説明

再利用防水シート

【課題】繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して所望の防水シートを形成する場合に、その形成作業が円滑にできるようにする。
【解決手段】再利用防水シートは、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シート2として、この再利用シート2の少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルム3を介し熱溶融性の樹脂製シート4を面接触させて熱溶着したものである。樹脂製フィルム3と樹脂製シート4とをそれぞれ透明とし、樹脂製シート4の外表面の断面形状を凹部4aと凸部4bとが交互に連続する形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある製品を構成していた繊維製シートなど、このような繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着することにより形成される再利用防水シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水シートには、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、繊維製シートと樹脂製シートとが互いに重ねられて、互いに縫合されたり熱溶着されたりすることにより防水シート(上記公報では遮水シート)が形成されている。
【0003】
ここで、上記したような従来の技術の防水シートは、通常、工場において、繊維製シートと樹脂製シートとが互いに重ねられて、互いに縫合されたり熱溶着されたりすることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−179942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように、防水シートを工場で形成する場合には、この形成に用いられる繊維製シートの材質や伸縮性などの初期条件は、通常、作業者によって予め十分に把握されている。このため、工場での防水シートの形成は、上記初期条件を予定して実行されることから、所望の防水シートの形成作業が円滑に達成される。
【0006】
しかし、例えば、ある製品を構成していた繊維製シートの少なくとも一部を再利用しようとして、これを再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して再利用防水シートを形成しようとすると、次のような問題点がある。
【0007】
即ち、上記製品の種類は多岐にわたるため、各製品の繊維製シートの材質や伸縮性などの初期条件をそれぞれ予め知ることは容易でない。よって、上記再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して所望の再利用防水シートを形成しようとする場合、その都度、上記初期条件を調査するなどして知る必要があることから、上記形成作業は煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して所望の防水シートを形成する場合に、この形成作業が円滑にできるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シート2として、この再利用シート2の少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルム3を介し熱溶融性の樹脂製シート4を面接触させて熱溶着したことを特徴とする再利用防水シートである。
【0010】
請求項2の発明は、上記樹脂製フィルム3と樹脂製シート4とをそれぞれ透明とし、この樹脂製シート4の外表面の断面形状を凹部4aと凸部4bとが交互に連続する形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の再利用防水シートである。
【0011】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明による効果は、次の如くである。
【0013】
請求項1の発明は、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとして、この再利用シートの少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルムを介し熱溶融性の樹脂製シートを面接触させて熱溶着したものである。
【0014】
このため、繊維製シートの少なくとも一部を再利用しようとして、これを再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して再利用防水シートを形成する場合には、上記再利用シートの材質や伸縮性などの初期条件に大きく留意しなくても、上記再利用シートと樹脂製シートとは、これらの間で熱溶融する樹脂製フィルムによって互いに強固に熱溶着される。よって、上記再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して所望の再利用防水シートを形成する場合、この形成作業は容易にできる。
【0015】
請求項2の発明は、上記樹脂製フィルムと樹脂製シートとをそれぞれ透明とし、この樹脂製シートの外表面の断面形状を凹部と凸部とが交互に連続する形状にしている。
【0016】
このため、上記樹脂製シートの外表面における凹、凸部と上記樹脂製フィルムとを通して再利用シートの表面を見た場合には、上記凹、凸部を通る光の屈折によって上記再利用シートの表面に施されたデザインが立体的に見えることとなる。よって、上記発明によれば、デザイン性に非常に優れた再利用防水シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】再利用防水シートの展開斜視図である。
【図2】再利用防水シートの形成作業を示す側面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の再利用防水シートに関し、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとし、この再利用シートに樹脂製シートを熱溶着して所望の再利用防水シートを形成する場合に、この形成作業が円滑にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0019】
即ち、再利用防水シートは、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとして、この再利用シートの少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルムを介し熱溶融性の樹脂製シートを面接触させて熱溶着したものである。
【実施例】
【0020】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0021】
図において、符号1は再利用防水シートであり、この再利用防水シート1は、再利用シート2の一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルム3を介し熱溶融性の樹脂製シート4を面接触させて全面的に熱溶着器5により熱溶着させたものである。なお、上記再利用シート2の他方の表面にも、上記のように樹脂製フィルム3と樹脂製シート4とを熱溶着させてもよい。
【0022】
上記再利用防水シート1は、これを切断したり、加工したりすることにより、鞄、傘、テーブルクロス、および壁飾りなど種々のものに利用可能とされる。上記再利用防水シート1は防水性の他、防汚性も備えている。
【0023】
上記再利用シート2は、ある製品の一部もしくは全部を構成していたもの、もしくは、ある製品を形成する前段階の繊維製シートの少なくとも一部を再利用したものである。上記製品とは、ロゴや模様が施されていて広告に用いられた大面積の垂れ幕、テント、および衣服などであり、一旦、製品に加工された後の未使用のものや、使用後のものが含まれる。
【0024】
また、上記した製品を形成する前段階の繊維製シートとは、製品にしようとして所定形状に裁断されたものや、この裁断時に生じる端切れが含まれる。また、ある製品を形成する目的で準備された後、本来の目的が失われた製品素材である繊維製シートも、上記した製品を形成する前段階の繊維製シートに含まれる。
【0025】
また、上記繊維製シートとは、繊維製織物や編物であり、かつ、合成繊維、無機繊維、もしくは天然繊維である。また、上記繊維製シートは樹脂層で被覆されたものでもよい。
【0026】
上記樹脂製フィルム3は、ホットメルト接着剤といわれるもので、その材質は、EVA系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のものが使用可能であり、上記樹脂製シート4と同じ系統の素材をベースにしたものを用いることが好ましい。また、上記樹脂製フィルム3の厚さは、0.03〜0.2mm程度である。
【0027】
上記樹脂製シート4の材質は、熱可塑性樹脂であればよく、特にEVA系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のものが使用可能であるが、融点が60℃〜100℃の樹脂製シートを用いる事が好ましい。また、上記樹脂製シート4の厚さは、0.1〜1.0mm程度であり、上記樹脂製フィルムよりも厚さのある樹脂製シートを使用するのが好ましい。
【0028】
前記再利用シート2の表面には模様等のデザイン8が施されている。このようなデザイン8を上記再利用防水シート1に生かそうとするのであれば、上記樹脂製フィルム3と樹脂製シート4とは共に透明(半透明含む)であることが好ましく、透光率としては、再利用シートとして形成した後の状態で、それぞれ90%以上のものを用いることが好ましい。
【0029】
上記熱溶着器5は、公知の高周波熱溶着式のもので、上部電極10に対し下部電極11が上下方向で接離可能に設けられ、これら上部電極10と下部電極11とは不図示の高周波発振器で接続されている。この熱溶着器5によれば、上部電極10と下部電極11との間に挟まれて互いに加圧された再利用シート2、樹脂製フィルム3、および樹脂製シート4は全体的に均一に、かつ、所望温度で精度よく加熱されることから、所望の再利用防水シート1を得ることがより確実かつ円滑にできて好ましい。
【0030】
上記熱溶着器5による再利用防水シート1の形成に際し、上記再利用シート2、樹脂製フィルム3、および樹脂製シート4がこの順序で下から上に向かって積層されている。上記上部電極10の下面の断面形状は、凹部10aと凸部10bとが等ピッチで規則正しく交互に連続する波形状とされ、これにより、上部電極10の下面には、上記各凸部10bによる突条が互いに平行に直線的に延びている。
【0031】
そして、上記熱溶着器5により再利用防水シート1を形成した場合には、上記樹脂製シート4の外表面(上面)に上記上部電極10の下面の形状が転写される。これにより、上記樹脂製シート4の外表面の断面形状は凹部4aと凸部4bとが等ピッチで規則正しく交互に連続する波形状とされ、これにより、上記樹脂製シート4の外表面には、上記各凸部4bによる突条が互いに平行に直線的に延びている。
【0032】
なお、上記上部電極10の下面の断面形状はジグザグ形状であってもよく、この場合には、上記樹脂製フィルム3の外表面の断面形状もジグザグ形状となる。
【0033】
また、上記熱溶着器5は、熱板(熱盤)や熱風を用いたものや、超音波を用いたものであってもよい。
【0034】
上記構成の再利用防水シート1は、繊維製シートの少なくとも一部を再利用シート2として、この再利用シート2の少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルム3を介し熱溶融性の樹脂製シート4を面接触させて熱溶着したものである。
【0035】
このため、繊維製シートの少なくとも一部を再利用しようとして、これを再利用シート2とし、この再利用シート2に樹脂製シート4を熱溶着して再利用防水シート1を形成する場合には、上記再利用シート2の材質や伸縮性などの初期条件に大きく留意しなくても、上記再利用シート2と樹脂製シート4とは、これら2,4の間で熱溶融する樹脂製フィルム3によって互いに強固に熱溶着される。よって、上記再利用シート2に樹脂製シート4を熱溶着して所望の再利用防水シート1を形成する場合、この形成作業は容易にできる。
【0036】
また、前記したように、樹脂製フィルム3と樹脂製シート4とをそれぞれ透明とし、この樹脂製シート4の外表面の断面形状を凹部4aと凸部4bとが交互に連続する形状にしている。
【0037】
このため、上記樹脂製シート4の外表面における凹、凸部4a,4bと上記樹脂製フィルム3とを通して再利用シート2の表面を見た場合には、上記凹、凸部4a,4bを通る光の屈折によって上記再利用シート2の表面に施されたデザイン8が立体的に見えることとなる。よって、上記構成によれば、デザイン性に非常に優れた再利用防水シート1が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 再利用防水シート
2 再利用シート
3 樹脂製フィルム
4 樹脂製シート
4a 凹部
4b 凸部
5 熱溶着器
8 デザイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製シートの少なくとも一部を再利用シートとして、この再利用シートの少なくともいずれか一方の表面に対し、熱溶融性の樹脂製フィルムを介し熱溶融性の樹脂製シートを面接触させて熱溶着したことを特徴とする再利用防水シート。
【請求項2】
上記樹脂製フィルムと樹脂製シートとをそれぞれ透明とし、この樹脂製シートの外表面の断面形状を凹部と凸部とが交互に連続する形状にしたことを特徴とする請求項1に記載の再利用防水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11576(P2012−11576A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147751(P2010−147751)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】