円筒型アルカリ蓄電池
【課題】 生産性及び品質が高く、その上、急速充電特性や放電特性に優れた高容量の円筒型アルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】 円筒型アルカリ蓄電池は、導電性の円筒状外装缶内に、正極板24、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備える。前記外装缶の最大径をDmaxとし、正極板24の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が満たされる。例えば、AAサイズの電池では、巻回数Nは4回以上である。また、電極群の横断面でみて、正極板24の巻始め端部36の周方向位置を基準位置としたときに、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にある。
【解決手段】 円筒型アルカリ蓄電池は、導電性の円筒状外装缶内に、正極板24、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備える。前記外装缶の最大径をDmaxとし、正極板24の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が満たされる。例えば、AAサイズの電池では、巻回数Nは4回以上である。また、電極群の横断面でみて、正極板24の巻始め端部36の周方向位置を基準位置としたときに、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒型アルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒型アルカリ蓄電池、特にニッケル水素蓄電池には、高容量化が強く求められている。具体的には、AAサイズでは、体積エネルギー密度が400Wh/lを超えるニッケル水素蓄電池の開発が求められている。
そこで、例えば、特許文献1が開示するAAサイズのニッケル水素蓄電池では、正極板の厚さを厚くすることにより、高容量化が図られている。この電池では、正極板の巻回数が3回以上4回未満であって、巻回直後の電極群の断面形状が略真円形状になる。この結果として、この電池では、外装缶により大きな電極群(正極板)が収容され、高容量化が図られる。
【特許文献1】特開2005-056682号公報(例えば、特許請求の範囲等。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
確かに、特許文献1が開示するように、正極板の厚さをより厚くすることによって、より高容量の円筒型アルカリ蓄電池を得ることができる。しかしながら、この一方で、正極板の厚さを増大することは、充放電中の電流密度増大を招くことから、急速充電特性や放電特性を確保する観点からすれば好ましくない。また、正極板の厚さ・密度が増大することで、正極板の作製工程及び電池組立て工程での生産性が低下し、更に、得られた正極板及び電池の品質を維持するのも困難になる。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、生産性及び品質が高く、その上、急速充電特性や放電特性に優れた高容量の円筒型アルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記した課題を解決するにあたり、正極板の厚さを増大させるのではなく、正極板の長さを増大させることに着目した。しかし、正極板の長さを増大させた場合、正極板及び負極板の各芯体やセパレータ等、電池反応に直接関係しない部材の体積も増大するため、電池内の正極活物質量が相対的に減少し、電池容量が低下してしまう。
そこで、本発明者らは、電池容量を低下させずに正極板の長さを増大せるべく種々検討を重ね、この過程で次のように思考した。
【0006】
従来、外装缶内により大きな電極群を充填するために、巻回直後の電極群の横断面形状が真円形状に近くなるようにしていた。すなわち、正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、正極板の巻終わり端部の周方向位置から正極板に沿って測った基準位置までの角度が270°を超え且つ360°以下の範囲に入るよう、電極群を巻回していた。
【0007】
しかし、このように電極群を巻回しても、従来の電池の横断面の形状は、組立て後の活性化処理(初充放電処理)により電極群が膨張すると、真円度が低下して楕円形状になっていた。
ここで、円筒型アルカリ電池の仕様では、通常、電池の最大径のみが規定され、楕円形状の電池は、その長軸の長さが最大径を超えないように製造される。このため、楕円形状の電池の実際の体積は、仕様上の最大径から見積もられる円柱体の体積、つまり、仕様で規定される体積よりも大幅に小さくなっている。従って、もし、活性化処理後に略真円形状の電池を製造できれば、仕様で規定される体積寸前まで電池の実際の体積を増大することができ、この結果として、電池容量を低下させることなく、正極板の長さを増大することができる。
【0008】
そして、発明者は、このような思考により得られた思想を具現化すべく、更に検討を重ねた。この過程で、巻回直後の電極群の横断面形状が真円形状に近いとしても、活性化処理後に電池は略真円形状にはならず、むしろ、巻回直後の電極群の横断面形状が歪(いびつ)であっても、活性化処理後に電池が略真円形状になることがあるのを発見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、導電性の円筒状外装缶内に、正極板、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池において、前記外装缶の最大径をDmaxとし、前記正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たし、前記電極群は、巻芯を用いて巻回されて前記巻芯に対応した空洞部を中央に有し、前記電池の横断面でみて、前記空洞部を除く前記電極群の断面積を、前記外装缶の内断面積から前記電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であり、且つ、前記正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、前記正極板の巻終わり端部の周方向位置から前記正極板に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にあることを特徴とする円筒型アルカリ蓄電池が提供される(請求項1)。
【0010】
本発明の電池は、外装缶の最大径をDmaxとし、正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たす。すなわち、電池がAAサイズならば、正極板の巻回数は4回以上であり、電池がAAAサイズならば正極板の巻回数は2回以上である。このように、本発明の電池では、最大径の割合に正極板の巻回数が多く、電池反応に関与する正極板の面積が広いことから、充放電時の電流密度が低くなる。このため、この電池は、高容量化に適するのみならず、急速充電特性及び放電特性においても優れている。
【0011】
また、本発明の電池によれば、正極板の巻回数を増やすことにより高容量化が図られており、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べ、正極板の作製や巻回が容易であり、電池の生産性や品質が高くなる。
更に、本発明の電池によれば、正極板の巻終わり端部の周方向位置から正極板に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部の周方向位置までの角度θが180°以上270°以下の範囲にあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
【0012】
この電池では、角度θが上記範囲にあるため、巻回直後の形状でみれば、電極群の外径が正極板の巻終わり端部の周方向位置にて顕著に増大し、電極群の横断面形状は従来の電極群よりも歪である。
そして、電池の横断面でみたときに、空洞部を除いた電極群の断面積を、外装缶の内断面積から電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であるため、外装缶内に歪な電極群が収容されると、内側からの押圧力により外装缶の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の横断面形状も真円度が低下し、楕円形状になってしまう。
【0013】
しかし、この電池では、活性化処理により電極群が膨張したときに、角度θが上記した範囲にあるため、電極群の空洞部が従来よりも大きく潰れる。これは、正極板の巻始め端部及び巻終わり端部の周方向位置での正極板の膨張力が、正極板及び負極板の最内周部に対する圧縮力として有効に作用するためと考えられる。
このように、空洞部が大きく潰れ、電極群が径方向内側に向けて大きく膨張すると、電極群に残されていた空洞部が発電要素としての正極板及び負極板により占有されて有効に活用されることになる。また、空洞部が大きく潰れることにより、電極群の径方向外側に向けた膨張が抑制されるとともに、その横断面形状が真円形状になるよう電極群が膨張する。この結果として、この電池の真円度は活性化処理により高くなり、電池の実際の体積が仕様上の体積寸前まで増大され、高容量化が図られる。
【0014】
好適な態様として、円筒型アルカリ蓄電池は、前記巻始め端部を含む前記正極板の1巻の径方向外面を覆う絶縁性の最内周保護部材を更に備える(請求項2)。この態様では、内部短絡が容易且つ確実に防止され、生産性及び品質がより一層高くなる。これは以下の理由による。
本発明の電池では、正極板の巻回数が多いことから、電極群中央の空洞部が小さくなることに加え、活性化処理により空洞部が大きく潰れることから、巻始め端部を含む正極板の1巻(最内周部)には、内部短絡の原因になる破断や亀裂が生じ易い。そこで、この態様の電池は、正極板の最内周部を覆う最内周保護部材を更に備え、この最内周保護部材により、破断や亀裂の生じた部位がセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、この態様の電池では、生産性及び品質が確実に高くなる。
【0015】
好適な態様として、前記正極板は、前記巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方に、これら端部間の正極本体部よりも薄い薄肉部を有する(請求項3)。この態様では、正極板の巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方を、正極本体部に比べて薄く形成したので、正極板の巻回数が多くても、正極板及び負極板がきれいな渦巻状に容易に巻回される。この結果として、この態様の電池では、電極群の巻回時、正極板における破断や亀裂の発生が抑制され、生産性及び品質がより一層向上する。
【0016】
好適な態様として、この電池は、前記正極板の径方向外面側を覆うセパレータと前記正極板との間に、前記薄肉部と前記正極本体部との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材を更に備える(請求項4)。
この態様によれば、正極板における薄肉部と本体部との境界からばりが突出していたとしても、境界保護部材によりばりがセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果として、この態様の電池では、品質がより一層向上する。
【0017】
好適な態様として、前記保護部材は、樹脂製のテープ及び不織布のうちいずれかからなる(請求項5)。これら樹脂製のテープ及び不織布は、柔軟性を有するので巻回が容易であるとともに、体積が小さいので電池の高容量化に適する。
好適な態様として、前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する(請求項6)。一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する薄肉部は容易に形成され、電池の生産性を高めるのに適している。
【0018】
好適な態様として、前記巻芯の外径は、前記外装缶の最大径の30%以下である(請求項7)。この態様の電池では、巻芯の外径が外装缶の最大径の30%以下であることにより、正極板の巻回数を容易に増やすことができる。また、この電池では、正極板の巻回数を増やすことにより高容量化が図られており、外径が小である巻芯を用いたとしても、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べて、正極板が容易に巻回され、且つ、正極板の最内周部での破断や亀裂の発生が防止される。従って、この態様の電池によれば、生産性及び品質を確保しながら、高容量化が容易に図られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の円筒型アルカリ蓄電池にあっては、高容量化が図られるのみならず、生産性及び品質が高く、その上、急速充電特性や放電特性においても優れており、高い市場価値を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態のAAサイズの円筒型ニッケル水素二次電池を示す。
この電池は、一端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備え、外装缶10は、ニッケルメッキされた鋼板からなる。この鋼板としては、SPCC(一般用),SPCD(絞り用),SPCE(深絞り用)等の一般冷延鋼板を用いることができ、外装缶10の周壁の厚さは0.17mm以下である。電池の活性化処理後において、外装缶10の外径Dの最大値(最大径Dmax)は13.5mm以上14.5mm以下の範囲にある。なお、電池がAAAサイズであるならば、最大径Dmaxは9.8mm以上10.5mm以下の範囲にある。
【0021】
外装缶10は導電性を有して負極端子として機能し、外装缶10の開口内には、リング状の絶縁パッキン12を介して導電性の蓋板14が配置されている。外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより絶縁パッキン12及び蓋板14は開口内に固定されている。
蓋板14は中央にガス抜き孔16を有し、蓋板14の外面上にはガス抜き孔16を閉塞するようにゴム製の弁体18が配置されている。更に蓋板14の外面上には、弁体18を囲むようにフランジ付きの円筒形状の正極端子20が同軸上に固定され、正極端子20は開口端側にて外装缶10から軸線方向に突出している。正極端子20は弁体18を蓋板14に押圧しており、通常時、外装缶10は絶縁パッキン12及び弁体18とともに蓋板14により気密に閉塞されている。一方、外装缶10内でガスが発生してその内圧が高まった場合には弁体18が圧縮され、ガス抜き孔16を通して外装缶10からガスが放出される。つまり、蓋板14、弁体18及び正極端子20は、電池の内圧が所定圧力を超えたときに作動する安全弁を形成している。
【0022】
ここで、正極端子20の先端から外装缶10の底面までの長さ、すなわち電池の高さHは49.2mm以上50.5mm以下の範囲内にあり、電池の仕様上の体積Vbは、最大径Dmax及び高さHの円柱体の体積に等しいものとして、次式:
Vb=π(Dmax/2)2×H
により規定される。
【0023】
外装缶10内には、略円柱状の電極群22が略同軸的に収容され、電極群22はその最外周部が外装缶10の内周面に直接接触している。電極群22は、それぞれ渦巻き状の正極板24、負極板26及びセパレータ28からなり、正極板24及び負極板26の径方向内面と径方向外面とがセパレータ26を介して対向している。
更に外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に、正極リード30が配置され、正極リード30の両端は正極板24及び蓋板14に溶接されている。従って、正極端子20と正極板24との間は、正極リード30及び蓋板14を介して電気的に接続されている。より詳しくは、正極リード30は帯状をなし、蓋板14を外装缶10の開口内に配置する時に、電極群22と蓋板14との間にて折り曲げられて収容され、正極リード30の電極群22側の端部は、正極板24の一方の面に面接触した状態で溶接されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の絶縁部材34が配置されている。
【0024】
電極群22は、それぞれ帯状の正極板24、負極板26及びセパレータ28を用意し、これら正極板24及び負極板26を、セパレータ28を介してそれらの一端側から巻芯を用いて渦巻状に巻回して形成される。このため、図2に示したように、正極板24及び負極板26の一端部(巻始め端部)36,38が電極群22の中心軸側に位置付けられる一方、正極板24及び負極板26の他端部(巻終わり端部)40,42が電極群22の外周側に位置付けられている。
【0025】
負極板26は正極板24に比べて長く、負極板26の巻始め端部38側の1巻(最内周部)は、電極群22の径方向でみて正極板24の巻始め端部36側の1巻(最内周部)よりも内側に巻かれるとともに、負極板26の巻終わり端部42側の1巻(最外周部)は、正極板24の巻終わり端部40側の1巻(最外周部)よりも外側に巻かれる。
電極群22の最外周にセパレータ28は巻回されておらず、負極板26の最外周部が電極群22の最外周に巻回され、負極板26の最外周部と外装缶10とは互いに直接接触して電気的に接続されている。
【0026】
巻回後に巻芯は電極群22から引き抜かれるので、電極群22はその中心に、巻芯の形状に対応した空洞部44を有する。ただし、後述するように、空洞部44は電池の活性化処理により電極群22が膨張したときに潰れるため、活性化処理後の空洞部44の形状は巻芯の形状とは一致しない。
ここで、電極群22の横断面積は、図3(a)に斜線で示したように、外装缶10の周壁内側の断面積から、空洞部44の断面積と、電極群22と外装缶10との間に生じた隙間46の断面積とを差し引いた値となるが、この電極群22の横断面積を、外装缶10の周壁内側の断面積から空洞部44の断面積を差し引いた値、つまり図3(b)に斜線で示した横断面積で除した値が95%以上100%以下の範囲内に入っている。なお、本明細書では、この値を電極群断面積比率ともいう。
【0027】
また、電極群22における正極板24の巻回数をNとしたとき、巻回数Nと外装缶10の最大径Dmaxとの間には、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が成立している。従って、AAサイズのこの電池では、正極板24の巻回数Nは4回以上であり、もし電池がAAAサイズである場合、巻回数Nは2回以上になる。なお、図1では、正極板24の巻回数Nは4回よりも少ないが、これは作図上の都合による。
【0028】
そして、図4に正極板24の一部を模式的に示したように、電池の横断面でみて、正極板24の巻始め端部36の周方向位置を基準位置としたときに、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲Aにあり、好ましくは、200°以上240°以下の範囲Bにある。
正極板24は、導電性の正極芯体と、正極芯体に保持された正極合剤とからなる。
【0029】
より詳しくは、正極芯体としては、3次元網目状の骨格を有するニッケル製の金属体を用いることができ、正極合剤は正極芯体の内部に充填される。
正極合剤は、正極活物質粒子と、正極板の特性を改善するための種々の添加剤粒子と、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極芯体に結着するための結着剤とからなる。
【0030】
正極活物質粒子は、電池がニッケル水素二次電池なので水酸化ニッケル粒子であるけれども、水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよく、あるいは表面の一部若しくは全部がコバルト化合物で表面が被覆されていてもよい。また、いずれも特に限定されることはないが、添加剤としては、酸化イットリウムの他に、酸化コバルト、金属コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物、酸化エルビウム等の希土類化合物等を、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等をそれぞれ用いることができる。
【0031】
ここで、正極板24の正極合剤に含まれる正極活物質量は、電池の体積エネルギー密度が400Wh/l以上470Wh/l以下となるように設定されている。電池の体積エネルギー密度とは、電池の0.2C容量に作動電圧として1.2Vをかけた値を、上述した電池の体積Vbで除して求められる値である。電池の0.2C容量とは、JIS C 8708−1997に規定され、周囲温度20±5℃にて、まず、電池を0.1C相当の電流量で16時間充電してから、1〜4時間休止した後、0.2C相当の電流量で1.0Vの放電終止電圧まで放電させたときの容量のことをいう。
【0032】
図5は展開した正極板24の外形形状を示す。正極板24は、長手方向に亘って厚さが一定の正極本体部50を有し、正極本体部50の厚さは例えば0.62mm以上0.72mm以下の範囲にある。正極本体部50の両端に位置する巻始め端部36及び巻終わり端部40は、好適な態様として、それぞれ正極本体部50よりも厚さが薄い薄肉部として形成されている。
【0033】
より詳しくは、図6に拡大して示したように、巻始め端部36及び巻終わり端部40では、正極本体部50との境界である稜52から先端側の径方向外面が傾斜面54として形成され、正極板24の厚さは稜52から先端に向かって一定の変化率で漸減している。一方、正極板24の径方向内面は、巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部50との境界にて面一をなしており、従って、巻始め端部36及び巻終わり端部40は先端に向けて先細り形状をなしている。
【0034】
傾斜面54は、後述するように削り落としやプレスによって巻始め端部36及び正極巻終わり端部40の外面に形成される。このため、稜52及び稜52の周辺部分には、傾斜面54の形成時に生じたばりが存在するので、稜52は境界保護部材56でカバーされるのが好ましい。
境界保護部材56は、正極板24と、正極板24の径方向外面に隣接するセパレータ28との間に介挿され(図2参照)、正極本体部50と、巻始め端部36及び巻終わり端部40との境界をカバーしている。境界保護部材56は、絶縁性のPP製テープからなり、正極板24の稜52全体を被覆可能である。
【0035】
各境界保護部材56の寸法は、電極群22を外装缶10内へ挿入した時、稜52及びその周辺部分のばりが境界保護部材56及びセパレータ28を貫通しないよう設定されるけれども、特に限定されることはない。
また、境界保護部材56の材質及び形態についても、電極群22を外装缶10内へ挿入した時に、稜52及びその周辺部分のばりが境界保護部材56及びセパレータ28を貫通しないよう設定されるけれども、特に限定されることはない。ただし、境界保護部材56の材質としては、耐アルカリ性及び親水性の両方を有するポリオレフィン系のポリマー、例えばPP(ポリプロピレン)が好ましく、また境界保護部材56の形態は、不織布又はテープ等のシート状であるのが好ましい。
【0036】
負極板26は、導電性の負極芯体と、負極芯体に保持された負極合剤とからなる。
より詳しくは、負極合剤は、電池がニッケル水素二次電池であることから、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子及び結着剤からなる。ただし、水素吸蔵合金に代えて、例えばカドミウム化合物を用いて電池をニッケルカドミウム二次電池としてもよい。しかしながら、電池の高容量化には、ニッケル水素二次電池が好適する。なお、活物質が水素の場合、負極容量は水素吸蔵合金量により規定されるので、本明細書では、水素吸蔵合金のことを負極活物質ともいう。
【0037】
水素吸蔵合金粒子は、電池の充電時にアルカリ電解液中で電気化学的に発生させた水素を吸蔵でき、なおかつ放電時にその吸蔵水素を容易に放出できるものであればよい。このような水素吸蔵合金としては、特に限定されないが、例えば、LaNi5やMmNi5(Mmはミッシュメタル)等のAB5型系のものを用いることができる。また、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等をそれぞれ用いることができる。
【0038】
負極芯体としては、例えば、パンチングメタル、金属粉末焼結体基板、エキスパンデッドメタル及びニッケルネット等を用いることができる。
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。なお、本実施形態では、図2に示したように、セパレータ28として、正極板24の径方向外面と負極板26の径方向内面との間に介挿された第1セパレータ28aと、正極板24の径方向内面と負極板26の径方向外面との間に介挿された第2セパレータ28bとが巻回されている。
【0039】
上記した電極群22を収容した外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注液され、セパレータ28に含まれたアルカリ電解液を介して正極板24と負極板26との間での充放電反応が進行する。
なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないけれども、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等を用いることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば8Nのものが用いられる。
【0040】
上述した電池は、通常の方法を適用して製造することができるけれども、以下では、電極群22の巻回方法について一例を説明する。
図7に示したように、電極群22は、円柱状の巻芯60を一定方向に回転させながら、巻芯60に向かって、正極板24、負極板26、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bを連続的に繰り出して巻回される。ここで、巻芯の外径Pは、特に限定されないが、外装缶10の最大径Dmaxの0%以上30%以下の範囲内に入っているのが好ましい。
【0041】
なお、図7中、線の錯綜をさけるため図2の場合と同様に、第1及び第2セパレータ28a,28bのハッチングを省略するとともに、正極板24及び負極板26の芯体及び合剤を区別せずに図示した。
上述した電池では、電極群22における正極板24の巻回数をNとしたとき、巻回数Nと外装缶10の最大径Dmaxとの間には、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が成立している。従って、この電池では、正極板の巻回数は4回以上であり、最大径Dmaxの割合に正極板24の巻回数Nが多く、電池反応に関与する正極板24の面積が広いことから、充放電時の電流密度が低くなる。このため、この電池は、高容量化に適するのみならず、急速充電特性及び放電特性において優れている。
【0042】
また、この電池によれば、正極板24の巻回数Nを増やすことにより高容量化が図られており、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べ、正極板24の作製や巻回が容易であり、電池の生産性や品質が高くなる。
更に、この電池では、その横断面でみて、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部36の周方向位置までの角度θが180°以上270°以下の範囲A、更には、200°以上240°以下の好適な範囲Bにあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
【0043】
この電池では、角度θが上記範囲にあるため、巻回直後の形状でみれば、電極群22の外径が正極板24の巻終わり端部40の周方向位置にて顕著に増大し、電極群22の横断面形状は従来の電極群よりも歪である。
そして、この電池では、電極群断面積比率が95%以上100%以下であるため、外装缶10内に歪な電極群22が収容されると、内側からの押圧力により外装缶10の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の形状も真円度が低く、楕円形状になってしまう。
【0044】
しかしながら、この電池では、活性化処理により電極群22が膨張したときに、角度θが上記した範囲にあるため、電極群22の空洞部44が従来よりも大きく潰れる。これは、図8に示したように、巻始め端部36及び巻終わり端部40の周方向位置での正極板24の膨張力が、正極板24及び負極板26の最内周部に対する圧縮力として有効に作用するためである。
【0045】
このように、空洞部44が大きく潰れ、電極群22が径方向内側に向けて大きく膨張すると、電極群22に残されていた空洞部44が発電要素としての正極板24及び負極板26により占有されて有効に活用されることになる。また、空洞部44が大きく潰れることにより、電極群22の径方向外側に向けた膨張が抑制されるとともに、電極群22が、その横断面形状が真円形状になるよう膨張する。この結果として、この電池の真円度は、活性化処理により高くなり、電池の実際の体積が仕様上の体積寸前まで増大され、高容量化が図られる。
【0046】
また、この電池では、好適な態様として、正極板24の巻始め端部36及び巻終わり端部40を、正極本体部50に比べて薄く形成したので、横断面でみたときに正極板24及び負極板26がきれいな渦巻状に巻回される。この結果として、この電池では、電極群22の巻回時、正極板24における破断や亀裂の発生が抑制され、生産性及び品質がより一層向上する。
【0047】
更に、この電池は、好適な態様として、正極板24の径方向外面側を覆う第1セパレータ28aと正極板24との間に、薄肉部である巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部40との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材56を更に有する。このため、この電池では、正極板24における巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部50との境界からばりが突出していたとしても、境界保護部材56によりばりがセパレータ28を突き破って負極板26と直接接触するのが防止される。この結果として、この電池では、品質がより一層向上する。
【0048】
その上、この電池では、好適な態様として、電極群22の巻回に用いられた巻芯60の外径Pが、外装缶の最大径Dmaxの30%以下であることにより、正極板24の巻回数Nを容易に増やすことができる。また、この電池では、正極板24の巻回数Nを増やすことにより高容量化が図られており、外径Pが小である巻芯60を用いたとしても、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べて、正極板24が容易に巻回され、且つ、正極板24の最内周部での破断や亀裂の発生が防止される。従って、この電池によれば、生産性及び品質を確保しながら、高容量化が容易に図られる。
【実施例】
【0049】
実施例1
1.正極板の作製
各粒子の全部若しくは一部がコバルト化合物で被覆された水酸化ニッケル粉末を用意し、この水酸化ニッケル粉末100質量部に対し、40質量%のHPCディスパージョンを混合して正極用スラリを調製し、この正極用スラリが塗着・充填された3次元網目状の骨格を有するニッケル製の金属体を、乾燥を経てから、圧延・裁断してAAサイズ用の正極板を作製した。
【0050】
2.負極板の作製
組成がMm1.0Ni3.7Co0.8Al0.3Mn0.2(ただし、Mmはミッシュメタル)となるように金属原料を秤量して混合し、この混合物を高周波溶解炉で溶解してインゴットを得た。このインゴットを、温度1000℃のアルゴン雰囲気下にて10時間加熱し、インゴットにおける結晶構造をAB5型構造にした。この後、インゴットを不活性雰囲気中で機械的に粉砕して篩分けし、AB5型の水素吸蔵合金粉末を得た。なお、得られた水素吸蔵合金粉末は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量積分50%にあたる平均粒径が50μmであった。
【0051】
得られた合金粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム0.5質量部、カルボキシメチルセルロース0.12質量部、PTFEディスパージョン(分散媒:水,比重1.5,固形分60質量%)0.5質量部(固形分換算)、カーボンブラック1.0質量部及び水30質量部を加えて混練し、負極用スラリを調製した。そして、負極用スラリが塗着されたニッケル製のパンチングシートを、乾燥を経てから圧延・裁断し、AAサイズ用の負極を作製した。
【0052】
3.ニッケル水素蓄電池の組立て
得られた正極板と負極板とを、ポリプロピレン繊維製不織布からなり、厚さが0.1mmで目付量が40g/m2のセパレータを介して渦巻状に巻回し、電極群を作製した。得られた電極群を外装缶内に収納して所定の取付工程を行った後、外装缶内に、7Nの水酸化カリウム水溶液と1Nの水酸化リチウム水溶液とからなるアルカリ電解液を注液した。そして、外装缶の開口端を蓋板等を用いて封口し、定格容量が2500mAhでAAサイズの実施例1の密閉円筒形ニッケル水素蓄電池を組立てた。
【0053】
実施例2〜6及び比較例1〜5
表1に示したように、正極板の巻始め端部の周方向位置に対する巻終わり端部の周方向位置(角度θ)を変化させるべく、長さの異なる複数の正極板を作製した。この際、正極板の長さが長いほど、金属体への正極用スラリの充填量を少なくするとともに、圧延率を高めて正極板の厚さを薄くし、電池の容量が一定になるようにした。これらの正極板を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜3のニッケル水素蓄電池を組立てた。
【0054】
4.電池の形状評価
まず、組立て直後の各電池について、最大径及び最小径をそれぞれ測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
この後、各電池について、温度25℃の環境において、0.1Itの充電電流で15時間充電した後、0.2Itの放電電流で終止電圧1.0Vまで放電させる活性化処理を施した。そして、活性化処理後の各電池についても、最大径及び最小径を測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
【0055】
表1に、組立て直後(活性化処理前)及び活性化処理後の各真円度と、活性化処理後の最大径とを示す。また、図9には、巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と各真円度との関係を示し、図10には、巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と最大径Dmaxとの関係を示す。なお、表1の各真円度及び最大径は、電池10個当りの平均値である。
【0056】
【表1】
【0057】
(1)表1及び図9から明らかなように、活性化処理により、実施例1〜6の電池では真円度が高くなっているのに対し、比較例1,3〜5の電池では真円度は低下している。
また、実施例1〜6の電池の真円度は、組立て直後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度よりも低いけれども、活性化処理後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度以上である。
【0058】
これより、実施例1〜6の電池では、組立て直後の真円度が低くても、活性化処理により電極群が膨張したとき、電極群の横断面形状が略真円形状になったことがわかる。
なお、実施例1〜6のなかでも、正極板の巻終わり端部の周方向位置が200°,220°,240°の実施例4,5,6では、真円度が特に高い。
【0059】
(2)表1及び図9,10から明らかなように、活性化処理後では、真円度が高いほど、最大径Dmaxが小さくなっている。
(3)活性化処理の前後で、実施例1〜6の電池では、最大径が小さくなるとともに最小径が大きくなり、これに伴って真円度が高くなる傾向が認められた。これに対して、比較例1〜5の電池では、最大径及び最小径が大きくなり、これに伴って真円度が低くなる傾向が認められた。
【0060】
これは、実施例の電池では、活性化処理により電極群が膨張したときに、電極群中央の空洞部が大きく潰れ、電極群が組立て直後の最大径方向で収縮したためと考えられる。
本発明は、上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、安全弁には弾性体として圧縮コイルばねを用いてもよい。
そして、正極板24は、巻始め端部36及び巻終わり端部40の両方が薄肉部として形成されていることが好ましいが、どちらか一方のみであってもよく、或いは巻始め端部36及び巻終わり端部40を含む長手方向全体に亘って厚さが一定であってもよい。
【0061】
また、薄肉部としての巻始め端部36及び巻終わり端部40の形状は、特に限定されない。例えば、図11に展開して示したように、正極板24の径方向外面を段付き形状に形成し、薄肉部の厚さを一定にしてもよい。なお、先細り形状や段付き形状の薄肉部は形成し易いため、電池の生産性を高めるのに適している。
更に、巻始め端部36側の境界保護部材56に代えて、または、これとともに、図12に示した最内周保護部材62を用いてもよい。最内周保護部材62も絶縁性を有するシート状材料からなり、巻始め端部36を含む正極板24の1巻(最内周部)の径方向外面全体を覆っている。この最内周保護部材62を用いた場合、内部短絡が容易且つ確実に防止され、電池の生産性及び品質がより一層高くなる。これは以下の理由による。
【0062】
この電池では、正極板24の巻回数Nが多いことから、電極群22中央の空洞部44が小さくなることに加え、活性化処理により空洞部44が大きく潰れることから、正極板24の最内周部には、内部短絡の原因になる破断や亀裂が生じ易い。
そこで、最内周保護部材62を用いれば、破断や亀裂の生じた部位がセパレータ28を突き破って負極板26と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、生産性及び品質がより一層高くなる。
【0063】
最内周保護部材62の材質は、境界保護部材56と同じように、耐アルカリ性及び親水性の両方を有するポリオレフィン系のポリマー、例えばPP(ポリプロピレン)であるのが好ましい。また、最内周保護部材62の形態は、不織布又はテープ等のシート状であるのが好ましい。樹脂製のシート状材料は、柔軟性を有するので巻回が容易であるとともに、体積が小さいので電池の高容量化に適しているからである。
なお、図12中、作図上の都合によりセパレータ28を省略した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒型ニッケル水素二次電池の概略を示す部分切欠き斜視図である。
【図2】図1の電池の横断面を示した概略図である。
【図3】図1の電池における(a)電極群の横断面積を示した模式図、および(b)外装缶の内側の断面積から電極群の空洞部の断面積を差し引いた横断面積を示した模式図である。
【図4】図2の横断面において、正極板の巻始め端部の周方向位置に対する巻終わり端部の周方向位置を説明するための図である。
【図5】図1の電池に用いられた正極板を展開して示した斜視図である。
【図6】図6の正極板の一部と境界保護部材とを展開して示す斜視図である。
【図7】図1の電池に用いられる電極群の巻回方法の説明図である。
【図8】図1の電池において、活性化処理により電極群の最内周部に加わる圧縮力を説明するための図である。
【図9】正極板の巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と、組立て直後及び活性化処理後の電池の真円度との関係を示すグラフである。
【図10】正極板の巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と、活性化処理後の電池の最大径Dmaxとの関係を示すグラフである。
【図11】変形例の正極板の一部を展開して示した斜視図である。
【図12】巻始め端部側の境界保護部材に代えて適用された最内周保護部材を、正極板及び負極板の巻始め端部側の一部とともに模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 外装缶
22 電極群
24 正極板
26 負極板
28 セパレータ
36 正極板の巻始め端部
40 正極板の巻終わり端部
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒型アルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒型アルカリ蓄電池、特にニッケル水素蓄電池には、高容量化が強く求められている。具体的には、AAサイズでは、体積エネルギー密度が400Wh/lを超えるニッケル水素蓄電池の開発が求められている。
そこで、例えば、特許文献1が開示するAAサイズのニッケル水素蓄電池では、正極板の厚さを厚くすることにより、高容量化が図られている。この電池では、正極板の巻回数が3回以上4回未満であって、巻回直後の電極群の断面形状が略真円形状になる。この結果として、この電池では、外装缶により大きな電極群(正極板)が収容され、高容量化が図られる。
【特許文献1】特開2005-056682号公報(例えば、特許請求の範囲等。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
確かに、特許文献1が開示するように、正極板の厚さをより厚くすることによって、より高容量の円筒型アルカリ蓄電池を得ることができる。しかしながら、この一方で、正極板の厚さを増大することは、充放電中の電流密度増大を招くことから、急速充電特性や放電特性を確保する観点からすれば好ましくない。また、正極板の厚さ・密度が増大することで、正極板の作製工程及び電池組立て工程での生産性が低下し、更に、得られた正極板及び電池の品質を維持するのも困難になる。
【0004】
本発明は上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、生産性及び品質が高く、その上、急速充電特性や放電特性に優れた高容量の円筒型アルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記した課題を解決するにあたり、正極板の厚さを増大させるのではなく、正極板の長さを増大させることに着目した。しかし、正極板の長さを増大させた場合、正極板及び負極板の各芯体やセパレータ等、電池反応に直接関係しない部材の体積も増大するため、電池内の正極活物質量が相対的に減少し、電池容量が低下してしまう。
そこで、本発明者らは、電池容量を低下させずに正極板の長さを増大せるべく種々検討を重ね、この過程で次のように思考した。
【0006】
従来、外装缶内により大きな電極群を充填するために、巻回直後の電極群の横断面形状が真円形状に近くなるようにしていた。すなわち、正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、正極板の巻終わり端部の周方向位置から正極板に沿って測った基準位置までの角度が270°を超え且つ360°以下の範囲に入るよう、電極群を巻回していた。
【0007】
しかし、このように電極群を巻回しても、従来の電池の横断面の形状は、組立て後の活性化処理(初充放電処理)により電極群が膨張すると、真円度が低下して楕円形状になっていた。
ここで、円筒型アルカリ電池の仕様では、通常、電池の最大径のみが規定され、楕円形状の電池は、その長軸の長さが最大径を超えないように製造される。このため、楕円形状の電池の実際の体積は、仕様上の最大径から見積もられる円柱体の体積、つまり、仕様で規定される体積よりも大幅に小さくなっている。従って、もし、活性化処理後に略真円形状の電池を製造できれば、仕様で規定される体積寸前まで電池の実際の体積を増大することができ、この結果として、電池容量を低下させることなく、正極板の長さを増大することができる。
【0008】
そして、発明者は、このような思考により得られた思想を具現化すべく、更に検討を重ねた。この過程で、巻回直後の電極群の横断面形状が真円形状に近いとしても、活性化処理後に電池は略真円形状にはならず、むしろ、巻回直後の電極群の横断面形状が歪(いびつ)であっても、活性化処理後に電池が略真円形状になることがあるのを発見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明によれば、導電性の円筒状外装缶内に、正極板、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池において、前記外装缶の最大径をDmaxとし、前記正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たし、前記電極群は、巻芯を用いて巻回されて前記巻芯に対応した空洞部を中央に有し、前記電池の横断面でみて、前記空洞部を除く前記電極群の断面積を、前記外装缶の内断面積から前記電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であり、且つ、前記正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、前記正極板の巻終わり端部の周方向位置から前記正極板に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にあることを特徴とする円筒型アルカリ蓄電池が提供される(請求項1)。
【0010】
本発明の電池は、外装缶の最大径をDmaxとし、正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たす。すなわち、電池がAAサイズならば、正極板の巻回数は4回以上であり、電池がAAAサイズならば正極板の巻回数は2回以上である。このように、本発明の電池では、最大径の割合に正極板の巻回数が多く、電池反応に関与する正極板の面積が広いことから、充放電時の電流密度が低くなる。このため、この電池は、高容量化に適するのみならず、急速充電特性及び放電特性においても優れている。
【0011】
また、本発明の電池によれば、正極板の巻回数を増やすことにより高容量化が図られており、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べ、正極板の作製や巻回が容易であり、電池の生産性や品質が高くなる。
更に、本発明の電池によれば、正極板の巻終わり端部の周方向位置から正極板に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部の周方向位置までの角度θが180°以上270°以下の範囲にあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
【0012】
この電池では、角度θが上記範囲にあるため、巻回直後の形状でみれば、電極群の外径が正極板の巻終わり端部の周方向位置にて顕著に増大し、電極群の横断面形状は従来の電極群よりも歪である。
そして、電池の横断面でみたときに、空洞部を除いた電極群の断面積を、外装缶の内断面積から電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であるため、外装缶内に歪な電極群が収容されると、内側からの押圧力により外装缶の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の横断面形状も真円度が低下し、楕円形状になってしまう。
【0013】
しかし、この電池では、活性化処理により電極群が膨張したときに、角度θが上記した範囲にあるため、電極群の空洞部が従来よりも大きく潰れる。これは、正極板の巻始め端部及び巻終わり端部の周方向位置での正極板の膨張力が、正極板及び負極板の最内周部に対する圧縮力として有効に作用するためと考えられる。
このように、空洞部が大きく潰れ、電極群が径方向内側に向けて大きく膨張すると、電極群に残されていた空洞部が発電要素としての正極板及び負極板により占有されて有効に活用されることになる。また、空洞部が大きく潰れることにより、電極群の径方向外側に向けた膨張が抑制されるとともに、その横断面形状が真円形状になるよう電極群が膨張する。この結果として、この電池の真円度は活性化処理により高くなり、電池の実際の体積が仕様上の体積寸前まで増大され、高容量化が図られる。
【0014】
好適な態様として、円筒型アルカリ蓄電池は、前記巻始め端部を含む前記正極板の1巻の径方向外面を覆う絶縁性の最内周保護部材を更に備える(請求項2)。この態様では、内部短絡が容易且つ確実に防止され、生産性及び品質がより一層高くなる。これは以下の理由による。
本発明の電池では、正極板の巻回数が多いことから、電極群中央の空洞部が小さくなることに加え、活性化処理により空洞部が大きく潰れることから、巻始め端部を含む正極板の1巻(最内周部)には、内部短絡の原因になる破断や亀裂が生じ易い。そこで、この態様の電池は、正極板の最内周部を覆う最内周保護部材を更に備え、この最内周保護部材により、破断や亀裂の生じた部位がセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、この態様の電池では、生産性及び品質が確実に高くなる。
【0015】
好適な態様として、前記正極板は、前記巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方に、これら端部間の正極本体部よりも薄い薄肉部を有する(請求項3)。この態様では、正極板の巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方を、正極本体部に比べて薄く形成したので、正極板の巻回数が多くても、正極板及び負極板がきれいな渦巻状に容易に巻回される。この結果として、この態様の電池では、電極群の巻回時、正極板における破断や亀裂の発生が抑制され、生産性及び品質がより一層向上する。
【0016】
好適な態様として、この電池は、前記正極板の径方向外面側を覆うセパレータと前記正極板との間に、前記薄肉部と前記正極本体部との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材を更に備える(請求項4)。
この態様によれば、正極板における薄肉部と本体部との境界からばりが突出していたとしても、境界保護部材によりばりがセパレータを突き破って負極板と直接接触するのが防止される。この結果として、この態様の電池では、品質がより一層向上する。
【0017】
好適な態様として、前記保護部材は、樹脂製のテープ及び不織布のうちいずれかからなる(請求項5)。これら樹脂製のテープ及び不織布は、柔軟性を有するので巻回が容易であるとともに、体積が小さいので電池の高容量化に適する。
好適な態様として、前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する(請求項6)。一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有する薄肉部は容易に形成され、電池の生産性を高めるのに適している。
【0018】
好適な態様として、前記巻芯の外径は、前記外装缶の最大径の30%以下である(請求項7)。この態様の電池では、巻芯の外径が外装缶の最大径の30%以下であることにより、正極板の巻回数を容易に増やすことができる。また、この電池では、正極板の巻回数を増やすことにより高容量化が図られており、外径が小である巻芯を用いたとしても、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べて、正極板が容易に巻回され、且つ、正極板の最内周部での破断や亀裂の発生が防止される。従って、この態様の電池によれば、生産性及び品質を確保しながら、高容量化が容易に図られる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の円筒型アルカリ蓄電池にあっては、高容量化が図られるのみならず、生産性及び品質が高く、その上、急速充電特性や放電特性においても優れており、高い市場価値を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態のAAサイズの円筒型ニッケル水素二次電池を示す。
この電池は、一端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備え、外装缶10は、ニッケルメッキされた鋼板からなる。この鋼板としては、SPCC(一般用),SPCD(絞り用),SPCE(深絞り用)等の一般冷延鋼板を用いることができ、外装缶10の周壁の厚さは0.17mm以下である。電池の活性化処理後において、外装缶10の外径Dの最大値(最大径Dmax)は13.5mm以上14.5mm以下の範囲にある。なお、電池がAAAサイズであるならば、最大径Dmaxは9.8mm以上10.5mm以下の範囲にある。
【0021】
外装缶10は導電性を有して負極端子として機能し、外装缶10の開口内には、リング状の絶縁パッキン12を介して導電性の蓋板14が配置されている。外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより絶縁パッキン12及び蓋板14は開口内に固定されている。
蓋板14は中央にガス抜き孔16を有し、蓋板14の外面上にはガス抜き孔16を閉塞するようにゴム製の弁体18が配置されている。更に蓋板14の外面上には、弁体18を囲むようにフランジ付きの円筒形状の正極端子20が同軸上に固定され、正極端子20は開口端側にて外装缶10から軸線方向に突出している。正極端子20は弁体18を蓋板14に押圧しており、通常時、外装缶10は絶縁パッキン12及び弁体18とともに蓋板14により気密に閉塞されている。一方、外装缶10内でガスが発生してその内圧が高まった場合には弁体18が圧縮され、ガス抜き孔16を通して外装缶10からガスが放出される。つまり、蓋板14、弁体18及び正極端子20は、電池の内圧が所定圧力を超えたときに作動する安全弁を形成している。
【0022】
ここで、正極端子20の先端から外装缶10の底面までの長さ、すなわち電池の高さHは49.2mm以上50.5mm以下の範囲内にあり、電池の仕様上の体積Vbは、最大径Dmax及び高さHの円柱体の体積に等しいものとして、次式:
Vb=π(Dmax/2)2×H
により規定される。
【0023】
外装缶10内には、略円柱状の電極群22が略同軸的に収容され、電極群22はその最外周部が外装缶10の内周面に直接接触している。電極群22は、それぞれ渦巻き状の正極板24、負極板26及びセパレータ28からなり、正極板24及び負極板26の径方向内面と径方向外面とがセパレータ26を介して対向している。
更に外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に、正極リード30が配置され、正極リード30の両端は正極板24及び蓋板14に溶接されている。従って、正極端子20と正極板24との間は、正極リード30及び蓋板14を介して電気的に接続されている。より詳しくは、正極リード30は帯状をなし、蓋板14を外装缶10の開口内に配置する時に、電極群22と蓋板14との間にて折り曲げられて収容され、正極リード30の電極群22側の端部は、正極板24の一方の面に面接触した状態で溶接されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の絶縁部材32が配置され、正極リード30は絶縁部材32に設けられたスリットを通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の絶縁部材34が配置されている。
【0024】
電極群22は、それぞれ帯状の正極板24、負極板26及びセパレータ28を用意し、これら正極板24及び負極板26を、セパレータ28を介してそれらの一端側から巻芯を用いて渦巻状に巻回して形成される。このため、図2に示したように、正極板24及び負極板26の一端部(巻始め端部)36,38が電極群22の中心軸側に位置付けられる一方、正極板24及び負極板26の他端部(巻終わり端部)40,42が電極群22の外周側に位置付けられている。
【0025】
負極板26は正極板24に比べて長く、負極板26の巻始め端部38側の1巻(最内周部)は、電極群22の径方向でみて正極板24の巻始め端部36側の1巻(最内周部)よりも内側に巻かれるとともに、負極板26の巻終わり端部42側の1巻(最外周部)は、正極板24の巻終わり端部40側の1巻(最外周部)よりも外側に巻かれる。
電極群22の最外周にセパレータ28は巻回されておらず、負極板26の最外周部が電極群22の最外周に巻回され、負極板26の最外周部と外装缶10とは互いに直接接触して電気的に接続されている。
【0026】
巻回後に巻芯は電極群22から引き抜かれるので、電極群22はその中心に、巻芯の形状に対応した空洞部44を有する。ただし、後述するように、空洞部44は電池の活性化処理により電極群22が膨張したときに潰れるため、活性化処理後の空洞部44の形状は巻芯の形状とは一致しない。
ここで、電極群22の横断面積は、図3(a)に斜線で示したように、外装缶10の周壁内側の断面積から、空洞部44の断面積と、電極群22と外装缶10との間に生じた隙間46の断面積とを差し引いた値となるが、この電極群22の横断面積を、外装缶10の周壁内側の断面積から空洞部44の断面積を差し引いた値、つまり図3(b)に斜線で示した横断面積で除した値が95%以上100%以下の範囲内に入っている。なお、本明細書では、この値を電極群断面積比率ともいう。
【0027】
また、電極群22における正極板24の巻回数をNとしたとき、巻回数Nと外装缶10の最大径Dmaxとの間には、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が成立している。従って、AAサイズのこの電池では、正極板24の巻回数Nは4回以上であり、もし電池がAAAサイズである場合、巻回数Nは2回以上になる。なお、図1では、正極板24の巻回数Nは4回よりも少ないが、これは作図上の都合による。
【0028】
そして、図4に正極板24の一部を模式的に示したように、電池の横断面でみて、正極板24の巻始め端部36の周方向位置を基準位置としたときに、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲Aにあり、好ましくは、200°以上240°以下の範囲Bにある。
正極板24は、導電性の正極芯体と、正極芯体に保持された正極合剤とからなる。
【0029】
より詳しくは、正極芯体としては、3次元網目状の骨格を有するニッケル製の金属体を用いることができ、正極合剤は正極芯体の内部に充填される。
正極合剤は、正極活物質粒子と、正極板の特性を改善するための種々の添加剤粒子と、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極芯体に結着するための結着剤とからなる。
【0030】
正極活物質粒子は、電池がニッケル水素二次電池なので水酸化ニッケル粒子であるけれども、水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよく、あるいは表面の一部若しくは全部がコバルト化合物で表面が被覆されていてもよい。また、いずれも特に限定されることはないが、添加剤としては、酸化イットリウムの他に、酸化コバルト、金属コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物、酸化エルビウム等の希土類化合物等を、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等をそれぞれ用いることができる。
【0031】
ここで、正極板24の正極合剤に含まれる正極活物質量は、電池の体積エネルギー密度が400Wh/l以上470Wh/l以下となるように設定されている。電池の体積エネルギー密度とは、電池の0.2C容量に作動電圧として1.2Vをかけた値を、上述した電池の体積Vbで除して求められる値である。電池の0.2C容量とは、JIS C 8708−1997に規定され、周囲温度20±5℃にて、まず、電池を0.1C相当の電流量で16時間充電してから、1〜4時間休止した後、0.2C相当の電流量で1.0Vの放電終止電圧まで放電させたときの容量のことをいう。
【0032】
図5は展開した正極板24の外形形状を示す。正極板24は、長手方向に亘って厚さが一定の正極本体部50を有し、正極本体部50の厚さは例えば0.62mm以上0.72mm以下の範囲にある。正極本体部50の両端に位置する巻始め端部36及び巻終わり端部40は、好適な態様として、それぞれ正極本体部50よりも厚さが薄い薄肉部として形成されている。
【0033】
より詳しくは、図6に拡大して示したように、巻始め端部36及び巻終わり端部40では、正極本体部50との境界である稜52から先端側の径方向外面が傾斜面54として形成され、正極板24の厚さは稜52から先端に向かって一定の変化率で漸減している。一方、正極板24の径方向内面は、巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部50との境界にて面一をなしており、従って、巻始め端部36及び巻終わり端部40は先端に向けて先細り形状をなしている。
【0034】
傾斜面54は、後述するように削り落としやプレスによって巻始め端部36及び正極巻終わり端部40の外面に形成される。このため、稜52及び稜52の周辺部分には、傾斜面54の形成時に生じたばりが存在するので、稜52は境界保護部材56でカバーされるのが好ましい。
境界保護部材56は、正極板24と、正極板24の径方向外面に隣接するセパレータ28との間に介挿され(図2参照)、正極本体部50と、巻始め端部36及び巻終わり端部40との境界をカバーしている。境界保護部材56は、絶縁性のPP製テープからなり、正極板24の稜52全体を被覆可能である。
【0035】
各境界保護部材56の寸法は、電極群22を外装缶10内へ挿入した時、稜52及びその周辺部分のばりが境界保護部材56及びセパレータ28を貫通しないよう設定されるけれども、特に限定されることはない。
また、境界保護部材56の材質及び形態についても、電極群22を外装缶10内へ挿入した時に、稜52及びその周辺部分のばりが境界保護部材56及びセパレータ28を貫通しないよう設定されるけれども、特に限定されることはない。ただし、境界保護部材56の材質としては、耐アルカリ性及び親水性の両方を有するポリオレフィン系のポリマー、例えばPP(ポリプロピレン)が好ましく、また境界保護部材56の形態は、不織布又はテープ等のシート状であるのが好ましい。
【0036】
負極板26は、導電性の負極芯体と、負極芯体に保持された負極合剤とからなる。
より詳しくは、負極合剤は、電池がニッケル水素二次電池であることから、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子及び結着剤からなる。ただし、水素吸蔵合金に代えて、例えばカドミウム化合物を用いて電池をニッケルカドミウム二次電池としてもよい。しかしながら、電池の高容量化には、ニッケル水素二次電池が好適する。なお、活物質が水素の場合、負極容量は水素吸蔵合金量により規定されるので、本明細書では、水素吸蔵合金のことを負極活物質ともいう。
【0037】
水素吸蔵合金粒子は、電池の充電時にアルカリ電解液中で電気化学的に発生させた水素を吸蔵でき、なおかつ放電時にその吸蔵水素を容易に放出できるものであればよい。このような水素吸蔵合金としては、特に限定されないが、例えば、LaNi5やMmNi5(Mmはミッシュメタル)等のAB5型系のものを用いることができる。また、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等をそれぞれ用いることができる。
【0038】
負極芯体としては、例えば、パンチングメタル、金属粉末焼結体基板、エキスパンデッドメタル及びニッケルネット等を用いることができる。
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。なお、本実施形態では、図2に示したように、セパレータ28として、正極板24の径方向外面と負極板26の径方向内面との間に介挿された第1セパレータ28aと、正極板24の径方向内面と負極板26の径方向外面との間に介挿された第2セパレータ28bとが巻回されている。
【0039】
上記した電極群22を収容した外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注液され、セパレータ28に含まれたアルカリ電解液を介して正極板24と負極板26との間での充放電反応が進行する。
なお、アルカリ電解液の種類としては、特に限定されないけれども、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうち2つ以上を混合した水溶液等を用いることができ、またアルカリ電解液の濃度についても特には限定されず、例えば8Nのものが用いられる。
【0040】
上述した電池は、通常の方法を適用して製造することができるけれども、以下では、電極群22の巻回方法について一例を説明する。
図7に示したように、電極群22は、円柱状の巻芯60を一定方向に回転させながら、巻芯60に向かって、正極板24、負極板26、第1セパレータ28a及び第2セパレータ28bを連続的に繰り出して巻回される。ここで、巻芯の外径Pは、特に限定されないが、外装缶10の最大径Dmaxの0%以上30%以下の範囲内に入っているのが好ましい。
【0041】
なお、図7中、線の錯綜をさけるため図2の場合と同様に、第1及び第2セパレータ28a,28bのハッチングを省略するとともに、正極板24及び負極板26の芯体及び合剤を区別せずに図示した。
上述した電池では、電極群22における正極板24の巻回数をNとしたとき、巻回数Nと外装缶10の最大径Dmaxとの間には、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係が成立している。従って、この電池では、正極板の巻回数は4回以上であり、最大径Dmaxの割合に正極板24の巻回数Nが多く、電池反応に関与する正極板24の面積が広いことから、充放電時の電流密度が低くなる。このため、この電池は、高容量化に適するのみならず、急速充電特性及び放電特性において優れている。
【0042】
また、この電池によれば、正極板24の巻回数Nを増やすことにより高容量化が図られており、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べ、正極板24の作製や巻回が容易であり、電池の生産性や品質が高くなる。
更に、この電池では、その横断面でみて、正極板24の巻終わり端部40の周方向位置から正極板24に沿って測った基準位置、つまり巻始め端部36の周方向位置までの角度θが180°以上270°以下の範囲A、更には、200°以上240°以下の好適な範囲Bにあるため、高容量化が図られる。この理由を以下に示す。
【0043】
この電池では、角度θが上記範囲にあるため、巻回直後の形状でみれば、電極群22の外径が正極板24の巻終わり端部40の周方向位置にて顕著に増大し、電極群22の横断面形状は従来の電極群よりも歪である。
そして、この電池では、電極群断面積比率が95%以上100%以下であるため、外装缶10内に歪な電極群22が収容されると、内側からの押圧力により外装缶10の周壁が変形する。このため、組立て直後の電池の形状も真円度が低く、楕円形状になってしまう。
【0044】
しかしながら、この電池では、活性化処理により電極群22が膨張したときに、角度θが上記した範囲にあるため、電極群22の空洞部44が従来よりも大きく潰れる。これは、図8に示したように、巻始め端部36及び巻終わり端部40の周方向位置での正極板24の膨張力が、正極板24及び負極板26の最内周部に対する圧縮力として有効に作用するためである。
【0045】
このように、空洞部44が大きく潰れ、電極群22が径方向内側に向けて大きく膨張すると、電極群22に残されていた空洞部44が発電要素としての正極板24及び負極板26により占有されて有効に活用されることになる。また、空洞部44が大きく潰れることにより、電極群22の径方向外側に向けた膨張が抑制されるとともに、電極群22が、その横断面形状が真円形状になるよう膨張する。この結果として、この電池の真円度は、活性化処理により高くなり、電池の実際の体積が仕様上の体積寸前まで増大され、高容量化が図られる。
【0046】
また、この電池では、好適な態様として、正極板24の巻始め端部36及び巻終わり端部40を、正極本体部50に比べて薄く形成したので、横断面でみたときに正極板24及び負極板26がきれいな渦巻状に巻回される。この結果として、この電池では、電極群22の巻回時、正極板24における破断や亀裂の発生が抑制され、生産性及び品質がより一層向上する。
【0047】
更に、この電池は、好適な態様として、正極板24の径方向外面側を覆う第1セパレータ28aと正極板24との間に、薄肉部である巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部40との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材56を更に有する。このため、この電池では、正極板24における巻始め端部36及び巻終わり端部40と正極本体部50との境界からばりが突出していたとしても、境界保護部材56によりばりがセパレータ28を突き破って負極板26と直接接触するのが防止される。この結果として、この電池では、品質がより一層向上する。
【0048】
その上、この電池では、好適な態様として、電極群22の巻回に用いられた巻芯60の外径Pが、外装缶の最大径Dmaxの30%以下であることにより、正極板24の巻回数Nを容易に増やすことができる。また、この電池では、正極板24の巻回数Nを増やすことにより高容量化が図られており、外径Pが小である巻芯60を用いたとしても、厚い正極板を用いて高容量化を図った場合に比べて、正極板24が容易に巻回され、且つ、正極板24の最内周部での破断や亀裂の発生が防止される。従って、この電池によれば、生産性及び品質を確保しながら、高容量化が容易に図られる。
【実施例】
【0049】
実施例1
1.正極板の作製
各粒子の全部若しくは一部がコバルト化合物で被覆された水酸化ニッケル粉末を用意し、この水酸化ニッケル粉末100質量部に対し、40質量%のHPCディスパージョンを混合して正極用スラリを調製し、この正極用スラリが塗着・充填された3次元網目状の骨格を有するニッケル製の金属体を、乾燥を経てから、圧延・裁断してAAサイズ用の正極板を作製した。
【0050】
2.負極板の作製
組成がMm1.0Ni3.7Co0.8Al0.3Mn0.2(ただし、Mmはミッシュメタル)となるように金属原料を秤量して混合し、この混合物を高周波溶解炉で溶解してインゴットを得た。このインゴットを、温度1000℃のアルゴン雰囲気下にて10時間加熱し、インゴットにおける結晶構造をAB5型構造にした。この後、インゴットを不活性雰囲気中で機械的に粉砕して篩分けし、AB5型の水素吸蔵合金粉末を得た。なお、得られた水素吸蔵合金粉末は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量積分50%にあたる平均粒径が50μmであった。
【0051】
得られた合金粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウム0.5質量部、カルボキシメチルセルロース0.12質量部、PTFEディスパージョン(分散媒:水,比重1.5,固形分60質量%)0.5質量部(固形分換算)、カーボンブラック1.0質量部及び水30質量部を加えて混練し、負極用スラリを調製した。そして、負極用スラリが塗着されたニッケル製のパンチングシートを、乾燥を経てから圧延・裁断し、AAサイズ用の負極を作製した。
【0052】
3.ニッケル水素蓄電池の組立て
得られた正極板と負極板とを、ポリプロピレン繊維製不織布からなり、厚さが0.1mmで目付量が40g/m2のセパレータを介して渦巻状に巻回し、電極群を作製した。得られた電極群を外装缶内に収納して所定の取付工程を行った後、外装缶内に、7Nの水酸化カリウム水溶液と1Nの水酸化リチウム水溶液とからなるアルカリ電解液を注液した。そして、外装缶の開口端を蓋板等を用いて封口し、定格容量が2500mAhでAAサイズの実施例1の密閉円筒形ニッケル水素蓄電池を組立てた。
【0053】
実施例2〜6及び比較例1〜5
表1に示したように、正極板の巻始め端部の周方向位置に対する巻終わり端部の周方向位置(角度θ)を変化させるべく、長さの異なる複数の正極板を作製した。この際、正極板の長さが長いほど、金属体への正極用スラリの充填量を少なくするとともに、圧延率を高めて正極板の厚さを薄くし、電池の容量が一定になるようにした。これらの正極板を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜3のニッケル水素蓄電池を組立てた。
【0054】
4.電池の形状評価
まず、組立て直後の各電池について、最大径及び最小径をそれぞれ測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
この後、各電池について、温度25℃の環境において、0.1Itの充電電流で15時間充電した後、0.2Itの放電電流で終止電圧1.0Vまで放電させる活性化処理を施した。そして、活性化処理後の各電池についても、最大径及び最小径を測定し、最小径を最大径で除して真円度を求めた。
【0055】
表1に、組立て直後(活性化処理前)及び活性化処理後の各真円度と、活性化処理後の最大径とを示す。また、図9には、巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と各真円度との関係を示し、図10には、巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と最大径Dmaxとの関係を示す。なお、表1の各真円度及び最大径は、電池10個当りの平均値である。
【0056】
【表1】
【0057】
(1)表1及び図9から明らかなように、活性化処理により、実施例1〜6の電池では真円度が高くなっているのに対し、比較例1,3〜5の電池では真円度は低下している。
また、実施例1〜6の電池の真円度は、組立て直後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度よりも低いけれども、活性化処理後で比較すると、比較例1〜5の電池の真円度以上である。
【0058】
これより、実施例1〜6の電池では、組立て直後の真円度が低くても、活性化処理により電極群が膨張したとき、電極群の横断面形状が略真円形状になったことがわかる。
なお、実施例1〜6のなかでも、正極板の巻終わり端部の周方向位置が200°,220°,240°の実施例4,5,6では、真円度が特に高い。
【0059】
(2)表1及び図9,10から明らかなように、活性化処理後では、真円度が高いほど、最大径Dmaxが小さくなっている。
(3)活性化処理の前後で、実施例1〜6の電池では、最大径が小さくなるとともに最小径が大きくなり、これに伴って真円度が高くなる傾向が認められた。これに対して、比較例1〜5の電池では、最大径及び最小径が大きくなり、これに伴って真円度が低くなる傾向が認められた。
【0060】
これは、実施例の電池では、活性化処理により電極群が膨張したときに、電極群中央の空洞部が大きく潰れ、電極群が組立て直後の最大径方向で収縮したためと考えられる。
本発明は、上記した一実施形態及び実施例に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、安全弁には弾性体として圧縮コイルばねを用いてもよい。
そして、正極板24は、巻始め端部36及び巻終わり端部40の両方が薄肉部として形成されていることが好ましいが、どちらか一方のみであってもよく、或いは巻始め端部36及び巻終わり端部40を含む長手方向全体に亘って厚さが一定であってもよい。
【0061】
また、薄肉部としての巻始め端部36及び巻終わり端部40の形状は、特に限定されない。例えば、図11に展開して示したように、正極板24の径方向外面を段付き形状に形成し、薄肉部の厚さを一定にしてもよい。なお、先細り形状や段付き形状の薄肉部は形成し易いため、電池の生産性を高めるのに適している。
更に、巻始め端部36側の境界保護部材56に代えて、または、これとともに、図12に示した最内周保護部材62を用いてもよい。最内周保護部材62も絶縁性を有するシート状材料からなり、巻始め端部36を含む正極板24の1巻(最内周部)の径方向外面全体を覆っている。この最内周保護部材62を用いた場合、内部短絡が容易且つ確実に防止され、電池の生産性及び品質がより一層高くなる。これは以下の理由による。
【0062】
この電池では、正極板24の巻回数Nが多いことから、電極群22中央の空洞部44が小さくなることに加え、活性化処理により空洞部44が大きく潰れることから、正極板24の最内周部には、内部短絡の原因になる破断や亀裂が生じ易い。
そこで、最内周保護部材62を用いれば、破断や亀裂の生じた部位がセパレータ28を突き破って負極板26と直接接触するのが防止される。この結果、内部短絡の発生が容易且つ確実に防止され、生産性及び品質がより一層高くなる。
【0063】
最内周保護部材62の材質は、境界保護部材56と同じように、耐アルカリ性及び親水性の両方を有するポリオレフィン系のポリマー、例えばPP(ポリプロピレン)であるのが好ましい。また、最内周保護部材62の形態は、不織布又はテープ等のシート状であるのが好ましい。樹脂製のシート状材料は、柔軟性を有するので巻回が容易であるとともに、体積が小さいので電池の高容量化に適しているからである。
なお、図12中、作図上の都合によりセパレータ28を省略した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係る円筒型ニッケル水素二次電池の概略を示す部分切欠き斜視図である。
【図2】図1の電池の横断面を示した概略図である。
【図3】図1の電池における(a)電極群の横断面積を示した模式図、および(b)外装缶の内側の断面積から電極群の空洞部の断面積を差し引いた横断面積を示した模式図である。
【図4】図2の横断面において、正極板の巻始め端部の周方向位置に対する巻終わり端部の周方向位置を説明するための図である。
【図5】図1の電池に用いられた正極板を展開して示した斜視図である。
【図6】図6の正極板の一部と境界保護部材とを展開して示す斜視図である。
【図7】図1の電池に用いられる電極群の巻回方法の説明図である。
【図8】図1の電池において、活性化処理により電極群の最内周部に加わる圧縮力を説明するための図である。
【図9】正極板の巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と、組立て直後及び活性化処理後の電池の真円度との関係を示すグラフである。
【図10】正極板の巻終わり端部の周方向位置(角度θ)と、活性化処理後の電池の最大径Dmaxとの関係を示すグラフである。
【図11】変形例の正極板の一部を展開して示した斜視図である。
【図12】巻始め端部側の境界保護部材に代えて適用された最内周保護部材を、正極板及び負極板の巻始め端部側の一部とともに模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 外装缶
22 電極群
24 正極板
26 負極板
28 セパレータ
36 正極板の巻始め端部
40 正極板の巻終わり端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の円筒状外装缶内に、正極板、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池において、
前記外装缶の最大径をDmaxとし、前記正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たし、
前記電極群は、巻芯を用いて巻回されて前記巻芯に対応した空洞部を中央に有し、
前記電池の横断面でみて、前記空洞部を除く前記電極群の断面積を、前記外装缶の内断面積から前記電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であり、且つ、前記正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、前記正極板の巻終わり端部の周方向位置から前記正極板に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にある
ことを特徴とする円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記巻始め端部を含む前記正極板の1巻の径方向外面を覆う絶縁性の最内周保護部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記正極板は、前記巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方に、これら端部間の正極本体部よりも厚さが薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項4】
前記正極板の径方向外面側を覆うセパレータと前記正極板との間に、前記薄肉部と前記正極本体部との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材を更に備えることを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項5】
前記保護部材は、樹脂製のテープ及び不織布のうちいずれかからなることを特徴とする請求項2又は4記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項6】
前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有することを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項7】
前記巻芯の外径は、前記外装缶の最大径の30%以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項1】
導電性の円筒状外装缶内に、正極板、負極板及びセパレータを巻回してなる電極群を備えた円筒型アルカリ蓄電池において、
前記外装缶の最大径をDmaxとし、前記正極板の巻回数をNとしたとき、N≧[0.5×Dmax-2.65](ただし、[ ]はガウス記号である。)で示される関係を満たし、
前記電極群は、巻芯を用いて巻回されて前記巻芯に対応した空洞部を中央に有し、
前記電池の横断面でみて、前記空洞部を除く前記電極群の断面積を、前記外装缶の内断面積から前記電極群の空洞部の断面積を差し引いた値で除した値が95%以上100%以下であり、且つ、前記正極板の巻始め端部の周方向位置を基準位置としたときに、前記正極板の巻終わり端部の周方向位置から前記正極板に沿って測った前記基準位置までの角度θは180°以上270°以下の範囲にある
ことを特徴とする円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記巻始め端部を含む前記正極板の1巻の径方向外面を覆う絶縁性の最内周保護部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記正極板は、前記巻始め端部及び巻終わり端部のうち少なくとも一方に、これら端部間の正極本体部よりも厚さが薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項4】
前記正極板の径方向外面側を覆うセパレータと前記正極板との間に、前記薄肉部と前記正極本体部との境界上に位置して絶縁性の境界保護部材を更に備えることを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項5】
前記保護部材は、樹脂製のテープ及び不織布のうちいずれかからなることを特徴とする請求項2又は4記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項6】
前記薄肉部は一定の厚さ若しくは徐々に変化する厚さを有することを特徴とする請求項3記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【請求項7】
前記巻芯の外径は、前記外装缶の最大径の30%以下であることを特徴とする請求項1記載の円筒型アルカリ蓄電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−95357(P2007−95357A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280010(P2005−280010)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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