説明

円二色性イメージング装置

【課題】高速且つ高精度に円二色性イメージを撮像することが可能な円二色性イメージング装置を提供する。
【解決手段】円二色性イメージング装置1では、カメラ51が右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しいか又はそれよりも短い撮像時間での撮像可能とされ、右円偏光及び左円偏光のいずれかが試料100により透過された透過光による画像がカメラ51により撮像される。このとき、タイミング信号発信器70からのタイミング信号と、変調信号発振器32による変調信号の周期とに基づいて、各画像が右円偏光及び左円偏光のいずれの透過光を撮像したものであるかが判断部61により判断され、右円偏光画像であると判断された画像は右円偏光画像格納部62に格納されると共に、左円偏光画像であると判断された画像は左円偏光画像格納部63に格納される。この結果得られた右円偏光画像と左円偏光画像とから円二色性イメージを作成・出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円二色性イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円二色性は、分子の光学活性(キラリティ)によって起こる現象であり、左右の円偏光に対する吸光度の違いとして定義される。この円二色性のスペクトル情報は、分子の高次構造を反映していることから、特に生理活性物質の高次構造の解析等によく適用される。
【0003】
円二色性を計測するためには、右の円偏光と左の円偏光の吸光度の差を計測する必要があるが、汎用の円二色性分光計においては、円偏光変調器を用いて右と左の円偏光を周期的に発生させ、試料を透過したときに生じる透過光の周期的な強度変化を、透過光のAC成分として計測する方法や、円偏光変調器の変調信号から透過光の強度変化をロックインアンプで計測するといった方法等が一般的に用いられる。
【0004】
具体的には、例えば特許文献1では、円二色性のイメージを計測する従来技術として、近接場プローブを使って試料をスキャンする方法が開示されている。また、特許文献2では、共焦点蛍光顕微鏡と円二色性のイメージ計測とを組み合わせた方法が知られている。
【0005】
また、特許文献3では、左右の円偏光を自由に発生できる光源を使って、左右の円偏光をそれぞれ計測し、差を求めることで円二色性イメージを得る技術が開示されている。さらに、特許文献4では、光偏光変調器を使わずに、回転する偏光板を用いて左右の円偏光を生成し、各々の透過画像から円二色性イメージを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−325840号公報
【特許文献2】国際公開第2007/088947号
【特許文献3】特開平05−045304号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0134687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の方法は、いずれも試料を走査して測定を行うことから測定に時間を要するため、例えば経時変化が速い試料の測定を精度よく行うことは困難である。また、特許文献3に記載の方法は、左右の円偏光を自由に発生できる光として放射光を想定していることから、装置を容易に作成することができない。さらに、特許文献4に記載の方法は、偏光板の回転等のメカニカルな機構が必要となるため、装置由来の誤差を考慮すると、より高い精度での測定が困難である。
【0008】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、高速且つ高精度に円二色性イメージを撮像することが可能な円二色性イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る円二色性イメージング装置は、試料に対して右円偏光及び左円偏光を交互に出射する円偏光光源と、円偏光光源における右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しいか又はそれよりも短い撮像時間での撮像が可能であり、円偏光光源から出射されて試料により透過された透過光による画像を撮像する撮像手段と、円偏光光源における右円偏光と左円偏光とを切り替えるタイミングに基づいて、撮像手段における撮像のタイミングを制御する制御手段と、円偏光光源における右円偏光と左円偏光とを切り替えるタイミングと、制御手段により制御された撮像手段による撮像のタイミングと、に基づいて、撮像手段により撮像された画像が右円偏光画像であるか左円偏光画像であるかを判断する判断手段と、撮像手段により撮像された画像のうち右円偏光画像を格納する右円偏光画像格納手段と、撮像手段により撮像された画像のうち左円偏光画像を格納する左円偏光画像格納手段と、右円偏光画像格納手段に格納された右円偏光画像と、左円偏光画像格納手段に格納された左円偏光画像との差分を求め、その結果を円二色性イメージとして出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の円二色性イメージング装置によれば、撮像手段が円偏光光源における右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しいか又はそれよりも短い撮像時間での撮像が可能であるため、右円偏光及び左円偏光のいずれか一方が試料により透過された透過光による画像が撮像手段において撮像される。そして、制御手段により制御された撮像手段による撮像のタイミング、及び、右円偏光と左円偏光とを切り替えるタイミングと、に基づいて、各画像が右円偏光及び左円偏光のいずれを試料に対して出射した際の透過光を撮像したものであるかが判断手段により判断され、判断結果に基づいて、右円偏光画像であると判断された画像は右円偏光画像格納手段に格納されると共に、左円偏光画像であると判断された画像は左円偏光画像格納手段に格納される。そして、上記の結果得られた右円偏光画像と左円偏光画像とから円二色性イメージを作成・出力することが可能となる。したがって、上記の円二色性イメージング装置によれば、試料を走査して測定する場合と比較してより高速に、且つ、より簡易な装置を用いて高精度の円二色性イメージを撮像することができる。
【0011】
ここで、判断手段は、撮像手段により撮像された画像に、円偏光光源から試料に対して右円偏光を出射したことによって試料により透過された透過光に係る情報と円偏光光源から試料に対して左円偏光を出射したことによって試料により透過された透過光に係る情報とが含まれる場合、この画像を破棄する態様とすることができる。
【0012】
上記のように、右円偏光を出射したことによって試料により透過された透過光に係る情報と円偏光光源から試料に対して左円偏光を出射したことによって試料により透過された透過光に係る情報とが含まれる画像が撮像手段により撮像された場合、これを円二色性イメージの作成に用いる画像から除外する構成を有することで、より高精度の円二色性イメージの撮像が可能となる。
【0013】
また、撮像手段の撮像時間は、円偏光光源における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間と等しく、制御手段は、円偏光光源における右円偏光と左円偏光との切り替えるタイミングと、撮像手段による撮像を開始するタイミングと、が等しくなるように撮像手段を制御する態様としてもよい。
【0014】
上記のように、撮像手段による撮像時間を、円偏光光源における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間と等しくし、撮像を開始するタイミングと円偏光光源における偏光の切り替えのタイミングとを等しくすることで、円偏光光源における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間に出射された円偏光が試料を透過した透過光を、一つの画像に撮像することができ、円二色性イメージの撮像をより効率よく行うことができる。
【0015】
ここで、上記の円二色性イメージング装置は、円偏光光源と撮像手段との間の光路上に単色フィルタを更に備える態様とすることができる。
【0016】
上記のように、円偏光光源と撮像手段との間に特定の波長の光のみを通過させる単色フィルタを設ける構成とすることで、ノイズ成分となる光を除去することができるため、撮像手段において右円偏光画像及び左円偏光画像を精度よく撮像することができ、より高精度な円二色性イメージを得ることができる。さらに、単色フィルタにより目的とする波長のみが選別されるため、光源が非単色光源であっても、目的の波長における円二色性イメージを得ることも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高速且つ高精度に円二色性イメージを撮像することが可能な円二色性イメージング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る円二色性イメージング装置の構成を説明する概略構成図である。
【図2】円二色性イメージング装置による処理を説明するフローチャートである。
【図3】円二色性イメージング装置によって右円偏光画像及び円偏光画像を撮像する場合の各部の処理を説明する図である。
【図4】円二色性イメージング装置におけるカメラの露光時間を変更した場合の処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る円二色性イメージング装置の構成を説明する概略構成図である。図1に示すように、円二色性イメージング装置1は、光源10、偏光子20、変調器30、単色フィルタ40、フレーミングカメラ50、画像処理装置60及びタイミング信号発信器70を含んで構成され、変調器30と単色フィルタ40との間に試料100が配置される。
【0021】
光源10は、試料100に対して照射するための光を出射する。この光源10から出射される光は非偏光であり、例えば、波長280nmの光を出射するLED光源等が光源10として用いられる。
【0022】
光源10から出射された光は偏光子20に入射する。偏光子20では、光源10から出射された光のうち直線偏光のみが取り出される。偏光子20としては、例えば、グランテーラープリズムが用いられる。
【0023】
偏光子20により取り出された直線偏光は、変調器30によって右円偏光又は左円偏光に変換して出射される。変調器30は、円偏光変調器31と変調信号発振器32とを含んで構成されている。変調信号発振器32は、右円偏光への変換を指示する信号と左円偏光への変換を指示する信号とを変調信号とし、これらを周期的に交互に発振する。そして、変調信号発振器32により発振される変調信号に基づいて、円偏光変調器31に入射した直線偏光が右円偏光又は左円偏光に交互に変換されて出射される。また、変調信号発振器32が発振する変調信号は後述のタイミング信号発信器70を経てフレーミングカメラ50に対しても出力される。この変調信号に基づいた円偏光変調器31による円偏光への変換と、フレーミングカメラ50による撮像とが、タイミング信号発信器70により調整される。この具体的な手順については後述する。
【0024】
円偏光変調器31により出射されて、試料100を透過した透過光は、単色フィルタ40に入射する。単色フィルタ40は、円二色性イメージの形成には不要な波長成分やノイズ成分等の除去のために設けられている。本実施形態の円二色性イメージング装置1では、波長280nmの光のみを通過させる単色フィルタ40として用いられる。単色フィルタ40を通過した透過光は50へ入射する。
【0025】
フレーミングカメラ50は、カメラ51とフレームメモリ52とを含んで構成され、試料により透過された透過光による画像を撮像する撮像手段として機能する。フレーミングカメラ50としては、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等が用いられる。カメラ51は、その撮像時間(露光時間)が、変調信号発振器32から出力される信号に基づく円偏光の変調間隔と等しいか又はそれよりも短くされている。また、カメラ51による撮像の開始タイミングは、タイミング信号発信器70により出力されるタイミング信号に基づいて決定される。すなわち、タイミング信号発信器70は、カメラ51の撮像のタイミングを制御する制御手段として機能する。カメラ51では、入射した透過光の強度が画像信号に変換されて画像情報としてフレームメモリ52に蓄積された後、フレーミングカメラ50から画像処理装置60の判断部61へ送られる。この際に、画像情報と共に、その画像を撮像した際に、変調信号発振器32から発振された変調信号の周期にかかる情報と、タイミング信号発信器70により出力されたタイミング信号にかかる情報とが送られる。
【0026】
画像処理装置60は、フレーミングカメラ50により撮像された画像から円二色性イメージを形成・出力するための装置である。具体的には、画像処理装置60は、判断部61、右円偏光画像格納部62、左円偏光画像格納部63、画像演算部64、出力部65を含んで構成されている。
【0027】
判断部61は、フレーミングカメラ50から送信された画像を右円偏光画像格納部62及び左円偏光画像格納部63のどちらへ格納するかを判断する判断手段として機能する。右円偏光画像格納部62(右円偏光画像格納手段)は右円偏光画像を格納する領域であり、左円偏光画像格納部63(左円偏光画像格納手段)は左円偏光画像を格納する領域である。
【0028】
そして、どちらの格納部に対して画像信号を格納するかについては、画像情報と共にフレーミングカメラ50から送信された、変調信号発振器32から発振された変調信号の周期にかかる情報と、タイミング信号発信器70により出力されたタイミング信号にかかる情報とに基づいて判断がなされる。その具体的な手順については後述する。
【0029】
画像演算部64は、右円偏光画像格納部62に格納された右円偏光画像と、左円偏光画像格納部63に格納された左円偏光画像との差分を求める機能を有する。画像演算部64による演算結果は、出力部65から円二色性イメージとして出力される。円二色性イメージは出力部65から例えばモニタに表示する方法や、プリンタに出力する方法等によって、画像処理装置60から外部へ出力される。このように画像演算部64及び出力部65は、出力手段として機能する。
【0030】
タイミング信号発信器70は、変調器30の変調信号発振器32から送られる変調信号を受信し、これに基づいてフレーミングカメラ50に対してカメラ51の撮像開始を指示するタイミング信号(スタートトリガパルス)を送信する。すなわち、タイミング信号発信器70は、カメラ51の撮像のタイミングを制御する制御手段として機能する。
【0031】
ここで、上記の構成を有する円二色性イメージング装置1として好適に用いられる装置を例示する。例えば、光源10として重水素ランプ(型番L6301-50)、変調器30として、光弾性変調器(型番PEM100:Hinds Instruments社製)、フレーミングカメラ50として、フレーミングICCDカメラ(型番C7977-01:浜松ホトニクス社製)が好適に用いられる。
【0032】
次に、円二色性イメージング装置1による円二色性イメージングの方法について図2及び図3を用いて説明する。図2は、円二色性イメージング装置1による処理を説明するフローチャートである。また、図3は、円二色性イメージング装置1によって右円偏光画像及び左円偏光画像を撮像する場合の各部の処理を説明する図である。
【0033】
まず図2に示すように、試料100に対して右円偏光を照射し、右円偏光画像を撮像する(S01)。また、左円偏光を照射し、左円偏光画像を撮像する(S02)。右円偏光画像の撮像と左円偏光画像の撮像とは交互に行われる。
【0034】
このとき、円二色性イメージング装置1を構成する各部の信号は以下の処理を行う。すなわち、変調信号発振器32が所定の間隔で右円偏光と左円偏光とを交互に出射するように動作する。具体的には、変調信号の形状が図3に示すように矩形波となるように、高いレベルの信号と低いレベルの信号とを周期的に交互に発振する。これによって、円偏光変調器31は、変調信号が高いレベルの信号である場合には右円偏光を出射させ、変調信号が低いレベルの信号である場合には左円偏光を出射させる。円偏光変調器31からは図3に示すように右円偏光と左円偏光とが交互に出射可能な状態とされる。
【0035】
ここで、変調信号発振器32からの変調信号を受信したタイミング信号発信器70では、変調信号発振器32が高いレベルの信号を発振した際に、変調信号の立ち上がりエッジによってタイミング信号(スタートトリガパルス)を生成し、フレーミングカメラ50に対して発信する。フレーミングカメラ50のカメラ51では、タイミング信号の受信を契機に撮影が開始される。図3では、フレーミングカメラ50が4枚の画像を連続して撮像が可能である場合を示しており、フレーミングカメラ50による撮影の開始後、あらかじめ設定された露光時間tで、4フレーム分の撮像を行い、この結果をフレームメモリ52に蓄積する。露光時間tを変調信号の半周期よりも短く設定して4フレーム分の撮像を行った場合、図3に示すように、フレームメモリ52にはフレームA〜Dの4枚の画像の情報が蓄積され、これらが、判断部61へ送られる。
【0036】
画像処理装置60の判断部61では、変調信号の周期と露光時間tとの関係から各フレームにおける円偏光の状態を識別し、各フレームの画像の取扱いを決定する。具体的には、円偏光発振器31から右円偏光が出射されている時間帯に撮像されたフレームを、右円偏光画像を蓄積する右円偏光画像格納部62に転送し、左円偏光が出射されている時間帯に撮像されたフレームを、左円偏光像を蓄積する左円偏光画像格納部63に転送し、それ以外のフレームを破棄する。本実施形態では、図3における4枚のフレームの内、フレームAは画像右円偏光画像格納部62に転送され、フレームCは左円偏光画像格納部63に転送され、フレームB,Dは破棄される。
【0037】
なお、右円偏光画像の撮像と左円偏光画像の撮像とは、それぞれ変調1サイクル分に限られず、光量等に応じて複数サイクル分の画像を撮像する構成であってもよい。
【0038】
次に、画像演算部64において、右円偏光画像格納部62に格納された右円偏光画像と、左円偏光画像格納部63に格納された左円偏光画像との差分を演算する(S03)。具体的には、画像演算部64によって、右円偏光画像と左円偏光画像との間で減算処理が行われる。そして、この結果が画像演算部64から出力部65へ送られ、出力部65から円二色性イメージとして出力される(S04)。以上の処理により円二色性イメージの撮像及び出力が行われる。
【0039】
図4は、カメラ51における露光時間tを、変調信号発振器32による変調信号の半周期(例えば、変調信号の周期が20μ秒である場合に、10μ秒)とした場合の各部の処理を説明する図である。このように、露光時間tを変調信号の半周期、すなわち、右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しくする場合、フレームメモリ52に格納されるフレームの全てを破棄することなく円偏光画像として使用することができる。具体的には、フレームAとフレームCとが右円偏光画像格納部62に格納され、フレームBとフレームDとが左円偏光画像格納部63に格納される。このように、変調信号発振器32による変調信号の半周期をカメラ51の露光時間tと一致させ、さらにタイミング信号発信器70の動作により、右円偏光の出射開始とフレーミングカメラ50の撮像開始とを一致させた場合、破棄するフレームがなくなることから、より効率のよい撮像が可能となる。
【0040】
このように、本実施形態に係る円二色性イメージング装置1によれば、カメラ51が右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しいか又はそれよりも短い撮像時間での撮像が可能であるため、右円偏光及び左円偏光のいずれか一方が試料100により透過された透過光による画像がカメラ51により撮像される。そして、タイミング信号発信器70のタイミング信号と、変調信号発振器32による変調信号の周期とに基づいて、各画像が右円偏光及び左円偏光のいずれを試料に対して出射した際の透過光を撮像したものであるかが判断部61により判断され、判断結果に基づいて、右円偏光画像であると判断された画像は右円偏光画像格納部62に格納されると共に、左円偏光画像であると判断された画像は左円偏光画像格納部63に格納される。そして、上記の結果得られた右円偏光画像と左円偏光画像とから円二色性イメージを作成・出力することが可能となる。したがって、上記の円二色性イメージング装置1によれば、試料を走査して測定する場合と比較してより高速に、且つ、より簡易な装置を用いて高精度の円二色性イメージを撮像することができる。
【0041】
また、図4に示したように、カメラ51による露光時間tを、円偏光発振器31における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間と等しくし、撮像を開始するタイミングと円偏光発振器31における偏光の切り替えのタイミングとを等しくすることで、円偏光発振器31における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間に出射された円偏光が試料100を透過した透過光を、一つの画像に撮像することができ、円二色性イメージの撮像をより効率よく行うことができる。
【0042】
また、上記の円二色性イメージング装置1では、試料100とゲート51との間に、特定の波長の光のみを通過させる単色フィルタ40を設ける構成とされていることから、迷光等のノイズ成分となる光を単色フィルタ40で排除することができ、ゲート51を経てカメラ52において撮像される画像をより高精度とすることができる。さらに、光源10がキセノンランプのような非単色光源であっても、単色フィルタにより目的とする波長のみが選別されるため、目的の波長における円二色性イメージを得ることも可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0044】
例えば、上記実施形態では、単色フィルタ40を試料100の後段に設けた構成としたが、単色フィルタ40は光源10とカメラ52との間の光路上であればどの場所に設けてもよい。ただし、迷光の防止という目的を考慮すると試料100の後段に設けることが好ましい。
【0045】
また、上記実施形態では、タイミング信号発信器70が変調信号発振器32とは別に設けられているが、カメラ51に対して撮像開始を指示するタイミング信号を出力する制御手段としての機能を変調信号発振器32に具備させてもよいし、フレーミングカメラ50がその機能を備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…円二色性イメージング装置、10…光源、20…偏光子、30…変調器、31…円偏光変調器、32…変調信号発振器、40…単色フィルタ、50…フレーミングカメラ、51…カメラ、52…フレームメモリ、60…画像処理装置、61…判断部、62…右円偏光画像格納部、63…左円偏光画像格納部、64…画像演算部、65…出力部、70…タイミング信号発振器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して右円偏光及び左円偏光を交互に出射する円偏光光源と、
前記円偏光光源における右円偏光及び左円偏光の一度の出射時間と等しいか又はそれよりも短い撮像時間での撮像が可能であり、前記円偏光光源から出射されて前記試料により透過された透過光による画像を撮像する撮像手段と、
前記円偏光光源における右円偏光と左円偏光とを切り替えるタイミングに基づいて、前記撮像手段における撮像のタイミングを制御する制御手段と、
前記円偏光光源における右円偏光と左円偏光とを切り替えるタイミングと、前記制御手段により制御された前記撮像手段による撮像のタイミングと、に基づいて、前記撮像手段により撮像された画像が右円偏光画像であるか左円偏光画像であるかを判断する判断手段と、
前記撮像手段により撮像された画像のうち右円偏光画像を格納する右円偏光画像格納手段と、
前記撮像手段により撮像された画像のうち左円偏光画像を格納する左円偏光画像格納手段と、
前記右円偏光画像格納手段に格納された前記右円偏光画像と、前記左円偏光画像格納手段に格納された前記左円偏光画像との差分を求め、その結果を円二色性イメージとして出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする円二色性イメージング装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記撮像手段により撮像された画像に、前記円偏光光源から前記試料に対して右円偏光を出射したことによって前記試料により透過された透過光に係る情報と前記円偏光光源から前記試料に対して左円偏光を出射したことによって前記試料により透過された透過光に係る情報とが含まれる場合、この画像を破棄することを特徴とする請求項1記載の円二色性イメージング装置。
【請求項3】
前記撮像手段の撮像時間は、前記円偏光光源における右円偏光又は左円偏光の一度の出射時間と等しく、
前記制御手段は、前記円偏光光源における右円偏光と左円偏光との切り替えるタイミングと、前記撮像手段による撮像を開始するタイミングと、が等しくなるように前記撮像手段を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の円二色性イメージング装置。
【請求項4】
前記円偏光光源と前記撮像手段との間の光路上に単色フィルタを更に備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の円二色性イメージング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−15499(P2013−15499A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150361(P2011−150361)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】