説明

円筒基体および誘電体ローラカバーを含むコロナローラ、およびこのようなコロナローラの製造方法

円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラ、およびその製造方法。ローラカバーは基体の外面上に被せられた熱可塑性プラスチック材料、たとえばポリアミドの層を含んでいる。電気的絶縁特性を有する固体(粉末)粒子が、粒子の部分領域だけが内層から突出するようなフォーム・ロッキング方法で、層の表面付近の材料マトリクス内に埋め込まれる。耐摩耗性および耐食性の固い表面がプラスチック材料層の外側に形成され、前記耐摩耗性および耐食性の固い表面は同様に電気的絶縁特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラに関連する。本発明はこのようなコロナローラの製造方法にも関連する。
【背景技術】
【0002】
しばしば、酸化アルミニウムがコロナローラのローラカバー用誘電体として使用され、酸化アルミニウムはプラズマ溶射によりローラ本体上に被せられる。このようなローラはコロナ・システムにおいて使用され(添付図参照)、たとえば、プラスチック材料の箔が特定の放電により前処理され、酸化プロセスによりその表面が親水性となって従来のオフセット・プロセスによる印刷で使用できるようにされる。酸化アルミニウムのこれらの誘電的に有効な層はしばしば多孔性であるという事実を考えて、それらは合成樹脂により封止される。そしてこの封止を表面的に有効なだけでなく層の厚さ全体にわたって有効とする場合、特許文献1および特許文献2から知られているように、このプロセスは真空中で実施される。しかしながら、実際には合成樹脂による酸化アルミニウム層のポアディープ封止(pore−deep sealing)であってもローラコアの電気的破壊が生じないことを保証できないことが判明した。その理由は、一方では、プラズマ溶射において通常提供され、対応するピークアクション(電気的破壊に至る電界の局部増加−避雷針の原理)に結びつく実質的なトポグラフィーを有する接着促進層に、他方では、撓み、振動等を含む動作中のローラ本体の動力学に基づいており、結果として、合成樹脂で封止された酸化アルミニウム層も電気的破壊を起こす亀裂やひび割れを生じる。電気的破壊は、通常、プロセスの中断だけでなくコロナローラの機能の破壊をも意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第DE19957644A1号明細書
【特許文献2】国際特許出願第WO01/40544A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は電気的破壊に対する動作安全性が高められたコロナローラを提供することであり、かつ、このようなコロナローラの信頼できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の基本的な目的は、請求項1記載のコロナローラおよび請求項10および14記載の方法により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ローラ基体およびローラカバー(誘電性)からなりコロナシステムにおいて使用されるコロナローラの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
コロナローラは円筒基体および誘電体ローラカバーを含んでいる。本発明に従って、ローラカバーは基体の外面上に被せられた熱可塑性プラスチック材料の層を含み、電気的絶縁特性を有する固体(粉末)粒子が、粒子の部分領域だけが内層から突出するようなフォーム・ロッキング(form−locking)方法で、その表面付近の層の材料マトリクス中に埋め込まれ、プラスチック材料層の外側に耐摩耗性および耐食性の固い表面が形成され、この耐摩耗性および耐食性の固い表面も同様に電気的絶縁特性を有する。
【0008】
本発明に従って提供されるカバーは、一方では金属接着促進層が必要とされないためトポグラフィによるピークアクションを介した電気的破壊の危険性が無くなり、他方では電気的絶縁外層内に亀裂やひび割れが形成されても、誘電特性の局部的な完全破壊、したがって電気的破壊とはならない点で特に有利である。熱可塑性材料の電気絶縁効果は、特に、その比抵抗が少なくとも1012Ω×mである時に、コロナローラの機能を確保するのに完全に十分であり、従って、その上に配置された外層は付加的な電気的絶縁を示すが、しかし外層の主機能は摩耗に対する保護である。本発明によるコーティングのさらなる利点は、高い誘電率を有する熱可塑性材料のカバーは耐薬品性も高く、ローラ本体を腐食から安全に保護するという事実にある。酸化アルミニウム層の局部層間剥離を伴う表面下の腐食は、その表面が、たとえば強酸性洗浄剤により処理される時、そしてローラ本体が低合金鋼により構成される時に従来のコロナローラ内で生じる。
【0009】
プラスチック材料層は、特に、その中にプラスチック材料層から突出する粒子部分領域が埋め込まれた、電気絶縁性、耐摩耗性外部機能層により被覆することができ、好ましくは、外部機能層は酸化物セラミック、特にAl、Cr、SiO、ZrOまたはムライトまたは2つ以上のこれらの材料の混合物により構成される。
【0010】
プラスチック材料層の材料は、特に、RILSAN(登録商標)、NYLONおよびPERLON(登録商標)の商品名で知られるような材料等の熱可塑性ポリアミド、すなわち、ヒマシ油に基づくポリアミドおよびラクタムに基づくPA11、PA4、PA11(NYLON)のポリアミドまたはPA6(PERLON(登録商標))のポリアミドとすることができる。
【0011】
本発明のさらなる実施例に従って、機能層は0.05mmから3.0mmの厚さを有し、好ましくは、およそ0.5mmの厚さを有する。一方、従来のコロナローラには、しばしば、2mm以上までの厚さを有しかつこれに対応して亀裂およびひび割れの影響を受ける酸化アルミニウム層が設けられるのに対し、本発明によるカバーは、酸化物セラミック層の厚さを通常数10分の1ミリメートルまで低減することができる。これはコロナローラに対するこのようなコーティングの製造において経済的な利点を有するだけでなく、酸化物セラミック層は動的負荷の元でひび割れを形成する傾向は遥かに少ないため、動作安全性を実質的に高める。
【0012】
0.5mmから4mmまでの厚さ、好ましくは、およそ1mmから2mmまでの厚さはプラスチック材料層に特に適することが判明し、好ましくは、ローラカバーの表面は0.5μm<Rz<500μmの表面粗さ、特に、1.5μmから20μmの表面粗さRzを有する。
【0013】
本発明に従えば、円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラの製造方法は、熱可塑性プラスチック材料層が基体の外面上に被される第1のステップを含んでいる。さらなるステップにおいて、プラスチック材料層は蜂蜜と同様な粘度まで加熱される。続いて、電気的絶縁特性を有する固体(粉末)粒子が、これらの粒子の部分領域だけが内層から突出するようなフォーム・ロッキング方法で、このように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の材料マトリクス中に埋め込まれる。このように用意されたプラスチック材料層は、その中にプラスチック材料層から突出する部分領域が埋め込まれた、電気的絶縁性、耐摩耗性外部機能層により被覆される。
【0014】
好ましくは、機能層は溶射により製造され、第1の粉末粒子がその部分領域をプラスチック材料層からまだ突出するように、加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の材料マトリクス中に発射され、溶射操作のさらなる過程において、突出する粉末粒子は前記機能層を形成する後続粉末粒子と結合される。
【0015】
円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラの修正された製造方法に従えば、熱可塑性プラスチック材料層がまた基体の外面上に被され、蜂蜜と同様な粘度まで加熱される。次に、電気的絶縁特性を有する固体材料の粒子がこのように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の材料マトリクス中に分散され、その表面付近に固体材料の粒子が分散された熱可塑性プラスチック材料のコーティングをその後研削することにより耐摩耗性および耐食性の固い表面が製造される。
【0016】
両方の方法の実施例において、外部コーティングには、特許文献1および特許文献2から知ることができるように、任意の細孔を閉じる封止を施すことができる。
【0017】
1つの図面はローラ基体10およびローラカバー(誘電性)11からなる前記したタイプのコロナローラの例を示している。コロナシステムはエクストラクタを備えた電極ユニット13を含んでいる。プラスチック材料の箔12が矢符方向に回転するコロナローラ上に支持されており、箔は電極ユニット13の下を通過しその表面が酸化過程により親水性となるように放電により前処理され、従来のオフセット・プロセスにおける印刷に適切なものとされる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラであって、前記ローラカバーは前記基体の外面上に被せられた熱可塑性プラスチック材料の層を含み、電気的絶縁特性を有する固体(粉末)粒子が、前記粒子の部分領域だけが内層から突出するようなフォーム・ロッキング方法で、前記層のその表面付近の材料マトリクス中に埋め込まれ、前記プラスチック材料層の外側に耐摩耗性および耐食性の固い表面が形成され、前記耐摩耗性および耐食性の固い表面は同様に電気的絶縁特性を有する、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項2】
請求項1記載のコロナローラであって、前記プラスチック材料層はその中に前記プラスチック材料から突出する粒子部分領域が埋め込まれる電気的絶縁性、耐摩耗性外部機能層により被覆される、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項3】
請求項1のコロナローラであって、前記機能層は酸化物セラミック、特に、Al、Cr、SiO、ZrOまたはムライトまたは前記材料の2つ以上の混合物により構成される、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項4】
請求項1および2のいずれか1記載のコロナローラであって、前記熱可塑性プラスチック材料は少なくとも1012Ω×mの比抵抗を有する、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項5】
前記いずれか1項記載のコロナローラであって、前記プラスチック材料層はポリアミドにより構成される、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項6】
前記いずれか1項記載のコロナローラであって、前記プラスチック材料層のその表面付近の前記材料マトリクス中に埋め込まれる前記粒子は前記機能層と同じ材料より構成される、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項7】
前記いずれか1項記載のコロナローラであって、前記プラスチック材料層は0.5mmから4mmの厚さを有する、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項8】
前記いずれか1項記載のコロナローラであって、前記機能層は0.05mmから3.0mm、好ましくは、およそ0.5mmの厚さを有する、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項9】
前記いずれか1項記載のコロナローラであって、前記ローラカバーの前記表面は0.5μm<Rz<500μmの表面粗さ、特に、1.5μmから20μmの表面粗さRzを有する、ことを特徴とするコロナローラ。
【請求項10】
円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラの製造方法であって、熱可塑性プラスチック材料層が前記基体の外面上に被され、前記プラスチック材料層は蜂蜜と同様の粘度まで加熱され、電気的絶縁特性を有する固体(粉末)粒子が、前記粒子の部分領域だけが内層から突出するようなフォーム・ロッキング方法で、このように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の材料マトリクス中に埋め込まれ、このように用意されたプラスチック材料層は、その中に前記プラスチック材料層から突出する前記粒子部分領域が埋め込まれる、電気的絶縁性、耐摩耗性外部機能層により被覆される方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、前記粒子は前記このように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の前記材料マトリクス中に発射される方法。
【請求項12】
請求項10および11のいずれか1項記載の方法であって、前記機能層を製造するための溶射操作ステップにおいて、第1の粉末粒子がその部分領域をやはり前記プラスチック材料層から突出させるように、前記加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の前記材料マトリクス中に発射され、かつ、前記溶射操作のさらなる過程において、前記突出する粉末粒子は前記機能層を形成する後続粉末粒子と結合される方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項記載の方法であって、前記外部機能層は0.05mmから3.0mm、好ましくは、およそ0.5mmの厚さで製造される方法。
【請求項14】
円筒基体および誘電体のローラカバーを含むコロナローラの製造方法であって、熱可塑性プラスチック材料層が前記基体の外面上に被され、前記プラスチック材料層は蜂蜜と同様の粘度まで加熱され、電気的絶縁特性を有する固体材料の粒子が、前記このように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の前記材料マトリクス中に拡散され、前記その表面付近で固体材料の粒子が拡散された前記熱可塑性プラスチック材料の前記カバーを逐次研削することにより耐摩耗性および耐食性の固い表面が製造される方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、前記固体材料の粒子は、前記このように加熱されたプラスチック材料層のその表面付近の前記材料マトリクス中にサンドブラストまたはカレンダー・システムにより分散される方法。
【請求項16】
請求項10から15のいずれか1項記載の方法であって、前記プラスチック材料層は、流動床プロセスまたは溶射プロセスにより前記ローラの前記基体上に被せられる方法。
【請求項17】
請求項10から16のいずれか1項記載の方法であって、前記プラスチック材料層は0.5mmから4mmの厚さで被せられる方法。
【請求項18】
請求項10から17のいずれか1項記載の方法であって、前記ローラカバーの前記表面は0.5μm<Rz<500μmの表面粗さ、特に、1.5μmから20μmの表面粗さRzまで研削または研磨される方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−523161(P2011−523161A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502339(P2011−502339)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053448
【国際公開番号】WO2009/121756
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510238591)コーテック ゲゼルシャフト フル オーベルフレーヘンフェレデルンク エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】