説明

円筒状内面の検査装置

【課題】魚眼レンズを利用した検査の利点を活かしつつ、検査対象物の円筒部の内面の明瞭な画像を取得することが可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象物としてのボトル1の口部2を軸線方向から魚眼レンズ15を介して撮像するカメラ11と、魚眼レンズ15とボトル1との間にて口部2と同軸的に配置される円筒ミラー12とを検査装置10に設ける。魚眼レンズ15と円筒ミラー12との間には上部照明器13を設け、円筒ミラー12の外周には下部照明器14を設ける。口部内面2aの像を円筒ミラー12から魚眼レンズ15に導いて内面2aの画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料ボトル等の検査対象物に存在する円筒部の内面を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料壜の口部の内面を検査する装置として、飲料壜を口部の軸線の回りに回転させつつ口部の斜め上方から口部内面を撮影する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。その他に、本願発明に関連する先行技術として、特許文献2には、円筒ミラーを利用してPETボトルのキャップの外周面を照明しつつ撮像する検査装置が開示され、特許文献3には、円筒ミラーを利用してOリングの内周を撮像する装置が開示され、特許文献4には魚眼レンズを利用した撮像装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−193605号公報
【特許文献2】特開2002−257532号公報
【特許文献3】特開2006−337074号公報
【特許文献4】特開2000−221391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料壜を回転させる検査装置では回転機構が必須となり、装置の高速化及び小型化に不利である。口部内面を斜め上方から覗き込むように撮影するため、口部内面の上端部と下端部との間で撮影距離が大きく変化し、焦点調整が難しいことがある。魚眼レンズを利用すれば、飲料壜の回転を要しないために装置の高速化及び小型化に有利であり、飲料壜の口部の内面を軸線方向から撮影することができるので、焦点調整も容易である。しかし、口部の内面を撮影するためにはレンズの先端を口部の天面に接近させる必要がある。この場合、口部内面が魚眼レンズの影に入り、口部内面の明るさが不足して明瞭な画像を取得することが困難となるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は魚眼レンズを利用した検査の利点を活かしつつ、検査対象物の円筒部の内面の明瞭な画像を取得することが可能な円筒状内面の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の円筒部の検査装置は、検査対象物(1)の円筒部(2)を軸線方向から魚眼レンズ(15)を介して撮像する撮像手段(11)と、前記魚眼レンズと前記検査対象物との間に配置される円筒ミラー(12)とを備え、前記円筒ミラーの反射面にて反射した前記円筒部の内面の像が前記魚眼レンズを介して撮像されるように前記撮像手段及び前記円筒ミラーが設けられていることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明によれば、撮像手段の魚眼レンズと検査対象物の円筒部との間に円筒ミラーが配置されているため、魚眼レンズを円筒部から離して設置しても、円筒部の内面を魚眼レンズで捉えてこれを撮像することができる。これにより、魚眼レンズから円筒部を遠ざけて口部内面の明るさを確保し、その明瞭な画像を取得することが可能となる。魚眼レンズを介して軸線方向から円筒部の内面を撮影するため、装置の高速化、あるいは小型化も図ることができる。
【0008】
本発明の検査装置において、前記円筒ミラーの反射面(17)には、前記円筒部から軸線方向に離れるほど漸次内径が拡大するテーパが付され、かつ前記反射面の小径側の端部の内径(A)が前記円筒部の内径(B)よりも大きいものとされてもよい。この形態によれば、円筒部の軸線方向に対する反射面の傾斜角を適宜に調整することにより、円筒部の天面から所望の深さの範囲の内面の画像を取得することができる。
【0009】
本発明の検査装置において、前記検査対象物の円筒部を照明する照明手段(13、14)を備えてもよい。これにより、円筒部の内面を照明して、円筒部の内面とその内面に存在する異物、傷等といった欠陥との間の明暗差が高い明瞭な画像を取得することができる。
【0010】
前記照明手段は、前記円筒ミラーと前記魚眼レンズとの間の光路(OP)の外周に配置されたリング状の上部照明器(13)を備えてもよい。あるいは、前記照明手段は、前記円筒ミラーと前記検査対象物の円筒部との間の光路(OP)の外周に配置されたリング状の下部照明器(14)を備えてもよい。上部照明器の照明光は円筒ミラーを介して円筒部内面に導くことができる。下部照明器の照明光は円筒ミラーと検査対象物の円筒部との間のスペースを経由して円筒部の内面に導くことができる。
【0011】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明の検査装置によれば、撮像手段の魚眼レンズと検査対象物の円筒部との間に円筒ミラーを配置することにより、魚眼レンズを円筒部から離して設置しても円筒部の内面を魚眼レンズで捉えてこれを撮像することが可能となる。よって、魚眼レンズを利用した検査の利点を活かしつつ、検査対象物の円筒部の内面の明瞭な画像を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一形態に係る検査装置を示している。検査装置10は、検査対象物としてのPETボトル(以下、ボトルと略称する。)1の搬送ライン上に設置され、そのボトル1の口部2の内面2aを検査する。検査装置10は、撮像手段としてのカメラ11と、そのカメラ11とボトル1との間にて口部2と同軸的に配置された円筒ミラー12と、カメラ11と円筒ミラー12との間に配置された上部照明器13と、円筒ミラー12の外周に配置された下部照明器14とを備えている。
【0014】
カメラ11は魚眼レンズ15を有し、その魚眼レンズ15で捉えた被写体の像をCCDイメージセンサ等の撮像素子にて電気信号に変換する。カメラ11から出力された画像信号は不図示の信号処理部に入力され、その信号処理部で所定のアルゴリズムに従って異物や傷等の欠陥の有無が判別される。カメラ11は、その魚眼レンズ15の光軸が口部2の中心線CLと一致するようにしてボトル1の上方に配置されている。円筒ミラー12は、円筒型のミラーハウジング16の内周の全面に反射面17が形成された構成を備えている。反射面17には、口部2から軸線方向に離れるに従って内径が漸次拡大するテーパが付されている。反射面17の小径側の端部の内径Aは口部2の内径Bよりも大きい。そして、カメラ11と円筒ミラー12とは、円筒ミラー12の反射面17にて反射した口部内面2aの像が魚眼レンズ15を介して撮像されるように設けられている。中心線CLと平行な方向に対する反射面17の傾斜角θは、口部の天面2bを基準としたときの内面2aの観察すべき深さdに応じて適宜に設定すればよい。
【0015】
上部照明器13は、リング状の発光部18と、その発光部18の底面側の発光面18aに重ね合わされる拡散板19とを備えている。発光部18には、光源としての多数のLED(不図示)がリング状に配置されている。それらのLEDの発光色は一例として赤色である。発光部18のLEDが発するリング状の照明光は発光面18aから下方に向けて照射される。拡散板19は、発光面18aから照射される照明光を拡散してその照度分布を均一化する。発光部18及び拡散板19は口部2の中心線CLと同軸に配置されており、それらの内径はカメラ11に向かう光路OPを遮らない範囲に設定されている。
【0016】
下部照明器14は、リング状の発光部20と、その発光部20の内周側の発光面20aに重ね合わされる拡散板21とを備えている。発光部20には、光源としての多数のLED(不図示)がリング状に配置されている。それらのLEDの発光色は一例として赤色である。発光面20aは下方、すなわち、ボトル1の口部2に向かうに従って内径が漸次拡大するテーパが付されており、発光部20のLEDが発するリング状の照明光は発光面20aからボトル1の口部2に向けて斜め下方に照射される。拡散板21は、発光面20aから照射される照明光を拡散してその照度分布を均一化する。発光部20及び拡散板21は口部2の中心線CLと同軸に配置されている。
【0017】
以上の構成の検査装置10によれば、検査対象物としてのボトル1の口部2と、カメラ11の魚眼レンズ15との間に円筒ミラー12が配置されているため、魚眼レンズ15を口部2から軸線方向に離しても、口部内面2aの像を円筒ミラー12の反射面17で反射させて魚眼レンズ15に入射させることにより、口部内面2aの画像を取得することができる。そして、魚眼レンズ15を口部2から離すことにより、口部2の周囲に十分な空きスペースを確保し、その空いたスペースに上部照明器13及び下部照明器14を設置することが可能となる。これにより、口部内面2aの明るさを十分に確保して明暗差の高い明瞭な画像を取得し、検査精度を向上させることができる。
【0018】
図2は、本形態の検査装置10にてボトル1の口部内面2aを実際に撮影した画像を示す。口部天面2bから円筒ミラー12の下面までの距離La、円筒ミラー12の反射面17の傾斜角θは適宜に調整した。口部内面2aの内径Bは20mmである。図2の白色部分が口部内面2aの像であり、その像内の黒点部分が口部内面2aに付着した異物である。この結果から明らかなように、本形態の検査装置1によれば、口部天面2bに付着した黒色の異物と、口部内面2aとの明暗差を十分に高めた明瞭な画像を取得できることが確認された。
【0019】
本発明は上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、上記の形態では照明手段として上部照明器13及び下部照明器14を設けているが、いずれか一方の照明器のみで明瞭な画像が得られる場合には他方の照明器を省略してもよい。円筒部内面に入射する自然光のみで明瞭な画像が得られる場合には照明手段を省略してもよい。撮像手段は、口部を軸線方向から撮影できるように配置されていれば足り、例えば円筒ミラー12と魚眼レンズ15との間にミラー等の光学部品を追加することにより、カメラ11を光路OPの光軸とは異なる方向に向けて設置してもよい。検査対象物はボトルに限ることなく、ボトル成形用のプリフォーム等、円筒部を有する種々の物品を検査対象物としてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一形態に係る検査装置の要部を示す図。
【図2】図1の検査装置にて実際に取得されたボトルの口部内面の画像の一例を示す図。
【符号の説明】
【0021】
1 ボトル(検査対象物)
2 口部(円筒部)
2a 口部の内面
10 検査装置
11 カメラ(撮像手段)
12 円筒ミラー
13 上部照明器(照明手段)
14 下部照明器(照明手段)
15 魚眼レンズ
17 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の円筒部を軸線方向から魚眼レンズを介して撮像する撮像手段と、前記魚眼レンズと前記検査対象物との間に配置される円筒ミラーとを備え、前記円筒ミラーの反射面にて反射した前記円筒部の内面の像が前記魚眼レンズを介して撮像されるように前記撮像手段及び前記円筒ミラーが設けられていることを特徴とする円筒部の検査装置。
【請求項2】
前記円筒ミラーの反射面には、前記円筒部から軸線方向に離れるほど漸次内径が拡大するテーパが付され、かつ前記反射面の小径側の端部の内径が前記円筒部の内径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査対象物の円筒部を照明する照明手段を備えたことを特徴とする請求項1又2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記照明手段が、前記円筒ミラーと前記魚眼レンズとの間の光路の外周に配置されたリング状の上部照明器を備えていることを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記照明手段が、前記円筒ミラーと前記検査対象物の円筒部との間の光路の外周に配置されたリング状の下部照明器を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−150767(P2009−150767A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328639(P2007−328639)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】