説明

再生可能な資源から作ったポリマーを分散相として含むモノビニル芳香族ポリマー組成物

【課題】モノビニル芳香族ポリマー組成物。
【解決手段】バイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含み、バイオ由来ポリマー分散相が主として10μm以下の径の粒子からなるモノビニル芳香族ポリマー組成物。モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合し、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤が生成するのに効果的な条件下で混合する(第1方法)か、モノビニル芳香族モノマーと、官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合するのに効果的な条件下で混合する(第2方法)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な資源から作ったポリマーを分散相として含むモノビニル芳香族ポリマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常のプラスチック材料は化石(すなわち再生不可能な)資源から製造されており、資源の枯渇の一因であり、人類のための資源はますます少なくなっている。使用済みプラスチック材料をリサイクルしたり、プラスチック廃棄物を熱や電気を作るために焼却炉で燃料として活用することの他に、石油化学由来の従来のプラスチックに再生可能な資源から作られたポリマーを部分的に混和することが望ましい。
【0003】
PLA(ポリ(乳酸))は物理的および機械的特性だけでなく、加工性の点でも最も期待されるポリスチレンの特性に非常に近い特性を有するいわゆるバイオポリマーの一つである。その他のバイオ由来ポリマー、特に生分解性ポリエステル、例えばポリヒドロキシアルカノエート(PHA)も考えられる。
【0004】
特開JP 2005−264086号公報(2005年、9月29日公開)にはPLAを主成分とするポリスチレン(PS)とPLAとの混合物が記載されている。
【0005】
特開JP 2000−017038号公報(2000年、1月18日公開)には生分解性を有する発泡性樹脂が記載されている。この組成物は主としてPLAからなり、25重量%以下のPSを含む。
【0006】
米国特許第7160948号明細書の実施例1には26.3重量%のポリ乳酸と、26.3重量%のポリメチルメタクリレートと、11.6重量%のポリオレフィンと、35.8重量%のメチルメタクリレートとスチレンとのブロックコポリマー(30%のPSを含む)とから成る組成物が記載されている。これは明らかにポリスチレンが組成の主成分ではないことを意味している。
【0007】
特開JP 2005−336666号公報(2005年12月8日公開)には3〜15重量%のシンジオタクチックポリスチレンを含む乳酸繊維が記載されている。
【0008】
国際特許出願第92/04413号公報には10〜25重量%のPLAを含むPLAと汎用ポリスチレンとの混合物が記載されている。この混合物はPLAとPSをコンパウンディングして作られるが、構造の記載はない。相溶化剤および/またはPLAの官能化剤が存在しないためPLAはPSマトリックス中に微細分散せず、従って、機械的特性は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開JP 2005−264086号公報
【特許文献2】特開JP 2000−017038号公報
【特許文献3】米国特許第7160948号明細書
【特許文献4】特開JP 2005−336666号公報
【特許文献5】国際特許出願第92/04413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、再生可能な資源から作られる少なくとも一種のポリマーの微細分散相を含むモノビニル芳香族ポリマー組成物を見出した。再生可能な資源から作られるこのポリマーはポリ(α−ヒドロキシ酸)およびポリヒドロキシアルカノエートの中から選択できる。後者の中ではポリ乳酸(PLA)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート(P3HB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリヒドロキシヘキサノエート(PHH)、ポリヒドロキシオクタノエート(PHO)およびこれらのコポリマーが好ましい。バイオ由来ポリマー分散相としてはPLAを用いるのが最も好ましい。この組成物は下記(1)〜(3)のいずれかによって作ることができる:
(1)官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物をモノビニル芳香族ポリマーと混合する、
(2)官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物の存在下でモノビニル芳香族モノマーを重合する、
(3)バイオ由来ポリマーの存在下、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤を生成するのに有効な条件下でモノビニル芳香族モノマーを重合する。
この組成物は任意成分としてゴムを含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、バイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物であって、上記バイオ由来ポリマー分散相が主として10μm以下の粒径の粒子からなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の最終ポリマー複合材料の透過電子顕微鏡写真。
【図2】実施例3の最終ポリマー複合材料の透過電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一つの有利な実施例のバイオ由来ポリマー分散相の粒径は主として0.1〜4μm、有利には0.1〜3μmである。
本発明の別の有利な実施例のバイオ由来ポリマー分散相の粒径は主として0.1〜2μmである。
本発明のさらに別の有利な実施例のバイオ由来ポリマー分散相の粒径は主として0.1〜1μm、有利には0.1〜0.7μmである。
【0014】
バイオ由来ポリマー粒子はモノビニル芳香族ポリマー介在物(inclusion)を含むことができる。バイオ由来ポリマー粒子自体がモノビニル芳香族ポリマーの少なくとも一種のサブ粒子を含むことができる。
【0015】
初期配合物中に任意成分のゴムが混和されている場合には、ゴム相とバイオ由来ポリマー相とがほぼ球形で特徴付けられる独立粒子として存在し、PS連続相中に分散している。ゴム粒子およびバイオ由来粒子はいずれも少なくとも一種の吸蔵(occluded)ビニル芳香族ポリマーのサブ粒子を含むことができる。ビニル芳香族ポリマーの単一のカプセル化サブ粒子(吸蔵物(occlusions)ともよばれる)を含むゴム粒子およびバイオ由来ポリマー粒子は一般にカプセル粒子または「コア−シェル粒子」とよばれる。少なくとも2種のビニル芳香族吸蔵粒子を含むものはいわゆる「サラミ」形態のタイプである。これらの2種の分散相の形態は、本発明によって得られる生成物中で考えられる全ての分散相で見られる。バイオ由来ポリマーおよび任意成分のゴムの両方のグラフト率に応じて、コア−シェル型、サラミ型、その他の形態のタイプ(例えば、迷路型、オニオン型、ロッド型、液滴型...)を得ることができる。
【0016】
本発明の別の対象は上記のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法にある。
本発明の製造方法(以下、第1方法)では、モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマー(有利には上記のポリヒドロキシ酸およびポリヒドロキシアルカノエートの中から選択されるもの)と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合され、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤が生成するのに効果的な条件下で、混合することを含む。
【0017】
本発明のさらに別のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法(第2方法)では、モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種の官能化バイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化バイオ由来ポリマーとの混合物と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合するのに効果的な条件下で、混合することを含む。
【0018】
本発明のさらに別のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法(第3の方法)では、モノビニル芳香族ポリマーが任意成分のゴムを含み、少なくとも一種の官能化したバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物)と、モノビニル芳香族ポリマーとを、溶融状態で混合することを含む。
【0019】
本発明の第2実施例は、バイオ由来ポリマー分散相と、任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法に関するものである。この製造方法(以下、第2実施例の第1方法)では、モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合し且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤が生成するのに効果的な条件下で混合する。
【0020】
本発明の第2実施例はさらに、バイオ由来ポリマー分散相と、任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法にに関するものである。この製造方法(第2実施例の第2方法)では、モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種の官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合するのに効果的な条件下で混合する。
【0021】
本発明の第2実施例はさらに、バイオ由来ポリマー分散相と、任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法に関する。この製造方法(第2実施例の第3方法)では、モノビニル芳香族ポリマーが任意成分のゴムを含み、少なくとも一種の官能化したバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物)と、モノビニル芳香族ポリマーとを溶融状態で混合する。
【0022】
粒径に関して「主として」とはレーザー粒度分析で測定した粒子の50%以上ということを意味し、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上ということを意味する。
【0023】
モノビニル芳香族ポリマー組成物の重量比率は下記であるのが有利である:
モノビニル芳香族ポリマー:50〜99%
バイオ由来ポリマー:1〜50%
ゴム:0〜35%
(ただし、99〜50%のモノビニル芳香族ポリマーに対してバイオ由来ポリマー+ゴムの比率はそれぞれ1〜50%でなければならない)
【0024】
モノビニル芳香族ポリマー組成物の重量比率は下記であるのが好ましい:
モノビニル芳香族ポリマー:70〜99%
バイオ由来ポリマー:1〜30%
ゴム:0〜25%
(ただし、99〜70%のモノビニル芳香族ポリマーに対してバイオ由来ポリマー+ゴムの比率はそれぞれ1〜30%でなければならない)
【0025】
モノビニル芳香族ポリマー組成物の重量比率は下記であるのがさらに好ましい:
モノビニル芳香族ポリマー:80〜99%
バイオ由来ポリマー:1〜20%
ゴム:0〜15%
(ただし、99〜80%のモノビニル芳香族ポリマーに対してバイオ由来ポリマー+ゴムの比率はそれぞれ1〜20%でなければならない)
【0026】
モノビニル芳香族ポリマー組成物の重量比率は下記であるのがさらに好ましい:
モノビニル芳香族ポリマー:80〜95%
バイオ由来ポリマー:5〜20%
ゴム:0〜15%
(ただし、95〜80%のモノビニル芳香族ポリマーに対してバイオ由来ポリマー+ゴムの比率はそれぞれ5〜20%でなければならない)
【0027】
これらの比率はバイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相を含むモノビニル芳香族ポリマー組成物に関するもので、バイオ由来ポリマー分散相は主として10μm以下の粒径を有する。すなわち、上記の種々の有利且つ好ましい粒径範囲の粒子からなる。これらの比率は本発明の第2実施例に従って作られるバイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物にも適用される。
【0028】
本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物はモノビニル芳香族ポリマー、バイオ由来ポリマーとゴムに加えて、他の添加剤をさらに含むことができる。添加剤の例としては連鎖移動剤、充填剤、例えばタルクまたは任意の無機充填剤有機粘土(有機相溶化剤で湿らせた粘土)、酸化防止剤、紫外線安定化剤、潤滑剤、鉱油、シリコーン油、植物油、PE、PPまたはPTFEワックス、可塑剤、顔料、カーボンブラック、難燃剤等が挙げられる。モノビニル芳香族ポリマーで有用な当業者に周知の任意の添加剤を本発明の範囲で使用できる。
【0029】
モノビニル芳香族モノマーとはビニル官能基を有する任意の芳香族モノマーを意味する。例としてはスチレン、ビニルトルエン、αメチルスチレン、αエチルスチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、3−tert−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンおよびビニルアントラセンが挙げられる。2種以上のモノビニル芳香族モノマーを用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。モノビニル芳香族モノマーの一部をスチレンと共重合可能な不飽和モノマーで置換することができる。不飽和モノマーの例としてはアクリルまたはメタクリル酸のアルキルエステル、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが挙げられる。100〜50重量%のモノビニル芳香族モノマーに対してコモノマーの比率はそれぞれ0〜50重量%にすることができる。本発明の一つの実施例ではモノビニル芳香族ポリマーは下記から成る:
(i)60〜100重量%の一種以上のC8-12モノビニル芳香族モノマー、
(ii)0〜40重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のC1-4アルキルエステルおよびアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルからなる群の中から選択される一種以上のモノマー。
【0030】
バイオ由来ポリマーは再生可能な資源から天然または合成経路によって作られる任意のポリマーにすることができる。例としては再生可能な資源から天然または合成経路によって作られるポリヒドロキシ酸またはポリヒドロキシアルカノエートに属する任意のポリマーとそのコポリマーが挙げられる。これらは酸素原子および/またはカルボニル基のα位にある炭素原子に結合した不安定水素原子を付加単位当たり少なくとも一つ含む。バイオ由来ポリマーの一般式は下記で表すことができる:
【0031】
【化1】

【0032】
バイオ由来ポリマーはポリ(乳酸)およびポリヒドロキシブチレートの中から選択するのが好ましい。最も好ましいバイオ由来ポリマーはPLAである。高分子量(>100,000)のPLAを用いるのが有利である。高分子量(>100,000)PLAはラクチドの開環重合によって製造される市販のバイオ由来ポリマーである。ラクチドは乳酸の熱二量化生成物であり、乳酸自体は純粋な天然炭素基質(グルコース、サッカロース、ラクトース...)または不純な天然炭素基質(デンプン、糖蜜、乳清...)の発酵で製造される。PLAの一般式は下記の通り:
【0033】
【化2】

【0034】
D,L−またはL,L−ポリ(乳酸)はいずれも本発明で使用できる。
【0035】
ゴムの例としてはEPR(エチレン−プロピレンゴムまたはエチレン−プロピレンエラストマー)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエンエラストマー)、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、イソプレン−アクリロニトリルコポリマー、SBR(スチレンブタジエンゴム)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)またはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS)の中間ブロックが水素化されたスチレンブロックコポリマー、および、スチレンブロックを有する任意のコポリマーが挙げられる。特に、スチレンブロックを有するコポリマーはスチレンブロックとブタジエンまたはイソプレンまたはブタジエン/イソプレン混合物からなるブロックとを有するコポリマーであるのが有利である。これらのブロックコポリマーは水素化および/または官能化された直鎖ブロックコポリマーまたは星形ブロックコポリマーにすることができる。これらのコポリマーは下記非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】ウルマン(ULLMANN)化学工業百科辞典、第5版(1995)、第A26巻、655〜659頁
【0036】
これらのポリマーはトタルペトロケミカルス(Total Petrochemicals)社からFinaclear(登録商標)の商標名で、バスフ(BASF)社からStyrolux(登録商標)の商標名で、クラトン(Kraton)社からKraton(登録商標)の商標名で、シェブロン フィリップ化学(Chevron Philips Chemical)社からK-Resin(登録商標)の商標名で市販されている。
【0037】
ゴムは例えば下記の群の中から選択できる:
(a)C4-6共役ジオレフィンのコポリマーおよびホモポリマー、
(b)60〜85重量%の一種以上のC4-6共役ジオレフィンと、15〜40重量%のアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルからなる群の中から選択されるモノマーとを含むコポリマー、
(c)C1-4アルキル基で置換されたまたは置換されていない20〜60重量%、好ましくは40〜50重量%の一種以上のC8-12ビニル芳香族モノマーと、60〜40重量%、好ましくは60〜50重量%のC4-6共役ジオレフィンからなる群の中から選択される一種以上のモノマーとを含むコポリマー。
これらのゴムは種々の方法、好ましくは乳化重合または溶液重合で製造できる。これらのプロセスは当業者に周知である。2種以上のゴムを用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0038】
本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物は再生可能な資源から作られる材料が混和されているので、汎用モノビニル芳香族ポリマー(例えばGPPS)または耐衝撃性モノビニル芳香族ポリマー(例えばHiPS)の「環境に優しい代替物」として有用である。本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物は発泡成形、押出成形、熱成形または射出成形でGPPS、HiPSまたはABSで一般に作られるものと同様の物品を形成することができる。特に、本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物は食品包装材料または使い捨て商品の製造で広く使用でき、使用後に燃やして熱または電気を生成することができる。この場合、材料の一部が植物由来の資源から作られ、その栽培中に大気からCO2が捕捉されるので温室効果ガス収支は一般的なスチレンポリマーに比べてより有利である。
【0039】
本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物を製造する第1方法では、モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合し、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤が系中(インシチュー、in situ)で生成するのに効果的な条件下で混合する。この方法は塊重合、溶液重合または水性分散体中での重合で実施できる。初めにバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)を重合可能なモノマーに溶解し、次いで、この溶液を必要に応じてラジカル開始剤の存在下で重合する。本発明の方法は希釈した塊重合プロセスとして実施するのが有利である。希釈塊重合を用いる場合には用いるモノビニル芳香族モノマーに対して出発材料溶液を約20重量%以下の不活性溶剤と混合して重合のバルク粘度を下げ、重合熱を抑え、熱交換および塊中の熱的均一性を改善することができる。適切な希釈液としては芳香族溶剤、例えばエチルベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンおよび脂肪族炭化水素溶剤、例えばドデカンおよびこれらの混合物が挙げられる。希釈液を上記溶剤の混合物、またはこれらの溶剤の一種と本発明の目的で用いられるビニル芳香族モノマーとの混合物で構成することもできる。後者の場合、希釈液は一般に再生溶剤および未反応ビニル芳香族モノマーからなり、「リサイクル品」とよばれる。本発明のプロセスでは重合中の塊の熱的均一性を改善するのに有用で、モノビニル芳香族モノマーの重合後に除去可能で、且つモノビニル芳香族モノマーと任意成分のコモノマーとの重合を妨げない任意の溶媒を使用することができる。
【0040】
ポリマー分子量およびバイオ由来ポリマーおよび任意成分のゴム粒子の粒径を制御するために適切な連鎖移動剤、例えばメルカプタンまたはαメチルスチレン二量体を添加することもできる。
【0041】
バイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)はモノビニル芳香族モノマー中に「溶解」する(実際にはゴムはモノマーで無限に膨張する)。最初にモノビニル芳香族モノマーからモノビニル芳香族ポリマーがモノビニル芳香族モノマーで調製した均一なバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)溶液中で形成される。重合開始時には反応溶液はバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)/モノビニル芳香族モノマーの反転(inversion)点、すなわち、反応する溶液がバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)/モノビニル芳香族モノマーマトリックス中のモノビニル芳香族ポリマー粒子から、モノビニル芳香族ポリマーマトリックス中のバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)粒子になる反転点より前の点にある。換言すれば、モノビニル芳香族ポリマー相の体積分率がバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)相の体積分率にほぼ等しくなったときに相反転が生じ、モノビニル芳香族モノマー/モノビニル芳香族ポリマー相が連続相となり、バイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)相が不連続相になる。
【0042】
ゴムがない場合は、モノビニル芳香族モノマーがバイオ由来ポリマー粒子の周りおよび内部で重合し、バイオ由来ポリマー粒子中にモノビニル芳香族ポリマーの介在物ができる。
バイオ由来ポリマー高分子中には活性ラジカル(できれば開始剤由来の活性ラジカル)の存在下で容易に引き抜かれる不安定な水素原子が存在するので、モノビニル芳香族モノマーの一部はバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーとゴム)にグラフト重合する。バイオ由来ポリマー高分子から水素原子が引き抜かれるとバイオ由来ポリマー−グラフト化−モノビニル芳香族コポリマーが系中(インシチュー)で生成する。このコポリマーはモノビニル芳香族モノマーの連続相中のモノビニル芳香族ポリマー中に分散したモノビニル芳香族モノマー相中のバイオ由来ポリマーの乳化剤の役目をする。このバイオ由来ポリマー−グラフト化−モノビニル芳香族コポリマーはバイオ由来ポリマーおよびモノビニル芳香族ポリマーの相溶化剤である。
【0043】
上記プロセスによって従来のHiPS(耐衝撃性ポリスチレン)プロセスで得られるゴム相の形態とほぼ同じ形態のバイオ由来ポリマー分散相ができ、バイオ由来ポリマーのグラフト化率に応じてバイオ由来ポリマーの形態はサラミ状粒子またはカプセル(コア−シェル)粒子に成る。バイオ由来ポリマーのグラフト化率は適切な開始剤またはグラフト促進剤、例えば有機過酸化物〔例えば1,1−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−アミルぺルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、OO−t−アミル−0−(2−エチルベキシルモノぺルオキシ−カーボネート)、OO−t−ブチル O−イソプロピル モノぺルオキシ−カーボネート、OO−t−ブチル−0−(2−エチルヘキシル)モノぺルオキシ−カーボネート、ブチル4,4−ジ(t−ブチルぺルオキシ)バレレート、エチル 3,3−ジ−(t−ブチルぺルオキシ)ブチレートおよびこれらの混合物)、ヒドロペルオキシド、一重項酸素(12)またはアミン錯化ボラン(上記過酸化物と組み合せることができる)を重合塊中に導入することによって容易に調節できる。グラフト促進剤の量は一般に0〜1000ppm範囲内である。
【0044】
ゴムが存在する場合には、バイオ由来ポリマーの大部分は分散粒子の二次母集団を生成する。分散したこのバイオ由来ポリマー粒子は少なくとも一種の吸蔵PSサブ粒子を封入し、従来のHiPSプロセスで一般的に見られる粒子内部形態、例えばサラミ型、カプセル型、迷路型、ロッド型または液滴型の形態を示す。
【0045】
この場合には本発明の組成物を回分式で製造するか、一連の連続槽型反応器および/またはプラグ流反応器で連続的に製造することができる。相反転が起こる反応器を「反転反応器」とよぶ。反転明反応器の下流の反応器でもビニル芳香族モノマー重合を続けることができる。すなわち、従来のフラッシ液化法または真空押出法を用いて本発明組成物を脱気するのに十分な高い固体含有率(一般に60〜90重量%)が得られるまで続ける。これによってバイオ由来ポリマーの一部を含むスチレン複合材料が得られる。
【0046】
本発明のモノビニル芳香族ポリマー組成物を製造する第2方法は(1)モノビニル芳香族モノマーと、(2)官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物と、(3)任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部を重合すまのに効果的な条件下で、混合する工程を含む。
第1方法との主たる相違点は官能化したバイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物を使用する点で、その他の条件は同じである。過酸化物のようなラジカル開始剤の使用は任意である。上記の官能化したバイオ由来ポリマーは任意の改質バイオ由来ポリマーであり、この改質バイオ由来ポリマーをモノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部を重合させるのに効果的な条件下でモノビニル芳香族モノマーと接触させて「バイオ由来ポリマー−グラフト化−モノビニル芳香族コポリマー」を系内(インシチュー)で製造する。上記の改質バイオ由来ポリマーを「バイオ由来ポリマーマクロ開始剤」とよぶこともできる。これはモノビニル芳香族モノマーと混合する前に調製する。例えば、上記の官能化バイオ由来ポリマー例はバイオ由来ポリマーを下記(i)〜(v)と反応させて調製することができ:
(i)官能化アルコキシアミン
(ii)官能化コモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、ビニルアルコール、ホスホン酸ビニル、塩化メタクリロイル、無水マレイン酸等
(iii)官能化連鎖移動剤
(iv)官能化有機開始剤(例えば、アゾ開始剤Akzo V50)
(v)熱分解中に水素引抜くラジカルと安定なニトロキシルフリーラジカルとを発生する有機過酸化物との適当な溶剤中の混合物。
【0047】
上記官能化アルコキシアミン(i)は少なくとも下記を有する分子である:
(a)バイオ由来ポリマーのアルコールおよび/またはカルボキシル酸末端基と容易に反応可能な一つの化学官能基、
(b)約60℃以上に加熱したときに、分解して活性ラジカル基と安定なニトロキシル基とを発生するアルコキシアミン官能基。いわゆる活性ラジカルがスチレンモノマーの重合を開始できる。
【0048】
下記は適したアルコキシアミンの例である:
【化3】

【0049】
上記(2)のアルケマ(Arkema)社から市販のブロックブュイルダー(BlocBuilder、登録商標)シリーズのアルコキシアミンを使用してバイオ由来ポリマーを上記マクロ開始剤に化学変換するのが有利である。
【0050】
上記の官能化連鎖移動剤(iii)は少なくとも下記を有する分子である:
(a)バイオ由来ポリマーのアルコールおよび/またはカルボキシル酸末端基と容易に反応可能な一つの化学官能基、
(b)スチレン重合中に(マクロ)ラジカルでラジカル連鎖移動反応を実施できる官能基。
適切な連鎖移動剤の例はメルカプト−エタノール、メルカプト−酢酸、メルカプト−塩酸エチルアミン等である。
【0051】
上記(v)のプロセスは活性ラジカルの存在下で容易に引抜くことができる不安定な水素原子がバイオ由来ポリマーのマクロ分子中に存在することを利用する(PLAの実例モデルとして示した下記反応方法(2)を参照)。
【0052】
【化4】

結果的に生じるバイオ由来ポリマーマクロラジカルはニトロキシルカウンターラジカルによって捕捉され、熱によって活性化できる寝た(dormant)バイオ由来ポリマーマクロ開始剤を形成する。
【0053】
いずれの場合でも、結果として生じる官能化したバイオ由来ポリマー鎖は少なくとも一つのラジカル活性官能基を有する。ラジカル活性官能基は所定温度以上および/またはラジカルの存在下で一つまたは複数の反応性ラジカルを発生できる反応基である。以下の実施例ではラジカル活性官能基はアルコキシアミン基であり、バイオ由来ポリマーはPLAである:
【化5】

【0054】
バイオ由来ポリマーの分散相が反応器中で系内(インシチュー)で形成され、モノビニル芳香族ポリマー−ブロック−バイオ由来ポリマー(−ブロック−モノビニル芳香族ポリマー)として安定化される。
【0055】
バイオ由来ポリマーと主としてポリ(アルキルメタクリレート)またはポリ(アルキルアクリレート)からなる少なくとも一種のブロックおよび主としてモノビニル芳香族ポリマーからなる少なくとも一種のブロックを有するブロックコポリマーとの混合物で官能化したバイオ由来ポリマーの全部または一部を置換しても本発明の範囲を逸脱するものではない。アルキルメタクリレートの例はメチルメタクリレートであり、アルキルアクリレートの例はメチルアクリレートである。ポリスチレンブロックとPMMA(ポリメチルメタクリレート)ブロックとを有するコポリマーの例は下記特許文献6,7に記載されている。これら特許の内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献6】米国特許第5264527号明細書
【特許文献7】欧州特許第1085029号公報
【0056】
ポリスチレンブロックと、ポリブタジエンブロックと、PMMAブロックとを有するコポリマーの例は下記特許文献8に記載されている。この特許の内容は本明細書の一部を成す。
【特許文献8】米国特許第7144952号
【0057】
モノビニル芳香族ポリマー組成物を製造する第3方法ではモノビニル芳香族ポリマーが任意成分のゴムを含み、官能化バイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物)とモノビニル芳香族ポリマーとを溶融状態で混合する。スチレンおよび過酸化物グラフト促進剤を任意成分として導入できる。
バイオ由来ポリマーの分散相が反応押出機中または他の適切な任意の溶融混合装置中でインシチューで形成され、モノビニル芳香族ポリマー−ブロック−バイオ由来ポリマー(−ブロック−モノビニル芳香族ポリマー)として安定化される。
【0058】
本発明の第2実施例では上記の全てのプロセス条件すなわちモノビニル芳香族モノマー、ゴム、添加剤、バイオ由来ポリマー、モノビニル芳香族ポリマーの比率、バイオ由来ポリマーの比率、ゴムの比率、官能化したバイオ由来ポリマーおよび操作条件を使用することができる。
【実施例】
【0059】
実施例1
スチレンラジカル重合前に別のプロセスで調製したPLA−グラフト化−PS相溶化剤の存在下で製造したPS−PLA「反応器ブレンド」
150μmolの過酸化ベンゾイル(BPO 75重量%市販溶液−0.050g)と、86μmol(0.044g)の安定なニトロキシルフリーラジカルのプロスタブ(Prostab)5415(チバ(Ciba Specialities)社の製品)とをジクロロエタン(400g)で調製した20重量%PLA(ユニチカ(Unitika)社の製品テラマック(TERRAMAC、登録商標)TE-4000 50g)溶液中に添加する。次いで、この溶液を80℃で3時間加熱し、激しい撹拌下に維持する。得られたポリマーはニトロキシル官能化PLA鎖の一部を含む。これを室温で真空下にメタノール中で沈殿させ、ろ過、乾燥する。この部分改質したPLAの70g(10重量%)をスチレン(602g、86重量%)およびエチレンベンゼン(28g、4重量%)中に80℃で3時間溶解した。溶解完了後、スチレンとEB中に調製したPLA溶液を1.5リットルの連続撹拌回分反応器へ移した。次いで、イソドデカン中に調製した0.530g(500ppm)の75重量%イソプロピルぺルオキシカーボネート溶液を添加し、溶液温度を125℃に上げ、スチレンを重合させた。固体含有率が60重量%に達したときにポリマー溶液をアルミナパネルに注入し、150℃で3時間、さらに180℃で2時間オーブンで加熱し、重合を続けた。最終的に得られたポリマー複合材料に対してレーザー粒度分析および透過電子顕微鏡解析を行った。この複合材料はPAマトリックス中に1.1μm(D50表面)のPLAカプセル粒子が分散したものから成る([図1]参照)。[図1]で白色粒子(カプセル)がPLA中にある。その一部はポリスチレンのインクルージョン(介在物)(灰色)を含む。
【0060】
実施例2
スチレンラジカル重合中にインシチューで形成されたPLA−グラフト化−PS相溶化剤を用いたPS−PLA「反応器混合物」
1100gのPLA(ユニチカ(Unitika)社の製品テラマック(TERRAMAC、登録商標)TE-4000)を100℃で4時間予備乾燥した後、9460gのスチレンモノマーと440gのエチルベンゼンとを入れた20リットルの回分反応器中で激しい撹拌下に90℃で2時間溶解した。溶解完了後、イソドデカン中で調製した8.25g(750ppm)の75重量%イソプロピルぺルオキシカーボネート溶液を注入し、溶液全体を65重量%の固体含有率に達するまで120℃で重合した。次いで、反応塊をフラッシュ液化装置中で230℃かつ43トールで予熱し、脱気した。最後に得られたポリマー複合材料を押出し、ペレット化した。レーザー粒度分析および透過電子顕微鏡解析からこのPS−PLA複合材料は0.4μmのカプセル状PLA粒子がPS中に分散したものから成ることが分かった。レオロジー特性および機械特性は[表1]に示してある。
【表1】

【0061】
得られたPS−PLAポリマー複合材料は同じメルトフローインデックスを有する市販の汎用PSとほぼ同じ特性を示したが、透明性は例外で、上記複合材料は不透明であった。
【化6】

【0062】
実施例3
スチレンラジカル重合中にインシチューで形成したPLA−グラフト化−PS相溶化剤およびポリブタジエン−グラフト化−PS相溶化剤の両方を用いたHiPS−PLA「反応器混合物」
35g(5重量%)の予備乾燥した市販のPLA(ユニチカ(Unitika)社の製品テラマック(TERRAMAC、登録商標)TE-4000)を、スチレン(42gのポリブタジエンを563.5gの市販スチレンモノマーに溶解したもの)およびエチルベンゼン(42g、6重量%)中で調製した6重量%ポリブタジエンゴム(ランエックス(Lanxess)社から供給されたCB 528 T 低シスゴム)溶液中に80℃で3時間溶解した。溶解完了後、スチレンおよびEBで調製したPLA溶液を1.5リットルの連続撹拌回分反応器に移した。次いで、イソドデカン中で調製した0.140g(200ppm)の75重量%イソプロピルぺルオキシカーボネート溶液と、0.470g(670ppm)のイルガノックス(Irganox)1076酸化防止剤(ちば(Ciba Specialities)社)を添加し、溶液温度を125℃に上げ、スチレンを重合させた。固体含有率が50重量%に達したときにポリマー溶液をアルミナパネルに注入し、150℃で3時間、180℃で2時間、オーブンで加熱して重合を続けた。最終的に得られたポリマー複合材料に対してレーザー粒度分析および透過電子顕微鏡(TEM)解析を行なった。この複合材料はPSマトリックス中に1.3μm(D50表面)ポリブタジエンとPLA粒子とが分散したものから成る。TEM解析によってゴムおよびPLAの分散相はいずれもいわゆるサラミ形態で特徴付けられる粒子からなることがわかった([図2]参照)。
【0063】
TEM写真(ゴム着色にOsO4を用いた)
(深い)暗色: ポリブタジエンゴム
灰色: ポリスチレン、マトリックス
白色: PLA、PLAは一つまたは複数のPS介在物を含む。
白色でも黒色でもない他の粒子が存在する。これらの粒子はポリブタジエンゴムから成り、PS介在物で完全に充填されたサラミ型粒子である。このPS介在物は灰色のマトリックスよりも明るい灰色である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ由来ポリマー分散相と任意成分としてのゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物において、上記バイオ由来ポリマー分散相が主として10μm以下の粒径の粒子からなることを特徴とする組成物。
【請求項2】
バイオ由来ポリマー分散相の粒径が主として0.1〜4μmである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バイオ由来ポリマー分散相の粒径が主として0.1〜2μmである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
バイオ由来ポリマー分散相の粒径が主として0.1〜1μmである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
バイオ由来ポリマー分散相の粒径が主として0.1〜0.7μmである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
モノビニル芳香族ポリマー組成物が下記重量比率を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物:
モノビニル芳香族ポリマー:50〜99%
バイオ由来ポリマー:1〜50%
ゴム:0〜35%
(ただし、99〜50重量%のモノビニル芳香族ポリマーに対してバイオ由来ポリマー+ゴムの比率はそれぞれ1〜50%でなければならない)
【請求項7】
モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部を重合させ、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤を生成するのに効果的な条件下で、混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法。
【請求項8】
モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種の官能化バイオ由来ポリマーまたはバイオ由来ポリマーと官能化したバイオ由来ポリマーとの混合物と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部を重合するに効果的な条件下で、混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法。
【請求項9】
官能化したバイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーと官能化バイオ由来ポリマーとの混合物)と、モノビニル芳香族ポリマーとを溶融状態で混合することを特徴とする、モノビニル芳香族ポリマーが任意成分のゴムを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法。
【請求項10】
モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部が重合し、且つバイオ由来ポリマーとモノビニル芳香族ポリマーとの相溶化剤を生成させるのに効果的な条件下で、混合することを特徴とするバイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマーの組成物の製造方法。
【請求項11】
モノビニル芳香族モノマーと、少なくとも一種の官能化バイオ由来ポリマーまたは少なくとも一種のバイオ由来ポリマーと官能化バイオ由来ポリマーとの混合物と、任意成分のゴムとを、モノビニル芳香族モノマーの少なくとも一部を重合させるのに効果的な条件下で、混合することを特徴とするバイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法。
【請求項12】
少なくとも一種の官能化バイオ由来ポリマー(またはバイオ由来ポリマーと官能化バイオ由来ポリマーとの混合物)と、モノビニル芳香族ポリマーとを溶融状態で混合することを特徴とする、モノビニル芳香族ポリマーが任意成分のゴムを含む、バイオ由来ポリマー分散相と任意成分のゴム分散相とを含むモノビニル芳香族ポリマー組成物の製造方法。
【請求項13】
バイオ由来ポリマーがポリヒドロキシ酸およびポリヒドロキシアルカノエートの中から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載のモノビニル芳香族ポリマー組成物。
【請求項14】
バイオ由来ポリマーがポリ(乳酸)、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシヘキサノエートまたはポリヒドロキシオクタノエートである請求項13に記載のモノビニル芳香族ポリマー組成物。
【請求項15】
バイオ由来ポリマーがポリヒドロキシ酸およびポリヒドロキシアルカノエートの中から選択される請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
バイオ由来ポリマーがポリ(乳酸)、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシヘキサノエートまたはポリヒドロキシオクタノエートである請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2010−523732(P2010−523732A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500222(P2010−500222)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053281
【国際公開番号】WO2008/119668
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(305041979)トタル ペトロケミカルス フランス (6)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL PETROCHEMICALS FRANCE
【Fターム(参考)】