説明

内視鏡用光照射装置

【課題】体腔内に挿入され、照射光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部を備えた内視鏡用光照射装置において、装置の大型化を招くことなく、小型かつ簡易な構成で照射光の拡がり角を変更する。
【解決手段】テーパー化された第1のマルチモード光ファイバ61による被観察部への照射光の照射と第1のマルチモード光ファイバ61よりもテーパー率の低い第2のマルチモード光ファイバ71による被観察部への照射光の照射とを切り替え可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入され、照射光を導光して被観察部に照射する内視鏡挿入部を備えた内視鏡用光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
また、上記のような内視鏡システムとして、たとえば、特許文献1においては、通常画像とともに、励起光の照射によって被観察部から発せられた自家蛍光像を撮像して自家蛍光画像を得、これらの画像をモニタ画面上に表示する蛍光内視鏡システムが提案されている。
【0004】
また、蛍光内視鏡システムとしては、たとえば、ICG(インドシアニングリーン)を予め体内に投入し、励起光を被観察部に照射して血管内のICGの蛍光を検出することによって血管の蛍光画像を取得するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−239598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したような蛍光内視鏡システムにおいては、蛍光画像を得るために被観察部に励起光を照射するが、励起光が被観察部に過剰に照射されると被観察部に損傷を招くおそれがあるため被観察部への励起光の照度は安全な範囲に維持する必要がある。また、被観察部から発せられる蛍光は微弱なものであるため、励起光の照度は十分な蛍光の強度が得られるような範囲とする必要がある。
【0007】
一方、蛍光内視鏡システムにおいて体腔内に挿入される内視鏡挿入部と被観察部との間の距離は変化するため、この距離の変化に応じて励起光の照度も変化させる必要があり、励起光の照度を変化させる方法の一つとして励起光の拡がり角を変化させることが考えられる。
【0008】
そして、照射光の拡がり角を変化させる方法としては、たとえば、特許文献1には、照射光を導光する導光路を回転させたり、導光路への入射光の傾斜角を変化させたりする方法が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、導光路を回転させたり、導光路への入射光の傾斜角を変化させたりする機構が必要となり、装置が大型化するとともに、コストアップとなる問題がある。また、導光路の入射面での結合効率による光量損失の問題もある。
【0010】
また、励起光に限らず、白色光の照射に関しても、大きな拡がり角で観察部位の広い範囲を照射することが望ましく、より大きいNAを有するライトガイドを用いることが望ましい。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を招くことなく、小型かつ簡易な構成で照射光の拡がり角を変更することができる内視鏡用光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の内視鏡用光照射装置は、一端面から入射された照射光を伝播して他端面から被観察部に向けて出射するマルチモード光ファイバであって、照射光の出射部がテーパー形状で形成された第1のマルチモード光ファイバと、一端面から入射された照射光を伝播して他端面から被観察部に向けて出射するマルチモード光ファイバであって、照射光の出射部のテーパー率が第1のマルチモード光ファイバよりも低い第2のマルチモード光ファイバと、第1のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射と第2のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射とを切り替える照射制御部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
なお、上記「照射光の出射部のテーパー率が第1のマルチモード光ファイバよりも低い」とは、テーパー率0%、すなわちテーパー化されていないものも含むものとする。
【0014】
また、上記本発明の内視鏡用光照射装置においては、上記出射部と被観察部との間の距離情報を取得する距離情報取得部をさらに設け、照射制御部を、距離情報取得部により取得された距離情報に基づいて、第1のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射と第2のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射とを切り替えるものとすることができる。
【0015】
また、マルチモード光ファイバが設けられた体腔内に挿入される内視鏡挿入部を設け、マルチモード光ファイバの照射光の出射端と内視鏡挿入部の先端面との間に空間を設けるようにすることができる。
【0016】
また、照射光として近赤外光を用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内視鏡用光照射装置によれば、テーパー化された第1のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射と第1のマルチモード光ファイバよりもテーパー率の低い第2のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射とを切り替え可能にしたので、小型かつ簡易な構成で照射光の拡がり角を変更することができる。
【0018】
また、上記本発明の内視鏡用光照射装置において、上記出射部と被観察部との間の距離情報を取得し、その取得し距離情報に基づいて、第1のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射と第2のマルチモード光ファイバによる被観察部への照射光の照射とを切り替えるようにした場合には、被観察部に対して必要以上の照射光が照射されて被観察部が損傷を受けないようにするとともに、被観察部から十分な反射光や蛍光の強度を得られるように照射光の照度を調整することができる。
【0019】
また、マルチモード光ファイバが設けられた体腔内に挿入される内視鏡挿入部を備えたものとし、そのマルチモード光ファイバの照射光の出射端と内視鏡挿入部の先端面との間に空間を設けるようにした場合には、被観察部における照射光の照射範囲を広げることができるとともに、照射光のエネルギー密度が許容範囲を超えるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の内視鏡用光照射装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】体腔挿入部の概略構成図
【図3】体腔挿入部の先端部の概略構成図
【図4】図3の4−4’線断面図
【図5】テーパー化されたマルチモード光ファイバ(a)とテーパー化されていないマルチモード光ファイバ(b)とのビームの拡がり角を示す図
【図6】体腔挿入部の各投光ユニットによって照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを示す図
【図7】撮像ユニットの概略構成を示す図
【図8】撮像ユニットの分光感度を示す図
【図9】画像処理装置および光源装置の概略構成を示す図
【図10】本発明の一実施形態の硬性鏡システムにおける近赤外光の照度の制御方法を説明するためのフローチャート
【図11】本発明の一実施形態の硬性鏡システムにおける近赤外光の照度の制御方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡用光照射装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。本発明は、光照射装置の構成に特徴を有するものであるが、まずは、そのシステム全体の構成から説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0022】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、青色光と近赤外光を射出する光源装置2と、光源装置2から射出された青色光を波長変換した白色光と近赤外光を被観察部に照射するとともに、白色光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像と近赤外光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施す画像処理装置3と、画像処理装置3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の深部蛍光画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0023】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、腹腔内に挿入される体腔挿入部30と、体腔挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0024】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、体腔挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、体腔挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、およびケーブル接続口30cを備えている。
【0025】
接続部材30aは、体腔挿入部30(挿入部材30b)の一端側30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20側に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と体腔挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0026】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するためのレンズ群が収容されており、他端側30Yから入射された被観察部の通常像および蛍光像はレンズ群を介して一端側30Xの撮像ユニット20側に射出される。
【0027】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続口30cが設けられており、このケーブル接続口30cに光ケーブルLCが機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとが光ケーブルLCを介して光学的に接続されることになる。
【0028】
また、図3に示すように、体腔挿入部30の他端側30Yには、略中央に通常像および蛍光像を結像する撮像レンズ30dが設けられており、その撮像レンズ30dを挟んで略対称に白色光を照射する白色光用照射レンズ30g,30hが設けられている。このように白色光用照射レンズを撮像レンズ30dに対して対称に2つ設けるようにしているのは、被観察部の凹凸によって通常像に陰影ができないようにするためである。
【0029】
また、体腔挿入部30の他端側30Yには、近赤外光を照射する第1の近赤外光用照射レンズ30fと第2の近赤外光用照射レンズ30eとが撮像レンズ30dに対して略対称に設けられている。
【0030】
また、図4に、図3の4-4’線断面図を示す。図4に示すように、体腔挿入部30内には、白色投光ユニット50と第1の近赤外投光ユニット60とが設けられている。白色投光ユニット50は、青色光を導光するマルチモード光ファイバ51と、マルチモード光ファイバ51によって導光された青色光の一部を吸収して励起され、緑色〜黄色の可視光を発する蛍光体52とを備えている。蛍光体52は、複数種類の蛍光物質から形成されており、たとえば、YAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質などを含んで形成される。
【0031】
そして、蛍光体52の外周を覆うように筒状のスリーブ部材53が設けられており、スリーブ部材53の内部には、マルチモード光ファイバ51を中心軸として保持するフェニール54が挿入されている。さらに、フェニール54の後端側(先端側とは逆側)から延出されるマルチモード光ファイバ51には、その外皮を覆うフレキシブルスリーブ55がスリーブ部材53との間に挿入されている。
【0032】
また、第1の近赤外投光ユニット60は、近赤外光を導光する第1のマルチモード光ファイバ61を備えており、第1のマルチモード光ファイバ51と第1の近赤外光用照射レンズ30fとの間には空間62が設けられている。
【0033】
そして、このように空間62を設けることによって、被観察部における近赤外光の照射範囲を広げることができるとともに、近赤外光のエネルギー密度が許容範囲を超えるのを回避することができるが、第1のマルチモード光ファイバ61から出射された近赤外光が空間62の側壁にけられずに通過させるためには、空間62の径は、下式の要件を満たす必要がある。
φ2−φ1>2t+tanθ
ここで、θは第1のマルチモード光ファイバ61の出射端61aにおける近赤外光のひろがり角、φ1は第1のマルチモード光ファイバ61の出射端61aの径、φ1は空間62の径、tは第1のマルチモード光ファイバ61の出射端から第1の近赤外光用照射レンズ30fの入射端面までの距離である。
【0034】
そして、たとえば、θ=17°、φ1=0.1mm、t=2mmの場合には、下式のとおり、φ2は1.33mmより大きくする必要がある。
φ2>2×2×tan(17°)+0.1=1.33
また、第1の近赤外投光ユニット60にも、空間62の外周を覆うように筒状のスリーブ部材63が設けられており、白色投光ユニット50と同様に、フェニール64およびフレキシブルスリーブ65が設けられている。
【0035】
そして、体腔挿入部30内には、2つの白色投光ユニット50が撮像レンズ30dに対して対称に設けられ、第1の近赤外投光ユニット60と第2の近赤外投光ユニットとが、撮像レンズ30dに対して対称に設けられるが、第2の近赤外投光ユニットについては、マルチモード光ファイバの構成以外は、第1の近赤外投光ユニット60と同様の構成である。なお、図3の各照射レンズ内の点線の丸は、マルチモード光ファイバの出射端を示している。
【0036】
また、各投光ユニットにおいて使用されるマルチモード光ファイバとしては、たとえば、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径が直径0.3mm〜0.5mmの細径なものを使用することができるが、第1の近赤外投光ユニット60の第1のマルチモード光ファイバ61だけがその先端部分の構成が異なる。
【0037】
図5(a)に第1の近赤外投光ユニット60の第1のマルチモード光ファイバ61の先端部分の構成を示し、図5(b)に第2の近赤外光投光ユニットの第2のマルチモード光ファイバ71の先端部分の構成を示す。
【0038】
第1のマルチモード光ファイバ61は、図5(a)に示すように、コアCとその周囲に形成されたクラッドKとから構成されるものであり、光源装置2から射出された近赤外光が一端から入射され、他端から射出するものである。そして、第1のマルチモード光ファイバ61の出射部は、その出射端に向けて先細りとなるようなテーパー形状で形成されている。
【0039】
第1のマルチモード光ファイバ61の出射部は、マルチモード光ファイバの一部を加熱し、その加熱部分を延伸加工することによってテーパー形状に形成されている。すなわち、第1のマルチモード光ファイバ61の出射部におけるコア径とクラッド径との比率が、テーパー化していない部分の比率と同じになるように形成されている。なお、テーパー率を{(テーパー化によって減少したコア径)/(テーパー化前のコア径)}×100%とすると、出射部のテーパー率は36%未満であることが望ましい。
【0040】
ここで、上述したようにテーパー化された第1のマルチモード光ファイバ61の作用を、テーパー化されてない図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71の作用と比較しながら説明する。なお、図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71については、テーパー化されていないこと以外は、第1のマルチモード光ファイバ61と同様の材料および構成となっているものとする。
【0041】
まず、一般的に、光ファイバの出射部の開口数は、下式(1)で表わされる。なお、下式(1)におけるθは、図5(b)に示すθであり、光ファイバから出射される光の拡がり角の半角である。
【数1】

そして、たとえば、図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71のコアの屈折率n1=1.45、クラッドの屈折率n2=1.42、空気の屈折率n0=1とすると、第2のマルチモード光ファイバ71から出射される光の拡がり角2θ=約34°となる。
【0042】
一方、一般的に、マルチモード光ファイバにおいては、出射端のビームの径(コア径)とビームの拡がり半角θとの積が一定である関係がある。したがって、図5(a)に示すようなテーパー形状の第1のマルチモード光ファイバ61についても、ビームのコア径が出射端に向けて連続的に減少するテーパー部分の任意の断面において、下式(2)の関係が成り立つことになる。
【数2】

よって、図5(a)に示す第1のマルチモード光ファイバ61のテーパー部分の出射端におけるビームの拡がり角θ’は、図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71のビームの拡がり角をθとすると、上式(2)を変形して下式(3)で表わすことができる。
【数3】

したがって、図5(a)に示す第1のマルチモード光ファイバ61のコアCとクラッドKの屈折率が、上述した図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71と同じであり、テーパー率が36%である場合には、図5(a)に示す第1のマルチモード光ファイバ61から出射されるビームの拡がり角2θ’は、上式(3)から約42°となる。すなわち、テーパー化した第1のマルチモード光ファイバ61の方がビームの拡がり角が広くなることになる。
【0043】
したがって、第1の近赤外投光ユニット60により照射される近赤外光の被観察部における照射範囲の方が第2の近赤外投光ユニットにより照射される近赤外光の被観察部における照射範囲よりも広くなることになる。
【0044】
ここで、各投光ユニットによって被観察部に照射される光のスペクトルおよびその光の照射によって被観察部から発せられる蛍光および反射光のスペクトルを図6に示す。図6には、白色投光ユニット50の蛍光体52を透過して照射された青色光スペクトルS1と、白色投光ユニット50の蛍光体52において励起されて照射された緑色〜黄色の可視光スペクトルS2と、第1または第2の近赤外投光ユニットによって照射された近赤外光スペクトルS3と、第1または第2の近赤外投光ユニットによる近赤外光スペクトルS3の照射によって発せられたICG蛍光スペクトルS4とが示されている。
【0045】
なお、本明細書における白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、たとえば、基準光であるR(赤)、G(緑)、B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよく、たとえば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光なども広義に含むものとする。したがって、白色投光ユニット50は、図6に示すような青色光スペクトルS1と可視光スペクトルS2とを照射するものであるが、これらのスペクトルからなる光も白色光であるとする。
【0046】
また、挿入部材30bの先端には、図4に示すように、体腔挿入部30の先端と被観察部との距離情報を計測する測距部80が設けられている。測距部80としては、たとえば、超音波や光を用いて距離を測定するものを利用することができるが、その他の公知な測距手段を用いるようにしてもよい。そして、測距部80によって計測された距離情報は撮像ユニット20を介して画像処理装置3に出力される。
【0047】
図7は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の通常像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0048】
第1の撮像系は、体腔挿入部30から射出された蛍光像を透過するとともに、励起光をカットする励起光カットフィルタ22と、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した蛍光像L4を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0049】
第2の撮像系は、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L3を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された通常像L3を撮像する撮像素子26を備えている。
【0050】
高感度撮像素子24は、蛍光像L4の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24はモノクロの撮像素子である。
【0051】
撮像素子26は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0052】
ここで、図8に、撮像ユニット20の分光感度のグラフを示す。具体的には、撮像ユニット20は、第1の撮像系がIR(近赤外)感度を有し、第2の撮像系がR(赤)感度、G(緑)感度、B(青)感度を有するように構成されている。
【0053】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号および撮像素子26から出力された通常画像信号に対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介して画像処理装置3に出力するものである。
【0054】
図9は、光源装置2および画像処理装置3の概略構成を示す図である。画像処理装置3は、図9に示すように、通常画像入力コントローラ31、蛍光画像入力コントローラ32、画像処理部33、メモリ34、ビデオ出力部35、操作部36、TG(タイミングジェネレータ)37、および制御部38を備えている。
【0055】
通常画像入力コントローラ31および蛍光画像入力コントローラ32は、所定容量のラインバッファを備えており、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号をそれぞれ一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ31に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ32に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ34に格納される。
【0056】
画像処理部33は、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0057】
ビデオ出力部35は、画像処理部33から出力された通常画像信号および蛍光画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0058】
操作部36は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG37は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ43,49を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。
【0059】
制御部38は、システム全体を制御するものであるが、さらに体腔挿入部30にもうけられた測距部80によって計測された距離情報を取得する距離情報取得部38aと、距離情報取得部38aによって取得された距離情報に基づいて、被観察部への近赤外光の照度情報を取得する照度情報取得部38bとを備えている。そして、制御部38は、照度情報取得部38bによって取得された励起光の照度情報に基づいて、光源装置2における後述する光ファイバスイッチ48の切り替えまたは近赤外光の強度を制御するものである。
【0060】
光源装置2は、図9に示すように、445nmの青色光を射出する青色LD光源40と、青色LD光源40から射出された青色光を集光して光ファイバスプリッタ42に入射させる集光レンズ41と、集光レンズ41によって入射された青色光を光ケーブルLC1と光ケーブルLC2との両方に同時に入射する光ファイバスプリッタ42と、青色LD光源40を駆動するLDドライバ43とを備えている。
【0061】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光を射出する近赤外LD光源46と、近赤外LD光源46から射出された近赤外光を集光して光ファイバスイッチ48の入力端に入射させる集光レンズ47と、集光レンズ47によって入射された近赤外光を制御部38からの制御信号に基づいて光ケーブルLC3の入射端と光ケーブルLC4の入射端とに切り替えて入射する光ファイバスイッチ48と、近赤外LD光源46を駆動するLDドライバ49とを備えている。
【0062】
また、本実施形態においては、励起光として近赤外光を用いるようにしたが、上記近赤外光に限定されず、被検者に投入される蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定される。
【0063】
LDドライバ49は、制御部38から出力された制御信号に基づいて、近赤外LD光源46から出力される近赤外光の強度を制御するものである。すなわち、被観察部に対して必要以上の近赤外光が照射されて被観察部が損傷を受けないようにするとともに、被観察部から十分な蛍光の強度を得られるように近赤外LD光源46を駆動制御するものである。
【0064】
また、光源装置2は、光ケーブルLCを介して硬性鏡撮像装置10に光学的に接続されるが、光ケーブルLC1およびLC2は、それぞれ白色投光ユニット50のマルチモード光ファイバ51に光学的に接続され、光ケーブルLC3は第1の近赤外投光ユニット60の第1のマルチモード光ファイバ61に光学的に接続され、光ケーブルLC4は第2の近赤外投光ユニットの第2のマルチモード光ファイバ71に光学的に接続されるものとする。
【0065】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0066】
まず、光ケーブルLCが接続された体腔挿入部30およびケーブル5が撮像ユニット20に取り付けられた後、光源装置2および撮像ユニット20および画像処理装置3の電源が投入され、これらが駆動される。
【0067】
次に、操作者により体腔挿入部30が体腔内に挿入され、体腔挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置される。なお、被観察部には、予めICGが投与されているものとする。
【0068】
そして、ICG蛍光画像および通常画像が撮像される。具体的には、光源装置2の青色LD光源40から射出された青色光が、集光レンズ41および光ファイバスプリッタ42を介して光ケーブルLC1およびLC2の両方に同時に入射される。そして、さらに青色光は光ケーブルLC1,LC2により導光されて体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の白色投光ユニット50のマルチモード光ファイバ51によって導光される。そして、マルチモード光ファイバ51の出射端から出射された青色光は、一部は蛍光体52を透過して被観察部に照射され、一部以外は蛍光体52によって緑色〜黄色の可視光に波長変換され、その可視光が被観察部に照射される。すなわち、青色光と緑色〜黄色の可視光とからなる白色光が被観察部に照射される。
【0069】
一方、光源装置2の近赤外LD光源46から射出された近赤外光が、集光レンズ47および光ファイバスイッチ48を介して光ケーブルLC3またはLC4に入射され、光ケーブルLC3またはLC4を介して体腔挿入部30に入射され、体腔挿入部30内の第1または第2の近赤外投光ユニットのマルチモード光ファイバによって導光されて被観察部に白色光と同時に照射される。なお、光ファイバスイッチ48における光ケーブルLC3への近赤外光の入射または光ケーブルLC4への近赤外光の入射の切り替え方法については、後で詳述する。
【0070】
そして、白色光の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像されるとともに、近赤外光の照射によって被観察部から発せられたICG蛍光に基づくICG蛍光像が通常像と同時に撮像される。
【0071】
より具体的には、通常像の撮像の際には、白色光の照射によって被観察部から反射された通常像が挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0072】
撮像ユニット20に入射された通常像は、ダイクロイックプリズム21によって直角方向に反射され、第2結像光学系25によって撮像素子26の撮像面に結像され、撮像素子26によって撮像される。
【0073】
そして、撮像素子26からそれぞれ出力されたR、G、Bの画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処理装置3に出力される。
【0074】
一方、ICG蛍光像の撮像の際には、近赤外光の励起光の照射によって被観察部から発せられたICG蛍光像が挿入部材30bの先端30Yの撮像レンズ30dから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0075】
撮像ユニット20に入射されたICG蛍光像は、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって撮像される。高感度撮像素子24から出力されたICG蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介して画像処置装置3に出力される。
【0076】
そして、画像処理装置3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ31において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部33において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0077】
そして、ビデオ出力部35は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0078】
一方、画像処理装置3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ32において一時的に記憶された後、メモリ34に格納される。そして、メモリ34から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部33において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部35に順次出力される。
【0079】
そして、ビデオ出力部35は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。
【0080】
ここで、本実施形態の硬性鏡システムにおいては、上述したようにして通常画像および蛍光画像の撮像を行うととともに、体腔挿入部30と被観察部との間の距離に応じて、被観察部に照射される近赤外光の照度を調整する。具体的には、被観察部に対して必要以上の近赤外光が照射されて被観察部が損傷を受けないようにするとともに、被観察部から十分な蛍光の強度を得られるように近赤外光の照度を調整する。その近赤外光の照度の調整方法について、図10および図11に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0081】
まず、体腔挿入部30の先端に設けられた測距部80によって体腔挿入部30と被観察部との距離が計測され、その距離情報が撮像ユニット20を介して画像処理装置3に出力され、画像処理装置3の距離情報取得部38aによって取得される(S10)。
【0082】
そして、制御部38の照度情報取得部38bは、距離情報取得部38aによって取得された距離情報と、光源装置2における光ファイバスイッチ48の切替情報とを取得し、これらの情報に基づいて、被観察部への近赤外光の照度情報を取得する(S12)。より具体的には、照度情報取得部38bは、光ファイバスイッチ48の切替状態を取得し、この切替情報に対応する近赤外光の拡がり角を取得する。
【0083】
なお、本実施形態の硬性鏡システムにおいては、光ファイバスイッチ48は、光ケーブルLC3への近赤外光の入射と、光ケーブルLC4への近赤外光の入射とを切り替えるものであり、すなわち、テーパー化された第1のマルチモード光ファイバ61を有する第1の近赤外投光ユニット60からの近赤外光の照射と、テーパー化されていない第2のマルチモード光ファイバ71を有する第2の近赤外投光ユニットからの近赤外光の照射とを切り替えるものである。そして、照度情報取得部38bは、光ファイバスイッチ48が光ケーブルLC3と光ケーブルLC4とのどちらの光ケーブルに近赤外光を入射している状態かを切替情報として取得するものである。
【0084】
そして、照度情報取得部38bには、図5(a)に示す第1のマルチモード光ファイバ61により照射される近赤外光の拡がり角(2×θ’)が拡がり角「大」として予め設定されており、図5(b)に示す第2のマルチモード光ファイバ71により照射される近赤外光の拡がり角(2×θ)が拡がり角「小」として予め設定されており、照度情報取得部38bは、切替情報に基づいて拡がり角「大」または拡がり角「小」を取得する。すなわち、光ファイバスイッチ48が光ケーブルLC3(第1の近赤外投光ユニット)に近赤外光を入射するよう切り替えられている場合には拡がり角「大」を取得し、光ファイバスイッチ48が光ケーブルLC4(第2の近赤外投光ユニット)に近赤外光を入射するよう切り替えられている場合には拡がり角「小」を取得する。
【0085】
そして、照度情報取得部38bは、上述したようにして取得した拡がり角「大」または拡がり角「小」の情報と、距離情報取得部38aによって取得された距離情報とを用いて、下式を計算して近赤外光の照度情報を取得する。
【0086】
照度情報=(近赤外LD光源46の現在の出力)/[π{距離情報×tan(θi/2)}
ただし、θi=拡がり角「大」または拡がり角「小」
なお、近赤外LD光源46の現在の出力については、LDドライバ49に出力される制御信号に基づいて算出されるものとする。
【0087】
次に、制御部38は、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報と予め設定された近赤外光の規定照度とを比較する(S14)。ここで、近赤外光の規定照度としては、たとえば、被観察部から十分な蛍光の強度を得られるような照度以上であって、かつ生体安全に許容される照度の上限値以下の照度が設定される。生体安全に許容される上限の一例としては、JIS6802に定められる皮膚の最大許容露光量(MPE)がある。
【0088】
そして、制御部38は、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報が規定照度の範囲内である場合には、S10に戻り、特に制御を行わない(S14,YES)。一方、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報が規定照度の範囲外である場合には(S14,NO)、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報が規定照度の下限値よりも小さいのか、もしくは上限値よりも大きいのかを判定する(S16)。
【0089】
そして、制御部38は、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報が規定照度の上限値よりも大きいと判定した場合には(S16,「大きい」)、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「大」であるのか、もしくは拡がり角「小」であるのかを判定する(S18)。
【0090】
そして、制御部38は、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「大」である場合には(S18,「大」)、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度を算出し、その算出した強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する(S20)。
【0091】
また、制御部38は、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「小」である場合には(S18,「小」)、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に変更した場合の近赤外光の照度を算出し、その近赤外光の照度が規定照度の範囲内であるか否かを判定する(S22)。そして、制御部38は、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に変更した場合の近赤外光の照度が規定照度の範囲内になると判定した場合には(S22,YES)、近赤外光の拡がり角が拡がり角「大」となるように、光ファイバスイッチ48に対してスイッチ切替制御信号を出力する。そして、光ファイバスイッチ48が、近赤外光が光ケーブルLC3(第1の近赤外投光ユニット)へ入射されるよう切り替えられることによって、近赤外光の拡がり角が拡がり角「大」に変更される(S24)。
【0092】
一方、制御部38は、S22において、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に変更した場合の近赤外光の照度が規定照度の範囲外になると判定した場合には(S22,NO)、近赤外光の拡がり角を拡がり角「小」に維持したままの状態において、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度を算出し、その算出した強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する(S26)。
【0093】
また、S16において、制御部38が、照度情報取得部38bによって取得された近赤外光の照度情報が規定照度の下限値よりも小さいと判定した場合にも(S16,「小さい」)、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「大」であるのか、もしくは拡がり角「小」であるのかを判定する(図9のS28)。
【0094】
そして、制御部38は、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「小」である場合には(S28,「小」)、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度を算出し、その算出した強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する(S30)。なお、ここで算出された近赤外光の強度が、近赤外LD光源46から射出可能な近赤外光の強度の最大値以上である場合には、上記最大値の強度となるようにLDドライバ49に制御信号を出力する。
【0095】
また、制御部38は、現在の近赤外光の拡がり角が、拡がり角「大」である場合には(S28,「大」)、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に維持したままの状態において、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度を算出し、その強度が近赤外LD光源46から射出可能な近赤外光の強度の最大値以下であるか否かを判定する(S32)。そして、制御部38は、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に維持したままの状態において、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度が、近赤外LD光源46から射出可能な近赤外光の強度の最大値以下である場合には(S32,YES)、その強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する(S34)。
【0096】
一方、制御部38は、S32において、近赤外光の拡がり角を拡がり角「大」に維持したままの状態において、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度が、近赤外LD光源46から射出可能な近赤外光の強度の最大値よりも大きい場合には(S32,NO)、近赤外光の拡がり角が拡がり角「小」となるように、光ファイバスイッチ48に対してスイッチ切替制御信号を出力する。そして、光ファイバスイッチ48が、近赤外光が光ケーブルLC4(第2の近赤外投光ユニット)へ入射されるよう切り替えられることによって、近赤外光の拡がり角が拡がり角「小」に変更される(S36)。
【0097】
そして、さらに近赤外光の拡がり角を拡がり角「小」に変更した場合の近赤外光の照度を算出し、その近赤外光の照度が規定照度の範囲外である場合には、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度を算出し、その強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する。なお、近赤外光の照度が規定照度の範囲内となるような近赤外光の強度が、近赤外LD光源46から射出可能な近赤外光の強度の最大値以上である場合には、その最大値の強度の近赤外光が近赤外LD光源46から射出されるようにLDドライバ49に制御信号を出力する。
【0098】
上述したように近赤外光の強度および拡がり角を制御することによって、被観察部に対して必要以上の近赤外光が照射されて被観察部が損傷を受けないようにするとともに、被観察部から十分な蛍光の強度を得られるように近赤外光の照度を調整することができる。
【0099】
また、上記実施形態においては、近赤外光の拡がり角を、拡がり角「大」と拡がり角「小」との2つの状態に変更するようにしたが、これに限らず、近赤外光の照度に応じて、拡がり角「大」と拡がり角「小」との間の拡がり角に設定するようにしてもよく、すなわち、第1の近赤外投光ユニットの第1のマルチモード光ファイバ61のテーパー率よりも低いテーパー率でテーパー化されたマルチモード光ファイバを有する近赤外投光ユニットをさらに設けるようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態においては、第1の近赤外投光ユニットによる近赤外光の照射と第1の近赤外投光ユニットによる近赤外光の照射との切り替えを、光ファイバスイッチ48により行うようにしたが、これに限らず、たとえば、第1の近赤外投光ユニットに近赤外光入射する光源と第2の近赤外投光ユニットに近赤外光を入射する光源とを別個に設け、これらの光源のオン/オフを制御することによって切り替えるようにしてもよいし、もしくは第1の近赤外投光ユニットと第2の近赤外投光ユニットとにそれぞれシャッターを設けるようにし、このシャッターを制御することによって切り替えるようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、距離情報取得部38aによって取得された距離情報に基づいて、被観察部に照射される近赤外光の照度を制御するようにしたが、白色光の照度を制御するようにしてもよい。すなわち、白色投光ユニットについても、さらにテーパー化されたマルチモード光ファイバを備えたものを設け、2つの白色投光ユニットからの白色光の照射を切り替えるようにしてもよい。なお、白色光の照度を制御する場合には、たとえば、規定照度としては、被観察部からの十分な反射光の強度を得られるような照度以上であって、かつ撮像素子26において検出される信号が飽和して白飛びしないような照度の上限値以下の照度を設定するようにすればよい。
【0102】
また、上記第実施形態は、本発明の内視鏡用光照射装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡装置を有するその他の内視鏡システムに適用してもよい。また、内視鏡システムに限らず、体内に挿入される挿入部を備えていない、いわゆるビデオカメラ型の医用画像撮像装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 画像処理装置
4 モニタ
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
24 高感度撮像素子
26 撮像素子
30 体腔挿入部
30d 撮像レンズ
30e 第2の近赤外光用照射レンズ
30f 第1の近赤外光用照射レンズ
30g,30h 白色光用照射レンズ
33 画像処理部
38 制御部
38a 距離情報取得部
38b 照度情報取得部
40 青色LD光源
46 近赤外光源
48 光ファイバスイッチ
50 白色投光ユニット
51 マルチモード光ファイバ
52 蛍光体
60 第1の近赤外投光ユニット
61 第1のマルチモード光ファイバ
62 空間
71 第2のマルチモード光ファイバ
80 測距部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面から入射された照射光を伝播して他端面から被観察部に向けて出射するマルチモード光ファイバであって、前記照射光の出射部がテーパー形状で形成された第1のマルチモード光ファイバと、
一端面から入射された前記照射光を伝播して他端面から被観察部に向けて出射するマルチモード光ファイバであって、前記照射光の出射部のテーパー率が前記第1のマルチモード光ファイバよりも低い第2のマルチモード光ファイバと、
前記第1のマルチモード光ファイバによる前記被観察部への前記照射光の照射と前記第2のマルチモード光ファイバによる前記被観察部への前記照射光の照射とを切り替える照射制御部とを備えたことを特徴とする内視鏡用光照射装置。
【請求項2】
前記出射部と前記被観察部との間の距離情報を取得する距離情報取得部と備え、
前記照射制御部が、前記距離情報取得部により取得された距離情報に基づいて、前記第1のマルチモード光ファイバによる前記被観察部への前記照射光の照射と前記第2のマルチモード光ファイバによる前記被観察部への前記照射光の照射とを切り替えるものであることを特徴とする請求項1記載の内視鏡用光照射装置。
【請求項3】
前記マルチモード光ファイバが設けられた体腔内に挿入される内視鏡挿入部を備え、
前記マルチモード光ファイバの前記照射光の出射端と前記内視鏡挿入部の先端面との間に空間が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡用光照射装置。
【請求項4】
前記照射光が近赤外光であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の内視鏡用光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−167328(P2011−167328A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33343(P2010−33343)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】