説明

内部強制冷却金型入子における冷却水漏出防止装置

【課題】内部強制冷却金型入子において、内部空間、水路面等に供給された冷却水が、金型入子の外周面に漏出することを確保に防止すること。
【解決手段】内部強制冷却金型入子において、外装入子1の周辺部下面と内装入子2の下面に、その上面を対向させて、冷却水供給ブロックを装備し、外装入子1の周辺部下面と冷却水供給ブロックの上面との接合面に、外周パッキンと内周パッキンとの二段構成の密封構造を形成する。外装入子1の周辺部下面と冷却水供給ブロックの上面との接合面に、外周パッキンと内周パッキンとの間の漏水受間隙面と、冷却水供給ブロック内の冷却水戻り通路とを連通する漏水通路を形成し、漏水通路の適所に漏水センサーを装備し、内装パッキンの異常を漏水センサーで検知するとともに、外周パッキンにより金型入子の外周面への冷却水漏水を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車を構成する部品、産業機械等を構成する部品、その他各種製品の構成部品を製作するためのダイカスト金型、鋳造用金型に関するものである。より詳しくは、内部強制冷却金型入子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の内部強制冷却金型入子において、入子表面aを有する外装入子1の裏面側に、内装入子2を装填するための空間Hを形成し、該空間Hに、内装入子2を装填して構成し、外装入子1と内装入子2とを一体化した状態で、外装入子1と内装入子2との間に冷却水を供給することで、入子表面aを冷却する内部強制冷却構造が公知である。
特開2004-25260号公開特許公報(特許文献1)の「金型冷却構造」は、入子表面aを有する外装入子1の裏面側に、内装入子2を装填するための空間Hを形成し、該空間Hに、内装入子2を装填して構成し、外装入子1と内装入子2とを一体化した状態で、外装入子1と内装入子2との間に冷却キャビット(内部空間)に形成し、該冷却キャビット(内部空間)に冷却水を供給することで冷却している。
【0003】
【特許文献1】特開2004-25260号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の公知技術において、冷却キャビット(内部空間)に冷却水を供給するための冷却水供給ブロックを外装入子1および内装入子2の下方に連接装備する必要があるが、外装入子1と冷却水供給ブロック3との接合面より冷却水の漏水を生じるおそれがある。
ダイカスト金型によるアルミ製品の製造工程で、冷却水の漏水が発生すると、アルミと水との接触によるアルミ爆発の危険がある。
【0005】
よって、本願発明は、内部強制冷却金型入子において、内部空間、水路面等に供給された冷却水が、金型入子の外周面に漏出することを確保に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
入子表面aを有する外装入子1の裏面側に、内装入子2を装填するための空間Hを形成し、該空間Hに、内装入子2を装填して構成し、外装入子1と内装入子2とを一体化した状態で、外装入子1と内装入子2との間に冷却水を供給することで、入子表面aを冷却する内部強制冷却金型入子において、外装入子1の周辺部下面(底面)と内装入子2の下面(底面)に、その上面(天面)を対向させて、冷却水供給ブロックを装備し、外装入子1の周辺部下面(底面)と冷却水供給ブロックの上面(天面)との接合面に、外周パッキンと内周パッキンとの二段構成の密封構造を介して、外装入子1の周辺部と冷却水供給ブロックとを固定し、外装入子1の周辺部下面(底面)と冷却水供給ブロックの上面(天面)との接合面における、外周パッキンと内周パッキンとの間の漏水受間隙面と、冷却水供給ブロック内の冷却水戻り通路とを連通する漏水通路を形成し、漏水通路の適所に漏水センサーを装備し、内装パッキンの異常を漏水センサーで検知するとともに、外周パッキンにより金型入子の外周面への冷却水漏水を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、内部強制冷却金型入子において、外装入子1の周辺部下面(底面)と冷却水供給ブロックの上面(天面)との接合面に、外周パッキンと内周パッキンとの二段構成の密封構造を介して、外装入子1の周辺部と冷却水供給ブロックとを固定し、外周パッキンと内周パッキンとの間の漏水受間隙面と、冷却水供給ブロック内の冷却水戻り通路とを連通する漏水通路に、漏水センサーを装備したから、下記の効果を奏する。
【0008】
内装パッキンの異常を漏水センサーで検知するとともに、外周パッキンにより金型入子の外周面への冷却水漏水を阻止することにより、アルミ爆発の危険を排除し、アルミ材製品の製造に際しても内部強制冷却金型入子を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な実施例について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
本願発明の実施例の説明に先立って、金子入子の冷却手段として水路Gを有する内部強制冷却金型入子について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0011】
内部強制冷却金型入子A(以下、冷却金型入子と略称する)の入子表面aは、製品を製作するための金型表面の一部を形成する。すなわち、製品形成するための6面をそれぞれの冷却金型入子の入子表面により構成される。6個(又は6個を超える複数個)の冷却金型入子の組立らより金型が構成されるものであり、組立状態で6個(又は6個を超える個数)の冷却金型入子の入子表面は内側に向かって製品の型状の空間を形成する。
【0012】
なお、6個未満の個数の冷却金型入子の組立により製品6面に対応することもできるが、冷却金型入子の対象とする製品は形状が複雑な場合であるから、6個以上の冷却金型入子で、製品の形状の空間を形成する。
【0013】
入子表面aを有する外装入子1の裏面側に、内装入子2を装填するための空間Hを形成し、該空間Hに、内装入子2を装填自在とする。
【0014】
外装入子1の空間Hに内装入子2を装填して両者を一体化した状態で、入子表面aと間隔を置いて入子表面aの下方に、外装入子1と内装入子2との間で、水路Gを形成する。
【0015】
前記水路Gは、内装入子2の入子表面20[即ち、外装入子1の内部裏面aとの対向面]に溝を形成し、外装入子1の内部裏面10と内装入子2の入子表面21との間で形成される管路状空間によって構成する。
【0016】
なお、溝を、上記の実施例の構成と反対に、外装入子1の内部裏面10に形成してもよいものである。更に、外装入子)1の内部裏面10に形成した溝と、内装入子2の入子表面20に形成した溝との間で形成される管路状空間で水路Gを形成してもよいものである。
【0017】
前記水路Gの水路の厚さ幅をほぼ均一にするが、水路の厚さ幅を適宜設定して、金型面の凹凸による加熱温度差に対応させ、水路の冷却効果を変化させることで、入子表面aの温度分布を所望値とすることができる。
【0018】
水路Gの管路入口に通じる冷却水供給孔22と、水路Gの管路出口に通じる冷却水戻り孔23とを、内装入子2に貫通させる。
【0019】
実施例においては、内装入子2を、内装入子2A、内装入子2B、内装入子2Cの3個とした。更に、4個以上の複数個としてもよいことは勿論である。
【0020】
更に、内装入子2A、内装入子2B、内装入子2Cの3個(または、4個以上複数個)のそれぞれに対して、水路G、冷却水供給孔22、冷却水戻り孔23をそれぞれ設け、水路G、冷却水供給孔22、冷却水戻り孔23を3個(または、4個以上複数個)とした。
【0021】
冷却水供給ブロック3を、その上面を、外装入子1の周辺部下面および内装入子2の全体下面に対接させて、外装入子1の周辺部および内装入子2の下方に装備する。
冷却水供給ブロック3は、冷却水分配制御ユニット4を下部に内装する。
【0022】
冷却水供給ブロック3は、内装入子2A、内装入子2B、内装入子2Cのそれぞれに対するところの、冷却水供給孔24、冷却水戻り孔25を介しての、各水路GA、GB、GCに対する冷却水の供給を個別に制御することで、各水路GA、GB、GCの冷却効果を設定自在とする。
【0023】
以下、図6ないし図11を参照して、本願発明を説明する。
【0024】
外装入子1の周辺部底面1Aと冷却水供給ブロック3の上面3Aとの接合面Pに、第1パッキン4と第2パッキン5との二段構成の密封構造を形成する。
即ち、外装入子1の周辺部と冷却水供給ブロック3とをボルト15により固定するにあたり、外周側の第1パッキン4および内周側の第2パッキン5を介装する。
【0025】
冷却水供給ブロック3の上面3Aに、外周側の第1パッキン4および内周側の第2パッキン5をそれぞれ挿入するための、外周側の第1パッキン溝40および内周側の第2パッキン溝50を形成する。
【0026】
外装入子1の周辺部底面1Aと冷却水供給ブロック3の上面3Aとの接合面Pにおける、第1パッキン4と第2パッキン5との間に、その先端をのぞませて漏水通路6を形成する。
【0027】
前記漏水通路6は、第1パッキン4と第2パッキン5との間に位置して、冷却水供給ブロック3の上面3Aに形成した環状集水溝61と、その先端を前記環状集水溝61に開口しその下端を冷却水供給ブロック3の底面3Bに装着する排水ソケット62に連通する垂直漏水孔60とで構成する。
【0028】
実施例では、垂直漏水孔60を単一としたが、複数個としてもよいものである。
【0029】
垂直漏水孔60の途中に漏水センサー7を装備する。
【0030】
漏水センサー7としては、図10に示す漏水検知抵抗線8を螺旋筒状または適宜の立方体を形成するように巻回して構成し、垂直漏水孔60の途中に形成した検知室65に装填した。
【0031】
漏水検知抵抗線8は、往復2本の検知抵抗線8A、8Bを窓8C付き被膜絶縁体8Dで包囲して構成し、窓8Cに漏水が付着することで往復2本の検知抵抗線8A、8Bの短絡現象を生じることとなり、両端間抵抗値の変化として、漏水を検知する。
【0032】
実施例では、漏水センサー7より補助分岐排水路64を併設した。
【0033】
図11は、漏水センサー7の他の実施例を示し、環状集水溝61に、往復2本の検知抵抗線8A、8Bを窓8C付き被膜絶縁体8Dで包囲して構成した漏水検知抵抗線8を平面視環状に装填した。なお、検知室65は不要とする。
【0034】
請求項2の発明においては、 請外周側の第1パッキン4を、内周側の第2パッキン5よりも断面積大とするものを選定し、第2パッキン5の破損時においては、第1パッキン4のみで接合面Pの密封性を確保する。
【0035】
第2パッキン5の破損により、接合面Pに漏水を生じると、漏水通路6に装填した漏水センサー7が検知作動して漏水発生を通報する。
【0036】
その際、断面積大とした(例えば、断面円形のパッキンでは断面径を大とする。断面四角形のパッキンでは断面高さ大とする。)外周側の第1パッキン4により、金型入子の外周面への冷却水漏水を阻止する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、自動車を構成する部品、産業機械等を構成する部品、その他各種製品の構成部品を製作するためのダイカスト金型、鋳造用金型等の金型入子に適用することで、自動車製造関連産業、産業機械製造業等の産業発展に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例を示す内部強制冷却金型入子の大要を示す分解斜視図。
【図2】図3の(b)図のS―S線で断面して示す、内部強制冷却金型入子の縦断面図。
【図3】外装入子を示し、(a)図は縦断面図、(b)図は底面図。
【図4】内装入子を示し、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は底面図。
【図5】3個の内装入子を互いに分離した状態で示し、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は底面図。
【図6】冷却水供給ブロックを示し、(a)図は平面図、(b)図は正面図。
【図7】内部強制冷却金型入子の発明要部を示す部分縦断面図。
【図8】同じく拡大部分縦断面図。
【図9】漏水センサーの実施例を示す斜視図。
【図10】漏水センサーの他の実施例を示し、(a)図は平面図、(b)図はa図Sa−Sa線による断面図、(c)図はa図Sb−Sb線による断面図。
【図11】漏水センサーのさらに他の実施例を示し、(a)図は縦断面図、(b)図は横断面図。
【符号の説明】
【0039】
A 内部強制冷却金型入子
a 入子表面
G 水路
H 空間
1 外装入子
2 内装入子
3 冷却水供給ブロック
4 第1パッキン
5 第2パッキン
6 漏水通路
7 漏水センサー
8 漏水検知抵抗線
40 第1パッキン溝
50 第2パッキン溝
60 垂直漏水孔
61 環状集水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入子表面aを有する外装入子1の裏面側に、内装入子2を装填するための空間Hを形成し、該空間Hに、内装入子2を装填して構成し、外装入子1と内装入子2とを一体化した状態で、外装入子1と内装入子2との間に冷却水を供給することで、入子表面aを冷却する内部強制冷却金型入子において、
外装入子1の周辺部下面と内装入子2の下面に、その上面を対向させて、冷却水供給ブロックを装備し、
外装入子1の周辺部下面と冷却水供給ブロックの上面との接合面に、外周パッキンと内周パッキンとの二段構成の密封構造を介して、外装入子1の周辺部と冷却水供給ブロックとを固定し、
外装入子1の周辺部下面と冷却水供給ブロックの上面との接合面における、外周パッキンと内周パッキンとの間の漏水受間隙面と、冷却水供給ブロック内の冷却水戻り通路とを連通する漏水通路を形成し、
漏水通路の適所に漏水センサーを装備し、
内装パッキンの異常を漏水センサーで検知するとともに、外周パッキンにより金型入子の外周面への冷却水漏水を阻止することを特徴とする、内部強制冷却金型入子における冷却水漏出防止装置。
【請求項2】
外周パッキンを内周パッキンよりも断面積大としたことを特徴とする請求項1に記載する、内部強制冷却金型入子における冷却水漏出防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−28774(P2009−28774A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197565(P2007−197565)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【Fターム(参考)】