説明

再生医療用器具の包装体

【課題】
本発明は、再生医療器具を軟化させる際に、当該再生医療器具の汚染を容易に防止することができる再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具の軟化方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、再生医療用器具及び軟化用溶媒を収容した包装体であって、第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備え、前記第1室には再生医療用器具を収容してなり、前記第2室には軟化用溶媒を収容してなる再生医療用器具の包装体、及び当該包装体を使用しての再生医療用器具の軟化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具の軟化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事故及び手術などにより欠損又は切除した組織などに、当該組織の細胞が増殖するための足場を有する器具を埋植し、細胞を当該足場に沿って成長させることにより、機能を回復させる治療法について種々の研究がなされている。これらの研究は、いわゆる再生医療と称される研究である。
【0003】
しかしながら、これら再生医療に用いる器具の開発において、研究者は安易に器具に薬剤及び/又は細胞を組み込むことを考えてしまう。確かに、薬剤及び/又は細胞を器具に組み込めば高い治療効果が望めるが、器具の保存および安全管理の面で医師に余計な負担がかかる。また、医師に薬剤及び/又は細胞の取り扱いの知識が要求されることもある。特に、細胞を組み込んだ器具に至っては、医師に細胞培養の技術を要求することになる。
【0004】
本発明者らは、上述した再生医療の現状を鑑み、細胞を取り扱わない再生医療用器具の開発に鋭意検討を行い、コラーゲン製の再生医療用器具を発明するに至った(特許文献1〜6)。かかる器具は、全て生体分解性材料であるコラーゲンで構成される。しかも、架橋剤などの化学合成物を使用していないために、生体内で安全に分解又は吸収される。さらに、驚くべきことにこれらの器具は、特殊な細胞を組み込むことなく組織が再生することが実証されている。つまり、これらの器具を用いれば、細胞を取り扱う必要がないため、メーカーは安価にこれらの器具を製造することができる。さらに、製造された器具は長期にわたって劣化することがなく、良好に保存することができる。また、医師は、細胞を取り扱う技術を身につける必要がないため、容易にこの器具を用いて治療を行うことができる。
【0005】
ところで、以上に説明した再生医療用器具は、埋植前に生理食塩水などの軟化用溶液で軟化させることにより、器具の取り扱い性を向上させることがある。現在、この作業は別途容器を用意して行なわれている。しかしながら、この容器に再生医療用器具を移す際に、過って当該再生医療用器具を床などに落下させてしまうと、器具が汚染されてしまうおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−320630号公報
【特許文献2】特開2004−073221号公報
【特許文献3】国際公開2005/070340パンフレット
【特許文献4】特開2003−235955号公報
【特許文献5】特開2003−245341号公報
【特許文献6】特開2004−188037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、再生医療器具を軟化させる際に、当該再生医療器具の汚染を容易に防止することができる再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具の軟化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
[1] 再生医療用器具及び軟化用溶媒を収容した包装体であって、
第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備え、
前記第1室には再生医療用器具を収容してなり、
前記第2室には軟化用溶媒を収容してなる再生医療用器具の包装体、
[2] 前記再生医療用器具が、コラーゲンを含む成形体である[1]に記載の再生医療用器具の包装体、
[3] 前記コラーゲンを含む成形体が、コラーゲン糸で構成されてなる成形体である[1]に記載の再生医療用器具の包装体、
[4] 前記第1室が、有底の容器である[1]に記載の再生医療用器具の包装体、
[5] 前記第1室が、ブリスター本体及びイージーピールフィルムにより構成されたものである[4]に記載の再生医療用器具の包装体、
[6] 前記軟化用溶媒が、生理食塩水である[1]に記載の再生医療用器具の包装体、
及び、[7] 第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備え、
前記第1室には再生医療用器具を収容してなり、
前記第2室には軟化用溶媒を収容してなる包装体を用いて再生医療用器具を軟化させる方法であって、
前記弱溶着部を開通させることにより、前記第1室及び第2室を連通させ、前記再生医療用器具を前記軟化用溶媒に浸漬することを特徴とする再生医療用器具の軟化方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の再生医療用器具の包装体及び再生医療用器具の軟化方法によれば、再生医療器具を軟化させる際に、当該再生医療器具の汚染を容易に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、再生医療用器具及び軟化用溶媒を収容した包装体に関する。
【0011】
再生医療用器具とは、組織、器官及び臓器等の生体組織の損傷、切除又は欠損部位に、生体組織の細胞を増殖させるための足場として埋植される器具をいう。通称、スキャフォールドとも称する。再生医療用器具を埋植した後は、当該再生医療用器具は、生体内で分解又は吸収される。同時に、増殖した生体組織の細胞により、当該生体組織の機能が回復する。
【0012】
再生医療用器具は、生体内で分解又は吸収される材料、いわゆる生分解性材料により構成される。そのような材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ε−アミノカプロラクトン、グリコサミノグリカン類、コラーゲン及びキトサンなどが挙げられる。また、これらの材料を混合した材料を使用してもよい。これらの材料の中でも炎症反応が生じることがなく、架橋処理などにより分解吸収を制御できる観点から、少なくともコラーゲンを含む材料が好ましい。また、コラーゲンは、架橋されていてもよい。架橋方法としては、例えば、架橋剤による化学的架橋、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射及び熱脱水架橋などが挙げられる。特に、生体内埋殖後における安全性の観点から、熱脱水架橋が好ましい。
【0013】
コラーゲンを含む材料により構成される再生医療用器具としては、例えば、特許文献1〜3に開示されるような神経、腱又は靭帯を再生するもの、特許文献4及び5に開示されるような膜組織を再生するもの、特許文献6に開示されるような血管を再生するものが挙げられる。これらの再生医療用器具は、コラーゲンを含む成形体、主にコラーゲン糸により構成されてなる成形体である。
【0014】
また、軟化用溶媒とは、上記再生医療用器具を軟化させる溶液をいう。主に生理食塩水が使用されるが、これに限定されるものではない。生理食塩水とは、人の体液とほぼ等張である0.9重量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0015】
本発明の再生医療用器具の包装体は、第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備える。第1室及び第2室は、内容物を収容することができる、いわゆる容器の形状を有するものである。ここで、第1室には再生医療用器具が収容されてなり、第2室には軟化用溶媒が収容されてなる。
【0016】
第1室及び第2室の形状としては、容器様の形状、主に、バッグ形状及び有底の容器の形状が挙げられる。なお、本発明において、有底の容器の態様としては、有底の容器の形状を有するブリスター本体と、当該ブリスター本体の開口を覆うイージーピールフィルムで構成される態様、いわゆるブリスター包装様の態様も含むものとする。
【0017】
以下、本発明を図面を用いて説明する。図1は、本発明の再生医療用器具の包装体の外観図である。図1の再生医療用器具の包装体は、インフレーション成形などにより成形したチューブ状の合成樹脂シートにおいて、両端に開口2辺を強溶着することにより製造されたものである。そして、第1室1及び第2室2は、後述する弱溶着部3により仕切られる。このため、第1室1及び第2室2は、同一の合成樹脂シートにより構成される。尚、バッグ形状は、図1に示す態様のものだけではなく、1枚の合成樹脂シートを折り合わせ、3辺を熱溶着する態様、又は、2枚の合成樹脂シートを重ね合わせ、4辺を熱溶着する態様であってもよい。
【0018】
ここで、強溶着とは、人的な外力により2枚の合成樹脂シートが剥離しない程度の溶着強度を有する溶着をいう。当該溶着強度は、例えば、3年保証する製品の場合、60℃、7週間保存後のT字剥離強度が20N/15mm以上の強度を維持することが好ましい。なお、60℃、7週間保存という条件は、放射線滅菌を施した製品を3年間品質保証する必要がある場合、規格(IAEA:TEC DOC−539(1990))を参考に、60℃×7日間=180日間相当として設定されたものである。
【0019】
合成樹脂シートの材料は、容器様の形状に成形可能な合成樹脂であれば、特に限定されるものではない。そのような合成樹脂としては、主にポリオレフィン系重合体が挙げられる。ポリオレフィン系重合体は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン・ビニルアセテート)コポリマー、ポリ(エチレン・エチルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン・メタアクリレート)コポリマー、ポリプロピレン、低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物、低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物及び環状ポリオレフィン系重合体が挙げられる。
【0020】
図1に示す再生医療用器具の包装体において、上記の列挙した材料の中で好ましいとされる材料は、後述する弱溶着部3を形成するにあたって、別途フィルムを用意する必要がないという利点があることから、低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物及び低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物である。低密度ポリエチレンとポリプロピレンを含有する組成物及び低密度ポリエチレンとポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーを含有する組成物は、本発明の再生医療用器具の包装体としての物理的強度が十分であり、かつ当該組成物自体が後述する弱溶着部3を形成することができる材料である。本発明では、これらの組成物を、便宜上、「弱溶着用組成物」と称する。
【0021】
弱溶着用組成物における、低密度ポリエチレンとポリプロピレン(又はポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマー)の混合方法は、当業者により適宜実施可能であるため、特に限定されるものではない。例えば、その混合方法の一例として、樹脂ペレットをドライブレンドする方法や、2軸押出機を用いて溶融ブレンドする方法が挙げられる。また、弱溶着用組成物における、低密度ポリエチレンとポリプロピレン(又はポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマー)の重量混合比率は、合成樹脂シート同士が溶着した後述の弱溶着部3の溶着強度が、後述する弱溶着の条件を達成できる観点から、80:20〜20:80であり、好ましくは75:25〜25:75であり、より好ましくは70:30〜30:70である。
【0022】
本発明において、上記低密度ポリエチレンとは、密度が0.900〜 0.930のポリエチレンをいう。低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、東ソー製の「ペトロセン(商品名)」、日本ポリエチレン製の「ノバテック(商品名)」、住友化学製の「エクセレン(商品名)」、宇部丸善ポリエチレン製の「UBEポリエチレン(商品名)」、プライムポリマー製の「ミラソン(商品名)」などが挙げられる。
【0023】
一方、本発明において、上記ポリ(プロピレン・α−オレフィン)コポリマーとは、ポリプロピレンと、炭素数2または4〜8のα−オレフィンとの共重合体をいう。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが挙げられる。ポリプロピレンの市販品としては、例えば、日本ポリエチレン製「ノバテックPP(商品名)」、「ウィンテック(商品名)」、住友化学製「エクセレン(商品名)」、サンアロマー製及びプライムポリマー製ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0024】
第1室1の容量は、収容する再生医療用器具Aの占有体積により適宜設定することができるものである。また、第2室2の容量は、軟化用溶媒Bの容量により適宜設定することができるものである。例えば、再生医療用器具Aとして、直径10mm、長手方向の長さが100mmのコラーゲン製の神経を再生するための器具を選択した場合、当該再生医療用器具を軟化させるために要する軟化用溶媒の容量は約5〜10mlである。したがって、第1室1の容量は約10〜50mlであり、第2室の容量は約5〜50mlであることが好ましいが、本発明はこれら容量に限定されるものではない。
【0025】
そして、本発明の再生医療用器具の包装体は、上記第1室1と上記第2室2を仕切る弱溶着部3を備える。本発明において、弱溶着とは、人的な外力により溶着した2枚の合成樹脂シート同士が剥離可能な程度の溶着強度を有する溶着をいう。当該溶着強度は、例えば、3年保証する製品の場合、60℃、7週間保存後のT字開通強度が約0.5〜3N/15mmの強度を維持することが好ましい。なお、60℃、7週間保存という条件は、上記強溶着の定義と同様に、放射線滅菌を施した製品を3年間品質保証する必要がある場合、規格(IAEA:TEC DOC−539(1990))を参考に、60℃×7日間=180日間相当として設定されたものである。
【0026】
ここで、図1に示す再生医療用器具の包装体において、弱溶着部3の形成にあたっては、合成樹脂シートが弱溶着部3形成可能か否かにより、別途弱溶着部形成用フィルムを用意するか否かを判断することができる。例えば、合成樹脂シートの材料として、上記弱溶着用組成物を選択する場合は、当該材料自体が弱溶着部3を形成することができるため、弱溶着部形成用フィルムは不要である。この場合は、直接対向する合成樹脂シート同士を弱溶着することにより、本発明の再生医療用器具の包装体に弱溶着部3を形成することができる。
【0027】
一方、バッグ形状を構成する合成樹脂シートの材料として、上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体を選択する場合は、当該材料自体が弱溶着部3を形成することが容易でないため、別途弱溶着部形成用フィルムを必要とする。この場合は、本発明の再生医療用器具の包装体の製造を容易とする観点から、バッグ形状は、1枚の合成樹脂シートを折り合わせ、3辺を熱溶着する態様、又は、2枚の合成樹脂シートを重ね合わせ、4辺を熱溶着する態様とするべきである。弱溶着部形成用フィルムの材料は、上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体と溶着性が高く、かつ上記弱溶着部3を形成できる材料であれば特に限定されるものではない。この場合、弱溶着部形成用フィルムの材料として、上記弱溶着用組成物を用いる限りにおいては、いずれの上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体であってもよい。
【0028】
図1における再生医療用器具の包装体において、バッグ形状を構成する合成樹脂シートの材料として、上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体を選択する場合、弱溶着部3を形成する具体的な方法としては、例えば、以下の(a)〜(c)の方法がある。これら(a)〜(c)の方法は、概していえば、弱溶着部形成用フィルムを対向した上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体のシートの一方と強溶着し、他方とは弱溶着する方法である。したがって、尚、下記(a)〜(c)の説明においては、上記弱溶着用組成物以外のポリオレフィン系重合体を、単にポリオレフィン系重合体と称することにする。
【0029】
(a) 対向したポリオレフィン系重合体のシートの内、一方のシートの上に、弱溶着部形成用フィルムを強溶着した後、当該弱溶着部形成用フィルムを他方のポリオレフィン系重合体のシートに弱溶着する。この時の弱溶着は、ポリオレフィン系重合体のシートの外側から行う。
(b) 対向したポリオレフィン系重合体のシートの間に、弱溶着部形成用フィルムを挿入し、ポリオレフィン系重合体のシートの外側から溶着する。この時、2つの金型に温度差を設けて、一方の側では強溶着し、他方の側では弱溶着する。
(c) 対向したポリオレフィン系重合体のシートの内、一方のシートの上に、弱溶着部形成用フィルムを弱溶着した後、当該弱溶着部形成用フィルムを他方のポリオレフィン系重合体のシートに強溶着する。この時の強溶着は、ポリオレフィン系重合体のシートの外側から行う。
【0030】
また、第1室1への再生医療用器具Aの収容、及び、第2室2への軟化用溶媒Bの収容は、弱溶着部3を形成した後に実施する。具体的には、図1における再生医療用器具の包装体においては、第1室1及び第2室2の3辺を強溶着及び弱溶着した後、強溶着していない残りの1辺の開口部から、第1室1には再生医療用器具Aを、第2室2は軟化用溶媒Bをそれぞれ収容する。そして、この残りの1辺も強溶着を行うことにより、図1に示す本発明の再生医療用基材の包装体を製造することができるのである。
【0031】
次に本発明の他の実施態様を説明する。図2に示す再生医療用基材の包装体は、図1に示す本発明の再生医療用基材の包装体の変形例である。図2に示す再生医療用基材の包装体における第1室1は、ブリスター包装様の態様である。つまり、図2に示す再生医療用基材の包装体における第1室1は、ブリスター本体ブリスター本体11と、当該ブリスター本体11の開口を覆うイージーピールフィルム12で構成されてなる。一方、第2室2の形状は、バッグ形状である。この態様であれば、イージーピールフィルム12をブリスター本体11から剥離することにより、第1室に収容されてなる再生医療用器具Aの取り出しが容易となる。さらに、再生医療用器具Aの取り出しの際に、第1室1が有底形状を有するため、第1室1に移動した軟化用溶媒Bが漏れることもない。
【0032】
また、図2に示す再生医療用基材の包装体におけるブリスター本体11の材料は、当該ブリスター本体11が形状維持可能である程度の剛性を備えていればよい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。特に、バッグ態様である第2室2の好適な材料である弱溶着用組成物との溶着性がよい観点から、ブリスター本体11の材料は、ポリプロピレンが好ましい。
【0033】
一方、イージーピールフィルム12の材料は、上記ブリスター本体11と溶着可能であり、かつ上記ブリスター本体11からの剥離が容易である材料が選択される。つまり、イージーピールフィルム12の内層(ブリスター本体11と溶着する側)を構成する材料は、ブリスター本体11を構成する材料により、当業者が適宜選択することができる。例えば、ブリスター本体11を構成する材料が、ポリプロピレンである場合、イージーピールフィルム12の内層(ブリスター本体11と溶着する側)を構成する材料としては、未延伸ポリプロピレンが好ましい材料として選択される。
【0034】
また、イージーピールフィルム12の材料は、第2室2を構成する材料とも溶着可能である材料が選択される。バッグ形状である第2室2の好適な材料は、上述したように弱溶着用組成物である。当該弱溶着用組成物は、ブリスター本体11の好適な材料(ポリプロピレン)及びイージーピールフィルム12の内層(ブリスター本体11と溶着する側)を構成する好適な材料(未延伸ポリプロピレン)と溶着可能である。
【0035】
図2に示す再生医療用基材の包装体は、第1室1と、第2室2を別々に製造した後、第1室1と第2室2を組み合わせることにより製造される。このため、第1室1と第2室2を連通する連通部22を設ける。そして、当該連通部分22に弱溶着部3を設ける。ここで、弱溶着部3を開通する作業が、軟化用溶媒Bを収容した第2室2を圧迫して行われるため、当該連通部22は、第2室2の一部として設ける。図3は、図2に示す本発明の包装体におけるX−X’断面図である。図2に示す再生医療用基材の包装体は、図3に示されるように、連通部22は、第1室1におけるブリスター本体11と、イージーピールフィルム12で挟むことにより製造される。このように設計すれば、第2室2を構成する材料により弱溶着部3は形成される。したがって、第2室2を構成する合成樹脂シートの材料は上述した弱溶着形成溶組成物が好適に使用される。もちろん、第2室2を構成する合成樹脂シートの材料として、上記弱溶着形成溶組成物以外のポリオレフィン系重合体を使用する場合は、上記(a)〜(c)の方法を追うようすればよい。
【0036】
より詳細には、例えば、下記の手順で製造することができる。
(i) ブリスター本体11と第2室を構成する合成樹脂シートを強溶着する。この際、図3に示すように、1枚の合成樹脂シートにおける連通部22を形成する部分は、ブリスター本体11の周縁上に配置して強溶着する。
(ii) 他方、イージーピールフィルム12とと第2室を構成するもう1枚の合成樹脂シートを強溶着する。この際、図3に示すように、1枚の合成樹脂シートにおける連通部22を形成する部分は、ブリスター本体11の下側に配置して強溶着する。
(iii) (i)で製造したブリスター本体11−合成樹脂シートと、(ii)で製造したイージーピールフィルム12−合成樹脂シートを重ね合わせる。
(iv) 連通部22を弱シールする。
(v) 重ね合わせた合成樹脂シートの周縁を強溶着する。但し、軟化用溶媒Bを収納するための開口を残した状態にする。
(vi) 開口から軟化用溶媒Bを収納し、当該開口も強溶着する。
(vii) 第1室1のブリスター本体11内に再生医療用器具Aを歳置した後、ブリスター本体11にイージーピールフィルム12間を張り合わせる。
【0037】
尚、上記(i)〜(vii)の工程は、その順番に行わなければならないと解釈してはならない。例えば、工程(i)及び工程(ii)は逆順に実施してもよい。また、例えば、工程(iv)と工程(v)も逆順で実施してもよい。さらに、工程(vii)は、工程(iii)〜(vi)の間のいつでも実施可能である。また、工程(vii)において、再生医療用器具Aは、ブリスター本体11内において固定されていることが望ましい。
【0038】
以上に説明した本発明の再生医療用器具の包装体は、第2室(場合によっては第1室)を圧迫することにより弱溶着部を開通させる。これにより、第1室及び第2室は連通し、第2室に収容されてなる軟化用溶媒は第1室に移動可能となる。その結果、第1室に収容されてなる再生医療用器具は、第1室に移動した軟化用溶媒により軟化されるのである。したがって、再生医療用器具は、常に本発明の包装体の中に存在するため、埋植手術を行う医師は、再生医療用器具を誤って床に落としてしまうという事態を避けることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の再生医療用器具の包装体によれば、再生医療用器具を軟化用溶媒に浸漬する作業の際に、別途に容器を用意する必要がない。したがって、再生医療手術における一連の作業を、衛生的かつ容易に行うことができる。また、再生医療用器具の汚染を容易に防止することができるため、多くの医師が再生医療による治療を導入し易くなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の再生医療用器具の包装体の一実施態様を示す図である。
【図2】本発明の包装体の変形例を示す図である。
【図3】図2に示す本発明の包装体におけるX−X’断面図である
【符号の説明】
【0041】
A 再生医療用器具
B 軟化用溶媒
1 第1室
11 ブリスター本体
12 イージーピールフィルム
2 第2室
22 連通部
3 弱溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生医療用器具及び軟化用溶媒を収容した包装体であって、
第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備え、
前記第1室には再生医療用器具を収容してなり、
前記第2室には軟化用溶媒を収容してなる再生医療用器具の包装体。
【請求項2】
前記再生医療用器具が、コラーゲンを含む成形体である請求項1に記載の再生医療用器具の包装体。
【請求項3】
前記コラーゲンを含む成形体が、コラーゲン糸で構成されてなる成形体である請求項1に記載の再生医療用器具の包装体。
【請求項4】
前記第1室が、有底の容器である請求項1に記載の再生医療用器具の包装体。
【請求項5】
前記第1室が、ブリスター本体及びイージーピールフィルムにより構成されたものである請求項4に記載の再生医療用器具の包装体。
【請求項6】
前記軟化用溶媒が、生理食塩水である請求項1に記載の再生医療用器具の包装体。
【請求項7】
第1室及び第2室と、前記第1室及び第2室を仕切る弱溶着部を備え、
前記第1室には再生医療用器具を収容してなり、
前記第2室には軟化用溶媒を収容してなる包装体を用いて再生医療用器具を軟化させる方法であって、
前記弱溶着部を開通させることにより、前記第1室及び第2室を連通させ、前記再生医療用器具を前記軟化用溶媒に浸漬することを特徴とする再生医療用器具の軟化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−136593(P2009−136593A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317813(P2007−317813)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】