説明

円形ブランクから眼科用レンズを製造するための方法

本発明においては、プラスチック製成形部材を使用して眼科用レンズまたは他の光学的成形ボディを製造するために、プラスチック製成形部材が、非切断的な成形操作によって形成されたものであるとともに、その後、機械加工ステップによってさらに加工されるものとされる。プラスチック製成形部材は、互いに異なる2つのプラスチック材料を堅固に連結してなるプラスチック製円形ブランク(1)とされる。内側に位置したレンズ部材(2)は、高品質材料から形成され、レンズ部材(2)を同心的に囲むリング状固定部材(3)は、安価な材料から形成される。レンズ部材(2)の双方の面は、任意の幾何形状を有することができる。機械加工時には、リング状固定部材(3)を使用することによって、ワークピース(9)を取り付けるとともに、ワークピース(9)を安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より一般的には眼鏡として公知であるような眼科用レンズを製造する方法に関するものである。本発明は、さらに、眼科用レンズを製造するための円形ブランク、および、プラスチック材料から形成された他の形態のボディ、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
すべての機械加工プロセスにおいて、基本的なプロセス部材は、切断ツールと、ワーク保持固定部材と、である。プラスチック眼鏡の機械加工を行う際には、ワークの保持は、特に重要である。なぜなら、外力を受けた時に、レンズが容易に変形してしまうからである。
【0003】
したがって、ワーク保持方法においては、基本的に、以下のことを行わなければならない。
−ワークピースを正確に位置決めすること。
−機械加工時に、ワークピースを絶対に移動させないこと。
−切断力やクランプ力に基づく歪みをワークピースに生じさせないこと。
【0004】
重量を最小化し得るように、眼鏡の厚さを最適化することが周知である。この最適化プロセスにおいては、与えられたレンズフレームに対して適合しなければならないレンズのエッジについてはそのままに維持しつつ、プラスパワーのレンズの中央部分の厚さを、低減させる。マイナスパワーのレンズの場合には、エッジを除いて、中心部分の厚さを、レンズの機械的安定性を保証し得る限りにおいて、最小限にまで低減させる。
【0005】
このいわゆる厚さ最適化は、次のような様々な問題を引き起こす。
−表面の機械加工時に、レンズのエッジがカットされる。したがって、眼鏡の外径が、クランプに関して不適切なものとなる。
−レンズフレームの形状やサイズが様々であることにより、機械加工後における各レンズのエッジは、もはや円形ではない。さらなる処理を行うためには、特殊な取付デバイスや製造方法が必要とされる。また、多種多様な作業ツールが必要とされる。
−ブランクが機械加工される際に、厚さ最適化のために、また、使用しているプラスチック材料のために、各レンズの剛性が減少する。
【0006】
上記問題点を軽減するため、例えば特許文献1には、眼鏡を製造するためのブロック方法が開示されている。ブロックすなわちハンドルが、ワックスや低融点金や他の取外し可能な接着剤を使用して、レンズ表面に対して接着される。ブロックは、切断機械内においてレンズを正確に固定するための基準点をもたらす。その後、ブロックを、機械加工時に受けるいかなる切断力にも耐え得るような十分な圧力でもって、クランプする。
【0007】
このタイプのワーク保持手法は、次のような様々な欠点を有している。
−ブロックを、レンズの光学的特性に基づくようにして、正確に位置決めすることが困難である。
−接着剤からの保護のため、光学的表面を、フィルムによってコーティングしなければならない(追加的な操作)。
−接着材料のカールプロセス(収縮)が、レンズの撓みを引き起こす。
−ブロックを使用した場合には、レンズを、片面ずつしか機械加工できない。
−ブロックおよび保護フィルムを、その後、レンズから取り外さなければならない(その後のプロセス)。
【0008】
他の方法においては、外側部分(周縁部分)のところにおいてレンズを径方向にクランプすることが提案されている。例えば、レンズブランクを挟み付けるチャックデバイス内において直接的にクランプすることが提案されている。このタイプのシステムにおいては、レンズ自体が、切断機械内における正確な固定のための基準点をもたらす必要がある。
【0009】
このタイプのワーク保持手法は、次のような様々な欠点を有している。
−クランプ用チャックからの圧力(切断力に耐える必要がある)が、ワークピースを変形させてしまい、これにより、光学的特性が悪影響を受けてしまう。
−通常のレンズブランクは、正確な基準点には、あまり適していない。通常は、レンズブランクは、十分に円形ではなく、また、インデックス付けのために使用し得るような特徴物を有してない。
−レンズブランクが、様々なサイズや形状のものであるので、直接的な径方向クランプは、自動化には適していない(ロボットツールが、様々なサイズや形状のレンズブランクに対して動作しなければならない)。
−プラスパワーのレンズは、非常に薄いエッジを有している。このようなエッジは、位置決めが困難であるとともに、クランプが困難であり、さらに、機械加工のためのクリアランスを形成することが困難である。
【0010】
上記欠点を改良するため、特許文献2には、製造されるべき眼鏡レンズの直径よりもかなり大きな直径を有しているような成型された円形ブランクから、眼鏡レンズを製造するための方法が開示されている。各ブランクは、外側部分においてクランプされ、好ましくは凸状前面をなす第1面上において機械加工される。その後、半完成したレンズが、例えばレーザーツールを使用するといった手法によって、およそ外周輪郭に沿ってレンズブランクから切り出される。その後、切り出された部分は、残部をなすエッジ部分に対して、軸方向オフセットを形成した状態で取り付けられる。エッジ部分は、リングの固定部材として機能する、すなわち、その後の機械加工操作におけるクランプ部分として機能する。
【0011】
このタイプのワーク保持主要は、次のような様々な欠点を有している。
−半完成したレンズのカットに際して、また、2つの部材の溶接を使用する場合にエッジ部分に対しての軸方向変位量を制御するに際して、精度が要求されるとともに、レーザーデバイスを有した高価な特別の機械を必要とする。追加的な操作のために、製造プロセスも、また、非常に高価なものとなる。
−2倍の切断および両部材の溶接を行うことにより、完成品のレンズは、かなりの恒久的な熱的応力を受けることとなる。しかしながら、使用されるプラスチック材料の多くは、熱的応力に極めて弱いものであり、経時的に反応を起こして、リム領域においてクラックを発生させてしまう。このことは、許容し得ないことであり、この手法における大きな欠点である。
−他の欠点は、完成したレンズをカットする際に、ワークピースのエッジ部分が、不要品として廃棄されることである。眼鏡レンズの製造に際しては高価なプラスチック材料が必要とされることのために、材料消費が大きなものとなる。
【特許文献1】独国特許出願公開第40 03 002号明細書
【特許文献2】米国特許第2003/0022610号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、切断力やクランプ力に起因する歪みをワークピースに対してもたらすことがないようなワーク保持固定部材内において眼鏡レンズを製造するための方法を提供することである。本発明の他の目的は、製造コストを低減することである。さらに、レンズブランクは、レンズの光学的特性に関して、再現性の高いものであるべきであり、正確に位置決めし得るべきである。例えばコーティングといったような追加的な操作は、要求されるべきではない。ワーク固定部材は、レンズの両面の同時的な機械加工を可能にする。
【0013】
本発明の主要な特徴点は、請求項1および請求項20に記載されている。詳細な点は、請求項2〜19、および、請求項21〜30の主題を形成する。請求項31は、円形ブランクの使用に関するものである。
【0014】
本発明においては、レンズを製造するための方法は、従来技術と比較して、プラスチック製形状部材(円形ブランク)が、互いに異なる2つの材料から構成されていて、一日の材料が、中央に配置される高品質材料とされ、かつ、他方の材料が、リム領域をなす安価な材料とされる点において、相違している。これにより、上述した直径の増大化が、安価な材料からなる外側プラスチックリングによって、もたらされる。
【0015】
以下においては、用語の単純化という理由のために、プラスチック成形部材を、プラスチック製円形ブランクと称す。プラスチック製円形ブランクは、ブランク(双方の面が、光学的品質ではない)とすることも、また、半完成した部材(一方の面が、光学的品質を有している)とすることも、できる。プラスチック製円形ブランクは、リムのところにおいて突出した構造を有していない完成品とすることができる、あるいは、プラスチック製円形ブランクは、表面から突出した形状リムを有することができる。
【0016】
しかしながら、いずれの場合においても、円形ブランクは、互いに異なる2つのプラスチック材料から形成され、中央領域は、レンズの製造に適した高品質透明プラスチックから構成される。この中央領域は、以下においては、レンズ部材と称す。このレンズ部材は、より安価な材料から形成されたプラスチックリングによって囲まれる。以下においては、このプラスチックリングを、リング状固定部材と称す。
【0017】
リング状固定部材は、レンズ部材に対して緊密に連結される。これにより、両者によって、プラスチック製円形ブランクが構成される。リング状固定部材は、眼鏡レンズの製造プロセス時に円形ブランクを取り付けて設置するためのハンドルとして機能する。したがって、リム領域に関する上記問題点に対処する必要なく、製造時に厚さの最適化を行うことができる。リング状固定部材は、すべての重要な製造ステップの最終時点において、完成したレンズ部材の狭い領域と一緒に、分離される。
【0018】
不要部分の大部分が低コスト材料から構成されていて、有利であり、また、ブロック方法に関して従来より使用されていたのと同じ直径を有していることのために、レンズの製造方法として利用可能な態様を使用することができて、有利である。しかしながら、他の直径に対する準備も行われる。非切断的な成形操作方法は、とりわけ、キャスティング、射出成形、プレス、接着、および、溶接、を備えている。切断成形操作は、とりわけ、ミリングや旋盤加工やグラインダー加工や微細グラインダー加工や研磨操作や彫刻操作を備えることを意味している。プラスチック製円形ブランクの製造の場合には、レンズ部材が、まず最初に、好ましくは、キャスティングや射出成形といったような非切断的な成形操作方法によって、形成される。可能な限り、他の製造プロセスに関連して利用可能な従来的に製造された態様が使用される。
【0019】
次に、リング状固定部材が製造され、プロセス時にまたはその後に、レンズ部材に対して連結される。製造ステップに関しては、いくつかの可能性がある。
【0020】
1.レンズ部材を、適切な態様のものとするとともに、レンズ部材の直径を、レンズ部材よりも明確に大きいものとし、リング状固定部材を、そのまわりにキャストする。この目的のために、キャスティング方法においては、流体硬化プラスチックを使用する、あるいは、プラスチックを射出成型し、プラスチック材料を、熱供給の下で可塑化させ、レンズ部材のまわりに加圧状態で注入する。このような方法においては、リング状固定部材が、製造プロセス中にレンズ部材に対して既に緊密に固定されているので、両部材のその後の接着操作を、省略することができる。
【0021】
2.リング状固定部材を、キャスティングや射出成形や円筒体の切断などといったような手法を使用して、個別部材として製造する。その後、そのような方法で形成されたリング状固定部材を、レンズ部材に対して連結する。この場合にも、いくつかの可能な手法があり、例えば、レーザー溶接や、超音波溶接などがある。レンズ部材のリム領域で行われる可能な変更は、重要ではない。なぜなら、その後、リング状固定部材が、完成したレンズから切断されるからである。切断は、高品質材料内において行われ、接合部は、切り落とされる。レンズ部材をなす高品質材料のわずかな部分しか、切り落とされない。これにより、切り落とされる高品質材料の量を、著しく低減することができる。
【0022】
レンズ部材の成形、リング状固定部材の成形、および、プラスチック製円形ブランクに関しての以下の加工に関しても、また、いくつかのバージョンが存在する。
【0023】
[バージョンI]
レンズ部材の非切断的な成形操作については、両面の構成に関し次のようないくつかの可能性がある。すなわち、互いに平行な2つ平面;平面、および、粗く予形成された面;粗く予形成された2つの面;および、平面または粗く予形成された面、および、光学的品質を有した第2面、がある。この場合、レンズ部材のリムは、さらに、キャストされたマークを有しており、このマークは、完成したレンズ面の軸を規定する。
【0024】
円形ブランクのレンズ部材が、第2レンズ面を得るための機械加工操作前に、光学的品質の予形成表面を既に有している場合には、レンズ部材の形状は、完成したレンズの双方の面が所望の光学的特性を有しているように計算される。したがって、一方の面が光学的品質のものとされている場合には、レンズ部材の製造のために必要とされる態様の数を、かなり低減することができる。これにより、レンズの第2面を加工する際に補間されるジオプトリーのジャンプをより大きなものとすることができる。同じ利点は、バージョンIIAおよびIIBという手法に関しても得られる(後述する)。
【0025】
リング状固定部材は、薄い円筒体のような形状とされ、レンズ部材と同様の高さのものとされる。両方の部材は、互いに連結され、これにより、プラスチック製円形ブランクを構成する。
【0026】
厚さの最適化を含んだ以下の加工ステップの際には、円形ブランクは、外側リムのところで取り付けられ、レンズボディが、切断手法(ミリング、旋盤加工、グラインダー加工、研磨操作)によって加工される。加工ツールは、円形ブランクの外側環状領域がほとんど不変の厚さを維持するようにして、使用される。この目的のために、加工ツールは、中心から加工を開始し、製造すべきレンズの外形線に沿っての移動を継続する。そして、加工ツールは、ワークピース(加工されたプラスチック製円形ブランク)のリム領域内で反転して後方側に戻るように移動する。この分だけ、上記外側環状領域が加工される。しかしながら、また、機械加工を、リム領域内から開始することができ、中心上へと移動することができる。
【0027】
製造プロセスの全体にわたって、この環状領域は、ワークピースを取り付けて設置するに際して、利用可能である。環状領域により、製造されるレンズの機械的安定性を、保証することができる。このことは、ツールによって引き起こされる大きな加工圧力を考慮すれば、大きな利点である。切断力によって引き起こされるかねないようなレンズ部材の許容し得ない変形は、環状領域による支持機能のために、発生することがない。
【0028】
プラスチック製円形ブランクの直径がより大きいことのおかげで、また、加工ツールに関する特別の制御モードのおかげで、機械加工時の厚さ最適化の際に、ワークピースの外周縁部分を過度にカットしてしまうことを回避することができる。これにより、外周リムによる取付を継続して行うことができる。
【0029】
すべての加工ステップの最終段階においては、つまり、コーティング操作とマーキング操作とに続いては、実際のレンズが、ワークピースの中心から切り抜かれる。ワークピースの環状領域および形状リムは、それぞれ、フライス盤のワークピーススピンドルに対して取り付けられる。そして、レンズの内方部分が、小さな直径のエンドミルによってカットされる。この切り抜きに際しては、また、他の方法を使用することもできる。例えば、ウォータジェットやレーザーを使用することができる。
【0030】
形状リムの輪郭は、レンズフレームの形状に対して厳密にまたは粗く(機械加工の許容範囲内で)適合することができる。しかしながら、他の輪郭(例えば、円という形態)も、また可能である。切断は、レンズ部材のリム領域のところで行われる。いずれの場合においても、これにより、レンズ部材とリング状固定部材との間の接合部は、レンズボディから切り離される。
【0031】
リング状固定部材が、リム領域の切断材料部分とは、他の種類のプラスチックから形成されていることにより、不要部分の製造ピースの大部分は、安価な材料から構成され、ごくわずかの部分が、高品質レンズ材料から構成されている。その結果、材料コストに関して、コスト的に有利である。さらなる節約は、加工ツールの調達に際して、得られる。なぜなら、大部分のメーカーによるキャストモールドを、レンズ部材の製造に際して使用することができる。
【0032】
[バージョンII]
レンズ部材は、平面あるいは粗く予形成された面が、既に光学的品質を有した第2面と組み合わされるようにして、常に製造される。また、マーキングが、レンズ部材上において行われ、これにより、キャスティングプロセスによって完成したレンズ面の軸線を規定する。ここで、リング状固定部材は、横断面形状が矩形形状または円錐台形状となるようなリング形状のものとされる。しかしながら、他の横断面形状を想定することもできる。2つの部材(レンズ部材、および、リング状固定部材)は、互いに連結されて一体化され、これにより、円形ブランクを構成する。この円形ブランクは、形状リムを備えており、形状リムは、レンズ部材の光学的品質表面を有している面からリング状固定部材が突出するようにして、構成されている。そのため、そこに、形状リムを構成する。プラスチック製円形ブランクのその面が、それ以上は加工される必要がないことにより、突出している固定部材すなわち形状リムは、さらなる機械加工を妨害する。プラスチック製円形ブランクの反対側の面(平面、または、粗く予形成された面)に関しては、妨害なくリム領域にまで加工を行うことができる。それは、プラスチック製円形ブランクの反対側の面のところにおいては、取付が形状リムを介して行われているからである。
【0033】
レンズ部材の凹状背面が光学的品質であり、かつ、形状リムがその面から突出している状況は、バージョンIIAに関するものである。他方、レンズ部材の凸状前面が光学的品質であり、かつ、形状リムがその面から突出している状況は、バージョンIIBに関するものである。
【0034】
厚さ最適化も含めたその後の加工ステップの際には、プラスチック製円形ブランクの外側部分(周縁部)が形状リムを介して取り付けられ、レンズのうちの、未だ光学的品質とはなっていない面が、加工される。この目的のために、切断手法(ミリングや旋盤加工やグラインダー加工や研磨操作)を適用する。その際、加工ツールを、特に容易に適用することができる。なぜなら、加工ツールの移動箇所には、ワークピースの構成に起因する制限物が、一切存在していないからである。よって、ワークピースのリムを超えて加工ツールを移動させることもでき(合理的な場合)、技術的に有利である。
【0035】
切断操作時には、この形状リムは、実質的に維持され、ワークピースの取付および設置に関し、すべての加工ステップにおいて利用可能である。製造されたレンズの安定化も、また、形状リムによって得られる。形状リムは、この場合にも、加工ツールによって引き起こされた大きな加工圧力を考慮すれば、大いに有利である。切断力に起因してレンズ部材の許容不可能な変形が発生することは、形状リムの支持機能によって防止される。
【0036】
プラスチック製円形ブランクのより大きな直径により、および、利用可能な形状リムにより、機械加工時には、ワークピースの外周縁は、厚さの最適化の範囲内において、わずかしか高さを失わない。外周縁部すなわち形状リムのところには、取付のためのリム領域が、十分な材料厚さでもって残ることとなる。
【0037】
すべての加工ステップの最終時点で、バージョンIに関して上述したのと同様に、実際のレンズボディが、ワークピースの中心から切り抜かれる。材料コストの節約に関して、および、加工ツールの節約に関して、同じ利点がもたらされる。
【0038】
従来のキャスティング機械および射出成型機械および加工ツールを使用することにより、バージョンI,IIに基づく方法を実施することができる。レンズ部材とリング状固定部材との連結のために必要なの技術も、また、同様に利用可能である。同様に、従来の工作機械や加工ツールを使用することによって、ワークピースのカットや研磨を行うことができる。
【0039】
CNC制御機械および適切な特殊加工ツールは、バージョンI,IIAに基づく切断や研磨に際して、有利である。バージョンIIBに関しては、より単純な工作機械を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の他の特徴点や細部や利点は、特許請求の範囲の記載を読むことにより、また、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0041】
図1a〜図1cは、非切断的な成形操作によって製造されたような、プラスチック製円形ブランク1の互いに異なる3つの実施形態を示している。図2a〜図2cは、製造プロセスを概略的に示している。
【0042】
図1aは、前面と背面とがそれぞれ平面5とされた平面的円柱体からなるレンズ部材2を備えた円形ブランク1に関するものである。このレンズ部材2は、大きな屈折率を有した高品質の透明プラスチック材料から形成されている。このプラスチック材料は、眼鏡レンズの製造に好適なものであり、したがって、高価なものである。レンズ部材2は、例えばキャスティングや射出成形やプレス等といったような非切断的な成形操作によって製造されたものである。
【0043】
リング状固定部材3の形状は、矩形横断面形状を有した平面的円筒体とされている。リング状固定部材3の高さは、レンズ部材2の高さに対応している。リング状固定部材3は、レンズ部材2の特性に適合する特性を有した安価なプラスチックから構成されている。よって、これら部材2,3は、何らの問題なく、互いに連結することができる。リング状固定部材3は、非切断的な成形操作によって製造し得るものではあるけれども、迅速なシーケンスで大量のこれらリング状固定部材3を製造し得るよう、プレキャストされたプラスチック製円筒チューブをカットすることによって製造することもできる。
【0044】
その後、完成したリング状固定部材3は、レンズ部材2に対して連結される。これにより、円形ブランク1が形成される。そのような連結は、接着プロセスとすることができる。接着プロセスにおいては、液体プラスチックが、例えば紫外線の照射によってあるいは硬化剤の添加によって、硬化される。しかしながら、溶接操作によって、連結することもできる。その場合には、必要な熱は、例えばレーザー技術によってまたは超音波技術によって、供給される。また、他の溶接操作を使用することもできる。
【0045】
さらに、レンズ部材2を成形した後に、リング状固定部材3は、キャスティングあるいは射出成形操作により、レンズ部材2の周囲で成型される。この場合、リング状固定部材3の材料が、液体であることにより、特に、液体プラスチックまたは加熱された熱可塑性材料であることにより、このキャスティング操作は、レンズ部材2とリング状固定部材3との間における固体接着をもたらす。
【0046】
図1bは、非切断的な成形操作によって前もって一面が凹面4へと予成形されているようなレンズ部材2を備えた円形ブランク1に関するものである。凹面4は、大まかに予成形することができる。あるいは、凹面4は、光学的品質を有した表面にまで成形することができ、よって、この時点で既に、レンズの凹状背面を形成しているものとすることができる。プラスチック製円形ブランク1の他方の面は、平面5とされている。リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1aに関連して既に上述したものと同じである。
【0047】
図1cは、非切断的な成形操作によって前もって両面がそれぞれ凹面4および凸面6へと予成形されているようなレンズ部材2を備えた円形ブランク1を示している。凹面や凸面は、大まかに予成形することができる。あるいは、両面のうちの一方の面が、好ましくは凹面が、既に光学的品質のものであるように、したがって、レンズの完成した面となっているように、成形することができる。リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1aに関連して既に上述したものと同じである。
【0048】
図2aは、図1bのような形状とされた円形ブランク1を、工作機械(図示せず)のワークピーススピンドル8に対して固定された取付ツール7内へと、設置した様子を示している。光学的品質の凹面4は、従来的なミリングや旋盤加工やグラインダー加工や研磨操作によって、形成される。この場合、リング状固定部材3は、わずかにカットされる。レンズ部材2の凹面4は、眼鏡レンズ12の完成した背面である。
【0049】
プラスチック製円形ブランク1という用語は、厳密に言えば、未加工の部材のみを意味している。このため、これ以降は、予加工されたプラスチック製円形ブランク1のことを、ワークピース9と称する。
【0050】
図2bにおいては、ワークピース9は、180°にわたってひっくり返されており、同じ取付ツール7内へと再び挿入されている。この時点では、光学的品質をなす凹面4は、工作機械のワークピーススピンドル8に対して固定された取付ツール7の方を向いている。上記において言及した切断操作によって、凸面11を、光学的品質のものとして製造した。これにより、レンズ部材2は、眼鏡レンズ12の完成した前面を有している。
【0051】
加工ツールを適切に操作することにより、環状領域10を、予成形した。これにより、環状領域10を、以降の加工ステップの際に、取付および固定に利用し得るものとした。この環状領域10は、主に、リング状固定部材3をなす安価な材料からなるものである。環状領域10は、さらに、薄いリム領域内において、ワークピース9に対する支持体としても機能する。
【0052】
環状領域10は、ツールがワークピース9の外周縁をカットしないようにして、および、可能であれば取付ツール7の外周縁をもカットしないようにして、ワークピース9のリム領域内において加工ツールを上向きに移動させることのみにより、形成することができる。取付ツール7の外周縁のカットは、もしも、加工ツールが凸面11の輪郭に追従し続けた場合に、起こるであろう。
【0053】
環状領域10は、大部分が、リング状固定部材3をなす安価な材料からなるものであり、わずかな部分だけが、レンズ部材2をなす高品質材料からなるものである。
【0054】
その後、環状領域10からの実際のレンズ12の分離は、断面図内において2つの一点鎖線13によって示されている輪郭に沿って、行われる。この輪郭は、与えられたレンズフレームに対して、正確にあるいは許容誤差範囲内において、対応する。これにより、眼鏡業者は、それを適用することができる。
【0055】
図2cにおいては、レンズ12および環状領域10は、レンズフレームの形状によって与えられかつ一点鎖線13によって示されている輪郭に沿って、既に互いに分離されたものとして、図示されている。
【0056】
レンズ12は、全体が、高品質の材料からなるものである。他方、不要部分18は、大部分が、リング状固定部材3をなす安価な材料からなるものであり、わずかな部分が、レンズ部材2の狭いリム領域15からなるものである。これにより、かなりの材料節約を行うことができる。
【0057】
ワークピース9からレンズ12を分離するに際しては、レンズ部材2をなす材料内において完全なカットを行うことのために、接合部14は、不要部分18内において、レンズ部材をなす材料と、リング状固定部材3と、の間に位置する。したがって、この干渉領域は、眼鏡レンズ12に悪影響を及ぼし得ない。
【0058】
操作手順のこのバージョンIの利点は、両面に対して加工を行い得ることであり、そのため、眼鏡レンズ12は、要求に応じた任意の形状に加工することができる。貯蔵費用も、また、比較的低い。それは、完成した表面を備えたプラスチック製円形ブランク1を、少量だけ貯蔵するだけで良いからである。その上、材料コストは、リム領域が安価な材料であるからである。また、利用可能な成形ツールを使用し得ることのために、さらなる低コスト化を行うことができる。
【0059】
図3aおよび図3bは、非切断的な成形操作によって形成されたような、円形ブランク1の互いに異なる2つの実施形態を示している。図4aおよび図4bは、概略的な製造シーケンスを示している。
【0060】
特に、図3aおよび図3bは、非切断的な成形操作により形成された形状リム16を有したプラスチック製円形ブランクに関する互いに異なる2つの実施形態を示している。このバージョンIIAにおいては、凹面4は、必ず、光学的品質を既に有したものとされている必要がある。なぜなら、凹面4が、それ以上の機械加工のためにアクセスを行えないところであるからである。
【0061】
図3aは、リング状固定部材3によって形成された形状リム16を有したプラスチック製円形ブランク1を図示している。形状リム16は、レンズ部材2を超えてかなり突出している。このことは、切断操作時に、製造に関連した利点を有している。レンズ部材2の1つの面に関し、光学的品質の凹面4が、予成形されていなければならない。なぜなら、上述したように、その面は、機械加工をしようとしても、突出した形状リム16のために、自由にアクセスできないからである。
【0062】
この凹面4は、既に、レンズ12の完成した背面である。レンズ部材2の反対側の面は、平面5とされている。リング状固定部材3によって形成された形状リム16が、平面5と比較して、形状リム16の頂面17と一緒に、わずかに下方に位置していることが理解される。また、他の実施形態においては、頂面17と平面5とを同一平面的なもの(面一)とすることが想定される。
【0063】
リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1aに関連して既に上述したものと同じである。
【0064】
図3bは、非切断的な成形操作を使用してそれぞれ凹面4および凸面6が予形成されたレンズ部材2と、形状リム16と、を備えているプラスチック製円形ブランク1を示している。
【0065】
凸面6は、粗く予成形された面であって、さらなる機械加工を施す必要がある。しかしながら、凹面4は、必ず、非切断的な成形操作によって既に光学的品質を有している必要がある。これは、突出した形状リム16にために、さらなる機械加工に関して、凹面4に対してアクセスし得ないからである。
【0066】
図3bに示すように、この場合にも、リング状固定部材3によって形成された形状リム16の頂面17は、凸面6と比較して、わずかに下方に位置している。しかしながら、他の実施形態を想定することもできる。
【0067】
リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1a〜図1cに関連して既に上述したものと同じである。
【0068】
図4aは、元々の形状が図3bに示すものとされたプラスチック製円形ブランク1を機械加工することによって得られたワークピース9を示している。ワークピース9は、工作機械(図示せず)のワークピーススピンドル8に対して連結された取付ツール7内に挿入されている。凸面6は、従来的なミリングや旋盤加工やグラインダー加工や研磨操作によって、光学的品質を有したものとして製造される。この場合、リング状固定部材3によって形成された形状リム16は、わずかにカットされる。レンズ部材2の凸面6は、レンズ12の完成した前面である。したがって、レンズ12の両方の面が、光学的品質のものである。
【0069】
その後、形状リム16からの実際のレンズ12の分離は、図4aに示す断面図内において2つの一点鎖線13によって示されている輪郭に沿って、行われる。この輪郭は、与えられたレンズフレームに対して、正確にあるいは許容誤差範囲内において、対応する。これにより、眼鏡業者は、それを適用することができる。
【0070】
図4bは、レンズフレームの形状によって与えられた分離境界13に基づく輪郭に沿って、ワークピース9からレンズ12が分離された様子を示している。
【0071】
レンズ12は、全体が、高品質の材料からなるものである。他方、不要部分18は、リング状固定部材3と、レンズ部材2の狭いリム領域15と、からなるものである。よって、不要部分18は、大部分が、リング状固定部材3をなす安価な材料からなるものであり、わずかな部分が、レンズ部材2からなるものである。これにより、かなりの材料節約を行うことができる。
【0072】
ワークピース9からのレンズ12の切断分離が、レンズ部材2をなす材料内において完了していることのために、接合部14は、不要部分18内において、レンズ部材をなす材料と、リング状固定部材3または形状リム16と、の間に位置する。したがって、この干渉領域は、レンズ12に悪影響を及ぼし得ない。
【0073】
操作手順のこのバージョンIIAの利点は、凸面6に対するアクセスが非常に良好であって、凸面6の機械加工を行いやすいことである。これにより、製造コストを節約することができる。その他に、リム領域がより安価な材料から形成されていることにより、材料コストが、より低いことである。加えて、利用可能な成形ツールを使用し得ることのために、さらなる低コスト化を行うことができる。
【0074】
図5aおよび図5bには、非切断的な成形操作によって形成された円形ブランク1に関する互いに異なる2つの実施形態が示されている。図6aおよび図6bは、概略的な製造シーケンスを示している。
【0075】
とりわけ、図5aおよび図5bは、非切断的な成形操作により形成された形状リム16を有したプラスチック製円形ブランクに関する互いに異なる2つの実施形態を示している。このバージョンIIBにおいては、凸面6は、必ず、光学的品質を既に有したものとされている必要がある。なぜなら、凸面6が、それ以上の機械加工のためにアクセスを行えないところであるからである。
【0076】
図5aは、プラスチック製円形ブランク1を図示している。プラスチック製円形ブランク1は、レンズ部材2と、このレンズ部材2を囲んでいるとともにリング状固定部材3によって形成された形状リム16と、を備えている。レンズ部材2の一方の面は、凸面6とされている。他方、レンズ部材2の反対側の面は、平面5とされている。
【0077】
図5aに示すように、形状リム16の頂面17は、製造に関連する理由(切断スクラップの量を少なくする)のために、平面5と比較して、わずかに下方に位置している。
【0078】
また、他の実施形態においては、頂面17と平面5とを同一平面的なもの(面一)とすることが想定される。形状リム16は、凸面6側において、レンズ部材2をかなり超えて突出している。このことも、また、切断操作において利点をもたらす。
【0079】
上述したように、非切断的な成形操作により予形成されたレンズ部材2は、一方の面として、凸面6を有している。この場合、凸面6は、光学的品質を有していなければならない。なぜなら、その面は、機械加工をしようとしても、突出した形状リム16のために、自由にアクセスできないからである。したがって、この凸面6は、既に、レンズ12の完成した前面である。リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1a〜図1cに関連して既に上述したものと同じである。
【0080】
図5bは、また、成形リム16を備えているプラスチック製円形ブランク1を図示している。プラスチック製円形ブランク1は、非切断的な成形操作によって予形成されたそれぞれ凹面4および凸面6を備えている。
【0081】
図5bに示すように、リング状固定部材3によって形成された形状リム16の頂面17は、この場合にも、製造に関連する理由のために、凹面4と比較して、わずかに下方に位置している。しかしながら、他の実施形態を想定することもできる。形状リム16は、凹面側において、レンズ部材2をかなり超えて突出している。このことも、また、切断操作において利点をもたらす。
【0082】
凹面4は、粗く予成形された面であって、さらなる機械加工を施す必要がある。しかしながら、凸面6は、必ず、非切断的な成形操作によって既に光学的品質を有している必要がある。これは、突出した形状リム16にために、さらなる機械加工に関して、凸面6に対してアクセスし得ないからである。この場合にも、リング状固定部材3の製造や、材料の選択や、製造プロセスは、図1a〜図1cに関連して既に上述したものと同じである。
【0083】
図6aは、元々の形状が図5bに示すものとされたプラスチック製円形ブランク1を機械加工することによって得られたワークピース9を示している。ワークピース9は、工作機械(図示せず)のワークピーススピンドル8に対して連結された取付ツール7内に挿入されている。
【0084】
凹面4は、従来的なミリングや旋盤加工やグラインダー加工や研磨操作によって、光学的品質を有したものとして製造される。この場合、リング状固定部材3によって形成された形状リム16は、わずかにカットされる。レンズ部材2の凹面4は、レンズ12の完成した背面である。したがって、レンズ12の両方の面が、光学的品質のものである。
【0085】
その後、ワークピース9からの実際のレンズ12の分離は、図6aおよび図6bに示す断面図内において2つの一点鎖線13によって示されている輪郭に沿って、行われる。この輪郭は、与えられたレンズフレームに対して、正確にあるいは許容誤差範囲内において、対応する。これにより、眼鏡業者は、それを適用することができる。
【0086】
図6bは、レンズフレームの形状によって決定された分離境界13に基づく輪郭に沿って、ワークピース9からレンズ12が分離された様子を示している。
【0087】
レンズ12は、全体が、高品質の材料からなるものである。他方、不要部分18は、リング状固定部材3または形状リム16と、レンズ部材2の狭いリム領域15と、からなるものである。この理由のために、不要部分18は、大部分が、リング状固定部材3をなす安価な材料からなるものであり、わずかな部分が、レンズ部材2からなるものである。これにより、かなりの材料節約を行うことができる。
【0088】
ワークピース9からのレンズ12の切断分離が、レンズ部材2をなす材料内において完了していることのために、接合部14は、不要部分18内において、レンズ部材をなす材料と、リング状固定部材3と、の間に位置する。したがって、この干渉領域は、レンズ12に悪影響を及ぼし得ない。
【0089】
操作手順のこのバージョンIIBの利点は、凹面4に対するアクセスが非常に良好であって、凹面4の機械加工を行いやすいことである。これにより、製造コストを節約することができ、さらに、材料コストを、より安価なものとすることができる(リム領域が、より安価な材料から形成されている)。加えて、利用可能な成形ツールを使用し得ることのために、加工ツールに関してさらなる低コスト化を行うことができる。
【0090】
図7は、本発明による円形ブランク1の他の実施形態を示している。この円形ブランク1は、レンズ部材2と、リング状固定部材30と、を備えている。リング状固定部材30は、底部の近傍においてフランジ34を形成している凹所32を有している。フランジ34は、リング状固定部材30内に挿入されたレンズ部材2を支持する。リング状固定部材30は、接着剤によって、レンズ部材2の外側部分(周縁部)26に接着される。リング状固定部材30は、ツールに対する損傷を引き起こすことなくかつ削り屑による汚染を引き起こすことなくレンズ製造プロセスにおいて容易に機械加工され得るような低コストプラスチック材料から形成されている。
【0091】
フランジ34の機能は、リング状固定部材30がなすボディに対して、レンズ部材2の高さをセットして、組立プロセスを単純化することである。もし仮にフランジ34がそこに無ければ、高さを、ある種の固定手段によってセットしなければならなくなる。リング状固定部材30の中にフランジ34を組み入れることにより、個別の固定手段を別途に設ける必要性を排除することができる。
【0092】
図7に示すように、リング状固定部材30には、径方向リブ36と、これらリブどうしの間に位置したスペーサ37と、を設けることができる。これらリブ36は、機械加工プロセス時におよび研磨プロセス時に構成部材の強度や安定性を損なうことなく、材料容積を節約することを目的としたものである。射出成形プロセスを使用することにより、リング部材30を、低コストで製造することができる。
【0093】
リング状固定部材30の底部は、その外側部分16のところに、カラー38を有している。このカラー38により、円形ブランク1を、様々なワークステーションにおいて、把持したりクランプしたりすることができる。カラー38は、フラットな環状当接リム39(基準点Aを与える)によって、規定されている。フラットな環状当接リム39は、適切な支持体に対しての、あるいはワークステーションの取付ツール7に対しての、円形ブランク1の安定かつ正確な着座を可能とする。当接リムは、好ましい実施形態においては、円形ブランク1の軸線Lに対して同軸的なカラー38の外側部分35(基準点Bを与える)に対して、垂直なものとされる。
【0094】
さらなる実施形態においては、リング状固定部材30および/またはカラー38は、機械的な位置決め(基準点を与える)のために、少なくともそれらの寸法の分だけは、互いに離間している2つ以上の径方向反対側に位置した部材(示されない)を有している。このことは、位置合わせの精度および信頼性を増大させる。
【0095】
図8aに示すような第1ステップにおいては、レンズ部材2を、リング状固定部材30の中に挿入する。レンズ2とリング30との間の接合部14に対して接着剤を適用する。この組立に際しては、精度は要求されない。レンズ部材2は、特に優れた特徴物を有している必要も、また、円形外側部分を有している必要も、ない。硬化後に、レンズ部材2は、リング状固定部材30の正確な基準点A,Bを使用することができる。
【0096】
円形ブランク1を、リング状固定部材の基準点による位置決めを行いつつ、切断機械内へと設置し、さらに、リング30の外側部分16上において径方向に、あるいは、軸方向に、クランプする。クランプ力は、レンズ部材2に対して伝達されない。つまり、一切のストレスが生じない。その後、第1面11を機械加工する。
【0097】
第1面の機械加工の後には(図8bを参照)、リング状固定部材30のいくらかの部分は、切断ツールのサイズにより消費されることとなる。しかしながら、その後の操作の際にレンズ部材2を支持し得るに十分なだけのリング30が、残されている。次に、ワークピース9をひっくり返し、同じ基準点A,Bを使用して、再度固定し、上記と同様にしてクランプする。図8cに示すようにして、第2面を、機械加工する。
【0098】
レンズ2の第2面がカットされた後においては、リング状固定部材30のより多くの部分が消費されることとなる。フレームやレンズの幾何形状によっては、リング30の小さな部分が、完全に切断される可能性がある。その場合でも、クランプ力またはツール力がレンズ部材2に対して歪みを引き起こし得ない程度に十分なリング状固定部材が、残されている。
【0099】
代替可能な例においては、リング状固定部材30は、その構成の一部として、正確な基準点A,Bを有することができる。あるいは、他の代替可能な例においては、リング状固定部材30は、剛直なパレット40(図9aおよび図9bを参照)内へと取り付けられる。剛直なパレット40は、それ自体が正確な基準点Cを有しているものであって、再使用可能とされている。リング状固定部材30は、機械的手段(図示せず)を使用して剛直なパレット40に取り付けられ、正面をなす光学表面のカットと背面をなす光学表面のカットとの双方に際して、パレットの基準点Cを利用することができる。
【0100】
上述したワーク保持方法は、次のような様々な利点を有している。
−正確な基準を与える特徴物を有しているために、正確な固定を行うことができる。
−再取付を行う必要なく、同一の基準点セットを参照しつつ、レンズの両面(凸面および凹面)の機械加工を行うことができる。
−リング状固定部材30が、機械の把持システムからのクランプ力を吸収し、これに代えて、レンズの変形を防止することができる。
−薄いエッジをカットし得るとともに、非円形のレンズ形状をカットすることができる。
−接着ステップにおいて精度が要求されない。なぜなら、リング状固定部材30によって提供される基準点を使用して、特にカラー38を使用して、両方の表面が機械加工されるからである。
−保持に起因する変形(収縮)が、無視できる程度のものである。なぜなら、レンズの表面上においてではなく、レンズ部材2の外側部分回りにおいて一様であるからである。
−レンズ部材2上に、表面保護物が不要である。
−リング状固定部材30の外側部分は、ブロックレンズの場合と比較して、より容易に固定することができる。このことは、オートメーション化に際して、また、例えばマーキングやクリーニングやコーティングや硬化や検査といったようなその後のプロセスに際して、有利である。
−リング状固定部材30は、機械加工プロセスの一部としてカットすることができる。これにより、薄いエッジ形状や非円形形状であっても、機械加工することができる。
−工作機械からの取外し後に、基準点は、なおも、レンズアセンブリ(円形ブランク1)の一部である。このことは、その後のプロセスに際して有用である。
【0101】
上記項目に加えて、光学材料の廃棄に関して、利点がある。外側部分を把持する場合には、レンズブランク1の初期サイズは、十分な把持クリアランスをもたらすためには、完成品のレンズサイズと比較して、より大きなものとしなければならない。レンズ12は、エッジのところまではカットすることができず、また、チャックと干渉することなしには最小のエッジ厚さにまでカットすることができない。
【0102】
リング状固定部材30の使用により、同じサイズの完成品のレンズの製造に関し、ブランク直径と厚さとの双方を低減することができる。これにより、高価な光学レンズ材料の廃棄量を少なくすることができる。
【0103】
特許請求の範囲や詳細な説明や図面から派生し得るような、構成の細部や空間的構成や製造ステップも含めたような、すべてのおよび任意の特徴点や利点は、それ自体が重要な発明であるとともに、それらの様々な組合せも重要な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1a】プラスチック製円形ブランクを示す図である。
【図1b】他のプラスチック製円形ブランクを示す図である。
【図1c】さらに他のプラスチック製円形ブランクを示す図である。
【図2a】図1a〜図1cに示すプラスチック製円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図2b】図1a〜図1cに示すプラスチック製円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図2c】図1a〜図1cに示すプラスチック製円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図3a】円形ブランクの他の実施形態を示す図である。
【図3b】円形ブランクのさらに他の実施形態を示す図である。
【図4a】図3aおよび図3bに示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図4b】図3aおよび図3bに示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図5a】円形ブランクの他の実施形態を示す図である。
【図5b】円形ブランクのさらに他の実施形態を示す図である。
【図6a】図5aおよび図5bに示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図6b】図5aおよび図5bに示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図7】円形ブランクの他の実施形態を示す図である。
【図8a】図7に示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図8b】図7に示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図8c】図7に示す円形ブランクに対しての処理操作を示す図である。
【図9a】円形ブランクのさらに他の実施形態を示す図である。
【図9b】円形ブランクのさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1 プラスチック製円形ブランク
2 レンズ部材
3 リング状固定部材、ハンドル
4 凹面
5 平面
6 凸面
7 取付ツール
8 ワークピーススピンドル
9 ワークピース
10 環状領域
11 凸面
12 眼鏡レンズ
13 分離境界
14 接合部
15 狭いリム領域
16 形状リム
17 頂面
18 不要部分
26 外側部分、周縁部
30 リング状固定部材、ハンドル
32 凹所
34 フランジ
35 外側部分
36 リブ
37 スペーサ
38 カラー
39 当接リム
40 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製成形部材を使用して眼科用レンズまたは他の光学的成形ボディを製造するための方法であって、
前記プラスチック製成形部材が、非切断的な成形操作によって形成されたものであるとともに、その後、機械加工ステップによってさらに加工されるものとされ、
このような方法において、
前記プラスチック製成形部材を、互いに異なる2つのプラスチック材料を堅固に連結してなるプラスチック製円形ブランク(1)とし、
一方のプラスチック材料を、内側に位置したレンズ部材(2)とし、さらに、この内側に位置したレンズ部材(2)を、高品質材料から形成し、
他方のプラスチック材料を、このレンズ部材(2)を同心的に囲むリング状固定部材(3)とし、さらに、このリング状固定部材(3)を、安価な材料から形成し、
前記レンズ部材(2)の双方の面を、任意の幾何形状のものとし、
機械加工時には、前記リング状固定部材(3)を使用することによって、ワークピース(9)を取り付けるとともに、ワークピース(9)を安定化させ、
前記リング状固定部材(3)を、機械加工プロセスの全体にわたって維持するとともに、機械加工プロセスの最終段階で切断分離することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記非切断的な成形操作の際には、前記レンズ部材(2)を、従来のブロック方法によってプラスチック製成形部材から得られるのと同じ寸法および幾何形状のものとして形成し、
前記プラスチック製円形ブランク(1)の直径を、このプラスチック製円形ブランクの周囲に前記リング状固定部材(3)を配置することによって、所望の直径にまで拡径することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
まず最初に、前記レンズ部材(2)を、高品質材料から製造し、
その後、安価な材料からなる前記リング状固定部材(3)を、前記レンズ部材の周囲にキャストまたは射出することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
前記リング状固定部材(3)を接着する、あるいは、前記リング状固定部材(3)を、硬化剤または紫外線によって硬化するような液体プラスチックを使用して形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
前記リング状固定部材(3)を、処理のために加熱されるような熱可塑性プラスチックから形成するとともに、前記レンズ部材(2)の周囲に射出することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の方法において、
前記リング状固定部材(3)を、キャスティングまたは射出成形または円筒体の切断によって、個別部材として製造するとともに、その後、前記レンズ部材(2)に対して接着することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
接着手段を使用することによって、前記レンズ部材(2)と前記リング状固定部材(3)とを接着することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法において、
レーザーまたは超音波による溶接手段を使用することによって、前記レンズ部材(2)と前記リング状固定部材(3)とを接着することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
レンズ(12)の製造時に、厚さの最適化を行うことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法において、
前記リング状固定部材(3)を機械加工することによって、環状領域(10)の基礎部分を形成し、
以降の製造ステップにおいては、前記基礎部分を維持し、これにより、前記基礎部分を、前記ワークピース(9)の取付および安定化のために機能させ、
前記環状領域(10)の大部分を、前記リング状固定部材(3)をなす前記安価な材料から形成することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法において、
前記レンズ部材(2)の面として、2つの平面(5)を形成することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法において、
非切断的な成形操作を使用することにより、前記レンズ部材(2)を、平面(5)と、凹面(4)または凸面(6)として予成形された面と、を有するものとし、
前記凹面(4)または前記凸面(6)を、粗く予成形されたものとする、あるいは、光学的品質のものとして予成形されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法において、
非切断的な成形操作による前記レンズ部材(2)の製造時には、2つの予成形された面を形成し、
これら2つの予成形された面の各々を、粗く予成形されたものとする、あるいは、光学的品質のものとして予成形されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法において、
前記レンズ部材(2)の一方の面を、光学的品質の凹面または凸面とし、
前記リング状固定部材(3)を、前記レンズ部材の前記一方の面を超えてかなり突出したものとし、
これにより、形状リム(16)を形成し、
この形状リム(16)を、以降の製造ステップにおいて維持し、これにより、前記形状リム(16)を、前記ワークピース(9)の取付および安定化のために機能させ、
前記形状リム(16)を、前記リング状固定部材(3)をなす前記安価な材料から形成することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、
前記形状リム(16)を、前記レンズ部材(2)の前記凹面(4)から突出させ、
前記凹面(4)を、光学的品質のものとして、非切断的な成形操作によって製造することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の方法において、
前記形状リム(16)を、前記レンズ部材(2)の前記凸面(6)から突出させ、
前記凸面(6)を、光学的品質のものとして製造することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法において、
前記ワークピース(9)を機械加工した後に、前記ワークピース(9)にコーティングを施し、
前記ワークピース(9)の光学軸を、マークし、
前記レンズ(12)を、前記ワークピース(9)からカットし、
このカットを、前記レンズ部材(2)をなす前記高品質材料の内部において行うことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法において、
機械的な加工ツールまたはウォータジェットまたはレーザーを使用することによって、前記ワークピース(9)からの前記レンズ(12)のカットを行うことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法において、
前記ワークピース(9)をカットすることにより、前記レンズ(12)の輪郭を、レンズフレームに対して厳密に適合したものとしてまたはレンズフレームに対して許容誤差範囲内で適合したものとして、形成することを特徴とする方法。
【請求項20】
プラスチック材料から形成された眼科用レンズまたは他の光学的成形ボディを製造するための円形ブランクであって、
レンズ部材(2)を具備し、
このレンズ部材(2)が、機械加工ステップを使用して加工される高品質光学材料から形成され、
このような円形ブランクにおいて、
前記レンズ部材(2)が、安価な材料からなるリング状固定部材(3)によって囲まれており、
互いに異なるプラスチック材料から形成された前記レンズ部材(2)および前記リング状固定部材(3)が、互いに堅固に連結され、
前記リング状固定部材(3)が、工作機械の取付ツール(7)内に取付可能とされ、前記レンズ部材(2)と一緒に機械加工可能とされていることを特徴とする円形ブランク。
【請求項21】
請求項20記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、前記レンズ部材(2)を受領するための凹所(32)を有していることを特徴とする円形ブランク。
【請求項22】
請求項21記載の円形ブランクにおいて、
前記凹所(32)には、前記レンズ部材(2)を支持するためのフランジ(24)が設けられていることを特徴とする円形ブランク。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、リブ(36)と、これらリブどうしの間に位置したウェブまたはスペーサ(37)と、を有していることを特徴とする円形ブランク。
【請求項24】
請求項23記載の円形ブランクにおいて、
前記リブ(36)が、径方向に配置されていることを特徴とする円形ブランク。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)の周縁部(16)には、カラー(38)が設けられていることを特徴とする円形ブランク。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、前記レンズ部材(2)と同心的であることを特徴とする円形ブランク。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、射出成型された部材であることを特徴とする円形ブランク。
【請求項28】
請求項20〜27のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、例えば接着剤によって、前記レンズ部材(2)に対して接着されていることを特徴とする円形ブランク。
【請求項29】
請求項20〜28のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、機械的位置決めのための少なくとも1つの部材を有していることを特徴とする円形ブランク。
【請求項30】
請求項20〜29のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
前記リング状固定部材(3)が、ハンドルであることを特徴とする円形ブランク。
【請求項31】
請求項20〜30のいずれか1項に記載の円形ブランクにおいて、
プラスチック材料から形成された眼科用レンズまたは他の光学的成形ボディを製造するに際して使用されることを特徴とする円形ブランク。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2007−503336(P2007−503336A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524449(P2006−524449)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002721
【国際公開番号】WO2005/018919
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506062207)エシロール・ランテルナシオナル(カンパニー・ジェネラル・ドプティク) (8)
【Fターム(参考)】