内視鏡用高周波切開具
【課題】表面粘膜の隆起部等に対する焼灼処置を行いながら押し込み操作する際に、先端が意に反して粘膜下の筋層側に寄って行き難くて、安全に高周波切開処置を行うことができる内視鏡用高周波切開具を提供すること。
【解決手段】可撓性チューブ1,2A,2Bの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部2Eに丸みを形成すると共に、可撓性チューブ1,2A,2Bの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブ1,2A,2Bの軸線位置と突端部2Eとを通る仮想線Xと略直交する向きに、導電線3を可撓性チューブ1,2A,2B外に露出させて高周波電極5とした。
【解決手段】可撓性チューブ1,2A,2Bの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部2Eに丸みを形成すると共に、可撓性チューブ1,2A,2Bの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブ1,2A,2Bの軸線位置と突端部2Eとを通る仮想線Xと略直交する向きに、導電線3を可撓性チューブ1,2A,2B外に露出させて高周波電極5とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡用高周波切開具に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内の表面粘膜の隆起部(隆起させた部分を含む)等を高周波焼灼して切開するための内視鏡用高周波切開具として、従来は、直線状又は曲線状の棒状の高周波電極を可撓性チューブの先端から前方に突出配置したものや、内視鏡の先端フードの最先端部分に高周波電極になる導電線を横断的に配置したもの等が用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2002−153485
【特許文献2】特開2005−66140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
体腔内の表面粘膜の隆起部等を高周波焼灼して切開する場合には、焼灼領域が粘膜下の筋層側に達しないように、できれば粘膜側だけを焼灼して切開することが安全性の上から望ましい。
【0004】
しかし、組織の焼灼範囲は高周波電極の周囲に均等に広がっていき、高周波切開具は焼灼処置をしながら押し込み操作されると焼灼されて抵抗が少なくなった組織の方に進んで行き易いので、従来の内視鏡用高周波切開具では、高周波電極が配置されている先端部が術者の意に反して次第に粘膜下の筋層側に寄せられ、筋層付近を焼灼損傷してしまう恐れがあった。
【0005】
そこで本発明は、表面粘膜の隆起部等に対する焼灼処置を行いながら押し込み操作する際に、先端が意に反して粘膜下の筋層側に寄って行き難くて、安全に高周波切開処置を行うことができる内視鏡用高周波切開具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用高周波切開具は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたものである。
【0007】
なお、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに突端部寄りの半部の領域には配置されていないのがよい。
そして、可撓性チューブの先端部分が斜めに切断された形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されていてもよく、或いは、可撓性チューブの先端部分が舌状に部分的に突出した形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されていてもよい。
【0008】
また、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で、可撓性チューブの突端部に対し反対側の外周面に沿って配置されていてもよい。
【0009】
或いは、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で可撓性チューブの先端面に沿って配置されていてもよい。
その場合、高周波電極が、全範囲において仮想線に対して略直交する向きに配置されていてもよく、高周波電極が略U字状に形成されて、その平行部は仮想線に対して平行に配置され、曲げ戻し部が仮想線に対して略直交する向きに配置されていてもよい。
【0010】
また、可撓性チューブが、先端近傍部分とそれより基端寄りの部分とで先側チューブと基側チューブとに別れて形成されて、先側チューブと基側チューブとが相対的に軸線周りに回転自在に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたことにより、表面粘膜の隆起部等に対する焼灼処置を行いながら押し込み操作する際に、先端が意に反して粘膜下の筋層側に寄って行き難くて、安全に高周波切開処置を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極とする。
【実施例】
【0013】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1、図2及び図3は、本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面断面図、平面図及び正面図である。
【0014】
図1に示される符号1,2A,2Bは、図示されていない内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿脱される、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等からなる直径が2mm程度の電気絶縁性の可撓性チューブである。
【0015】
そのうち、基側チューブ1は全長が例えば1〜2m程度の長いものであって、先側チューブ2A,2Bは全長が数cm程度の短いものである。先側チューブ2A,2Bは、基側チューブ1の先端内にきつく圧入されるストッパ用段差2Cを途中に形成するために二つのチューブを接続部で重ね合わせて一体に接合形成されている。したがって、先側チューブ2A,2Bは熱成形等により一つのチューブで形成することもできる。
【0016】
先側チューブ2A,2Bは、ストッパ用段差2Cより後方(図1において右方)部分においては基側チューブ1内に緩く嵌挿された状態になっていて、ストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内に圧入されていない状態では、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して軸線方向に進退自在であり且つ軸線周りに回転自在である。ただし、図1に示されるようにストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内に圧入された状態では、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対してある程度固定された状態になる。
【0017】
なお、基側チューブ1は全長にわたって一定の径に形成されているが、先側チューブ2A,2Bのストッパ用段差2Cが圧入された先端部分は、押し広げられた状態に弾性変形している。
【0018】
可撓性チューブ1,2A,2B内には、基端側で高周波電源に接続される可撓性の導電線3が軸線方向に進退自在に且つ軸線周りに回転自在に全長にわたって挿通配置されている。3aはその被覆チューブである。
【0019】
先側チューブ2A,2Bの先端部分は一部分だけが前方に突出した形状に形成されており、この実施例では先端面2Dが斜めに切断された形状に形成されていて、その最先端部分2E(突端部)に丸みが形成されている。
【0020】
なお、図3に示されるように、先側チューブ2A,2Bを前方から見たときの最先端部分2Eの位置を下方向と称することにする。Xは、先側チューブ2A,2Bの軸線位置と最先端部分2Eとを通る上下向きの仮想線である。
【0021】
図1及び図2に示されるように、先側チューブ2A,2Bの先端部分の上半部の外周面の先端面2Dに隣接する位置には、仮想線Xを中央に挟んでその左右両側に均等に離れた位置に、一対の透孔4が周方向に間隔をあけて穿設されていて、導電線3がその一対の透孔4の間で先側チューブ2A,2Bの上半部の外周面に沿って露出している。
【0022】
導電線3は、一対の透孔4の間においてのみ外面に露出していて、その部分が生体組織等を高周波焼灼するための高周波電極5になっている。したがって、図3に示されるように、高周波電極5は先側チューブ2A,2Bを前方から見たときに最先端部分2E寄りの半部側には配置されておらず、高周波電極5は仮想線Xと略直交する向きに配置されている。
【0023】
図1に示されるように、透孔4から先側チューブ2A,2B内に戻された導電線3の端部3bは、導電線3に被覆された絶縁チューブ6の周囲に巻き付けられてそこに固定された状態になっている。
【0024】
図4は内視鏡用高周波切開具の全体構成を示しており、基側チューブ1の基端に固定的に取り付けられた基端口金7には、注射筒等を接続可能な注液口金8が側方に向けて突出形成されており、注液口金8から洗浄液等を注入することにより、可撓性チューブ1,2A,2B内の隙間空間を経由して先側チューブ2A,2Bの先端開口から噴出させることができる。
【0025】
基端口金7は操作部10に連結されている。操作部10は、基端口金7に対して軸線周りに回転自在に連結された操作部本体11の手元側端部に固定指掛け12が取り付けられ、可動指掛け13が操作部本体11に対して軸線方向に進退操作自在に取り付けられている。
【0026】
可動指掛け13には、導電線3の基端3aが連結固定されると共に、図示されていない高周波電源コードが接続される接続端子14が配置されており、その接続端子14に高周波電源コードを接続することにより、導電線3を経由して高周波電極5に高周波電流を通電することができる。
【0027】
このような構成により、図5に矢印Aで示されるように可動指掛け13を前方に押し込み操作すると、図5及び図6に矢印Bで示されるように、先側チューブ2A,2Bのストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内から前方に押し出されて、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して固定されないフリーな状態になる。
【0028】
そこで、図5に矢印Cで示されるように基端口金7に対して操作部10全体を軸線周りに回転させる操作を行うと、図5及び図6に矢印Dで示されるように、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して軸線周りに回転して、基側チューブ1に対する高周波電極5の回転方向に位置関係を任意に調整することができ、その調整終了後は再びストッパ用段差2Cを基側チューブ1内に圧入させて、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して固定された状態にしておく。
【0029】
図7〜図10は、上述のように構成された実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的に粘膜隆起部101の切開処置が行われている状態を示しており、まず図7に示されるように、内視鏡50の処置具挿通チャンネル51に通された可撓性チューブ1,2A,2Bの最先端部分2Eを粘膜隆起部101の基部付近に押し付ける。その際に、最先端部分2Eが筋層102寄りに位置して高周波電極5が筋層102から遠い側になるように、先側チューブ2A,2Bの回転方向の向きを予め調整しておく。
【0030】
そして、高周波電極5に高周波電流を通電すると、図8に示されるように、高周波電極5に触れていた付近の粘膜隆起部101の組織が焼灼されて切開され、最先端部分2Eより筋層102に寄った部分の組織は高周波電極5から離れているので殆ど焼灼されない。
【0031】
次いで、図9に示されるように、可撓性チューブ1,2A,2Bを前方に押し込む操作をすると、最先端部分2Eが組織に沿って押し進められるが、最先端部分2Eより筋層102に近い側が焼灼されていないので、最先端部分2Eが意に反して筋層102側に寄って行くようなことがない。
【0032】
そこで、再び高周波電極5に高周波電流を通電すると、図10に示されるように、高周波電極5に触れている付近の粘膜隆起部101の組織が焼灼されて切開され、焼灼範囲が筋層102側に寄って行くことなく粘膜隆起部101が基部付近で安全に切開されていく。
【0033】
図11、図12及び図13は、本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面断面図、側面図及び正面図であり、高周波電極5を、先側チューブ2A,2Bの上半部において一対の透孔4の間で先端面2Dに沿って配置して、高周波電極5が全範囲において仮想線Xに対して略直交する横向きになるようにしたものである。このようにしても、前述の第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0034】
図14、図15及び図16は、本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図、側面図及び正面図であり、高周波電極5を略U字状に形成して、その平行部を先側チューブ2A,2Bの上半部において仮想線Xに対して平行になる状態に先端面2Dに沿って縦向きに配置し、曲げ戻し部を仮想線Xに対して略直交する横向きに先端面2Dに沿って配置したものである。このようにしても、前述の第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0035】
図17は、本発明の第4の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図であり、先側チューブ2A,2Bの先端部分を舌状に部分的に突出した形状に形成してその最先端部分2Eに丸みを形成したものである。高周波電極5は第1の実施例と同様の配置になっている。このようにしても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の全体構成の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の操作状態を示す全体構成の側面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の動作状態を示す平面断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図8】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図9】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図10】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図11】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面断面図である。
【図12】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【図13】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図14】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図である。
【図15】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【図16】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図17】本発明の第4の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,2A,2B 可撓性チューブ
1 基側チューブ
2A,2B 先側チューブ
2C ストッパ用段差
2D 先端面
2E 最先端部分(突端部)
3 導電線
4 透孔
5 高周波電極
X 仮想線
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡用高周波切開具に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内の表面粘膜の隆起部(隆起させた部分を含む)等を高周波焼灼して切開するための内視鏡用高周波切開具として、従来は、直線状又は曲線状の棒状の高周波電極を可撓性チューブの先端から前方に突出配置したものや、内視鏡の先端フードの最先端部分に高周波電極になる導電線を横断的に配置したもの等が用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2002−153485
【特許文献2】特開2005−66140
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
体腔内の表面粘膜の隆起部等を高周波焼灼して切開する場合には、焼灼領域が粘膜下の筋層側に達しないように、できれば粘膜側だけを焼灼して切開することが安全性の上から望ましい。
【0004】
しかし、組織の焼灼範囲は高周波電極の周囲に均等に広がっていき、高周波切開具は焼灼処置をしながら押し込み操作されると焼灼されて抵抗が少なくなった組織の方に進んで行き易いので、従来の内視鏡用高周波切開具では、高周波電極が配置されている先端部が術者の意に反して次第に粘膜下の筋層側に寄せられ、筋層付近を焼灼損傷してしまう恐れがあった。
【0005】
そこで本発明は、表面粘膜の隆起部等に対する焼灼処置を行いながら押し込み操作する際に、先端が意に反して粘膜下の筋層側に寄って行き難くて、安全に高周波切開処置を行うことができる内視鏡用高周波切開具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用高周波切開具は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたものである。
【0007】
なお、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに突端部寄りの半部の領域には配置されていないのがよい。
そして、可撓性チューブの先端部分が斜めに切断された形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されていてもよく、或いは、可撓性チューブの先端部分が舌状に部分的に突出した形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されていてもよい。
【0008】
また、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で、可撓性チューブの突端部に対し反対側の外周面に沿って配置されていてもよい。
【0009】
或いは、高周波電極が、可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で可撓性チューブの先端面に沿って配置されていてもよい。
その場合、高周波電極が、全範囲において仮想線に対して略直交する向きに配置されていてもよく、高周波電極が略U字状に形成されて、その平行部は仮想線に対して平行に配置され、曲げ戻し部が仮想線に対して略直交する向きに配置されていてもよい。
【0010】
また、可撓性チューブが、先端近傍部分とそれより基端寄りの部分とで先側チューブと基側チューブとに別れて形成されて、先側チューブと基側チューブとが相対的に軸線周りに回転自在に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたことにより、表面粘膜の隆起部等に対する焼灼処置を行いながら押し込み操作する際に、先端が意に反して粘膜下の筋層側に寄って行き難くて、安全に高周波切開処置を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに可撓性チューブの軸線位置と突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、導電線を可撓性チューブ外に露出させて高周波電極とする。
【実施例】
【0013】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1、図2及び図3は、本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面断面図、平面図及び正面図である。
【0014】
図1に示される符号1,2A,2Bは、図示されていない内視鏡の処置具挿通チャンネル内に挿脱される、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等からなる直径が2mm程度の電気絶縁性の可撓性チューブである。
【0015】
そのうち、基側チューブ1は全長が例えば1〜2m程度の長いものであって、先側チューブ2A,2Bは全長が数cm程度の短いものである。先側チューブ2A,2Bは、基側チューブ1の先端内にきつく圧入されるストッパ用段差2Cを途中に形成するために二つのチューブを接続部で重ね合わせて一体に接合形成されている。したがって、先側チューブ2A,2Bは熱成形等により一つのチューブで形成することもできる。
【0016】
先側チューブ2A,2Bは、ストッパ用段差2Cより後方(図1において右方)部分においては基側チューブ1内に緩く嵌挿された状態になっていて、ストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内に圧入されていない状態では、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して軸線方向に進退自在であり且つ軸線周りに回転自在である。ただし、図1に示されるようにストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内に圧入された状態では、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対してある程度固定された状態になる。
【0017】
なお、基側チューブ1は全長にわたって一定の径に形成されているが、先側チューブ2A,2Bのストッパ用段差2Cが圧入された先端部分は、押し広げられた状態に弾性変形している。
【0018】
可撓性チューブ1,2A,2B内には、基端側で高周波電源に接続される可撓性の導電線3が軸線方向に進退自在に且つ軸線周りに回転自在に全長にわたって挿通配置されている。3aはその被覆チューブである。
【0019】
先側チューブ2A,2Bの先端部分は一部分だけが前方に突出した形状に形成されており、この実施例では先端面2Dが斜めに切断された形状に形成されていて、その最先端部分2E(突端部)に丸みが形成されている。
【0020】
なお、図3に示されるように、先側チューブ2A,2Bを前方から見たときの最先端部分2Eの位置を下方向と称することにする。Xは、先側チューブ2A,2Bの軸線位置と最先端部分2Eとを通る上下向きの仮想線である。
【0021】
図1及び図2に示されるように、先側チューブ2A,2Bの先端部分の上半部の外周面の先端面2Dに隣接する位置には、仮想線Xを中央に挟んでその左右両側に均等に離れた位置に、一対の透孔4が周方向に間隔をあけて穿設されていて、導電線3がその一対の透孔4の間で先側チューブ2A,2Bの上半部の外周面に沿って露出している。
【0022】
導電線3は、一対の透孔4の間においてのみ外面に露出していて、その部分が生体組織等を高周波焼灼するための高周波電極5になっている。したがって、図3に示されるように、高周波電極5は先側チューブ2A,2Bを前方から見たときに最先端部分2E寄りの半部側には配置されておらず、高周波電極5は仮想線Xと略直交する向きに配置されている。
【0023】
図1に示されるように、透孔4から先側チューブ2A,2B内に戻された導電線3の端部3bは、導電線3に被覆された絶縁チューブ6の周囲に巻き付けられてそこに固定された状態になっている。
【0024】
図4は内視鏡用高周波切開具の全体構成を示しており、基側チューブ1の基端に固定的に取り付けられた基端口金7には、注射筒等を接続可能な注液口金8が側方に向けて突出形成されており、注液口金8から洗浄液等を注入することにより、可撓性チューブ1,2A,2B内の隙間空間を経由して先側チューブ2A,2Bの先端開口から噴出させることができる。
【0025】
基端口金7は操作部10に連結されている。操作部10は、基端口金7に対して軸線周りに回転自在に連結された操作部本体11の手元側端部に固定指掛け12が取り付けられ、可動指掛け13が操作部本体11に対して軸線方向に進退操作自在に取り付けられている。
【0026】
可動指掛け13には、導電線3の基端3aが連結固定されると共に、図示されていない高周波電源コードが接続される接続端子14が配置されており、その接続端子14に高周波電源コードを接続することにより、導電線3を経由して高周波電極5に高周波電流を通電することができる。
【0027】
このような構成により、図5に矢印Aで示されるように可動指掛け13を前方に押し込み操作すると、図5及び図6に矢印Bで示されるように、先側チューブ2A,2Bのストッパ用段差2Cが基側チューブ1の先端内から前方に押し出されて、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して固定されないフリーな状態になる。
【0028】
そこで、図5に矢印Cで示されるように基端口金7に対して操作部10全体を軸線周りに回転させる操作を行うと、図5及び図6に矢印Dで示されるように、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して軸線周りに回転して、基側チューブ1に対する高周波電極5の回転方向に位置関係を任意に調整することができ、その調整終了後は再びストッパ用段差2Cを基側チューブ1内に圧入させて、先側チューブ2A,2Bが基側チューブ1に対して固定された状態にしておく。
【0029】
図7〜図10は、上述のように構成された実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的に粘膜隆起部101の切開処置が行われている状態を示しており、まず図7に示されるように、内視鏡50の処置具挿通チャンネル51に通された可撓性チューブ1,2A,2Bの最先端部分2Eを粘膜隆起部101の基部付近に押し付ける。その際に、最先端部分2Eが筋層102寄りに位置して高周波電極5が筋層102から遠い側になるように、先側チューブ2A,2Bの回転方向の向きを予め調整しておく。
【0030】
そして、高周波電極5に高周波電流を通電すると、図8に示されるように、高周波電極5に触れていた付近の粘膜隆起部101の組織が焼灼されて切開され、最先端部分2Eより筋層102に寄った部分の組織は高周波電極5から離れているので殆ど焼灼されない。
【0031】
次いで、図9に示されるように、可撓性チューブ1,2A,2Bを前方に押し込む操作をすると、最先端部分2Eが組織に沿って押し進められるが、最先端部分2Eより筋層102に近い側が焼灼されていないので、最先端部分2Eが意に反して筋層102側に寄って行くようなことがない。
【0032】
そこで、再び高周波電極5に高周波電流を通電すると、図10に示されるように、高周波電極5に触れている付近の粘膜隆起部101の組織が焼灼されて切開され、焼灼範囲が筋層102側に寄って行くことなく粘膜隆起部101が基部付近で安全に切開されていく。
【0033】
図11、図12及び図13は、本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面断面図、側面図及び正面図であり、高周波電極5を、先側チューブ2A,2Bの上半部において一対の透孔4の間で先端面2Dに沿って配置して、高周波電極5が全範囲において仮想線Xに対して略直交する横向きになるようにしたものである。このようにしても、前述の第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0034】
図14、図15及び図16は、本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図、側面図及び正面図であり、高周波電極5を略U字状に形成して、その平行部を先側チューブ2A,2Bの上半部において仮想線Xに対して平行になる状態に先端面2Dに沿って縦向きに配置し、曲げ戻し部を仮想線Xに対して略直交する横向きに先端面2Dに沿って配置したものである。このようにしても、前述の第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0035】
図17は、本発明の第4の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図であり、先側チューブ2A,2Bの先端部分を舌状に部分的に突出した形状に形成してその最先端部分2Eに丸みを形成したものである。高周波電極5は第1の実施例と同様の配置になっている。このようにしても、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の全体構成の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の操作状態を示す全体構成の側面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の動作状態を示す平面断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図8】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図9】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図10】本発明の第1の実施例の内視鏡用高周波切開具を用いて経内視鏡的高周波切開処置が行われている状態を順に示す略示図である。
【図11】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面断面図である。
【図12】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【図13】本発明の第2の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図14】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の平面図である。
【図15】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【図16】本発明の第3の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端部分の正面図である。
【図17】本発明の第4の実施例の内視鏡用高周波切開具の先端付近の側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,2A,2B 可撓性チューブ
1 基側チューブ
2A,2B 先側チューブ
2C ストッパ用段差
2D 先端面
2E 最先端部分(突端部)
3 導電線
4 透孔
5 高周波電極
X 仮想線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、上記可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、上記可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに上記可撓性チューブの軸線位置と上記突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、上記導電線を上記可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたことを特徴とする内視鏡用高周波切開具。
【請求項2】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに上記突端部寄りの半部の領域には配置されていない請求項1記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項3】
上記可撓性チューブの先端部分が斜めに切断された形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されている請求項1又は2記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項4】
上記可撓性チューブの先端部分が舌状に部分的に突出した形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されている請求項1又は2記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項5】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で、上記可撓性チューブの上記突端部に対し反対側の外周面に沿って配置されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項6】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で上記可撓性チューブの先端面に沿って配置されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項7】
上記高周波電極が、全範囲において上記仮想線に対して略直交する向きに配置されている請求項6記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項8】
上記高周波電極が略U字状に形成されて、その平行部は上記仮想線に対して平行に配置され、曲げ戻し部が上記仮想線に対して略直交する向きに配置されている請求項6記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項9】
上記可撓性チューブが、先端近傍部分とそれより基端寄りの部分とで先側チューブと基側チューブとに別れて形成されて、上記先側チューブと基側チューブとが相対的に軸線周りに回転自在に接続されている請求項1ないし8のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項1】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在な電気絶縁性の可撓性チューブ内に、高周波電源に接続される導電線を挿通配置し、上記可撓性チューブの先端部分を一部分だけが前方に突出した形状に形成してその突端部に丸みを形成すると共に、上記可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに上記可撓性チューブの軸線位置と上記突端部とを通る仮想線と略直交する向きに、上記導電線を上記可撓性チューブ外に露出させて高周波電極としたことを特徴とする内視鏡用高周波切開具。
【請求項2】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分を前方から見たときに上記突端部寄りの半部の領域には配置されていない請求項1記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項3】
上記可撓性チューブの先端部分が斜めに切断された形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されている請求項1又は2記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項4】
上記可撓性チューブの先端部分が舌状に部分的に突出した形状に形成されてその最先端部分に丸みが形成されている請求項1又は2記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項5】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で、上記可撓性チューブの上記突端部に対し反対側の外周面に沿って配置されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項6】
上記高周波電極が、上記可撓性チューブの先端部分の外周面に周方向に間隔をあけて形成された一対の透孔の間で上記可撓性チューブの先端面に沿って配置されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項7】
上記高周波電極が、全範囲において上記仮想線に対して略直交する向きに配置されている請求項6記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項8】
上記高周波電極が略U字状に形成されて、その平行部は上記仮想線に対して平行に配置され、曲げ戻し部が上記仮想線に対して略直交する向きに配置されている請求項6記載の内視鏡用高周波切開具。
【請求項9】
上記可撓性チューブが、先端近傍部分とそれより基端寄りの部分とで先側チューブと基側チューブとに別れて形成されて、上記先側チューブと基側チューブとが相対的に軸線周りに回転自在に接続されている請求項1ないし8のいずれかの項に記載の内視鏡用高周波切開具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−73378(P2008−73378A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258317(P2006−258317)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】
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