説明

円筒状加飾容器及びそれに充填された飲料製品

【課題】本発明の目的は、円柱状の胴体を有している容器において、実際には円柱形状であるにもかかわらず、四角柱などの多角柱形状に錯視させることで、見る者に驚きと楽しさを与えることである。特に、店舗での冷蔵庫の下段に陳列された商品を多角柱形状に見せることで、当該商品を目立たせ、見る者を魅きつけることを目的とする。更に、円筒形状の製造設備をそのまま活用することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る円筒状加飾容器は、胴体の全体又は一部が円筒形状を有する容器において、円筒部分の外側面1に、円筒部分の主軸方向Yが振幅方向でかつ円筒部分の円周方向Xが波長方向である帯状の波形2が、円筒部分の主軸方向Yに沿って複数並列に配列されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴体の全体若しくは一部が円筒形状である容器に、帯状デザインを付与することで、実際には円筒形状であるにもかかわらず、四角柱など多角柱状に見える錯視効果を有する加飾容器に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元的なパターンを3次元的に見せる技術が開示されている(例えば、特許文献1又は2を参照。)。また、印刷したラインが動くように見える表示シートがある(例えば、特許文献3を参照。)。
【0003】
特許文献1〜3の技術は、商品の商品力を向上させるため或いは偽造防止のために適用される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−43920号公報
【特許文献2】特開2006−123359号公報
【特許文献3】特開2005−266730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1〜3に記載の技術は、2次元のものを単に3次元的に見せるにとどまり、見る者に驚きを与えるほどには至っていない。
【0006】
飲料缶、飲料用プラスチックボトル又は飲料用壜などの飲料用容器は、形状のほとんどが円柱状の胴体を有している。そして、店舗での冷蔵庫において、複数の商品が陳列されている場合が多いため、店頭にてアイキャッチ性が高いと購入率が高まることが予想される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、円柱状の胴体を有している容器において、実際には円柱形状であるにもかかわらず、四角柱などの多角柱形状に錯視させることで、見る者に驚きと楽しさを与えることである。特に、店舗での冷蔵庫の下段に陳列された商品を多角柱形状に見せることで、当該商品を目立たせ、見る者を魅きつけることを目的とする。更に、円筒形状の製造設備を活用することが可能で、四角柱などの多角柱形状に対応した設備は不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、波形の帯状デザインを円筒形状の外側面に並列させることによって、斜め上方若しくは斜め下方から円筒部分を見ると波の数に応じた角数の柱状形状に見え、錯視効果が発現することを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明に係る円筒状加飾容器は、胴体の全体又は一部が円筒形状を有する容器において、円筒部分の外側面に、前記円筒部分の主軸方向が振幅方向でかつ前記円筒部分の円周方向が波長方向である帯状の波形が、前記円筒部分の主軸方向に沿って複数並列に配列されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記帯状の波形は、印刷若しくはエンボス加工によって視認される形態が含まれる。
【0010】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記帯状の波形は、色の明度が低い濃色帯と色の明度が高い淡色帯とが交互に配列されていることが好ましい。多角柱形状を強調して見せることができる。
【0011】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記帯状の波形は、前記円筒部分の主軸方向に沿って色の明度が低から高若しくは高から低に推移する階調を有する階調帯と前記階調の中間の明度の中間調帯とが交互に配列されていることが好ましい。多角柱形状を強調して見せることができる。
【0012】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記帯状の波形は、色の明度が高い淡色帯と該淡色帯の明度からより低い明度まで推移する階調帯とが交互に配列されていることが好ましい。多角柱形状を強調して見せることができる。
【0013】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記濃色帯の帯幅が前記淡色帯の帯幅よりも小さいか、或いは、前記階調帯の帯幅が前記中間調帯の帯幅よりも小さいか、或いは、前記階調帯の帯幅が前記淡色帯の帯幅よりも小さいかのいずれかに該当することが好ましい。多角柱形状をさらに強調して見せることができる。
【0014】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記帯状の波形の変位の最小値となる箇所と次の周期の変位の最小値となる箇所との間に挟まれた領域に、単独図柄の印刷若しくはエンボス加工が施されていることが好ましい。当該領域は、多角柱形状において角部と角部に挟まれた面として錯視されるため、当該領域に単独図柄の印刷若しくはエンボス加工が施されることによって、多角柱形状をさらに強調して見せることができる。
【0015】
本発明に係る円筒状加飾容器では、前記波の数が3〜6個であることが好ましい。波の数が3〜6個の場合は三角柱〜六角柱の形状のように錯視される。
【0016】
本発明に係る飲料製品は、本発明に係る円筒状加飾容器に密封されて充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、円柱状の胴体を有している容器において、実際には円柱形状であるにもかかわらず、四角柱などの多角柱形状に錯視させることで、見る者に驚きと楽しさを与えることができる。特に、店舗での冷蔵庫の下段に陳列された商品を多角柱形状に見せることで、当該商品を目立たせ、見る者を魅きつけることができる。更に、円筒形状の製造設備をそのまま活用することが可能であり、四角柱などの多角柱形状に対応した設備は不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0019】
本実施形態に係る円筒状加飾容器は、例えば、缶容器、PETボトルなどのプラスチックボトル又はガラス壜など、胴体の全部が円筒形状であるか或いはその一部が円筒形状である容器を対象とする。胴体の全部が円筒形状である容器とは、寸胴型容器であり、例えば飲料用金属缶である。一方、胴体の一部が円筒形状である容器とは、例えば胴体の下部が円筒形状であり、胴体の上部が飲み口に至るまで縮径して肩部及び首部を有する容器である。以下の説明では、これらを代表して胴体の全部が円筒形状である缶容器を例として説明することとする。
【0020】
図1は、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の第一例を示す概略図であり、(a)は説明のための外観図、(b)は缶胴の外側面を平面上に展開した展開図である。図1に示すように、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器100は、胴体の全体が円筒形状を有する容器において、円筒部分の外側面1に、円筒部分の主軸方向Yが振幅方向でかつ円筒部分の円周方向Xが波長方向である帯状の波形2が、円筒部分の主軸方向Yに沿って複数並列に配列されている。図1では、円周方向Xの波の数が4個、つまり4波長分の波があり、円筒部分の主軸方向Yに沿って複数並列に配列されている帯数が17個である。そして、波高をhと表記している。
【0021】
帯状の波形2は、円周方向Xについて1周したとき、一連につながっていることが好ましい。すなわち、円周方向Xの1周の長さをL,帯状の波形2の波長をλとしたとき、(L/λ)が整数であることが好ましい。
【0022】
波高hは、3〜7mmが好ましく、4〜5mmがより好ましい。波高hが7mmよりも大きいと、多角柱に見えやすい角度αが大きくなり、ラベル部分が見にくくなる場合がある。一方、波高hが3mmよりも小さいと、多角柱に見えやすい角度αが小さくなり、これに伴って立体的な多角柱として見え難くなりやすい。
【0023】
波の数が3〜6個、つまり円周方向Xに沿った波が3〜6波長分であることが好ましい。波の数が3〜6個の場合は三角柱〜六角柱の形状のように錯視される。そして、四角柱の場合が認識されやすいので、波の数が4個である場合がより好ましい。この場合には、一方向から見える範囲の中に波が存在することによって錯視される。
【0024】
波の極率R1,R2は30mm以下が好ましい。また、波形を三角波としてもよい。
【0025】
本実施形態に係る円筒状加飾缶容器では、帯状の波形2は、印刷若しくはエンボス加工によって視認される形態が含まれる。印刷の場合は、帯単位で色相、明度又は彩度が異なるよう印刷することでそれぞれ別個の帯状の波形2であると見る者に認識させることができる。エンボス加工の場合には、円筒部分の主軸方向Yに沿って複数並列に配列されている隣り合う帯同士に凹と凸の関係又は凸と凹の関係を持たせることでそれぞれ別個の帯状の波形2と見る者に認識させることができる。なお、凹と凸の関係又は凸と凹の関係とする時、基準面に対して凹又は凸とする場合を含む。また、印刷とエンボス加工を組み合わせて帯状の波形2を視認させるようにしてもよい。
【0026】
本実施形態に係る円筒状加飾缶容器では、図1に示すように、帯状の波形2は、円筒部分の主軸方向Yに沿って、上から下に向かって、色の明度が低(つまり濃)から高(つまり淡)に推移する階調を有する階調帯2aと前記階調の中間の明度(つまり中間の濃淡)の中間調帯2bとが交互に配列されていることが好ましい。波の帯について濃淡の交互に配列することで多角柱形状を強調して見せることができる。また、色の明度が低から高に推移する階調を有する階調帯2aを設けることで、明度が低い、つまり濃い部分が影の部分として錯視されるため、多角柱の立体感が出やすい。
【0027】
図2に示すように、階調帯は、他形態として、円筒部分の主軸方向Yに沿って、上から下に向かって、色の明度が高(つまり淡)から低(つまり濃)に推移する階調を有する階調帯12aとしてもよい。中間調帯12bは、図1と同じとした。図2は、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の缶胴の外側面の第二例を平面上に展開した展開図である。なお、図2では、波の数が5個の場合を示した。
【0028】
図3は、図1に示した本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)の正面図であり、図4はその右側面図、図5はその平面図、図6はその底面図である。図3〜図6において点線で示した箇所は、缶容器としてデザイン変更可能な非特徴部分である。図3〜図6において一点差線で示した箇所は、特徴部分と非特徴部分の境界線である。実線又は一点鎖線囲まれた部分が円筒状加飾缶容器のデザインの特徴部分である。なお、左側面図は右側面図と同一であるため省略した。さらに、図7は、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器を斜め上方から見た斜視図(画像)であり、使用状態を説明する図である。図3〜図6に示した円筒状加飾缶容器は、図7に示すように、胴部が円筒形状であるにも係わらず、四角柱形状に見える。したがって、見る者に楽しさと驚きを与える。更に、円筒形状の製造設備をそのまま活用することが可能であり、四角柱などの多角柱形状に対応した設備は不要である。
【0029】
図8は、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の缶胴の外側面の第三例を平面上に展開した展開図である。図8に示すように、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器では、帯状の波形は、色の明度が高い淡色帯22bと淡色帯22bの明度からより低い明度まで推移する階調帯22aとが交互に配列されていることが好ましい。多角柱形状を強調して見せることができる。なお、図8では、波の数が6個の場合を示した。
【0030】
本実施形態に係る円筒状加飾缶容器では、帯状の波形は、色の明度が低い濃色帯と色の明度が高い淡色帯とが交互に配列されていることが好ましい。階調帯としない形態例(第四例。ただし不図示)である。この場合においても、多角柱形状を強調して見せることができる。
【0031】
図1又は図2に示したように、本実施形態に係る円筒状加飾容器(第一例又は第二例)では、階調帯2a,12aの帯幅が中間調帯2b,12bの帯幅よりも小さいことが好ましい。また、図8に示したように、本実施形態に係る円筒状加飾容器(第三例)では、階調帯22aの帯幅が淡色帯22bの帯幅よりも小さいことが好ましい。さらに、本実施形態に係る円筒状加飾容器(第四例)では、濃色帯の帯幅が淡色帯の帯幅よりも小さいことが好ましい。いずれの場合においても、多角柱形状をさらに強調して見せることができる。そして、第一例又は第二例において階調帯2a,12aの帯幅が中間調帯2b,12bの帯幅よりも1〜2mm小さいことがより好ましい。また、第三例において階調帯22aの帯幅が淡色帯22bの帯幅よりも1〜2mm小さいことが好ましい。さらに、第四例において濃色帯の帯幅が淡色帯の帯幅よりも1〜2mm小さいことが好ましい。
【0032】
図9は、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)において、ラベルを付したときの変形例を示す展開図である。図9に示すように、本実施形態に係る円筒状加飾缶容器では、帯状の波形2の変位の最小値となる箇所30と次の周期の変位の最小値となる箇所31との間に挟まれた領域32に、単独図柄の印刷33が施されていることが好ましい。単独図柄の印刷33の代わりにエンボス加工(不図示)が施されていてもよい。領域32は、多角柱形状において角部と角部に挟まれた面として錯視されるため、領域32に単独図柄の印刷33若しくはエンボス加工(不図示)が施されることによって、多角柱形状をさらに強調して見せることができる。
【0033】
本実施形態に係る円筒状加飾容器に密封されて充填されている飲料製品は、当該製品を選択しようとする消費者に驚きと楽しさを与える。
【0034】
本実施形態に係る円筒状加飾容器は、ガラス壜又はPETボトルの胴体の一部を占める円筒部分に適用した場合、肩部及び首部は通常通りに見えるのに対して、実際には円筒形状部分が多角柱に錯視されるため、このようなときにも消費者に驚きと楽しさを与える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の第一例を示す概略図であり、(a)は説明のための外観図、(b)は缶胴の外側面を平面上に展開した展開図である。
【図2】本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の缶胴の外側面の第二例を平面上に展開した展開図である。
【図3】図1に示した本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)の正面図である。
【図4】図1に示した本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)の右側面図である。
【図5】図1に示した本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)の平面図である。
【図6】図1に示した本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)の底面図である。
【図7】本実施形態に係る円筒状加飾缶容器(第一例)を斜め上方から見た斜視図(画像)であり、使用状態を説明する図である。
【図8】本実施形態に係る円筒状加飾缶容器の缶胴の外側面の第三例を平面上に展開した展開図である。
【図9】本実施形態に係る円筒状加飾容器(第一例)において、ラベルを付したときの変形例を示す展開図である。
【符号の説明】
【0036】
1 円筒部分の外側面
2 帯状の波形
2a 色の明度が低から高に推移する階調を有する階調帯
2b,12b 中間調帯
12a 色の明度が高から低に推移する階調を有する階調帯
22a 濃色帯
22b 淡色帯
30 帯状の波形の変位の最小値となる箇所
31 次の周期の変位の最小値となる箇所
32 箇所30と箇所31の間に挟まれた領域
33 単独図柄の印刷
100 円筒状加飾缶容器
Y 円筒部分の主軸方向
X 円筒部分の円周方向
h 波高
L 円周方向の1周の長さ
λ 帯状の波形の波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体の全体又は一部が円筒形状を有する容器において、円筒部分の外側面に、前記円筒部分の主軸方向が振幅方向でかつ前記円筒部分の円周方向が波長方向である帯状の波形が、前記円筒部分の主軸方向に沿って複数並列に配列されていることを特徴とする円筒状加飾容器。
【請求項2】
前記帯状の波形は、印刷若しくはエンボス加工によって視認されることを特徴とする請求項1に記載の円筒状加飾容器。
【請求項3】
前記帯状の波形は、色の明度が低い濃色帯と色の明度が高い淡色帯とが交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状加飾容器。
【請求項4】
前記帯状の波形は、前記円筒部分の主軸方向に沿って色の明度が低から高若しくは高から低に推移する階調を有する階調帯と前記階調の中間の明度の中間調帯とが交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状加飾容器。
【請求項5】
前記帯状の波形は、色の明度が高い淡色帯と該淡色帯の明度からより低い明度まで推移する階調帯とが交互に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状加飾容器。
【請求項6】
前記濃色帯の帯幅が前記淡色帯の帯幅よりも小さいか、或いは、前記階調帯の帯幅が前記中間調帯の帯幅よりも小さいか、或いは、前記階調帯の帯幅が前記淡色帯の帯幅よりも小さいかのいずれかに該当することを特徴とする請求項3、4又は5に記載の円筒状加飾容器。
【請求項7】
前記帯状の波形の変位の最小値となる箇所と次の周期の変位の最小値となる箇所との間に挟まれた領域に、単独図柄の印刷若しくはエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の円筒状加飾容器。
【請求項8】
前記波の数が3〜6個であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の円筒状加飾容器。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8に記載の円筒状加飾容器に密封されて充填されていることを特徴とする飲料製品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−35267(P2009−35267A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198804(P2007−198804)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】