説明

再加圧時の増圧方法

【課題】圧力容器と増圧機とそれらの間に設けられた減圧弁とを備えた等方圧加圧装置において、圧媒体の温度低下に伴う粘度の上昇があったとしても、再加圧時に適切に増圧する。
【解決手段】等方圧加圧装置を制御する制御部は、再加圧が必要であると判定されると(S100にてYES)、増圧機を作動させるステップ(S101)と、管内圧力PTを検出するステップ(S102)と、管内圧力PTが上昇していないと(S103にてNO)、減圧弁を作動させて管内の圧力を低下させるステップ(S104)とを含む処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、セラミックスなどの粉末や食品等を、加熱液体の静水圧にて成形又は加圧処理する等方圧加圧技術に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末を均等に加圧成形するために静水圧を利用することは公知である。例えば、水などの液体を圧媒体とし、例えば約100MPa以上の高い等方圧を粉体に加え、様々な形状に成形する冷間等方圧加圧法(CIP)がある。このCIPは、セラミックスや粉末冶金を始めとして様々な分野で有力な成形法として利用されており、ゴム型を直接液中に入れて加圧する湿式法と圧力容器に組込まれたゴム型を介して加圧する乾式法の2種類がある。さらに、最近では、食品や医療品などの分野で、超高圧による効果が注目されており、超高圧の利用分野が広がっている。
【0003】
また、アルゴンなどのガスを圧媒体とし、約100MPa以上の高い等方圧と1000℃以上の温度との相乗効果を利用して、加圧処理する熱間等方圧加圧法(HIP)がある。このHIPは、超硬合金、セラミックス、スーパーアロイなどの分野では不可欠な工業プロセスとなっており、高付加価値を実現することができる。
また、シリコンオイル等を圧媒体とし、約100MPa以上の高い等方圧と100℃〜300℃の温度領域との相乗効果を利用して、加圧処理する温間等方圧加圧法(WIP)がある。
【0004】
このように、金属、樹脂又はセラミックス等の粉末の等方圧加圧成形のみならず、食品加工や食品の殺菌等においても等方圧力の利用が図られており、この場合、圧力のみならず圧媒体に温度を同時に作用させることが公知となっている。
特開昭61−124503号公報(特許文献1)は、加熱された液体の圧媒体を成形容器(圧力容器)に投入循環させる温間静水圧加圧装置を開示する。この温間静水圧加圧装置は、軸荷重を担持可能として圧力容器の上下開放端に上蓋と下蓋とがそれぞれ嵌合され、圧力容器内で成形モールドに充填された被成形体が加熱成形される温間静水圧加圧装置である。この温間静水圧加圧装置は、加熱液体を圧力容器の外部で加熱する圧媒体加熱装置が設けられ、圧媒体加熱装置で加熱された圧媒体を圧力容器に加圧しながら投入循環させる圧媒体給排手段が設けられていることを特徴とする。
【0005】
さらに、特開平6−113806号公報(特許文献2)は、安定な加減圧と、処理室内の安定かつ厳密な温度管理を可能とする高圧処理装置を開示する。この高圧処理装置は、圧力容器と、圧力容器に嵌合する蓋と、蓋に作用する軸力を支承するプレスフレームとからなる圧力容器系と、圧力容器に圧媒体を供給するとともに容器内の被処理物を加圧処理するための圧媒体タンクと増圧機とを備えている圧媒体系とを含む高圧処理装置である。この高圧処理装置は、圧力容器系と圧媒体系の圧媒体タンクとを包囲する断熱部材を設け、包囲空間を冷却する冷却手段を備えることを特徴とする。
【特許文献1】特開昭61−124503号公報
【特許文献2】特開平6−113806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、WIPにおいて、タンク内の圧媒体は、ヒータにより例えば300℃に加熱され、循環ポンプ等により圧力容器内に投入されて、圧力容器内を流通しながら熱交換を繰返し、加熱された圧媒体は所定の温度となる。その後、増圧機を作動させ、圧力容器内の圧媒体を加圧することにより被成形体を処理する。このような処理において、以下の問題の発生が懸念される。
例えば300℃に加熱されたシリコンオイル、ひまし油などの液体の圧媒体を圧力容器へ供給する昇温工程の後、その圧媒体を増圧機で200MPa〜300MPa程度の高圧の成形圧まで加圧供給する昇圧工程を行なう場合、その圧力容器と増圧機とを接続する高圧配管中の圧媒体は、放熱などで冷却されることがある。特に、周囲温度が低い場合又は配管距離が長い場合には、周囲温度の低さ又は配管距離の長さに比例して、その影響を大きく受け、圧媒体の温度が大幅に低下する可能性がある。
【0007】
また、配管中の圧媒体(加熱された液体の圧媒体)は、低圧配管に比べて比較的内径の小さい高圧配管で圧送される。このとき、温度低下により圧媒体の粘度が上昇して固化した状態に近くなることがあり得る。かかる状態になると、内径の小さい高圧配管中で圧媒体が閉塞状態(詰まった状態)を形成して、圧力容器内まで増圧機で発生させた圧力を確実に伝達することが困難となる場合が想定される。
一方、所定の圧力まで加圧された圧力容器内の圧力は、例えば、圧力容器内の温度低下や処理物の体積減少に伴い、若干ながら減少することがある。このような場合、増圧機を再度作動させ、圧力容器内を再加圧する再加圧処理が必要になる。しかしながら、上述した「配管内における圧媒体の閉塞状態」により、増圧機からの圧力を圧力容器内まで伝達することが困難となる場合が想定できる。なお、この際には、過負荷運転に伴う増圧機の故障も想定できる。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1,2においては、等方圧加圧装置における再加圧時の問題点(上述した問題点)を解決する技術を開示していない。
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、圧力容器と増圧機とそれらの間に設けられた減圧機構とを備えた等方圧加圧装置において、再加圧時に適切に増圧することができる再加圧時の増圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る再加圧時の増圧方法は、圧力容器と、該圧力容器内の圧力を増圧する増圧機と、それらの間を連結する配管と、前記配管に設けられた減圧機構とを備えた等方圧加圧装置に用いられるものであって、前記圧力容器内の再加圧が必要であると判定された際に、前記増圧機を作動させる再加圧ステップと、前記再加圧ステップによる圧力容器内の圧力上昇を検出する検知ステップと、前記検知ステップで圧力上昇が検出できない場合には、前記減圧機構を作動させて、前記配管内の圧力を低下させる減圧ステップと、前記減圧ステップの後に、前記増圧機を作動させる第2の再加圧ステップを有することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記減圧ステップでは、配管内において非流動状態にある圧媒体を流動状態へと遷移させうる圧力低下量を前記配管に付与するとよい。
等方圧加圧装置において、増圧機を作動させて再加圧を行なっても圧力上昇が検出できない場合には、圧媒体の温度が低下して圧媒体の粘度が上昇して固化した状態になったことに起因して、圧媒体が配管内で閉塞状態を形成していると考えられる。この場合、本発明の増圧方法を用いることで、減圧機構が作動されて配管内の圧力が低下される。配管内の圧力を低下させると、閉塞状態に陥っている圧媒体を流動化させることができる。減圧処理により圧媒体による配管の閉塞状態を解消できると、圧媒体による圧力伝播が圧力容器内まで及んで、圧力容器の再増圧が確実に行えるようになる。
【0011】
換言すれば、被処理材を加圧処理している最中に、配管内の圧力を非流動状態の圧媒体が流動できる程度に低下させることで、配管の温度を上昇させる必要もなく、圧媒体による配管の閉塞状態を解消でき、圧媒体による圧力伝播を圧力容器まで及ばせて圧力容器の再増圧が確実に行える。
また、好ましくは、前記等方圧加圧装置は、処理が終了したときに圧媒体を前記圧力容器から排出するための減圧弁を前記配管に備え、前記減圧機構は前記減圧弁から構成することもできる。
【0012】
等方圧加圧装置の本質的な工程である圧媒体の排出工程(処理工程後の減圧工程)を行なうために等方圧加圧装置が備える減圧弁を用いて、減圧ステップを実現するので、新たな機構(ハードウェア)の追加を必要としない点で好ましい。
さらに好ましくは、前記減圧機構は、前記配管に連通する減圧シリンダで構成することもできる。
この減圧シリンダを用いて減圧ステップを実現して、圧媒体による配管の閉塞状態を解消できる。
【0013】
また、好ましくは、前記減圧機構は、前記配管に連通する減圧タンクで構成することもできる。減圧タンクを用いて減圧動作を実現して、圧媒体による配管の閉塞状態を解消できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る等方圧加圧装置の再加圧時の増圧方法によると、圧力容器と増圧機とそれらの間に設けられた減圧機構とを備えた等方圧加圧装置において、再加圧時に適切に圧力容器内を増圧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
[第1実施形態]
本発明の等方圧加圧装置は、本実施形態における温間静水圧加圧装置1により実現される。この温間静水圧加圧装置1は、被処理材Wに100℃〜300℃の温度領域でシリコンオイル等の液体の圧媒体を介して等方圧を加えて処理を行なうWIP装置である。なお、本発明の適用は、このようなWIP装置に限定されない。
【0016】
図1に示すように、この温間静水圧加圧装置1は、圧力容器2(成形容器)と、圧力容器2を加熱するジャケット加熱ユニット3と、圧力容器2の内部に圧媒体を導入し、加熱循環する加熱ユニット4と、圧力容器2の内部に高圧の圧媒体を供給する高圧圧媒体供給装置5(以降、増圧機と記載する)とを含む。
圧力容器2と増圧機5とは、高圧配管6により接続されている。高圧配管6は、減圧弁7と圧力検出センサ8とを備える。この減圧弁7は、処理終了後の減圧工程において圧力容器2の内部から圧媒体を排出する場合に用いられる。減圧弁7の二次側には、流量調整弁(絞り弁)14が設けられている。この流量調整弁14は、高圧配管6における急激な圧力降下を回避する。なお、この流量調整弁14のさらに下流側には増圧機5に連通する圧媒体タンク(図示しない)が接続されており、増圧機5により、高圧配管6内を圧媒体が循環する。
【0017】
圧力容器2は、厚肉に成形された円筒形状の胴体9と、胴体9の上下開口を液密状に脱着自在に塞ぐ上蓋10及び下蓋11とから構成され、全体として中空筒状の形状に形成されている。なお、圧力容器2内に圧媒体を供給した時に作用する内圧により、上蓋10と下蓋11には上下方向の軸力が作用するため、上蓋10と下蓋11とは、枠型のフレーム(図示しない)によって支持されている。
ジャケット加熱ユニット3においては、加熱ジャケット12の上下端部に接続された配管を介して、圧力容器2の胴体9の外周に配備された加熱ジャケット12に、加熱器31により加熱された熱媒が供給される。その熱媒の循環によって、加熱ジャケット12を介して圧力容器2が加熱される。
【0018】
加熱ユニット4においては、圧力容器2の上蓋10及び下蓋11に接続された配管を介して、加熱器41により加熱された圧媒体が供給される。圧力容器2内において、圧媒体が循環することにより、被処理材Wが加熱される。
ジャケット加熱ユニット3及び加熱ユニット4を用いて、圧力容器2内の圧媒体及び被処理材Wを加熱する。圧力容器2内の圧媒体及び被処理材Wが所定の温度に達した後、次に、下蓋11から配管接続された増圧機5を作動させ、圧力検出センサ8で検出される圧力が所定の圧力に達するまで加圧する。
【0019】
すなわち、温間等方圧加圧装置1においては、先ず、圧力容器2内に被処理材Wを収容し、その後、昇温昇圧工程を開始する。昇温昇圧工程においては、昇温と昇圧を同時に行なわないで、それぞれが別に行なわれる。本実施形態においては、昇温工程の後に昇圧工程が行なわれる。昇圧工程において用いられる増圧機5は、通常、高圧縮ポンプ及びモータ等から構成される。
また、本実施形態においては、圧媒体として、100℃〜300℃の加熱に対応可能なシリコンオイルを使用している。
【0020】
次に、増圧機5による圧送が完了すると(昇圧工程が完了すると)、保持工程に移行する。保持工程においては、圧力容器2の内部の圧媒体の温度及び圧力が、被処理材Wに必要とされる温度及び圧力に一定時間(処理時間)保持されて、被処理材Wが処理される。
被処理材Wの処理完了後、減圧弁7を作動させて圧媒体を圧力容器2から圧媒体タンクへ排出する減圧工程を経て、圧力容器2内の被処理材Wの全ての処理は完了する。全ての処理が完了すると、圧力容器2から被処理材Wを取出すことができる。
とこで、前述した保持工程の途中においては、様々な要因(例えば、圧媒体の圧縮熱の減少、処理物の体積減少など)により、圧力容器内の圧力が若干低下することがある(例えば、数MPa程度)。そこで、設定圧力(例えば300MPa)を保持させるために、再び増圧機5を作動させる再加圧処理が行なわれる。
【0021】
このとき、再加圧処理においては、圧力低下分に相当する圧媒体を増圧機5から圧送するが、高圧配管6において、圧媒体であるシリコンオイルの温度低下によってその粘度が上昇し、比較的内径の小さい高圧配管6においてシリコンオイルが固化に近い状態になっていることがある。このような状態で、増圧機5により圧媒体を圧送しても、圧媒体の粘度が高い部分で高圧配管6を閉塞状態に陥らせて、圧カの伝達が行なわれない場合がある。
そこで、本実施形態に係る温間等方圧加圧装置1は、再加圧処理を行なう場合、圧力容器2内の圧力上昇が検出できないときには、以下に示す再加圧時処理(再加圧時の減圧処理及びそれに続く加圧処理)を実行することにより、所定の圧力を安定して保持する。
【0022】
上述した温間等方圧加圧装置1においては、昇温工程、昇圧工程、保持工程、減圧工程、及び再加圧時処理が、温間等方圧加圧装置1に備えられた制御部からの指令により行われる。以下、この制御部で実行される再加圧処理について説明する。
図2には、再加圧処理のフローチャートが示されている。
まず、ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、圧力容器2内の再加圧が必要であるか否かを判断する。このとき、圧力容器2内の圧力は、圧力検出センサ8により検出された圧力値に基づいて判断される。再加圧が必要であると判定されると(S100にてYES)、処理はS101へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この再加圧処理は終了する。
【0023】
S101にて、制御部は増圧機5を稼働させる。S102にて、制御部は高圧配管6内の管内圧力PTを検出する。
S103にて、制御部は、検出された管内圧力PTに基づいて、圧力が上昇したか否かを判定する。圧力が上昇したと判定されると(S103にてYES)、処理はS110へ移される、もしそうでないと(S103にてNO)、処理はS104へ移される。
S104にて、制御部は、増圧機5を一旦停止させ、その上で、閉状態の減圧弁7を短時間(例えば、0.5秒程度)だけ開状態にして、その後、閉状態に戻す。なお、このとき、減圧弁7に圧力回路を介して接続された電磁弁13が、制御部からの電気信号に基づいて作動して、減圧弁7の減圧動作を実現している。さらに、このS104の処理においては、減圧弁7を開状態にしたときの管内圧力PTが1MPa〜3MPa程度低下することを検出したら、閉状態にするように制御される。
【0024】
S105にて、制御部は、増圧機5を再度稼働させた上で、S103の処理と同様にして、検出された管内圧力PTに基づいて、圧力が上昇したか否かを判定する。圧力が上昇したと判定されると(S105にてYES)、処理はS110へ移される、もしそうでないと(S105にてNO)、処理はS106へ移される。
S106にて、制御部は、減圧弁7を作動させて管内圧力PTを低下させる処理を再試行(リトライ)するか否かを判定する。減圧弁7を作動させたトライ回数をカウントしていて、その回数が例えば3回を上回るまではリトライすると判定する。リトライすると判定されると(S106にてYES)、処理はS104へ移される、もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS107へ移される。なお、このリトライ処理は、オペレータが状況を判断し、減圧弁7の操作を適宜数回行うものであってもよい。
【0025】
S107にて、制御部は、異常処理を行なう。例えば、制御部は、図示しない表示部に警告情報を表示する。なお、この異常処理は必須ではない。
S110にて、制御部は、成形処理の所定の圧力である300MPaまで、増圧機5により圧媒体を加圧する。
以上のような処理工程を有する温間等方圧加圧装置1の動作について説明する。なお、以下においては、保持工程において再加圧が必要になった場合のみについて説明する。
圧力容器2内の圧媒体及び被処理材Wが所定の温度に収束する昇温工程が完了した後に昇圧工程に入り、圧力容器2内の圧力が所定の圧力になると、保持工程に入る。この保持工程において、圧力容器2内の圧力が低下して、再加圧が必要であると判定されると(S100にてYES)、増圧機5が稼働される(S101、再加圧ステップ)。
【0026】
その後、圧力検出センサ8により高圧配管6内の圧力が検出され(S102、検知ステップ)、その検出された圧力が上昇していると(S103にてYES)、圧力容器2が所定の圧力になるまで(300MPa)、増圧機5により増圧される(S110)。以上が正常処理である。
一方、増圧機5が稼働されて(S101)、圧力検出センサ8により検出された圧力が上昇していないと(S103にてNO)、高圧配管6内で圧媒体の閉塞状態が発生していると考えられる。この場合には、減圧弁7が作動されて、減圧弁7により高圧配管6内の圧力が例えば1MPa程度低下される(S104、減圧ステップ)。このように、一時的に圧力を低下させると、閉塞状態に陥っている圧媒体を流動化させることができて、稼働を継続している増圧機5の作用により、圧力が上昇する(S105にてYES)。1回の減圧処理により圧媒体による高圧配管6の閉塞状態を解消できると、その後、圧媒体が所定の圧力になるまで(300MPa)、増圧機5により増圧される(S110、第2の再加圧ステップ)。以上が減圧処理である。
【0027】
さらに、減圧弁7が作動されて、減圧弁7により高圧配管6内の圧力を、例えば1MPa程度低下しても閉塞状態に陥っている圧媒体を流動化させることができないと、増圧機5が稼働していても、圧力が上昇しない(S105にてNO)。この場合には、圧媒体による高圧配管6の閉塞状態を解消できていないので、リトライが許可されている限り(S106にてYES)、減圧弁7が作動される(S104)。減圧弁7により高圧配管6内の圧力が例えばさらに1MPa程度低下される。このような減圧動作が、高圧配管6内の圧力が例えば3MPa程度低下されるまで、リトライが許可される。
【0028】
減圧動作を何回かリトライするうちに、閉塞状態に陥っている圧媒体を流動化させることができると、稼働を継続している増圧機5の作用により、圧力が上昇する(S105にてYES)。このように、数回の減圧処理により圧媒体による高圧配管6の閉塞状態を解消できると、その後、圧媒体が所定の圧力になるまで(300MPa)、増圧機5により増圧される(S110)。以上が再減圧処理である。
さらに、減圧弁7が数回(例えば3回)作動されて、減圧弁7により高圧配管6内の圧力を例えば3MPa程度低下しても閉塞状態に陥っている圧媒体を流動化させることができないと、増圧機5が稼働していても、圧力が上昇しない(S105にてNO)。この場合には、圧媒体による高圧配管6の閉塞状態を解消できていないが、リトライも許可されなくなる(S106にてNO)。このような状態でこの温間等方圧加圧装置1を稼働させることは、例えば増圧機5の過負荷を招くことにもなるので、異常処理が行なわれる(S107)。このとき、発生している異常をオペレータに報知するために、図示しない表示部に、この異常を示す情報を表示する。
【0029】
以上のようにして、本実施形態に係るこの温間等方圧加圧装置によると、温度及び圧力を維持する保持工程において圧力が低下したときの再加圧時において、高圧配管を加熱又は保温するヒータを備えることなく、再加圧処理を適切に実行することができる。
[第2実施形態]
図3を参照して、本発明の第2実施形態に係る温間等方圧加圧装置200について説明する。図3は、上述の図1に対応する図である。
本実施形態に係る温間等方圧加圧装置200は、第1実施形態に係る温間等方圧加圧装置1と比較して、高圧配管6に連結された減圧シリンダ20を備える点が異なる。これ以外の構造及びフローチャートは同じであるので、これ以外の説明はここでは繰り返さない。なお、減圧弁7は、被処理材Wへの処理が完了した後の減圧工程で必要であるため、本実施形態に係る温間等方圧加圧装置200も備えている。
【0030】
この減圧シリンダ20は、制御部により制御され、減圧弁7と同様の動作を実現する。すなわち、前述の第1実施形態のS104の処理と同様の、以下の処理が行なわれる。
制御部は、非作動状態の減圧シリンダ20を動作状態にする。詳しくは、制御部からの電気信号に基づいて作動して、減圧シリンダ20のピストンが減圧シリンダ20内へ後退するように移動し、減圧シリンダ20における高圧側シリンダ21内の体積が増えるようにする。すると、減圧シリンダ20に連通する高圧配管6内の圧力が減少するようになる。
【0031】
この処理においては、減圧シリンダ20を動作状態にしたときの管内圧力PTが1MPa〜3MPa程度低下することを検出したら、ピストンの突出移動を止めるようにする。その後、増圧機5を稼働させ、圧力容器2内の圧力を所定値(例えば、300MPa)にする。
以上のように、本実施形態でも、第1実施形態に係る温間等方圧加圧装置と同様に、高圧配管を加熱又は保温するヒータを備えることなく、再加圧処理を適切に実行することができる。
[第3実施形態]
図4を参照して、本発明の第3実施形態に係る温間等方圧加圧装置300について説明する。図4は、上述の図1に対応する図である。
【0032】
本実施形態に係る温間等方圧加圧装置200は、第1実施形態に係る温間等方圧加圧装置1と比較して、高圧配管6に連結された減圧タンク30を備える点が異なる。さらに、高圧配管6と減圧タンク30とを連通状態及び非連通状態のいずれかの状態に切換える制御弁301を備える点が異なる。減圧タンク30は、高圧配管6内の圧力より低い内圧を有する。これ以外の構造及びフローチャートは同じであるので、これ以外の説明はここでは繰り返さない。なお、減圧弁7は、被処理材Wへの処理が完了した後の減圧工程で必要であるため、本実施形態に係る温間等方圧加圧装置300も備えている。
【0033】
制御弁301は、制御部により制御され、減圧弁7と同様の動作を実現する。すなわち、前述の第1実施形態のS104の処理と同様の、以下の処理が行なわれる。
制御部は、非連通状態の制御弁301を短時間(例えば、0.5秒程度)だけ連通状態にして、その後、非連通状態に戻す。なお、このとき、制御弁301は、制御弁301に接続された制御部からの電気信号に基づいて作動して、減圧タンク30の減圧動作を実現している。さらに、この処理においては、制御弁301を連通状態にしたときの管内圧力PTが1MPa〜3MPa程度低下することを検出したら、非連通状態にするように制御される。
【0034】
制御弁301を連通→非連通にした後の管内圧力PTが1MPa〜3MPa程度低下することを検出したら、その後、増圧機5を稼働させ、圧力容器2内の圧力を所定値(例えば、300MPa)にする。
以上のように、本実施形態でも、第1実施形態及び第2実施形態に係る温間等方圧加圧装置と同様に、高圧配管を加熱又は保温するヒータを備えることなく、再加圧処理を適切に実行することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る等方圧加圧装置の全体構成図である。
【図2】再加圧時の増圧処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る等方圧加圧装置の全体構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る等方圧加圧装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 温間静水圧加圧装置(等方圧加圧装置)
2 圧力容器
3 ジャケット加熱ユニット
4 加熱ユニット
5 増圧機
6 高圧配管
7 減圧弁
8 圧力検出センサ
9 胴体
10 上蓋
11 下蓋
12 加熱ジャケット
13 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、該圧力容器内の圧力を増圧する増圧機と、それらの間を連結する配管と、前記配管に設けられた減圧機構とを備えた等方圧加圧装置に用いられる再加圧時の増圧方法であって、
前記圧力容器内の再加圧が必要であると判定された際に、前記増圧機を作動させる再加圧ステップと、
前記再加圧ステップによる圧力容器内の圧力上昇を検出する検知ステップと、
前記検知ステップで圧力上昇が検出できない場合には、前記減圧機構を作動させて、前記配管内の圧力を低下させる減圧ステップと、
前記減圧ステップの後に、前記増圧機を作動させる第2の再加圧ステップを有することを特徴とする再加圧時の増圧方法。
【請求項2】
前記減圧ステップでは、配管内において非流動状態にある圧媒体を流動状態へと遷移させうる圧力低下量を前記配管に付与することを特徴とする請求項1に記載の再加圧時の増圧方法。
【請求項3】
前記等方圧加圧装置は、処理が終了したときに圧媒体を前記圧力容器から排出するための減圧弁を前記配管に備え、
前記減圧機構は前記減圧弁からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の再加圧時の増圧方法。
【請求項4】
前記減圧機構は、前記配管に連通する減圧シリンダであることを特徴とする請求項1又は2に記載の再加圧時の増圧方法。
【請求項5】
前記減圧機構は、前記配管に連通する減圧タンクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の再加圧時の増圧方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate