説明

再生樹脂の製造方法、および成形材料の製造方法

【課題】 ウレタン分解物を用いて再生樹脂を製造するに際に、ウレタン樹脂分解物の反応によって発生する水分を効率的に除去することによって大量のウレタン樹脂分解物から再生樹脂を製造できる方法を実現する。
【解決手段】 ウレタン樹脂を化学的に分解した樹脂分解物と、カルボキシル基を2つ以上有する化合物か、カルボキシル基を一つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物とを反応させて樹脂組成物を得る工程において、樹脂組成物の樹脂厚を10cm以下に制御して、気体と接触させながら混合反応させる工程を有する方法で再生樹脂を容易に製造することができる。また、前記混合物に平均粒子径10mm以下の混練補助材を添加して溶融混練することにより同様の効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂のリサイクル技術に関し、詳しくは、ウレタン樹脂分解物を用いた再生樹脂の製造方法及び、この再生樹脂を用いた成形材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は、例えば、冷蔵庫の断熱材、建材、クッション材などとして広く用いられている。近年、これらの廃棄物のリサイクルに対する要望が高まり、それぞれの分野においてこれらの廃棄物の再利用が研究されている。しかし、ウレタン樹脂は3次元の網目構造を有する熱硬化性樹脂であるためにリサイクルが困難であり、現状では埋め立てや焼却などの処分がされている。
【0003】
ウレタン樹脂を化学的に分解する方法は、古くから様々な報告がされている。例えば、下記特許文献1には、アルカノールアミンなどのアミン化合物でポリウレタンフォームを分解し、その後分解物を分離回収する方法が記載されており、このようにして得られた分解物を再利用する方法も各種知られている。例えば、下記特許文献2には、分解剤としてポリオール及びアミノエタノールを用いてポリウレタンフォームを分解し、接着助剤として再生する方法が記載されている。また下記特許文献3ではウレタンの原料に混ぜて再生する方法も提案されている。
【0004】
ところで、このような再生樹脂においては、分解液中に存在する芳香族アミンが再生樹脂の有効利用を阻害する要因となっている。すなわち、これらの物質はウレタンやエポキシ樹脂の触媒として働くために、再生樹脂の反応の制御が難しい。そこで、これらの物質を削減するために、例えば下記特許文献4ではウレタン分解物にアルキレンオキサイドを、また下記特許文献5ではウレタン分解液にイソシアナートを反応させ、芳香族アミンを減少させる方法が記載されている。しかし、前者は特殊引火物に指定されている物質であり、また後者は芳香族アミンよりも毒性の強い物質で一部は特定化学物質に指定されているため、いずれも装置に特殊な設計が必要となってしまい、再生樹脂を簡便に取り扱うための障害となっている。
【0005】
【特許文献1】特公昭42−10634号公報
【特許文献2】特開平6−184513号公報
【特許文献3】特開平10−152578号公報
【特許文献4】特許3242723号
【特許文献5】特開平11−158320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、現状のウレタンの分解再生には様々な問題があり、ウレタンのリサイクルは非常に困難なものであった。
本発明者らは、従来知られているエポキシ樹脂やイソシアネートとの反応で樹脂を再生するのではなく、マレイン酸等のジカルボン酸でウレタン樹脂分解物を硬化させ、新しい樹脂の作成方法を開発している。ところで、この新規な樹脂組成物は、製造過程で水分が発生するため製造が難しく、例えばフラスコのようなバッチ式で大量に反応させると、発泡して取り扱いが困難である。このため、この樹脂組成物を実用化するためには、樹脂の水分を効率よく除去しながら樹脂を反応させる方法を開発することが急務であった。
【0007】
本発明は、このようなウレタンの分解物を用いた再生樹脂の製造における上記問題に鑑みてなされたものであり、ウレタン分解物とジカルボン酸等との反応で得られる新規樹脂の大量生産に適した製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、発明者らは、鋭意研究した結果、この方法によって、ウレタン分解物を用いた新規樹脂を製造する工程において、樹脂の水分を効率よく除去しながら樹脂を反応させる方法を発見し、本発明に至ったのである。

【0009】
本発明の一態様によれば、ウレタン樹脂を化学的に分解した樹脂分解物と、カルボキシル基を2つ以上有する化合物及び/又は、カルボキシル基を一つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物とを反応させて樹脂組成物を得る工程において、10cm以下の樹脂厚で気体と接しながら混合反応させる工程を有することを特徴とする再生樹脂の製造方法である。
【0010】
また、本発明の他の様態によれば、ウレタン樹脂を化学的に分解した樹脂分解物と、カルボキシル基を2つ以上有する化合物及び/又は、カルボキシル基を1つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物を反応させて樹脂組成物を得る工程において、平均粒子径10mm以下の混練補助材と共に溶融混練する工程を有することを特徴とする再生樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工業的に大量のウレタンを再生する技術が提供され、ウレタン樹脂分解物を用いた新規樹脂の製造ができ、ウレタン樹脂のリサイクルを促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ウレタン樹脂を公知の分解剤を用いて分解する際、分解剤によっても差があるが、アミン類とポリオールを主成分とした分解物が生成する。従来のリサイクル方法では、これらの官能基を利用して樹脂を再生していたが、分解の時に発生するアミン類がエポキシ基やイソシアネート基と反応する際の触媒として働くため、再生を困難にしていた。本発明では、ウレタン樹脂分解物にカルボキシル基を2つ以上有する化合物か、カルボキシル基を1つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物からなる架橋剤と反応させ、新規再生樹脂を製造するのである。この時に、反応中に水が発生するため、これを取り除くために、10cm以下の樹脂厚で気体と接しながら混合反応させるか、平均粒子径10mm以下の混練補助材と共に溶融混練させて、樹脂の水分を効率よく除去しながら樹脂を反応させるのである。
【0013】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
【0014】
(ウレタン樹脂、分解剤及び分解装置)
被分解物であるウレタン樹脂としては、ウレタン結合、尿素結合などを持つウレタン樹脂であれば如何なるものでも良い。その例として、硬質ウレタン樹脂、軟質ウレタン樹脂、半硬質ウレタン樹脂、ウレタンゴム、ウレタン樹脂オリゴマーなどが挙げられる。この中でも、分解時に多くのアミンを発生する硬質ウレタン樹脂に本発明を適用すると最も好ましい効果を期待することができる。原料ポリオールの水酸基価が250mgKOH/g以上のものをここでは硬質ウレタンと定義する。またイソシアヌレート結合を持つイソシアヌレート樹脂も含み、ウレタン樹脂と同様に適用できる。それらの用途として例えば、冷蔵庫や建材などの断熱材などが挙げられる。
【0015】
ウレタン樹脂を化学的に分解する方法としては、分解剤を用いた化学的分解法、加水分解法、熱分解法等があり、本発明の適用に関しては分解時にアミノ基(−NH)または水酸基(−OH)が生成する方法であれば、いずれの分解方法を経た樹脂分解物であってもよい。化学的分解法以外の分解方法では処理速度が遅かったり安定した品質が得られなかったりすることから、化学的分解方法が最も有利である。
【0016】
化学的分解法で用いられる分解剤としては、アミン類、ポリオール類、エステル類、有機酸、酸無水物、イソシアネート、エポキシ樹脂、高温高圧水(超臨界水)などが挙げられ、この中でも反応性の早いアミン類、ポリオール類を用いた分解剤が好ましい。その使用形態としては、例えば、アミン化合物単独、ポリオール化合物またはポリオールの金属アルコラート単独、アミン化合物とポリオール化合物またはポリオールの金属アルコラートとの混合、などが挙げられる。この中でも、特にアミン類の単独分解が好ましい。用いられるアミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロパンジアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、n−アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N−メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾールがあげられる。ポリオール化合物の例として挙げると、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0017】
また必要に応じて、これらの化合物に添加剤を加えてもよい。添加剤の例としては、水,アルコールなどの希釈剤や、無機粒子や有機粒子などの充填材など、これら化合物の反応を極端に阻害しないものであれば添加することができる。
【0018】
また、分解温度は80〜300℃が好ましく、さらに好ましくは200〜280℃が好ましい。これより温度が低いと分解反応が遅くなり工業的に不適であり、これより温度が高いと熱分解が多くなり反応の制御が難しい。
【0019】
分解装置及び処理装置としては、公知のいかなる分解装置を用いてもよい。特に好ましい装置としては、加熱・混合・圧縮が同時にできる装置を用いることが望ましい。例えば、図1に示すような押出機1を用いて分解処理を行うと、処理を連続的に効率よく行うことができる。押出機1は、温度制御可能なヒータを備えたシリンダ部3、シリンダ部3の内壁に内接する回転制御可能なスクリュー5、シリンダ部3の一端に設けられる投入口7、シリンダ部3の他端に設けられる排出口9、及び、投入口7と排出口9との間に設けられる供給口11を有する。シリンダ部3のヒータは、シリンダ部3の温度が局部的に異なるように設定可能で、例えば、供給口11の前後で加熱温度を変化させることができる。シリンダ部3の温度をウレタン樹脂の分解温度に設定し、スクリュー5の回転によって押出機の投入物が投入口7から供給口11迄進行する時間がウレタン樹脂の分解に要する時間に合うようにスクリュー5の回転速度を設定して、ウレタン樹脂及び分解剤を投入口7から投入すると、ウレタン樹脂の分解が始まり、排出口9の方向へ移動する。最終的にウレタン樹脂は液状となって排出口9から排出される。
【0020】
(架橋剤、及び架橋剤との反応装置、反応条件)
前述のようにして得られたウレタン樹脂分解液に、架橋剤を反応させ樹脂原料を得る。架橋剤としては、カルボキシル基を2つ以上有する化合物か、カルボキシル基を1つと不飽和炭素結合(炭素二重結合、炭素三重結合)を1つ以上有する化合物を反応させる。その例としては、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタルサン、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、ニトロフタル酸、マロン酸、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノスベリン酸、1,12−ドデカン2酸、ハイミック酸、ヘット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
【0021】
これらの架橋剤は、二種類以上を混合して使用しても良い。この中でも不飽和炭素結合を有する化合物が、反応が早いため好ましく、その中でも特に無水マレイン酸が好ましい。
【0022】
これら架橋剤の添加量は、ウレタン樹脂分解物100重量部に対し、20〜300重量部添加する。より好ましくは、分解物中に存在するアミノ基と水酸基(以下、官能基)1当量に対し、0.5〜1.5当量の処理剤を加えるのが良い。更に好ましくは、0.75〜1.2当量が良い。当量の計算方法は、JIS K 1557の水酸基価を用いる。この測定方法では、無水フタル酸との反応当量を計算しているため、水酸基とアミノ基の合計当量を計算できる。官能基1モルあたりの分子量は、分子量=1000/(水酸基価/56.11)で求められる。(但し、ここでの56.11は水酸化カルシウムの分子量である)
【0023】
本発明において、このウレタン樹脂分解物と前記架橋剤の混合物の反応手段として、以下の2通りの方法がある。
第1の方法は、反応時の樹脂厚さを10cm以下の状態で気体と接触させながら反応させる方法である。この反応時の樹脂厚さはより好ましくは、5cm以下、さらに好ましくは3cm以下が良い。これよりも厚みがある場合は、反応によって生成する水分を十分に除去できず、樹脂の発泡などの現象を起こしてしまうため好ましくない。また接する気体は、空気や不活性ガスで、水蒸気と共に系外へ排出されるものである。その反応装置としては、一軸押出機、二軸押出機、モノポンプなどに代表される、スクリュー構造を有する装置や、ロールなどの表面積が大きい装置を使うのが良い。前者のスクリューを有する装置は、気体と接触している樹脂の厚さを測定することが困難であるので、スクリュー溝の深さを樹脂の厚さと見なすことができる。
【0024】
この方法を採用する場合、ウレタン樹脂を分解する装置とウレタン樹脂分解物と架橋剤とを反応させる装置として、異なる装置を用いることもできるし、同一の装置を用いることもできる。例えば図1に示すような押し出し機のみを用いて分解から反応までを行う場合には、例えば、図1に示す押出機を使用し、ウレタン樹脂を投入口7〜供給口11で分解した後に、供給口11から架橋剤を添加して、1つの押出機で全工程を終えてしまうことも可能である。
【0025】
また二つ目の方法として、ウレタン樹脂分解物と架橋剤を反応させる際に、混練補助材と共に練る事により、より効率よく樹脂を反応させる方法である。混練補助材としては、平均粒子径10mm以下であり、反応に直接関与しないもので、しかも水分を通しやすい材料が望ましい。ここで言う混練補助材の体積は、これより平均粒子径が大きいと、十分に混練されない恐れがあるため好ましくない。しかしながら、押出機等の装置として、粉体を粉砕する能力がある装置を用いる場合には、混練装置の入り口において、混練補助材が上記平均粒径の範囲にある必要はなく、装置出口で前記範囲に入っていれば構わない。これらの混練補助材を添加することにより、反応によって発生する水分がその混練補助材の界面を沿って蒸発しやすいことから、脱水効果が向上し、樹脂組成物から発生する水分の影響を受けることなく樹脂組成物の製造を行うことができる。
【0026】
この混練補助材の材料としては、特に限定されないが、例えば、シリカやアルミナに代表される無機粒子、ABSゴムなどに代表される有機粒子、木紛などに代表される木質バイオマスが挙げられる。ゴムチップや、廃熱可塑性樹脂、廃コンクリート片などの廃材も利用できる。この中でも、吸湿性に優れた木質バイオマスが特に好ましい。この例としては、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど水酸基を持つ高分子を含んでいるものであり、具体的には材木の製材屑、流木材、剪定材、間伐材、建築廃材などの木材チップ、紙などのパルプ製品の廃棄物、トウモロコシの茎、籾殻、雑草、牧草、砂糖きび廃材などの草本系物等が挙げられる。これらの混練補助材は、反応後に除去しても構わないが、反応補助材ごとプレス成形し、成形体を製造することも可能である。成形体にする場合には、通常ヘンシェルミキサーなどで混合するよりも樹脂の分散が良くなり、より良い成形体を製造することができる。
【0027】
ウレタン樹脂分解物と架橋剤とを反応させる温度は、室温〜200℃以下で行うのが好ましく、さらに好ましくは120〜180℃で行うのが好ましい。200℃以上で行うと、樹脂の反応が早すぎて、装置内で固まってしまう恐れがあるため好ましくない。また、室温で固形の分解剤を使用する場合には、その融点以上で行うのが良い。装置の滞留時間、つまり樹脂の反応時間は、使用する分解物と架橋剤にもよるが、装置温度における樹脂のゲルタイム以下で、かつ15分以下が良い。これ以上長いと、処理量が遅くなるので工業的に好ましくない。さらに好ましい処理条件としては、装置温度におけるゲルタイムの20〜90%の時間で行うのがよい。本発明の樹脂系では、反応の初期に多くの水が発生するため、ゲルタイムの20%より短い時間で反応させると、発泡が起こってしまい作業性が悪化するので避けた方が良い。また、90%を超えるような時間では、ゲルタイムまでの時間が短く、冷却などの手段を必要としてしまう。
この工程における反応は、ウレタン樹脂分解物と架橋剤との反応が完全に完了する前に反応を停止することが好ましい。反応を完全に完了してしまうと、その後の成形等の処理が困難となり、その用途が制限されてしまう。
【0028】
上記方法によって製造された再生樹脂原料は、必要によって混練補助材を取り除いた後、接着剤、塗料、成形材料の原料として使用できる。また、混練補助材をそのまま利用する方法としては、これら押出し機から得られた樹脂組成物を、プレス成形して所望の形状に成型して用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0030】
なお、以下の実施例において用いているウレタン樹脂は以下のものである。
[ウレタン樹脂A]
冷蔵庫の断熱材に用いられているウレタン樹脂。原料のポリオールの水酸基価450mgKOH/g、イソシアネートの%NCO=31.4。
【0031】
[ウレタン樹脂B]
水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール、TDIを主原料とする軟質ウレタン樹脂。
【0032】
[ウレタン樹脂C]
水酸基価280mgKOH/gのポリオール(PEG#400)、MDIを主原料とするウレタン樹脂。
【0033】
[イソシアヌレート樹脂]
建材の廃材として出たウレタン変性イソシアヌレート樹脂。少量のコンクリート片、プラスチック片を含む。
【0034】
(実施例1)
図1に概略を示す装置(芝浦機械(株)製、軸径65φ)を用いて、ウレタン樹脂Aを分解剤にジエタノールアミン(以下、DEA)を用いて分解した。シリンダ部3を250℃に加熱し、投入口7からウレタン樹脂3重量部に対しDEA1重量部を一緒に装置内に連続投入した。排出口9から茶色の粘調な液体が得られた。JIS K 1557で水酸基価を測定したところ約630mgKOH/gであり、無水マレイン酸との等量は、分解物/無水マレイン酸=100/110であった。(以下、この分解物を、ウレタン分解物A1とする)
【0035】
このウレタン分解物A1と無水マレイン酸を同重量混合し、180℃の熱板上でゲルタイムを測定したところ、約5分であった。(ゲルタイムは、樹脂が糸を引かなくなる時間とした)。そこで、ウレタン樹脂分解物A1を100重量部に対し100重量部の無水マレイン酸を添加し、180℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、軸径37φ)に投入した。スクリューの溝は最大10mm程度であり、投入量を最大フィード量の30%程度に押さえているため、最大10mmの樹脂厚で常に樹脂の混連中に空気と接することができる。また装置の滞留時間を、ゲルタイムの50%に当る2分30秒に設定した。押出機の出口からは、茶色の透明性のある液体が得られ、冷えると固形であった。(以下、処理物A1とする)得られた樹脂を180℃の熱板上で加熱すると、約2分のゲルタイムを示した。
【0036】
(実施例2〜6)
二軸押出し機の滞留時間を、ゲルタイムの10%(実施例2)、20%(実施例3)、75%(実施例4)、90%(実施例5)、95%(実施例6)と変化させたこと以外は、実施例1と同様に再生樹脂を製造した。実施例1と共にまとめたものを表1に示す。表1の結果から明らかなように、ゲルタイムの20〜90%で無水マレイン酸の量を分解物と等量で反応させたときが、優れた性状の処理物が得られることが判明した。ゲルタイムの20%未満の滞留時間では、反応が完全に進行していないと思われる現象が確認でき、再加熱した際に発泡してしまうことが確認された。90%を超える滞留時間では、余熱で反応が進むため、押田機出口において冷却しないと、樹脂組成物は硬化してしまうことがわかった。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例7)
内径30cmのオイルで加熱のできる万能混合機中に、実施例1で得たウレタン分解物3キロを入れ、150℃に予熱した。ここに、溶融したと無水マレイン酸3キロを投入攪拌した。この時の、樹脂厚は約7cmであった。150℃でのゲル化時間20分の50%にあたる10分間反応させたところ、粘性のある茶色の透明感のある樹脂を得た。また反応途中に多少発泡が見られたが、混合によりスムーズに水分を取り除くことができた。
【0039】
(実施例8)
実施例7と同様に、万能混合機中でウレタン分解物1キロと無水マレイン酸1キロを溶融混合した。この時の樹脂の厚みは約3cmであった。10分間反応の後、粘性のある茶色の透明感のある樹脂を得た。また、実施例7と比べ、ほとんど発泡が見られなかったため、作業性がよかった。
【0040】
(比較例1)
実施例7と同様にウレタン分解物6キロと無水マレイン酸6キロを万能混合機に投入した。この時の樹脂厚は約13cmであった。反応途中で発泡が激しくなり、作業を続けることができなかった。
【0041】
(実施例9)
図1に概略を示す装置(芝浦機械(株)製、軸径65φ)を用いて、ウレタン樹脂Aを分解剤にジエタノールアミン(以下、DEA)を用いて分解した。シリンダ部3を250℃に加熱し、投入口7からウレタン樹脂9重量部に対しDEA1重量部を一緒に装置内に連続投入した。排出口9から茶色の粘調な液体が得られた。JIS K 1557で水酸基価を測定したところ約360mgKOH/gであり、無水マレイン酸との等量は、分解物/無水マレイン酸=100/63であった。(以下、この分解物を、ウレタン分解物A2とする)
【0042】
このウレタン分解物A2と無水マレイン酸を100/70(重量比)で混合し、150℃の熱板上でゲルタイムを測定したところ、約7分であった。(ゲルタイムは、樹脂が糸を引かなくなる時間とした)そこで、ウレタン樹脂分解物A2を100重量部に対し70重量部の無水マレイン酸と混練補助材500重量部の木紛(杉の大鋸屑、平均粒子径3mm)を添加し、150℃に加熱した一軸押出機(軸径15φ)に投入した。装置の滞留時間を、ゲルタイムの50%に当る3分30秒に設定した。押出機の出口からは、木紛と良く混合された成形材料が得られた。この得られた成形材料を、150℃のプレスで15分間加圧成形したところ、ウレタン樹脂分解物を用いたリサイクルボードが得られた。JIS K 6911に準じて曲げ強度を測定したところ、約40MPaの強度を示した。
【0043】
(実施例10〜14)
混練補助材の量を、50重量部(実施例10)、100重量部(実施例11)、2000重量部(実施例12)、10000重量部(実施例13)、20000重量部(実施例14)と変化させたことを除けば、実施例9と同様に一軸押出機に投入して樹脂を反応させた。実施例9と共に表2にまとめる。混練補助材の量が100重量部〜10000重量部では、押出機での反応に問題なくリサイクルボードも高い物性を示したが、10000重量部を越える範囲ではボードがもろくなってしまいあまり良いものができなかった。また、100重量部未満では、装置内に一部の樹脂が残存してしまう現象が見られた。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例15〜18、比較例2,3)
実施例7とマレイン酸の量を変えたこと以外は同じにして、一軸押出機で混練し、プレス成形してリサイクルボードを作成した。マレイン酸の量は、20重量部(実施例15),50重量部(実施例16),100重量部(実施例17),300重量部(実施例18)とした。また、マレイン酸が極端に多い/少ない例として、10重量部(比較例2)、500重量部(比較例3)も作成した。それぞれの結果を表3にまとめる。いずれの混合条件においても、押出機での処理は問題なく行うことができた。しかし分解物100重量部に対し、マレイン酸が20〜300重量部の混合量では良好なリサイクルボードができたのに対し、マレイン酸20重量部未満と300重量部を超える範囲では十分に硬化することができず、リサイクルボードを作成することができなかった。
【0046】
【表3】

【0047】
(実施例19)
図1に概略を示す装置(芝浦機械(株)製、軸径65φ)を用いて、ウレタン樹脂Bを分解剤にジエタノールアミン(以下、DEA)を用いて分解した。シリンダ部3を250℃に加熱し、投入口7からウレタン樹脂10重量部に対しDEA1重量部を一緒に装置内に連続投入した。排出口9からクリーム状の粘調な液体が得られた。JIS K 1557で水酸基価を測定したところ約210mgKOH/gであり、無水マレイン酸との等量は、分解物/無水マレイン酸=100/38であった。
【0048】
このウレタン分解物と無水マレイン酸を100/40(重量比)で混合し、180℃の熱板上でゲルタイムを測定したところ、約7分であった。(ゲルタイムは、樹脂が糸を引かなくなる時間とした)そこで、ウレタン樹脂分解物を100重量部に対し40重量部の無水マレイン酸を添加し、180℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、軸径37φ)に投入した。装置の滞留時間を、ゲルタイムの50%に当る3分30秒に設定した。押出機の出口からは、茶色の透明性のある液体が得られ、冷えると固形であった。得られた樹脂を180℃の熱板上で加熱すると、約3分のゲルタイムを示した。
【0049】
(実施例20)
図1に概略を示す装置(芝浦機械(株)製、軸径65φ)を用いて、ウレタン樹脂Cを分解剤にジエタノールアミン(以下、DEA)を用いて分解した。シリンダ部3を250℃に加熱し、投入口7からウレタン樹脂5重量部に対しDEA1重量部を一緒に装置内に連続投入した。排出口9からクリーム状の粘調な液体が得られた。JIS K 1557で水酸基価を測定したところ約496mgKOH/gであり、無水マレイン酸との等量は、分解物/無水マレイン酸=100/87であった。
【0050】
このウレタン分解物と無水マレイン酸を100/90(重量比)で混合し、180℃の熱板上でゲルタイムを測定したところ、約6分であった。(ゲルタイムは、樹脂が糸を引かなくなる時間とした)そこで、ウレタン樹脂分解物を100重量部に対し90重量部の無水マレイン酸を添加し、180℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、軸径37φ)に投入した。装置の滞留時間を、ゲルタイムの50%に当る3分に設定した。押出機の出口からは、茶色の透明性のある液体が得られ、冷えると固形であった。得られた樹脂を180℃の熱板上で加熱すると、約3分のゲルタイムを示した。
【0051】
(実施例21)
図1に概略を示す装置(芝浦機械(株)製、軸径65φ)を用いて、ヌレート樹脂を分解剤にジエタノールアミン(以下、DEA)を用いて分解した。シリンダ部3を250℃に加熱し、投入口7からウレタン樹脂10重量部に対しDEA1重量部を一緒に装置内に連続投入した。排出口9から茶色不透明の粘調な液体が得られた。JIS K 1557で水酸基価を測定したところ約550mgKOH/gであり、無水マレイン酸との等量は、分解物/無水マレイン酸=100/96であった。
【0052】
このウレタン分解物と無水マレイン酸を100/100(重量比)で混合し、180℃の熱板上でゲルタイムを測定したところ、約8分であった。(ゲルタイムは、樹脂が糸を引かなくなる時間とした)そこで、ウレタン樹脂分解物を100重量部に対し100重量部の無水マレイン酸を添加し、180℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、軸径37φ)に投入した。装置の滞留時間を、ゲルタイムの50%に当る4分に設定した。押出機の出口からは、茶色の透明性のある液体が得られ、冷えると固形であった。得られた樹脂を180℃の熱板上で加熱すると、約3分のゲルタイムを示した。
【0053】
(実施例22)
実施例1で得られたウレタン分解物A1を100重量部に対し、粉砕した無水マレイン酸100重量部と、シリカ粒子(平均粒子径12マイクロメートル)200重量部を混合し、150℃のロールで混合した。混練時間は、ゲルタイムの約50%にあたる15分とした。混合後、シリカが分散した樹脂が得られ、加熱成形したところウレタン分解物を用いた成形体ができた。
【0054】
(実施例23)
実施例1で得られた処理物A1を100重量部に対し、シクロヘキサノン100重量部を添加し、よく溶解させた。この溶解液を、ガラスの板上に薄く塗布し、150℃の乾燥機で一晩硬化させたところ、茶色の樹脂と膜を得た。
【0055】
(実施例24)
実施例1で得た処理物A1を20重量部とスチレン6重量部、ジクミルパーオキシド0.1重量部をN−メチル−2−ピロリドン20重量部と混合した後、ガラス板状に塗布した。150℃のオーブンで一晩加熱したところ、茶色の樹脂塗膜を得た。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るウレタン樹脂の処理方法を実施する処理装置の一実施形態を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0057】
1…押出機
3…シリンダ部
5…スクリュ
7…投入口
9…排出口
11…供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物と、カルボキシル基を2つ以上有する化合物及び/又は、カルボキシル基を1つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物からなる架橋剤とを反応させて再生樹脂を製造する方法であって、
前記ウレタン樹脂分解物と架橋剤とを溶融混練する工程において、樹脂の厚さを10cm以下とし、気体と接触させながら溶融混練することを特徴とする再生樹脂の製造方法。
【請求項2】
ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物と、カルボキシル基を2つ以上有する化合物及び/又は、カルボキシル基を1つと不飽和炭素結合1つ以上を有する化合物からなる架橋剤とを反応させて再生樹脂を製造する方法であって、
前記ウレタン樹脂分解物と、前記架橋剤と、平均粒子径が10mm以下の混練補助材とを混合し、これらの混合物を溶融混練する工程を有することを特徴とする再生樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記溶融混練工程の混練時間は、その温度における前記再生樹脂のゲルタイムの20〜90%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記混練補助材は、木質バイオマスであることを特徴とする請求項2に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項5】
ウレタン樹脂分解物100重量部に対し、架橋剤20〜300重量部、混練補助材100〜10000重量部を混合し、加熱反応させることを特徴とする成形材料の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−96783(P2006−96783A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280944(P2004−280944)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】