説明

内釜及びこの内釜を備えた炊飯器

【課題】内鍋と外鍋からなる内釜において、両者の側壁の間に全周にわたって空気層を設け、この空気層に調理中に発生した熱量を蓄熱することにより、少ない電力で調理を行うことができ、消費電力を低減することのできる内釜及びこれを備えた炊飯器を提供する。
【解決手段】アルミニウムからなる有底円筒状の内鍋2と、ステンレスからなり内鍋2より大径で有底円筒状の外鍋10とを有し、内鍋2を外鍋10内に収容しその周壁6,14の間に全周にわたって中空で密閉された空気層15を設けて内釜1を構成した。
また、炊飯器に上記の内釜1を使用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭などで日常的に使用される調理用の内釜及びこの内釜を備えた炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加熱手段として誘導加熱コイルを用いた炊飯器においては、調理物である米や水が入れられた内釜を炊飯器本体内に収容し、蓋を閉じて炊飯スイッチをONすると、制御部に設定した制御プログラムにしたがって炊飯が開始され、先ず、図3に実線で示すように、予熱工程、ついで炊飯工程、最後にむらし工程を経て炊飯を終了し、保温工程に移行する。
【0003】
予熱工程は約15分から20分程度の時間を要し、ついで炊飯工程に入る。炊飯工程では火力を上げて水を沸騰状態にし、内釜内の水が無くなるまで沸騰を継続させる。内釜内の水が無くなると、それまで水の蒸発潜熱で消費されていた熱が内釜温度を上昇させることに使われるようになり、内釜温度が急激に上昇する。これをドライアップと呼び、内釜の底部に設けた温度センサでこの温度上昇をとらえて炊飯工程を終了し、以降むらし工程に入る。そして、10分から15分程度むらした後炊飯を終了し、保温工程に移行する。これらの各工程では、最適な火加減を実現するようにマイコンプログラムで火力、したがって誘導加熱コイルの出力が制御される。
【0004】
このように、予熱工程から保温工程まではかなり長時間加熱しているため、加熱時間を減らして省エネルギー性を向上させるための方法が種々考えられており、その中でも一般に保温鍋を用いることが知られている。
【0005】
このような保温鍋に、底部の周囲から上方に立ち上った周壁部を形成してなる炊飯鍋において、上記周壁部にその高さ方向に所要幅の真空層を全周にわたって設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、外鍋の中に内鍋を入れ、それらを上端部において一体に接合し、内鍋と外鍋との間にリング状の空間部を形成する。この保温鍋を加熱することにより空間部の空気もともに加熱され、その空気内に熱量が蓄積され、この熱量によって内鍋内の食物が保温されるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−152868号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】実用新案登録第3033353号公報(第7−10頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の炊飯器用鍋は、周壁部の高さ方向に所要幅の真空層を設けているため密閉性を保つことが構造上難しく、その上真空層を形成するための設備費も膨大になる。
【0009】
特許文献2の保温鍋は、内鍋と外鍋はともにアルミニウム製でガスコンロ用であり、誘導加熱コイルを火力とする場合には加熱効率がきわめて悪い。また、この保温鍋で炊飯をする場合はガスの火加減や加熱時間の調整が難しく、ご飯の炊き上りに大きな差が出てくるため、毎回同じような炊き上がりにすることは困難である。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、内鍋と外鍋からなる内釜において、両者の側壁の間に全周にわたって空気層を設け、この空気層に調理中に発生した熱量を蓄熱することにより、少ない電力で調理を行うことができ、消費電力を低減することのできる内釜及びこれを備えた炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る内釜は、アルミニウムからなる有底円筒状の内鍋と、ステンレスからなり前記内鍋より大径で有底円筒状の外鍋とを有し、前記内鍋を外鍋内に収容しその周壁の間に全周にわたって中空で密閉された空気層を設けたものである。
【0012】
また、本発明に係る炊飯器は、上記の内釜を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば少ない電力で調理を行うことができ、これにより消費電力を低減することのできる内釜及びこれを備えた炊飯器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る内釜の縦断面図である。
【図2】図1の内釜を備えた炊飯器の模式的縦断面図である。
【図3】従来の炊飯器と図2の炊飯器による炊飯の時間と消費電力との関係を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る内釜の縦断面図である。
【図5】実施の形態2に係る内釜の他の例の縦断面図である。
【図6】実施の形態2に係る内釜のさらに他の例の縦断面図及びその固定金具の要部の説明図である。
【図7】実施の形態1に係る内釜の調圧弁が閉じた状態の断面図である。
【図8】実施の形態1に係る内釜の調圧弁が開いた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る内釜の縦断面図である。
図において、1は内鍋2と外鍋10とからなる二重構造の内釜である。内鍋2は、アルミニウム素材からなり、外径D1の有底円筒状に形成されて内面にはフッ素樹脂がコーティングされ、上端部外周には幅広の内鍋フランジ部3が設けられている。
外鍋10はステンレス素材からなり、内鍋2の外径D1より大きい外径D2で有底円筒状に形成され、上端部外周には外鍋フランジ部11が設けられている。
【0016】
内鍋2は外鍋10内に入れられてその底部4が外鍋10の底部12に当接し、内鍋2のコーナ部5と外鍋10のコーナ部13の周壁6,14への立上り部から上端部にかけて、両者の間に全周にわたって中空の空気層15が形成されている。この空気層15の幅(厚み)dは、D2−D1/2で設定され、上部における空気層15の幅dを実施例では8〜12mmとしたが、これに限定するものではない。
そして、内鍋2の内鍋フランジ3は外鍋10の外鍋フランジ11を包むように折り曲げられてかしめられ、内鍋2と外鍋10とを一体に結合すると共に、空気層15を密閉する。
【0017】
図2は本実施の形態に係る外釜を備えた炊飯器の模式的縦断面図である。
上面が開口された炊飯器本体21内には、内釜1の外形に対応した形状で、上部外周にフランジ22aを有するコイル台22が設置されており、その底部及びコーナ部の下面には、誘導加熱コイル23が配設されている。24はコイル台22の底部中央部を貫通して設けられた温度センサで、炊飯器本体21との間に介装されたばね25により、上方に付勢されている。
【0018】
26は図示しないヒンジを介して炊飯器本体21に取付けられ、炊飯器本体21の上部開口部を開閉する蓋体で、外蓋27とこの外蓋27の下面に着脱可能に装着された内蓋28とからなっている。29は外蓋27及び内蓋28を貫通して着脱可能に設けられたカートリッジで、下面には通気弁30が設けられており、上面には蒸気孔31が開口している。なお、図示してないが、炊飯器本体21内には誘導加熱コイル23の出力などを制御する制御部が設けられており、蓋体26には操作部が設けられている。
【0019】
上記のように構成した炊飯器20において、蓋体26を開放し、米と水が入れられた内釜1をコイル台22内に収容し、その内鍋フランジ部3をパッキン32を介してコイル台22のフランジ22a上に載置する。このとき、内釜1の底部はコイル台22の底部に当接又は近接して位置し、温度センサ24はばね25に付勢されて内釜1の底部に当接する。この状態で蓋体26を閉じる。なお、図7及び図8に示すように、内釜1の外鍋10の上部には空気層15と外鍋10の外部の空気に連通する調圧弁18が設けられている。この調圧弁18は耐熱性のシリコンゴムにより形成されており、外鍋10の上部の上下2箇所に穿孔し、上側の孔に調圧弁18の固定用の嵌合用突起が外側から嵌着され、下側の孔に弁体である閉塞用突起が外側から嵌入して、調圧弁18の弾性力により空気層15を閉塞する。
【0020】
次に、上記のような炊飯器20による炊飯作用を、図2、図3を参照して説明する。なお、図3は炊飯時における時間と消費電力との関係を示す線図で、実線は従来の通常の内釜を用いた場合、破線は本実施の形態に係る内釜1を用いた場合を示す。
【0021】
先ず、所定量の米と水が入れられた内釜1を炊飯器本体21内にセットし、蓋体26を閉じて操作部の炊飯スイッチをONし、炊飯を開始する。これにより、誘導加熱コイル23に低い電力が供給されて予熱工程が開始され、一定時間経過すると炊飯工程に移行する。炊飯工程では、誘導加熱コイル23に高い電力が供給され、火力を上げて短時間で内釜1内の水を沸騰状態にし、内釜1内の水が無くなるまで沸騰を継続させる。ここまでは、従来も本実施の形態による内釜1を用いた場合も同じである。
【0022】
そして、従来は実線で示すように、引続き弱い火力でドライアップするまで加熱を行っていた。しかし、本実施の形態に係る内釜1を用いた場合は、内釜1内の水が沸騰することにより内釜1が加熱され、その熱量が空気層15に蓄熱されているので、破線で示すように誘導加熱コイル23への電力の供給を停止し又は極く僅かに給電して、空気層15に蓄熱された熱により引続き加熱する。
【0023】
炊飯工程終了後むらし工程に移行したときは、誘導加熱コイル23に再び低い電力を供給して内釜1を加熱したのち再度給電を停止し又は極く僅かに給電して、内釜1の空気層15に蓄熱された熱により保温を行う。
なお、内釜1の空気層15の温度が上昇すると内圧があがり、また、万一空気層15に水が入った状態で空気層15の温度が上昇して内圧があがって、これが設定圧力を超えた場合は、安全のために調圧弁を開いて空気層15の内圧を調整し、内圧の上昇を防止する。すなわち、空気層15の空気が熱せられて内圧が設定圧力を上回ると、調圧弁18の弾性力に抗して閉塞用突起を空気層15側から外方向に押圧し、空気層15の一部の空気が外鍋10の外部に放出される。その結果、空気層15の内圧が低下し、再び閉塞用突起が空気層15を閉塞する。
【0024】
本実施の形態によれば、炊飯工程時に生じた熱により内鍋2と外鍋10との間に形成された空気層15に熱量が蓄熱され、炊飯中の放熱を抑制することができ、また、内釜1内の水が沸騰したあとの炊飯工程において、誘導加熱コイル23への電力の供給を停止し又は大幅に給電を低減することができるので、炊飯工程時における加熱効率が向上し、少ない電力で炊飯することができるため、消費電力を低減することができる。
【0025】
また、炊飯工程のあとのむらし工程の際に、誘導加熱コイル23に通電して再加熱することにより、内釜1内の水分をとばして炊き上り時の水滴付着を防止すると共に、むらし工程時の内釜1の熱により空気層15に再度蓄熱されるため、炊飯後の保温工程において誘導加熱コイル23への電力の供給を停止し又は大幅に給電を低減することができる。これにより、炊き上り時の内側に付着した水滴によるご飯のベチャベチャ感が無くなるばかりでなく、保温工程時の消費電力を低減し又は停止することができる。
【0026】
さらに、内釜1を構成する内鍋2の底部を外鍋10の底部に当接させて両者の間に空間部が形成されるのを防止したので、外鍋10に発生した熱が内鍋2に確実に伝達され、内鍋2を効率よく加熱することができる。
【0027】
[実施の形態2]
図4〜図6は本発明の実施の形態2に係る調理用の内釜の断面図である。なお、実施の形態1に係る内釜と同じ部分にはこれと同じ符号を付してある。
図4の内釜1は、内鍋2をアルミニウムダイキャストで製作して、その底部4からコーナ部5にかけて肉厚を他の部分より厚く形成したもので、内壁面にはフッ素樹脂がコーティングされている。
本例の内釜1の作用、効果は実施の形態1の内釜1とほぼ同じであるが、内鍋2の底部4を厚く形成したので、誘導加熱コイル23による内鍋2の加熱効率をより高めることができる。
【0028】
図5の内釜1は、内鍋2の底部4と外鍋10の底部12との間に、側壁に設けた中空の空気層15の幅dとほぼ等しい間隔の中空部を設け、この中空部からコーナ部5,13の立上り部にかけて、グラット材16を挿入し充填したものである。
本例の内釜1の作用、効果は実施の形態1の内釜1の場合とほぼ同様であるが、内鍋2の底部4と外鍋10の底部との間にグラッド材16を充填したので、誘導加熱コイル23による内鍋2の加熱効率をより高めることができる。
【0029】
図6の内釜1は、実施の形態1の内釜1の内鍋2の内鍋フランジ部3を省略し、金属材料からなるリング状の固定金具17により内鍋2と外鍋10の上端部を一体に固定したものである。
この固定金具17は、図6(b)にその要部を示すように、内側に内鍋2の上端部に嵌合する溝17a、その外側に内釜1の空気層15に対応した幅の縦壁17b、その外側に外鍋10の外鍋フランジ部11に嵌合する溝17cが設けられており、その外側の下端部にはかしめ部17dが設けられている。
【0030】
そして、固定金具17の溝17aを内鍋2の上端部に、溝17cを外鍋フランジ部11に嵌合し、かしめ部17dを内側に折り曲げて外鍋フランジ部11をかしめて固定することにより、内鍋2と外鍋10は一体に結合され、空気層15は密閉される。
本例の内釜1の作用、効果は実施の形態1の内釜1の場合とほぼ同様であるが、さらに、内鍋2と外鍋10の上端部をリング状の固定金具17で固定するようにしたので、両者の上端部を容易かつ確実に所定形状とすることができ、所定幅dの空気層を形成することができるため、製造工程が短縮され、歩留りを向上することができる。
【0031】
上記の説明では、本発明に係る内釜1を図示の炊飯器20に用いた場合を示したがこれに限定するものではなく、他の構造の炊飯器にも本発明に係る内釜1を用いることができる。
また、上記の説明では、本発明に係る内釜1により米を炊飯する場合を示したが、米以外の被調理物の加熱調理にも使用することができる。さらに、内釜1を有底円筒状の内鍋2と外鍋10とによって構成した場合を示したが、例えば有底角筒状の内鍋2と外鍋10によって内釜1を構成する等、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 内釜、2 内鍋、3 内鍋フランジ部、4,12 底部、5,13 コーナ部、6,14 周壁、10 外鍋、11 外鍋フランジ部、15 空気層、16 グラッド材、17 固定金具、18 調圧弁、20 炊飯器、21 炊飯器本体、22 コイル台、23 誘導加熱コイル、26 蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムからなる有底円筒状の内鍋と、ステンレスからなり前記内鍋より大径で有底円筒状の外鍋とを有し、
前記内鍋を外鍋内に収容しその周壁の間に全周にわたって中空で密閉された空気層を設けたことを特徴とする内釜。
【請求項2】
前記内鍋の底部を外鍋の底部に当接したことを特徴とする請求項1記載の内釜。
【請求項3】
前記内鍋の底部を他より厚く形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の内釜。
【請求項4】
前記内鍋の底部と外鍋の底部との間にグラッド材を挿入したことを特徴とする請求項1記載の内釜。
【請求項5】
前記内鍋の上端部外周に内鍋フランジ部を設け、前記外鍋の上端部外周に外鍋フランジ部を設けて、前記内鍋フランジ部により前記外鍋フランジ部を包み込んでかしめることにより、前記内鍋と外鍋とを一体に結合すると共に、前記空気層を密閉したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内釜。
【請求項6】
前記内鍋と外鍋の上端部を、リング状の固定金具で共締めして前記内鍋と外鍋を一体に結合すると共に、前記空気層を密閉したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内釜。
【請求項7】
前記外鍋に、該外鍋の外部の空気と前記空気層とを連通する調圧弁を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内釜。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかの内釜を備えたことを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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