説明

再送信システム

【課題】無線免許が必要なく、装置の配置の仕方、装置の形状等について制約がなく、また、周波数の変更もない放送波信号の再送信システムを提供する。
【解決手段】複数の再送信用アンテナ7と、与えられた放送波信号を複数に分配し、与えられる基準信号に基づいて複数に分配された放送波信号にそれぞれ異なる位相量を与え、異なる位相量をそれぞれ与えられた複数の放送波信号を複数の再送信用アンテナにそれぞれ供給する送信側装置5を具備する送信ユニット4と、送信ユニット4の複数の再送信用アンテナ7から再送信された複数の放送波を受信する受信用アンテナ9と、受信用アンテナから送信ユニットに向けて送信する基準信号を発振する発振器20を具備する受信ユニット8からなる再送信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のTV端子とTV受信機のアンテナ入力端子を直接ケーブル接続することなく、TV端子からの放送信号を室内において再送信させる再送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル内や集合住宅、戸建住宅等の室内でTV放送を視聴・録画する際、一般的には室内の壁面等に設けられたTV端子へ屋外アンテナからの受信信号やCATV回線の信号を引き込み、TV端子とTV受信装置のアンテナ入力端子とを同軸ケーブル等の有線信号線で接続することで、TV受信装置にアンテナからの放送信号を供給している。
【0003】
しかし、同軸ケーブル等をTV端子からTV受信機に引き回すことは、TV受信機およびTV端子の室内設置場所に大きな制約を与えると共に、薄型化が進み背面デザインも重視されてきたTV受信機と部屋自体の美観を妨げる要因になっている。また、ワンセグ対応携帯電話を初めとする内蔵アンテナ以外に放送信号の入力手段を持たない可搬型の受信装置が増加し、直接放送波の届きにくい室内環境では、これら可搬型装置でTV視聴を行うことができない。これに対して、放送波を受信装置に供給するための様々な形態の再送信システムが提案されている。
【0004】
特許文献1は、放送波の室内再送信システムで放送波を室内に再放射することにより、TV端子とアンテナ入力端子のケーブルを無線化し、可搬型の受信装置への対応を含め室内受信の環境を改善させる再送信システムを開示している。
特許文献2は、電波の届かない室内に対して、放送波の室内再送信システムで放送波を室内に再放射することにより、TV端子とアンテナ入力端子のケーブルを無線化し、可搬型の受信装置への対応を含め室内受信の環境を改善させる再送信システムを開示している。
【0005】
特許文献3は、電界強度の制限が比較的ゆるい周波数帯域において再送信を行うべく、周波数の変換処理を行う再送信システムを開示している。
特許文献4は、伝送距離を極端に短くするための専用の受信環境を設けた再送信システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−128719号公報
【特許文献2】特開2004−128720号公報
【特許文献3】特開2005−12583号公報
【特許文献4】特開2008−34898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2においては、無秩序な電波放射は、他システムにとっての妨害要因となり、TV視聴を例にすれば近隣に対して受信障害を起こす原因になる。そのため、国内で言えば電波法で無線利用機器の周波数、電力、用途などの条件を規定し管理している。電波法では、図2で後述するように、TV放送の使用周波数帯でもある322MHz〜10GHzは最も厳しい条件の電界強度の許容値が3mの送信距離にて電界強度35μV/m(=31dBμV/m)となっている。従って、利用用途も加味すると同周波数帯で無許可・無免許に使用できる無線機器は、事実上、微弱無線局以外にはない。
【0008】
一方、日本の標準規格であるARIB−STDB31の「参加資料3地上デジタルテレビジョン放送用回線設計実施に向けた考え方」では、地上デジタル放送受信機の標準電界強度を60dBμV/mとしており、同規格での標準受信モデルを元に計算すると受信機の標準入力レベルは約46dBμVとなる。また、受信機の最小入力レベルは目標値として−75dBm(=34dBμV)としている。したがって、微弱無線局の電界強度下3mの距離での地上デジタル放送受信を想定すると、標準受信モデルに対し電界強度で約30dB、受信機最小入力レベルに対してでも約18dBも下回り、単純な無線送信では実用的な放送受信を行うことは不可能であるという問題がある。
【0009】
特許文献3は、この微弱無線局の制約を考慮した再送信システムとして、電界強度の制限が比較的ゆるい周波数帯域に再送信する信号の周波数を変換する再送信システムが開示されている。しかし、送信周波数を変換する方法は、再送信装置の送受信処理が複雑になるゆえ高価なシステムにならざるを得ず、再送信する波数や周波数配置にも制約が生じ、転居時や送信局の周波数再配置による放送周波数の変更に対して利用者に多大な負担を掛けるという問題がある。
【0010】
特許文献4は、伝送距離を極端に短くした専用の受信環境を用いる再送信システムを開示しているが、TV受信装置の寸法や機能配置に制約が生じ、本来の可搬型としての利点・利便性も犠牲にしてしまうという問題がある。
また、再送信システムを設けた際に、室内に直接入射する放送波と室内再放射した波が、互いに妨げ合い、最終的に必ずしも希望する受信状態になっていないという問題がある。
【0011】
本発明は、無線免許が必要なく、装置の配置の仕方、装置の形状等について制約がなく、また、周波数の変更もない放送波信号の再送信システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、室内に直接入射する放送波と室内再放射した波が互いに妨げ合うことなく希望する室内の受信点で最も強め合う状態になるよう制御・協調させることができる再送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決する一実施形態は、
放送波信号を受けて放送波として再送信する送信ユニットと、前記再送信された放送波を受信する受信ユニットを有している再送信システムにおいて、
前記送信ユニット(4)は、
複数の再送信用アンテナ(7)と、
与えられた放送波信号を複数に分配し、前記複数に分配された放送波信号にそれぞれ異なる位相量を与え、前記異なる位相量をそれぞれ与えられた複数の放送波信号を前記複数の再送信用アンテナにそれぞれ供給する分配部(5)を具備しており、
前記受信ユニット(8)は、
前記送信ユニット(4)の複数の再送信用アンテナ(7)から再送信された複数の放送波を受信する受信用アンテナ(9)と、
前記受信用アンテナから前記送信ユニットに向けて送信する基準信号を発振する発振部(20)を具備することを特徴とする再送信システムである。
【0013】
また、課題を解決する他の一実施形態は、
放送波信号を受けて放送波として再送信する送信ユニットと、前記再送信された放送波を受信する受信ユニットを有している再送信システムにおいて、
前記送信ユニット(4)は、
前記受信ユニットから報告される受信レベル情報に基づき、前記再送信する放送波の位相を可変して再送信用アンテナから送信する可変位相部(32)と、
前記可変位相部が再送信する放送波のオン/オフを制御する制御部(33)を具備し、
前記受信ユニット(8)は、
少なくとも前記再送信用アンテナから送信された前記放送波を受信し、前記受信した放送波の受信レベルを検出するレベル検出部(37)と、
前記レベル検出部が検出した前記放送波の受信レベルに基づく情報を前記送信ユニットに送信する通信部(39)と、を具備することを特徴とする再送信システムである。
【発明の効果】
【0014】
放送波信号を複数の再送信用アンテナに分配して、個々のアンテナ放射レベルを抑制することで、放送法の規定以下での放送波信号の再送信が可能となる。また、送信ユニット及び受信ユニットの再配置の度に位相を調整して、通信効率を最適化することができる。
【0015】
また、再送信システムを室内に設置した際に、希望する室内の受信点において、放送局から直接室内へ入射される放送波と、再送信システムの送信ユニットから再送信される放送波が協調するように位相制御を行なうことで、受信したいチャンネルの放送波の受信レベルの強度を最良とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る再送信システムの一例を示すブロック図。
【図2】当該再送信システムが遵守すべき微弱無線局の電界許容量の一例を示すグラフ。
【図3】当該再送信システムの送信側装置の構成の一例を示すブロック図。
【図4】当該再送信システムの受信側装置の構成の一例を示すブロック図。
【図5】当該再送信システムにおいて受信ユニットから送信ユニットに位相制御を行う際の動作の一例を説明する説明図。
【図6】当該再送信システムにおいて受信ユニットから送信ユニットに位相制御を行う際の動作の一例を説明する説明図。
【図7】当該再送信システムの第2の実施形態の一例を示すブロック図。
【図8】当該再送信システムの他の実施形態の位相制御部の構成を示す回路図。
【図9】当該再送信システムの他の実施形態のレベル計測部の構成を示す回路図。
【図10】当該再送信システムの第3の実施形態の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
初めに本発明の一実施形態に係る再送信システムは、上述した課題を解決するべく、
(1)無線局免許など使用者、使用場所の制約が無く、安易に扱えるシステムとしたい。
(2)再送信ユニットの設置場所は制約を少なくし、レイアウトの変更も容易にしたい。
(3)再送信する周波数は、変更することなく、本来の周波数を維持したい。
(4)多様な受信機の形状や機能に対する制約を極力なくして、受信機の本来の機能・性能を維持したい、
等の要望・課題に対して対応可能な構成を考慮した。
【0018】
(構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る放送波信号の再送信システムの一例を示すブロック図である。再送信を行う部屋1が示される図1において、部屋1には再送信すべき放送信号がTV宅内配線2によりTV端子3に引き込まれているものとする。TV端子3の出力は受信機の特性に対応して、最小34dBμV(−75dBm)から最大89dBμV(−20dBm)の範囲を満たすように通常は調整されている。
【0019】
また、送信ユニット4は、送信側装置5と、N個(Nは2以上の整数)の再送信用アンテナ7−1〜7−N(これらを総称する場合、再送信用アンテナ7と呼ぶ)を有している。送信側装置5は、TV端子3の出力が同軸ケーブルを介して入力される。送信側装置5で処理された信号は、再送信用アンテナ用ケーブル6を介して再送信用アンテナ7から放射される。再送信用アンテナ7−1〜7−Nは、室内の天井、壁面、あるいは床などに再送信する周波数帯の波長以上の間隔で配置することで、各々独立したアンテナとして性能発揮することが可能となる。
【0020】
そして、各アンテナの出力を、電波法で規定した電界強度の許容値である、3mの送信距離にて電界強度35μV/m(=31dBμV/m)を越えないようTV端子3の出力レベルと送信側装置5の分配数に応じ適正に設定する。同設定は、TV端子3と送信側装置5の間に一般的な減衰器(あるいは増幅器)を加えることで容易に行うことができる。
【0021】
一方、受信ユニット8は、1つの受信用アンテナ9と、受信側装置10とで構成される。受信機11は、TV視聴の目的となる受信機である。
受信用アンテナ9は、市販の室内受信用テレビアンテナや、簡易なロッドアンテナ、等の任意の指向性或いは無指向性アンテナである。受信側装置10は、送信側装置5と対をなす機器であり、受信用アンテナ9と受信機11との接続の間に設けられる。位相制御指示装置12は、利用者が送信側装置5及び受信側装置10に対し位相制御の指示を行うためのもので、本実施形態の再送信システムに専用の赤外線リモコン、或いは受信機11に付属のリモコンである。
【0022】
次に、送信ユニット4の送信側装置5の構成を図3を用いて説明する。送信側装置5は、再送信運用時と位相制御時の信号の流れを切り替える経路切替器13と、これに接続され入力される放送波信号を再送信用アンテナの数に分配する分配器14と、これに接続されており再送信用アンテナ7への信号位相を可変する複数の可変位相器15と、位相制御時に受信用アンテナから放射された基準信号のレベルを検知するレベル検知器16と、レベル検知器16の信号を元に各再送信用アンテナ7への位相を制御する制御部17と、利用者の赤外線リモコン等による指示を受け取る受光部18と、ACアダプタや電池等の電源(図示せず)を有している。経路切替器13は、再送信運用時にはTV端子3からの信号を分配器14に導き、位相制御時には、分配器14からの信号をレべル検知器16に導く。経路切替器13は、望ましくは、電源が途絶えたときに再送信運用時の経路に切り替る。可変位相器15は、例えば、可変容量コンデンサ等を用いた電圧制御位相器であり、再送信用アンテナの数Nより1少ない数だけ設けられる。レべル検知器16は、基準信号のみのレベルを検知できることが望ましく、一例として狭帯域の帯域通過フィルタとダイオード検波器を組み合わせたものである。
【0023】
また、受信ユニット8の受信側装置10は、図4に示すように、再送信運用時と位相制御時の信号の流れを切り替える経路切替器19と、送信側の位相制御の基準信号の元となる発振器20と、利用者の赤外線リモコン等による指示を受け取る受光部21と、全体の動作を制御する制御部22と、ACアダプタや電池等の電源(図示せず)とを有している。
経路切替器19は、再送信運用時(及び電源断時)には受信用アンテナ9からの信号を受信機11に導き、位相制御時には、発振器20からの信号を受信用アンテナ9に導く。なお、基準信号は、周波数帯が再送信する放送の周波数帯に略一致していればよく、処理が容易な無変調信号(トーン信号)でよい。一例として、放送波のチャンネルが多く存在する周波数付近で、隣接チャンネルの隙間の周波数に固定するか、位相制御指示装置12の指示により周波数を視聴対象のチャンネルの周波数に応じて(そのすぐ近傍に)設定可能なものとする。受信側装置10の電源として、受信機11のアンテナ端子から衛星放送受信コンバーター用に重畳出力されるDC15Vや、受信側装置10が内蔵する電池等を利用する。
【0024】
(動作)
上述したような構成をもつ再送信システムは、以下のように、位相制御処理及び放送波再送信処理を行うものである。図5は、当該再送信システムにおいて受信ユニットから送信ユニットに位相制御を行う際の動作の一例を説明する説明図、図6は、当該再送信システムにおいて受信ユニットから送信ユニットに位相制御を行う際の動作の一例を説明する説明図である。
【0025】
すなわち、図5において、利用者は受信ユニット8を受信機11の近傍に設置した上で、位相制御指示装置12で位相制御の指示を行う。位相制御開始の指示が与えられると受信側装置10内の制御部22は、経路切替器19の経路を発振器20と受信用アンテナ9を結ぶ経路に切り替え、受信用アンテナ9は位相制御の目安となる基準信号を放射する。
【0026】
そして、図6に示されるように、受信用アンテナ9は、位相制御時は基準信号の送信用アンテナとして働き、放射された基準信号は、再送信運用時の再送信波と同じ距離および経路にて、送信ユニット4の位相制御時は受信用アンテナとして働く各再送信用アンテナ7−1〜7−Nに届く。ここで、各伝播路の位相を考えるため、基準となる位相調整点25を分配器14の分配直前の位置におく。放送波と基準信号の周波数が略一致していれば、基準の再送信用アンテナ7−1と受信用アンテナ9との距離(再送信用アンテナ用ケーブルも含む)をL、距離をLによる位相(L1・ω/c)と分配器14の位相を加えた位相調整点25での位相をφ(−π≦φ≦π)とし、再送信用アンテナ7−2についても同様にφを定義したときに、φ=φ+φVAになるように可変位相器15−2の位相を制御すれば、経路切替器13を経てレベル検知器16に届く受信ユニットからの受信信号レベルは最大になる。
【0027】
後は同じ原理で、再送信用アンテナの数がN本あれば、一つずつ位相可変器の位相をレベル検知器16に届くレベルが最大になるよう順番に制御部17が制御していくことで、システムは最適な位相状態に設定される。
位相制御処理から放送波再送信処理への復帰(経路切替器13、19を再送信状態に戻すこと)は、予め制御時間は想定できるので制御部17、20が内蔵するタイマーを用いて送受共に自動復帰させることが可能であるが、位相制御状態への移行と同様に利用者の意思で位相制御指示装置12の操作に従って、放送波再送信処理へと戻すことも可能である。
【0028】
結果として、再送信運用時の送信方向において受信点が最適な位相状態になり、受信点近傍では受信レベルは最大となる一方、他の場所においては、TV端子出力信号レベルが分配され放射したままの計算された信号レベルとなって、電波法の規定の値以下となることが期待でき、他のシステムへの妨害要因となることを防止できる。
【0029】
より良い形態として、受信機11に付属のリモコンと連動し、該リモコンからチャンネル操作されるたびに、指定されたチャンネルの周波数において最適な位相制御が行われることが望ましい。つまり、送信側装置5の制御部17は、所定のチャンネルに対し一度上述の方法で位相制御されると、各可変位相器15の制御値を該チャンネルに対応付けて記憶し、以後制御値が記憶されたチャンネルが指定されたときは、記憶された制御値を単に読み出して各可変位相器15に与える。また受信側装置10の制御部22は、該リモコンから指定されたチャンネルに応じた周波数で発振器20に基準信号を所定時間発振させる。或いは固定の基準周波数で一度位相制御をし、他の周波数に関してはその制御値を所定の計算式で補正して用いる。受信機11付属リモコンとの連動は、該リモコンからの信号を直接受信(受光)するもに限らず、受信機11を経由して無線LAN、IEEE802.15.1(Bluetooth)(登録商標)、IEEE802.15.4(ZigBee)(登録商標)等で受信しても良い。
【0030】
一方、位相制御がチャンネル選択に関わらず固定ならば、位相制御指示装置12はリモコンである必要はなく、利用者による位相制御開始と終了の意思が送信ユニット4と受信ユニット8にほぼ同時に伝えられれば、有線装置やタイマーなどの仕組みを用いてもよく、或いは単に送信側装置5と受信側装置10の双方に操作ボタンを設けてもよい。なお、この実施形態は受信用アンテナ9を単数としているが、原理上、受信用アンテナ9が複数本あっても単純に受信信号を結合すれば問題なく制御可能であり、同様の効果を得ることが可能である。
【0031】
また、内蔵アンテナ以外に放送信号の入力手段を持たない可搬型の受信装置に対しても、受信ユニット8を単に受信機11の近傍に置いて位相制御を指示する(つまり、受信ユニット8の出力端子は未接続)ことにより、同様の効果を得ることができ、位相制御後は受信ユニット8は片付けてよい。また、携帯電話等の近隣の周波数への妨害を完全に防ぐため、送信側装置5にそれらの帯域の遮断フィルタを備えてもよい。また、再送信用アンテナ7の1つは、再送信用アンテナ用ケーブル6を介せずに送信側装置5に直接接続されても良い。また、本例の再送信システムは、サラウンドスピーカシステムと一体に構成されても良い。すなわち、通常部屋の四隅に置かれる4つのスピーカのそれぞれに再送信アンテナを内蔵し、望ましくはスピーカへの音声信号を再送信用アンテナ用ケーブル(同軸)に重畳させて伝送する。これにより美観を損ねることなく受信点を取り囲むような理想的なアンテナ配置にすることができる。
【0032】
以上、上述した本発明に係る再送信システムの実施形態によれば、特別な場合を除き、TV端子3は受信機の最大入力レベル以下に管理されているゆえ、再送信用アンテナ7を適切な数に分配することにより、特に減衰器を用いなくとも、個々のアンテナ放射レベルが規制以下に抑制されることになる。また、各再送信用アンテナの送信波の焦点となる受信点以外では微弱な電界となり、電波法が規定する微弱無線局の電界許容値以下にほぼ維持できる。
【0033】
(受信ユニットから与えられる信号レベルを用いて位相制御する場合)
次に、本発明に係る再送信システムの他の実施形態として、受信ユニットから与えられる信号レベルを用いて位相制御を行う場合を図7乃至図10を用いて以下に説明する。図7は、当該再送信システムの第2の実施形態の一例を示すブロック図、図8は、当該再送信システムの他の実施形態の位相制御部の構成を示す回路図、図9は、当該再送信システムの他の実施形態のレベル計測部の構成を示す回路図である。
【0034】
日本の地上デジタル放送信号の場合、さまざまな遅延時間の信号が合成されても、同一の情報を持つ信号(シンボル)で、その各遅延時間がガードインターバル(126μ秒)以内に収まっていれば、信号劣化(シンボル干渉)を生じさせない仕組みが取られている。この126μ秒を距離に直す(×光速)と37.8Kmにあたり、室内伝送としては十二分に長い距離と考えてよい。従って直接室内に入射する波と多少の遅延が想定される再放射波は絶対時間で同期する必要は無く、受信希望場所で互いのレベルを強めあうように合成できれば、それが最良の状態となる。
【0035】
すなわち、第2の実施形態の再送信システムにおいては、受信ユニットを受信希望場所の近傍に設置し、レベル計測するチャンネルを視聴希望チャンネルに設定し、最初に送信ユニット側で再放射をオフした状態(放送局から室内へ直接に放射される放送波のみ)の受信ユニットでの受信レベルを計測する。次に再放射をオンさせて受信レベル変化の報告を確認しつつ放射する位相を順次変化させれば、受信レベルが最大となる位相を検出し、同送信ユニットが設定・保持すべき最良の位相を見出すことができる。なお、第2の実施形態においては、再送信される放送波だけではなく、直接の放送波も十分利用するので、送信ユニットの再送信アンテナは1つのみで必要な受信レベルを得ることができる。
また、再送信システムを複数のアンテナで構成する場合にも、各アンテナに対応する送信ユニット毎、順番に同様な位相制御を実施すればよい。
【0036】
次に、この再送信システムの第2の実施形態の構成を以下に説明する。なお先の実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図7において、ガラス窓31から入射する放送波が入射している様子が表されている。
【0037】
また、送信ユニット4は、送信側装置5−2と、再送信用アンテナ7を有している。送信側装置5−2は、TV端子3の出力が同軸ケーブルを介して入力される。送信側装置5−2で処理された信号は、再送信用アンテナ用ケーブル6を介して再送信用アンテナ7から放射される。また、受信ユニット8は、受信用アンテナ9とこれに接続され、信号レベルを検出する受信側装置10−2を有しており、受信機11の近傍に置かれて接続され、受信用アンテナ9が受信するアンテナ信号を受信機11に供給する。
【0038】
また、送信ユニット4内に設けられる送信側装置5−2は、図8に示すように、再送信される放送波の位相を制御する可変位相器32と、再送信される放送波のオン/オフを制御するオン/オフ回路33と、可変位相器32およびオン/オフ回路33を制御する制御部34と、赤外線や無線信号を用いて受信ユニット8等と通信を行なう無線通信部35と、電池等の電源(図示せず)を具備している。制御部34は、例えば、低消費電力のマイクロコンピュータであり、リチウム電池で数年間使用できることが望ましい。
【0039】
また、受信ユニット8内に設けられる受信側装置10−2は、図9に示すように、受信用アンテナ9からの信号を2分配し一方を受信機11に出力する分岐器36と、分岐器36の他方の出力に接続され、受信用アンテナ9で受信される放送波(放送局から送信される直接の放送波および送信ユニット4の再送信用アンテナ7からの再送信波)の信号レベルを検知するレベル計測器37と、レベル計測器37の動作を制御する制御部38と、赤外線やIEEE802.15.4等の無線信号を用いて送信ユニット4等と通信を行なう無線通信部39と、電源(図示せず)を具備している。
【0040】
分岐器36は、レべル計測器37へ分岐量(結合量)が小さくなっており、入力電力のほとんどが受信機11に出力されるので、増幅器を設けなくても受信機11へのアンテナ出力の品質が落ちることはない。
レべル計測器37は、制御部38から指定されたチャンネルの受信レベルを検出するものであり、周波数シンセサイザ、ミキサ、チャンネルフィルタ(帯域通過フィルタ)、検波器等で構成される。レベルの相対的変化さえ検出できれば良いので、入力信号の増幅もCN劣化量(キャリアに対するノイズの増加量)を意識しないラフな増幅でよい。後述するように、受信レベルや品質等に関する情報が受信機11から得られる場合、レべル計測器37は不要である。
【0041】
このような構成をもつ本発明の一実施形態に係る再送信システムにおいては、以下のように送信ユニット4から受信ユニット8への位相制御処理および再送信処理が行なわれる。すなわち、まず受信機11近傍に置かれた受信ユニット8の受信側装置10−2に、受信機11で受信する放送局のチャンネル(視聴希望チャンネル)を設定する(レベル計測器37を備えた場合)。設定の方法は本発明の本質では無いので詳細は省略するが、受信機11にはリモコンに連動させることが望ましい。
【0042】
或いは、受信機11に無線通信手段が備えられていれば、受信側装置10−2が、受信機11が受信中のチャンネルの周波数及び受信レベル等を問い合わせて、それらを取得してもよい。受信機で一般的に使用されるAGC(Auto Gain Control:自動利得制御)機能を持つチューナでは、AGC制御電圧から容易に受信レベルに相当する情報を得ることができる。受信側装置10−2は、受信チャンネルが設定されると、分岐器36からレべル計測器37に入力される信号の計測すべき帯域を、設定された受信チャンネルに合わせる。特殊なチャンネルプリセットを行っていない限り、チャンネル番号から周波数を特定できる。
【0043】
そして、受信側装置10−2のレべル計測器37は、一定の間隔で、受信用アンテナ9から供給される放送波(放送局から室内に直接入射している放送波と送信ユニット4から送信される再送信波(もしあれば)が合成されたもの)のレべル計測を開始し、対応する送信ユニット4に対して制御開始の指示をチャンネル番号を含めて無線通信部39を介して通知する。
【0044】
送信側装置5−2の制御部34は、制御開始の指示を受信すると、指示されたチャンネル番号に対して以前の位相制御で得られた結果が記憶されているか判断し、記憶されていれば、可変位相器32やオン/オフ回路33にその記憶された制御値を与え、制御を終了する(待機状態となり、以後のレべル計測結果報告に対して何もしない)。記憶されていなければ任意の初期制御値を与え、オン/オフ回路33をオンさせる。
【0045】
受信側装置10−2は、一定時間後にレべル計測の結果報告(最初)を送信側装置5−2に通知する。
送信側装置5−2は、最初のレべル計測結果報告を受信すると、即座に可変位相器32に別の制御値(例えば先の制御値による位相と+180度異なる位相を与える制御値)を与えると共に、後の比較のために必要に応じてそれを一時的に記憶する。
【0046】
受信側装置10−2は、一定時間後にレべル計測の結果報告(2回目)を送信側装置5−2に通知する。
送信側装置5−2は、2回目のレべル計測結果報告を受信すると、即座に(必要に応じて前回の結果報告を参照して)前回よりレベルが増加したか減少したかを判断し、増加していれば、別の制御値(現在の制御値による位相と+60度異なる位相を与える制御値)を、減少していれば、前回の制御値を基準に別の制御値(前記(初期の)の制御値による位相と+60度異なる位相を与える制御値)を、可変位相器32に与えると共に、後の比較のために必要に応じて結果報告を一時的に記憶する。
【0047】
以降も同様に制御値による位相の修正量を減らしながら、試行によりレベルが増加する制御値を探す。位相の可変範囲に対してレベルは1つの最大点、最小点しか取らないため、このような制御でも所定回数後には最適な位相に収束させることができる。
送信側装置5−2の制御部34は、所定回数後或いは収束した又は制御異常と判断した時点で、そのときの制御値を保持し、オン/オフ回路33をオフにする。その後、受信側装置10−2からレべル計測結果報告を受信すると、オン/オフ回路33をオフする直前よりレベルが増加したか減少したかを判断し、減少していれば保持しておいた収束時の制御値を可変位相器32に与えオン/オフ回路33を再びオンし、増加していれば、オン/オフ回路33をオフのままとし、制御を終了する。制御終了時には、制御結果を記憶する。また受信側装置10−2も、所定回数後には一定間隔のレべル計測を終了し、電力消費並びに不要なノイズ放射を抑えた最適な待機状態に入る。
【0048】
なお、伝播路は、室内1で人が移動するだけでも変化し、前回の位相制御が現在においても最適とは限らない。そこで前回の制御値が記憶されている場合、その前回の制御値を初期値とし、制御値に摂動を与えながらレベルの変化に応じて制御値を微調整し、更新するとよい。
【0049】
この実施形態の再送信システムでは、受信側装置10−2から送信側装置5−2への一方向の通信で説明したが、双方向通信を用いれば、より信頼性の高い高度な制御ができるほか、アンテナ数等の情報を送信側装置5−2から取得することで、受信側装置10−2で収束制御を行わせることもできる。また、受信側装置10−2は、受信機11に内蔵されても良い。IEEE802.15.4等のホームネットワークインタフェースを備えた受信機であれば、ファームウェアの改修だけでこの実施形態のシステムに容易に適合できる。
【0050】
なお、図10に示すように、第2の実施形態である『受信ユニットから与えられる信号レべルを用いる再送信システム』においても、図10に示すように、第1実施形態と同様にアンテナを複数設けて再送信を行なうことができる。再送信アンテナが1本では十分な受信レべルを得ることができない場合、複数のアンテナとすることで必要な受信レべルを得ることができる。
また、複数の送信ユニット4が存在する場合には、送信側装置5−2や受信側装置10−2に識別番号を設け、受信側装置で非占有状態の各送信ユニットに対し上記同様の制御を行うことで、受信ユニット近傍で最良な放射位相状態を構築できる。以下簡単にネットワークを自己形成するIEEE802.15.4を用いた一例を説明する。識別番号として、ブロードキャスト等で容易に取得可能なIEEEアドレスを用い、受信側装置が自分と同じアプリケーション・オブジェクト(Application Object)を持つエンドデバイス(つまり送信側装置)を探す過程で、ノードディスクリプタやシンプルディスクリプタを受信する際にRSSI(RX Signal Strength Indicator)を取得する。そして、RSSIが所定値以上(つまり近距離にある)の送信側装置とアプリケーションレベルで通信を行う。まず、送信側装置は、現在その送信側装置を位相制御の対象としている受信側装置が既にあり、その識別番号が、今の通信相手の受信側装置と異なる場合はBUSYを、それ以外の場合はREADYを、受信側装置からの問合せに応じ或いは自発的に通信相手の受信側装置に通知する。受信側装置は、BUSYを通知した送信側装置を位相制御の対象から一定期間除外し、READYを通視した送信側装置に対し、アプリケーションレベルにおいて上述したような位相制御のための通信を引き続き行う。このような排他制御のほか、単純に受信側装置と送信側装置とをペアリングする方法でも良い。
【0051】
以上説明したように本発明の再送信システムによれば、直接放送波の届きにくい室内環境でも、機器内蔵ないしは機器に直接接続されるアンテナを用いて地上デジタル放送を視聴する際に希望する室内の受信点で最も良い電波状態になるよう位相制御を行なうことで、室内入射放送波と室内再放射した放送波の協調する最良な環境を実現することができる。
【0052】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1…室内、2…アンテナ宅内配線、3…アンテナ端子、4…送信ユニット、5・5−2・5−3…送信側装置、6…配線、7−1〜7−N…再送信用アンテナ、8…受信ユニット、9…受信用アンテナ、10・10−2…受信側装置、11…受信機、12…可変位相器、13…可変位相器、14…分配器、15…可変位相器、16…レベル検知器、17…制御部、18…受光部、19…経路切換器、20…発振器、21…受光部、22…制御部、25…位相調整点、31…ガラス窓、32…可変位相器、33…オン/オフ回路、34…制御部、35…無線通信部、36…分岐器、37…レベル計測器、38…制御部、39…無線通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送波信号を受けて放送波として再送信する送信ユニットと、前記再送信された放送波を受信する受信ユニットを有している再送信システムにおいて、
前記送信ユニットは、
複数の再送信用アンテナと、
与えられた放送波信号を複数に分配し、前記複数に分配された放送波信号にそれぞれ異なる位相量を与え、前記異なる位相量をそれぞれ与えられた複数の放送波信号を前記複数の再送信用アンテナにそれぞれ供給する分配部を具備しており、
前記受信ユニットは、
前記送信ユニットの複数の再送信用アンテナから再送信された複数の放送波を受信する受信用アンテナと、
前記受信用アンテナから前記送信ユニットに向けて送信する基準信号を発振する発振部を具備することを特徴とする再送信システム。
【請求項2】
前記送信ユニットは、
前記与えられた放送波信号を前記分配部に供給するための第1経路と、前記受信ユニットの前記受信用アンテナから供給された前記基準信号を前記分配部に供給するための第2経路とを切り替える第1経路切替器を有しており、
前記受信ユニットは、
前記受信用アンテナから供給される再送信された複数の放送波信号を外部に出力するための第3経路と、前記発振部からの前記基準信号を前記受信用アンテナに供給するための第4経路とを切り替える第2経路切替器を有することを特徴とする請求項1記載の再送信システム。
【請求項3】
放送波信号を受けて放送波として再送信する送信ユニットと、前記再送信された放送波を受信する受信ユニットを有している再送信システムにおいて、
前記送信ユニットは、
前記受信ユニットから報告される受信レベル情報に基づき、前記再送信する放送波の位相を可変して再送信用アンテナから送信する可変位相部と、
前記可変位相部が再送信する放送波のオン/オフを制御する制御部を具備し、
前記受信ユニットは、
少なくとも前記再送信用アンテナから送信された前記放送波を受信し、前記受信した放送波の受信レベルを検出するレベル検出部と、
前記レベル検出部が検出した前記放送波の受信レベルに基づく情報を前記送信ユニットに送信する通信部と、を具備することを特徴とする再送信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−220190(P2010−220190A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265464(P2009−265464)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】