円偏光法、並びにセルロース系繊維の壁厚及び小繊維の方位決定用の機器
本発明は、多層化試料の、その層及び壁厚に関連する、相対的位相遅延、並びにその光軸の方位の、新規な、迅速な決定方法及び装置を提供する。非修飾木材パルプ繊維は、典型的な多層化複屈折性試料である。この新しい方法は、木材繊維の種々の層において異なって配位されたセルロース系ミクロフィブリルの方向等の、異なる光学軸方位を持つ複屈折性層から成る試料を通り抜ける偏光の偏りの変化に基づく。特に、円偏光システムにおいて、非修飾木材繊維から発せられる光強度を、入射光強度、その光の波長、並びに種々の層の相対的位相遅延、及び傾斜角等の、それらのセルロース系ミクロフィブリルの方位と関連づける、新規な解が見いだされている。この新しい方法は、測定される多層化試料の光学的及び物理的な特性を決定するために、多重の所定の波長の伝播光強度を同時に評価する。本発明による、繊維壁の相対的位相遅延(遅延特性)、及び非修飾木材繊維の傾斜角の決定機器は、明確な多波長を持つ光源、色収差の無い円偏光システム、適切な結像光学系、2以上の波長(色)の検出チャンネルを持つデジタルカラーカメラ等の、マルチチャンネルカメラ、並びに、画像処理及びデータ解析システムを含む。本測定は、セルロース系ミクロフィブリルの複屈折を活用し、斯くして、試料の調製も高解像度光学系も必要としない。木材繊維等の試料は円偏光の下で評価されるので、試料の配列は不必要である。他の方法と比べて、本発明は、より迅速、正確、及び頑健である。この方法は、自動化、及び繊維貫流システムに実装でき、斯くして、木材パルプ繊維特性の迅速な評価(リアルタイムのオンライン)を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.119(e)の下、2003年12月3日に出願した、米国出願仮出願番号60/526,280の優先権を主張する。
本発明は、複屈折性試料の偏光、光学的及び全ての関連する物理的性質に関し、詳しくは、多層の複屈折性試料中の異なる層の相対的な位相遅延、及び光軸の方位、好ましくは、非修飾木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角(fibril angle)に関連している相対的な位相遅延を決定するための偏光法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系繊維の一例である木材繊維は、生物学的材料であり、図1(a)に示す様に[1]、主壁P1、及び3つの二次的な壁層S1、S2及びS3の、4つの主要な層から成る。3つの二次的な層は全て、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質マトリクスに埋め込まれた、長い結晶性のセルロース系ミクロフィブリルで構成されている。外側のS1及び内側のS3層は非常に薄く、また、これらのミクロフィブリルは繊維軸に対して殆ど横向きに巻き付いている。中間の層S2層は、繊維壁材料の80−90%を含み、縦の繊維軸に対して、傾斜角(θ)と呼ばれるある角度で螺旋状に巻き付いたセルロース系ミクロフィブリルを有する。結晶性のミクロフィブリルはこれらの層中に整列し、また、複屈折性であり、木材繊維を複屈折性にしている。複屈折の大きさは、層S1、S2及びS3の厚さ、それらのミクロフィブリルの方位、及び各層の複屈折に依存する。
【0003】
支配的なS2層中の繊維壁厚及び傾斜角は、木材パルプ繊維の物理的及び機械的特性を制御し、それ故、製紙処理、並びに紙及び厚紙製品の最終使用特性に対するパルプの応答に強い影響を与える。例えば、繊維壁厚は、構造、強度及び光学特質を包含する、紙の全ての物理的特性に、事実上影響を与える[2、3]。一方、傾斜角は、膨張/収縮特性[4]、応力−ひずみ挙動[5]、及び紙の寸法安定性[6]を制御する。S2傾斜角は、繊維の折り畳み性に強く影響することが示されている。繊維壁厚及び傾斜角等の、重要な繊維の特性の知識は、それ故、所望の最終用途に対して最適な資材を特定し、また選択するために重大な意味を持つ。不幸なことに、繊維サイズが顕微鏡的であるため、繊維壁厚及び傾斜角の両者共、測定が困難である。更に、全ての繊維特性は、本質的に不均一である。繊維特性の分布に関する情報は、パルプ中の不均一性の程度をマップ化し、また、ある特性を持つ繊維の量の同定を可能にするので、パルプ品質の制御において非常に重要であると考えられている[2]。この様に、パルプ中の壁厚及び傾斜角等の個々の繊維特性を定量化するための迅速な技術を考え出すことは、極めて重要である。
【0004】
最近、新しい機器、カヤーニファイバーラボ(Kajaani FibreLab)繊維解析器が、キャピラリチューブを貫流する繊維の繊維巾及びセル壁厚の測定をもたらしている[P1]。この機器の原理は、繊維の、投影された二次元画像に基づいている。この測定技術は、数十ミクロンの範囲の寸法を持つ繊維巾に対して非常に適合している。しかしながら、この直接撮像技術は、1μm未満から数μmまで大きく変わる繊維壁厚の正確な測定に対しては、多くの困難に直面している。最近の研究は、カヤーニファイバーラボからの繊維壁厚測定は甚だしく不正確であることを示している[7]。
【0005】
木材パルプ繊維の壁厚を決定するための最も信頼できる現行の技術は、繊維断面画像に基づいており、これは、調製された繊維断面上の走査型電子顕微鏡(SEM)によって作り出すことができる[8]、又は共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)の光学的断面化能を使用して非破壊的に作り出すことができる[9]。画像解析と組み合わせると、これらの技術は、壁厚等の、個々の繊維の横方向寸法を正確に測定することが可能である[4]。この技術は、繊維の横方向寸法に関する貴重な情報を提供し、また、良好な研究手段ではあるが、大半の実際的な工業目的に対してはあまりにも遅い。斯くして、個々の木材パルプ繊維の壁厚を測定するための迅速、かつ正確な技術は、未だ欠けている。
【0006】
先に述べた通り、傾斜角は、もう一つの重要な繊維特性である。木材パルプ繊維中の傾斜角を測定するために、偏光顕微鏡法[10]、直接観察[11]、ミクロラマン分光法[12]、細長い孔口の方位[13]、及び最近年の偏光共焦点顕微鏡法[13]等の、幾つもの方法が開発されている。これらの技術は傾斜角の測定を提供できるが、これらも非常に遅い。
【0007】
偏光顕微鏡法に基づく技術は、木材パルプ繊維中の傾斜角の測定に、長年用いられてきた。これらの技術は、セルロース小繊維の天然の複屈折、及びミクロフィブリルに平行及び直角の方向において等しくない遅延/屈折率を利用している。繊維壁の単層中の小繊維の方向は、交差した極の間の壁を検査することにより、容易に得ることができる。しかしながら、この手法は単壁を必要とする。螺旋状に巻いた繊維の反対側の壁が妨害するので、非修飾繊維には使用できない。この困難性は、例えば、有縁壁孔を介して単壁を観察することにより、又は、長さ方向にミクロトームで切断して得られた単壁を検査することにより、克服されてきた。パルプ繊維に関する方法は、ページ(Page)[10]により開発され、繊維の細胞間隙に挿入された水銀からの反射光によって、単壁を観察する。S2層の傾斜角は、交差した極の間で観察される(単)壁に関する消光位置から決定される。原理的には簡単だが、この技術は面倒であり、また運まかせで、並びにS1及びS3層からの誤差に晒される[14]。
【0008】
最近年において、イェ等(Ye et al.)[15、16、18]及びイェ[P2,17]による、透過偏光分析法に基づく開発が、非修飾木材パルプ繊維のS2層の位相遅延Δ、及び傾斜角θを非破壊的に決定できると主張した。彼らの方法には多くの制限がある。上記方法の一つの主な短所は、S1及びS3層の影響が無視されていることである。実際は、ページ等[19]が示している通り、非修飾軟質木材繊維の複屈折に対する、横に巻き付いたS1及びS3層の影響は、特に薄壁の繊維に対して、顕著である。エル−ホセイニィ等(El-Hosseiny et al.)[14]によっても、複屈折性のS1及びS3層薄いが、偏光法に基づく傾斜角の測定において無視できないことが示されている。それ故、複屈折性のS1及びS3層の影響を無視することは、壁厚及び傾斜角の両者の測定に関して重大な誤りを生じさせる。更に、イェの論文[17]において論じられている通り、イェ等[15、16]及びイェ[P2]による、偏光子−試料−検光子配置、及び数学的解析に基づく方法には、多くの制限がある。例えば、イェの方法[P2]における繊維試料は、偏光子に対して所定の方位に配列させなければならない。更に、Δ及びθを計算するために、偏光子の方位を固定して、種々の検光子の方位で少なくとも4強度での測定が要求される。Δ及びθに関して誘導される式は二次なので、Δ及びθに関する結果は曖昧である。この曖昧さを回避するため、測定は、少なくとも2つの波長に関して行わなければならず、また、使用者は、2つのグループの中間の結果から、物理的に関連する結果を区別する必要がある。この方法は不確かであり、また、データの誤った解釈に導き得る。全てのこれらの制限のため、これは、自動の、そして、疑いなくオンラインシステムにおいて、役に立たないであろう。ミュラー行列偏光解析法(Muller matrix polarimetry)に基づく新しい、改良された技術がイェ[17]により提案された。イェは、このより新しい方法は、一波長での測定から、Δ及びθの定量的及び非破壊的な決定を可能にし、また、彼のより新しい方法の一つの利点は、測定から繊維の方位も得られるので、方位が異なる幾つかの繊維を同時に測定できる可能性である、と主張した。しかしながら、この方法は、なおも、異なる角度に向けられた検光子、偏光子、及び/又はリターダーにより得られる多くの測定を必要とし、また、静止している繊維に対する測定をするために非常に長時間かかる。これらの技術は両者共、非常に時間を消費し、また、オンライン型の機器には不適である。
【0009】
複屈折性繊維の撮像のため、偏光フィルターを使用して可視のコントラストを作り出すことは、新しくはない。カヤーニ繊維長解析器(カヤーニエレクトロニクス(株)、フィンランド)、及びファイバークォリティーアナライザー(オプテスト、カナダ)(Fibre Quality Analyser; OpTest)[P3]等の、多くの市販の繊維長解析器は、木材繊維の長さ及び/又は形状の測定に関してこの様な光学的技術を採用している。キャピラリー管又は貫流セルを貫流しながら、個々の繊維は撮像される。これらの機器は繊維長を迅速に測定できるが、繊維壁厚又は傾斜角の測定ができない。それ故、繊維長の測定と同様の手法で個々の繊維の繊維壁厚及び傾斜角を測定するための迅速かつ正確な技術の開発が、なおも必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、円偏光顕微鏡法に基づく非破壊的光学技術を用いて、繊維壁厚及び傾斜角を測定するための、新らしい、迅速な技術を開発することを目的とする。この新らしい発明は、単繊維の測定に基づいているので、繊維特性の分布を決定する手段を提供する。繊維の特性は、このシステムから発せられる複数波長光の強度の解析により、決定される。この新らしい発明は自動化でき、また、繊維貫流システムに実装することができるので、木材繊維特性の迅速な評価(リアルタイムのオンライン)を可能にする。
【0011】
(発明の開示)
本発明は、多層化複屈折性試料、例えば木材パルプ繊維の光学的及び物理的特性を決定するための方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、特に木材パルプ繊維において、多層化複屈折性試料の異なる波長における位相遅延、及びその光軸の方位を測定するための新らしい方法及び装置を提供することも目的とする。
【0013】
更に、本発明は、特に木材パルプ繊維において、多層化複屈折性試料の位相遅延を、異なる波長において同時に、並びに、その光軸の方位を、非破壊的に、迅速、簡単及び正確に測定することが可能な方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の一態様において、複数の波長を有する円偏光光束を作製する段階、ここで、複数は、少なくとも、評価中の多層化試料において決定すべきパラメータの数と同じである;評価すべき前記試料に前記円偏光光束を当てる段階;前記試料から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び、前記発せられる波長の光強度から少なくとも一のパラメータを決定し、及びそのデータを、その試料を記述する等式と適合させる段階、を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延及び光軸の方位から選択される少なくとも一のパラメータの決定方法が提供される。
【0015】
本発明の他の態様において、少なくとも2つの波長において、円偏光システム光束を作製する段階;前記円偏光光束を測定すべき木材繊維に当てる段階;前記木材繊維から発せられる波長の光強度を記録し、測定する段階;及び、相対的位相遅延、及びこれをもとにして壁厚と、木材繊維から発せられる波長の光強度から木材繊維のS2傾斜角を決定する段階、並びに前記データを、前記木材繊維を記述する等式と適合させる段階、を含む、繊維の縦軸に対して横向きに配位されたミクロフィブリルを有する2つの外側層S1及びS3、及び傾斜角で螺旋状に巻かれたミクロフィブリルを有する中間の支配的な層S2の、S1、S2及びS3の3層から成る壁を有する非修飾木材繊維の、壁厚に関連する相対的位相遅延、及び傾斜角を決定する方法が提供される。
【0016】
本発明の更に別の態様において、多重波長光を提供するために有効な光源、前記光源からの光から円偏光光束を生成させるための円偏光システム、前記システムの、前記生成された円偏光光束の光路中に試料を設置するための手段、前記試料から発せられる光の光強度を決定するための手段、及び前記発せられた光強度から試料の特性を決定するための処理手段を含む、試料の相対的位相遅延、又は光軸の方位を決定するための装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法は、円偏光により暗視野又は明視野において実施できる。
【0018】
光源は、典型的には多重の所定の、及び明確な波長のものであり、また、所定の波長の数は、適切には、少なくとも決定すべきパラメータの数と同じである。
【0019】
本方法は、相対的位相遅延、又は試料の光軸の方位、若しくは両者を決定するために適切に使用され得る。
【0020】
使用される円偏光システムは、適切に偏光子及び検光子、偏光子及び検光子の両者は線形偏光子であって良い、及び、光源の全所定の波長にわたる作動波長範囲を伴う、一対の調和した色収差の無い1/4波長リターダーから成る。リターダーの光軸は、相互に90°の方向を向き、偏光子及び検光子に対して45°の向きである。
【0021】
試料から発せられる光の光強度を決定するために、本装置は、適切に、顕微鏡偏光撮像用のコンデンサ及び対物レンズ、画像捕獲器、これは適切には多波長検出器、又はカメラ、例えばマルチチャンネルのデジタルカメラで良い、個々の、所定の波長における光強度を決定するための多重画像用画像プロセッサ、並びに、例えば、多重画像解析用及びデータ解析に重要な領域の識別用解析器プログラムを有する画像解析器を含む、画像処理並びに画像及びデータ解析システムを包含する。
【0022】
データ解析は、測定されている試料を記述する等式を伴う円偏光システムから発せられる多波長データの強度から、特性、特に試料の相対的位相遅延及び光軸の方位を決定するための非線形のフィッティングルーチンにより、適切に行われる。
【0023】
適切には、光源は、十分に分離された、しかし、なおも色収差の無い1/4波長リターダーの許容作動波長範囲である、多くの所定の波長を提供する。所定の波長は、適切には250nmから1000nmの範囲にわたって良い。
【0024】
多層化複屈折性試料は、木材及び非木材繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から成るセルロース系繊維から適切に選択される。
【0025】
本発明の特別な有利性は、試料を、それが設置される円偏光光束に対して位置決め又は配向する必要が無いことである。同様に、発せられる光の検光子を、例えば回転により、調節する必要が無い。
【0026】
試料は、斯くして、光束中で非制限的配向状態にある。
【0027】
斯くして、一態様において、この発明は、多層化複屈折性試料の異なる波長における位相遅延、及びそれらの光軸の方位の両者、特には木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角を決定するための解として、新らしい偏光法を提供する。
【0028】
システムにおいて必要な個別の波長の数は、測定される試料の未知のパラメータの数に依存する。
【0029】
本方法に使用する機器は、a)所定の多波長光源、b)円偏光顕微鏡法システム、c)所定の多波長光強度検出用のマルチチャンネル撮像システム、例えばカラーデジタルカメラ、及びd)画像解析及びデータ解析システムから成る。
【0030】
本円偏波システムは、偏光子、検光子、及び測定の波長領域における一対の「調和した」1/4波長の色収差の無いリターダーから、適切に成る。これらの要素は、暗−又は明−視野(即ち、暗い、又は明るい背景)を伴う円偏光システムを提供する様に配置できる。
【0031】
この発明は、異なる波長における多層化複屈折性試料の位相遅延、及び同時にそれらの光軸の方位、特には木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角を測定する方法を提供し及び実施するために、主に、異なる波長における試料の複屈折特性、及び装置又は測定機器に依存する。
【0032】
木材繊維のほかに、この測定技術は、非木材繊維等の、任意の他の単-及び多−層化複屈折性試料、例えば綿、カラムシ、ケナフ及び亜麻繊維等を特徴付けるために適している。
【0033】
図l(a)及び(b)は、(a)単木材繊維の層構造の略図を示し、また、(b)本発明において使用する非修飾繊維を説明するためのモデルを図解する。各繊維壁は3層、異なる厚さtsl、ts2及びts3を持つ3つの複屈折性層により代表されるS1、S2及びS3層から成る。S1及びS3に関する光軸の方向は繊維軸に対してほぼ90°だが、この角度は、S2層に関してはθ°である。2つの対向する繊維壁は同じ壁厚を持つが、S2層中で逆のθ(即ち、±θ)と仮定する。
【0034】
図2は、非修飾木材繊維の壁厚及び傾斜角等の、多層化試料の厚さ及び光軸を決定するためのシステムの模式図を示す。
【0035】
図3は、多数の、所定の及び明確な単波長から成る、多波長光源に関する模式図を示す。
【0036】
図4(a)、(b)及び(c)は、暗視野円交差偏光システムの下に撮像された非修飾繊維の種々のδn・ts2及び傾斜角に関する理論的な強度マップを示す。異なる入射光波長(a)450、(b)530及び(c)640nmによる3つの強度は、S1及びS3の厚さを、それぞれ0.2及び0.05μmに設定したときに、等式(19)に従って導かれる。上端x軸の目盛は、複屈折δnを0.056に設定したときのS2層の厚さとしてプロットされている。
【0037】
図5は、異なる波長間で強度は異なるが、同じ相対強度を持つ3セットのデータを示す。このグラフのデータは、図4のδn、S1及びS3に関する基準セットに続く。示された線は、等式(19)に従う波長の関数としての強度である。
【0038】
図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)は、波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステムで撮像された、無漂白のダグラスファー及び西欧赤杉の化学パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真(a)、(b)及び(c)は、水中に浸漬した濡れた繊維の画像であり、並びに(d)、(e)及び(f)は、同じ繊維を乾燥した後の画像である。印をつけた2個所は、本壁厚及び傾斜角の決定方法を説明するために使用される。
【0039】
図7は、図6(a)で印をつけた位置1及び2に関する、透過光強度対3波長450、530及び640nmをプロットしている。繊維中のこれら2個所に関する壁厚及び傾斜角は、図示の通り、これらのデータに対する等式(19)の最良適合から決定される。複屈折及びS1+S3の厚さは、それぞれ、0.0553及び0.25μmに設定されいてる。
【0040】
図8は、図7に示した、濡れた、及び乾燥した同じ木材繊維から決定された壁厚の比較である。0.98の決定係数R2は、濡れた、及び乾燥した繊維から得られた測定の間の強い相関を示す。
【0041】
図9(a)、(b)及び(c)は、(a)波長450、530及び640nmでのCPLMシステムにおける繊維断片の顕微鏡写真、(b)繊維断面から作られた共焦点断面画像、及び(c)CPLM顕微鏡写真の解析により決定された二倍の膜厚、及びCLSM画像から作られた頂上の壁厚を示す。
【0042】
図10は、共焦点断面画像対種々の無漂白及び漂白化学パルプ繊維に関するCPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚を示す。線形適合も示され、これらの勾配Sは、全データに関して1に近い。
【0043】
図11は、濡れた化学パルプ繊維に関して、孔口の方位対CPLM法により測定された傾斜角を示す。
【0044】
図12(a)及び(b)は、繊維を水中に浸漬して、波長530nmの暗−及び明−視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。これらの繊維は、長繊維長断片に由来した。
【0045】
図13(a)及び(b)は、暗−及び明−視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚を示す。線形適合も示され、これらの勾配は1より小さいことが見いだされている。
【0046】
図14は、暗−及び明−視野CPLM法の同時測定を可能にする、図2に記載したシステムの最後の部分に関する模式図を示す。
【0047】
図15(a)及び(b)は、暗−及び明−視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(詳細な説明及び好ましい態様)
本発明の技術の原理は、非修飾木材パルプ繊維等の複屈折性試料を通り抜ける光の偏りの変化を測定することに基づいている。入射光が、複数の波長を伴う十分に明確な偏りを持つなら、発せられる多波長の光の偏りの測定は、木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角等の、多層化試料の厚さ、及びそれらの光軸の方位を決定する手段を提供する。先ず、木材パルプ繊維を包含する多層化試料の偏り伝播特性を説明する。偏りの変化は、光の波長、並びに試料中の各層におけるセルロース系ミクロフィブリルの複屈折、壁厚及びミクロフィブリルの方位に依存する。
【0049】
(木材パルプ繊維の光学的特性)
ジョーンズ行列形式は、偏光システム下で試料を通って伝播する光を記述するために用いられる[20、21]。もし材料の全ての光軸が光束の伝播方向に直角に置かれているなら、その材料の伝播特性を説明する2×2のジョーンズ行列Tは、
である。
【0050】
ここで、その要素Tij−a、b、c、dは、一般的に複素変数である(例えば、a=a1+ja2)。試料、即ち複屈折を持つが吸収を持たない光学システムに関して、ジョーンズ行列Tはユニタリーであり、その要素Tijは以下の特性を持つ。a2+b2=1、a=d*、及びc*=−b(星印記号「*」は複素共役を示す)。例えば、aはdの複素共役、即ち、a=a1+ja2=d1−jd2である。
【0051】
例えば、セルロース系ミクロフィブリルに平行な方向等の、縦軸から角θで配向している光軸を伴う単層複屈折性試料に関しては、ジョーンズ行列は、
であり、ここで
は回転行列であり、また、
は相対的位相遅延である。光軸に平行及び直角の方向に沿う電気ベクトルの成分は、異なる量、それぞれ、Δ‖=2πtn‖/λ及びΔ^=2πtn^/λだけ遅延する。tは層の厚さ、λは入射単色光束の波長である。n‖及びn^は、光軸、木材繊維の場合はミクロフィブリル方向、に平行及び直角の屈折率である。量(n‖−n^)=δnは試料の複屈折と呼ばれる。等式(2)は、
と表される。
【0052】
これは、図l(b)に示した木材繊維中の層等の、光軸を一本だけ持つ複屈折性試料の伝播特性を記述するためのジョーンズ行列である。木材繊維は、異なるミクロフィブリル方位、即ち異なる光軸、並びにリグニン及びヘミセルロースのマトリクス中に埋め込まれた異なる厚さを持つ、セルロース系ミクロフィブリルの多くの層で作られている。n層の結合効果は、ジョーンズ行列を伴う一つのシステムと等価である[20]。
Tcomb=Tn(Δn,θn)Tn-1(Δn-1,θn-1)…T2(Δ2,θ2)T1(Δ1,θ1) (6)
【0053】
木材パルプ繊維は2つの壁からなり、各壁は3つの複屈折性層S1、S2及びS3に分離されている。単壁に関する伝播行列Twallは
Twall=T(Δs3,θs3)T(Δs2,θs2)T(Δs1,θs1) (7)
である。ここで、光はS1層を最初に、S3層を最後に通って伝播する。θsl、θs2及びθs3はこれらの光軸の方位であり、Δsl、Δs2及びΔs3は、それぞれS1、S2及びS3層の相対的位相遅延である。
ここで、tsl、ts2及びts3、並びにδnsl、δns2及びδns3は、これらの各層の厚さ及びミクロフィブリルの複屈折である。S1層は、一般的に、S及びZ螺旋が交互の、傾斜角が70−80°の数層から成ると考えられている。この様な構造の光学的挙動は、傾斜角が90°の単層とほぼ等価である[14、19]。即ち、S1のフィブリルは、繊維軸に垂直であると近似できる。S3層は同様に扱える。それ故、θsl=θs3=π/2が設定される。単壁を記述するためのモデルを図l(b)に示す。S2層中の小繊維の方位θs2=θに関しては、図1(b)に示した単繊維壁に関するTwallは、
である。ここで、行列要素は
である。
【0054】
測定される木材パルプ繊維に関して、全ての層で、対向する繊維壁は同じ壁厚を持ち、及び、S2層中のこれらのミクロフィブリルは、対向するS2層のミクロフィブリルの方向が交差する様な角度で、螺旋状に繊維軸の周りに巻き付いていると仮定する。光軸、傾斜角がθの方位であるS2層を記述するためのジョーンズ行列は、T(Δs1,π/2)T(Δs2,−θ)T(Δs3,π/2)である。それ故、同じ膜厚を持ち、けれどもS2層中の傾斜角が交差する、2つの繊維壁から成る、図l(b)に示した非修飾木材パルプ繊維を記述するジョーンズ行列は、
と書くことができ、ここで、伝播行列の要素は
である。
【0055】
木材繊維に関して、セルロースミクロフィブリルは強い複屈折を示すが、可視光領域での吸収は大したことはない。ミクロフィブリルを埋め込んでいる、リグニン及びヘミセルロースを含有するマトリクスは、可視又はより長波光の領域で弱い吸収を持つが、これは無視できる。埋め込んでいるマトリクスからの吸収が顕著な波長領域で行われる測定の場合[18]、本発明は、なおも適用できる。リグニンの吸収特性は二色性ではないので、伝播行列において、吸収項は複屈折項から切り離すことができる。例えば、
T=T(吸収)T(複屈折行列) (11)
【0056】
ランバート・ベール則に従い、吸収項T(吸収)=exp(−2κ(λ)t)は、伝播される光の全体強度に影響できるだけのスケール計数である。κ(λ)は波長λに依存する減衰係数であり、及び、tは繊維壁厚である。この吸収項T(吸収)は、規定された波長の偏光されていない伝播光により決定でき、又はκ(λ)及び試料の複屈折の正確な評価のための壁厚から決定できる。可視光領域における木材繊維の吸収等の、吸収が非常に弱い試料に関しては、T(吸収)は1に設定される。後述する通り、この方法の測定は相対的多波長強度に強く依存するので、測定した試料に未知の吸収があっても、特に繊維壁厚測定に関する結果は、影響されないであろう。
【0057】
(円偏光システム)
暗−又は明−視野円偏光システム等の円偏光システムは、この測定原理を実現するために使用される。この測定システムは、光が円偏光しているので、試料方位と無関係である。更に、この様な偏光システムにおける相対的位相遅延及び傾斜角を決定するための新規な、比較的簡単な解が、同じ膜厚の2つの対向する壁と、しかしS2層において交差する傾斜角θを伴う非修飾繊維に関して開発されている。
【0058】
正確に配位された直線偏光子と1/4波長リターダーは、円偏光子を形成するであろう。図2は、試料として挿入されたパルプ木材繊維を伴う円偏光顕微鏡法(CPLM)システムを記述しながら、本発明に従う機器を模式的に図解する。この機器は、多波長光源ユニット1、適切な結像光学系2を伴う円偏光システム、多波長光強度を検出するマルチチャンネル検出器又はカメラ10、並びに画像処理及びデータ解析ユニット11を含む。
【0059】
円偏光システムは、一対の偏光子である直線偏光子P3と検光子A9、及びこれらの偏光子の間にある、図示した通り、相互に90度、及び偏光子に対して45度に方向付けられたそれらの光(速)軸Fを持つ、2個の調和した正確さの色収差の無い1/4波長リターダーQ454及びQ−458から成る。このCPLMは、図2に示した様に2個の偏光子が交差した時に暗視野システムであるが、2個の偏光子が平行の時に明視野システムである。測定の精度要求を満たすために、2個の正確に色収差の無い、遅延がλ/4±λ/100の1/4波長リターダーが必要であり、及び、この対は、任意の所定の波長において、λ/200遅延範囲内で釣り合わされている。試料6は、静的測定に関してはステージ上に置くことができ、又は、現存する市販の繊維長解析器の様に、繊維貫流システムを通り抜けていることができる。検査中の繊維試料6は、2個の円偏光子の間に置かれる。入射円偏光は、コンデンサ5を通り抜けて試料6に焦点を結び、及び、測定すべき試料は、偏光用途に適した対物レンズ7によって拡大され、撮像される。この多波長画像は、カラー電荷結合素子(CCD)カメラ10等のマルチチャンネルデジタルカメラ、又は選択された波長用の、他の適切な光学素子及び検出器によって捕捉される。異なる波長の伝播光強度は、木材繊維における壁厚及び傾斜角等の、検討中の試料の相対的位相遅延及び明確な光軸の方位を決定するために、下に説明する新規な解法に従って、解析されるであろう。
【0060】
図3に示す様に、光源ユニット1は、システムに、多数の所定の、及び明確な単波長の入射光を提供する。これらの単波長は十分に分離される様に選ばれるが、それでも、そのシステムのために選択された、一対の色収差の無い1/4波長リターダーの、許容できる作動波長範囲内に無ければならない。例えば、本発明の実験に用いられた一対のリターダーは、450nmから640nmの範囲の作動波長を持っていた。入射光束には、3つの波長、450、540及び640nmを選んだ。多波長光源ユニット1は、各々が明確な単波長発光を持つ、レーザー類や多数の発光ダイオード(LED)12から成って良い。それは、各フィルターが明確な波長を持つ、一組の狭帯域通過緩衝フィルター13を備えた広帯域光源であっても良い。異なる光源は、集光レンズ14により、マルチトラックのファイバー光学系15の入力へと纏められる。多波長光源は、次いで、ファイバー光学系16の出力で単光源へと導かれる。
【0061】
ジョーンズの計算法に従って、図2に示した偏光子P及び検光子Aに関するジョーンズ行列は、
であり、また、45度及び−45度に方位付けされた1/4波長リターダーの速軸に関する行列は
である[21]。
【0062】
検光子から現れる光束の電場ベクトルEは、図2に示した、挿入された、行列Tで記述されるサンプルを伴う暗視野円偏光システムに関して、
であり、ここで、I0は試料に入射する光の強度であり、明視野円偏光システムの配置の下(図2で説明した偏光子3及び検光子9が平行)、試料が挿入されていないときに決定できる。暗視野円偏光システムにおける伝播光強度Idarkは、以下の様に得られる:
ここで、a2、b2は、それぞれ、要素a、bの虚数部分である。
【0063】
暗視野の場合と同様に、本発明は、明視野円偏光システムにおいても容易に実現できる。この場合、伝播光強度Ibrightは
【0064】
であり、ここで、a1、b1は、それぞれ、要素a、bの実数部分である。明−及び暗−視野は、相互の反転である。
ここで、等式(5)の行列中の要素a2、b2が用いられている。試料が円偏光システム下にあるので、強度はΔのみに依存し、θには依らない。
【0065】
相対的位相遅延がΔsl、Δs2及びΔs3のS1、S2及びS3層の単繊維壁、及びS2層中にθの光軸を持つ等の、多層化試料に関しては、伝播光強度は、
であり、ここで、等式(9)の行列中の要素a2、b2が用いられている。もしΔsl及びΔs3の両者をゼロに設定すると、単層に関する強度が得られ、等式(18)は等式(17)に低減される。
【0066】
S1、S2及びS3層において同じ厚さで、しかし木材繊維のS2層の傾斜角等の、±θの光軸を持つ、2つの対向する壁を持つ非修飾木材パルプ繊維に関して、伝播光強度は、
であり、ここで、等式(5)の行列中の要素a2、b2が用いられている。この等式は、決定されるべき4つの未知のパラメータ、Δsl、Δs2、Δs3及びθを有する。S3層は非常に薄い(<0.01μm)ことが知られており[1、14、19、23]、それ故、上記等式中、初めの2つの項に比べて、最後の項は無視できる。それ故、S1及びS3層の相対的位相遅延は、一個の未知のパラメータΔsl+Δs3として近似的に扱うことができる。これは、未知のパラメータを3個に減らすであろう。この3個の未知のパラメータを決定するために、検討中の木材繊維に関して、3つの異なる波長における伝播光強度Ifibre,darkを同時に測定できる様に、入射光束に、最低限、3つの異なる所定の波長が要求される。3個の未知のパラメータは、斯くして、Ifibre,darkに対して等式(19)を最良適合させることにより決定することができ、及び、これをもとにして、この適合から繊維の壁厚及び傾斜角θを決定することができる。等式(19)は非修飾木材繊維の繊維特性の解析用に使用されるであろう。
【0067】
もしS1及びS3層が無視され、及びイェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]における様に、繊維中の2つの対向するS2層だけが考慮されると、等式(19)は
Ifibre,dark(Δs1=0,Δs2,Δs3=0,θ)=I0sin2Δs2cos2(2θ) (20)
となることに注目することは興味深い。
【0068】
線形偏光の場合[P2]、又はミュラー行列偏光解析法[17]において導出される対応する式と比べて、伝播光強度を非修飾繊維に関するΔs2及びθに関連づけるこの等式は、予想外に簡単である。もしS1及びS3層の影響を考慮すると、イェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]により記述された方法における式は、本発明における等式(19)と比べてもっと複雑であると予測される。それ故、データの解釈はもっと複雑になると思われ、また、信頼性のある測定の抽出は不確実である。
【0069】
等式(4)に記述されている様に、S1、S2及びS3層における相対的位相遅延Δsl、Δs2及びΔs3は、それらそれぞれの層における厚さとミクロフィブリルの複屈折の積、tslδnsl、ts2δns2及びts3δns3に依存する。化学的組成と分子配位に関連するこれらの層の複屈折は、等しいと、即ち、δnsl=δns2=δns3=δnと仮定する[14、19]。これらは、更に、同様のパルプ化及び製紙処理が施された同種のパルプの繊維に関して定数であると仮定する。幾つかの種に関しては、ページ等[19]によって、それらの複屈折が似ていることが示されている。ミクロフィブリルの複屈折δn=(n‖−n^)は、大半のパルプ繊維に関して0.04−0.06であることが見いだされている[19、22]。
【0070】
図4は、3つの波長、(a)450、(b)530及び(c)640nmの理論的伝播強度マップを、暗視野CPLMシステムにおいて、非修飾繊維のδnts2及び傾斜角の関数として示す。これらは等式(19)に従って作り出され、S1及びS3層の厚さは、それぞれ、大半の軟質木材繊維に関してS1及びS3層の典型的な平均厚さである[1、14、19、23]、0.2及び0.05μmに設定されている。上端のX軸の目盛は、化学パルプ繊維に関する複屈折δnを0.056と設定[19]したときのS2層の厚さts2としてプロットしてある。これは、木材繊維の壁厚及び傾斜角が異なると、異なる波長で伝播強度が異なることを、写実的に示している。それ故、伝播強度を、図4の種々の波長の強度マップに一致させることにより、繊維壁厚及び傾斜角を正確に、かつ一意的に決定できる。「一致させる」とは、ここでは、測定された強度に対する等式(19)の最良の非線形適合を意味する。
【0071】
図4の強度マップにおいて、傾斜角は全体の伝播強度に、より依存するが、繊維壁厚測定は種々の波長における相対的伝播強度に、より依存することに注目することが大切である。もし図4における450nm(赤)、530nm(緑)、及び640nm(青)の3つの強度マップを纏めてカラーマップを形成すると、繊維壁厚が類似する繊維には、それらの傾斜角とは無関係に、多かれ少なかれ、同じ色が付随する。これは、強度は異なるが異なる波長間で相対的強度が同じである3組のデータを示している図5において、更に、例証できる。データセット1は、強度が、データセット2より1.5倍高く、データセット3より3倍高い。これらの3組のデータは異なる傾斜角に対応し、これらは強度が減少すると増大するが、図示の通り、S2層の類似の壁厚(ts2)、2.445、2.383及び2.287μmに対応する。これは、繊維壁厚の測定に関する本技術の頑健性を実証している。伝播光強度を減少させる光吸収等の、他の光学的現象は、実際に、測定の精度には影響しないであろうからである。この技術の頑健性は多くの例によって確認されており、以下に、幾つかを検討する。
【0072】
図6は、波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステム中で撮像した、ダグラスファー及び西欧赤杉化学パルプ繊維の濡れた、及び乾燥した無漂白の混合物の顕微鏡写真を示す。これらの顕微鏡写真は、開口数が0.25(N.A.=0.25)の10×対物レンズで撮った。図6(a)、(b)及び(c)は、水に浸漬した、濡れた繊維の顕微鏡写真であり、並びに、図6(d)、(e)及び(f)は、乾燥後の同じ繊維の顕微鏡写真である。乾燥された繊維は、これらの顕微鏡写真を撮る前に、液浸油中に入れて、乾燥繊維試料中の光散乱を最小にした。これらの顕微鏡写真に示される通り、同じ波長で撮られた、対応する濡れた、及び乾いた繊維は、非常に似ている強度を持つことが示されていることが明らかである。このことは、次に示す通り、本測定は、濡れた、又は乾いた条件で行われても、同じに違いないことを強く示唆している。
【0073】
図6に示した、2本の繊維に印を付けた2個所は、暗視野CPLMシステムから得られた異なる波長の光強度から、如何にして壁厚及び傾斜角が決定できるかを実証するために使用する。これら2個所の領域の強度対波長を図7にプロットしている。3つのパラメータ、ts2、θ及びtsl+ts3は、3つの波長における強度に対する、等式(19)の非線形適合により決定される。この図に示した最良適合は、軟材化学パルプ繊維において通常見られる値、δn=0.0553[19]、及びtsl+ts3=0.25μm[1、14、19、23]と設定することにより得られた。次いで、tsl+ts2+ts3として、繊維壁厚を計算する。位置1に関する壁厚及び傾斜角は3.9±0.2μm及び14±3°であることが見いだされ、並びに、位置2に関しては1.6±0.1μm及び2±2°であることが見いだされた。
【0074】
図6に示した濡れた、及び乾いた繊維の多くの異なる場所を、壁厚及び傾斜角について評価した。図8は、同じ濡れた、及び乾いた繊維の顕微鏡写真における、対応する範囲から決定した壁厚を比較する。全ての測定は、繊維の中央領域で行った。濡れた、及び乾いた繊維からの測定の間に強い相関が示されており、並びに、0.98の決定係数R2が見いだされた。これは、本発明が、濡れた、又は乾いた木材繊維から、似た壁厚測定を提供することを強く裏付けている。光散乱がより少ない液浸油中の乾燥繊維、及び光散乱がより多い水中の濡れた繊維から似た結果が得られる点で、本方法の頑強性を実証している。
【0075】
図9(a)は、40×、N.A.=0.65の対物レンズを用いて、暗視野CPLMシステムで撮像した、厚壁のダグラスファー化学パルプ繊維の小断片の、波長450、530及び640nmにおける3枚の顕微鏡写真を示す。図9(b)は、共焦点レーザー走査顕微鏡法を用いて、非破壊的に作り出した図9(a)の繊維断片の断面画像を示す。2倍の壁厚、2(tsl+ts2+ts3)を、図9(a)に示した顕微鏡写真から、δn=0.0553及びtsl+ts3=0.25μm[1、14、19、23]である繊維断片の場所を横断して、決定した。繊維を横断する垂直の厚さを、図9(b)の共焦点断面画像から決定した。これら2つの壁厚の形状を図9(c)に示す。これら2つの壁厚測定技術は、特に平らな領域に関して非常に良く一致する。これは、木材繊維の壁厚決定に関するCPLM技術の有効性を強く支持する。繊維端部が生じる領域からは、相対的により貧弱な一致がもたらされている。これは、端部を伴う領域で生じる強い光散乱により、説明できる。それ故、繊維壁の端部からの光散乱の影響及び効果を最小にするため、特に、もし測定する繊維が水中に浸漬されているなら、測定を、繊維の平らな領域、又は中央の領域で行うのが最良である。平らな領域は、それらの領域において似た膜厚を暗示している、CPLM画像において均一に分布した強度により、容易に見分けることができる。
【0076】
図10は、種々の化学パルプ繊維に関してCPLM法から決定した、共焦点断面画像対繊維壁厚測定から測定した繊維壁厚を示す。ダグラスファー、西欧赤杉及び西欧トウヒは、異なる3種の軟材種の無漂白化学パルプ繊維であり、一方、軟材、サザンパイン、及び硬材、アスペンは十分に漂白した。全てのCPLM顕微鏡写真はN.A.=0.25のl0×対物レンズを用いて作りだし、及び、同じ複屈折特性δn=0.056[19]を用い、本発明において説明したCPLM法を用いて全繊維試料の壁厚を決定した。図10に示したデータは、本発明、新しいCPLM法と、繊維壁厚測定に関して十分に確立されたCLSM法[9]との間の強い相関を、明瞭に実証している。更に、これら2つの測定を関係付ける線形適合の勾配は、およそ1であることが示され、多種の木材パルプ繊維に関して、複屈折は非常に似ていること、及びδn=0.056が適切であることを実証している。これは、種々の木材繊維の壁厚の測定に関して、本発明の正確さ、頑強性及び簡便性を、明瞭に実証している。
【0077】
繊維壁中のS2層の傾斜角を近似するために、繊維軸と細長い孔口の主軸との間の角度測定が用いられている[13]。湿ったクロトウヒ化学パルプ繊維における孔口の方位は、透過光顕微鏡法を用いて測定された。これらの繊維の傾斜角も、本CPLM法により決定された。これら2つの方法に由来する結果を、図11で比較している。傾斜角として孔口の方位を正確に決定することに伴う困難、及びこれらの孔から離れた平らな領域で行われたCPLM測定にも拘わらず、これら2つの方法の間の相関、R2=0.94は、高いと考えられる。更に、線形適合の勾配は0.98であることが見いだされている。これは、本木材繊維の傾斜角の測定法が妥当であることを支持している。
【0078】
本方法は、機械パルプ繊維にも適用できる。化学木材パルプ繊維とは違い、機械木材パルプ繊維ははるかに高い収率を持ち、また、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質のマトリクスの大半を保持している。更に、繊維壁は、機械的精製の間に変貌する。繊維中のリグニン含量がより高いと、光吸収を増大させることができ、また、外側のフィブリル化等の精製効果は、過度の光散乱を作り出し得る。本方法を機械パルプ繊維に適用することは、難問であり得る。光吸収及び散乱がない場合、等式(16)に示す通り、暗−及び明−視野は相互の反転である。しかしながら、もし光吸収及び散乱があると、それらは暗−及び明−視野CPLM強度に対して相反する効果を持つ:
Idark=k・Idark(複屈折)
Ibright=k・Ibright(複屈折)=k・(1-Idark(複屈折)) (21)
ここで、κは光吸収及び散乱の効果に関する係数であり、もしこれらが無視できれば、その値は1に等しい。Idark(複屈折)及びIbright(複屈折)は、試料のこの特性のみを考慮したときの、暗−及び明−視野CPLMシステム下の伝播光強度である。
【0079】
図12は、波長530nmで、(a)暗視野、及び(b)明視野CPLMで撮像した濡れたクロトウヒ機械パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。図13は、図12に示した繊維に関する、共焦点断面画像対(a)暗視野、及び(b)明視野CPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚を示す。機械木材パルプ繊維の複雑性にも拘わらず、両方のグラフは、なおも、暗−及び明−視野CPLM及びCLSM測定の間の良好な相関を示している。これらの結果は、機械パルプ繊維壁厚のこの測定方法が、非常に粗末な相関を産生する唯一の市販の機器、カヤーニフアィバーラボ[7]と比べて、遙かに優れていることを実証している。δn=0.056と設定したとき、暗−及び明−視野に関する勾配は、それぞれ、0.75及び0.78であることが見いだされている。これらの勾配は、化学木材パルプ繊維において見いだされた値、1と異なる。より低い勾配は、本方法は繊維壁中のセルロース系ミクロフィブリルの量を測定するだけであり、機械木材パルプ繊維における繊維壁の追加の厚さを構成する、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質マトリクスを測定しないという事実を反映している。この勾配における0.03の差は、暗−及び明−視野CPLM測定において見いだされ、繊維中の光吸収及び散乱の測定に対する影響を反映している。この様な小さい差は、CPLM測定は、光吸収及び散乱によって強くは影響されないことを実証し、また裏付けている。
【0080】
等式(21)中の係数κは、非偏光伝播から得ることができる。一方、もし暗−及び明−視野CPLM測定の両方が同時に行われた場合、このκも
k=Idark+Ibright (22)
から得ることができる。
【0081】
これは、第二の1/4波長板8の後に現れる光束が、広帯域偏光光束分割器17によってS−偏光光束18とP−偏光光束19に分割されれば、可能である。図14に示す通り、暗−及び明−視野、Idark及びIbright、画像は、2つのマルチチャンネルCCDカメラ10及び20によって捕捉される。一旦κが見いだされれば、Idark(複屈折)及びIbright(複屈折)は、等式(21)から得ることができ、繊維の壁厚及び傾斜角を決定するために用いることができる。図15は、κ補正後のCPLMデータ対CLSMデータを示す。暗−及び明−視野データに関する勾配は、今度は、0.77及び0.78であり、これは、補正前のデータと比較してより近い。繊維壁厚測定に関する改良は小さく、また、不必要であることを示している。しかしながら、補正は、傾斜角測定には、なおも必要である。これらは、絶対強度に、より依存するためである。
【0082】
本発明は、濡れた、又は乾いた木材繊維のいずれにおいても、非破壊的、かつ非侵襲的に、壁厚及び傾斜角を迅速に、かつ正確に決定できる新規な、及び独特の方法を提供する。本方法は、繊維長測定におけると同じ最小限の試料の準備を必要とする。他の偏光法と比べて、本方法に従って導出される等式は、測定の精度に関して決定的に重要な、S1及びS3層の影響が包含されてさえも、非常に簡単である。本方法における相対的に簡単な等式は、新規で、かつ思いがけないものであり、また、繊維の壁厚及び傾斜角の決定に関するデータ解析を、簡易、迅速及び確実にする。本発明の方法の、別の重要、かつ独特の特徴は、その頑健性である。繊維壁厚測定は、測定が相対的多波長強度に大きく依存するので、吸収及び光散乱によって顕著には影響されない。この様な頑健性は、他の方法では達成されない。イェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]に記載されている他の方法と違って、本方法は、試料を特定の方向に向けること、又は物理的移動を伴う種々の光学的配置において多くの測定をすることを含まない。測定は、光学システムにおける繊維の方位には無関係であり、また、1つの光学的配置下で実行される。全ての必要な測定を、同時に、及び迅速に得ることができる。上記実験データにより示された通り、強度測定は高解像力を必要としないので、本方法は、壁厚及び傾斜角測定に関する高精度の光学系、又は正確な焦点合わせを必要としない。これらの利点は、この新しい繊維の測定方法を貫流システムに導入するために、特に重要である。この新しい発明は、個々の木材繊維の壁厚及び傾斜角を、それらの繊維長の測定と同程度の速さで測定する潜在能力を持つ。現存する市販の長さ解析器の多くは偏光光学を用いているが、撮像の目的のために目に見えるコントラストを作り出すためのみである。この発明は、一揃いの、適切な多波長光源及び結像光学系と連結された調和した正確な色収差の無い1/4波長リターダー、及び多波長強度検出用のマルチチャンネルデジタルカメラにより、これらの伝播光強度が、撮像目的だけではなく、もっと重要なことには、本発明中に提供されている新規な解に従って、木材繊維の壁厚及び傾斜角の木材繊維決定のためにも使用できることを示している。
【0083】
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1(a)】単木材繊維の層構造の略図。
【図1(b)】本発明において使用する非修飾繊維を説明するためのモデルの図解。
【図2】多層化試料の厚さ及び光軸を決定するためのシステムの模式図。
【図3】多波長光源に関する模式図。
【図4】暗視野円交差偏光システムの下に撮像された非修飾繊維の種々のδn・ts2及び傾斜角に関する理論的な強度マップ。入射光波長は(a)450nm、(b)530nm、(c)640nm。
【図5】異なる波長間で強度は異なるが、同じ相対強度を持つ3セットのデータ。
【図6】波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステムで撮像された、無漂白のダグラスファー及び西欧赤杉の化学パルプ繊維の顕微鏡写真。(a)、(b)、(c)は水中に浸漬した濡れた繊維の画像、(d)、(e)(f)は、同じ繊維を乾燥した後の画像。
【図7】図6(a)で印をつけた位置1及び2に関する透過光強度対3波長450、530、640nmのプロット。
【図8】図7に示した、濡れた、及び乾燥した同じ木材繊維から決定された壁厚の比較。
【図9(a)】波長450、530及び640nmでのCPLMシステムにおける繊維断片の顕微鏡写真。
【図9(b)】繊維断面から作られた共焦点断面画像。
【図9(c)】CPLM顕微鏡写真の解析により決定された二倍の膜厚、及びCLSM画像から作られた頂上の壁厚。
【図10】共焦点断面画像対種々の無漂白及び漂白化学パルプ繊維に関するCPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚。
【図11】濡れた化学パルプ繊維に関して、孔口の方位対CPLM法により測定された傾斜角。
【図12(a)】繊維を水中に浸漬して、波長530nmの暗視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真。
【図12(b)】繊維を水中に浸漬して、波長530nmの明視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真。
【図13(a)】暗視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚。
【図13(b)】明視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚。
【図14】図2に記載したシステムの最後の部分に関する模式図。
【図15(a)】暗視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚。
【図15(b)】明視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚。
【図1a】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.119(e)の下、2003年12月3日に出願した、米国出願仮出願番号60/526,280の優先権を主張する。
本発明は、複屈折性試料の偏光、光学的及び全ての関連する物理的性質に関し、詳しくは、多層の複屈折性試料中の異なる層の相対的な位相遅延、及び光軸の方位、好ましくは、非修飾木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角(fibril angle)に関連している相対的な位相遅延を決定するための偏光法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系繊維の一例である木材繊維は、生物学的材料であり、図1(a)に示す様に[1]、主壁P1、及び3つの二次的な壁層S1、S2及びS3の、4つの主要な層から成る。3つの二次的な層は全て、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質マトリクスに埋め込まれた、長い結晶性のセルロース系ミクロフィブリルで構成されている。外側のS1及び内側のS3層は非常に薄く、また、これらのミクロフィブリルは繊維軸に対して殆ど横向きに巻き付いている。中間の層S2層は、繊維壁材料の80−90%を含み、縦の繊維軸に対して、傾斜角(θ)と呼ばれるある角度で螺旋状に巻き付いたセルロース系ミクロフィブリルを有する。結晶性のミクロフィブリルはこれらの層中に整列し、また、複屈折性であり、木材繊維を複屈折性にしている。複屈折の大きさは、層S1、S2及びS3の厚さ、それらのミクロフィブリルの方位、及び各層の複屈折に依存する。
【0003】
支配的なS2層中の繊維壁厚及び傾斜角は、木材パルプ繊維の物理的及び機械的特性を制御し、それ故、製紙処理、並びに紙及び厚紙製品の最終使用特性に対するパルプの応答に強い影響を与える。例えば、繊維壁厚は、構造、強度及び光学特質を包含する、紙の全ての物理的特性に、事実上影響を与える[2、3]。一方、傾斜角は、膨張/収縮特性[4]、応力−ひずみ挙動[5]、及び紙の寸法安定性[6]を制御する。S2傾斜角は、繊維の折り畳み性に強く影響することが示されている。繊維壁厚及び傾斜角等の、重要な繊維の特性の知識は、それ故、所望の最終用途に対して最適な資材を特定し、また選択するために重大な意味を持つ。不幸なことに、繊維サイズが顕微鏡的であるため、繊維壁厚及び傾斜角の両者共、測定が困難である。更に、全ての繊維特性は、本質的に不均一である。繊維特性の分布に関する情報は、パルプ中の不均一性の程度をマップ化し、また、ある特性を持つ繊維の量の同定を可能にするので、パルプ品質の制御において非常に重要であると考えられている[2]。この様に、パルプ中の壁厚及び傾斜角等の個々の繊維特性を定量化するための迅速な技術を考え出すことは、極めて重要である。
【0004】
最近、新しい機器、カヤーニファイバーラボ(Kajaani FibreLab)繊維解析器が、キャピラリチューブを貫流する繊維の繊維巾及びセル壁厚の測定をもたらしている[P1]。この機器の原理は、繊維の、投影された二次元画像に基づいている。この測定技術は、数十ミクロンの範囲の寸法を持つ繊維巾に対して非常に適合している。しかしながら、この直接撮像技術は、1μm未満から数μmまで大きく変わる繊維壁厚の正確な測定に対しては、多くの困難に直面している。最近の研究は、カヤーニファイバーラボからの繊維壁厚測定は甚だしく不正確であることを示している[7]。
【0005】
木材パルプ繊維の壁厚を決定するための最も信頼できる現行の技術は、繊維断面画像に基づいており、これは、調製された繊維断面上の走査型電子顕微鏡(SEM)によって作り出すことができる[8]、又は共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)の光学的断面化能を使用して非破壊的に作り出すことができる[9]。画像解析と組み合わせると、これらの技術は、壁厚等の、個々の繊維の横方向寸法を正確に測定することが可能である[4]。この技術は、繊維の横方向寸法に関する貴重な情報を提供し、また、良好な研究手段ではあるが、大半の実際的な工業目的に対してはあまりにも遅い。斯くして、個々の木材パルプ繊維の壁厚を測定するための迅速、かつ正確な技術は、未だ欠けている。
【0006】
先に述べた通り、傾斜角は、もう一つの重要な繊維特性である。木材パルプ繊維中の傾斜角を測定するために、偏光顕微鏡法[10]、直接観察[11]、ミクロラマン分光法[12]、細長い孔口の方位[13]、及び最近年の偏光共焦点顕微鏡法[13]等の、幾つもの方法が開発されている。これらの技術は傾斜角の測定を提供できるが、これらも非常に遅い。
【0007】
偏光顕微鏡法に基づく技術は、木材パルプ繊維中の傾斜角の測定に、長年用いられてきた。これらの技術は、セルロース小繊維の天然の複屈折、及びミクロフィブリルに平行及び直角の方向において等しくない遅延/屈折率を利用している。繊維壁の単層中の小繊維の方向は、交差した極の間の壁を検査することにより、容易に得ることができる。しかしながら、この手法は単壁を必要とする。螺旋状に巻いた繊維の反対側の壁が妨害するので、非修飾繊維には使用できない。この困難性は、例えば、有縁壁孔を介して単壁を観察することにより、又は、長さ方向にミクロトームで切断して得られた単壁を検査することにより、克服されてきた。パルプ繊維に関する方法は、ページ(Page)[10]により開発され、繊維の細胞間隙に挿入された水銀からの反射光によって、単壁を観察する。S2層の傾斜角は、交差した極の間で観察される(単)壁に関する消光位置から決定される。原理的には簡単だが、この技術は面倒であり、また運まかせで、並びにS1及びS3層からの誤差に晒される[14]。
【0008】
最近年において、イェ等(Ye et al.)[15、16、18]及びイェ[P2,17]による、透過偏光分析法に基づく開発が、非修飾木材パルプ繊維のS2層の位相遅延Δ、及び傾斜角θを非破壊的に決定できると主張した。彼らの方法には多くの制限がある。上記方法の一つの主な短所は、S1及びS3層の影響が無視されていることである。実際は、ページ等[19]が示している通り、非修飾軟質木材繊維の複屈折に対する、横に巻き付いたS1及びS3層の影響は、特に薄壁の繊維に対して、顕著である。エル−ホセイニィ等(El-Hosseiny et al.)[14]によっても、複屈折性のS1及びS3層薄いが、偏光法に基づく傾斜角の測定において無視できないことが示されている。それ故、複屈折性のS1及びS3層の影響を無視することは、壁厚及び傾斜角の両者の測定に関して重大な誤りを生じさせる。更に、イェの論文[17]において論じられている通り、イェ等[15、16]及びイェ[P2]による、偏光子−試料−検光子配置、及び数学的解析に基づく方法には、多くの制限がある。例えば、イェの方法[P2]における繊維試料は、偏光子に対して所定の方位に配列させなければならない。更に、Δ及びθを計算するために、偏光子の方位を固定して、種々の検光子の方位で少なくとも4強度での測定が要求される。Δ及びθに関して誘導される式は二次なので、Δ及びθに関する結果は曖昧である。この曖昧さを回避するため、測定は、少なくとも2つの波長に関して行わなければならず、また、使用者は、2つのグループの中間の結果から、物理的に関連する結果を区別する必要がある。この方法は不確かであり、また、データの誤った解釈に導き得る。全てのこれらの制限のため、これは、自動の、そして、疑いなくオンラインシステムにおいて、役に立たないであろう。ミュラー行列偏光解析法(Muller matrix polarimetry)に基づく新しい、改良された技術がイェ[17]により提案された。イェは、このより新しい方法は、一波長での測定から、Δ及びθの定量的及び非破壊的な決定を可能にし、また、彼のより新しい方法の一つの利点は、測定から繊維の方位も得られるので、方位が異なる幾つかの繊維を同時に測定できる可能性である、と主張した。しかしながら、この方法は、なおも、異なる角度に向けられた検光子、偏光子、及び/又はリターダーにより得られる多くの測定を必要とし、また、静止している繊維に対する測定をするために非常に長時間かかる。これらの技術は両者共、非常に時間を消費し、また、オンライン型の機器には不適である。
【0009】
複屈折性繊維の撮像のため、偏光フィルターを使用して可視のコントラストを作り出すことは、新しくはない。カヤーニ繊維長解析器(カヤーニエレクトロニクス(株)、フィンランド)、及びファイバークォリティーアナライザー(オプテスト、カナダ)(Fibre Quality Analyser; OpTest)[P3]等の、多くの市販の繊維長解析器は、木材繊維の長さ及び/又は形状の測定に関してこの様な光学的技術を採用している。キャピラリー管又は貫流セルを貫流しながら、個々の繊維は撮像される。これらの機器は繊維長を迅速に測定できるが、繊維壁厚又は傾斜角の測定ができない。それ故、繊維長の測定と同様の手法で個々の繊維の繊維壁厚及び傾斜角を測定するための迅速かつ正確な技術の開発が、なおも必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、円偏光顕微鏡法に基づく非破壊的光学技術を用いて、繊維壁厚及び傾斜角を測定するための、新らしい、迅速な技術を開発することを目的とする。この新らしい発明は、単繊維の測定に基づいているので、繊維特性の分布を決定する手段を提供する。繊維の特性は、このシステムから発せられる複数波長光の強度の解析により、決定される。この新らしい発明は自動化でき、また、繊維貫流システムに実装することができるので、木材繊維特性の迅速な評価(リアルタイムのオンライン)を可能にする。
【0011】
(発明の開示)
本発明は、多層化複屈折性試料、例えば木材パルプ繊維の光学的及び物理的特性を決定するための方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、特に木材パルプ繊維において、多層化複屈折性試料の異なる波長における位相遅延、及びその光軸の方位を測定するための新らしい方法及び装置を提供することも目的とする。
【0013】
更に、本発明は、特に木材パルプ繊維において、多層化複屈折性試料の位相遅延を、異なる波長において同時に、並びに、その光軸の方位を、非破壊的に、迅速、簡単及び正確に測定することが可能な方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の一態様において、複数の波長を有する円偏光光束を作製する段階、ここで、複数は、少なくとも、評価中の多層化試料において決定すべきパラメータの数と同じである;評価すべき前記試料に前記円偏光光束を当てる段階;前記試料から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び、前記発せられる波長の光強度から少なくとも一のパラメータを決定し、及びそのデータを、その試料を記述する等式と適合させる段階、を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延及び光軸の方位から選択される少なくとも一のパラメータの決定方法が提供される。
【0015】
本発明の他の態様において、少なくとも2つの波長において、円偏光システム光束を作製する段階;前記円偏光光束を測定すべき木材繊維に当てる段階;前記木材繊維から発せられる波長の光強度を記録し、測定する段階;及び、相対的位相遅延、及びこれをもとにして壁厚と、木材繊維から発せられる波長の光強度から木材繊維のS2傾斜角を決定する段階、並びに前記データを、前記木材繊維を記述する等式と適合させる段階、を含む、繊維の縦軸に対して横向きに配位されたミクロフィブリルを有する2つの外側層S1及びS3、及び傾斜角で螺旋状に巻かれたミクロフィブリルを有する中間の支配的な層S2の、S1、S2及びS3の3層から成る壁を有する非修飾木材繊維の、壁厚に関連する相対的位相遅延、及び傾斜角を決定する方法が提供される。
【0016】
本発明の更に別の態様において、多重波長光を提供するために有効な光源、前記光源からの光から円偏光光束を生成させるための円偏光システム、前記システムの、前記生成された円偏光光束の光路中に試料を設置するための手段、前記試料から発せられる光の光強度を決定するための手段、及び前記発せられた光強度から試料の特性を決定するための処理手段を含む、試料の相対的位相遅延、又は光軸の方位を決定するための装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法は、円偏光により暗視野又は明視野において実施できる。
【0018】
光源は、典型的には多重の所定の、及び明確な波長のものであり、また、所定の波長の数は、適切には、少なくとも決定すべきパラメータの数と同じである。
【0019】
本方法は、相対的位相遅延、又は試料の光軸の方位、若しくは両者を決定するために適切に使用され得る。
【0020】
使用される円偏光システムは、適切に偏光子及び検光子、偏光子及び検光子の両者は線形偏光子であって良い、及び、光源の全所定の波長にわたる作動波長範囲を伴う、一対の調和した色収差の無い1/4波長リターダーから成る。リターダーの光軸は、相互に90°の方向を向き、偏光子及び検光子に対して45°の向きである。
【0021】
試料から発せられる光の光強度を決定するために、本装置は、適切に、顕微鏡偏光撮像用のコンデンサ及び対物レンズ、画像捕獲器、これは適切には多波長検出器、又はカメラ、例えばマルチチャンネルのデジタルカメラで良い、個々の、所定の波長における光強度を決定するための多重画像用画像プロセッサ、並びに、例えば、多重画像解析用及びデータ解析に重要な領域の識別用解析器プログラムを有する画像解析器を含む、画像処理並びに画像及びデータ解析システムを包含する。
【0022】
データ解析は、測定されている試料を記述する等式を伴う円偏光システムから発せられる多波長データの強度から、特性、特に試料の相対的位相遅延及び光軸の方位を決定するための非線形のフィッティングルーチンにより、適切に行われる。
【0023】
適切には、光源は、十分に分離された、しかし、なおも色収差の無い1/4波長リターダーの許容作動波長範囲である、多くの所定の波長を提供する。所定の波長は、適切には250nmから1000nmの範囲にわたって良い。
【0024】
多層化複屈折性試料は、木材及び非木材繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から成るセルロース系繊維から適切に選択される。
【0025】
本発明の特別な有利性は、試料を、それが設置される円偏光光束に対して位置決め又は配向する必要が無いことである。同様に、発せられる光の検光子を、例えば回転により、調節する必要が無い。
【0026】
試料は、斯くして、光束中で非制限的配向状態にある。
【0027】
斯くして、一態様において、この発明は、多層化複屈折性試料の異なる波長における位相遅延、及びそれらの光軸の方位の両者、特には木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角を決定するための解として、新らしい偏光法を提供する。
【0028】
システムにおいて必要な個別の波長の数は、測定される試料の未知のパラメータの数に依存する。
【0029】
本方法に使用する機器は、a)所定の多波長光源、b)円偏光顕微鏡法システム、c)所定の多波長光強度検出用のマルチチャンネル撮像システム、例えばカラーデジタルカメラ、及びd)画像解析及びデータ解析システムから成る。
【0030】
本円偏波システムは、偏光子、検光子、及び測定の波長領域における一対の「調和した」1/4波長の色収差の無いリターダーから、適切に成る。これらの要素は、暗−又は明−視野(即ち、暗い、又は明るい背景)を伴う円偏光システムを提供する様に配置できる。
【0031】
この発明は、異なる波長における多層化複屈折性試料の位相遅延、及び同時にそれらの光軸の方位、特には木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角を測定する方法を提供し及び実施するために、主に、異なる波長における試料の複屈折特性、及び装置又は測定機器に依存する。
【0032】
木材繊維のほかに、この測定技術は、非木材繊維等の、任意の他の単-及び多−層化複屈折性試料、例えば綿、カラムシ、ケナフ及び亜麻繊維等を特徴付けるために適している。
【0033】
図l(a)及び(b)は、(a)単木材繊維の層構造の略図を示し、また、(b)本発明において使用する非修飾繊維を説明するためのモデルを図解する。各繊維壁は3層、異なる厚さtsl、ts2及びts3を持つ3つの複屈折性層により代表されるS1、S2及びS3層から成る。S1及びS3に関する光軸の方向は繊維軸に対してほぼ90°だが、この角度は、S2層に関してはθ°である。2つの対向する繊維壁は同じ壁厚を持つが、S2層中で逆のθ(即ち、±θ)と仮定する。
【0034】
図2は、非修飾木材繊維の壁厚及び傾斜角等の、多層化試料の厚さ及び光軸を決定するためのシステムの模式図を示す。
【0035】
図3は、多数の、所定の及び明確な単波長から成る、多波長光源に関する模式図を示す。
【0036】
図4(a)、(b)及び(c)は、暗視野円交差偏光システムの下に撮像された非修飾繊維の種々のδn・ts2及び傾斜角に関する理論的な強度マップを示す。異なる入射光波長(a)450、(b)530及び(c)640nmによる3つの強度は、S1及びS3の厚さを、それぞれ0.2及び0.05μmに設定したときに、等式(19)に従って導かれる。上端x軸の目盛は、複屈折δnを0.056に設定したときのS2層の厚さとしてプロットされている。
【0037】
図5は、異なる波長間で強度は異なるが、同じ相対強度を持つ3セットのデータを示す。このグラフのデータは、図4のδn、S1及びS3に関する基準セットに続く。示された線は、等式(19)に従う波長の関数としての強度である。
【0038】
図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)は、波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステムで撮像された、無漂白のダグラスファー及び西欧赤杉の化学パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真(a)、(b)及び(c)は、水中に浸漬した濡れた繊維の画像であり、並びに(d)、(e)及び(f)は、同じ繊維を乾燥した後の画像である。印をつけた2個所は、本壁厚及び傾斜角の決定方法を説明するために使用される。
【0039】
図7は、図6(a)で印をつけた位置1及び2に関する、透過光強度対3波長450、530及び640nmをプロットしている。繊維中のこれら2個所に関する壁厚及び傾斜角は、図示の通り、これらのデータに対する等式(19)の最良適合から決定される。複屈折及びS1+S3の厚さは、それぞれ、0.0553及び0.25μmに設定されいてる。
【0040】
図8は、図7に示した、濡れた、及び乾燥した同じ木材繊維から決定された壁厚の比較である。0.98の決定係数R2は、濡れた、及び乾燥した繊維から得られた測定の間の強い相関を示す。
【0041】
図9(a)、(b)及び(c)は、(a)波長450、530及び640nmでのCPLMシステムにおける繊維断片の顕微鏡写真、(b)繊維断面から作られた共焦点断面画像、及び(c)CPLM顕微鏡写真の解析により決定された二倍の膜厚、及びCLSM画像から作られた頂上の壁厚を示す。
【0042】
図10は、共焦点断面画像対種々の無漂白及び漂白化学パルプ繊維に関するCPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚を示す。線形適合も示され、これらの勾配Sは、全データに関して1に近い。
【0043】
図11は、濡れた化学パルプ繊維に関して、孔口の方位対CPLM法により測定された傾斜角を示す。
【0044】
図12(a)及び(b)は、繊維を水中に浸漬して、波長530nmの暗−及び明−視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。これらの繊維は、長繊維長断片に由来した。
【0045】
図13(a)及び(b)は、暗−及び明−視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚を示す。線形適合も示され、これらの勾配は1より小さいことが見いだされている。
【0046】
図14は、暗−及び明−視野CPLM法の同時測定を可能にする、図2に記載したシステムの最後の部分に関する模式図を示す。
【0047】
図15(a)及び(b)は、暗−及び明−視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(詳細な説明及び好ましい態様)
本発明の技術の原理は、非修飾木材パルプ繊維等の複屈折性試料を通り抜ける光の偏りの変化を測定することに基づいている。入射光が、複数の波長を伴う十分に明確な偏りを持つなら、発せられる多波長の光の偏りの測定は、木材パルプ繊維の壁厚及び傾斜角等の、多層化試料の厚さ、及びそれらの光軸の方位を決定する手段を提供する。先ず、木材パルプ繊維を包含する多層化試料の偏り伝播特性を説明する。偏りの変化は、光の波長、並びに試料中の各層におけるセルロース系ミクロフィブリルの複屈折、壁厚及びミクロフィブリルの方位に依存する。
【0049】
(木材パルプ繊維の光学的特性)
ジョーンズ行列形式は、偏光システム下で試料を通って伝播する光を記述するために用いられる[20、21]。もし材料の全ての光軸が光束の伝播方向に直角に置かれているなら、その材料の伝播特性を説明する2×2のジョーンズ行列Tは、
である。
【0050】
ここで、その要素Tij−a、b、c、dは、一般的に複素変数である(例えば、a=a1+ja2)。試料、即ち複屈折を持つが吸収を持たない光学システムに関して、ジョーンズ行列Tはユニタリーであり、その要素Tijは以下の特性を持つ。a2+b2=1、a=d*、及びc*=−b(星印記号「*」は複素共役を示す)。例えば、aはdの複素共役、即ち、a=a1+ja2=d1−jd2である。
【0051】
例えば、セルロース系ミクロフィブリルに平行な方向等の、縦軸から角θで配向している光軸を伴う単層複屈折性試料に関しては、ジョーンズ行列は、
であり、ここで
は回転行列であり、また、
は相対的位相遅延である。光軸に平行及び直角の方向に沿う電気ベクトルの成分は、異なる量、それぞれ、Δ‖=2πtn‖/λ及びΔ^=2πtn^/λだけ遅延する。tは層の厚さ、λは入射単色光束の波長である。n‖及びn^は、光軸、木材繊維の場合はミクロフィブリル方向、に平行及び直角の屈折率である。量(n‖−n^)=δnは試料の複屈折と呼ばれる。等式(2)は、
と表される。
【0052】
これは、図l(b)に示した木材繊維中の層等の、光軸を一本だけ持つ複屈折性試料の伝播特性を記述するためのジョーンズ行列である。木材繊維は、異なるミクロフィブリル方位、即ち異なる光軸、並びにリグニン及びヘミセルロースのマトリクス中に埋め込まれた異なる厚さを持つ、セルロース系ミクロフィブリルの多くの層で作られている。n層の結合効果は、ジョーンズ行列を伴う一つのシステムと等価である[20]。
Tcomb=Tn(Δn,θn)Tn-1(Δn-1,θn-1)…T2(Δ2,θ2)T1(Δ1,θ1) (6)
【0053】
木材パルプ繊維は2つの壁からなり、各壁は3つの複屈折性層S1、S2及びS3に分離されている。単壁に関する伝播行列Twallは
Twall=T(Δs3,θs3)T(Δs2,θs2)T(Δs1,θs1) (7)
である。ここで、光はS1層を最初に、S3層を最後に通って伝播する。θsl、θs2及びθs3はこれらの光軸の方位であり、Δsl、Δs2及びΔs3は、それぞれS1、S2及びS3層の相対的位相遅延である。
ここで、tsl、ts2及びts3、並びにδnsl、δns2及びδns3は、これらの各層の厚さ及びミクロフィブリルの複屈折である。S1層は、一般的に、S及びZ螺旋が交互の、傾斜角が70−80°の数層から成ると考えられている。この様な構造の光学的挙動は、傾斜角が90°の単層とほぼ等価である[14、19]。即ち、S1のフィブリルは、繊維軸に垂直であると近似できる。S3層は同様に扱える。それ故、θsl=θs3=π/2が設定される。単壁を記述するためのモデルを図l(b)に示す。S2層中の小繊維の方位θs2=θに関しては、図1(b)に示した単繊維壁に関するTwallは、
である。ここで、行列要素は
である。
【0054】
測定される木材パルプ繊維に関して、全ての層で、対向する繊維壁は同じ壁厚を持ち、及び、S2層中のこれらのミクロフィブリルは、対向するS2層のミクロフィブリルの方向が交差する様な角度で、螺旋状に繊維軸の周りに巻き付いていると仮定する。光軸、傾斜角がθの方位であるS2層を記述するためのジョーンズ行列は、T(Δs1,π/2)T(Δs2,−θ)T(Δs3,π/2)である。それ故、同じ膜厚を持ち、けれどもS2層中の傾斜角が交差する、2つの繊維壁から成る、図l(b)に示した非修飾木材パルプ繊維を記述するジョーンズ行列は、
と書くことができ、ここで、伝播行列の要素は
である。
【0055】
木材繊維に関して、セルロースミクロフィブリルは強い複屈折を示すが、可視光領域での吸収は大したことはない。ミクロフィブリルを埋め込んでいる、リグニン及びヘミセルロースを含有するマトリクスは、可視又はより長波光の領域で弱い吸収を持つが、これは無視できる。埋め込んでいるマトリクスからの吸収が顕著な波長領域で行われる測定の場合[18]、本発明は、なおも適用できる。リグニンの吸収特性は二色性ではないので、伝播行列において、吸収項は複屈折項から切り離すことができる。例えば、
T=T(吸収)T(複屈折行列) (11)
【0056】
ランバート・ベール則に従い、吸収項T(吸収)=exp(−2κ(λ)t)は、伝播される光の全体強度に影響できるだけのスケール計数である。κ(λ)は波長λに依存する減衰係数であり、及び、tは繊維壁厚である。この吸収項T(吸収)は、規定された波長の偏光されていない伝播光により決定でき、又はκ(λ)及び試料の複屈折の正確な評価のための壁厚から決定できる。可視光領域における木材繊維の吸収等の、吸収が非常に弱い試料に関しては、T(吸収)は1に設定される。後述する通り、この方法の測定は相対的多波長強度に強く依存するので、測定した試料に未知の吸収があっても、特に繊維壁厚測定に関する結果は、影響されないであろう。
【0057】
(円偏光システム)
暗−又は明−視野円偏光システム等の円偏光システムは、この測定原理を実現するために使用される。この測定システムは、光が円偏光しているので、試料方位と無関係である。更に、この様な偏光システムにおける相対的位相遅延及び傾斜角を決定するための新規な、比較的簡単な解が、同じ膜厚の2つの対向する壁と、しかしS2層において交差する傾斜角θを伴う非修飾繊維に関して開発されている。
【0058】
正確に配位された直線偏光子と1/4波長リターダーは、円偏光子を形成するであろう。図2は、試料として挿入されたパルプ木材繊維を伴う円偏光顕微鏡法(CPLM)システムを記述しながら、本発明に従う機器を模式的に図解する。この機器は、多波長光源ユニット1、適切な結像光学系2を伴う円偏光システム、多波長光強度を検出するマルチチャンネル検出器又はカメラ10、並びに画像処理及びデータ解析ユニット11を含む。
【0059】
円偏光システムは、一対の偏光子である直線偏光子P3と検光子A9、及びこれらの偏光子の間にある、図示した通り、相互に90度、及び偏光子に対して45度に方向付けられたそれらの光(速)軸Fを持つ、2個の調和した正確さの色収差の無い1/4波長リターダーQ454及びQ−458から成る。このCPLMは、図2に示した様に2個の偏光子が交差した時に暗視野システムであるが、2個の偏光子が平行の時に明視野システムである。測定の精度要求を満たすために、2個の正確に色収差の無い、遅延がλ/4±λ/100の1/4波長リターダーが必要であり、及び、この対は、任意の所定の波長において、λ/200遅延範囲内で釣り合わされている。試料6は、静的測定に関してはステージ上に置くことができ、又は、現存する市販の繊維長解析器の様に、繊維貫流システムを通り抜けていることができる。検査中の繊維試料6は、2個の円偏光子の間に置かれる。入射円偏光は、コンデンサ5を通り抜けて試料6に焦点を結び、及び、測定すべき試料は、偏光用途に適した対物レンズ7によって拡大され、撮像される。この多波長画像は、カラー電荷結合素子(CCD)カメラ10等のマルチチャンネルデジタルカメラ、又は選択された波長用の、他の適切な光学素子及び検出器によって捕捉される。異なる波長の伝播光強度は、木材繊維における壁厚及び傾斜角等の、検討中の試料の相対的位相遅延及び明確な光軸の方位を決定するために、下に説明する新規な解法に従って、解析されるであろう。
【0060】
図3に示す様に、光源ユニット1は、システムに、多数の所定の、及び明確な単波長の入射光を提供する。これらの単波長は十分に分離される様に選ばれるが、それでも、そのシステムのために選択された、一対の色収差の無い1/4波長リターダーの、許容できる作動波長範囲内に無ければならない。例えば、本発明の実験に用いられた一対のリターダーは、450nmから640nmの範囲の作動波長を持っていた。入射光束には、3つの波長、450、540及び640nmを選んだ。多波長光源ユニット1は、各々が明確な単波長発光を持つ、レーザー類や多数の発光ダイオード(LED)12から成って良い。それは、各フィルターが明確な波長を持つ、一組の狭帯域通過緩衝フィルター13を備えた広帯域光源であっても良い。異なる光源は、集光レンズ14により、マルチトラックのファイバー光学系15の入力へと纏められる。多波長光源は、次いで、ファイバー光学系16の出力で単光源へと導かれる。
【0061】
ジョーンズの計算法に従って、図2に示した偏光子P及び検光子Aに関するジョーンズ行列は、
であり、また、45度及び−45度に方位付けされた1/4波長リターダーの速軸に関する行列は
である[21]。
【0062】
検光子から現れる光束の電場ベクトルEは、図2に示した、挿入された、行列Tで記述されるサンプルを伴う暗視野円偏光システムに関して、
であり、ここで、I0は試料に入射する光の強度であり、明視野円偏光システムの配置の下(図2で説明した偏光子3及び検光子9が平行)、試料が挿入されていないときに決定できる。暗視野円偏光システムにおける伝播光強度Idarkは、以下の様に得られる:
ここで、a2、b2は、それぞれ、要素a、bの虚数部分である。
【0063】
暗視野の場合と同様に、本発明は、明視野円偏光システムにおいても容易に実現できる。この場合、伝播光強度Ibrightは
【0064】
であり、ここで、a1、b1は、それぞれ、要素a、bの実数部分である。明−及び暗−視野は、相互の反転である。
ここで、等式(5)の行列中の要素a2、b2が用いられている。試料が円偏光システム下にあるので、強度はΔのみに依存し、θには依らない。
【0065】
相対的位相遅延がΔsl、Δs2及びΔs3のS1、S2及びS3層の単繊維壁、及びS2層中にθの光軸を持つ等の、多層化試料に関しては、伝播光強度は、
であり、ここで、等式(9)の行列中の要素a2、b2が用いられている。もしΔsl及びΔs3の両者をゼロに設定すると、単層に関する強度が得られ、等式(18)は等式(17)に低減される。
【0066】
S1、S2及びS3層において同じ厚さで、しかし木材繊維のS2層の傾斜角等の、±θの光軸を持つ、2つの対向する壁を持つ非修飾木材パルプ繊維に関して、伝播光強度は、
であり、ここで、等式(5)の行列中の要素a2、b2が用いられている。この等式は、決定されるべき4つの未知のパラメータ、Δsl、Δs2、Δs3及びθを有する。S3層は非常に薄い(<0.01μm)ことが知られており[1、14、19、23]、それ故、上記等式中、初めの2つの項に比べて、最後の項は無視できる。それ故、S1及びS3層の相対的位相遅延は、一個の未知のパラメータΔsl+Δs3として近似的に扱うことができる。これは、未知のパラメータを3個に減らすであろう。この3個の未知のパラメータを決定するために、検討中の木材繊維に関して、3つの異なる波長における伝播光強度Ifibre,darkを同時に測定できる様に、入射光束に、最低限、3つの異なる所定の波長が要求される。3個の未知のパラメータは、斯くして、Ifibre,darkに対して等式(19)を最良適合させることにより決定することができ、及び、これをもとにして、この適合から繊維の壁厚及び傾斜角θを決定することができる。等式(19)は非修飾木材繊維の繊維特性の解析用に使用されるであろう。
【0067】
もしS1及びS3層が無視され、及びイェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]における様に、繊維中の2つの対向するS2層だけが考慮されると、等式(19)は
Ifibre,dark(Δs1=0,Δs2,Δs3=0,θ)=I0sin2Δs2cos2(2θ) (20)
となることに注目することは興味深い。
【0068】
線形偏光の場合[P2]、又はミュラー行列偏光解析法[17]において導出される対応する式と比べて、伝播光強度を非修飾繊維に関するΔs2及びθに関連づけるこの等式は、予想外に簡単である。もしS1及びS3層の影響を考慮すると、イェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]により記述された方法における式は、本発明における等式(19)と比べてもっと複雑であると予測される。それ故、データの解釈はもっと複雑になると思われ、また、信頼性のある測定の抽出は不確実である。
【0069】
等式(4)に記述されている様に、S1、S2及びS3層における相対的位相遅延Δsl、Δs2及びΔs3は、それらそれぞれの層における厚さとミクロフィブリルの複屈折の積、tslδnsl、ts2δns2及びts3δns3に依存する。化学的組成と分子配位に関連するこれらの層の複屈折は、等しいと、即ち、δnsl=δns2=δns3=δnと仮定する[14、19]。これらは、更に、同様のパルプ化及び製紙処理が施された同種のパルプの繊維に関して定数であると仮定する。幾つかの種に関しては、ページ等[19]によって、それらの複屈折が似ていることが示されている。ミクロフィブリルの複屈折δn=(n‖−n^)は、大半のパルプ繊維に関して0.04−0.06であることが見いだされている[19、22]。
【0070】
図4は、3つの波長、(a)450、(b)530及び(c)640nmの理論的伝播強度マップを、暗視野CPLMシステムにおいて、非修飾繊維のδnts2及び傾斜角の関数として示す。これらは等式(19)に従って作り出され、S1及びS3層の厚さは、それぞれ、大半の軟質木材繊維に関してS1及びS3層の典型的な平均厚さである[1、14、19、23]、0.2及び0.05μmに設定されている。上端のX軸の目盛は、化学パルプ繊維に関する複屈折δnを0.056と設定[19]したときのS2層の厚さts2としてプロットしてある。これは、木材繊維の壁厚及び傾斜角が異なると、異なる波長で伝播強度が異なることを、写実的に示している。それ故、伝播強度を、図4の種々の波長の強度マップに一致させることにより、繊維壁厚及び傾斜角を正確に、かつ一意的に決定できる。「一致させる」とは、ここでは、測定された強度に対する等式(19)の最良の非線形適合を意味する。
【0071】
図4の強度マップにおいて、傾斜角は全体の伝播強度に、より依存するが、繊維壁厚測定は種々の波長における相対的伝播強度に、より依存することに注目することが大切である。もし図4における450nm(赤)、530nm(緑)、及び640nm(青)の3つの強度マップを纏めてカラーマップを形成すると、繊維壁厚が類似する繊維には、それらの傾斜角とは無関係に、多かれ少なかれ、同じ色が付随する。これは、強度は異なるが異なる波長間で相対的強度が同じである3組のデータを示している図5において、更に、例証できる。データセット1は、強度が、データセット2より1.5倍高く、データセット3より3倍高い。これらの3組のデータは異なる傾斜角に対応し、これらは強度が減少すると増大するが、図示の通り、S2層の類似の壁厚(ts2)、2.445、2.383及び2.287μmに対応する。これは、繊維壁厚の測定に関する本技術の頑健性を実証している。伝播光強度を減少させる光吸収等の、他の光学的現象は、実際に、測定の精度には影響しないであろうからである。この技術の頑健性は多くの例によって確認されており、以下に、幾つかを検討する。
【0072】
図6は、波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステム中で撮像した、ダグラスファー及び西欧赤杉化学パルプ繊維の濡れた、及び乾燥した無漂白の混合物の顕微鏡写真を示す。これらの顕微鏡写真は、開口数が0.25(N.A.=0.25)の10×対物レンズで撮った。図6(a)、(b)及び(c)は、水に浸漬した、濡れた繊維の顕微鏡写真であり、並びに、図6(d)、(e)及び(f)は、乾燥後の同じ繊維の顕微鏡写真である。乾燥された繊維は、これらの顕微鏡写真を撮る前に、液浸油中に入れて、乾燥繊維試料中の光散乱を最小にした。これらの顕微鏡写真に示される通り、同じ波長で撮られた、対応する濡れた、及び乾いた繊維は、非常に似ている強度を持つことが示されていることが明らかである。このことは、次に示す通り、本測定は、濡れた、又は乾いた条件で行われても、同じに違いないことを強く示唆している。
【0073】
図6に示した、2本の繊維に印を付けた2個所は、暗視野CPLMシステムから得られた異なる波長の光強度から、如何にして壁厚及び傾斜角が決定できるかを実証するために使用する。これら2個所の領域の強度対波長を図7にプロットしている。3つのパラメータ、ts2、θ及びtsl+ts3は、3つの波長における強度に対する、等式(19)の非線形適合により決定される。この図に示した最良適合は、軟材化学パルプ繊維において通常見られる値、δn=0.0553[19]、及びtsl+ts3=0.25μm[1、14、19、23]と設定することにより得られた。次いで、tsl+ts2+ts3として、繊維壁厚を計算する。位置1に関する壁厚及び傾斜角は3.9±0.2μm及び14±3°であることが見いだされ、並びに、位置2に関しては1.6±0.1μm及び2±2°であることが見いだされた。
【0074】
図6に示した濡れた、及び乾いた繊維の多くの異なる場所を、壁厚及び傾斜角について評価した。図8は、同じ濡れた、及び乾いた繊維の顕微鏡写真における、対応する範囲から決定した壁厚を比較する。全ての測定は、繊維の中央領域で行った。濡れた、及び乾いた繊維からの測定の間に強い相関が示されており、並びに、0.98の決定係数R2が見いだされた。これは、本発明が、濡れた、又は乾いた木材繊維から、似た壁厚測定を提供することを強く裏付けている。光散乱がより少ない液浸油中の乾燥繊維、及び光散乱がより多い水中の濡れた繊維から似た結果が得られる点で、本方法の頑強性を実証している。
【0075】
図9(a)は、40×、N.A.=0.65の対物レンズを用いて、暗視野CPLMシステムで撮像した、厚壁のダグラスファー化学パルプ繊維の小断片の、波長450、530及び640nmにおける3枚の顕微鏡写真を示す。図9(b)は、共焦点レーザー走査顕微鏡法を用いて、非破壊的に作り出した図9(a)の繊維断片の断面画像を示す。2倍の壁厚、2(tsl+ts2+ts3)を、図9(a)に示した顕微鏡写真から、δn=0.0553及びtsl+ts3=0.25μm[1、14、19、23]である繊維断片の場所を横断して、決定した。繊維を横断する垂直の厚さを、図9(b)の共焦点断面画像から決定した。これら2つの壁厚の形状を図9(c)に示す。これら2つの壁厚測定技術は、特に平らな領域に関して非常に良く一致する。これは、木材繊維の壁厚決定に関するCPLM技術の有効性を強く支持する。繊維端部が生じる領域からは、相対的により貧弱な一致がもたらされている。これは、端部を伴う領域で生じる強い光散乱により、説明できる。それ故、繊維壁の端部からの光散乱の影響及び効果を最小にするため、特に、もし測定する繊維が水中に浸漬されているなら、測定を、繊維の平らな領域、又は中央の領域で行うのが最良である。平らな領域は、それらの領域において似た膜厚を暗示している、CPLM画像において均一に分布した強度により、容易に見分けることができる。
【0076】
図10は、種々の化学パルプ繊維に関してCPLM法から決定した、共焦点断面画像対繊維壁厚測定から測定した繊維壁厚を示す。ダグラスファー、西欧赤杉及び西欧トウヒは、異なる3種の軟材種の無漂白化学パルプ繊維であり、一方、軟材、サザンパイン、及び硬材、アスペンは十分に漂白した。全てのCPLM顕微鏡写真はN.A.=0.25のl0×対物レンズを用いて作りだし、及び、同じ複屈折特性δn=0.056[19]を用い、本発明において説明したCPLM法を用いて全繊維試料の壁厚を決定した。図10に示したデータは、本発明、新しいCPLM法と、繊維壁厚測定に関して十分に確立されたCLSM法[9]との間の強い相関を、明瞭に実証している。更に、これら2つの測定を関係付ける線形適合の勾配は、およそ1であることが示され、多種の木材パルプ繊維に関して、複屈折は非常に似ていること、及びδn=0.056が適切であることを実証している。これは、種々の木材繊維の壁厚の測定に関して、本発明の正確さ、頑強性及び簡便性を、明瞭に実証している。
【0077】
繊維壁中のS2層の傾斜角を近似するために、繊維軸と細長い孔口の主軸との間の角度測定が用いられている[13]。湿ったクロトウヒ化学パルプ繊維における孔口の方位は、透過光顕微鏡法を用いて測定された。これらの繊維の傾斜角も、本CPLM法により決定された。これら2つの方法に由来する結果を、図11で比較している。傾斜角として孔口の方位を正確に決定することに伴う困難、及びこれらの孔から離れた平らな領域で行われたCPLM測定にも拘わらず、これら2つの方法の間の相関、R2=0.94は、高いと考えられる。更に、線形適合の勾配は0.98であることが見いだされている。これは、本木材繊維の傾斜角の測定法が妥当であることを支持している。
【0078】
本方法は、機械パルプ繊維にも適用できる。化学木材パルプ繊維とは違い、機械木材パルプ繊維ははるかに高い収率を持ち、また、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質のマトリクスの大半を保持している。更に、繊維壁は、機械的精製の間に変貌する。繊維中のリグニン含量がより高いと、光吸収を増大させることができ、また、外側のフィブリル化等の精製効果は、過度の光散乱を作り出し得る。本方法を機械パルプ繊維に適用することは、難問であり得る。光吸収及び散乱がない場合、等式(16)に示す通り、暗−及び明−視野は相互の反転である。しかしながら、もし光吸収及び散乱があると、それらは暗−及び明−視野CPLM強度に対して相反する効果を持つ:
Idark=k・Idark(複屈折)
Ibright=k・Ibright(複屈折)=k・(1-Idark(複屈折)) (21)
ここで、κは光吸収及び散乱の効果に関する係数であり、もしこれらが無視できれば、その値は1に等しい。Idark(複屈折)及びIbright(複屈折)は、試料のこの特性のみを考慮したときの、暗−及び明−視野CPLMシステム下の伝播光強度である。
【0079】
図12は、波長530nmで、(a)暗視野、及び(b)明視野CPLMで撮像した濡れたクロトウヒ機械パルプ繊維の顕微鏡写真を示す。図13は、図12に示した繊維に関する、共焦点断面画像対(a)暗視野、及び(b)明視野CPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚を示す。機械木材パルプ繊維の複雑性にも拘わらず、両方のグラフは、なおも、暗−及び明−視野CPLM及びCLSM測定の間の良好な相関を示している。これらの結果は、機械パルプ繊維壁厚のこの測定方法が、非常に粗末な相関を産生する唯一の市販の機器、カヤーニフアィバーラボ[7]と比べて、遙かに優れていることを実証している。δn=0.056と設定したとき、暗−及び明−視野に関する勾配は、それぞれ、0.75及び0.78であることが見いだされている。これらの勾配は、化学木材パルプ繊維において見いだされた値、1と異なる。より低い勾配は、本方法は繊維壁中のセルロース系ミクロフィブリルの量を測定するだけであり、機械木材パルプ繊維における繊維壁の追加の厚さを構成する、ヘミセルロース及びリグニンの非晶質マトリクスを測定しないという事実を反映している。この勾配における0.03の差は、暗−及び明−視野CPLM測定において見いだされ、繊維中の光吸収及び散乱の測定に対する影響を反映している。この様な小さい差は、CPLM測定は、光吸収及び散乱によって強くは影響されないことを実証し、また裏付けている。
【0080】
等式(21)中の係数κは、非偏光伝播から得ることができる。一方、もし暗−及び明−視野CPLM測定の両方が同時に行われた場合、このκも
k=Idark+Ibright (22)
から得ることができる。
【0081】
これは、第二の1/4波長板8の後に現れる光束が、広帯域偏光光束分割器17によってS−偏光光束18とP−偏光光束19に分割されれば、可能である。図14に示す通り、暗−及び明−視野、Idark及びIbright、画像は、2つのマルチチャンネルCCDカメラ10及び20によって捕捉される。一旦κが見いだされれば、Idark(複屈折)及びIbright(複屈折)は、等式(21)から得ることができ、繊維の壁厚及び傾斜角を決定するために用いることができる。図15は、κ補正後のCPLMデータ対CLSMデータを示す。暗−及び明−視野データに関する勾配は、今度は、0.77及び0.78であり、これは、補正前のデータと比較してより近い。繊維壁厚測定に関する改良は小さく、また、不必要であることを示している。しかしながら、補正は、傾斜角測定には、なおも必要である。これらは、絶対強度に、より依存するためである。
【0082】
本発明は、濡れた、又は乾いた木材繊維のいずれにおいても、非破壊的、かつ非侵襲的に、壁厚及び傾斜角を迅速に、かつ正確に決定できる新規な、及び独特の方法を提供する。本方法は、繊維長測定におけると同じ最小限の試料の準備を必要とする。他の偏光法と比べて、本方法に従って導出される等式は、測定の精度に関して決定的に重要な、S1及びS3層の影響が包含されてさえも、非常に簡単である。本方法における相対的に簡単な等式は、新規で、かつ思いがけないものであり、また、繊維の壁厚及び傾斜角の決定に関するデータ解析を、簡易、迅速及び確実にする。本発明の方法の、別の重要、かつ独特の特徴は、その頑健性である。繊維壁厚測定は、測定が相対的多波長強度に大きく依存するので、吸収及び光散乱によって顕著には影響されない。この様な頑健性は、他の方法では達成されない。イェ等[15、16、18]及びイェ[P2、17]に記載されている他の方法と違って、本方法は、試料を特定の方向に向けること、又は物理的移動を伴う種々の光学的配置において多くの測定をすることを含まない。測定は、光学システムにおける繊維の方位には無関係であり、また、1つの光学的配置下で実行される。全ての必要な測定を、同時に、及び迅速に得ることができる。上記実験データにより示された通り、強度測定は高解像力を必要としないので、本方法は、壁厚及び傾斜角測定に関する高精度の光学系、又は正確な焦点合わせを必要としない。これらの利点は、この新しい繊維の測定方法を貫流システムに導入するために、特に重要である。この新しい発明は、個々の木材繊維の壁厚及び傾斜角を、それらの繊維長の測定と同程度の速さで測定する潜在能力を持つ。現存する市販の長さ解析器の多くは偏光光学を用いているが、撮像の目的のために目に見えるコントラストを作り出すためのみである。この発明は、一揃いの、適切な多波長光源及び結像光学系と連結された調和した正確な色収差の無い1/4波長リターダー、及び多波長強度検出用のマルチチャンネルデジタルカメラにより、これらの伝播光強度が、撮像目的だけではなく、もっと重要なことには、本発明中に提供されている新規な解に従って、木材繊維の壁厚及び傾斜角の木材繊維決定のためにも使用できることを示している。
【0083】
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1(a)】単木材繊維の層構造の略図。
【図1(b)】本発明において使用する非修飾繊維を説明するためのモデルの図解。
【図2】多層化試料の厚さ及び光軸を決定するためのシステムの模式図。
【図3】多波長光源に関する模式図。
【図4】暗視野円交差偏光システムの下に撮像された非修飾繊維の種々のδn・ts2及び傾斜角に関する理論的な強度マップ。入射光波長は(a)450nm、(b)530nm、(c)640nm。
【図5】異なる波長間で強度は異なるが、同じ相対強度を持つ3セットのデータ。
【図6】波長450、530及び640nmの暗視野CPLMシステムで撮像された、無漂白のダグラスファー及び西欧赤杉の化学パルプ繊維の顕微鏡写真。(a)、(b)、(c)は水中に浸漬した濡れた繊維の画像、(d)、(e)(f)は、同じ繊維を乾燥した後の画像。
【図7】図6(a)で印をつけた位置1及び2に関する透過光強度対3波長450、530、640nmのプロット。
【図8】図7に示した、濡れた、及び乾燥した同じ木材繊維から決定された壁厚の比較。
【図9(a)】波長450、530及び640nmでのCPLMシステムにおける繊維断片の顕微鏡写真。
【図9(b)】繊維断面から作られた共焦点断面画像。
【図9(c)】CPLM顕微鏡写真の解析により決定された二倍の膜厚、及びCLSM画像から作られた頂上の壁厚。
【図10】共焦点断面画像対種々の無漂白及び漂白化学パルプ繊維に関するCPLM法から決定された測定から測定された繊維壁厚。
【図11】濡れた化学パルプ繊維に関して、孔口の方位対CPLM法により測定された傾斜角。
【図12(a)】繊維を水中に浸漬して、波長530nmの暗視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真。
【図12(b)】繊維を水中に浸漬して、波長530nmの明視野CPLMシステムで撮像した典型的なクロトウヒの機械パルプ繊維の顕微鏡写真。
【図13(a)】暗視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚。
【図13(b)】明視野CPLM法対共焦点断面画像から決定された測定から決定された、機械パルプ繊維の繊維壁厚。
【図14】図2に記載したシステムの最後の部分に関する模式図。
【図15(a)】暗視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚。
【図15(b)】明視野CPLM法対CLSM測定から決定される、補正された繊維壁厚。
【図1a】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視野又は明視野にある円偏光を作製する段階、前記光は複数の明確な波長を持ち、ここで、前記複数は、少なくとも、評価中の多層化試料において決定すべきパラメータの数と同じ数である;
評価すべき前記試料に前記円偏光光束を当てる段階;
前記試料から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び
前記発せられる波長の光強度から少なくとも一のパラメータを決定し、及びそのデータを、その試料を記述する等式と適合させる段階、
を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延及び光軸の方位から選択される少なくとも一のパラメータの決定方法。
【請求項2】
前記円偏光が前記暗視野にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円偏光が前記明視野にある請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料がセルロース系繊維であり、及び相対的位相遅延を決定する請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料がセルロース系繊維であり、及び光軸の方位を決定する請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記試料がセルロース系繊維であり、並びに前記セルロース系繊維の相対的位相遅延及び光軸の方位を決定し、前記セルロース系繊維が前記円偏光中に、制限の無い方向で配置されている請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2波長で円偏光を作製する段階;
前記円偏光を測定すべき木材繊維に当てる段階;
前記木材繊維から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び
相対的位相遅延、及びこれをもとに壁厚を、並びに、前記木材繊維から発せられる波長の光強度から、前記木材繊維のS2傾斜角を、前記データを前記木材繊維を記述する等式と適合させることにより、決定する段階、
を含む、3層S1、S2及びS3から成る壁を持ち、外側の2層S1及びS3は繊維縦軸に関して横に配位されたミクロフィブリルを持ち、並びに中間の支配的な層S2は傾斜角で螺旋状に巻き付くミクロフィブリルを持つ非修飾木材繊維の、壁厚に関連する前記相対的位相遅延、及び傾斜角を決定するための請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記円偏光が前記暗視野にある請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記円偏光が前記明視野にある請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記多層化複屈折性試料が木材及び非木材繊維から成るセルロース系繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から選択される請求項1−9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多重の明確な波長を持つ光を提供するために有効な光源;
前記光源から、暗視野又は明視野にある円偏光を生成させる円偏光システム;
前記生成された円偏光の通路中において前記システム内に試料を設置する手段;
前記試料から発せられる光の光強度を決定する手段;及び
前記発せられる光強度から前記試料の特性を決定する処理及びデータ解析手段、
を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延、及び光軸の方位を決定するための装置。
【請求項12】
前記円偏光システムが、偏光子及び検光子、並びに前記光源の波長にわたる作動波長範囲を持ち、光軸が相互に90°で、かつ偏光子及び検光子に対して45°の、一対の調和した色収差の無い1/4波長リターダーから成る、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光強度を決定する手段が、
顕微鏡偏光撮像用のコンデンサ及び対物レンズ;
発せられる複数の波長において、前記試料の多重円偏光画像を同時に捕獲するための画像捕獲器;
個々の波長において光強度を決定するための多重画像用画像処理装置、並びに多重画像解析用及びデータ解析に重要な領域を決定するための画像解析器を含む画像処理及び解析システム、
を含む、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記処理及び解析手段が、前記円偏光システムから発せられる波長の強度のデータから、試料の相対的位相遅延、及び光軸の方位を決定するための非線形フィッティングルーチンを含む、請求項11、12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記画像捕獲器が、多波長検出器、多波長カメラ、又はマルチチャンネルデジタルカメラである請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記円偏光システムが前記暗視野にある円偏光を産生する、請求項11、12、13、14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記円偏光システムが前記明視野にある円偏光を産生する、請求項11、12、13、14又は15に記載の装置。
【請求項18】
前記多層化複屈折性試料が、木材及び非木材繊維から成るセルロース系繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から選択される請求項11−17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記光源が、十分に分離された、しかしなおも前記色収差の無い 1/4波長 リターダーの許容できる作動波長範囲内にあり、前記波長が250nmから1000nmの範囲である、多数の、多重の明確な所定の波長を提供する、請求項11から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項1】
暗視野又は明視野にある円偏光を作製する段階、前記光は複数の明確な波長を持ち、ここで、前記複数は、少なくとも、評価中の多層化試料において決定すべきパラメータの数と同じ数である;
評価すべき前記試料に前記円偏光光束を当てる段階;
前記試料から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び
前記発せられる波長の光強度から少なくとも一のパラメータを決定し、及びそのデータを、その試料を記述する等式と適合させる段階、
を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延及び光軸の方位から選択される少なくとも一のパラメータの決定方法。
【請求項2】
前記円偏光が前記暗視野にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記円偏光が前記明視野にある請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料がセルロース系繊維であり、及び相対的位相遅延を決定する請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料がセルロース系繊維であり、及び光軸の方位を決定する請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記試料がセルロース系繊維であり、並びに前記セルロース系繊維の相対的位相遅延及び光軸の方位を決定し、前記セルロース系繊維が前記円偏光中に、制限の無い方向で配置されている請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2波長で円偏光を作製する段階;
前記円偏光を測定すべき木材繊維に当てる段階;
前記木材繊維から発せられる波長の光強度を記録し、及び測定する段階;及び
相対的位相遅延、及びこれをもとに壁厚を、並びに、前記木材繊維から発せられる波長の光強度から、前記木材繊維のS2傾斜角を、前記データを前記木材繊維を記述する等式と適合させることにより、決定する段階、
を含む、3層S1、S2及びS3から成る壁を持ち、外側の2層S1及びS3は繊維縦軸に関して横に配位されたミクロフィブリルを持ち、並びに中間の支配的な層S2は傾斜角で螺旋状に巻き付くミクロフィブリルを持つ非修飾木材繊維の、壁厚に関連する前記相対的位相遅延、及び傾斜角を決定するための請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記円偏光が前記暗視野にある請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記円偏光が前記明視野にある請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記多層化複屈折性試料が木材及び非木材繊維から成るセルロース系繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から選択される請求項1−9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
多重の明確な波長を持つ光を提供するために有効な光源;
前記光源から、暗視野又は明視野にある円偏光を生成させる円偏光システム;
前記生成された円偏光の通路中において前記システム内に試料を設置する手段;
前記試料から発せられる光の光強度を決定する手段;及び
前記発せられる光強度から前記試料の特性を決定する処理及びデータ解析手段、
を含む、多層化複屈折性試料の相対的位相遅延、及び光軸の方位を決定するための装置。
【請求項12】
前記円偏光システムが、偏光子及び検光子、並びに前記光源の波長にわたる作動波長範囲を持ち、光軸が相互に90°で、かつ偏光子及び検光子に対して45°の、一対の調和した色収差の無い1/4波長リターダーから成る、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記光強度を決定する手段が、
顕微鏡偏光撮像用のコンデンサ及び対物レンズ;
発せられる複数の波長において、前記試料の多重円偏光画像を同時に捕獲するための画像捕獲器;
個々の波長において光強度を決定するための多重画像用画像処理装置、並びに多重画像解析用及びデータ解析に重要な領域を決定するための画像解析器を含む画像処理及び解析システム、
を含む、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記処理及び解析手段が、前記円偏光システムから発せられる波長の強度のデータから、試料の相対的位相遅延、及び光軸の方位を決定するための非線形フィッティングルーチンを含む、請求項11、12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記画像捕獲器が、多波長検出器、多波長カメラ、又はマルチチャンネルデジタルカメラである請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記円偏光システムが前記暗視野にある円偏光を産生する、請求項11、12、13、14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記円偏光システムが前記明視野にある円偏光を産生する、請求項11、12、13、14又は15に記載の装置。
【請求項18】
前記多層化複屈折性試料が、木材及び非木材繊維から成るセルロース系繊維、並びに木材及び非木材パルプ繊維から選択される請求項11−17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記光源が、十分に分離された、しかしなおも前記色収差の無い 1/4波長 リターダーの許容できる作動波長範囲内にあり、前記波長が250nmから1000nmの範囲である、多数の、多重の明確な所定の波長を提供する、請求項11から18のいずれか一項に記載の装置。
【図1(b)】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図13(a)】
【図13(b)】
【図14】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図4】
【公表番号】特表2007−513342(P2007−513342A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541770(P2006−541770)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002033
【国際公開番号】WO2005/054825
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500432837)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/CA2004/002033
【国際公開番号】WO2005/054825
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500432837)
【Fターム(参考)】
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