説明

再生装置及び再生方法

【課題】 磁気テープ上に形成されるトラックに曲がりが発生していたとしても、サーチ再生時に回転ヘッドがサーチ再生用データの記録領域を正確に走査できるようにする。
【解決手段】 テープ1をキャプスタンモータ5により高速に搬送して高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいてテープにおける高速再生用画像データの記録位置と回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得て、それに基づいてキャプスタンモータによるテープの搬送動作を制御するようにして、テープ上に形成されるトラックの曲がりを打ち消すようにテープの搬送動作を制御し、高速再生時に回転ヘッドが高速再生用画像データの記録位置を正確に走査できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生装置及び再生方法に関し、特に、通常再生用画像データ及びそれとは異なる高速再生用画像データを再生可能な再生装置及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動画像データをMPEG(Moving Picture Experts Group)方式で符号化し、磁気テープに対して記録再生するデジタルVTRが知られている。民生用デジタルVTRの規格の1つとして、HDV規格が策定された。このHDV規格では、磁気テープ上の16トラック分のデータを単位としてエラー訂正符号化処理が施される。この16本のトラックからなるエラー訂正符号化単位は、ECCユニット(ECC Unit)と定義されている。
【0003】
また、HDV規格では、通常再生用のMPEGデータとは別に、サーチ再生用データを生成し記録している。このサーチ再生用データは、通常速度より高速で磁気テープを転送し再生するサーチ再生において動画表示するために再生されるデータであり、サーチ再生時に磁気ヘッドが走査する走査軌跡に対応した磁気テープ上の所定の記録エリアに記録される。
【0004】
サーチ再生用データは、通常再生用のMPEGストリームにおけるIピクチャーの8×8画素のDCTブロックの輝度信号YからDC成分を抽出し6ビットに変換したマクロブロックと、8×8画素のDCTブロックの色差信号Cb、CrからDC成分を抽出しそれぞれ5ビットのデータに変換したマクロブロックとから構成される。1フレームのサーチデータが、複数のECCユニットにまたがって記録される。
【0005】
また、サーチ再生時には磁気テープが通常速度よりも高速で転送されるので、回転ヘッドが多数のトラックをまたがって走査する。そのため、磁気テープ上において、アジマスが異なるトラックからはデータを再生することができず、サーチ再生時における回転ヘッドの1走査期間で再生データを検出できる個所と検出できない個所とがある。
【0006】
上述のようにして生成され記録されるサーチ再生用データを再生する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された画像再生装置は、再生データ中から検出されたトラックナンバー及びシンクブロックナンバーと、基準のトラックナンバー及びシンクブロックナンバーとを比較してエラー信号を生成する。そして、1回の走査における複数のエラー信号の平均値を位相エラー信号としてキャプスタンサーボ系の位相サーボ回路にフィードバックすることで、サーチ再生時においてサーチ再生用データの記録領域を回転ヘッドが正しく走査するよう制御している。
【0007】
【特許文献1】特開2001−352509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようなデジタルVTRでは、機械精度などが原因となり、記録時における回転ヘッドの1回の走査期間中に磁気テープの搬送速度が変動して、テープ上に形成されるトラックが曲がってしまう場合がある。
【0009】
図9は、磁気テープ上においてトラック曲がりが発生していない場合のトラックに記録されたサーチ再生用データとそれを再生するための回転ヘッドのトレース(走査軌跡)パターンとの関係を示している。図9において、矢印90が磁気ヘッドのトレースパターンを示し、斜線部分91、92がサーチ再生用データが記録されているエリアを示している。サーチ再生時には磁気ヘッドのトレース90がこのサーチ再生用データが配置されているエリア91、92を通るようにキャプスタンの速度を制御する。図9には、図示したトレースパターンに従って磁気ヘッドが走査された場合における再生エンベロープ及び再生されたシンクブロックから検出されるべきトラックナンバーを示す基準信号も合わせて示している。
【0010】
図10は、磁気テープ上においてトラック曲がりが発生している場合のトラックに記録されたサーチ再生用データと回転ヘッドのトレースパターンとの関係を示している。図10には、トラックの終端付近でトラック曲がりが発生した場合を示しており、斜線部分101、102に、サーチ再生用データが記録されている。矢印100が磁気ヘッドのトレースパターンである。図10に示すようなトラック曲がりが発生した場合、磁気ヘッドの走査位置がトラックの先頭からトラック終端に向かうに従って、再生エンベロープの間隔が徐々に広がり、基準信号により示されるトラックナンバーとの誤差が発生している。
【0011】
したがって、サーチ再生時において上記特許文献1に記載のような制御を行ったとしても、磁気テープ上に形成されるトラックに曲がりが発生している場合には、回転ヘッドがサーチ再生用データの記録エリアを正しく走査するように制御することができないといった問題がある。
【0012】
また、一般に、このようなトラック曲がりはテープ端部で特に大きくなる。
そのため、サーチ再生用データの記録エリアが回転ヘッドの走査期間内の前半もしくは後半に偏って存在する場合には、トラック曲がり(直線性、リニアリティ)の影響が一層大きくなり、サーチ再生時にデータを正しく再生することができなくなってしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、磁気テープ上に形成されるトラックに曲がりが発生していたとしても、サーチ再生時に回転ヘッドがサーチ再生用データの記録領域を正確に走査できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の再生装置は、通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を搬送する搬送手段と、上記搬送手段により搬送されている上記記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生手段と、上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記再生手段により上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生手段により再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出手段と、上記検出手段により得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明の再生装置は、回転ヘッドによりテープ状の記録媒体を走査して、当該記録媒体に独立して記録された通常再生用画像データと高速再生用画像データとを再生する再生手段と、上記記録媒体を搬送する搬送手段と、上記記録媒体を通常再生時よりも高速な所定速度で搬送し上記再生手段により上記高速再生用画像データを再生する高速再生において、上記回転ヘッドの1回の走査期間における第1の期間に得られる上記高速再生用画像データ中の同期ブロック数と第2の期間に得られる上記高速再生用画像データ中の同期ブロック数とを計数する計数手段と、上記計数手段により計数された上記第1の期間に得られた同期ブロック数と上記第2の期間に得られた同期ブロック数との差分に基づいて上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明の再生方法は、搬送手段により搬送されている通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生ステップと、上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生ステップにて再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出ステップと、上記検出ステップにて得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御ステップとを有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、搬送手段により搬送されている通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生ステップと、上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生ステップにて再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出ステップと、上記検出ステップにて得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記プログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テープ状の記録媒体を高速搬送して高速再生用画像データを再生する高速再生時に、再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得て、それに基づいて搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御するので、得られたずれ量を示すトラッキングエラー情報によりテープ状の記録媒体上に形成されるトラックの曲がりを打ち消すように記録媒体の搬送動作を制御することができる。したがって、テープ状の記録媒体においてトラック曲がりが発生している場合でも、高速再生時に回転ヘッドが高速再生用画像データの記録位置を正確に走査可能となり、高速再生用画像データを欠落なく再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による再生装置の構成例を示すブロック図である。
【0017】
図1において、1は通常再生用データ(通常再生用画像データ及び通常再生用音声データ)とサーチ再生用データ(高速再生用画像データ)が記録された記録媒体である磁気テープである。2はテープ1から再生されたアナログ信号を復調してデジタルデータに変換する変調・復調部である。
【0018】
3は再生されたデータに対してシンクブロック単位にエラー訂正処理を施すC1エラー訂正部である。4は再生されたデータの中からID部分を取り出し、その中からトラックペアナンバーを抽出するID検出部である。さらにID検出部4は、抽出したトラックペアナンバーとリファレンス値(リファレンス信号)とを比較し、その結果に基づきエラー値を出力する。
【0019】
5はマイコン6からの指示でテープ1を駆動するキャプスタンモータである。マイコン6は、本実施形態による再生装置を構成する各ブロックを制御する。7は再生されたデータを各メモリ8、10、12に分配するシンクブロック分配器であり、再生されたデータ(シンクブロック)のIDよりシンクブロックの種類を検出し、その結果に従いデータを分配する。
【0020】
8は再生されたデータの中で、オーディオ(Audio)シンクブロックのみを蓄積するオーディオストリームバッファであり、9はオーディオストリームバッファ8に蓄積されたオーディオストリームデータをデコードするオーディオコーデックである。10は再生データの中で、ビデオ(Video)シンクブロックのみを蓄積するビデオストリームバッファであり、11はビデオストリームバッファ10に蓄積されたビデオストリームデータをデコードするビデオコーデックである。
【0021】
12は再生されたデータの中で、サーチ再生用データを構成するサーチシンクブロックのみを蓄積するサーチデータバッファであり、13はサーチデータバッファ12に蓄積されたサーチ再生用データを画像に変換するサーチ画像処理部である。14は通常再生時とサーチ再生時で入力データが切り替わり、ベースバンドの画像を蓄積し出力するためのフレームメモリである。
【0022】
図1に示した再生装置は、上述したHDV規格のような規格に則って、MPEG方式で符号化された通常再生用データとサーチ再生用データが記録された磁気テープ1より各データを再生する。
【0023】
(サーチ再生動作)
まず、テープ1に記録されているサーチ再生用データを再生するサーチ再生動作について説明する。
【0024】
サーチ再生時には、マイコン6の指示により、キャプスタンモータ5はテープ1を通常再生よりも速い速度で転送する。転送されているテープ1から、回転ドラム上に取り付けられた磁気ヘッドにて再生されたアナログ信号が取り出される。取り出されたアナログ信号は、変調・復調部2にて復調されデジタルデータに変換された後、C1エラー訂正部3に供給される。
【0025】
C1エラー訂正部3は、変調・復調部2により変換されたデータにエラーがあるか否か、さらにはエラー訂正可能か否かを判断し、判断結果に基づいてエラー訂正処理を行う。そして、エラーがない、あるいはエラーがあってもエラー訂正されたシンクブロックのみが、C1エラー訂正部3からID検出部4に転送される。
【0026】
ID検出部4では、再生デジタルデータ(シンクブロック)の中からID部分が取り出され、さらにそのID部分の中からトラックペアナンバーが抽出される。ID検出部4は、抽出したトラックペアナンバーとマイコン6からの指示を基に発生しているリファレンス値(リファレンス信号)と比較してエラー値を出力する。また、ID検出部4は、磁気ヘッドによるトレース期間中に設けられた2つの所定の検出期間(検出範囲)に検出されるサーチ再生用データ中のシンクブロックの個数をカウントして、それぞれ記憶する。
【0027】
そして、ID検出部4でトラックペアナンバーとリファレンス値とに基づいて得られるエラー値は、マイコン6により演算され、その結果がキャプスタンモータ5にフィードバックされる。すなわち、トラックペアナンバーとリファレンス値とからID検出部4にて得られたエラー値に基づいて、マイコン6によりキャプスタンモータ5が行うテープ1の搬送動作(例えば、搬送速度)が制御される。
【0028】
また、ID検出部4で記憶されているトレース内の2つエリアで検出されたサーチ再生用データのシンクブロック数は、マイコン6により読出され、その差分がID検出部4のリファレンス信号の設定(設定位相、周期)にフィードバックされる。
【0029】
その後、ID検出部4を介して出力されるサーチ再生用データのシンクブロックは、シンクブロック分配器7により、シンクブロックの種類(ここでは、サーチデータ)に応じサーチデータバッファ12に転送される。サーチデータバッファ12に蓄積されたサーチ再生用データは、マイコン6からの指示でサーチデータ画像処理部13により画像処理される。画像処理されたサーチ再生用の画像データは、フレームメモリ14に書き込まれ、その後出力信号Video OUTとして出力される。
【0030】
(通常再生動作)
次に、テープ1に記録されている通常再生用データを再生する通常再生動作について説明する。
通常再生時には、マイコン6の指示により、キャプスタンモータ5により通常速度で転送されているテープ1から、回転ドラム上に取り付けられた磁気ヘッドにてアナログ信号が取り出される。取り出されたアナログ信号は、変調・復調部2にて復調されデジタルデータに変換された後、C1エラー訂正部3にてサーチ再生時と同様のエラー訂正処理が施される。
【0031】
そして、エラーのない(エラー訂正されたものを含む。)シンクブロックのみが、C1エラー訂正部3からID検出部4を介してシンクブロック分配器7に転送される。そして、シンクブロック分配器7に転送された通常再生用データのシンクブロックは、シンクブロック分配器7によりシンクブロックの種類(ビデオ又はオーディオ)毎に、オーディオストリームバッファ8又はビデオストリームバッファ10に転送される。具体的には、通常再生用データのうち、オーディオシンクブロックがオーディオストリームバッファ8に転送され、ビデオシンクブロックがビデオストリームバッファ10に転送される。
【0032】
オーディオストリームバッファ8に蓄積された通常再生用データにおけるオーディオストリームデータは、マイコン6からの指示でオーディオコーデック9によりデコードされ、出力信号Audio OUTとして出力される。また、ビデオストリームバッファ10に蓄積された通常再生用データにおけるビデオストリームデータは、マイコン6からの指示でビデオコーデック11によりデコードされ、デコードされた画像データはフレームメモリ14に書き込まれた後、出力信号Video OUTとして出力される。
【0033】
図2は,本実施形態におけるテープ1上の記録パターンの一例を示した図である。
図2において、31は各トラックを示し、複数のトラック31を跨ぐ斜めの実線で示した軌跡32及び破線で示した軌跡33はそれぞれ磁気ヘッド(回転ヘッド)のトレースパターンを示している。図示するようにテープ1上には、16本のトラックからなる各ECCユニットにおいて規定トラックの規定されたシンクブロックの位置34、35にサーチ再生用データが書き込まれている。サーチ再生時には、マイコン6は、ID検出部4から得られた各エラー値等に基づき、磁気ヘッドが規定されたトラック及びシンクブロックの位置34、35に記録されたサーチ再生用データをトレースするようにキャプスタンモータ5を制御しテープ1の搬送動作を制御する。
【0034】
図3は、テープ1における各トラック内の構成を示した図である。
図3に示すように、各トラックは、0〜138のシンクブロック(SyncBlock)で構成されている。各シンクブロックは、Sync、ID0、ID1、ID2、アウターパリティ(Outer Parity)又はデータ(DATA)、及びインナーパリティ(Inner Parity)で構成されている。シンクデータは、各シンクブロックの先頭に付加され、特定のパターンを持つ。そして、ID0、ID1、及びID2の中には、ECCユニット内でのトラック位置を示すトラックペアナンバー、及びトラック内でのシンクブロック位置を示すシンクブロックナンバーの情報が含まれる。再生時には、これらトラックペアナンバー及びシンクブロックナンバーを用いることで、ECCユニット内におけるヘッドのトレース位置が検出できる。なお、1トラックペアは、2つのトラックで構成される。
【0035】
図4は、ID検出部4内で生成されるリファレンス信号RSを説明するための図である。このリファレンス信号RSは、ECCユニット内の規定位置34、35に記録されたサーチ再生用データをトレースするよう、キャプスタンモータ5の速度を変えて、ECCユニット内のサーチ再生用データの記録位置とヘッドトレース位置との位相制御を行うために用いられる。リファレンス信号RSは、回転ドラム上のヘッドの切り替えタイミングを示す信号H.SWに基づいて発生する。信号H.SWとリファレンス信号RSの位相及び周期は、マイコン6より設定され、ID検出部4は、指示された位相及び周期でトラックペアナンバーを示すリファレス信号RSをインクリメントする。
【0036】
図5は、本実施形態におけるリファレンス信号とエラーデータとの関係を示す図である。
図5のトラックペアナンバーについて図示した部分において、実線が再生されたシンクブロックからID検出部4により検出されたトラックペアナンバーを示し、破線がリファレンス信号RSを示している。図5に一例を示すように、軌跡32、33により示されるヘッドトレース位置が、ECCユニット内におけるサーチ再生用データの記録位置とずれている場合には、ID検出部4により実際に検出されるトラックペアナンバーとリファレンス信号RSにより示されるトラックナンバーとにずれが生じる。このずれ、すなわち図5において実線で示される実際に検出されたトラックペアナンバーと破線で示されるリファレンス信号RSとの差分がエラーデータである。
【0037】
図6は、実際に検出したトラックペアナンバーとリファレンス信号RSとに基づくエラー値を出力するためのエラー検出回路を示す図である。図6に示すエラー検出回路はID検出部4内に設けられる。
【0038】
図6において、20は再生されたシンクブロック内からトラックペアナンバーを取り出す再生トラックペア検出部であり、21はマイコン11より指定された位相及び周期でリファレンス信号を発生するリファレンス信号発生器である。また、22は再生トラックペア検出部20で検出されたトラックペアナンバーとリファレンス信号発生器21より発生されたリファレンス信号との差分を積分するエラー値積分部である。23はID検出部4内でカウントされた2つの検出範囲におけるサーチ再生用データのシンクブロック数を、マイコン6で読出してその差分を位相エラーとする位相エラー演算部である。
【0039】
上述した図5及び図6において、信号H.SWに基づく所定期間にテープ1から再生されたシンクブロックは、ID検出部4内の再生トラックペア検出部20に入力され、そのトラックペアナンバーが検出される。また、リファレンス信号発生器21は、マイコン6から設定された位相及び周期でリファレンス信号RSを発生する。そして、再生されたシンクブロックから検出されたトラックペアナンバーとリファレンス信号RSとの差分であるエラーデータを、信号H.SWに基づく所定期間においてエラー値積分部22にて蓄積することにより積分し、積分結果として得られるトラッキングエラー情報をマイコン6に通知する。マイコン6は、エラー値積分部22から通知されるトラッキングエラー情報を基にキャプスタンモータ5を制御し、テープの搬送速度を変更することでテープ上のトラックとヘッドの位相を制御する。これにより、回転ヘッドがECCユニット内の規定位置に記録されているサーチ再生用データを正確にトレースするようキャプスタンモータ5によるテープ1に係る搬送動作を制御することが可能となる。
【0040】
図7は、上述した本実施形態による再生装置において、テープ1にトラック曲がりが発生している場合のサーチ再生を説明するための図である。図7において、矢印70が磁気ヘッドのトレースパターンを示し、斜線部分71、72がサーチ再生用データが記録されているエリアを示している。
【0041】
また、サーチエリア範囲に示すTA、TBは、ID検出部4におけるサイズが等しい2つのシンクブロック検出範囲(検出期間)のタイミングを示す。これらシンクブロック検出範囲TA、TBは、それらを合わせた範囲がトラック曲がりのない状態のトラックを再生したと仮定した場合にサーチ再生用データが記録されている複数のエリアの中の1つに対応し、これを2等分するように一点鎖線を境界に2つの領域A(検出範囲TA)、領域B(検出範囲TB)に分けられている。
また、このサーチエリアTA、TBを示すタイミング信号は、マイコン6により生成される。即ち、ヘッドの回転位相に同期したヘッド切り替え信号(H.SW)の立ち上がりタイミングより所定周波数のクロックをカウントし、カウント値が所定数になったタイミングから所定期間ハイレベルとなる信号をタイミング信号として生成する。
【0042】
このトラック曲がりが発生しているトラックを磁気ヘッドでトレースした場合の再生エンベロープを図7における再生エンベロープに示し、そのときC1エラー訂正部3からC1エラーのないシンクブロックが入力されているタイミングを図7におけるC1エラーなしに示す。
【0043】
ID検出部4は、図7に示すシンクブロック検出範囲TA、TBにおいて、C1エラー訂正部3から入力されるC1エラーのないシンクブロック数をそれぞれカウントして記憶する。マイコン6は、図6に示した位相エラー演算部23による差分値として、これら検出範囲TA、TBでのカウント値の差分を用いる。図6に示した基準の位相に対して、位相エラー演算部23により得られた差分値(位相エラー値)を反映したものを、エラー検出回路内のリファレンス信号発生器21に設定すべき位相とする。
【0044】
これにより、テープ1上に形成されるトラックにおいて、曲がりが発生しているトラックをトレースする場合であっても、検出範囲TA、TBでのカウント値の差分値、すなわちそれぞれの検出範囲で検出されるシンクブロック数の差をなくすように、マイコン6によりキャプスタンモータ5の速度がフィードバック制御される。したがって、磁気テープ上に形成されるトラックに曲がりが発生していたとしても、サーチ再生用データを正確に追従するようにキャプスタンモータ5によるテープ1の搬送動作(搬送速度)を制御し、サーチ再生用データを再生することができる。
【0045】
本実施形態におけるサーチ再生用データのテープ1上における配置例を図8に示す。図8に示すように、サーチ再生用データであるデータA81及びデータB82は、複数のトラックに分散して配置され、それぞれのエリア内では、同一データが複数回書き込まれている。そのようなデータ配置において、ID検出部4におけるサイズが等しい2つのシンクブロック検出範囲を特定のサーチエリア、特に最も小さいサーチエリア(図8においてはサーチデータエリアA)に対して設定することで、サーチ再生用データの記録位置とヘッドトレース位置との位相制御を高い精度で行うことができ、トラック曲がりによるサーチ再生用データの欠落をなくすことが可能である。
【0046】
(本発明の他の実施形態)
上述した実施形態の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに対し、上記実施形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納されたプログラムに従って上記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
また、この場合、上記ソフトウェアのプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体は本発明を構成する。また、そのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記録媒体は本発明を構成する。かかるプログラムコードを記憶する記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、コンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
さらに、供給されたプログラムコードがコンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後、そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合にも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0047】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態による再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるテープ上の記録パターンの一例を示す図である。
【図3】テープにおける各トラック内の構成を示す図である。
【図4】ID検出部で生成されるリファレンス信号を説明するための図である。
【図5】本実施形態におけるリファレンス信号とエラーデータとの関係を示す図である。
【図6】ID検出部が備えるエラー検出回路の構成を示す図である。
【図7】本実施形態におけるトラック曲がりが発生している場合のサーチ再生を説明するための図である。
【図8】本実施形態におけるサーチ再生用データのテープ上における配置例を示す図である。
【図9】トラック曲がりが発生していない場合のサーチ再生用データと回転ヘッドのトレースパターンとの関係を示す図である。
【図10】トラック曲がりが発生している場合のサーチ再生用データと回転ヘッドのトレースパターンとの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 テープ
2 変調・復調部
3 C1エラー訂正部
4 ID検出部
5 キャプスタンモータ
6 マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記搬送手段により搬送されている上記記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生手段と、
上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記再生手段により上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生手段により再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出手段と、
上記検出手段により得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする再生装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記検出手段により得られる、上記回転ヘッドの1回の走査期間における第1の期間中に検出された上記同期ブロック数と、第2の期間中に検出された上記同期ブロック数との差分に基づいて上記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
回転ヘッドによりテープ状の記録媒体を走査して、当該記録媒体に独立して記録された通常再生用画像データと高速再生用画像データとを再生する再生手段と、
上記記録媒体を搬送する搬送手段と、
上記記録媒体を通常再生時よりも高速な所定速度で搬送し上記再生手段により上記高速再生用画像データを再生する高速再生において、上記回転ヘッドの1回の走査期間における第1の期間に得られる上記高速再生用画像データ中の同期ブロック数と第2の期間に得られる上記高速再生用画像データ中の同期ブロック数とを計数する計数手段と、
上記計数手段により計数された上記第1の期間に得られた同期ブロック数と上記第2の期間に得られた同期ブロック数との差分に基づいて上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする再生装置。
【請求項4】
上記制御手段は、更に上記再生手段により再生されたデータのトラック番号情報と目標トラック番号との差、及び上記同期ブロック数の差分に基づいて上記搬送手段を制御することを特徴とする請求項2又は3記載の再生装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記記録媒体に配置された上記高速再生用画像データの複数の記録領域のうち、特定の領域を上記回転ヘッドが走査しているときに得られた上記同期ブロック数の差分に基づいて上記搬送手段を制御することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の再生装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記記録媒体に配置された上記高速再生用画像データの複数の記録領域のうち、最も小さい領域を上記回転ヘッドが走査しているときに得られた上記同期ブロック数の差分に基づいて上記搬送手段を制御することを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の再生装置。
【請求項7】
上記第1の期間と上記第2の期間は同じ長さの期間であることを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の再生装置。
【請求項8】
上記通常再生用画像データ及び上記高速再生用画像データは、それぞれ多数の同期ブロックから構成されていることを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載の再生装置。
【請求項9】
上記高速再生用画像データは、上記高速再生時の上記記録媒体における上記回転ヘッドの走査軌跡に対応した所定の領域に記録されていることを特徴とする請求項2〜8の何れか1項に記載の再生装置。
【請求項10】
搬送手段により搬送されている通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生ステップと、
上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生ステップにて再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出ステップと、
上記検出ステップにて得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御ステップとを有することを特徴とする再生方法。
【請求項11】
搬送手段により搬送されている通常再生用画像データと高速再生用画像データとが記録されたテープ状の記録媒体を回転ヘッドにより走査して上記通常再生用画像データ及び高速再生用画像データを再生する再生ステップと、
上記搬送手段により記録媒体を高速搬送して上記高速再生用画像データを再生する高速再生モードにおいて、上記再生ステップにて再生された高速再生用画像データに含まれる同期ブロック数に基づいて、上記記録媒体における高速再生用画像データの記録位置と上記回転ヘッドの走査位置とのずれ量を示すトラッキングエラー情報を得る検出ステップと、
上記検出ステップにて得られたトラッキングエラー情報に基づいて、上記搬送手段による記録媒体の搬送動作を制御する制御ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−19645(P2007−19645A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196617(P2005−196617)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】