説明

再剥離性圧着記録用紙

【課題】 電子写真方式のヒートロール定着型プリンタで印刷した際、定着ロールであるヒートロールへのトナー転移防止の為に使用されている離型剤(シリコーンオイル)の感圧接着剤層表面付着による接着強度低下が少ない再剥離性圧着記録用紙の提供。
【解決手段】 この課題は、常温、常圧では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着剤層を少なくとも片面に有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着剤層が接着剤、微粒子充填剤を構成成分とする感圧接着剤組成物からなる層であり、該感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角(ASTM D 5725)が60°以下であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電記録方式(電子写真方式)のヒートロール定着型プリンタで印刷した際、定着ロールであるヒートロールへのトナー転移防止の為に使用されている離型剤(シリコーンオイル)の感圧接着剤層表面付着による接着強度低下が少ない再剥離性圧着記録用紙の提供である。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行、クレジット会社、保険会社、官庁等から各個人宛に貯金、残金状況等個人情報を通知する手段として、親展はがきが普及している。親展はがきは基材に感圧接着剤を塗工した後、共通情報はオフセット印刷、グラビア印刷等で行い[酸化重合インキタイプ、紫外線(UV)硬化型インキタイプ]、個人情報は電子写真方式やインクジェット方式等のノンインパクトプリンタによって印刷した後、印刷面同士を適度の圧力を加えることで接着させ、各個人に郵送された後、再剥離することで情報を得ることができる。
【0003】
しかしながら、オフセット印刷等においてはインキの定着に紫外線ランプを利用する一方、高速の電子写真方式のプリンタにはトナー定着を高熱(180〜220℃)のヒートロールで行うヒートロール定着方式のプリンタがあり、ヒートロールにはオフセット印刷インキやトナー付着防止目的でシリコーンオイルがロール表面に供給されている。感圧接着剤層が熱によって劣化し、接着強度が低下するという問題が生じ、これを解決する手段としてメタクリル酸メチルグラフト共重合天然ゴム系接着剤に代わる樹脂として熱劣化の少ないスチレン−ブタジエン(SBR)系樹脂やエチレン−酢酸ビニル系樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照。)。
【0004】
しかし電子写真方式印刷でのヒートロール定着型プリンタの場合、接着強度低下は熱による感圧接着剤層の劣化だけではなく、定着ロールへのトナー転移防止として定着ロール表面に離型効果付与として供給されているシリコーンオイルが感圧接着剤層表面に付着することで接着強度が大きく低下し、郵送途中で剥離して親展性の面で実使用上問題が生じることがある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−318353号公報(0001、0008〜0025段落)
【特許文献2】特開2001−335762号公報(0001、0006〜0033段落)
【特許文献3】特開2003−160764号公報(0001、0007〜0015段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電子写真方式のヒートロール定着型プリンタで印刷した際、定着ロールであるヒートロールへのトナー転移防止の為に使用されている離型剤(シリコーンオイル)の感圧接着剤層表面付着による接着強度低下が少ない再剥離性圧着記録用紙の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、該感圧接着剤層が接着剤、微粒子充填剤を構成成分とする感圧接着剤組成物からなる層であり、該感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角(ASTM D 5725)(以下、「接触角」と略す。)が60°以下であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙を得ることによって解決されることを見出した。
【0008】
即ち本発明は、常温、常圧では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着剤層を少なくとも片面に有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着剤層が接着剤、微粒子充填剤を構成成分とする感圧接着剤組成物からなる層であり、感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角が60°以下であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、微粒子充填剤が、比表面積150〜550m/gで吸油量80〜400ml/100gの微粒子充填剤であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、接着剤が、微粒子充填剤100質量部に対して50〜200質量部を含有することを特徴とする再剥離性圧着記録用紙を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による常温、常圧では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着剤層を少なくとも片面に有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着剤層が接着剤、微粒子充填剤を構成成分とする感圧接着剤組成物からなる層であり、該感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角が60°以下にすることによって、静電記録方式(電子写真方式)のヒートロール定着型プリンタで印刷した際、ヒートロールへのトナー転移防止の為に使用されている離型剤であるシリコーンオイル塗布後の接着強度低下が小さく、親展葉書として使用する場合、接着及び再剥離性を満足させる再剥離性圧着記録用紙が得られる。
【発明の実施の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明は、感圧着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角が60°以下であることに大きな特徴がある。この接触角の達成には、感圧接着剤層中に比表面積150〜550m/gで吸油量80〜400mL/100gの微粒子充填剤が寄与している。
【0014】
上記感圧接着剤層を塗工した本発明の再剥離性圧着記録用紙は、感圧接着剤層表面にシリコーンオイルを3μL滴下し、10秒後の接触角(ASTM D 5725)が60°以下であることが非常に重要である。因みに、接触角が60°を越えると、シリコーンオイルの濡れが悪くなり、感圧接着剤層表面への付着量は少なくなるがオフセット印刷時のインキ着肉性が低下してしまう。接触角は好ましくは50°以下で、下限は特にないが10°以上が好ましい。
【0015】
接触角は圧着工程前の再剥離性圧着記録用紙を使用して測定する。圧着工程を経ることで、圧着された面は再剥離されることで感圧接着剤層表面が荒れてしまう。また、例えば宛名面になるような圧着されない面であっても圧着工程の加圧によって感圧接着剤層表面の平滑性、透気性などの物性が変化する為、電子写真方式の印字工程前とは異なる感圧接着剤層表面となる。
【0016】
本発明に用いる接着剤は、組成は特に限定されず、天然ゴム系接着剤としては変性天然ゴムが、また合成接着剤としてはスチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が例示できる。
【0017】
<天然ゴム系接着剤>
本発明の天然ゴム系接着剤は天然ゴム系誘導体樹脂であれば、特に限定されないが天然ゴムにメタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリルから選択される少なくとも1種以上の不飽和モノマーをグラフト重合した樹脂が好ましい。特に、天然ゴムの固形分100質量部に少なくとも1種以上の不飽和モノマーを15〜40質量部グラフト重合した天然ゴム誘導体が、接着強度の安定性や感圧接着剤組成物からなる塗工液の機械的安定性に優れるため好ましい。
【0018】
<合成接着剤>
本発明で用いる合成接着剤は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル、ニトリルブタジエンゴム等または場合によってはそれらのブレンドが好ましい。
【0019】
本発明で使用される微粒子充填剤としては、比表面積150〜550m/g、好ましくは250〜500m/gおよび吸油量80〜400ml/100g、好ましくは150〜350ml/100gを満たす無機系或いは有機系の公知の微粒子充填剤を適宜選択して使用することができる。微粒子充填剤としては無機及び有機顔料等が使用できる。例えば、無機顔料として酸化亜鉛、酸化チタン、ゼオライト、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、γ−アルミナ、コロイダルシリカ、アルミノシリケート等が、また有機顔料として小麦デンプン、プラスチックピグメント、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー等のスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、シクロペンタジエン系の石油樹脂等が挙げられる。これら微粒子は単独使用又は2種以上を組合せて使用することができる。これらの中で、安価に入手可能な無機微粒子が好ましく、各種の用途で使用されているシリカ、特に合成シリカが好ましい。
【0020】
感圧接着剤層中の接着剤配合量は、シリコーンオイル吸収性及び接着強度などの性能のバランスを考慮すると微粒子充填剤100質量部に対して50〜200質量部、好ましくは100〜170質量部の割合での配合が望ましい。接着剤配合量が50質量部未満の場合、感圧接着剤層の接着強度が弱い可能性があり、200質量部を超えると微粒子充填剤を被覆してしまい、シリコーンオイル吸収性が低下し、接着強度が大きく低下する可能性がある。
【0021】
本発明の感圧接着剤層には必要に応じて必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、分散剤、離型剤、サイズ剤、着色染料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、カチオン性、ノニオン性または両性の界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤、pH調整剤などの助剤を添加することができる。
【0022】
本発明に用いる基材については特に限定するものではないが従来公知のフォーム用紙(非塗工紙)の他に、上質紙、中質紙、各種バインダーで含浸された含浸紙及び各種顔料で塗工された塗工紙、アート紙、合成紙、樹脂フィルム、不織布などを原紙として使用できる。その中でも、紙基材が安価なため好ましく使用される。紙基材には古紙パルプを含んでいても良く、抄紙方法等も特に限定するものではない。
【0023】
塗工方法としては特に限定するものではないが、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が用いられる。その中でも、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等が好ましい。塗工量としては2〜20g/mの範囲であるが、好ましくは3〜15g/mの範囲である。塗工量を上記範囲に限定した理由は、3g/m未満ではオフセットインキ受理層及びシリコーンオイル受理層として、インキ及びシリコーンオイルの受容量が低下し、印刷上がりなどの視感的な面が劣り、シリコーンオイル吸収性低下による接着強度低下も大きくなり、好ましくないためである。また、塗工量が15g/mを越えると、印刷上がりなどの視感的な見栄えは向上し、シリコーンオイル吸収性も向上するが、経済的な面から実用性が劣り、紙粉が発生しやすく、好ましくない。
【0024】
[実施例]
本発明を以下の実施例、比較例を用いて更に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例の質量部数はすべて固形分換算での数値で示すものとする。
【実施例1】
【0025】
合成シリカとしてゲル法合成非晶質シリカ(ミズカシルP−78A、比表面積360m/g、吸油250g/100ml、水澤化学工業社製)100質量部に対し、天然ゴム系接着剤としてメタクリル酸メチル(MMA)を25%グラフト重合させた天然ゴム系接着剤50質量部を配合して本発明の目的とする感圧接着剤層となる感圧接着剤組成物の塗工液を得た。次にこの感圧接着剤組成物の塗工液1を坪量127.9g/mの上質紙に片面当たりの塗工量が10g/m(乾燥質量)になるように塗工して乾燥させ、感圧接着剤層を形成し、再剥離性圧着記録用紙を得た。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1および2に示す。
<感圧接着剤組成物の塗工液1>
合成シリカ(ミズカシルP-78A、比表面積360m/g、吸油250g/100ml) 100部
天然ゴム系接着剤 50部
【実施例2】
【0026】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を200部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例2とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤を合成接着剤であるスチレンーブタジエン共重合体接着剤(Lx−110、日本ゼオン社製)に変更し、感圧接着剤組成物の塗工液2とした以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例3とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1および2に示す。
<感圧接着剤組成物の塗工液2>
合成シリカ(ミズカシルP-78A、比表面積360m/g、吸油量250g/100ml) 100部
スチレンーブタジエン共重合体接着剤 50部
【実施例4】
【0028】
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2のスチレンーブタジエン共重合体接着剤(Lx−110、日本ゼオン社製)50部を200部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例4とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例5】
【0029】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の合成シリカをミズカシルP−78Aから沈降法合成非晶質シリカ(ファインシールX−37B、比表面積290m/g、吸油240g/100ml、トクヤマ社製)に変更し、感圧接着剤組成物の塗工液3とした以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例5とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
<感圧接着剤組成物の塗工液3>
合成シリカ(ファインシールX-37B、比表面積290m/g、吸油240g/100ml)
100部
天然ゴム系接着剤 50部
【実施例6】
【0030】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を70部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例6とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例7】
【0031】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を100部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例2とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例8】
【0032】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を120部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例8とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例9】
【0033】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を150部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例7とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例10】
【0034】
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の天然ゴム系接着剤50部を180部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例10とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例11】
【0035】
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2のスチレンーブタジエン共重合体接着剤(Lx−110、日本ゼオン社製)50部を70部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例11とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例12】
【0036】
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2のスチレンーブタジエン共重合体接着剤(Lx−110、日本ゼオン社製)50部を100部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例12とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【実施例13】
【0037】
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2のスチレンーブタジエン共重合体接着剤(Lx−110、日本ゼオン社製)50部を150部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを実施例13とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1の合成シリカをミズカシルP−78Aからアエロジル50(比表面積50m/g、吸油90g/100ml、日本アエロジル社製)に変更し、感圧接着剤組成物の塗工液4とした以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例1とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2でスチレンーブタジエン共重合体接着剤50部を230部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表1に示す。
【0040】
[比較例3]
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1で天然ゴム系接着剤50部を30部に変更した以外は、実施例1と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例3とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表2に示す。
【0041】
[比較例4]
実施例1の感圧接着剤組成物の塗工液1で天然ゴム系接着剤50部を230部に変更した以外は、実施例1同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例4とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表2に示す。
【0042】
[比較例5]
実施例3の感圧接着剤組成物の塗工液2でスチレンーブタジエン共重合体接着剤50部を30部に変更した以外は、実施例3と同様にして再剥離性圧着記録用紙を作成し、これを比較例5とした。得られた再剥離性圧着記録用紙について剥離強度試験、印刷適性試験、ブロッキング性試験で評価した結果を表2に示す。
【0043】
以上の実施例及び各比較例で得られた再剥離性圧着記録用紙を下記試験方法に従って諸物性の評価を行なった。
(1)接触角評価
シリコーンオイルに対する得られた試料の感圧接着剤層表面の接触角は、ASTM D5725に準拠して23℃、50%RH雰囲気下で接着剤層に容量3μLのシリコーンオイルを滴下後10秒で測定した。接触角測定装置は、FIBRO system ab社製ダイナミックコンタクトアングル・アブソープションテスター FIBRO DAT 1100を用いた。
(2)接着強度
試料を幅100mm、長さ100mmに裁断し、試料の感圧接着剤組成物の塗工面同士を重ね合わせてドライシーラー(プレッスルエコノ:トッパン・フォームズ株式会社製)を用いて加圧接着した。次にこの試料の幅方向中央部を25mm幅に断裁して、23℃、50%RH環境下でストログラフM−1型(東洋精機製作所製)で速度300m/分、剥離(T型剥離)強度で剥離してその抵抗値を平均化して剥離強度g/25mmを求め、接着強度として評価する。◎:100〜150g/25mm、○:50〜100g/25mm未満、△:20〜50 g/25mm未満、×:0〜20 g/25mm未満、◎と○は実用レベルの剥離強度を示し、△と×は実用に耐えないレベルを示す。
(3)シリコーンオイル塗布後接着強度
試料の感圧接着剤組成物塗工面に、RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を用いてシリコーンオイルを荷姿の状態で0.4g/m塗布した後に、上記(2)のようにして剥離(T型剥離)強度を測定し、同一試料の(2)剥離強度を分母とした保持率によって評価する。◎:剥離強度が85〜100%保持、○:剥離強度が60〜85%未満保持、△:剥離強度が45〜60%未満保持、×:剥離強度が45%未満。
(4)耐ブロッキング性
ブロッキング適性試験:感圧接着剤組成物を両面塗工した試料を重ね合わせ、23℃、50%RH環境下で500g/cmの荷重をかけて放置し、24時間後に手で剥がし、評価した。◎:ブロッキングが全く発生していない、○:ブロッキングがほとんど発生していない、△:少しブロッキングが発生している、×:完全にブロッキングしている。
(5)耐印刷性
RI−3型印刷適性試験機(明製作所製)を使用して、試料の感圧接着剤組成物の塗工面の耐刷力を評価した。インキはプロセスインキ(東洋インキ製造社製、PRINTING INK、墨、SMX、TV−25)を0.4ml、印刷速度:60rpm、4回刷り。視感で評価し、インキによる塗工層剥け、紙剥けなどが全くないものから順に◎、○、△、×とした。
(6)総合評価
再剥離性圧着記録用紙としての総合評価を行なった。
◎:再剥離性圧着記録用紙として非常に優れている、○:再剥離性圧着記録用紙として優れている、△:再剥離性圧着記録用紙として多少問題があり、実使用上不安がある、×:再剥離性圧着記録用紙として問題があり、実使用できない。
【0044】
上記の方法に従って試験を行い、その評価結果を下記表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1の結果から分かる通り、感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角を60°以下にした実施例1〜5の場合には、静電記録方式(電子写真方式)のヒートロール定着型プリンタで印刷した際、ヒートロールへのトナー転移防止の為に使用されている離型剤であるシリコーンオイル塗布後の接着強度低下が小さく、親展葉書として使用する場合、接着及び再剥離性を満足させる再剥離性圧着記録用紙が得られることが判る。これに対して、接触角が60°より多い75°の比較例1および63°の比較例2の場合にはシリコーンオイル塗布後の接着強度の顕著な低下が認められる。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から判る通り、実施例1〜13の場合には、天然ゴム系接着剤でも合成接着剤でも微粒子充填剤100質量部に対して接着剤量が50〜200質量部である場合には、耐ブロッキング性および耐印刷性も含めて優れているのに対して、接着剤量が50質量部より少ない30質量部の比較例3および比較例5の場合には耐印刷性が不十分であり、200質量部より多い230質量部の比較例4の場合には耐ブロッキング性が不十分であり、再剥離性圧着記録用紙として実用に耐えない。接着剤量が微粒子充填剤100質量部に対して50〜200質量部であることが重要であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温、常圧では粘着性、接着性を示さず、加圧時に接着性を示し、圧着後に剥離可能である感圧接着剤層を少なくとも片面に有する再剥離性圧着記録用紙において、該感圧接着剤層が接着剤、微粒子充填剤を構成成分とする感圧接着剤組成物からなる層であり、該感圧接着剤層表面のシリコーンオイル滴下10秒後の接触角(ASTM D 5725)が60°以下であることを特徴とする再剥離性圧着記録用紙。
【請求項2】
前記微粒子充填剤が、比表面積150〜550m/gで吸油量80〜400mL/100gの微粒子充填剤である請求項1に記載される再剥離性圧着記録用紙。
【請求項3】
前記微粒子充填剤100質量部に対して前記接着剤が50〜200質量部を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の再剥離性圧着記録用紙。

【公開番号】特開2007−186807(P2007−186807A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4592(P2006−4592)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】