説明

再生器を有するガスタービンプラントシステム及びその運転方法

【課題】本発明の目的は、起動時に再生器の熱応力を緩和する、再生器を有するガスタービンシステム及びその運転方法を提供することにある。
【解決手段】空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機と、該圧縮空気をガスタービン排ガスにより加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気と燃料とを混合燃焼し高温ガスを生成する燃焼器と、該高温ガスにより動力を得るタービンとを備えたガスタービンプラントシステムであって、
該再生器上流側で、該ガスタービン排ガスに、該ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流する系統を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンシステム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの排ガス出口に再生器を備えたガスタービンシステムに関し、特許文献1には、圧縮機出口空気にガスタービン排気で加熱した温水を混合し、再生器にて加熱した高湿分空気を燃焼用空気として用いる技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−098156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンでは、起動時に燃焼器を着火する際、急激に燃焼器出口のガス温度が上昇することにより、ガスタービン出口ガス温度も上昇する。ガスタービン排ガス温度が上昇するとガスタービン下流の再生器入口ガス温度も上昇するとになる。つまり、燃焼器着火により再生器入口ガス温度が上昇し、再生器は加熱され温度上昇する。再生器が温度上昇するときに、再生器内部で温度差が生じ熱応力が発生する。この起動時に生じる再生器の熱応力により、再生器の寿命が低下することなる。起動時に再生器へ流入する排ガスの温度を低減し、再生器の熱応力を緩和するための系統構成が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、起動時に再生器の熱応力を緩和する、再生器を有するガスタービンシステム及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
圧縮空気をガスタービン排ガスにより加熱する再生器を備えたガスタービンプラントシステムで、再生器上流側で、該ガスタービン排ガスに、該ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流する系統を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、起動時に再生器の熱応力を緩和する、再生器を有するガスタービンシステム及びその運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の再生器を有するガスタービンシステムの実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に再生器を有するガスタービンシステムの実施例1を示す。図3、図4に実施例2、実施例3を示す。
【0009】
〔実施例1〕図1のガスタービンシステムに示すように、ガスタービン設備1は、空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機2と、圧縮空気2をガスタービン排ガスにより加熱する再生器5と、再生器5からの加熱空気と燃料とを混合燃焼し高温ガス(燃焼ガス)を生成する燃焼器3と、高温ガスにより動力を得るタービン4とを備えたガスタービンプラントシステムである。
【0010】
圧縮機2に大気6の空気が供給され、圧縮機2では吸い込み所定の圧力まで圧縮し圧縮空気を生成する。この圧縮された空気7は圧縮機出口から抽気して再生器5に供給される。
【0011】
再生器5には圧縮機2からの圧縮空気(空気7)が供給され、高温の燃焼用空気を生成する。再生器5では、タービン4からの高温の排ガス8と圧縮機2からの圧縮空気(空気7)とを熱交換する。圧縮空気(空気7)が熱交換され、高温の空気9が生成される。この空気9は燃焼用空気として燃焼器3に供給される。
【0012】
燃焼器3には、燃焼用空気として空気9が供給され、燃料10が供給される。燃焼器3では、燃焼用空気と燃料10と混合して燃焼させ、高温ガスである燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスをタービン4に供給する。
【0013】
タービン4にて燃焼器3からの高温ガスにより動力を生成する。タービン4で生成した動力は、圧縮機2を駆動し、発電機11を駆動する。発電機11の駆動により電気を得る。また、再生器5から排出される排ガス12は排気塔13から大気に放出される。
【0014】
本実施例1では、起動時における、ガスタービン排ガス8の温度変化による再生器への影響を少なくするため、再生器の熱応力緩和手段を設けている。つまり、再生器上流側で、ガスタービン排ガスに、ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流する系統を設けている。この系統を設けることでシステム起動時の再生器の熱応力を緩和することが可能となる。
【0015】
本実施例1では、再生器の熱応力緩和手段として、再生器上流のガスタービン排ガスに圧縮機吐出空気を合流する系統を設けている。すなわち、圧縮機2の途中から圧縮空気20を抽気して、再生器上流側で圧縮機吐出空気を弁21を介してガスタービン排ガス8に合流する系統を設けている。この系統により再生器上流側で圧縮機吐出空気とガスタービン排ガス8と合流することができ、ガスタービン排ガス8が急激に温度上昇しても、合流する圧縮機吐出空気によって、容易にその温度上昇の程度が緩和される。また、この系統には、合流させる圧縮機吐出空気の流量調整、供給開始、供給停止等が可能な弁21を設けている。この供給調整手段である弁21により、適切な時期に圧縮機吐出空気等を合流することができる。更に、適切な流量を供給することが可能となる。
【0016】
次に、ガスタービン排ガス8の起動時の急激な温度上昇の緩和現象につき、緩和しない場合と比較し説明する。図2に起動時における再生器5入口の排ガス温度特性を示す。横軸を時間(時間経過)、縦軸を再生器入口の排ガスの温度としており、ケース1及びケース2の二つのケースを比較している。ケース1は、再生器の熱応力緩和手段有せず、圧縮機2の途中から圧縮空気20を抽気しない場合である。ケース2は、再生器の熱応力緩和手段を設けたもので、圧縮機2の途中から圧縮空気20を抽気して、弁21を介してガスタービン排ガス8に、圧縮空気20を合流させている場合である。
【0017】
ケース1では、時刻Tcにて燃焼器3を着火した時点(起動)から、再生器入口排ガス温度が急激に上昇している。その後、温度は一旦減少し、緩やかに上昇し定格に至る。このような起動時の急激な温度変化は前述したように再生器に過大な熱応力を与え寿命等に影響する。
【0018】
一方、ケース2では、着火(時刻Tc)前の時刻Tv1から所望の時期である時刻Tv2の間、弁21を開として圧縮機抽気空気2を排ガス8に合流させている。時刻Tv2は、例えば、温度変化が落ち着き、定格に向けて緩やかに温度上昇し始める時期が望ましい。このことにより、着火後においても再生器入口ガス温度の急激な上昇を抑制することができる。よって、ケース2の方は再生器5に生じる熱応力が低減され再生器5の寿命が延びてガスタービンの信頼性も向上する。通常圧縮機では起動時に安定して作動させるために、圧縮途中の空気を放風する処置がとられる。この放風した空気を排ガスに合流させることも考えられる。また、再生器5に供給するガスタービン排ガスの急激な温度変化は、起動後に顕著であるため、ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流させる期間は、起動前から、起動後の所望の時期までが望ましい。この時期に流体を合流することで、ガスタービン排ガスの急激な温度変化を緩和することが出来る。つまり、ガスタービン起動前から所望の時期まで、再生器上流のガスタービン排ガスに、ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流させることで、再生器に発生する熱応力を低減することができる。
【0019】
以上のように本実施例によれば、燃焼器着火により再生器に流入する排ガスの急激な温度上昇を抑制することができるので、再生器に発生する熱応力を低減することができ、再生器の寿命を延ばすことができる。これによりガスタービンの信頼性が向上するだけでなく、定期点検や部品交換の期間も延長することができるのでランニングコストも低減できる利点がある。
【0020】
〔実施例2〕図3に再生器を有するガスタービンシステムの実施例2を示す。図3では、圧縮機2の出口空気7を抽気して排ガス8に合流させている。圧縮機2の出口空気7の排ガス8への合流により、再生器5に流入する排ガスの急激な温度上昇を抑制することができるので、再生器に発生する熱応力を低減することができ、再生器の寿命を延ばすことができる。また、圧縮機出口空気7の配管から分岐することにより、配管を他の部分と共通化することができ追加配管が少なく、改良が容易で簡易な構造でコスト軽減できる。また、実施例1に比べて、供給する圧縮空気の圧力が高いので配管サイズを小さくすることもできる。
【0021】
〔実施例3〕図4に再生器を有するガスタービンシステムの実施例3を示す。図4では、送風機32にて大気空気31を排ガス8に合流させている。大気空気31を排ガス8に合流することで、再生器5に流入する排ガスの急激な温度上昇を抑制することができるので、再生器に発生する熱応力を低減することができ、再生器の寿命を延ばすことができる。大気空気31と排ガス8に合流させるか否かは切り替え装置33にて調整することが可能である。大気空気31は圧縮機からの空気よりも温度が低いので、再生器入口温度をより効果的に調整することが可能となる。
【0022】
以上のように本実施例によれば、燃焼器着火により、再生器に流入する排ガスの急激な温度上昇を抑制することができるので、再生器に発生する熱応力を低減することができ、再生器の寿命を延ばすことができる。これによりガスタービンの信頼性が向上するだけでなく、定期点検や部品交換の期間も延長することができるのでランニングコストも低減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の再生器を有するガスタービンシステムの構成図を示す。
【図2】ガスタービン排ガス温度特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の再生器を有するガスタービンシステムの構成図を示す。
【図4】本発明の実施例3の再生器を有するガスタービンシステムの構成図を示す。
【符号の説明】
【0024】
1…ガスタービン設備、2…圧縮機、3…燃焼器、4…タービン、5…再生器、6…大気、7…空気、8…排ガス、9…空気、10…燃料、11…発電機、12…排ガス、13…排気塔、20…圧縮空気、21…弁、31…大気空気、32…送風機。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機と、該圧縮空気をガスタービン排ガスにより加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気と燃料とを混合燃焼し高温ガスを生成する燃焼器と、該高温ガスにより動力を得るタービンとを備えたガスタービンプラントシステムであって、
該再生器上流側で、該ガスタービン排ガスに、該ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流する系統を設けることを特徴とするガスタービンプラントシステム。
【請求項2】
空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機と、該圧縮空気をガスタービン排ガスにより加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気と燃料とを混合燃焼し高温ガスを生成する燃焼器と、該高温ガスにより駆動し動力を得るタービンを有するガスタービンとを備えており、
該圧縮機での圧縮途中の空気を抽気して、該再生器上流のガスタービン排ガスに圧縮機抽気空気を合流する系統を有することを特徴とするガスタービンプラントシステム。
【請求項3】
空気を圧縮する圧縮機と、圧縮空気をガスタービン排ガスで加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気を燃焼用空気として用い高温ガスを生成する燃焼器と、該高温ガスにより駆動し動力を得るタービンを有するガスタービンとを備えており、
該再生器上流のガスタービン排ガスに圧縮機吐出空気を合流する系統を有することを特徴とするガスタービンプラントシステム。
【請求項4】
空気を圧縮する圧縮機と、圧縮空気をガスタービン排ガスで加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気を燃焼用空気として用い高温ガスを生成する燃焼器と、高温ガスにより駆動し動力を得るタービンとを有するガスタービンを備えており、
該再生器上流のガスタービン排ガスに大気空気を合流する系統を有することを特徴とするガスタービンプラントシステム。
【請求項5】
空気を圧縮し圧縮空気を生成する圧縮機と、該圧縮空気をガスタービン排ガスにより加熱する再生器と、該再生器からの加熱空気と燃料とを混合燃焼し高温ガスを生成する燃焼器と、該高温ガスにより動力を得るタービンとを備えたガスタービンプラントシステムの運用方法において、
ガスタービン起動前から所望の時期まで、該再生器上流のガスタービン排ガスに、該ガスタービン排ガスの温度変化を緩和する流体を合流させることを特徴とするガスタービンプラントシステムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−57414(P2008−57414A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234851(P2006−234851)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)