にて伝送され、ライトガイド22の先端面から出射され、観察対象を照明する。
【0018】
図2に示すように、本体部11及び挿入部12の内部には、像伝達系30が収容されている。像伝達系30は、対物光学系31(対物部)と、イメージガイド32と、アイピース33を含む。対物光学系31は、対物レンズ等を含み、先端硬性部14に埋設されている。図3に示すように、対物光学系31の先端面が先端キャップ15から露出されている。イメージガイド32は、1又は複数の光ファイバーにて構成され、本体部11及び挿入部12の内部に収容されている。イメージガイド32の先端部が、対物光学系31に光学的に接続されている。イメージガイド32の基端部は、本体部11の基端部に設けられたアイピース33に光学的に接続されている。観察対象の像が、対物光学系31に入射し、イメージガイド32にてアイピース33へ伝送される。この光学像が、図示しない信号変換部にて電気信号に変換され、更にビデオ信号に変換され、モニタ表示される。勿論、施術者がアイピース33を覗くことにより観察対象の像を直接的に観察することもできる。
【0019】
図2に示すように、更に、本体部11及び挿入部12の内部には、樹脂製のチャンネルチューブ41(図1では省略)が収容されている。チャンネルチューブ41の基端部は、本体部11の鉗子口40に連なっている。チャンネルチューブ41の先端部は先端硬性部14に達し、その先端面が先端キャップ15から露出している。鉗子等の施術器具を鉗子口40からチャンネルチューブ41内に挿通し、挿入部12の先端から突出させて、所望の手術を施す。図3に示すように、チャンネルチューブ41の外径は、挿入部12の外径の2分の1より大きく、ライトガイド22、イメージガイド32及び対物光学系31の外径と比べるとかなり大きい。挿入部12の先端におけるチャンネルチューブ41の先端部の占有面積は、照明光出射部23及び対物光学系31の各占有面積より十分に大きい。
チャンネルチューブ41の先端部と照明光出射部23と対物光学系31は、挿入部12の先端部における埋設物を構成する。チャンネルチューブ41の先端部は、最大埋設物を構成し、照明光出射部23及び対物光学系31は、それぞれ小埋設物を構成する。
【0020】
内視鏡システムSは、挿入部12の先端部の位置及び向きを検知する機能を具備している。詳述すると、図1に示すように、内視鏡10に検知手段50が接続されている。検知手段50は、コントローラ51と、このコントローラ51に接続された磁界源52を含む。図示は省略するが、磁界源52には、互いに異なる位置に複数の磁界コイルが設けられている。これら磁界コイルの軸線は、互いに異なる所定方向に向けられている。これら磁界コイルに順次通電することにより、磁界源52から所定の複数方向に磁界が発生する。磁界源52は、内視鏡10の挿入部12の先端部分ひいては被検体の数十cm以内に設置することが好ましい。
【0021】
さらに、図1に示すように、内視鏡10の挿入部12の先端硬性部14には、2つの磁気素子60,60が設けられている。図4に示すように、各磁気素子60は細い棒状になっている。磁気素子60の外直径は例えば0.5mm程度であり、磁気素子60の長さは8mm程度である。各磁気素子60は、1つの磁界コイル63を有している。磁界コイル63が樹脂製のハウジング64内に埋め込まれている。各磁気素子60の磁界コイル63の軸線は挿入部12の軸線と平行になっている。2つの磁気素子60,60が、挿入部12の軸線に沿って平行に配置されている。磁気素子60,60どうしは、挿入部12の周方向及び挿入部12の軸線と直交する方向のうち少なくとも1つの方向にずれ、互いに非同軸になっている。この実施形態では、磁気素子60,60どうしは、挿入部12の周方向にずれて非同軸に配置されている。上記磁界源52からの磁界に応じて磁界コイル63に誘導起電力が生じる。これにより、磁気素子60にて磁界を検知できる。
【0022】
図1に示すように、各磁気素子60の基端部から磁気信号線65が延び出ている。磁気信号線65は、挿入部12、本体部11、及びケーブル19,69内に通され、ケーブル69の端部の磁気検知コネクタ67に接続されている。磁気検知コネクタ67がコントローラ51に接続されている。ひいては、各磁気素子60がコントローラ51に接続されている。
【0023】
各磁界素子60で検知した磁界信号が、信号線65を経、更に所定の信号変換を施されてコントローラ51に入力される。コントローラ51(解析手段)は、磁気素子60の検出信号に基づいて挿入部12の先端の位置及び向きを解析する。挿入部12の先端の位置は、例えば三次元座標(x,y,z)で表される。挿入部12の先端の向きは、挿入部12の先端の伸び方向と、挿入部12の軸心まわりの角度を含む。挿入部12の先端の伸び方向は、例えば極座標(φ,θ)で表される。挿入部12の軸心まわりの角度は、例えば上記伸び方向(極座標ベクトル)と直交する所定方向に対する挿入部12の外周上の基準点のずれ角(ψ)で表される。
【0024】
コントローラ51にはパーソナルコンピュータ53が接続されている。コンピュータ53にコントローラ51の解析結果が自動入力される。コンピュータ53は、上記解析結果(x,y,z,φ,θ,ψ)に基づいて挿入部12の先端の位置及び向きを画像にしてディスプレイ表示する。もちろん、上記解析結果(x,y,z,φ,θ,ψ)をそのまま数値で表示してもよい。画像と数値を1つのディスプレイ画面上に同時に表示してもよい。
【0025】
磁気素子60は、次のようにして内視鏡10に格納されている。
図4に示すように、挿入部12にガイドチューブ66が収容されている。ガイドチューブ66は、柔軟な樹脂にて構成されている。ガイドチューブ66の先端部分は少し大径になっている。このガイドチューブ66の先端の大径部66aに磁気素子60が嵌め込まれている。大径部66aより基端側のガイドチューブ66内に磁気信号線65が収容されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、挿入部12の先端硬性部14の内部にはホルダー17が設けられている。ホルダー17は、樹脂にて構成され、円柱状になっている。ホルダー17には、大きさの異なる複数の収容穴17a〜17dが形成されている。これら収容穴17a〜17dは、円柱状ホルダー17の軸方向(すなわち挿入部12の軸方向)に貫通している。収容穴17dは、2つ設けられている。各収容穴17dにガイドチューブ66の大径部66aが嵌め込まれ、ひいては磁気素子60が収容されて保持されている。これにより、磁気素子60が、先端硬性部14内に位置固定されている。磁気素子60の断面積は、ガイドチューブ66の大径部66aの断面積と合わせても、挿入部12の先端におけるチャンネルチューブ41の先端部の占有面積より十分に小さい。
【0027】
図3に示すように、ホルダー17の最も大きな収容穴17aには、チャンネルチューブ41の先端部が収容されて保持されている。
ホルダー17の収容穴17bの数は、2つである。各収容穴17bに、ライトガイド22の先端部すなわち照明光出射部23が収容されて保持されている。
収容穴17cには、対物光学系31が収容されて保持されている。
【0028】
図3に示すように、先端硬性部14すなわち挿入部12の先端において、チャンネルチューブ41の先端部が、挿入部12の軸心に対し一側(図3において左)に偏心して配置されている。2つの磁気素子60,60と2つの照明光出射部23,23と対物光学系31は、チャンネルチューブ41の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並んで配置されている。具体的には、対物光学系31が、チャンネルチューブ41の上記偏心側とは180°反対側に配置されている。2つの照明光出射部23,23が、対物光学系31を挟むように配置されている。そして、2つの磁気素子60,60が、上記照明光出射部23,23及び対物光学系31を挟むように、それらの外側に配置されている。
【0029】
2つの磁気素子60,60は、挿入部12の周方向に挿入部12の軸心を中心にして30°以上180°未満離れている。この実施形態では、2つの磁気素子60は、挿入部12の軸心を中心にして120°程度離れている。チャンネルチューブ41の軸心を中心にすると、2つの磁気素子60,60は、チャンネルチューブ41の周方向に90°程度離れている。
【0030】
内視鏡システムSの使用方法の一例を説明する。
内視鏡システムSは、例えば人体の脳室の観察、治療に使用される。予め、MRI(磁気共鳴画像診断装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)によって被験者の頭部を断層撮影する。その撮影データに基づいて、コンピュータ53により頭部の三次元画像データを作成する。そして、三次元画像データ上で目的点までの経路を決めておく。
【0031】
内視鏡10を用いて実際に被験者の脳室を観察、治療するときは、上記の三次元画像データ上の経路を参照しながら挿入部12を脳内に挿入していく。このとき、磁界源52から磁界を発生させる。この磁界を2つの磁気素子60,60がそれぞれ検出する。すなわち、各磁気素子60のコイル63には、磁界源52に対する位置及び向きに応じた大きさの起電力が生じ、これが検出信号として出力される。磁界コイル63の径を小さくし、かつ軸長を長くすることで、コイル63を横断する磁束密度が該コイル63の向きに応じて大きく変化するようにできる。よって、向きに対する感度を高めることができる。各磁気素子60の検出信号が磁気信号線65を介してコントローラ51に入力される。コントローラ51は、検出信号に基づいて、挿入部12の先端部の位置(x,y,z)及び向き(φ,θ,ψ)を求める。2つの磁気素子60,60を非同軸に配置することで、挿入部12の先端部の位置(x,y,z)及び伸び方向(φ,θ)だけでなく、挿入部12の軸心まわりの角度(ψ)をも検知することができる。2つの磁気素子60,60を、間に対物光学系31及び照明光出射部23,23を挟んで、出来るだけ離して配置することで、挿入部12の角度(ψ)の解析精度を高めることができる。
【0032】
挿入部12の先端部の位置及び向きの演算結果は、コントローラ51からコンピュータ53に送られる。コンピュータ53では、挿入部12の先端部の位置及び向きを上記三次元画像データ上にリアルタイムで表示する。これにより、術者は、表示画面を参照することで、挿入部12を所期の経路に沿って的確に挿入していくことができる。挿入部12の先端部の位置及び伸び方向だけでなく、軸心まわりの角度をも検知できるため、例えば湾曲部13を湾曲操作するとき、意図する向きに確実に湾曲させることができる。これにより、脳組織を損傷することなく、挿入部12を目的点まで確実かつ容易に到達させることができる。
【0033】
挿入部12の先端部に、照明光出射部23と対物光学系31とチャンネルチューブ41に加えて、2つの磁気素子60,60を更に収容することにしても、これら要素23,31,41,60どうしのレイアウトを工夫することで、挿入部12の大径化を抑えることができる。よって、患者の負担を軽減できる。
【0034】
内視鏡10のメンテナンス時には、磁気信号線65の基端部をコネクタ67から切断し、かつ挿入部12の先端からキャップ15を外す。すると、磁気素子60の先端面が露出する。この磁気素子60を挿入部12の先端側から引き抜く。これにより、内視鏡10から磁気素子60を容易に分離することができる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その要旨の範囲内において種々の態様を採用できる。
例えば、内視鏡10の磁気素子60を構成するコイル63に通電して磁気素子60から磁界を発生させ、コイル群装置52を磁界源に代えて磁界検出器とし、この磁界検出器52の複数のコイルによって上記磁気素子からの磁界を検出することにしてもよい。
挿入部12に設ける磁気素子60の数は3つ以上であってもよい。
磁気素子60は、磁気コイル63を含むコイルセンサーに限られず、ホールセンサーでもよく、磁束ゲートセンサーでもよい。
2つの磁気素子60は、非同軸かつ非平行に配置されていてもよい。
2つの磁気素子60,60どうしの間に、照明光出射部23,23と対物光学系31の必ずしも全部が挟まれている必要はなく、照明光出射部23,23と対物光学系31のうち少なくとも1つが挟まれていればよい。例えば、2つの磁気素子60,60どうしの間に、対物光学系31が挟まれ、2つの磁気素子60,60の外側に照明光出射部23,23が配置されていてもよい。
【0036】
像伝達系として、先端硬性部14にCCD等の撮像素子を設け、かつ挿入部12及び本体部11内に光ファイバー32に代えて電気信号線を収容し、対物光学系31に入射した光学像を撮像素子で電気信号に変換して伝送することにしてもよい。この場合、対物光学系31及び撮像素子が、像伝達系の対物部を構成し、かつ挿入部12の先端部における埋設物の1つを構成する。撮像素子は比較的大径である。そこで、挿入部12の外径増大を避けるためにチャンネルチューブ41を小径にし、その結果、撮像素子ひいては対物部が、チャンネルチューブ41より大径になり、最大埋設物になることがある。その場合、挿入部12の先端において、対物光学系31及び撮像素子からなる対物部(最大埋設物)を挿入部12の軸心に対し一側に偏心して配置し、2つの磁気素子60,60と、小埋設物である照明光出射部23及びチャンネルチューブ41を上記対物光学系31及び撮像素子からなる対物部(最大埋設物)の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並べて配置し、かつ2つの磁気素子60,60どうしの間に上記小埋設物23,41のうち少なくとも1つを配置する。
【符号の説明】
【0037】
S 内視鏡システム
10 内視鏡
11 本体部
12 挿入部
13 湾曲部
14 先端硬性部(挿入部の先端部)
15 先端キャップ
16 湾曲操作部
17 ホルダー
17a チャンネルチューブ収容穴
17b 照明光出射部収容穴
17c 対物光学系収容穴
17d 磁気素子収容穴
19 ケーブル
20 光源
21 プラグ
22 ライトガイド(照明光伝送手段)
23 照明光出射部(小埋設物)
29 ライトケーブル
31 対物光学系(対物部、小埋設物)
30 像伝達系
32 イメージガイド
33 アイピース
40 鉗子口
41 チャンネルチューブ(最大埋設物)
50 検知手段
51 コントローラ(解析手段)
52 磁界源
53 コンピュータ
60 磁気素子
63 磁界コイル
64 ハウジング
65 磁気信号線
66 ガイドチューブ
67 磁気検知コネクタ
69 磁気検知ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
条状に延びるフレキシブルな挿入部を有し、上記挿入部の先端に埋設物としてチャンネルチューブの先端部と像伝達系の対物部と照明光出射部とが埋設され、かつ上記挿入部の先端における上記チャンネルチューブの先端部及び上記対物部のうち一方(以下「最大埋設物」と称す)の占有面積が当該最大埋設物以外の何れの埋設物(以下「小埋設物」と称す)よりも大きい内視鏡において、
磁界を検出又は発生させることで上記挿入部の先端の位置及び向きを検知するための2つの磁気素子を上記挿入部の先端に非同軸に設け、各磁気素子の断面積が上記占有面積より小さく、上記挿入部の先端において上記最大埋設物が上記挿入部の軸心に対し一側に偏心して配置され、上記2つの磁気素子と上記小埋設物とが、上記最大埋設物の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並んで配置され、かつ上記2つの磁気素子どうしの間に上記小埋設物のうち少なくとも1つが挟まれていることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
上記2つの磁気素子どうしが、上記挿入部の周方向に上記挿入部の軸心を中心にして30°以上180°未満離れていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
上記最大埋設物の外径が、上記挿入部の外径の2分の1以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
条状に延びるフレキシブルな挿入部を有し、上記挿入部の先端に埋設物としてチャンネルチューブの先端部と像伝達系の対物部と照明光出射部とが埋設され、かつ上記挿入部の先端における上記チャンネルチューブの先端部及び上記対物部のうち一方(以下「最大埋設物」と称す)の占有面積が当該最大埋設物以外の何れの埋設物(以下「小埋設物」と称す)よりも大きい内視鏡と、
磁界を発生又は検出することで上記挿入部の先端の位置及び向きを検知する検知手段と、
を備え、上記挿入部の先端には、上記検知手段に接続されて磁界を検出又は発生させる2つの磁気素子を非同軸に設け、各磁気素子の断面積が上記占有面積より小さく、上記挿入部の先端において上記最大埋設物が上記挿入部の軸心に対し一側に偏心して配置され、上記2つの磁気素子と上記小埋設物とが、上記最大埋設物の上記偏心側とは反対側の半周部分の周方向に並んで配置され、かつ上記2つの磁気素子どうしの間に上記小埋設物のうち少なくとも1つが挟まれていることを特徴とする内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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