説明

再生水素化処理用触媒の製造方法及び石油製品の製造方法

【課題】 十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならないような再生処理条件によって、使用済みの水素化処理用触媒から安定して高い活性を有する再生水素化処理用触媒を製造することが可能な、再生水素化処理用触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】 留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒を用意する第1の工程と、第1の工程で用意した触媒の一部について再生処理を行った後、再生処理後の触媒についてX線微細構造分析を行い、広域X線吸収微細構造スペクトルから得られる動径分布曲線において、金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iと金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iとの比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理条件を求める第2の工程と、第1の工程で用意した触媒の他部について、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件で再生処理を行う第3の工程と、を備える再生水素化処理用触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生水素化処理用触媒の製造方法及び石油製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油には含硫黄化合物、含窒素化合物、含酸素化合物等が不純物として含まれ、原油を分留して得られる各留出石油留分中にもこれら不純物が含まれる。これら留出石油留分中の前記不純物は、水素の存在下に水素化活性を有する触媒に接触せしめる水素化処理と呼ばれる工程により、その含有量を低減することが行われている。特に含硫黄化合物の含有量を低減する脱硫がよく知られている。最近は環境負荷低減の観点から、石油製品中の含硫黄化合物をはじめとする前記不純物の含有量に対する規制、低減の要求が一層厳しくなっており、所謂「サルファー・フリー」と呼ばれる石油製品が多く生産されている。
【0003】
前記留出石油留分の水素化処理に使用する水素化処理用触媒は、一定の期間使用されるとコークや硫黄分の沈着等により活性が低下することから、交換が行われる。特に上記「サルファー・フリー」が求められるようになり、灯油、軽油、減圧軽油といった留分の水素化処理設備において、高い水素化処理能力が求められている。その結果、触媒交換頻度が増大し、結果として触媒コストの上昇や触媒廃棄量の増加をもたらしている。
【0004】
この対策として、これらの設備においては使用済みの水素化処理用触媒を再生処理した再生触媒(再生水素化処理用触媒)の使用が一部行われている(例えば、特許文献1、2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−68890号公報
【特許文献2】特開平5−123586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の再生処理においては、水素化処理用触媒の使用中に生じる活性低下の主原因がコークの沈着にあるとして、再生処理条件はコークの沈着物を除去できるか否かという観点から再生処理条件を選定するのが一般的であった。例えば、従来の再生処理においては、処理温度をなるべく高温とし、処理温度をなるべく長時間とすることがよいとの考えがあった。
【0007】
しかし、沈着したコークの除去の問題とは別に、再生処理自体が、触媒上に担持された活性金属の構造(活性金属と酸素原子との配位形態等)を変化せしめる等して、触媒活性を低下させてしまうことがある。すなわち、過度な再生処理には、水素化処理触媒を損傷させ、水素化処理用触媒が本来有する活性を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならないような再生処理条件によって、使用済みの水素化処理用触媒から安定して高い活性を有する再生水素化処理用触媒を製造することが可能な、再生水素化処理用触媒の製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、上記製造方法により製造された再生水素化処理用触媒を用いた石油製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒を用意する第1の工程と、上記第1の工程で用意した上記触媒の一部について再生処理を行った後、再生処理後の上記触媒についてX線微細構造分析を行い、広域X線吸収微細構造スペクトルから得られる動径分布曲線において、上記金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iと上記金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iとの比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理条件を求める第2の工程と、上記第1の工程で用意した上記触媒の他部について、上記第2の工程に基づいて決定された再生処理条件で再生処理を行う第3の工程と、を備える再生水素化処理用触媒の製造方法を提供する。
【0010】
かかる製造方法において、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件は、十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならない再生処理条件である。そのため、第3の工程で再生された再生水素化処理用触媒は、安定して高い活性を有する再生水素化処理用触媒となる。
【0011】
また、従来、再生処理条件はコークの沈着物を除去できるか否かという観点から再生処理条件を選別することが一般的であったのに対し、本発明においては硫黄の沈着を除去するという観点で比I/Iに基づき再生処理条件を選別している。そのため、本発明の製造方法においては、従来の方法と比較して、過度な再生処理となることがより確実に防止される。また、本発明の製造方法により製造された再生水素化処理用触媒は、水素化処理に使用する前の水素化処理用触媒と同程度の活性を有するため、「サルファー・フリー」の製品を得るための触媒として好適に使用することができる。
【0012】
本発明において、上記金属元素はモリブデン又はタングステンであることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、上記本発明の製造方法により製造された再生水素化処理用触媒を用いて、留出石油留分の水素化処理を行う工程を備える、石油製品の製造方法を提供する。このような製造方法は、再生水素化処理用触媒を用いているため経済性に優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならないような再生処理条件によって、使用済みの水素化処理用触媒から安定して高い活性を有する再生水素化処理用触媒を製造することが可能な、再生水素化処理用触媒の製造方法が提供される。また、上記製造方法により製造された再生水素化処理用触媒を用いた石油製品の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における動径分布曲線の経時変化を示す図である。
【図2】実施例1における比I/Iと処理時間との関係を示す図である。
【図3】実施例2における処理温度と最低必要処理時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(水素化処理用触媒)
本実施形態において、水素化処理用触媒は、周期表第6族元素から選ばれる金属元素(以下、場合により「金属元素M」と称する。)を有する。ここで、周期表第6族元素から選ばれる金属元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が挙げられる。なお、ここで周期表とは、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により規定された長周期型の周期表をいう。水素化処理用触媒は、周期表第6族元素から選ばれる金属元素として、モリブデン又はタングステンを有することが好ましく、モリブデンを有することがより好ましい。
【0018】
水素化処理用触媒としては、例えば、無機担体と、該無機担体に担持された周期表第6族元素から選ばれる金属元素と、を有する触媒が挙げられる。
【0019】
水素化処理用触媒において、周期表第6族元素から選ばれる金属元素の担持量は、水素化処理用触媒の全質量を基準として、該金属元素の酸化物換算で、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
【0020】
無機担体としては、アルミニウム酸化物を含む無機担体が好ましい。このような無機担体としては、例えば、アルミナ、アルミナ−シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−マグネシア、アルミナ−シリカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタニア等が挙げられる。また、各種粘土鉱物(各種ゼオライト、セビオライト、モンモリロナイト等)等の多孔性無機化合物をアルミナに添加した担体を用いることもできる。これらのうち、無機担体としてはアルミナが好ましい。
【0021】
無機担体上には、周期表第6族元素から選ばれる金属元素以外に、周期表第8〜10族元素から選ばれる1種又は2種以上の金属元素がさらに担持されていてもよい。周期表第8〜10族元素から選ばれる金属元素としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)が挙げられる。これらのうち、鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる金属元素を含むことが好ましく、コバルト及びニッケルから選ばれる金属元素を含むことがより好ましく、コバルトを含むことがさらに好ましい。本実施形態において、無機担体に担持される金属元素の組み合わせとしては、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン−ニッケル、コバルト−タングステン−ニッケル等が好ましく用いられる。
【0022】
周期表第8〜10族元素から選ばれる金属元素の担持量は、水素化処理用触媒の全質量を基準として、該金属元素の酸化物換算で、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
【0023】
水素化処理用触媒であって未使用のもの(未使用触媒)としては、例えば、無機担体に、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を酸化物として5〜40質量%、周期表第8〜10族元素から選ばれる金属元素を酸化物として0.1〜20質量%、それぞれ担持させて得られる触媒が挙げられる。
【0024】
無機担体に担持する際に用いる金属元素の前駆体としては、例えば、金属元素の無機塩、有機金属化合物等が使用される。これらのうち、好ましくは水溶性の無機塩である。金属元素の担持は、上記前駆体の溶液(好ましくは水溶液)を用いて行うことが好ましい。担持操作としては、例えば、浸漬法、含浸法、共沈法等の公知の方法が好ましく採用される。
【0025】
金属元素が担持された担体は、乾燥後、好ましくは酸素の存在下に焼成され、金属元素は一旦酸化物とされることが好ましい。さらには、留出石油留分の水素化処理を行う前に、予備硫化と呼ばれる硫化処理により、金属元素は硫化物とされることが好ましい。
【0026】
(水素化処理工程)
留出石油留分の水素化処理工程においては、水素化処理反応の前に、水素化処理用設備に充填された触媒の予備硫化を行い、触媒中の金属元素を金属硫化物とすることが好ましい。
【0027】
予備硫化の条件は特に限定されないが、留出石油留分の水素化処理に使用する原料油に硫黄化合物を添加し、これを温度200〜380℃、LHSV(液空間速度、Liquid Hourly Space Velocity)1〜2h−1、水素化処理運転時と同一の圧力、処理時間48時間以上の条件にて、触媒に連続的に接触せしめることが好ましい。原料油に添加する硫黄化合物としては限定されないが、ジメチルジスルフィド(DMDS)、硫化水素等が好ましく、これらを原料油に対して原料油の質量基準で1質量%程度添加することが好ましい。
【0028】
留出石油留分の水素化処理工程における運転条件は特に限定されず、触媒の金属元素が硫化物である状態を維持する目的で、DMDS等の硫黄化合物を原料油に少量添加してもよいが、通常は原料油中に既に含有される硫黄化合物により硫化物である状態を維持することが可能であるので、硫黄化合物は特に添加しないことが好ましい。
【0029】
水素化処理工程における反応器入口における水素分圧は好ましくは3〜13MPa、より好ましくは3.5〜12MPa、さらに好ましくは4〜11MPaである。水素分圧が3MPa未満の場合は触媒上のコーク生成が激しくなり触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素分圧が13MPaを超える場合は反応器や周辺機器等の建設費が上昇し、経済性が失われる懸念がある。
【0030】
水素化処理工程におけるLHSVは、好ましくは0.05〜5h−1、より好ましくは0.1〜4.5h−1、さらに好ましくは0.2〜4h−1の範囲で行うことができる。LHSVが0.05h−1未満である場合には、反応器の建設費が過大となり経済性が失われる懸念がある。一方、LHSVが5h−1を超える場合には原料油の水素化処理が十分に達成されない懸念がある。
【0031】
水素化処理工程における水素化反応温度は、好ましくは200℃〜410℃、より好ましくは220℃〜400℃、さらに好ましくは250℃〜395℃である。反応温度が200℃を下回る場合には、原料油の水素化処理が十分に達成されない傾向にある。一方、反応温度が410℃を上回る場合には、副生成物であるガス分の発生が増加するため、目的とする精製油の収率が低下することとなり望ましくない。
【0032】
水素化処理工程における水素/油比は、好ましくは100〜8000SCF/BBL(17〜1400NL/L)、より好ましくは120〜7000SCF/BBL(20〜1200NL/L)、さらに好ましくは150〜6000SCF/BBL(25〜1050NL/L)の範囲で行うことができる。水素/油比が100SCF/BBL(17NL/L)未満の場合には、リアクター出口での触媒上のコーク生成が進行し、触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素/油比が8000SCF/BBL(1400NL/L)を超える場合には、リサイクルコンプレッサーの建設費が過大になり、経済性が失われる懸念がある。
【0033】
水素化処理工程における反応形式は特に限定されず、固定床、移動床等の種々のプロセスから選ぶことができ、固定床が好ましい。また反応器は塔状であることが好ましい。
【0034】
留出石油留分の水素化処理に供される原料油としては、蒸留試験による留出温度が好ましくは130〜700℃、さらに好ましくは140〜680℃、特に好ましくは150〜660℃の範囲のものが使用される。留出温度が130℃を下回る原料油を用いた場合には水素化処理反応が気相での反応となり、上記の触媒では性能が充分に発揮されない傾向にある。一方、留出温度が700℃を上回る原料油を用いた場合には、原料油中に含まれる重金属などの、触媒に対する被毒物の含有量が大きくなり、触媒の寿命が大きく低下する場合がある。原料油として用いる留出石油留分のその他の性状としては特に限定されないが、代表的な性状としては、15℃における密度が0.8200〜0.9700g/cm、硫黄含有量1.0〜4.0質量%である。
【0035】
なお、ここで硫黄含有量とは、JIS K 2541に規定する「原油及び石油製品―硫黄分試験方法」の「放射線式励起法」に準拠して測定される硫黄含有量を意味する。また、蒸留試験とは、JIS K 2254に規定する「石油製品―蒸留試験方法」の「減圧法蒸留試験方法」または「ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法」に準拠して行われるものを意味する。15℃における密度とは、JIS K2249に規定する「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」の「振動式密度試験方法」に準拠して測定される密度を意味する。
【0036】
(再生水素化処理用触媒の製造方法)
本実施形態に係る再生水素化処理用触媒の製造方法は、留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒(以下、「使用済み触媒」)を用意する第1の工程と、第1の工程で用意した触媒の一部について再生処理を行った後、再生処理後の触媒についてX線微細構造分析を行い、広域X線吸収微細構造スペクトルから得られる動径分布曲線において、上記金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iと上記金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iとの比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理条件を求める第2の工程と、第1の工程で用意した触媒の他部について、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件で再生処理を行う第3の工程と、を備える。
【0037】
本実施形態において、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件は、十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならない再生処理条件である。そのため、第3の工程で再生された再生水素化処理用触媒は、安定して高い活性を有する再生水素化処理用触媒となる。
【0038】
また、従来、再生処理条件はコークの沈着物を除去できるか否かという観点から再生処理条件を選別することが一般的であったのに対し、本発明においては硫黄の沈着を除去するという観点で比I/Iに基づき再生処理条件を選別している。そのため、本発明の製造方法においては、従来の方法と比較して、過度な再生処理となることがより確実に防止される。また、本発明の製造方法により製造された再生水素化処理用触媒は、水素化処理に使用する前の水素化処理用触媒と同程度の活性を有するため、「サルファー・フリー」の製品を得るための触媒として好適に使用することができる。
【0039】
第2の工程におけるX線微細構造(XAFS、X−ray Absorption Fine Structure)分析は、電子加速器で発生する放射光に含まれるX線、あるいはこれに相当するX線を、エネルギーを変化させて分析対象物質に照射し、該物質のX線吸収率をX線エネルギーに対してプロットした吸収スペクトル(XAFSスペクトル)により該物質の構造を分析する手法である。広域X線吸収微細構造(EXAFS、スペクトルは、XAFSスペクトルのうち、照射X線エネルギーに対してX線吸収率が急激に変化する領域(吸収端)よりも高エネルギー側の領域のスペクトルである。このEXAFSスペクトルをフーリエ変換することにより、動径分布曲線を得ることができる。
【0040】
このようにして得られる動径分布曲線から、測定対象原子の周囲の構造に関する情報を得ることができる。本実施形態においては、動径分布曲線における周期表第6族元素から選ばれる金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークと、周期表第6族元素から選ばれる金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークと、に着目し、これらのピークのピーク強度I及びIを求める。
【0041】
本実施形態において、上記比I/Iは0.1〜0.3であることが必要であり、0.1〜0.2であることがより好ましく、0.1〜0.15であることがさらに好ましい。比I/Iが上記範囲であると、得られる再生処理用触媒がより高い活性を有するものとなる。
【0042】
周期表第6族元素から選ばれる金属元素がモリブデンである場合、本発明におけるXAFS分析は、以下の方法により実施することができる。
X線源:連続X線
分光結晶:Si(311)
ビームサイズ:1mm×2mm
検出器:電離箱
測定雰囲気:大気
Dwell time:1sec
測定範囲:Mo K吸収端(19500〜21200eV)
データ解析(フーリエ変換)プログラム:REX2000(リガク製)
【0043】
また、EXAFSスペクトルを抽出する際のベースラインの取り方等、データ解析の詳細については、「X線吸収分光法 −XAFSとその応用− 太田俊明編、アイピーシー発行(2002)、57〜61ページ」に記載されている方法に従って、XAFS解析統合ソフトウェアREX2000(リガク製)を用いて行うことができる。後述する実施例においてもこの手法を採用した。
【0044】
周期表第6族元素から選ばれる金属元素がタングステンである場合、本発明におけるXAFS分析は、以下の方法により実施することができる。
X線源:連続X線
分光結晶:Si(311)
ビームサイズ:1mm×2mm
検出器:電離箱
測定雰囲気:大気
Dwell time:1sec
測定範囲:W L3吸収端(9700〜101400eV)
データ解析(フーリエ変換)プログラム:REX2000(リガク製)
【0045】
EXAFSスペクトルを抽出する際のベースラインの取り方等のデータ解析の詳細は、上記と同様である。
【0046】
周期表第6族元素から選ばれる金属元素がクロムである場合、本発明におけるXAFS分析は、以下の方法により実施することができる。
X線源:連続X線
分光結晶:Si(111)
ビームサイズ:1mm×2mm
検出器:電離箱
測定雰囲気:大気
Dwell time:1sec
測定範囲:Cr K吸収端(5500〜7200eV)
データ解析(フーリエ変換)プログラム:REX2000(リガク製)
【0047】
EXAFSスペクトルを抽出する際のベースラインの取り方等のデータ解析の詳細は、上記と同様である。
【0048】
なお、水素化処理用触媒が、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を2種以上有する場合には、当該金属元素のうち、酸化物換算での含有量がもっとも多い金属元素について、第2の工程を実施する。
【0049】
なお、各金属元素と酸素原子又は硫黄原子との結合に帰属されるピークの位置は、当業者であれば容易に判断可能であるが、例えば、周期表第6族元素から選ばれる金属元素がモリブデンである場合、動径分布曲線におけるモリブデンと酸素原子との結合(以下、「Mo−O結合」)に帰属されるピークは、通常、原子間距離0.1〜0.15nmの範囲にある。また、モリブデンと硫黄原子との結合(以下、「Mo−S結合」)に帰属されるピークは、通常、原子間距離0.18〜0.22nmの範囲にある。
【0050】
以下、第1〜第3の工程について、それぞれ詳述する。
(第1の工程)
第1の工程では、使用済み触媒を用意し、第1の工程で用意された使用済み触媒の一部が第2の工程に供され、他部が第3の工程に供される。
【0051】
ここで、使用済み触媒としては、必ずしも、一度の水素化処理に同時に使用された水素化処理用触媒のみを示すものではない。使用済み触媒は、同様の又は類似の水素化処理に用いられた、複数の水素化処理用触媒を包含していてもよい。例えば、一回目の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒を第2の工程に供し、二回目以降の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒を第3の工程に供することもできる。
【0052】
(第2の工程)
第2の工程では、上記ピーク強度の比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理条件を求める。該再生処理条件を求める方法は限定されず、例えば、下記方法(1)、(2)、(3)、(4)に記載の方法が挙げられる。
【0053】
方法(1):
使用済み触媒の一部を複数の試料に分け、それぞれの試料について、処理温度を変更し、処理温度以外の再生処理条件(処理時間、処理雰囲気等)は変更せず、再生処理を行う。再生処理後、それぞれの試料について比I/Iを求め、比I/Iが0.1〜0.3となる処理時間を求める。
【0054】
方法(1)によれば、所定の条件(処理時間、処理雰囲気等)で再生処理を行う場合に必要な処理温度を求めることができる。また、詳細には、所定の条件で再生処理を行う場合の最低処理温度及び最高処理温度を求めることができる。
【0055】
方法(2):
使用済み触媒の一部を複数の試料に分け、それぞれの試料について、処理時間を変更し、処理時間以外の再生処理条件(処理温度、処理雰囲気等)は変更せず、再生処理を行う。再生処理後、それぞれの試料について比I/Iを求め、比I/Iが0.1〜0.3となる処理温度を求める。
【0056】
方法(2)によれば、所定の条件(処理温度、処理雰囲気等)で再生処理を行う場合に必要な処理時間を求めることができる。また、詳細には、所定の条件で再生処理を行う場合の最短処理時間及び最長処理時間を求めることができる。
【0057】
方法(3):
使用済み触媒の一部を再生処理とX線微細構造分析とを同時に行うことができる測定器に設置し、再生処理を行いつつ、所定の間隔で(例えば、一分毎に)X線微細構造分析を行う。そして、該X線微細構造分析の結果から、比I/Iの経時変化を求め、比I/Iが0.1〜0.3となる処理時間を得る。
【0058】
方法(3)によれば、方法(2)のように複数の試料について測定を行うことなく、短時間で、所定の条件(処理温度、処理雰囲気等)で再生処理を行う場合に必要な処理時間(最低処理時間及び最高処理時間)を求めることができる。
【0059】
方法(4):
使用済み触媒の一部を複数の試料に分け、それぞれの試料について、再生処理とX線微細構造分析とを同時に行うことができる測定器に設置し、試料毎に処理温度を変更して、再生処理を行いつつ所定の間隔(例えば、一分毎に)X線微細構造分析を行う。そして、該X線微細構造分析の結果から、各処理温度における比I/Iの経時変化を求め、各処理温度における比I/Iが0.1〜0.3となる処理時間を求める。
【0060】
方法(4)によれば、処理温度と必要処理時間との関係が明らかとなるため、該関係に基づいて、適宜、処理温度及び処理時間を決定することができる。
【0061】
第2の工程は、上記以外の方法で行うこともでき、再生処理における様々な条件を変更して比I/Iが0.1〜0.3となる再生処理条件を決定することができる。
【0062】
なお、比I/Iが0.3より大きくなる再生処理条件では、使用済み触媒を十分に再生することができずに十分な触媒活性が得られない場合がある。また、比I/Iが0.1未満となる再生処理条件は、過度な再生処理により、触媒中の金属元素が複合金属酸化物を形成する、凝集を起こす等して、得られる再生触媒の活性が低下する場合がある。また、このような再生触媒の活性低下が起こらなくとも、不要な再生処理により経済性が損なわれる。
【0063】
(第3の工程)
第3の工程では、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件で、使用済み触媒の再生処理を行う。
【0064】
ここで、「第2の工程に基づいて決定された再生処理条件」とは、必ずしも第2の工程で比I/Iが0.1〜0.3となった再生処理条件(処理温度、処理時間等)をそのまま適用することを意味ものではない。
【0065】
例えば、第2の工程において再生処理を行った処理装置(以下、「処理装置A」)と、第3の工程において再生処理を行う処理装置(以下、「処理装置B」)と、が異なる場合、処理装置A及び処理装置Bの間の相関関係を予め求めておき、その相関関係と、第2の工程で比I/Iが0.1〜0.3となった再生処理条件と、に基づいて、第3の工程における再生処理条件を決定することができる。
【0066】
例えば、処理装置Aで再生処理を行う場合に必要となる処理時間aと、処理装置Bで再生処理を行う場合に必要となる処理時間bと、の間に比例関係がある場合には、以下の方法により第3の工程における再生処理条件を決定することができる。
【0067】
まず、予め、処理装置Bで十分に再生を行うことができる処理温度T及び処理時間bを決定する。また、処理装置Aを用いて処理温度Tで再生処理を行ったときに、比I/Iが0.1〜0.3となる処理時間aを決定する。
【0068】
これにより、処理装置Aにおける処理時間aと処理装置Bにおける処理時間bとの相関関係(比例定数(b/a))を求めることができる。
【0069】
ここで、第2工程を行い、処理装置Aを用いて、処理温度Tで再生処理を行ったときに、比I/Iが0.1〜0.3となる処理時間aを求める。
【0070】
そして、第2の工程で得られた処理時間aと、予め求められた相関関係(比例定数(b/a))と、に基づいて、第3の工程における再生処理条件を決定する。すなわち、第3の工程においては、処理温度T、処理時間a×(b/a)、の再生処理条件で、再生処理を行うことができる。
【0071】
なお、当然のことながら、処理装置Aと処理装置Bとが同一の処理装置であったり、同一の再生処理条件を適用できるものである場合には、第3の工程においては第2の工程で決定された再生処理条件と同一の再生処理条件を適用することができる。
【0072】
(再生処理)
以下、第2の工程、第3の工程における再生処理について詳述する。再生処理の具体的な態様は特に限定されず、公知の再生方法で行うことができる。
【0073】
再生処理に用いられる設備は特に限定されないが、留出石油留分の水素化処理設備とは異なる設備で行われることが好ましい。すなわち、留出石油留分の水素化処理設備の反応器に触媒を充填したままの状態で再生処理を行うのではなく、反応器より触媒を抜き出し、抜き出された触媒を再生処理のための設備に移動させて、該設備により再生処理を行うことが好ましい。
【0074】
使用済み触媒の再生処理を行うための形態は限定されないが、使用済み触媒から、微粉化した触媒や、触媒以外の充填材等を篩い分けにより除去する工程(除去工程)、使用済み触媒に付着した油分を除去する工程(脱油工程)、使用済み触媒に沈着したコーク、硫黄分等を除去する工程(再生工程)からこの順に構成されるものであることが好ましい。
【0075】
このうち、脱油工程には、酸素が実質的に存在しない雰囲気、例えば窒素雰囲気下に、使用済み触媒を200〜400℃程度の温度に加熱することにより油分を揮散せしめる方法などが好ましく採用される。また、脱油工程は、軽質の炭化水素類にて油分を洗浄する方法、あるいはスチーミングによる油分の除去等の方法によるものであってもよい。
【0076】
再生工程の処理雰囲気、処理温度及び処理時間は、以下のようにすることができる。但し、以下の記載は、処理雰囲気、処理温度及び処理時間が各要件を満たせば必ず再生水素化処理用触媒に十分な触媒活性を付与できることを意味するものではない。あくまで、第3の工程における再生処理は、第2の工程に基づいて決定された再生処理条件によって行われる。
【0077】
再生工程における処理雰囲気は、分子状酸素が存在する雰囲気、例えば空気中、特には空気流中とすることが好ましい。
【0078】
また、再生工程の処理温度は、使用済み触媒の使用履歴等に応じて異なるが、好ましくは250〜700℃、より好ましくは260〜550℃、さらに好ましくは280〜450℃、さらにより好ましくは300〜400℃の範囲で選択される。沈着したコーク、硫黄分等を酸化して除去する方法が好ましく採用される。処理温度が上記下限温度を下回る場合には、コーク、硫黄分等の触媒活性を低下せしめた物質の除去が効率的に進行しない等の傾向にある。一方、処理温度が上記上限温度を超える場合には、触媒中の金属元素が複合金属酸化物を形成する、凝集を起こす等して、得られる再生水素化処理用触媒の活性が低下する場合がある。
【0079】
再生工程の処理時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは2.5時間以上、特に好ましくは3時間以上である。処理時間が0.5時間未満の場合には、コーク、硫黄分等の触媒活性を低下せしめた物質の除去が効率的に進行しない傾向にある。
【0080】
(再生水素化処理用触媒)
本実施形態に係る製造方法によって製造された再生水素化処理用触媒は、十分に水素化処理用触媒を再生することができ、且つ過度な再生処理とならないような再生処理条件によって、製造されたものであるため、高い活性を有する。
【0081】
水素化処理用触媒の活性は、例えば、脱硫活性により評価することができる。脱硫活性は、脱硫活性は、水素化処理前の留出石油留分中の硫黄分含有量と、水素化処理後の留出石油留分中の硫黄分含有量と、から得られる脱硫速度定数により評価される。
【0082】
そして、再生処理の効率は、使用前の水素化処理用触媒(未使用触媒)の脱硫速度定数Sと、再生水素化処理用触媒(再生触媒)の脱硫速度定数Sと、を比較した、比活性(相対活性)S/Sによって評価することができる。本実施形態に係る製造方法によって製造された再生水素化処理用触媒の比活性S/Sは、好ましくは0.80以上であり、より好ましくは0.85以上である。
【0083】
(再生水素化処理用触媒の使用法)
このような再生水素化処理用触媒は、上述の留出石油留分の水素化処理工程の触媒として単独で使用してもよく、未使用触媒と積層して使用してもよい。未使用触媒と積層して使用する場合、再生水素化処理用触媒の割合は特に限定されるものではないが、触媒廃棄量の削減、触媒交換時における触媒の分離し易さ等の観点で未使用触媒100に対して80以上(質量比)が好ましく、120以上(質量比)がより好ましい。再生水素化処理用触媒の使用に際し、水素化処理は、上記水素化処理工程と同様にして行うことができる。
【0084】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明は、水素化処理触媒の再生処理条件の決定方法であって、留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒を用意する第1の工程と、第1の工程で用意した上記触媒について再生処理を行った後、再生処理後の上記触媒についてX線微細構造分析を行い、広域X線吸収微細構造スペクトルから得られる動径分布曲線において、上記金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iと上記金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iとの比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理の条件を求める第2の工程と、第2の工程で求めた条件に基づいて水素化処理用触媒の再生処理条件を決定する第3の工程と、を備える水素化処理用触媒の再生条件の決定方法ということもできる。
【0085】
また、本発明は、留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒を、上記の決定方法で決定された再生処理条件で再生処理する工程を備える、再生水素化処理用触媒の製造方法ということもできる。
【0086】
さらに、本発明は、上記製造方法により製造され再生水素化処理用触媒を用いて、留出石油留分の水素化処理を行う工程を備える、石油製品の製造方法であってもよい。このような製造方法によれば、経済性よく石油製品を製造することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
(未使用触媒及び使用済み触媒)
活性金属としてモリブデン及びコバルトをアルミナ担体に担持した触媒(未使用触媒、モリブデン担持量(酸化物換算):22.9質量%、コバルト担持量(酸化物換算):2.5質量%)を用意した。次に、上記の触媒の一部を、灯油の水素化処理設備において2年間使用し、使用済み触媒を得た。
【0089】
(XAFS分析)
上記の使用済み触媒の一部について、再生処理とX線微細構造分析とを同時に行うために高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設PF―ARのビームラインNW10AのXAFS実験ステーション内にXAFS測定用のin−situセルを設置し、再生処理を行いつつ、再生処理開始から30分経過後まで、1分毎にXAFS分析を行った。各XAFS分析の結果から得られたMo K吸収端のEXAFSスペクトルから、動径分布曲線を得た。得られた動径分布曲線の経時変化を図1に示す。
【0090】
得られた動径分布曲線におけるMo−S結合に帰属されるピークI及びMo−O結合に帰属されるピークIを求め、比I/Iを求めた。比I/Iと処理時間との関係を図2に示す。
【0091】
(再生処理)
上記の使用済み触媒の一部を用いて、上記比I/Iが表1に示す値となる再生処理条件で再生処理を行った。得られた再生触媒は、以下の方法で触媒活性を評価した。
【0092】
(触媒活性の評価)
未使用触媒及び再生触媒のそれぞれについて、以下のようにして触媒活性を評価した。 まず、固定床連続流通式反応装置に触媒を充填し、触媒の予備硫化を行った。具体的には、灯油留分に、該留分の質量基準で1質量%のDMDSを添加し、これを48時間上記触媒に対して連続的に供給した。そしてその後、上記の灯油留分(DMDS未添加のもの)を原料油として、水素分圧3MPa、LHSV 1h−1、水素/油比200NL/L、反応温度300℃で水素化処理反応を行った。生成油中の硫黄分含有量から、脱硫速度定数を求めた。また、未使用触媒の脱硫速度定数を1として、再生触媒の比活性を求めた。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
比I/Iが0.3より大きい値となる再生処理条件で再生処理を行った比較例1−1の再生触媒は、比活性が低く、十分な活性が得られなかった。また、比I/Iが0.1未満の値となる再生処理条件で再生処理を行った比較例1−2の再生触媒も、比活性が低く、十分な活性が得られなかった。それに対して、比I/Iが0.1〜0.3の範囲内となる再生処理条件で再生処理を行った実施例1−1、実施例1−2及び実施例1−3では、比活性が高く、十分に再生された再生触媒が得られた。
【0095】
[実施例2]
実施例1と同様のXAFS分析を、所定の再生処理温度T℃で行い、比I/Iと処理時間との関係を求めた。そして、比I/Iが0.3となる最初の処理時間を、再生処理温度Tにおける最低必要処理時間aとした。
【0096】
次いで、実施例1と同様のXAFS分析を、上記Tより100℃低い再生処理温度T℃(T−100℃)で行い、比I/Iと処理時間との関係を求めた。そして、比I/Iが0.3となる最初の処理時間を、再生処理温度Tにおける最低必要処理時間aとした。最低必要処理時間aの最低必要処理時間aに対する比a/aは、1.88であった。
【0097】
また、実施例1と同様のXAFS分析を、上記Tより100℃高い再生処理温度T℃(T+100℃)で行い、比I/Iと処理時間との関係を求めた。そして、比I/Iが0.3となる最初の処理時間を、再生処理温度Tにおける最低必要処理時間aとした。最低必要処理時間aの最低必要処理時間aに対する比a/aは、0.75であった。
【0098】
得られた処理温度と最低必要処理時間との関係を図3に示す。
【0099】
ここで、予め、上記の測定を行った測定装置とは異なる再生処理装置(以下、「再生装置B」)を用いて、再生処理温度Tでの再生処理において必要な処理時間bを検討した。その結果、処理時間bが2時間のとき、比活性0.85の再生触媒が得られることが確認された。すなわち、再生装置Bは、再生処理温度Tにおいて、処理時間2時間で高い活性を有する再生触媒を得ることができる装置である。
【0100】
(実施例2−1)
再生装置Bを用いたときの再生処理温度Tにおける必要処理時間bを、以下の式(1)により求めたところ、b=3.76時間であった。
=b×a/a (1)
再生装置Bを用いて、再生処理温度T、処理時間3.76時間で再生処理を行ったところ、得られた再生触媒の比活性は0.89であり、高い活性を有する再生触媒が得られた。
【0101】
(実施例2−2)
再生装置Bを用いたときの再生処理温度Tにおける必要処理時間bを、以下の式(2)により求めたところ、b=1.50時間であった。
=b×a/a (2)
再生装置Bを用いて、再生処理温度T、処理時間1.50時間で再生処理を行ったところ、得られた再生触媒の比活性は0.88であり、高い活性を有する再生触媒が得られた。
【0102】
以上のことから、本発明によれば、再生処理における処理温度と必要処理時間との関係を求めることで、任意の処理温度における必要処理時間を適宜求めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
留出石油留分の水素化処理に用いられた水素化処理用触媒であって、周期表第6族元素から選ばれる金属元素を有する触媒を用意する第1の工程と、
前記第1の工程で用意した前記触媒の一部について再生処理を行った後、再生処理後の前記触媒についてX線微細構造分析を行い、広域X線吸収微細構造スペクトルから得られる動径分布曲線において、前記金属元素と硫黄原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iと前記金属元素と酸素原子との結合に帰属されるピークのピーク強度Iとの比I/Iが、0.1〜0.3となる再生処理条件を求める第2の工程と、
前記第1の工程で用意した前記触媒の他部について、前記第2の工程に基づいて決定された再生処理条件で再生処理を行う第3の工程と、
を備える再生水素化処理用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記金属元素は、モリブデン又はタングステンである、請求項1に記載の再生水素化処理用触媒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された再生水素化処理用触媒を用いて、留出石油留分の水素化処理を行う工程を備える、石油製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−86198(P2012−86198A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237538(P2010−237538)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】