説明

内部欠陥検出装置

【課題】 板状の測定対象物の内部欠陥を検出する内部欠陥検出装置を提供する。
【解決方法】 内部欠陥検出装置10は、板状の測定対象物28の内部欠陥40を検出可能であり、測定対象物28の表側表面28aにおける温度分布を測定する測定手段と、測定手段と測定対象物28を相対移動させることによって、測定手段による測定範囲14bを順次移動させる移動手段と、測定対象物28の裏側表面28bから測定対象物28のなかで測定手段による測定範囲14b内に現に位置する現測定範囲を加熱する加熱手段と、測定対象物28の表側表面28aから測定対象物28のなかで測定手段による測定範囲14b内に次に位置する次測定範囲を冷却する冷却手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の測定対象物の内部欠陥を検出する技術に関する。特に、測定対象物の表面に現れる温度分布を測定することによって測定対象物の内部欠陥を非破壊で検出する技術に関する。ここでいう内部欠陥とは、測定対象物の内部に含まれる異物や空洞を意味する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、板状の測定対象物の内部欠陥を検出する技術が開示されている。これらの技術では、内部欠陥が存在しない正常部位と内部欠陥が存在する欠陥部位の間で、伝熱特性が相違することを利用する。具体的には、測定対象物を加熱し、測定対象物の表面に現われる温度分布を測定する。測定された温度分布に所定値以上の温度差が検出された場合、測定範囲に内部欠陥が存在すると判定されるとともに、その位置が特定される。
【0003】
特許文献1では、測定対象物の内部欠陥を検出する際に、レーザーを用いて測定対象物の測定範囲を加熱する技術が開示されている。この技術によると、測定範囲のみを集中的に加熱することができる。
特許文献2では、上記の技術を用い、発泡剤が充填された閉断面構造部材の未充填部分を検出する技術が開示されている。特許文献2の技術では、発泡剤の未充填部分が内部欠陥として検出される。
【0004】
【特許文献1】特開昭62−126339号公報
【特許文献2】特開平1−68649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象物の伝熱特性を利用して測定対象物の内部欠陥を測定する技術では、加熱の前後において十分な温度差を与える必要がある。
しかしながら、面積の大きな測定対象物の内部欠陥を検出する場合、測定対象部を複数の測定範囲に分割し、測定範囲毎に加熱及び測定を繰り返す必要がある。単一の測定対象物を複数回に分けて測定すると、今回までの測定において測定対象物に加えた熱が次回の測定範囲にも伝わってしまい、次回の測定範囲までも加熱されてしまうことがある。この場合、次回の測定を開始する際に、測定範囲の温度が低下するまで待機する必要があり、内部欠陥の検出に必要な検査時間が長くなってしまう。
【0006】
本発明は上記の課題を解決する。すなわち本発明は、単一の測定対象物を複数回に分けて測定する際に、無用な待機時間を排除することによって、必要とされる検査時間を短縮することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板状の測定対象物の内部欠陥を検出する内部欠陥検出装置に関する。この内部欠陥検出装置は、測定対象物の表側表面における温度分布を測定する測定手段と、測定手段と測定対象物を相対移動させることによって測定手段による測定範囲を順次移動させる移動手段と、測定対象物の裏側表面から測定対象物のなかで測定手段による測定範囲内に現に位置する現測定範囲を加熱する加熱手段と、測定対象物の表側表面から測定対象物のなかで測定手段による測定範囲内に次に位置する次測定範囲を冷却する冷却手段とを備えている。
【0008】
この内部欠陥検出装置では、測定対象物の現に測定が行われる現測定範囲を加熱すると同時に、測定対象物の次に測定が行われる次測定範囲を冷却することができる。そのため、現測定範囲に加えた熱によって次測定範囲が加熱されることを防止することができる。次測定範囲が現測定範囲となって測定を開始する際に、無用な待機時間を設ける必要がない。
この内部欠陥検出装置によると、面積の大きな測定対象物の検査を比較的に短時間で行うことができる。
【0009】
上記した内部欠陥検出装置では、加熱手段の加熱範囲が測定範囲の移動に同期して移動することが好ましい。
この構造によると、例えば現測定範囲など必要な範囲を選択的に加熱することができる。これにより、測定対象物に加える熱量を減少させることができ、次測定範囲に伝導する熱量を抑制することができる。冷却手段を用いて、次測定範囲を短時間で冷却することができる。
【0010】
上記した内部欠陥検出装置では、冷却手段の冷却範囲が測定範囲の移動に同期して移動することが好ましい。
この構造によると、例えば次測定範囲など必要な範囲を選択的に冷却することができる。これにより、測定対象物を冷却する範囲を狭くすることができ、現測定範囲を測定する際に冷却手段によって現測定範囲が冷却されることを防止することができる。現測定範囲の内部欠陥を精度良く測定することができる。
【0011】
上記した内部欠陥検出装置では、測定対象物の次測定範囲における表面温度を測定する温度計を更に備えており、加熱手段は、この温度計が測定した次測定範囲の温度に基づいて、その次測定範囲が現測定範囲となったときの出力を調整することが好ましい。
例えば測定対象物が熱を伝えやすい特性を有していると、内部欠陥検出装置が冷却手段を備えていても、次測定範囲を十分に冷却することができないことがある。この場合、次測定範囲が現測定範囲となって測定開始する際に、この測定範囲の温度が低下するまで待機する時間が必要となり、検査時間が長くなってしまう。
この問題に対し、上記の内部欠陥検出装置では、温度計が次測定範囲における測定対象物の表面温度を測定し、加熱手段がこの温度に基づいて出力を調整する。例えば、次測定範囲が十分に冷却されず温度が上昇している場合には、その次測定範囲が現測定範囲になったときに、加熱手段がその現測定範囲に加える出力を上昇させる。それにより、測定開始時における温度が異なる場合でも、加熱によって与える温度差が一定となるように、加熱手段の出力を調整することができる。測定対象物に与える温度差が一定であれば、測定開始時における温度が相違しても、検出精度が大きく変わることはない。上記の内部欠陥検査装置を用いることで、例えば測定対象物が熱を伝えやすい特性を有しており、冷却手段による冷却能力が不足する場合でも、検査時間を十分に短縮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測定対象物の内部欠陥を検出する際に、測定対象物の無用な温度上昇を防止することができ、検査時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に説明する実施例の主要な特徴を最初に整理する。
(特徴1) 内部欠陥検出装置は、測定対象物の表面の温度分布を撮影する赤外線サーモグラフィと、赤外線サーモグラフィで撮影した画像を解析する解析装置を有している。赤外線サーモグラフィと解析装置によって、測定対象物の表側表面における温度分布が測定される。
(特徴2) 内部欠陥検出装置は、測定対象物の全面に亘って広がっているヒーターと、ヒーターの出力を調整する加熱温度制御装置と、ヒーターを挟んで測定対象物に対向配置されているローラーを有している。ローラーはヒーターに対して測定対象物の反対側を測定対象物の全面に亘って移動可能に支持されているとともに、ヒーター側にも変位可能に支持されている。ローラーが変位することで、ローラーに対応した部位のヒーターが測定対象物に当接する。それにより、測定対象物の裏側表面から、測定対象物の一部の範囲を選択的に加熱することができる。
(特徴3) 内部欠陥検出装置は、測定対象物の全面に亘って移動可能な冷却ヘッドと、冷却温度制御装置を備えている。冷却ヘッドは、測定対象物に対して冷却用エアを送風する。冷却温度制御装置は、冷却ヘッドが送出する冷却用エアの温度を調整する。それにより、測定対象物の表側表面から、測定対象物の一部の範囲を選択的に冷却することができる。
【実施例】
【0014】
本発明を具現化した実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の内部欠陥検出装置10を示す。内部欠陥検出装置10は、板状の測定対象物28の内部欠陥40を検出する装置である。図1に示すように、内部欠陥検出装置10は、例えば薄い2枚の鋼板22、26を接着剤24で接合した測定対象物28の内部欠陥40を検出することができる。具体的には、接着剤24の未塗布部分38や、接着剤24に存在する気泡39や、接着剤24に含まれる異物(未図示)といった内部欠陥40を検出し、接着剤24が均一に塗布されているのか否かを検査する。内部欠陥検出装置10は、測定対象物28の表側表面28aの温度分布を測定することで、測定対象物28を破壊することなく、測定対象物28の内部欠陥40を検出することができる。
図1に示すように、内部欠陥検出装置10は、赤外線サーモグラフィ14と、解析装置46と、移動機構20と、ヒーター36と、ローラー42と、加熱温度制御装置34と、冷却ヘッド12a、12bと、冷却温度制御装置32と、温度計18と、温度比較装置30と、位置制御装置44を備えている。
【0015】
赤外線サーモグラフィ14は、測定対象物28の表側表面28aの温度分布を測定する装置である。赤外線サーモグラフィ14は、撮影口14aを測定対象物28の表側表面28aに対向させた状態で移動機構20に支持されている。移動機構20は、赤外線サーモグラフィ14を移動させるためのアクチュエータである。移動機構20は、測定対象物28の表側表面28aに対向する位置で、測定対象物28と平行に配置されている。移動機構20は、測定対象物28の全面に亘る範囲内で、赤外線サーモグラフィ14を測定対象物28の表側表面28aに沿って平行に移動させる。
赤外線サーモグラフィ14は、解析装置46に接続されており、赤外線サーモグラフィ14で測定された温度分布は、解析装置46に入力される。解析装置46は、入力した温度分布データから、特異点(局所的に温度が異なる点)を検出するとともに、その位置等を特定する。それにより、測定対象物28の内部に存在する内部欠陥が検出される。
【0016】
測定対象物28の面積と比較して、赤外線サーモグラフィ14の測定範囲14bは小さい。従って、赤外線サーモグラフィ14は、測定対象物28の表側表面28aの全面の温度分布を一度に測定することはできない。そのため、内部欠陥検出装置10では、移動機構20が赤外線サーモグラフィ14を測定対象物28に対して相対移動させ、赤外線サーモグラフィ14による測定範囲14bを測定対象物28の表側表面28a内で順次移動させていく。それにより、測定対象物28の表側表面28aの全面における温度分布を複数回に分けて測定する。
【0017】
ヒーター36は、例えばリボンヒーターであり、測定対象物28の裏側表面28bに対向する位置に配置されている。ヒーター36は、測定対象物28の裏側表面28bの全面に亘って対向する面積を持ち、測定対象物28との間に隙間を設けて平行に配置されている。加熱温度制御装置34は、ヒーター36に接続されており、ヒーター36が出力する熱量を調整する。
ヒーター36の下方には、ローラー42が設けられている。即ち、ローラー42は、ヒーター36を挟んで測定対象物28に対向配置されている。ローラー42は、ヒーター36の裏面側を測定対象物28の全面に亘って移動可能であるとともに、ヒーター36に対して進退する方向にも変位可能となっている。ローラー42がヒーター36に対して変位すると、図1に示すようにヒーター36が測定対象物28に当接し、当接した部分の測定対象物28が加熱される。このときのヒーター36による加熱範囲の大きさは、赤外線サーモグラフィ14の測定範囲の大きさに略一致する。
【0018】
冷却ヘッド12a、12bは、測定対象物28の表側表面28aに冷却エアを送風する。冷却ヘッド12a、12bは、測定対象物28の表側表面28aに対向しながら、測定対象物28の全面に亘って移動可能に支持されている。これによって、測定対象物28のうち、冷却ヘッド12a、12bに対向する範囲が表側表面28aから冷却される。冷却温度制御装置32は、冷却ヘッド12a、12bに接続されており、冷却ヘッド12a、12bが送風する冷却エアの温度を調整している。
温度計18は、測定対象物28の表側表面28aに接触配置されている。温度計18は、測定対象物28の表側表面28aの表面温度を測定する。温度比較装置30は温度計18に接続されており、温度計18が測定した温度が予め記憶されている基準温度範囲に含まれているのか否かを比較する。
【0019】
位置制御装置44は、赤外線サーモグラフィ14と、ローラー42と、冷却ヘッド12a、12bと、温度計18に接続されている。位置制御装置44は、これら5つの構成物の位置関係を制御している。先に説明したように、赤外線サーモグラフィ14の位置は、その測定範囲が表側表面28a内で順次移動するように制御される。ローラー42の中心位置は、測定対象物28を挟んで赤外線サーモグラフィ14の中心軸16上に配置されるように制御される。これによって、図1に示すように、測定対象物28のなかで赤外線サーモグラフィ14の測定範囲に現に位置する範囲(以下、現測定範囲という)が、ヒーター36によって裏側表面28bから加熱されるようになっている。冷却ヘッド12a、12bの位置は、測定対象物28の現測定範囲に隣接する範囲に対向するように制御される。詳しくは後述するが、一方の冷却ヘッド12bが対向する範囲は、赤外線サーモグラフィ14の測定範囲内に次に位置する範囲(以下、次測定範囲という)である。温度計18の位置は、測定対象物28に対して前記一方の冷却ヘッド12bが対向する測定対象物28の範囲内となるように制御される。即ち、温度計18の位置は、測定対象物28の次測定範囲内となるように制御される。これによって、図1に示すように、温度計18は冷却ヘッド12bが冷却している測定対象物28の次測定範囲の表側表面28aにおける温度分布を測定する。
【0020】
次に、図2〜4を参照し、内部欠陥検出装置10が測定対象物28を検査する動作について説明する。先に説明したように、内部欠陥検出装置10では、測定対象物28の表側表面28aの全面における温度分布が、複数回に分けて測定される。図2〜4に示す点線は、n回目の測定範囲Eと、n+1回目の測定範囲En+1と、n+2回目の測定範囲En+2の境界を各々示している。
図2は、n回目の測定前、即ち、n−1回目の測定完了時の様子を示している。この段階では、温度計18と冷却ヘッド12bが、n回目の測定範囲Eに対応する位置に配置されている。これにより、次測定範囲である測定範囲Eが、冷却ヘッド12bからの冷却エアによって冷却されている。また、次測定範囲である測定範囲Eの温度が、温度計18によって測定される。測定された温度は、温度比較装置30で既定の基準温度範囲と比較される。測定された温度が基準温度範囲に含まれる場合、n回目の測定動作へと移行する。一方、測定された温度が基準温度範囲に含まれない場合、測定される温度が基準温度範囲に含まれるようになるまで、冷却ヘッド12bによる冷却と温度計18による測定が繰返される。ここで、基準温度範囲は、測定時の室温程度に設定することができる。
本実施例では、n回目の測定に先立って、冷却ヘッド12bがn回目の測定範囲Eに対応する位置に配置される。それにより、n回目の測定に先立って、n回目の測定範囲Eを十分に冷却しておくことができる。従って、n回目の測定を開始する際に、その測定範囲Eの温度を、基準温度範囲に含まれるようにすることができるか、基準温度範囲に含まれるようになるまで測定を待機する時間を大幅に短縮することができる。これによって、測定と測定の間に設ける待機時間が不要となるか、大幅に短縮することができる。
【0021】
図3は、n回目の測定の様子を示している。内部欠陥検出装置10がn回目の測定動作へと移行すると、位置制御装置44は、赤外線サーモグラフィ14、ローラー42、冷却ヘッド12a、12b、温度計18を、同期するように移動させる。図3に示すように、赤外線サーモグラフィ14の測定範囲とヒーター36による加熱範囲は、今回の測定範囲(現測定範囲)である測定範囲Eに移動する。また、冷却ヘッド12bによる冷却範囲と、温度計18による温度測定位置は、次回の測定範囲(次測定範囲)である測定範囲En+1に移動する。
【0022】
n回目の測定を開始すると、図3に示すように、ローラー42がヒーター36に対して変位し、現測定範囲である測定範囲Eが裏側表面28bから加熱される。n回目の測定範囲Eでは、測定対象物28の表側表面28aと裏側表面28bの間に温度差が発生し、鋼板22、26と接着剤24を通して測定対象物28の裏側表面28bに加えられた熱量が表側表面28aへと伝導される。
測定範囲Eがヒーター36によって加熱されている間、次測定範囲である測定範囲En+1は、冷却ヘッド12bによって冷却される。それにより、測定範囲Eからの熱伝導によって次測定範囲である測定範囲En+1が無用に加熱されることが防止される。ここで、測定範囲En+1の温度は、温度計18によって監視される。
【0023】
図3に示すように、測定範囲Eには、測定対象物28の内部に気泡39が存在しているとする。気泡39が存在する部位では、気泡39が存在しない部位に比べて、裏側表面28bから表側表面28aへの熱量の伝導が少ない。そのため、測定範囲Eの表側表面28aでは、気泡39が存在する部位と他の部位との間で温度差が発生する。即ち、表側表面28aに現われる温度分布に特異点(ここでは温度が特に低い部分)が生じる。表側表面28aの温度分布は、赤外線サーモグラフィ14及び解析装置46によって測定、解析される。測定された温度分布に特異点が発生している場合、測定範囲Eに気泡39が存在していることを検出することができる。また、温度分布では温度と位置が対応付けられて測定されるため、気泡39の位置や大きさもあわせて検出することができる。
【0024】
図4は、n+1回目の測定へと移行した様子を示している。なお、図4に示す状態へ移行する前に、測定範囲En+1の温度が温度計18によって測定される。測定された温度が基準温度範囲に含まれている場合、位置制御装置44は、赤外線サーモグラフィ14、ローラー42、冷却ヘッド12a、12b、温度計18を同期するように移動させ、図4に示すn+1回目の測定へと移行する。それにより、赤外線サーモグラフィ14の測定範囲とヒーター36による加熱範囲は、現測定範囲である測定範囲En+1に移動する。また、冷却ヘッド12bによる冷却範囲と、温度計18による温度測定位置は、次測定範囲である測定範囲En+2に移動する。その後、上述したn回目の測定と同様に、n+1回目の測定が実施される。
【0025】
図4に示すように、内部欠陥検出装置10では、n+1回目の測定時に、他方(図中左側)の冷却ヘッド12aが測定範囲Eに対応する位置に配置される。即ち、前回に測定が行われた測定範囲Eが、冷却ヘッド12aによって冷却される。それにより、測定が完了した範囲については、速やかに冷却されることで、例えば接着剤24の変質等が防止される。
【0026】
本実施例において、例えば冷却ヘッド12bによる冷却能力が十分であり、次測定範囲の温度上昇が十分に防止されるような場合には、必ずしも温度計18や温度比較装置30が必要とされない。
【0027】
また、表側表面28aと裏側表面28bの間に所定の温度差が与えられれば、測定開始時における温度によらず、測定対象物28の内部欠陥40を検出することはできる。そのことから、例えばn回目の測定完了時点において、温度計18によって測定された測定範囲En+1の温度が高い場合には、その測定範囲En+1を測定する際のヒーター36の出力を高め、その測定範囲En+1に加える熱量を増大させるとよい。それにより、測定範囲En+1の測定開始時における温度によらず、表側表面28aと裏側表面28bの間に所定の温度差を与えることでき、測定範囲En+1に内部欠陥40が存在するのか否かを検査することができる。この場合、次測定範囲である測定範囲En+1が加熱されてしまった場合にも、その温度低下を待つことなく、測定範囲En+1の測定を開始することができる。そのことから、加熱温度制御装置34は、温度計18が測定した温度に基づいて、次回測定する範囲に加える出力を調整することが好ましい。即ち、温度計18が測定した温度が高ければ、ヒーター36の出力を高めるとよい。さらに、温度計18が測定した温度が低い場合には、ヒーター36の出力を低めることで、無用なエネルギー消費を防止することもできる。なお、この場合には、温度比較装置30は必ずしも必要とされない。
この手法によると、例えば測定対象物28の熱伝導率が高く、現測定範囲の測定時に次測定範囲の温度上昇を十分に抑制できない場合でも、次測定範囲が温度低下するのを待つ必要がない。これにより、内部欠陥40の検出にかかる検査時間を短縮することができる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施例の内部欠陥検出装置10を示す。
【図2】内部欠陥検出装置10の測定動作を説明する図である。
【図3】内部欠陥検出装置10の測定動作を説明する図である。
【図4】内部欠陥検出装置10の測定動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
10・・・・内部欠陥検出装置
12a、12b・・・冷却ヘッド
14・・・・赤外線サーモグラフィ
14b・・・赤外線サーモグラフィの測定範囲
18・・・・温度計
20・・・・移動機構
22、26・・・・鋼板
24・・・・接着剤
28・・・・測定対象物
30・・・・温度比較装置
32・・・・冷却温度制御装置
34・・・・加熱温度制御装置
36・・・・ヒーター
38・・・・未塗布部分
39・・・・気泡
40・・・・内部欠陥
42・・・・ローラー
44・・・・位置制御装置
46・・・・解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の測定対象物の内部欠陥を検出する内部欠陥検出装置であって、
前記測定対象物の表側表面における温度分布を測定する測定手段と、
前記測定手段と前記測定対象物を相対移動させることによって、前記測定手段による測定範囲を順次移動させる移動手段と、
前記測定対象物の裏側表面から、前記測定対象物のなかで前記測定手段による測定範囲内に現に位置する現測定範囲を加熱する加熱手段と、
前記測定対象物の表側表面から、前記測定対象物のなかで前記測定手段による測定範囲内に次に位置する次測定範囲を冷却する冷却手段と、
を備えた内部欠陥検出装置。
【請求項2】
前記加熱手段の加熱範囲は、前記測定範囲の移動に同期して移動することを特徴とする請求項1に記載の内部欠陥検出装置。
【請求項3】
前記冷却手段の冷却範囲は、前記測定範囲の移動に同期して移動することを特徴とする請求項1または2に記載の内部欠陥検出装置。
【請求項4】
前記測定対象物の次測定範囲における表面温度を測定する温度計を更に備えており、
前記加熱手段は、前記温度計が測定した次測定範囲の温度に基づいて、その次測定範囲が現測定範囲となったときの出力を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−2234(P2010−2234A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159607(P2008−159607)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】