説明

内視鏡洗浄パッド

内視鏡のような医療用器具を洗浄する洗浄装置であって、酵素を乾燥状態で使用することから発生する危険性を低減し、一方貯蔵の間酵素の活動を維持するために十分な水分が吸収されるのを確実にする量で存在するプロテアーゼ、アルカレーゼ、セルラーゼ、リポラーゼのような酵素、界面活性剤および湿潤剤を含有する成分が浸透された織布、拭き取り片、あるいはスポンジを含む洗浄装置である。洗浄装置は外科用器具の外側に附着した汚れの少なくとも一部を機械的に拭き取ることにより除去し、拭き取りしていない器具におけるよりもより薄くて、かつ均一な厚さの膜として分配されるように残留している何らかの外側の汚れを再分配するようにされている。本発明はまた、洗浄装置をパッケージ化すること、およびその使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置(cleaning devices)と洗浄方法とに関し、特に汚れた外科用器具の外面を洗浄する方法と装置とに関するものである。本装置は剛性の、あるいは可撓性の内視鏡の外面を洗浄するのに使用するために開発されてきたが、主としてその使用に関して説明する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は剛性であるかあるいは可撓性でよく、かつ光学的あるいはビデオシステム(video system)および光源を組み込んでいる細長いチューブ状の器具である。典型的には、内視鏡は、一端が切開部あるいは開口部(orifice)を介して外科的切開部あるいは体内の腔中へある深さまで挿入されることによって内視鏡の体内へ挿入された端部におけるあるいはその近傍の面を外部の観察者が検視できるように構成されている。一般に使用されている内視鏡は結腸鏡と称される可撓性の内視鏡であり、人の結腸の診断処置のために使用される。前記器具の結腸挿入部分は長さが約2メートルで、一個以上の中空の通路すなわち管腔(ルーメン:lumens)を有している。
【0003】
内視鏡は高コストであり、一人の患者から次の患者への相互感染を排除する必要性があることから、各内視鏡は毎回使用した後に完全に洗浄し消毒すなわち殺菌する必要がある。この処置は時間がかかり、かつ内視鏡が、例えば粘液、排泄物、血液、組織片などの患者からの生物学的材料によって著しく汚染されるようになるため極めて難儀である。
【0004】
典型的な洗浄処置は、ひどい汚染物を除去するためにある時間流水で内視鏡の外面を濯ぎかつこすって洗い、その後内視鏡を適当な洗浄浴槽に2分から10分間漬けておき、該器具を濯いで乾燥した後に殺菌することを含む。ある場合には、殺菌する前に濯いでその後洗浄浴槽につけておいても前記器具の外側のひどい汚染の除去は十分には行われない。汚れた器具を再生可能に殺菌したり、あるいは洗浄することは不可能であるため、このような外側の不十分な洗浄は、消毒すなわち殺菌段階を汚すことになる。
【0005】
洗浄および消毒すなわち殺菌に要する時間は内視鏡を使用する処置の時間よりも長いことがよくあるので、費用をかけて器具を複数にしなければならないか、でなければ洗浄は外科処置の遂行可能な度合についての決定的な要素となる。更に、ルーメンを含む内視鏡を洗浄するために使用されるブラシとかその他の装置を洗浄するためにかなりの量の時間と材料とが消費される。最近、ルーメンの内部を洗浄するために改良された方法が注目されてきた(例えば本発明者による出願中の特許出願PCT/AU99/00669号を参照されたい)が、この方法は外面に対しては適用できない。外面の洗浄は依然として、重要で、困難で、かつ労働集約型の仕事である。例えば、酵素/洗剤成分のような各種の複雑な化学製品や生化学製品が外面から汚染物を剥離し、その後の磨き洗浄(scrubbing)による除去を促進するための事前浸漬剤(pro−soaks)として使用するよう開発されてきた。そのような処理の最終の効果は、(a)如何に丹念に濯ぎや洗浄がなされているか、(b)検査の後表面にどの程度多くの堆積物があるか、またそのような堆積物の性質は何か、(c)汚れた器具が洗浄に先立って乾燥しえたのか、もしそうならば、この乾燥が行われた温度はどれくらいであったか、によって大きく左右される。更に、本発明の出願者は、ブラシで濯ぎや磨き洗浄を行っても、器具の表面についている堆積物を除去するのでなく、単にそれらを移動させるだけであることが多いことを発見した。更に、ブラシを使用することによって、近傍の医療従事者を危険に陥らせるような汚染されたエアロゾル(aerosol)をつくりだす可能性がある。
【0006】
本明細書を通しての従来技術の説明は、そのような従来技術が当該技術分野において広く知られており、共通の一般的な知識の一部を形成していることを容認するものであるとは絶対に考えるべきでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一つを克服しあるいは改良するか、あるいは有用でより都合のよい代案を提供することである。
【0008】
本発明のある好適実施例の目的は内視鏡などを洗浄する速度および(または)効率を改良する装置と方法とを提供することである。
【0009】
本発明のある極めて好適な実施例の目的は、安価に製造することが可能でかつ一回使用した後使い捨てとしうる安価で効果的な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一の局面によると、酵素、界面活性剤、湿潤剤を含有する成分を浸透させた織布、拭き取り片(wipe)、あるいはスポンジを含む、外科用器具のための洗浄装置を提供する。本明細書で使用する「スポンジ」という用語は高分子材料の開放気泡あるいは独立気泡(open and closed cell)を有する発泡材料(foam materials)ならびに天然スポンジを含む。
【0011】
本発明の好適実施例は内視鏡のチューブ状外面あるいはその他の外科用器具の外面を洗浄するのに使用するようにされている。
【0012】
本発明による装置は、プロテアーゼ、アルカラーゼ(alcalases),セルラーゼ、リポラーゼ(lipolases)およびそれらの混合物から選択された酵素の組み合わせを含む成分で浸透されることが好ましい。
【0013】
以下の例や製剤(formulations)において使用されている酵素は市販されている水性酵素溶液あるいは懸濁液であって、純粋の酵素たんぱく質ではない。
【0014】
酵素溶液あるいは懸濁液の全量が成分中重量比で5から25%(%W/W)の量で存在することが好ましく、成分中重量比で10から20%の量で存在することがより好ましい。
【0015】
湿潤剤は成分中重量比で1から10%の量で存在することが好ましく、成分中重量比で4から7%の量で存在することがより好ましい。
【0016】
界面活性剤は少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含有することが望ましい。
【0017】
この非イオン性界面活性剤は成分中重量比で5から45%の量で存在することが好ましい。また、もしも陰イオン性界面活性剤が成分中に存在するとすれば、それは重量比で5から15%の量であることが好ましい。成分中の全体の界面活性剤は重量比で15から45%の量であることが好ましい。
【0018】
本発明による装置は当該器具のチューブ状部分の周囲の大部分の円弧と接触するようにされ、表面を拭き取るようにチューブ状部分の長さに亘って軸線方向に摺動するようにつくられていることが望ましい。本装置は、当該器具のチューブ状部分の外周の360度までの円弧と係合し、放射状方向に弾力的に変形しうることが好ましい。本装置は親水性のファイバからつくられることがより好ましい。
【0019】
本発明による装置の好適実施例では機械的な拭取り作用によって外側に附着した汚れの殆どを除去するが、より重要なことは、本装置が、除去されなかった汚染物を薄くて均等な厚さの膜として分配するように残留している外側の汚れを分配し直すよう作用することである。それによって、この膜は酵素の消化作用によってより効率的および迅速な汚れ除去を達成するようにされている。
【0020】
本発明は、第二の局面によると、洗浄を必要とするチューブ状内視鏡の外面を洗浄するために使用される装置を提供し、該装置はパッドの一方の端部から反対側の端部まで延在する溝を有し、内視鏡の外面の一部と弾力的に係合するようにされた親水性ファイバからなるパッドを含み、前記パッドは単独で、あるいは相補的なパッドと共に前記部分を概ね囲み、囲まれた部分の面と係合するように弾力的に変形可能であり、それによって本装置が内視鏡のチューブに沿って長手方向に摺動するにつれて前記外面を均等に拭き取るようにされている。
【0021】
前記パッドは針編みフェルト(needle felt)から形成され、各々が弧状の断面を有し、それがチューブの軸線の両側で整合するように折り畳むことができ、内視鏡の外面とその周囲の周りで弾力的に係合するチューブ状のトンネルを形成しうる2個の離隔した平行の溝を有することが好ましい。
【0022】
好適実施例において、第二の局面による洗浄装置は不織布からつくられ、複数の酵素、複数の界面活性剤、および少なくとも一つの湿潤剤が浸透されている。本実施例の極めて好適な形態において、不織布は「拭き取り片」のロールあるいはミシン目つきロールとして分配キャニスタに詰められ、一枚以上の拭き取り片が分配装置から引き出され、使用するためにちぎられ、そして使い捨てできるようにしている。
【0023】
本発明は、第三の局面によると、外科用器具のための洗浄装置であって、前記洗浄装置は、酵素、界面活性剤、および湿潤剤を浸透させた一回使用の織布あるいはスポンジを含む洗浄装置を包含するパッケージを提供する。
【0024】
第三の局面による好適実施例において、前記パッケージは湿気透過性である。
【0025】
本発明では、酵素成分を浸透させた不織布は内視鏡の外側をきれいに拭き取る効率的な手段を提供することを見出した。初期の実験においては、不織布は既知の酵素/洗剤成分を浸透させた。前記の浸透させた製品を乾燥状態でパッケージにすることによって貯蔵や製品搬送の間での酵素の活性を維持したが、パッケージが開放されたとき、乾燥したプロテアーゼが大気に解放され、吸入安全性(inhalation safety)に障害をもたらすという許容し得ない危険性を伴っていた。従って、浸透させる酵素/洗剤成分は湿らせることが必要であると考えられた。ところが、このことでは、当該装置が乾燥するのを阻止するために湿った浸透織布の各々を水分不浸透性の障壁内に包装させる必要があった。しかしながら、これはコストを著しく余分に高めた。そこで、本発明者は、もしも当該装置が湿潤剤を浸透させるとすれば、湿気浸透性のパッケージを採用することができ、パッケージが開放されるか、ないしは製品が使用された場合、湿潤剤が乾燥したプロテアーゼが危険になるのを阻止するに十分な水分が成分中に吸収されるのを確実にすることを発見した。驚くべきことに、貯蔵中も酵素の活性が維持された。そのため、製品は蛇口(tap)の下で湿った状態でそのパッケージから簡単に取り出すことが可能であり、次いで内視鏡の端部の周りを包むことができる。次いで、本装置は内視鏡の長さに亘って摺動して汚れを除去する。製品は、一回使用した後使い捨てとしうるように十分低コストで製造し、包装することができる。
【0026】
本発明による装置の別の利点は、酵素の作用が磨き洗い局面の間に、すなわち、洗浄工程において過去に実行されてきたものよりもより初期の段階で開始することであり、それによって全体の酵素処理時間を延ばし、それによって洗浄の効能を上げることである。
【0027】
本発明は、第四の局面によると、(1)外面を拭き取る段階と、同時に(2)前記表面に酵素および界面活性剤による処理を施す段階とを含む、外科用器具の外面を洗浄する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面を参照して好適実施例を例示のみとして以下説明する。図1および図2において典型的に示す実施例は、一方の面においてポリエステルあるいはポリプロピレンファイバ3からつくられる裏地(woven backing)に接着された不織の針編みフェルト状ポリエステルあるいはビスコース布(fabric)2から作られたパッド1の形態の洗浄装置を提供する。パッドは概ね長方形で、約133ミリメートルの幅寸法「w」と、約9センチメートルの長さ寸法「l」と、約15mmの最大厚さ寸法「t」とを有している。パッドはその周囲で熱シールされており、概ね半円形断面の2個の円弧状溝4,5を有し、該溝は加熱成形され、一方の縁部6から「w」の約四分の一および四分の三の間隔のところに中心をおいて長さ方向に延在している。前記の溝は各々約7ミリメートルの半径を有している。更に、中線、すなわち前記側縁部6から「w」の半分の距離において長さ方向に延在する折り曲げ用溝8が存在している。
【0029】
使用時、内視鏡のチューブが溝4中へ押し込まれ、パッドを内視鏡の断面の半円形部分と接触するようにさせる。パッドは次いで、図3に概略示すように、折り畳まれ、そのため溝5が前記断面の残りの部分と接触する。図3は、溝4,5が整合するように合わされて、この例においては外径が約14ミリメートルである内視鏡のチューブ9の周りで円筒形のトンネルを形成するように溝8に沿って折り畳まれた図1および2に示すパッドを示す。ポリエステルあるいはビスコースの針編みフェルト構造はある程度の弾性を有しており、パッドは、パッドを圧縮し、内視鏡のチューブの軸線に向かって放射状に作用する弾性力を加えるような仕方で内視鏡のチューブの周りに保持されうる。このように、パッドが内視鏡の外面に対して押圧されたまま、本装置は長手方向に滑らされて全体の汚れを機械的に除去し、同時にパッドは残留物を表面上で均等に再分配して、すなわち、その周囲や長さに沿ってその残留物を概ね均等な厚さに分配する。パッドと溝の寸法は色々な内視鏡に適合するように変更することが可能であるが、設計上の有利さはパッドの弾性によってある範囲の内視鏡の直径を受け入れることであることが理解される。
【0030】
適当なパッドの一例は二種類の異なったファイバから構成されており、第一のファイバは3デニールでファイバ長が51ミリメートルであるポリエステルあるいはビスコースであり、第二のファイバは2デニールでファイバ長が51ミリメートルであるポリプロピレンである。前記二種類のファイバの比率は70%のポリエステルあるいはビスコース、30%のポリプロピレンである。これらの二種類のファイバは均質になるまで混合され、次いで自由飛散ファイバ(free fly away fibres)が概ね無い低密度ウエッブが形成されるまでニードリング(針編み)技術(needling technique)によって絡まされる。
【0031】
ウエッブの厚さはファイバの量と使用される針編み装置とによって制御されるが、5ミリメートルと15ミリメートルの間のウエッブが用途に対して理想的であることが証明された。乾燥したウエッブは、一つ以上の酵素、一つ以上の界面活性剤、酵素安定組織を含有する吸湿性酵素洗浄製剤が浸透され、使用された酵素と相容性の殺菌剤(disinfectant compatible)を含有しうる。
【0032】
図示されていない第二の実施例において、パッドに、内視鏡のチューブを通しかつきつく締めて保持し同様の効果を達成しうるスリットが設けられる。パッドに2個の溝を備え該パッドを折り畳むことが好ましいが、各々溝を備えた2個の別々のパッドを同様に採用することもできる。
【0033】
パッドの弾性によってある範囲の直径の器具に対して当該装置を満足に使用しうるようにできるものの、種々の直径の器具にも適応するために色々な寸法の溝を備えた装置を製造することもできる。
【0034】
極めて好ましい実施例において、パッドは例えば以下の例1に記載のもののような成分が浸透される。
【0035】
例 1
重量%
非イオン界面活性剤(例えば、ノニル・フェノールエトキシレート) 10.0
陰イオン界面活性剤(例えば、リニアアルコールスルホン酸塩) 10.0
防腐剤(例えば、マグネシウムチオナート(thionate)) 0.15
湿潤剤(例えば、塩化カルシウム六水和物) 4.5
プロテアーゼ 10.0
アルカラーゼ 3.5
セルラーゼ 1.0
リポラーゼ 0.7
プロピレングリコール 12.0
水道水で100%とする。
【0036】
例1において使用されている酵素のための活動単位は以下の通りである。
プロテアーゼ 16KNPU/gmあるいは5AU/gm
アミラーゼ 300KNU/gm
セルラーゼ 1000ECU/gm
リパーゼ 100KLU/gm
【0037】
当該技術分野の専門家は、酵素はたんぱく質の濃度でなく、むしろ活動単位(activity units)に基づいて供給されること、および活動を定義するために使用される単位は使用される酵素の特定の化学的性質によって異なることを認識する。しかしながら、当該技術分野の専門家は異なる活動の酵素を組成変更することに習熟しており、特定の環境に従って本発明による製剤を容易に適応させることができる。
【0038】
例2は4.5重量パーセントのグリセリンを塩化カルシウム六水和物に代替したことを除いて例1と同一である。
【0039】
界面活性剤、防腐剤および酵素は定式化および相容性の要件に従って製剤および量が変動しうる。重要なことは、成分は湿潤剤を含有することである。例えば、適当な湿潤剤は塩化カルシウム、塩化ナトリウム、グリセリン、硼砂、エチレングリコールなどでよい。湿潤剤はまた界面活性剤であってもよい。
【0040】
一個以上のパッドが、水分浸透性でよいパッケージに一緒に詰められる。このことが、湿潤剤が存在することと併せて、パッケージが開放されたとき酵素の乾燥した粒子が空気中へ解放されるのを阻止するように成分を十分湿った状態に保つよう作用する。任意に、製剤は、例えば第四アンモニウム化合物のような酵素に対して相容性の殺菌剤を含有しうる。
【0041】
織布、拭き取り片、あるいはスポンジに対する成分の充填は希望に応じて変更することができる。成分は、少量から、すなわち織布、拭き取り片、あるいはスポンジの重量の1から5%から正にパッドあるいは拭き取り片を完全に飽和させる量までのいずれかの比率で供給することができる。
【0042】
使用時、本発明による装置はパッケージから取り出され、更に水で湿らせ、内視鏡の端部の周りで周方向に巻きつけられ、汚れを除去するために内視鏡の長さに亘って拭き取ることができる。次いで、パッドは適当な方法で処理される。酵素は直ちに消化作用を開始する。今や附着していた汚れが殆どなくなった内視鏡は更に適当な洗浄溶液において洗浄され、次いで消毒すなわち殺菌される。いずれの残留物も今や均等な厚さの薄い膜として分配されているので、浴におけるその後の処理は、外側を単にブラシでこすった場合よりもより短時間で効果を上げられる。
【0043】
前述した実施例はビスコースファイバパットを採用しているが、パッドは高分子材の発泡体あるいは適当な織物、ペーパあるいは複合構造のものからつくりうることも考えられる。しかしながら、器具は湿った状態に留まることが望ましいので、本装置は余り吸収性でないことが望ましい。
【0044】
極めて好ましい実施例は不織布の「拭き取り片」のロールを使用する。ロールは、例えば長さが8メートルで、幅が10センチメートルであり、10センチメートル間隔でミシン目がつけられており、ロールの自由端から10センチメートルX10センチメートルの80枚の拭き取り片をちぎり取ることができる。代替的に、製品は8メートルのロールに200枚の拭き取り片を含むキャニスタで供給してもよい。拭き取り片に使用される不織布はセルローズファイバ(例えばビスコース)のウエッブからつくられる。このウエッブは次いで、可撓性の交差結合のアクリルラテックスの水性分散液(aqueous dispersion)によって処理する。水性分散液は重量比で15%まで、好ましくは約8%の乾燥したアクリルポリマを組み込むためのものである。適当な比率の交差結合の触媒を添加すると、不織布構造がラテックス/触媒の分散液によって飽和され、余分の分散液は前記構造から重力で排出されるか、あるいは圧縮ローラの助勢によって絞り出され、その時点で前記構造が交差結合を誘導するに適当な温度で乾燥される。冷却されると、結合された不織布の開放構造ウエッブが達成され、それは以下の仕様を有している。
基本質量(g/平方メートル): 約42.5
乾燥強度(g/25ミリメートル): 225
厚さ(um/4プライ(ply)): 1270
吸収性(g/5グラム): 420
【0045】
好ましくはプラスチックから成形され、ロールの直径よりもごく僅かに大きな直径を有し、容器で密封される交換可能な閉鎖体(closure)を有する分配キャニスタに拭き取り片のロールが入れられている。交換可能な閉鎖体の下には、ロールの端をそこを通して分配することができ、ロールの軸線の周りに配置された一個以上のスリットを備えているキャニスタの蓋すなわち壁が位置している。例えば例1または例2に示され、酵素および湿潤剤を含有するもののような製剤が不織布を浸透させるに十分な量で容器に添加される。その後拭き取り片はキャニスタから引っ張り出され、必要に応じてロール端からちぎり取られる。使用時、湿潤した拭き取り片は手袋を嵌めた手に持たれ、蛇口の下で湿らされ、次いで洗浄される器具の外面を拭き取るために使用される。スリットがあるために、容器は湿気浸透性とされる。粒子の進入を排除し、湿気の喪失を阻止するために別の外側の取り外し可能な閉鎖体を設けてもよい。しかしながら、スリットは湿気がパッケージを通して確実に浸透しうるようにする。
【0046】
本明細書の教示から当該技術分野の専門家には明らかなように、本発明による装置すなわち拭き取り片を使用すると、内視鏡を洗浄するための既存の方法と較べて利便性および効能において顕著な前進を提供する。本装置すなわち拭き取り片はその他の医療用、非医療用の器具、面などの洗浄に対しても使用することができる。本装置すなわち拭き取り片は、本明細書で開示した発明の概念から逸脱することなくその他の形態で実施したり、あるいはその他の材料からつくることが可能であり、本発明から逸脱することなく製剤の変更も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による装置の第一の実施例を平面図で示す概略線図である。
【図2】図1に示す実施例を断側面図で示す概略線図である。
【図3】図1と図2とに示す装置を、内視鏡のチューブの周りで周方向に包まれた状態において断側面図で示す概略線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの酵素と、界面活性剤および湿潤剤を含有する成分が浸透された織布、拭き取り片、あるいはスポンジを含むことを特徴とする医療用器具を洗浄する洗浄装置。
【請求項2】
前記の少なくとも一つの酵素と相容性である殺菌剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記の少なくとも一つの酵素がプロテアーゼ、アルカラーゼ、リポラーゼおよびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記酵素が成分の重量比で5から25%の量で溶液あるいは懸濁液として存在していることを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記酵素が成分の重量比で10から20%の量で溶液あるいは懸濁液として存在していることを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記湿潤剤が塩化カルシウム、塩化ナトリウム、グリセリン、硼砂、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
湿潤剤としてグリセリンを含有していることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記湿潤剤が、乾燥形態で酵素を使用することから生じる何らかの危険を低減するために十分な水分が吸収されるのを確実にする量で存在していることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記湿潤剤が貯蔵の間前記酵素の活動を維持する量で存在することを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記湿潤剤が前記成分の重量比で1から10%の量で存在することを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記湿潤剤が前記成分の重量比で4から7%の量で存在することを特徴とする請求項9に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記界面活性剤が少なくとも一つの非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記非イオン性界面活性剤が重量比で5から45%の量で前記成分中に存在していることを特徴とする請求項12に記載の洗浄装置。
【請求項14】
前記界面活性剤が合成あるいは天然アルコールエトキレートであることを特徴とする請求項1から13までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項15】
前記界面活性剤が少なくとも一つの陰イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1から14までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項16】
前記陰イオン界面活性剤が重量比で5から15%の量で前記成分中に存在していることを特徴とする請求項15に記載の洗浄装置。
【請求項17】
前記陰イオン界面活性剤が炭化水素スルホン酸塩あるいは硫酸塩であることを特徴とする請求項15または16に記載の洗浄装置。
【請求項18】
前記成分中の全体界面活性剤が重量比で15から45%の量で存在していることを特徴とする請求項12から17までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項19】
防腐剤を更に含むことを特徴とする請求項1から18までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項20】
i)外科用器具の外面に附着している汚れの少なくとも一部を機械的に拭き取ることによって除去し、
ii)いずれかの外面に残留している汚れが、未拭き取りの器具におけるよりもより薄くて、かつより均一な厚さの膜として分配されるように再分配するようにされていることを特徴とする請求項1から19までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項21】
外科用器具のチューブ状外面を洗浄するのに使用されるようにされていることを特徴とする請求項1から20までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項22】
内視鏡のチューブ状外面を洗浄するのに使用されるようにされていることを特徴とする請求項1から21までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項23】
前記器具のチューブ状部分の外周の大部分の円弧と接触するようにされていることを特徴とする請求項1から22までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項24】
前記器具のチューブ状部分の外周の約360度の円弧と係合するようにされており、放射状方向に弾力的に変形するようにされていることを特徴とする請求項16に記載の洗浄装置。
【請求項25】
前記器具の表面を拭き取るために該器具のチューブ状部分の長さに亘って軸線方向に摺動するようにされていることを特徴とする請求項1から24までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項26】
親水性ファイバからつくられていることを特徴とする請求項1から25までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項27】
高分子材料からつくられていることを特徴とする請求項1から26までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項28】
ビスコースファイバとポリプロピレンファイバとから構成されていることを特徴とする請求項1から27までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項29】
ビスコースファイバとポリプロピレンファイバとが針編み技術によって絡まされた均質な混合物を形成し、概ね自由飛散ファイバの無い低密度ウエッブを形成することを特徴とする請求項28に記載の洗浄装置。
【請求項30】
高分子材料の発泡体、織物、紙あるいは複合材料からつくられた拭き取り片あるいは拭き取り片のロールの形態であることを特徴とする請求項1から29までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項31】
一つ以上の酵素、一つ以上の界面活性剤、および酵素安定剤を含有する吸湿性の酵素洗浄製剤が浸透された織布、拭き取り片あるいはスポンジから構成されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項32】
洗浄を必要とする内視鏡のチューブ状部分の外面を洗浄するために使用する洗浄装置であって、一端から反対側の端まで延在する溝を有し、前記内視鏡の外面のチューブ状部分の外面と弾力的に係合するようにされたパッドを含み、該パッドが単独で、あるいは相補的なパッドと共に前記チューブ状部分の外面を概ね囲み、その囲まれた部分の外面と係合するように弾力的に変形可能であり、それによって本洗浄装置が前記内視鏡のチューブに沿って長手方向に摺動するにつれて前記外面を均等に拭き取るようにされていることを特徴とする請求項1から31までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項33】
前記パッドが針編みされたフェルトから形成されており、2個の離隔した平行の溝を有し、前記溝の弧状断面の各々がチューブ状部分の軸線の両側で整合するように折り曲げ可能で内視鏡のチューブ状部分の外面とその周囲で弾力的に係合するチューブ状トンネルを形成することを特徴とする請求項32に記載の洗浄装置。
【請求項34】
長手方向の折り畳み継ぎ目の周りで折り畳み可能であることを特徴とする請求項33に記載の洗浄装置。
【請求項35】
不織布からつくられ、一つ以上の酵素、一つ以上の界面活性剤、および少なくとも一つの湿潤剤が浸透されることを特徴とする請求項1から27までのいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項36】
不織布からつくられ、複数の酵素、複数の界面活性剤、および少なくとも一つの湿潤剤が浸透されることを特徴とする請求項35に記載の洗浄装置。
【請求項37】
外科用器具を洗浄する洗浄装置であって、酵素、界面活性剤、および湿潤剤が浸透した少なくとも一個の一回使い切り織布、拭き取り片、あるいはスポンジを含む洗浄装置を収容するパッケージ。
【請求項38】
湿気浸透性であることを特徴とする請求項30に記載のパッケージ。
【請求項39】
洗浄を必要とする外科用器具の外面を洗浄する方法であって、(1)前記外面を拭き取り、同時に(2)前記面を酵素および界面活性剤で処理する段階を含むことを特徴とする洗浄する方法。
【請求項40】
パッドあるいは拭き取り片が、外科用器具のチューブ状部分の軸線に向かって放射状方向に作用する力を加えるような仕方で外科用器具のチューブ状部分の周りに保持されることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
弾性のパッドあるいは拭き取り片が外科用器具のチューブ状部分の外面に対して押圧され、長手方向に摺動して全体の汚れを機械的に除去し、同時に何らかの残留物を概ね均一な厚さに再分配することを特徴とする請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記残留物が前記外科用器具のチューブ状部分の周囲の周りおよび長さに亘りより均一な厚さに再分配されることを特徴とする請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−524066(P2006−524066A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503986(P2006−503986)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000404
【国際公開番号】WO2004/094080
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505391757)ノバファーム リサーチ(オーストラリア)プロプライエタリー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】