説明

冷凍ウニおよびその製造方法

【課題】解凍後も冷凍前の良好な食感および食味が得られる冷凍ウニおよびこの冷凍ウニの製造方法を提供する。
【解決手段】温水に動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解した処理溶液を生成し2、該処理溶液に生ウニを浸漬し3、この浸漬処理した生ウニの液切り4をして、急速冷凍5してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍後の食味および食感が良好な冷凍ウニおよびこの冷凍ウニの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生ウニを商品化するのに、採取したウニを殻割りして生殖巣(以下、生ウニという)を取り出し、ピンセット等で内臓等を取り除きながら傷がない良質の生ウニを選別している。この場合に、生ウニの原形を維持するためにミョウバン液に浸漬した後、十分に水切りして、経木で製作した折箱にスプーン、フォーク等を使って並べて収納している。また、この生ウニ用の折箱を積み重ねた状態で出荷している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この折箱を用いる従来技術にあっては、生ウニの下面が折箱の底面に接しているために、生ウニから滲出するドリップや水分が折り箱に吸収され、この折箱に染みとなって残り、その汚れが目立って不衛生になるほか、生ウニの表面側の水分が速やかに失われることによって硬くなり、食味、食感が大きく損なわれるという不都合があった。
【0004】
一方、これに対して、生ウニの商品化のために、生ウニを浸漬する浸漬水(例えば、無菌の塩水)を収容した透明の容器本体と、この容器本体に開閉自在に取り付けられる蓋体と、前記浸漬水の液切りをすることができ、かつウニが通過することがない小孔を有する液切り用中仕切り具からなるウニ収納容器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このウニ収納容器では、前記蓋体を容器本体から取り外し、この容器本体を前記液切り用中仕切り具とともに反転させて、この前記液切り用中仕切り具を介して浸漬水を排出することができる。これにより浸漬水に浸漬されていたウニを前記液切り用中仕切り具に載置させて、食用または調理に供することができる。
【0005】
しかし、このような液切り用中仕切り具を持つ前記ウニ収納容器にあっては、容器本体を逆さにして水切りするために液切り用中仕切り具が必要であり、これを収納容器や蓋体とは別に用意するために、コスト高になるという不都合があった。また、浸漬水に生ウニを入れて流通させる場合に、10℃以下の低温ででも保存がきかず、天候の変化によっては、品質が安定したウニの流通が不可能になるという不都合がある。
【0006】
ところで、前述のように折箱上に水切りした生ウニを並べて展示、販売したり出荷したりする場合や、生ウニを容器本体内の浸漬水に浸した状態で流通させたり、展示、販売したりする場合に、食用に供されるまでの期間が長くなると、ウニ自体の品質劣化が進んで食味、食感が悪くなり、長期保存が全く困難になる、このため、この生ウニを−190℃の窒素凍結方法等で冷凍する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−104570号公報
【特許文献2】特開2003−128139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記窒素凍結方法による生ウニの冷凍品は、この生ウニの解凍を行った際に肉質が溶けるように軟弱化し、ドリップ(蛋白質、アミノ酸、塩類、ビタミンなどの栄養分や旨みを含んだ水分など)の滲出が顕著となり、冷凍前の食味、食感が失われてしまう。これは冷凍の過程で膨張して細胞を壊しながらできる大きな氷の結晶(例えば、100〜200ミクロン)が、解凍したときにドリップ(蛋白質、アミノ酸、塩類、ビタミンなどの栄養分や旨味を含んだ水分や皿)となって流れ出してしまうことに原因がある。このため、細胞が破壊された生ウニでは、解凍によってドリップの流出(滲出)が顕著になり、生ウニとしての食味、食感が前述のように悪くなってしまう。
【0009】
また、解凍時に肉質を溶解し難い強さ、硬さにしようとする試み(例えば、ミョウバンや塩化カルシュームの溶液に浸漬)がなされている。この場合にはある程度、冷凍前の食感が得られるものの、食味の悪化は避けられないという不都合があった。
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、解凍後も冷凍前の良好な食感および食味が得られる冷凍ウニおよびこの冷凍ウニの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる冷凍ウニは、温水に動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解した処理溶液に、生ウニを浸漬し、この浸漬処理した生ウニの液切りをして、急速冷凍してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る冷凍ウニは、前記動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解する温水は、50℃〜100℃であり、前記生ウニを浸漬処理する処理溶液は、35℃〜60℃であり、前記動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物と塩の添加物は、100重量%全体で占める割合が、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10〜20重量%の配合割合であり、前記処理溶液は、この配合割合の添加物を温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合してなる溶液であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る冷凍ウニの製造方法は、温水に動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解して処理液を作成し、この処理液に生ウニを浸漬し、この浸漬処理した生ウニを取り出し液切りを行い、急速冷凍することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の請求項4に係る冷凍ウニの製造方法は、前記動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解する温水は、50℃〜100℃であり、前記生ウニを浸漬処理する処理溶液は、35℃〜60℃であり、前記動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物と塩の添加物は、100重量%全体で占める割合が、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10〜20重量%の配合割合であり、前記処理溶液は、この配合割合の添加物を温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合してなる溶液であることを特徴とする
【0015】
この構成によれば、動物性蛋白質系コラーゲン、植物性アルギン酸化合物の成分がそれぞれ持つ増粘機能、ゲル化機能等によって、また、急速冷凍によって氷の結晶が超微小となり、冷凍時にウニの細胞の内部組織が破壊されることを防止する。従って解凍した後のウニの食感および食味は、略冷凍前の状態に保つことができるとともに、前記冷凍によって保存期間を十分に長くすることができる。
【0016】
また、この冷凍ウニの製造方法によれば、細胞の内部組織が破壊されることがないように、容器内のウニが急速冷凍され、例えば3〜5μという超微小の氷の結晶によってウニの細胞の破壊を防止でき、このウニを長期に亘って冷凍保存しても、解凍した後は冷凍前の生ウニと略等しい食感および食味のウニが得られる。
【0017】
なお、ここで動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物と塩(以下、これらを総合して添加物という。)の添加溶解は、常温の水でも可能であるが、温水の方が添加物が早く良く溶解するので好ましい。この温水に配合した添加物は、十分に撹拌し良く溶解させるのが、ウニへの冷凍時の保護作用が向上し好ましい。この撹拌、溶解の作業は、手動操作や自動機械使用のいずれの方法によっても実施できる。
温水の温度を50℃〜100℃としたのは、動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物をよく混和させて溶解させるには、この程度の温度が必要であり、100℃を超えても使用可能であるが、後工程の生ウニの浸漬するときの温水の温度が35℃〜60℃の範囲であるから、それ以上の高温ではその温度まで冷却するのに時間、手段、費用等がかかるので好ましくなく、50℃未満では動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アレギン酸化合物との混和溶解が不充分になるおそれがあるからであり、好ましくは60℃〜80℃の範囲、特に好ましくは65℃〜75℃の範囲がよい。
【0018】
また、ウニを浸漬処理する処理溶液の温度を35℃〜60℃としたのは、60℃を超えると、ウニを浸漬処理するとウニがブラッチングしたようになり、ウニの品質が低下し、35℃未満ではウニの浸漬処理効果が低下するし、ウニの浸漬処理も長時間が必要となるからである。処理溶液の温度は高い程、温水の温度の冷却が不要となり製造工程は容易となるが、ウニの品質保持を優先させるので60℃以下がよい。好ましくは45℃〜50℃の範囲がよい。
【0019】
また、添加物の配合割合を、100重量%全体で占める割合で、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10重量%〜20重量%としたのは、実施試験の結果、互いの添加物の相乗効果でこの範囲が好ましい結果であったので、この範囲とした。
また、この配合割合の添加物を温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合した処理溶液としたのは、0.002重量%未満では、効果が発揮されず、2.0重量%を超えると品質に悪影響を与えるので、この範囲とし、好ましくは0.005重量%〜1.0重量%の範囲がよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷凍ウニおよび冷凍ウニの製造方法によれば次のような効果を奏する。
(1)本発明の冷凍ウニは、解凍後も冷凍前の生ウニと略同様な品質、例えば、同様な食感および食味である。
(2)冷凍ウニなので、長期にわたって品質を保持することができる。
(3)本発明の冷凍ウニの製造方法によれば、解凍後も冷凍前の生ウニと略同様に良好な品質、例えば、食感および食味が得られる冷凍ウニを得ることができる。
【0021】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による冷凍ウニの製造手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る冷凍ウニの製造手順を示す工程図であり、準備工程1、浸漬処理液生成工程2、生ウニ浸漬工程3、液切り/定量工程4、急速冷凍工程5とからなる。
【0024】
まず、準備工程1では、温水、動物性蛋白質系コラーゲン、植物性アルギン酸化合物および塩(例えば、食塩)を用意する。
温水は、50℃〜100℃の範囲とする温水は殺菌水を用いるのが望ましい。動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アレギン酸化合物をよく混和させて溶解させるには、温水はこの程度の温度が必要であり、後工程の生ウニ浸漬工程3で生ウニを浸漬処理する温水(処理溶解)の温度が35℃〜60℃の範囲であることを考慮すると、100℃を超える高温では浸漬処理する温度まで冷却するのに時間、手数、費用等がかかるので好ましくなく、50℃未満では、動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アレギン酸化合物との混和溶解が不充分になるおそれがあるから、温水の温度は50℃〜100℃の範囲がよく、好ましくは60℃〜80℃の範囲、特に好ましくは65℃〜75℃の範囲がよい。
【0025】
ここで、前記動物性蛋白質系コラーゲンは多細胞動物の細胞外基質の主成分となるものであり、水に溶けるなど独特の物理的、化学的性質を持ち、化粧品や補助食品ゼリーの原料となるものである。その原料はウシやブタなどの皮膚、骨および魚類である。植物性アルギン酸化合物は、例えば昆布などの海藻類に多い粘性多糖類を含み、ヌルヌルやネバネバした成分を持つ。植物性アルギン酸化合物は、例えば、粘性多糖類を多く含む昆布を、炭酸ソーダで溶解して生成し、アルギン酸ソーダが主成分であり、例えば、ゲル化剤として用いられる。
【0026】
次の浸漬処理溶液生成工程2では、前記温度範囲の温水、例えば70℃の温水に、動物性蛋白質系コラーゲン、植物性アレギン酸化合物および塩(例えば、食塩)を、100重量%全体で占める割合で、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10重量%〜20重量%の配合比率の添加物を、温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合し、十分に撹拌し溶解して浸漬処理溶液を得る。添加物の配合例として、動物性蛋白質系コラーゲン40重量%、植物性アルギン酸化合物45重量%、塩15重量%の配合比率を例示することができ、この配合比率で配合して生成した添加物を、例えば、温水8000リットルに対し40gを添加配合して0.5%浸漬処理溶液を得る。
温水への添加物の添加配合は、100重量%全体で占める割合で、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10重量%〜20重量%の配合比率で配合し十分に混合した添加物を予め生成しておき、この生成した添加物を温水に添加配合してもよいし、動物性蛋白質系コラーゲン、植物性アルギン酸化合物および塩の各々を、前記配合比率で別々に直接温水に添加配合して撹拌溶解してもよい。
【0027】
次に、生ウニ浸漬工程は、前記浸漬処理溶液生成工程2で得た浸漬処理溶液に、用意された生ウニの所定量を浸漬処理する。この生ウニを浸漬処理する浸漬処理溶液の温度は、35℃〜60℃の範囲とする。35℃未満では生ウニの浸漬処理効果が均一にならず、浸漬処理効果が低下するし、60℃を超えると、生ウニを浸漬処理するとブラッチングしたようになり品質が低下するから、浸漬処理溶液の温度は、35℃〜60℃の範囲がよく、好ましくは45℃〜50℃の範囲がよい。この温度範囲であれば、浸漬処理時間は、1秒〜5秒程度、好ましくは2秒程度でよい。この浸漬時間は、特に限定されるわけではないが、浸漬によって各生ウニの全表面に処理溶液が付着されればよい。
例えば、前記浸漬処理溶液生成工程2で得た浸漬処理溶液を50℃程度に調整し、液槽中に収容し、用意された生ウニの所定量をザルなどの透水性容器に入れ、液槽中に収容された前記浸漬処理溶液内に浸漬し、透水性容器を動かし各生ウニの全表面に処理溶液が接触するようにし2秒間程度で引き上げる。これにより透水性容器(例えば、ザル)内の各生ウニの全部の表面に処理溶液が均等に付着される。
【0028】
続いて、液切り/定量工程4では、前記生ウニ浸漬工程3で浸漬処理された生ウニを、浸漬処理溶液中から引き上げ、低温室で液切りを行う。低温室で液切りを実施するのは、生ウニの品質の低下を防止するためであり、室温は5℃以下が好ましい。この液切りが終了した生ウニは、定量し、例えば、個別に生ウニを展示販売に適する容器に収納する。
例えば、前記2秒間の浸漬後に透水性容器(例えば、ザル)を液槽内の浸漬処理溶液中から引き上げ、5℃以下の低温室において生ウニに付着している処理溶液の液切りを行い、透水性容器内の生ウニを取り出して定量する。この定量では、個別に生ウニを展示し、販売に適する容器に収納する。
【0029】
次の急速冷凍工程5では、前記液切り/定量工程4で容器に収納(または載置)された生ウニを直ちに急速冷凍する。前記浸漬処理した生ウニを急速冷凍すると、生ウニが凍結する氷の結晶は超微小粒(例えば、3〜5ミクロン)のクリーム状となり、生ウニの細胞内の水分が膨張して細胞を壊すことがなく、原形のまま完全凍結する。そのため解凍してもドリップが流れ出ることがなく、凍結前と略同様な品質(例えば、食感、食味)が復元する。
急速冷凍で生ウニが凍結する際の氷の結晶は、超微小粒であればある程良く、そのためには短時間で凍結させるのがよい。従って、急速冷凍は、超速液体冷凍が好ましい。超速液体冷凍は、例えば、−55℃という低温の冷凍液内で実施される。この−55℃の冷凍液では、略10分間程度の実施でよい。
このような超速液体冷凍では、生ウニの細胞が大きく破壊されることはなく、内部の肉質に大きな変化が生じることはなく、細胞の組織が凍結前の状態と略同一となる。このため、解凍時には、ドリップの滲出が抑制され、ウニの旨み成分を肉質内部に保持させることができる。
次に、実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0030】
100重量%全体の占める割合で、動物性蛋白質系コラーゲンとしてマリンコラーゲン(井原水産株式会社製)40重量%、植物性アレギン酸化合物としてアルギン酸ナトリウム(株式会社キミカ製)45重量%、塩15重量%を配合しよく撹拌混合して添加物を作成した。液槽に殺菌水を用いた70℃の温水8リットルを用意し、この液槽内の温水に前記作成した添加物40gを添加配合し、よく撹拌し均一に溶解させて浸漬処理溶液とした。この液槽内の浸漬処理溶液を50℃に調温した後、生ウニ1000gをザルに入れ、該液槽内の50℃の浸漬処理溶液中にザルを動かしつつ2秒間浸漬して取り出し、3℃の室内で10分間液切りを行った。この液切りの後に、耐氷性、耐寒性の皿状のトレー4枚に該生ウニを250gづつ定量して容入し、このトレーの生ウニを、超速液体冷凍機(株式会社コマツ製作所製)にて−55℃の冷凍液で10分間実施し、冷凍ウニを得た。
【0031】
この冷凍ウニをトレーに収納させたまま、−25℃の冷蔵庫内で5日間保存した後、その冷蔵庫内から取り出した生ウニを常温20℃で数時間放置し解凍したが、ドリップの流出もほとんどなく、試食したが食感および食味も凍結前の生ウニとほとんど同等であった。
また、この解凍した生ウニを10人のパネラーに試食してもらった結果も、9人が凍結前とほとんど変わらないとし、1人が少し変わった、となって、食感および食味が凍結前の生ウニと略同等であることが確かめられた。
【0032】
以上のように、本実施形態の冷凍ウニの製造方法およびその製造方法によって得られる冷凍ウニによれば、動物性蛋白質系コラーゲンおよび植物性アレギン酸化合物の持つ増粘機能、ゲル化機能等によって、また塩の作用によって、冷凍時に生ウニの細胞の内部組織が破壊されることが防止され、また、急速冷凍、特に超速液体冷凍によって生ウニの凍結する氷の結晶が超微小粒(例えば、3〜5ミクロン)となり細胞を壊すことがない。従って、解凍してもドリップの流出がなく凍結前の品質を保持し、また、冷凍によって生ウニを食用可能にする保存期間を十分に長くすることができる。
即ち、冷凍ウニは、解凍した後の生ウニの食感および食味は、冷凍前に近い状態に保つことができるとともに、前記冷凍によって生ウニを食用可能にする保存期間を十分に長くすることができる。
また、冷凍ウニの製造方法によれば、ウニの細胞の内部組織が破壊されることがないように容器内のウニを急速冷凍可能にし、このウニを長期に亘って冷凍保存しても、解凍した後は冷凍前の生ウニと略等しい食感および食味のウニとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明にかかる冷凍ウニおよびこの冷凍ウニの製造方法は、解凍した後のウニの食感および食味を、略冷凍前の状態に保つことができるとともに、前記冷凍によって生ウニを食用可能にする保存期間を十分に長くすることができるという効果を有し、解凍された後の食味および食感が良好な冷凍ウニおよびこの冷凍ウニの製造方法等に有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 準備工程
2 浸漬処理溶液生成工程
3 生ウニ浸漬工程
4 液切り/定量工程
5 急速冷凍(超速液体冷凍)工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水に動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解した処理溶液に、生ウニを浸漬し、この浸漬処理した生ウニの液切りをして、急速冷凍してなる冷凍ウニ。
【請求項2】
前記動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解する温水は、50℃〜100℃であり、前記生ウニを浸漬処理する処理溶液は、35℃〜60℃であり、前記動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物と塩の添加物は、100重量%全体で占める割合が、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10〜20重量%の配合割合であり、前記処理溶液は、この配合割合の添加物を温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合してなる溶液であることを特徴とする請求項1記載の冷凍ウニ。
【請求項3】
温水に動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解して処理液を作成し、この処理液に生ウニを浸漬し、この浸漬処理した生ウニを取り出し液切りを行い、急速冷凍することを特徴とする冷凍ウニの製造方法。
【請求項4】
前記動物性蛋白質系コラーゲンと、植物性アルギン酸化合物と、塩とを添加し溶解する温水は、50℃〜100℃であり、前記生ウニを浸漬処理する処理溶液は、35℃〜60℃であり、前記動物性蛋白質系コラーゲンと植物性アルギン酸化合物と塩の添加物は、100重量%全体で占める割合が、動物性蛋白質系コラーゲン35重量%〜45重量%、植物性アルギン酸化合物40重量%〜50重量%、塩10〜20重量%の配合割合であり、前記処理溶液は、この配合割合の添加物を温水に対し0.002重量%〜2.0重量%添加配合してなる溶液であることを特徴とする請求項3記載の冷凍ウニの製造方法。

【図1】
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