説明

円筒型リニアモータ

【課題】本発明は、可動子の各リングマグネットの配列を軸方向に対して傾斜させたスキュー形状としてサーボ制御の向上を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による円筒型リニアモータは、可動子(5)の各リングマグネット(6〜6D)の端面(10)の面方向(11)は、各リングマグネット(6〜6D)の軸方向(A)に対して非直角方向に傾斜し、隣接する各リングマグネット(6〜6D)の磁化方向(G1〜G5)は互いに異なるようにしたスキュー形状の構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒型リニアモータに関し、特に、可動子の各リングマグネットの配列を軸方向に対して傾斜させたスキュー形状としてサーボ制御の向上を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の円筒型リニアモータとしては、特許文献1の図8に開示された構成を図4に示すことができる。
すなわち、図4に示されるように、長手の円筒状ケース1の内壁1aには、例えば、三相巻線からなる固定子巻線2を有する円筒状固定子3が設けられている。
【0003】
前記円筒状固定子3の各固定子巻線2の内側の内側空隙4内には、長手形状の可動子5が軸方向Aに沿って往復移動可能に配設され、この可動子5の外周には、多数のリングマグネット6が設けられ、各リングマグネット6は、矢印にて表示されているように、ラジアル方向に磁化されたラジアル磁化方向に着磁され、その磁化方向は交互に異なる方向となるように設定されている。
また、スキューを形成したロータとしては、例えば、特許文献2及び3に示されるようにロータの外周に貼り付ける各マグネットをスキュー形状に構成し、ゴギングをなくすようにしているが、円筒状リニアモータの可動子のマグネットをスキュー形状に配置した構成は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369492号公報
【特許文献2】特開2008−211947号公報
【特許文献3】特開平5−175037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の円筒型リニアモータは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図4で示す従来構成の場合、可動子に設けられた各リングマグネットの磁化方向は、互いに向きは異なるがラジアル方向6aであるため、ところどころに磁束が少ない部分が発生し、推力リップルが発生すると共に、サーボ制御によって可動子の位置決め制御を行う場合、位置判別の制御には好適とするほどの磁束変化には少なくなかった。
また、前述の特許文献2及び3に開示されたスキュー構造のロータを用いたモータ構造においては、ロータ回転時のゴギングを抑えることしかできず、円筒型リニアモータへの適用は全く考えられていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による円筒型リニアモータは、円筒状ケースの内壁に設けられた円筒状固定子と、前記円筒状固定子に所定間隔で設けられた多数の固定子巻線と、前記円筒状固定子の内側空隙内に軸方向移動自在に設けられた可動子と、前記可動子の外周に設けられた複数のリングマグネットとを備え、前記各リングマグネットの端面の面方向は、前記リングマグネットの軸方向に対して非直角方向に傾斜し、隣接する前記各リングマグネットの磁化方向は互いに異なる構成であり、また、前記各リングマグネットの軸方向に沿う厚さは、所定の厚さの厚形状と前記厚形状よりも薄い薄形状の組合せよりなり、前記厚形状の前記リングマグネットの磁化方向は前記軸方向であり、前記薄形状の前記リングマグネットの磁化方向はラジアル方向である構成であり、また、前記可動子の軸方向断面において、前記薄形状のリングマグネットには、前記軸方向と直交する前記可動子のラジアル方向に沿って互いに異なる磁化方向が形成されている構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による円筒型リニアモータは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、円筒状ケースの内壁に設けられた円筒状固定子と、前記円筒状固定子に所定間隔で設けられた多数の固定子巻線と、前記円筒状固定子の内側空隙内に軸方向移動自在に設けられた可動子と、前記可動子の外周に設けられた複数のリングマグネットとを備え、前記各リングマグネットの端面の面方向は、前記リングマグネットの軸方向に対して非直角方向に傾斜し、隣接する前記各リングマグネットの磁化方向は互いに異なることにより、円筒状固定子側の各固定子巻線側では磁束の強弱が明確となり、可動子のサーボ制御、すなわち、位置決め制御が容易かつ向上できる。
また、前記各リングマグネットの軸方向に沿う厚さは、所定の厚さの厚形状と前記厚形状よりも薄い薄形状の組合せよりなり、前記厚形状の前記リングマグネットの磁化方向は前記軸方向であり、厚形状のマグネットにより前記薄形状の前記リングマグネットの磁化方向はラジアル方向であることにより、ゆるやかに磁束が増加し、さらに、薄形状のマグネットにより大きいピーク磁束が得られ、磁束の大、小を明確に得ることができる。
また、前記可動子の軸方向断面において、前記薄形状のリングマグネットには、前記軸方向と直交する前記可動子のラジアル方向に沿って互いに異なる磁化方向が形成されていることにより、円筒状固定子側の磁束のピーク幅を取りやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による円筒型リニアモータの要部を示す軸方向に沿う断面構成図である。
【図2】図1のリングマグネットを示す斜視図である。
【図3】本発明におけるマグネットの磁化方向と磁束の流れを対応して示す説明図である。
【図4】従来の円筒型リニアモータを示す軸方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、可動子の各リングマグネットの配列を軸方向に対して傾斜させたスキュー形状としてサーボ制御の向上を得るようにした円筒型リニアモータを提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による円筒型リニアモータの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例における図4の円筒型リニアモータの構成は、基本的には本発明における円筒型リニアモータと同一で、各リングマグネットの配列構成が異なるだけであるため、図4の円筒型リニアモータの構成を本発明の円筒型リニアモータに援用し、その説明は省略するものとする。
【0011】
図1において符号5で示されるものは、前述の円筒状固定子3の内側で軸方向Aに沿って往復移動自在に配設された棒状の可動子であり、この可動子5の外周5aには複数のリングマグネット6,6A,6B,6C,6Dが軸方向Aに沿って積層される状態で配設されている。
【0012】
前記各リングマグネット6,6A,6B,6C,6Dは、図2に示されるように、その両端に形成される各端面10の両方向11は、前記リングマグネット6〜6Dの軸方向Aに対して非直角方向に傾斜しており、前記各リングマグネット6〜6Dは前記可動子5上において互いに傾斜した状態、すなわち、周知のスキュー状態で積層されている。
従って、前記可動子5の軸方向Aに対して直交するラジアル方向6aにおいては、図1の軸方向断面で示されるように、互いに異なるリングマグネット6〜6Dが断面上では可動子5を介して対向するように配設されている。
【0013】
前記各リングマグネット6〜6Dは、図1で示されるように、5個(5個以外も可)で1つの群12を形成しており、実際には、この群12を複数個直列に用いて構成することができる。
また、前記各リングマグネット6〜6Dは、図1の矢印で示される方向に磁化されており、リングマグネット6は軸方向Aの右方向の第1磁化方向Gに磁化され、リングマグネット6Aはラジアル方向6aの外方向の第2磁化方向Gに磁化され、リングマグネット6Bは軸方向Aの左方向の第3磁化方向Gに磁化され、リングマグネット6Cはラジアル方向6aの内方向の第4磁化方向Gに磁化され、リングマグネット6Dは軸方向Aの右方向の第5磁化方向Gに磁化されている。
従って、隣接する各リングマグネット6〜6Dの各磁化方向G〜Gは、互いに異なるように構成されている。
【0014】
前記各リングマグネット6〜6Dの軸方向Aに沿う厚さは、図3で示されるように、所定の厚さの厚形状Bに形成された各リングマグネット6,6B,6Dと、前記厚形状よりも薄い薄形状Cに形成された各リングマグネット6A及び6Cとで構成された組合わせよりなり、前記厚形状Bの各リングマグネット6,6B及び6Dの磁化方向は軸方向Aであり、他の薄形状Cの各リングマグネット6A及び6Cの磁化方向はラジアル方向6aである。
【0015】
次に、前述の構成において、本発明による各リングマグネット6〜6Dを用いた可動子5を図4の従来構成の円筒型リニアモータに適用した場合、各リングマグネット6,6B及び6Dの磁化方向G,G,Gが各々軸方向Aに沿っているため、図3の磁束分布に示されるように、磁化方向G,Gの磁束変化よりも磁束がゆるやかに立上がり又は立上がることになり、他の各リングマグネット6A,6Cのラジアル方向6aの磁化方向G,Gによる強い磁束分布のピークが相対的に目立つようになるため、この各リングマグネット6A,6Cの強い磁束分布を用いてサーボ制御を行い、円筒型リニアモータの直線方向の位置決めを高精度に行うように適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明による円筒型リニアモータは、リニアのみではなく、ロータリ型にも適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 円筒状ケース
1a 内壁
2 固定子巻線
3 円筒状固定子
4 内側空隙
5 可動子
5a 外周
6〜6D リングマグネット
6a ラジアル方向
〜G 第1〜第5磁化方向
10 端面
11 面方向
12 群
A 軸方向
B 厚形状
C 薄形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状ケース(1)の内壁(1a)に設けられた円筒状固定子(3)と、前記円筒状固定子(3)に所定間隔で設けられた多数の固定子巻線(2)と、前記円筒状固定子(3)の内側空隙(4)内に軸方向移動自在に設けられた可動子(5)と、前記可動子(5)の外周(5a)に設けられた複数のリングマグネット(6〜6D)とを備え、
前記各リングマグネット(6〜6D)の端面(10)の面方向(11)は、前記リングマグネット(6〜6D)の軸方向(A)に対して非直角方向に傾斜し、隣接する前記各リングマグネット(6〜6D)の磁化方向(G1〜G5)は互いに異なることを特徴とする円筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記各リングマグネット(6〜6D)の軸方向(A)に沿う厚さは、所定の厚さの厚形状(B)と前記厚形状よりも薄い薄形状(C)の組合せよりなり、前記厚形状(B)の前記リングマグネット(6,6B,6D)の磁化方向は(G1,G3,G5)前記軸方向(A)であり、前記薄形状(C)の前記リングマグネット(6A,6C)の磁化方向(G2,G4)はラジアル方向(6a)であることを特徴とする請求項1記載の円筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記可動子(5)の軸方向断面において、前記薄形状(C)のリングマグネット(6A,6C)には、前記軸方向(A)と直交する前記可動子(5)のラジアル方向(6a)に沿って互いに異なる磁化方向が形成されていることを特徴とする請求項2記載の円筒型リニアモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223004(P2012−223004A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88023(P2011−88023)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】