説明

円筒状積層体の製造方法、及び円筒状積層体の製造装置

【課題】円筒状積層体の外径及び重量のばらつきを低減することの容易な円筒状積層体の製造方法、及び円筒状積層体の製造装置を提供する。
【解決手段】巻取工程では、巻芯21と駆動ローラー22とにより不織布12を加圧しながら、巻芯21と駆動ローラー22との間に不織布12を連続して通過させ、駆動ローラー22により不織布12を加熱して巻芯21に巻き取ることで、半製品を得る。さらに、製造方法は、巻取工程で得られた半製品を巻芯21とともに駆動ローラー22により回転させながら加熱及び加圧して縮径させ、円筒状積層体11の外径に合わせる縮径工程を備える。巻取工程及び縮径工程における加圧は、巻芯21に荷重を加えることで実施される。縮径工程では、荷重を巻取工程における荷重よりも増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱融着性成分を含む熱融着性シートが径方向に積層された円筒状積層体を製造する円筒状積層体の製造方法、及び円筒状積層体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状積層体の製造方法、円筒状積層体の製造装置としては、繊維シートを熱融着させながら巻芯に巻回する方法及び装置が知られている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−102470号公報
【特許文献2】特開昭55−24575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻芯と駆動ローラーとを用いて熱融着性シートを加圧して円筒状積層体を製造する際に、巻芯に供給する熱融着性シートの長さを規定することで熱融着性シートの供給量を決定し、所定の外径を有する円筒状積層体が得られるようになる。ところが、熱融着性シートは、例えばロット毎や、同一ロットの長さ方向において、嵩密度のばらつきが存在する。従って、異なるロットの熱融着性シートを用いたり、同一ロットの熱融着性シートを部分的に用いたりした場合、熱融着性シートの嵩密度に応じて、円筒状積層体の外径や重量のばらつきが生じ易くなる。
【0005】
本発明の目的は、円筒状積層体の外径及び重量のばらつきを低減することの容易な円筒状積層体の製造方法、及び円筒状積層体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、熱融着性成分を含む熱融着性シートを加熱しながら巻芯に巻き取る巻取工程を備え、前記熱融着性シートが径方向に積層された円筒状積層体を製造する円筒状積層体の製造方法であって、前記巻取工程は、前記巻芯と、前記巻芯の軸に平行する軸を中心として回転駆動される駆動ローラーとにより前記熱融着性シートを加圧しながら、前記巻芯と前記駆動ローラーとの間に前記熱融着性シートを連続して通過させるとともに、前記駆動ローラーにより前記熱融着性シートを加熱して前記円筒状積層体の外径よりも拡径するまで前記巻芯に巻き取ることで半製品を得る工程であり、前記巻取工程で得られた前記半製品を前記巻芯とともに前記駆動ローラーにより回転させながら加熱及び加圧して縮径させることで前記円筒状積層体の外径に合わせる縮径工程を備え、前記巻取工程及び前記縮径工程における前記加圧は、前記巻芯又は前記駆動ローラーに荷重を加えることで実施され、前記縮径工程は、前記荷重を前記巻取工程における前記荷重よりも増大させる工程であることを要旨とする。
【0007】
この製造方法によれば、巻取工程において、熱融着性シートを加圧しながら巻芯に巻き取るため、例えば所定の嵩密度よりも嵩密度の低い熱融着性シートを用いた場合、所定の嵩密度の熱融着性シートよりも厚み方向に圧縮され易くなる。また例えば、所定の嵩密度よりも嵩密度の高い熱融着性シートを用いた場合、所定の嵩密度の熱融着性シートよりも厚み方向に圧縮され難くなる。このように巻取工程によって巻芯の外周に積層された熱融着性シートの嵩密度が調整されるため、得られる円筒状積層体の外径を所定の外径に合わせたとき、円筒状積層体の重量のばらつきが抑制される。さらに、縮径工程では、巻取工程で巻芯に加える荷重よりも増大させた荷重により、半製品を縮径させるため、半製品の外径を円筒状積層体の所定の外径に合わせることが容易となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の円筒状積層体の製造方法において、前記巻取工程において、前記巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みに基づき前記熱融着性シートを切断することで、前記巻取工程に供する前記熱融着性シートの供給量が決定されることを要旨とする。
【0009】
上記の巻芯への熱融着性シートの巻き取りが進行するに伴って、巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みに基づいて、巻取工程に供する熱融着性シートの供給量が決定されるため、円筒状積層体の重量の精度を高めることが容易となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の円筒状積層体の製造方法において、前記巻取工程において、前記巻芯と前記駆動ローラーとの間の圧力を計測し、前記圧力の低下に基づき前記荷重を増大させることで前記縮径工程が開始されることを要旨とする。
【0011】
ここで、上記巻取工程では、巻芯に荷重を加えることで熱融着性シートを一定の圧力で加圧している。この巻取工程では、巻芯と駆動ローラーとの間に熱融着性シートが常時供給されているため、巻芯に加えた荷重よりも巻芯と駆動ローラーとの間の圧力は高まることになる。そして、巻芯と駆動ローラーとの間への熱融着性シートの供給が完了すると、巻芯と駆動ローラーとの間の圧力は低下することになる。上記製造方法では、巻芯と駆動ローラーとの間の圧力を計測し、圧力の低下に基づき前記荷重を増大させることで縮径工程が開始される。これにより、巻取工程の終了後、円滑に縮径工程を開始させることが容易となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の円筒状積層体の製造方法において、前記熱融着性シートの切断からの経過時間をタイマにより計時し、その計時結果に基づき前記縮径工程を開始させることを要旨とする。
【0013】
この方法によれば、熱融着性シートの切断からの経過時間に応じて縮径工程を自動で開始させることができるようになる。これにより、円滑に縮径工程を開始させることが容易となる。
【0014】
請求項5に記載の発明の円筒状積層体の製造装置は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の円筒状積層体の製造方法に用いられ、前記駆動ローラーと、前記巻芯に荷重を印加する加圧装置とを備える円筒状積層体の製造装置であって、前記巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みを検出する検出手段を備えることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みを検出した結果に基づいて、円筒状積層体の所定の外径に合わせること、すなわち縮径工程を終了させることが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円筒状積層体の外径及び重量のばらつきを低減することの容易な円筒状積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、実施形態の円筒状積層体を示す斜視図、(b)は、製造装置を示す概略図。
【図2】(a)は、製造装置の概略を示す平面図、(b)及び(c)は、加圧部の概略を示す側面図。
【図3】円筒状積層体の製造を示すフローチャート。
【図4】(a)〜(d)は、製造工程における荷重について説明する説明図。
【図5】円筒状積層体の製造において、荷重設定、圧力、及び巻芯の変位についての推移を示すタイムチャート。
【図6】製造装置の変更例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)に示されるように、円筒状積層体11は、円柱状の中空部を有し、径方向に熱融着性シートが積層されることで形成される。円筒状積層体11の形状は、径方向において接する熱融着性シートが熱融着されることで保持されている。本実施形態の円筒状積層体11は、内径が40mm以下であるとともに肉厚が0.5〜9.5mmであり、小型フィルターとして利用される。
【0019】
<熱融着性シート>
まず、円筒状積層体11の製造に用いられる熱融着性シートについて説明する。本実施形態では、熱融着性シートとして繊維集合体である不織布が用いられる。不織布は、熱融着性成分として熱融着性繊維を含んで構成されている。熱融着性繊維としては、熱可塑性樹脂を含むものであれば、特に限定されず、例えば、フィルターに要求される耐熱性、耐薬品性等に応じて適宜選択することができる。
【0020】
熱可塑性樹脂の具体例は、例えば、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、及び熱可塑性ポリイミドを含む。オレフィン系樹脂の具体例は、例えば、ポリエチレン、及びポリプロピレンを含む。ポリエステル系樹脂の具体例は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び芳香族ポリエステルを含む。ポリアミド系樹脂の具体例は、例えば、ポリアミド6、及びポリアミド66を含む。スチレン系樹脂の具体例は、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を含む。セルロース系樹脂の具体例は、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、及びセルロースブチレートを含む。ビニル系樹脂の具体例は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。フッ素系樹脂の具体例は、例えば、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)、及びポリ四フッ化エチレン(PTFE)を含む。
【0021】
熱融着性繊維は、単独種の熱可塑性樹脂から形成したものでもよいし、複数種の熱可塑性樹脂を複合したものであってもよい。複数種の熱可塑性樹脂を複合した熱融着性繊維としては、例えば、芯鞘型複合繊維、及びサイドバイサイド型複合繊維が挙げられる。なお、異なる種類の熱融着性繊維から構成した不織布を用いる場合、不織布の構造を維持させるという観点から、各熱融着性繊維のうち、最も融点の低い熱融着性繊維のみにより熱融着させることが好ましい。
【0022】
ここで、融点は、DSC(示差走査熱量測定)で得られる吸熱曲線において吸熱ピークとなる温度である。示差走査熱量測定は、昇温速度を10℃/minとし、吸熱ピークの発現する温度よりも高い温度まで昇温し、その温度で10分間保持した後、10℃/minの降温速度で30℃まで冷却し、再度昇温速度を10℃/minとして吸熱ピークの温度を求める。なお、明確な吸熱ピークが存在しない場合は、軟化点で代用する。軟化点は、同じくDSCで得られる吸熱曲線における変曲点を軟化点とする。
【0023】
不織布は、熱融着性繊維以外の繊維として、非熱融着性繊維を含む構成であってもよい。非熱融着性繊維の具体例は、例えば、無機繊維、熱硬化性樹脂繊維、天然繊維、及び高強度繊維を含む。無機繊維の具体例は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、及び金属繊維を含む。熱硬化性樹脂繊維の具体例は、例えば、エポキシ樹脂繊維、フェノール樹脂繊維、不飽和ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、及びポリウレタン系繊維を含む。天然繊維の具体例は、例えば、セルロース繊維、及びシルク繊維を含む。高強度繊維の具体例は、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、及びポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維を含む。
【0024】
不織布は、単独種の非熱融着性繊維を含んでいてもよいし、複数種の非熱融着性繊維を含んでいてもよい。
不織布を構成する繊維には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、及び充填剤を含有させることもできる。
【0025】
不織布の種類としては、例えば、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、ウォーターパンチ不織布、メルトブロー不織布等が挙げられる。不織布は、湿式不織布であってもよいし、乾式不織布であってもよい。また、不織布は、短繊維不織布であってもよいし、長繊維不織布であってもよい。
【0026】
不織布の目付は、例えば10〜100g/mの範囲とされる。
<製造装置>
円筒状積層体11は、不織布12を加熱しながら巻芯21に巻き取る巻取工程を通じて製造される。円筒状積層体11の製造には、図1(b)及び図2(a)に示す製造装置が用いられる。製造装置は、巻芯21の軸に平行する軸を中心として回転駆動される駆動ローラー22を備えている。
【0027】
巻芯21は、金属製であり、製造する円筒状積層体11の内径に合わせた直径を有するものを用いる。本実施形態では、円筒状積層体11を内径が40mm以下の小型フィルターとして利用すべく、巻芯21の直径(外径)は、40mm以下とされる。巻芯21の直径の下限は、例えば5mm以上とされる。
【0028】
巻芯21の長さ(全長)は、例えば300mm〜2000mmとされる。巻芯21の長さが300mm以上の場合、製造効率を高めることができる。一方、巻芯21の長さが2000mmを超える場合、巻芯21が撓み易くなることで、巻芯21に不織布を巻回することが困難となるおそれがある。
【0029】
巻芯21の直径(D)に対する巻芯21の長さ(L)の比率(L/D)は、好ましくは20以上であり、より好ましくは40以上であり、さらに好ましくは50以上である。この比率(L/D)が20以上であることで、製造効率の確保が容易となる。なお、この比率(L/D)の上限は、巻芯21の剛性を確保するという観点から、250以下であることが好ましい。
【0030】
駆動ローラー22は、第1駆動ローラー22aとそれよりも下流側(不織布12の搬送方向における下流側)に位置する第2駆動ローラー22bとから構成されている。第1駆動ローラー22a及び第2駆動ローラー22bは、同一径となるように形成され、各駆動ローラー22a,22bの軸が水平かつ平行になるように設置されている。第1駆動ローラー22aと第2駆動ローラー22bとの間隔は、巻芯21の直径よりも短い間隔とされ、各駆動ローラー22a,22bの上側に巻芯21が支持されるようになっている。各駆動ローラー22a,22bは、図示しない回転駆動装置にそれぞれ連結され、独立して回転駆動される。
【0031】
各駆動ローラー22a,22bは、それらの表面温度がそれぞれ所定の温度となるように独立して制御される。各駆動ローラー22a,22bの加熱手段としては、電気ヒーターや熱媒体を利用した周知のものを採用することができる。各駆動ローラー22a,22bの外周面にめっきや高分子材料等による被覆層を設けることで、耐久性を高めたり、外周面の摩擦力を調整したりすることもできる。
【0032】
各駆動ローラー22a,22bの直径(外径)は、加熱の効率や剛性を十分に得るという観点から、巻芯21の直径よりも大きいことが好ましく、巻芯21の直径の2倍から40倍程度の大きさであることがより好ましい。
【0033】
各駆動ローラー22a,22bに支持される巻芯21には、下方(各駆動ローラー22a,22b)へ向けて加圧する加圧装置23が装着されている。加圧装置23には、図示を省略した流体圧シリンダーが備えられ、流体圧シリンダーの作動により巻芯21に所定の荷重が印加されるようになっている。
【0034】
詳述すると、加圧装置23は、図2(a)に示すように巻芯21の両端部にそれぞれ配置される加圧部23a,23bと、加圧部23a,23bを連結する連結部24とを備えている。図2(b)に示すように加圧部23aは、巻芯21に接する一対の回転体25を備え、それら回転体25によって巻芯21を加圧する。本実施形態の回転体25は円筒状をなし、その回転軸は、巻芯21と平行になるように位置している。回転体25は、図2(b)に矢印で示す方向の圧力を巻芯21に伝達する。加圧部23bについては、加圧部23aと同様の構成であるため、その説明を省略する。こうした構成により、流体圧シリンダーは、連結部24、及び加圧部23a,23bを介して巻芯21の両端部に荷重を印加する。
【0035】
図1(b)に示すように、製造装置には、巻芯21の位置を検出する位置センサ51が装備されている。この位置センサ51により、巻芯21の上方への変位が計測される。位置センサ51としては、例えば光学式センサ、近接センサ、超音波式センサ等が用いられる。また、製造装置には、巻芯21と駆動ローラー22との間の圧力を計測する圧力センサ52が装備されている。圧力センサ52としては、例えばロードセル、圧縮素子等が用いられる。
【0036】
図1(b)及び図2(a)に示すように、第1駆動ローラー22aの上方には、その第1駆動ローラー22aに従動するガイドローラー26が装着されている。ガイドローラー26は、巻芯21よりも上流側の不織布12を第1駆動ローラー22aと挟持した状態で第1駆動ローラー22aの回転駆動に従動する。これにより、不織布12は、第1駆動ローラー22aの周速度で供給されるとともに搬送される。
【0037】
第1駆動ローラー22aの上流側(ガイドローラー26の上流側)には、不織布12を切断する切断装置27が備えられている。この切断装置27としては、切断刃及びプレス機を備えた周知の装置を用いることができる。
【0038】
加圧装置23、切断装置27、位置センサ51、及び圧力センサ52は、制御装置に接続されている。制御装置には、製造工程で必要とされるデータ、プログラム等を記憶させる記憶部、各種演算を行う演算部、各種センサの検出結果から時間当たりの変化量を求めるためのタイマ等が搭載されている。
【0039】
<製造条件>
次に、円筒状積層体11の製造条件の詳細について説明する。
(巻芯21の予備加熱)
巻芯21は、不織布12に含まれる熱融着性成分の融点以上であり、第2駆動ローラー22bの温度よりも高い温度となるまで予備加熱されることが好ましい。巻芯21の予備加熱は、熱融着性成分の融点T+5(℃)から前記融点T+45(℃)の範囲とすることが好ましい。巻芯21の予備加熱が熱融着性成分の融点T+5(℃)以上の場合、熱融着性成分が十分に加熱されることで、巻芯21に不織布12を円滑に密着させることができる。一方、巻芯21の予備加熱が熱融着性成分の融点T+45(℃)を超える場合、熱融着性成分が過剰に加熱されることで、不織布12の構造への影響が大きくなるおそれがある。具体的には、巻芯21に接触する不織布12の細孔が潰れる現象、すなわちフィルム化が進行することで、フィルターとしての機能に影響を及ぼすおそれがある。
【0040】
巻芯21の加熱方法としては、収容容器に収容した巻芯21を、例えば温風等の熱媒体や電気ヒーター等により、所定の温度となるように加熱する方法が好適である。なお、巻芯21に、ラバーヒーターを巻き付けて、所定の温度まで加熱することもできる。
【0041】
(各駆動ローラー22a,22bの周速度)
第2駆動ローラー22bの周速度は、第1駆動ローラー22aの周速度よりも速くなるように設定されることが好ましい。第2駆動ローラー22bの周速度(R2)と第1駆動ローラー22aの周速度(R1)との速度差(各駆動ローラー22a,22bの速度差=R2−R1)は、0.5m/min以上であることが好ましく、1m/min以上であることが好ましい。各駆動ローラー22a,22bの速度差が0.5m/min以上の場合、円筒状積層体11の圧縮強度を高める効果が顕著に得られ易くなる。なお、各駆動ローラー22a,22bの速度差は、安定した製造を実現するという観点から、15m/min以下であることが好ましく、12m/min以下であることがより好ましい。
【0042】
第1駆動ローラー22aの周速度は、製造効率を確保するとともに安定した製造を実現するという観点から、0.5〜10m/minの範囲に設定されることが好ましい。
(各駆動ローラー22a,22bの温度)
第1駆動ローラー22aの温度は、熱融着性成分の融点付近まで予備加熱した不織布12、又は、予備的に熱融着された不織布12を第2駆動ローラー22bへ供給すべく設定される。第1駆動ローラー22aの温度は、不織布12の加熱に要する熱量が確保されるように適宜調節することができる。例えば、高目付の不織布12を用いる場合では、低目付の不織布12を用いる場合よりも、第1駆動ローラー22aの温度を高めることが好ましい。また、第1駆動ローラー22aと不織布12とが接する時間は、不織布12の搬送速度や、流れ方向において第1駆動ローラー22aと接している不織布12の長さにより変化する。この点、第1駆動ローラー22aと不織布12とが接する時間が短くなるに従って、第1駆動ローラー22aの温度を高めることで、不織布12の加熱に要する熱量を確保することができる。
【0043】
第2駆動ローラー22bの温度は、熱融着性成分の融点以上とされる。第2駆動ローラー22bの温度は、不織布12の熱融着をより強固にし、円筒状積層体11の圧縮強度をより高めるという観点から、好ましくは熱融着性成分の融点T+1(℃)以上であり、より好ましくは熱融着性成分の融点T+5(℃)以上である。第2駆動ローラー22bの温度は、例えば熱融着性成分の熱変性を抑制するという観点から、熱融着性成分の融点T+35(℃)以下の範囲であることが好ましい。
【0044】
上記第1駆動ローラー22aの温度は、その第1駆動ローラー22aから不織布12を剥離し易くするという観点から、第2駆動ローラー22bの温度よりも低いことが好ましく、熱融着性成分の融点未満であることがより好ましい。第1駆動ローラー22aの温度は、第1駆動ローラー22aからの不織布12の剥離性を高めるとともに、不織布12の予備加熱を促進するという観点から、熱融着性成分の融点T−10(℃)から前記融点T−5(℃)の範囲であることがさらに好ましい。
【0045】
(巻芯21の予備加熱と各駆動ローラー22a,22bの温度との関係)
巻芯21を予備加熱する温度をA(℃)、第1駆動ローラー22aの温度をB(℃)、第2駆動ローラー22bの温度をC(℃)とし、熱融着性成分の融点がT(℃)であるとき、式(1):A>C≧T>Bの関係を満たすことが好ましい。
【0046】
(加圧条件)
加圧部23a,23bにより巻芯21に印加される荷重は、各駆動ローラー22a,22bや巻芯21への負荷を低減するという観点から、巻芯21の線圧に換算して100g/cm未満であることが好ましく、50g/cm未満であることがより好ましい。一方、加圧部23a,23bにより巻芯21に印加される荷重は、熱融着を促進するという観点から、3g/cm以上であることが好ましい。
【0047】
(不織布12の供給)
不織布12の供給速度は、第1駆動ローラー22aの周速度とされる。本実施形態では、不織布12を第1駆動ローラー22aとガイドローラー26とにより挟持させることで、不織布12の供給速度を規制し、不織布12を第1駆動ローラー22aの周速度で供給及び搬送する。
【0048】
<円筒状積層体11の製造>
次に、円筒状積層体11の製造について説明する。
まず、巻芯21の長さに応じた幅寸法の不織布12のロールを準備する。不織布12の幅寸法は、加圧部23a,23bの間隔よりも狭い範囲とされることで、不織布12と加圧部23a,23bとの接触が回避される。
【0049】
続いて、図3に示すように、ステップS101において、加圧装置23による巻芯21への荷重を所定の荷重に設定する巻芯荷重設定(荷重:a1)と、位置センサ51による巻芯21の検出位置をゼロにする巻芯変位ゼロ設定(変位:p0)とを実行する。巻芯荷重設定及び巻芯変位ゼロ設定が完了すると、巻取工程が開始される(ステップS102:巻き取り開始)。
【0050】
巻取工程において、不織布12は、第1駆動ローラー22aの周速度で供給及び搬送される。第1駆動ローラー22aとガイドローラー26との間を連続して通過した不織布12は、第1駆動ローラー22aにより加熱されながら、第1駆動ローラー22aと巻芯21との間に供給される。そして、不織布12は、予備加熱した巻芯21に熱融着し、巻芯21に巻き付く。このようにして不織布12は巻芯21に一周巻き付けられる。
【0051】
巻芯21と第1駆動ローラー22aとの間を連続して通過する不織布12は、巻芯21と第1駆動ローラー22aとの間で加熱及び加圧される。これにより、熱融着性成分の融点付近まで予備加熱した不織布12、又は、予備的に熱融着された不織布12を第2駆動ローラー22bへ供給する。
【0052】
そして、巻芯21と第2駆動ローラー22bとの間に到達した不織布12は、巻芯21と第2駆動ローラー22bとの間を連続して通過する際に、加熱及び加圧される。これにより、不織布12は、既に巻芯21に巻回されている不織布12と熱融着される。
【0053】
このようにステップS102において、不織布12の巻き取りが開始されると、ステップS103へと進む。
ステップS103では、巻芯21の変位がp1になったか否かを判定する。ここで、巻芯21への不織布12の巻き取りが進行するに伴って、巻芯21と駆動ローラー22とが離間する。すなわち、巻芯21の変位p1は、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚み(積層された不織布12全体の肉厚)に応じて増大する。
【0054】
上述した巻芯21の変位p1は、円筒状積層体11の外径よりも拡径するまで、巻芯21に不織布12を巻き取るように設定される。すなわち、変位p1は、最終製品の円筒状積層体11の厚み(肉厚)よりも厚くなるように設定される。なお、変位p1は、製造する円筒状積層体11の厚み(肉厚)に対して、好ましくは1.10倍〜1.20倍の範囲に設定される。
【0055】
ステップS103において、変位がp1になった旨の判定がなされた場合(ステップS103:YES)には、ステップS104へと進む。一方、ステップS103において、変位がp1になっていない旨の判定がなされた場合(ステップS103:NO)には、このステップS103が繰り返される。
【0056】
ステップS104において、切断装置27による不織布12の切断が実行されると、ステップS105へと進む。
ステップS105では、圧力センサ52により検出される圧力が閾値未満になったか否かを判定する。ステップS105において、圧力が閾値未満になった旨の判定がなされた場合(ステップS105:YES)には、ステップS106へと進む。一方、ステップS105において、圧力が閾値未満になっていない旨の判定がなされた場合(ステップS105:NO)には、このステップS105が繰り返される。
【0057】
ここで、ステップS105における閾値は、巻取工程が終了したか否かを判定するように設定される。この点について、図4を参照して説明する。
図4(a)に示すように、巻取工程前では、ステップS101において設定した荷重a1に基づく圧力(圧力b1という)が圧力センサ52により検出される。そして、巻取工程の開始に伴って、巻芯21と第1駆動ローラー22aとの間に常時供給される不織布12により、巻芯21は上方に押し上げられる。このため、図4(b)に示すように、巻取工程中では、前記荷重a1と、巻芯21を押し上げる力fとを合わせた力(圧力b2という)が圧力センサ52により検出される。
【0058】
続いて、切断された不織布12の端部まで巻芯21に巻き取られると、図4(c)に示すように、巻芯21を押し上げる力fが働かなくなる結果、荷重a1に基づく圧力(圧力b1)が圧力センサ52により検出される。
【0059】
このように巻取工程が終了すると、巻芯21と駆動ローラー22との間の圧力が低下する。このため、前記圧力を計測し、その圧力の低下に基づいて巻取工程が終了したか否かを判定することができる。なお、ステップS105における閾値は圧力b2以下、かつ圧力b1を超える範囲に適宜設定される。
【0060】
巻取工程が終了すると、最終製品の円筒状積層体11よりも外径の大きい半製品11aが得られる。続いて、半製品11aの外径を縮径させる縮径工程が実施される。縮径工程では、半製品11aを巻芯21とともに駆動ローラー22により回転させながら加熱及び加圧する。縮径工程は、図4(d)に示すように、巻芯21への荷重a1を荷重a2に増大させることで開始される。すなわち、ステップS106において、巻芯21への荷重が荷重a2に変更されると、ステップS107へと進む。縮径工程における駆動ローラー22の条件は、巻取工程における駆動ローラー22の条件と同じ条件とされる。
【0061】
縮径工程では、半製品11aの外径が最終製品の円筒状積層体11の外径となるまで継続される。すなわち、ステップS107では、巻芯21の変位が最終製品の円筒状積層体11の外径に相当する変位p3になったか否かを判定する。
【0062】
ステップS107において、巻芯21の変位がp3になった旨の判定がなされた場合(ステップS107:YES)には、ステップS108へと進む。一方、ステップS107において、巻芯21の変位がp3になっていない旨の判定がなされた場合(ステップS107:NO)には、このステップS107が繰り返される。
【0063】
ステップS108では、巻芯21への荷重が解除されるとともに、駆動ローラー22の回転が停止される。そして、製造装置から巻芯21とともに円筒状積層体11が取り出される。
【0064】
以上詳述した一連の製造工程における作用について、タイムチャートを参照して説明する。図5に示すように、時刻t0では、荷重a1の設定により、圧力がb1となる。時刻t1において、巻取工程の開始とともに、圧力がb1からb2に高まる。巻取工程の開始に伴って、巻芯21が変位し、時間の経過とともに巻芯21の変位量は増大する。
【0065】
こうした巻取工程では、不織布12を加圧しながら巻芯21に巻き取るため、例えば所定の嵩密度よりも嵩密度の低い不織布12を用いた場合、所定の嵩密度の不織布12よりも厚み方向に圧縮され易くなる。また例えば、所定の嵩密度よりも嵩密度の高い不織布12を用いた場合、所定の嵩密度の不織布12よりも厚み方向に圧縮され難くなる。このように巻取工程によって巻芯21の外周に積層された不織布12の嵩密度が調整される。
【0066】
続いて、時刻t2では、巻芯21の変位がp1に到達したことを契機として不織布12が切断される。時刻t3では、圧力がb2からb1に低下し、巻取工程が終了する。このときの巻芯21の変位は、切断装置27で切断された部位までの不織布12が供給されて巻き取られることで、p1よりも増大したp2となる。
【0067】
このように巻取工程に供される不織布12の供給量が、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚みに基づき決定されるため、得られる円筒状積層体11の重量の精度を高めることが容易となる。
【0068】
続いて、時刻t4では、時刻t3における圧力の低下を契機として荷重a1から荷重a2に増大されることで、前記圧力がb1からb3に高まる。このように、巻芯21と駆動ローラー22との間の圧力を計測し、圧力の低下に基づき荷重を増大させることで縮径工程が開始される。このため、巻取工程の終了後、円滑に縮径工程を開始させることが容易となる。
【0069】
縮径工程は、巻芯21の変位がp3となる時刻t5まで継続され、この時点で終了される。この縮径工程では、巻芯21に加える荷重を巻取工程で巻芯21に加える荷重よりも増大させているため、半製品11aの外径を円筒状積層体11の所定の外径に合わせることが容易となる。
【0070】
巻芯21を有する円筒状積層体11は、製造装置から取り出された後に冷却工程に供される。冷却工程では、室温又は所定温度に温度調整された室内に、円筒状積層体11の巻回された巻芯21を静置する。この冷却工程により、巻芯21の外周面と円筒状積層体11の内周面との密着力を低下させることで、円筒状積層体11から巻芯21を容易に抜き取ることができるようになる。
【0071】
円筒状積層体11は、必要に応じて所定の長さに裁断される。これにより、複数個のフィルターが得られる。得られたフィルターは、例えば圧縮空気ライン用のエアフィルターとして利用される。
【0072】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)巻取工程において、不織布12を加圧しながらに巻き取るため、巻芯21の外周に積層された不織布12の嵩密度が調整される。すなわち、例えば、異なるロットの不織布12を用いたり、同一ロットの不織布12を部分的に用いたりした場合であっても、巻芯21に巻回されることで不織布12の嵩密度のばらつきが低減される。このため、得られる円筒状積層体11の外径を所定の外径に合わせたとき、円筒状積層体11の重量のばらつきが抑制される。さらに、縮径工程では、巻取工程で巻芯21に加える荷重よりも増大させた荷重により、半製品11aを縮径させるため、半製品11aの外径を円筒状積層体11の所定の外径に合わせることが容易となる。従って、円筒状積層体11の外径及び重量のばらつきを低減することが容易となる。
【0073】
(2)巻取工程に供される不織布12の供給量が、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚みに基づき決定されるため、円筒状積層体11の重量の精度を高めることが容易となる。
【0074】
(3)巻芯21と駆動ローラー22との間の圧力を計測し、その圧力の低下に基づき前記荷重を増大させることで縮径工程が開始される。これにより、巻取工程の終了後、円滑に縮径工程を開始させることが容易となる。
【0075】
(4)円筒状積層体11の製造装置は、巻芯21の位置を検出する位置センサ51を備えている。この位置センサ51は、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚みを検出する検出手段とされる。この構成によれば、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚みを検出した結果に基づいて、円筒状積層体11の所定の外径に合わせること、すなわち縮径工程を終了させることが容易となる。
【0076】
(5)切断装置27は、巻芯21により近い位置に配置されることが好ましいが、例えば、切断装置27の設置が困難となるおそれがあり、また、得られた円筒状積層体11を装置から取り出すことが困難になるおそれがある。従って、切断装置27は、巻芯21から所定の間隔をおいて配置することになる。この場合、例えば、巻取工程の終了までの時間を設定して縮径工程を開始させることもできるものの、例えば、駆動ローラー22の周速度を変更するに伴って、不織布12の切断から縮径工程の開始までの時間を決定する制御が必要になる。この点、上記(2)に記載の方法によれば、前記圧力の低下に基づき縮径工程が開始されるため、例えば、圧力の計測による工程管理を利用して、縮径工程の開始についても制御することができる。
【0077】
(6)用いる不織布12の目付に応じて、巻取工程で巻き取る不織布12の長さを設定すれば、得られる円筒状積層体11の重量の精度は高まるものの、製造条件の設定が煩雑になる。この点、本実施形態の製造方法では、巻芯21の変位に基づいて不織布12が切断される。すなわち、巻芯21の変位に基づいて不織布12の供給量が決定されることで、不織布12の目付に応じて不織布12の長さを設定するという手間を回避することができる。
【0078】
(変更例)
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記巻取工程に供する不織布12の長さは、ステップS103において決定しているが、例えば不織布12の目付を予め測定し、その目付に応じて、巻取工程に供する不織布12の長さを決定してもよい。
【0079】
・前記縮径工程は、巻芯21と駆動ローラー22との間の圧力の低下に基づき開始される。例えば、巻芯21と駆動ローラー22との間に不織布12が供給されているか否かを検出するセンサを設けるとともに、そのセンサの検出結果に基づいて縮径工程を開始してもよい。また例えば、不織布12の切断からの経過時間をタイマにより計時し、その計時結果に基づき縮径工程を開始してもよい。この場合、不織布12の切断からの経過時間に応じて縮径工程を自動で開始させることができるようになる。これにより、円滑に縮径工程を開始させることが容易となる。より具体的には、タイマによる計時結果が、予め設定した開始時間に至ったときに、縮径工程を開始させるように製造装置を制御する。開始時間は、例えば、切断装置により切断された時点において巻き取られていない不織布12の長さと不織布12の供給速度とから巻取工程が完了する時間を算出し、当該時間又は当該時間に所定時間を加えた時間に設定される。
【0080】
なお、前記実施形態のように、巻取工程において圧力を計測することは、工程管理のうえで有効であり、その圧力の計測結果を縮径工程の開始の判断に利用することは、製造装置の制御を簡略化できる点で有効である。
【0081】
・前記巻取工程では、巻芯21の外周に積層された不織布12の積層厚みを、巻芯21の位置を検出する位置センサ51を検出手段として用いて検出している。例えば、巻芯21の外周に積層された不織布12の最外面の位置を検出する位置センサ51を検出手段として用いることで、前記積層厚みを検出するように変更することもできる。なお、検出手段としては、巻芯21の外周面又は巻芯21の外周に積層された不織布12の最外面に接触する接触式の検出手段であってもよい。
【0082】
・前記駆動ローラー22は、第1及び第2駆動ローラー22a,22bから構成されているが、図6に示すように、一つの駆動ローラー22と巻芯21とにより不織布12の加熱及び加圧するように構成してもよい。この駆動ローラー22は、前記実施形態の第2駆動ローラー22bの条件とされる。
【0083】
・前記製造装置において、前記ガイドローラー26を省略することもできる。
・前記縮径工程における駆動ローラー22の条件は、巻取工程における駆動ローラー22の条件と同じ条件とされているが、縮径工程において、駆動ローラー22の条件(温度又は周速度)を変更してもよい。
【0084】
・前記実施形態では、巻芯21を予備加熱した後に巻取工程を実施しているが、予備加熱を省略してもよい。例えば巻芯21の外周面の少なくとも一部に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼着したりすることで、巻芯21に不織布12を仮固定することで、不織布12を巻き始めることもできる。
【0085】
・前記加圧部23a,23bは、一対の回転体25を備えているが、例えば図2(c)に示すように、下面に逆V字状のテーパ面を形成した加圧部23a,23bを採用することもできる。このテーパ面には、巻芯21の回転に伴って巻芯21の外周面が摺接される。テーパ面は、材料の選択や表面粗さの設定によって摩擦力を小さくすることで、巻芯21の回転に対する抵抗を小さくすることが好ましい。また、巻芯21を周知の軸受構造で支持し、その軸受構造を介して加圧する加圧部に変更してもよい。
【0086】
・前記巻取工程及び縮径工程における加圧は、巻芯21に荷重を加えることにより実施されているが、駆動ローラー22のみに荷重を加えたり、巻芯21と駆動ローラー22との両方に荷重を加えたりすることで、前記加圧を実施することもできる。
【0087】
・前記巻取工程及び縮径工程における加圧は、一定の荷重を巻芯21に加えることにより実施されている。例えば、巻芯21に加える荷重を徐々に増大又は減少させることで、巻取工程又は縮径工程を実施してもよい。この場合であっても、縮径工程における荷重は、巻取工程完了直前よりも荷重を増大させることで、半製品11aの外径を円筒状積層体11の所定の外径に合わせることが容易となる。但し、工程管理を容易にするという観点から、前記実施形態のように、前記巻取工程及び縮径工程における加圧は、一定の荷重を巻芯21に加えることにより実施されることが好ましい。
【0088】
・例えば、内径が40mm以下の小型フィルターの製造では、用いる不織布12の長さが比較的短いため、不織布12の嵩密度のばらつきが、得られるフィルターの外径及び重量のばらつきに影響し易くなる。この点、外径及び重量のばらつきを抑制することの容易な前記製造方法が特に有効となる。しかし、前記製造方法は、内径が40mmを超える円筒状積層体の製造に適用してもよく、この場合であっても、円筒状積層体の外径や重量のばらつきを低減できる点で有効である。
【0089】
・前記円筒状積層体11は、エアフィルターとして利用されるが、これに限定されず、エア以外の気体用のフィルターや液体用のフィルターとして利用してもよい。円筒状積層体11をフィルターとして用いる場合、熱融着性シートは、少なくとも繊維集合体からなる層を有することが好ましい。繊維集合体としては、前記不織布12の他に、織布及び紙が挙げられる。熱融着性成分としては、熱融着性繊維以外に、例えば不定形の熱融着性バインダーを含む繊維集合体であってもよい。なお、繊維集合体からなる層を含む熱融着性シートは、例えば、多孔質フィルムと繊維集合体とが積層された多層構造であってもよい。
【0090】
・前記製造方法は、フィルターに用いられる円筒状積層体11の製造のみではなく、例えば、各種構造材に用いられる円筒状積層体の製造に適用することもできる。すなわち、前記製造方法は、巻芯21に巻回可能な可撓性を有し、所定の嵩密度を有する熱融着性シートを用いて、円筒状積層体を製造する方法として有効である。熱融着性シートの厚みは、例えば、0.01〜14mmの範囲とされる。この場合、熱融着性シートとしては、繊維集合体に限らず、例えば、発泡体状物、網状物等を用いてもよいし、これらの複合体を用いてもよい。また、例えば、熱融着性シートが、繊維集合体、発泡体状物、又は網状物と、樹脂フィルム状物との複層構造の場合であっても、前記製造方法は有効である。熱融着性シートが複層構造の場合では、熱融着性シートの少なくとも片面が熱可塑性樹脂を主成分として構成される。片面のみが熱融着性を有する熱融着性シートを用いる場合は、熱融着性成分への熱伝導を効率的に行うという観点から、熱融着性を有する面が駆動ローラー22に接するように巻取装置に供給することが好ましい。
【0091】
・前記製造方法では、巻取工程を一段階で行っているが、巻取工程を複数の段階に分けて実施することができる。例えば、第1の巻取工程において第1の熱融着性シートを巻き取った後に、第2の巻取工程において第2の熱融着性シートを巻き取ることで、内周側と外周側とにおいて、異種の熱融着性シートが巻回された円筒状積層体を得ることができる。この場合、第2の巻取工程として、前記製造方法の巻取工程を適用する。
【0092】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記巻芯と前記駆動ローラーとの間の圧力を計測する圧力センサを備え、前記圧力の低下に基づき前記荷重を増大させることで前記縮径工程が開始される円筒状積層体の製造装置。
【0093】
(ロ)前記熱融着性シートを切断する切断装置を備え、前記巻取工程において、前記巻芯の位置に基づき前記熱融着性シートを切断することで、前記巻取工程に供する前記熱融着性シートの供給量が決定される円筒状積層体の製造装置。
【符号の説明】
【0094】
11…円筒状積層体、11a…半製品、12…不織布(熱融着性シート)、21…巻芯、22…駆動ローラー、23…加圧装置、51…位置センサ(検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着性成分を含む熱融着性シートを加熱しながら巻芯に巻き取る巻取工程を備え、前記熱融着性シートが径方向に積層された円筒状積層体を製造する円筒状積層体の製造方法であって、
前記巻取工程は、
前記巻芯と、前記巻芯の軸に平行する軸を中心として回転駆動される駆動ローラーとにより前記熱融着性シートを加圧しながら、前記巻芯と前記駆動ローラーとの間に前記熱融着性シートを連続して通過させるとともに、前記駆動ローラーにより前記熱融着性シートを加熱して前記円筒状積層体の外径よりも拡径するまで前記巻芯に巻き取ることで半製品を得る工程であり、
前記巻取工程で得られた前記半製品を前記巻芯とともに前記駆動ローラーにより回転させながら加熱及び加圧して縮径させることで前記円筒状積層体の外径に合わせる縮径工程を備え、
前記巻取工程及び前記縮径工程における前記加圧は、前記巻芯又は前記駆動ローラーに荷重を加えることで実施され、
前記縮径工程は、前記荷重を前記巻取工程における前記荷重よりも増大させる工程であることを特徴とする円筒状積層体の製造方法。
【請求項2】
前記巻取工程において、前記巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みに基づき前記熱融着性シートを切断することで、前記巻取工程に供する前記熱融着性シートの供給量が決定されることを特徴とする請求項1に記載の円筒状積層体の製造方法。
【請求項3】
前記巻取工程において、前記巻芯と前記駆動ローラーとの間の圧力を計測し、前記圧力の低下に基づき前記荷重を増大させることで前記縮径工程が開始されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の円筒状積層体の製造方法。
【請求項4】
前記熱融着性シートの切断からの経過時間をタイマにより計時し、その計時結果に基づき前記縮径工程を開始させることを特徴とする請求項2に記載の円筒状積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の円筒状積層体の製造方法に用いられ、前記駆動ローラーと、前記巻芯に荷重を印加する加圧装置とを備える円筒状積層体の製造装置であって、
前記巻芯の外周に積層された熱融着性シートの積層厚みを検出する検出手段を備えることを特徴とする円筒状積層体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−56446(P2013−56446A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195316(P2011−195316)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【Fターム(参考)】